進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

179 / 400
第37話 進化の光を求める者 その2

第37話 進化の光を求める者 その2

 

重力反応とゲッター線が感知された宙域にゆっくりと周囲を偵察しながらヒリュウ改が現れる。

 

「目標宙域に進入。ゲッター線反応は微弱ですが、重力異常値はやや増加傾向にあります」

 

「減速後、艦を固定。 ギリアム少佐達に出撃して貰って下さい」

 

ゲッター線反応は弱くなっているが、重力異常値が上昇していると聞いて、予定通りギリアム達に出撃要請を出すレフィーナ。

 

「副長、あれをどう見ますか?」

 

「ストーンヘンジですなぁ――、あれはイギリスにある筈ですがね」

 

ヒリュウ改の進路に浮かぶ石の輪を見てレフィーナとショーンは眉を顰める。

 

「ですよね……ゲッター線反応と何か関係があるのでしょうか?」

 

「判りません、ですが、あのゲットマシンらしき戦闘機とゲシュペンスト・タイプSとの関係が無いとは言い切れないですな、警戒は続けるべきでしょう」

 

行方不明の部隊と戦闘中に現れたゲットマシンとゲシュペンスト・タイプSの存在。それらの姿はないが、ここで何かをしていたと言う可能性も捨てきれず、出撃していくPT隊を見ながらレフィーナは更に指示を飛ばす。

 

「熱源ソナーとゲッター線レーダーの感度を最大にしてください」

 

「重力センサーはどうしますか?」

 

「そちらは停止させてください、ゲッター線反応の感知を最優先です」

 

重力反応だけならば判る。ホワイトスターの影響で宇宙での重力反応の異常反応は度々感知されているからだ、だがゲッター線は武蔵のMIAの後殆ど感知されていなかった。それが感知された事に何か意味があるとレフィーナは感じ、ゲッター線の反応を感知する事にヒリュウ改のレーダーの殆どを向けるのだった。

 

 

 

ゲシュペンスト・リバイブ(S)を先頭にして出撃したリュウセイ達。ヒリュウ改の前方を守るように鏃の形に部隊を展開し、各々の機体のレーダーの反応を最大に設定する。

 

「ストーンヘンジだな。各機へ、周囲の警戒を怠るな。何か反応があれば随時報告せよ」

 

「なんらかの意図が動いていると見て間違いないわね」

 

宇宙には様々なスペースデブリが存在するが、それが自然に輪の形に並ぶ訳がない。宇宙の中心に浮かんだストーンヘンジを見て、ヴィレッタとギリアムの警戒レベルは最大にまで跳ね上がっていた。

 

『ストーンヘンジですか……なにか妙な気配ですね』

 

「確かになんかこう、ぞくぞくするような……嫌な感じがするなあ」

 

ラッセルの言葉に続いて、リュウセイがうへえっと呻きながら嫌な予感がすると言うとそれにタスクとレオナも賛同した。

 

『リュウセイもか? 実は俺もなんだ。誰かから見られているような……あ、まさかレオナちゃんからの熱視線ッ!?』

 

『違いますわよ。でも確かに妙な気配がするのは同意ですわね』

 

念動力持ちの3人が妙な気配を感じると言った事でカチーナ達も警戒心を強める。

 

『しかし何故、ストーンヘンジがこんな所に……自然発生したとは思えないですね』

 

『ですわね。ストーンヘンジは建造者も建造目的も不明――1説には宇宙人の建造物って言う話もありますが……』

 

宇宙人の建造物と言われる事もあるストーンヘンジが宇宙に存在している。周囲の状況もあり、宇宙人に作られた物という考えがこの場にいる全員の脳裏を過ぎった。

 

「最近こんなのばっかりだな……中国で見たアンノウンとか、超機人とか……最近、その手の話が多すぎるぜ」

 

『そう言えばよ、アラドの奴が百鬼帝国とか言ってたけど、そりゃなんだ?』

 

リュウセイがうんざりした様子で言うと、カチーナが思い出したように百鬼帝国ってなんだと尋ねる。

 

『旧西暦に存在した敵性の侵略者の事だ。恐竜帝国の後に出現した集団で百鬼獣という特機を操る集団と思ってくれればいい』

 

『ギリアム少佐が言うって事はまじかよ……で、そいつらはそんなに強いのか?』

 

タスクがそう尋ねるとリュウセイとエクセレンが固い口調で口を開いた。

 

『ハガネが轟沈寸前って聞いてる』

 

『PT隊も壊滅寸前、キョウスケ達も怪我人だらけだって……』

 

『はっ? 嘘だろッ!?』

 

『キョウスケ中尉達が……そんな信じられない』

 

『道理で元気が無かったわけですわね』

 

ヒリュウ改に着てからリュウセイとエクセレンの顔色が優れなかった理由が判り、タスク達が声を荒げる。

 

『落ち着けッ! あたしらは人造人間、地球では旧西暦の化けもんかよ、だが死んでねえなら大丈夫だッ! とっとと調査を終えてキョウスケ達に合流してやればいいッ! だからあたし達は今自分達に出来る事をやるぜッ!』

 

カチーナだってキョウスケ達は心配だ、だがこの場にいないキョウスケ達の心配をして、自分達が撃墜されては意味が無いと檄を飛ばす。

 

『ああ、確かにその通りだな。キョウスケ達ならば問題ない』

 

『ええ、今は私達がやるべきことをしましょう』

 

カチーナの言葉にギリアムとヴィレッタも賛同し、今は自分達がやるべき事に集中しようと口にした時エクセレンが慌てた様子で口を開いた。

 

『く、来る……ッ! 皆気をつけてッ!』

 

『来るって、何が? まさかあたしが化けもんでも出てくるかって……なんだッ!?』

 

自分が化け物が出てくるかっていたのが理由かとカチーナがエクセレンの言葉を笑い飛ばそうとした瞬間。ヒリュウ改からの警報が響いた。

 

『中尉……』

 

『あたしのせいじゃねえよッ!!』

 

『ふざけている場合ではない、来るぞッ!!』

 

カチーナの発言のせいだと遠回しに言うタスクにカチーナが怒鳴り声を上げるが、それを窘めるギリアムの一喝が響き、ストーンヘンジの中心から無数の異形が這い出るように姿を現した。

 

『な、何だ、ありゃッ!? マジの化け物じゃねえかッ!』

 

骨で構成されたようなアインスト・クノッヘン、蔦で構成されたアインスト・グリートの大軍にカチーナが驚愕の声を上げる。

 

「ア、アンノウンだッ!! 中国に現れた奴と同じだぜッ!」

 

『それって、 さっきてめえが言ってた奴かッ!?』

 

「あ、ああ……ッ! でも、 何であいつらがこんな所に……ッ!?」

 

中国で出現した異形が何故宇宙で現れたのかと困惑するリュウセイ。だがカチーナは動揺してるんじゃねえと一喝を飛ばし、ゲシュペンススト・MK-Ⅲを偵察モードから戦闘モードに切り替える。

 

『何だって構わねえッ! 敵ならブッ倒すだけだぜ!』

 

『いえ、待ってください、カチーナ中尉。 念の為にアンノウンにコンタクトを試みます。戦闘に入るのはその後です』

 

真っ先に切り込もうとしたカチーナにレフィーナが待ったを掛ける。

 

『おいおい、マジかよ……艦長。どう見ても友好的にはみえねぇぞ?』

 

『だから念の為なのよ、気を緩めないで』

 

ギチギチと奇妙な鳴き声を上げるアインストを見つめながらヴィレッタが警戒するように告げる中。ヒリュウ改からの広域通信によるコンタクトが試みられる。するとストーンヘンジの外周部にいたアインスト・クノッヘン達が動き始めた。

 

『反応は見せてくれましたけど……』

 

『どう見ても友好的な反応ではありませんね』

 

牙と爪をむき出しにして唸るように吼えるアインスト・クノッヘン達を見てレフィーナは戦闘に入る事を決断した。

 

『敵性アンノウンとの戦闘準備! アンノウンのデータはこちらで収集します、思いっきりやっちゃってくださいッ!』

 

『了解、リュウセイ少尉とエクセレン少尉は俺とヴィレッタ大尉でフォーマンセルで行くぞ、カチーナ中尉はオクトパス小隊の指揮を』

 

『何時も通りって事だな、了解! 行くぜ野郎共ッ! 気合を入れろッ!!』

 

指揮系統の分断を恐れ、ギリアムはヴィレッタ、リュウセイ、エクセレンの4人でフォーマンセルを組み、カチーナ達には普段と同じ編隊で戦闘に入れとギリアムが指示を飛ばした時、エクセレンが声を上げた。

 

「えッ!? 声が、声が聞こえるッ!」

 

【……マ……タ……】

 

異形の声が聞こえると言うエクセレン。だが他のメンバーにはその声は聞こえていなかった。

 

『声なんて聞こえませんよ!? どうしました、 エクセレン少尉!?』

 

『声ッ!?  何言ってんスか、少尉。んなもん聞こえてないっスよッ!』

 

【コノ……バショ……】

 

『や、やっぱり……あれ、喋ってる……ッ!』

 

誰にも聞こえていないが、確かにエクセレンにはアインスト達の声が聞こえていた。

 

「今度は俺も聞こえるぞ……ノイズまじりで何を言ってるか全然判らないけど……何か言ってるッ!」

 

『リュウセイも今度は聞こえた!?』

 

「ああ、聞こえた! 何か、ぼそぼそ言ってるッ!」

 

前回の中国ではリュウセイにアインストの声は聞こえなかったが、今回は聞こえていた。

 

(リュウセイに聞こえたと言う事は念動力とあのアンノウンには何か関係がある?)

 

桁並外れた念動力者へと覚醒したリュウセイには、ノイズ交じりで、しかも遠くから聞こえるせいか不明瞭だが確かにアインストの声が聞こえていた。

 

『リュウセイ少尉、エクセレン少尉! 今は声は無視するんだ! カチーナ中尉、あのアンノウンの弱点は胸部のコアだ。一気に殲滅するぞッ!』

 

『ああ、そっちの方が良さそうだな。ギリアム少佐、行くぜッ!』

 

様子のおかしいリュウセイとエクセレンの事を危惧し、ギリアムは速攻で片を付けるべきだと判断し、カチーナ達にアインストの弱点が胸部のコアであることを告げ、自ら先陣を切ってアインストに戦いを挑みかかり、その後を追いかけてカチーナ達もアインスト達との戦闘を始めるのだった……。

 

 

 

 

 

ストーンヘンジから出現するアインストと対峙しているギリアム、リュウセイ、ヴィレッタ、エクセレンの4人はすぐにある違和感に気づいた。

 

「なんだ? 弱い?」

 

フライトユニットの牽制用のガトリングでコアが砕かれ沈黙するアインスト・クノッヘンを見てギリアムは思わず弱いとつぶやいていた。

 

『ギリアム少佐もそう思うかしら?』

 

中国と戦った時よりもアインストの再生能力も攻撃力も格段に劣っていたのだ。

 

『なんだ? 中国の時はもっと強かったって言うのか?』

 

『そうなのよ、カチーナ中尉。1発でこっちの外部装甲をお釈迦にするくらい強かったし、ビームライフルも全然効かなかったの、でも今はこの通りよ』

 

『ギィイイーーッ!?』

 

オクスタンランチャーのEモードの直撃を受け、アインスト・グリートが絶叫しながら消滅する。ハイゾルランチャーもパルチザンランチャーの攻撃も対して効果が無かった事を考えると、明らかにストーンヘンジから出現するアインストは弱かったのだ。

 

『マジで? 中国のはもっと強かったのか?』

 

ガンドロのアンカーナックルを受けて構成している骨ごとコアを粉砕され、塵となって消滅するアインスト・クノッヘンを見て、ますますリュウセイは違和感を覚える。

 

『ああ、皆ボロボロになりながらやっと倒したんだ。なんでこんなに弱いんだ? 宇宙だからか?』

 

中国での戦いは終始劣勢であり、レーツェルとラドラの2人が応援に来てくれた事でやっとイーブンに持ち込めた。それほどまでに追詰められていたのだが、今出現しているアインストが余りにも弱すぎることにリュウセイは強い疑問と不信感を抱いていた。

 

『環境に適合出来てないと言う事でしょうか?』

 

ラッセルの環境に適合出来ていないと言う言葉――それはあながち間違いでは無かった。明らかにアインスト達は宇宙の環境に適合して切れておらず、明らかにその動きに精彩を欠いていた。例えるのならば、初めて泳ぐ事に挑戦する子供とでも言うべきなのか、完全に宇宙の無重力状態にアインストは対応出来ていなかった。

 

『確かにそう言われると動きが鈍いな』

 

『……今はまだ学習しているとでも言うのかしら?』

 

今出現しているアインストは宇宙空間への適合を始めたばかりなのかもしれない。そう考えるとこの弱さはある意味先遣隊、もしくはこの宇宙の環境を調べる為の物かもしれないという可能性が浮上した。

 

『ならあいつらが学習する前に潰せばいいだろッ! タスクッ! ぶちかませッ!!!』

 

『了解!! 皆離れててくれよッ!』

 

ジガンスクードの両肩・両膝にエネルギーが溜まるのを見て、リュウセイ達は慌ててジガンスクードから距離を取った。

 

『いっくぜえッ! G・サークルブラスタァァアアアアアアッ!!!』

 

両肩・両膝から放たれたエネルギー刃が高速で回転しながらアインストの群れの中心で炸裂する。

 

『!?』

 

『!!!?』

 

突然の広範囲攻撃にアインスト達は対応出来ず、高速で回転し広範囲を薙ぎ払うGサークル・ブラスターの光の刃に切り裂かれて消滅していく、その凄まじい広範囲攻撃と破壊力にリュウセイはアルブレードの中で冷や汗を流していた。

 

『あぶねえ……巻き込まれる所だったぜ』

 

『確かにねえ、でもまぁ……これで敵を一掃出来たと考えれば御の字じゃない?』

 

G・サークル・ブラスターは威力は凄まじく、攻撃範囲も広いがその反面味方を巻き込む可能性のある兵器だ。使い所がかなり限られる武器だが、今回に至っては最高の状況で使えたと言っても過言ではないだろう。

 

『もしもあのアンノウン達が先遣隊だと言うのならば……』

 

『次に出てくるアンノウンが本隊って事になるわね』

 

中国のアンノウンを比べて弱かったストーンヘンジから出現したアインスト。それが個体差なのか、それとも宇宙という環境に適合する為に環境を調べていただけなのか……1度アインスト達が殲滅された事で相手の出方を見る事が出来る筈だと、敵の姿が確認出来ないがリュウセイ達は警戒を緩める事無く、周囲を警戒し続ける。

 

「レフィーナ艦長。あのアンノウンからのリアクションはありましたか?」

 

声が聞こえたと言うエクセレンとリュウセイ、ヒリュウ改のレコーダーにアインストの反応があったかとギリアムが問いかける。

 

『いえ、こちらではそれらしいものは感知されていません』

 

『そもそも人が乗っている物とは思えませんしね』

 

レフィーナとショーンからの返答はそれらしいものは感知されていないと言う物だった。

 

『やっぱりリュウセイ少尉達の気のせいだったんでしょうか?』

 

『そうとも言い切れねえだろ、リュウセイの奴は勘が鋭いからよ』

 

レコーダーに記録されていないからと言っても気のせいとは言い切れない。エクセレンは違うが、リュウセイは卓越した念動力者。常人では感じ取れない何かを感じ取っている可能性は捨て切れない。

 

『でも、また出てくる気配は……げえッ!?』

 

出現してくる気配がないとタスクが言いかけた瞬間。ストーンヘンジの中心から再び重力反応が感知され、這い出るようにアインスト達が再出現する。

 

『タスクてめえ! 余計な事を言いやがって』

 

『本当に余計なことしかしませんわね』

 

『ええー!? お、俺が悪いって言うのかよッ!』

 

カチーナとレオナに責められて俺が悪いのかよとタスクが叫んだ。

 

『理解出来ない状況で混乱するのは判るが、もう少し冷静に対応してくれるかしら?』

 

『うっ……すんまへーん……』

 

誰も本当にタスクのせいだとは思っていない、ただ間が悪かっただけだ。ただタスクとカチーナ達のやり取りで肩に入っていた力が抜けたのもまた事実だった。

 

『リュウセイ、エクセレン、今度は声は聞こえるかしら?』

 

『いや。今は何も聞こえないって言うか感じないぜ、隊長』

 

『私もよん。ヴィレッタお姉様、最初のも勘違いだったのかしら?』

 

新しく出現したアインストからは何も感じないと言うリュウセイとエクセレン。さっきのアインストと今出現したアインストに何か違いがあるのか、それとも最初から気のせいだったのか……そして何故アインストがストーンヘンジから出現するのか……謎ばかりが深まる。

 

『ふーむ。重力反応とゲッター線反応自身が我々を誘い込む餌だったというのも捨て切れないですなあ』

 

『なんだ、副長はあの化け物があたしらを食うつもりでここに呼び寄せたって言うのか?』

 

『可能性は決して低くはないと思いますよ? ここはスペースデブリ地帯ですが……明らかに新しい残骸も多々見受けられます』

 

『それに行方不明事件が多発しているポイントにも近いです』

 

レフィーナとショーンの打ちたてた重力反応とゲッター線反応に引き寄せられた相手を喰らうという説。アンノウンの生態が判らない以上、絶対に違うとは誰にも言い切れなかった。だが、ギリアムだけは違うと感じていた。

 

(違う、あのアンノウンとゲッター線には何の関係もない。なんだ、俺は何を見逃している?)

 

重力反応はアインストと関係があるが、ゲッター線は違う。どこからか見ているのはアインストではないと感じていた、しかしそれが何か判らないギリアムは口を開く事は無く、アインストではなく周辺への警戒を強めていた。上手く説明出来ないが、まだ何か起きるという事をギリアムは直感で感じ取っていた。

 

『となれば、私達は誘い込まれた憐れな餌と言うことですか』

 

『はっ! 黙って喰われてやるもんかよッ! 出てきたら出てきた分だけぶちのめしてやるさッ!!』

 

今もなお出現を続けるアインストを見てカチーナが力強く吼える。

 

『本当カチーナの中尉がいると劣勢でも負けそうって思わないわね』

 

『ああ、何とかなるって思えてくるぜッ!』

 

増え続けるアンノウン――アインスト。ストーンヘンジがゲートになり、そこから無制限に出現するかもしれない。そう思えば、戦えば戦うほどに絶望的な状況に近づく、それでも何とかなるかもしれないと言う希望が沸いた時、エクセレンとリュウセイの脳裏に頭が割れそうな痛みが走った。

 

『つうっ!? なんだ今のはッ!?』

 

『何か……やばいのが来るッ!』

 

リュウセイとエクセレンがそう叫んだ瞬間。ストーンヘンジの中心に罅割れたような亀裂が走り、そこから巨大な異形が姿を現した。

 

『さっきまでの アンノウンとは違う……ッ!』

 

『これが親玉かよ、随分と趣味が悪いじゃねえか』

 

『アンノウンの反応を見る限りでは、それもあながち間違いではないようね』

 

鬼面を組み合わせ、身体を構成しているアインスト……ぺルゼイン・リヒカイトに付き従うように隊列を組むアインスト・クノッヘンとグリートの姿を見れば、ぺルゼイン・リヒカイトがリーダー格であると言うのは明らかだった。

 

『やべえ感じがびんびん伝わってくるぜ』

 

『ええ、これは気を引き締めないといけないわね』

 

明らかに別格の存在の出現に全員が警戒心を引き上げる中、アルブレードのリュウセイから苦しそうな声が通信で全員の機体の中に響いた。

 

『あ、ああ。 見た目も中身も……別格だ』

 

中身がいる……その言葉の意味を一瞬誰も理解出来なかった。だが少し考えれば、中身の意味は容易に予想がついた。

 

『中身ッ!?』

 

「まさか中にパイロットがいるとでも言うのか? リュウセイ、エクセレン」

 

鬼面のアンノウンの中にパイロットがいるかもしれない。その可能性がリュウセイによって告げられたと同時に、広域通信で幼い少女の声が響いた。

 

【……あなた……あなたは……】

 

『誰ッ!? 誰なのッ!?』

 

ペルゼイン・リヒカイトはその指先をヴァイスリッターに向ける。その瞬間リュウセイ達とカチーナ達を分断するようにアインスト・クノッヘンとグリートが動き出した。

 

『この動きは!?』

 

『やっぱり指揮官なのかよッ! くそッ! すぐに倒して合流するからなッ!』

 

オクトパス小隊とリュウセイ達がアインストの壁によって分断された

 

【これでゆっくりお話できますの、私の名はアルフィミィ。アインスト・アルフミィ……】

 

『アインスト……アルフィミィ……? それが貴女の名前?』

 

『アインストって何だッ!?』

 

『落ち着きなさいリュウセイ、エクセレン! 相手の言動に惑わされては駄目よ!』

 

『隊長、まさか聞こえてるのか!?』

 

「ああ、俺たちにも聞こえている。こっちの回線に割り込んできているようだ」

 

今度はリュウセイとエクセレンだけではない、ギリアム達にもアインスト・アルフミィを名乗る少女の声は聞こえていた、それはあのアンノウンにパイロットが存在しているという確かな証拠なのだった……。

 

 

 

 

 

ペルゼイン・リヒカイトの出現の前に現れたアインスト達は先ほどまでカチーナ達が戦っていたアインストよりも一回りも二回りも強力なアインストだった。

 

『オラアッ!!』

 

『??』

 

ゲシュペンスト・Mk-Ⅲのライトニング・ステークの直撃をコアに受けても、アインスト・クノッヘンは何かした? と言わんばかりに首をかしげ、反撃に鋭い鎌となっている両腕を振るう。

 

『ぐっ! なんだ、こいつらさっきよりも強いじゃねえかッ!』

 

さっきまでは装甲に弾かれ、ろくなダメージにならなかったのだが、今ゲシュペンスト・MK-Ⅲの装甲には深い切り傷が刻まれていた。それは第1・第2装甲板を貫通し、内部装甲にまで深い損傷を与えていた。

 

『ラッセル、レオナッ! 援護に回れッ! タスクッ! ガンドロで前に出ろッ!!!』

 

『合点承知の助ッ!!!』

 

改良されているゲシュペンスト・MK-Ⅲの装甲を一撃で内部装甲まで引き裂いた。旧式のゲシュペンスト・MK-Ⅱとガーリオンではアインストの攻撃に耐え切れないと判断したカチーナはラッセルとレオナに後方に下がるように指示を出す。

 

『こいつでぶっ飛べッ! ギガワイド・ブラスターーーーッ!!!!』

 

しょっぱなの広範囲攻撃でアインストの数を減らそうと考えたタスクがギガワイド・ブラスターをアインストの群れのど真ん中に向かって打ち込んだ。

 

『『『『……』』』』

 

命中寸前に前に出たアインスト・グリート達が触手を突き出す。その先から展開されたビームコートがギガ・ワイドブラスターを受け止める。

 

『へっ! 止められ……なッ!?』

 

前方のグリートが消滅すると、後のグリートが、それが永遠と繰り返され、ギガ・ワイドブラスターの照射はアインスト・グラートを4体撃墜、3体に体表に軽い損傷をつけるだけだった。

 

『『『……ッ』』』

 

『回復している……先ほどまでの非じゃないッ!』

 

『なるほど、キョウスケ中尉たちが苦戦した理由がやっと判りましたわね』

 

ギガ・ワイドブラスターを受けきったアインスト・グラート達がカチーナ達の目の前でビデオの巻き戻しのように損傷を回復させる。その異様な光景にカチーナ達は背筋に冷たい汗が流れるのを感じるのだった。そして劣勢に追い込まれていたのはペルゼイン・リヒカイトを相手にしているリュウセイ達も同じだった。

 

『『……』』

 

ペルゼイン・リヒカイトから分離した両肩の鬼面を中心に展開された下半身の無い異形の鬼。それがその手に持った異形の日本刀とヴィレッタとギリアムを追い回す。

 

『くッ! 早いッ!』

 

『!!』

 

ギリアムとゲシュペンスト・リバイブ(S)をもってしても振り切れない圧倒的な速度。そして一撃で切り落とされたゲシュペンスト・リバイブ(S)の右肩装甲を見てギリアムは冷や汗を流しながらビームキャノンによる射撃を叩きこむ。

 

『?』

 

『ちっ、ビーム兵器無効かッ! とことん俺と相性が悪いッ!』

 

ゲシュペンスト・リバイブ(S)はその圧倒的な機動力と実弾、ビーム兵器による豊富な攻撃手段を持つのが特徴だが、レールガンやガトリングの攻撃は殆ど一瞬で回復され、ビームキャノンなどのエネルギー兵器はビームコートで霧散してしまう。ペルゼイン・リヒカイトから分離した鬼面はギリアムにとって天敵とも言える能力をしていた。そしてそれは、ヴィレッタも同様だった。

 

『こんな事ならR-GUNを持って来れば良かったわねッ!!!』

 

『!!!』

 

ヴィレッタが念動力を持たないという事、そして中国での戦いで無理をしたと言うこともありオーバーホール中のR-GUNに変わり、ゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプRに乗ってきたヴィレッタも舌打ちを隠せなかった。機動力を強化したタイプなのに、鬼面を振り切れず、パルチザン・ランチャーの攻撃も無効化される。完全に劣勢に追い込まれていた、打撃武器のライトニング・ステークはあるが、鬼面の機動力と再生能力には有効打にはなりえないと判断し、防御と逃げに回らざるを得ず。このままでは撃墜されるという事をヴィレッタは直感で感じ取っていた。

 

「答えて貰うわよッ! 貴女は何者ッ!?」

 

宇宙空間を白銀と真紅の影が何度も交錯しながら、ヴァイスリッターからエクセレンの叫び声が響いた。放たれるオクスタンランチャーの一撃は普段よりも鋭く、そして正確無比な一撃だった。だが、ペルゼイン・リヒカイトは舞うような必要最低限の動きで回避する。

 

(これは反応速度がいいとか、反射神経がいいとか、そういうレベルじゃない。判っているんだわッ!)

 

エクセレンの操縦の癖も、そして何処を狙うのかもペルゼイン・リヒカイト――いや、アインスト・アルフィミィを名乗る少女にはわかっている、エクセレンにはそう感じられた。そしてオクスタンランチャーのEモードを回避したペルゼイン・リヒカイトの反撃に振るわれた日本刀の切っ先から飛び出したエネルギー刃を回避したエクセレンだが、その顔には普段の余裕の色は一切見られなかった。

 

『来るべき刻が……近い……進化の時が訪れていますの』

 

「私にも判るように言って貰える? 声からすると……可愛いお嬢ちゃんなのかしら?」

 

意味深なことを言いながら、容赦なく、それこそコックピットブロックごと両断せんと言わんばかりに振るわれる日本刀。そのあまりに鋭い太刀筋に背筋が冷えるものを感じながら、アルフィミィに何者なのか? と問いかける。まともな返答はないと思っていたのだが、アルフィミィから返ってきた返事は少しむっとしたような、いじけたような響きが込められた言葉だった。

 

『お嬢……ちゃん? 違いますの……私は……貴女、貴女は私ですの』

 

「どういうことッ!?」

 

普段なら戯言と言って聞き流せたエクセレンだが、今回ばかりはそうも言ってられなかった。初めて会ったはずなのに、会った事がある。そんな奇妙な感覚を感じていたからこそ、アルフィミィの言葉が真実だと直感で感じてしまっていた。

 

『貴女が……もっと完全なら……私も……』

 

「はい、ストーップッ! 順序よく話してくれない? 私にも判るようにッ!!」

 

どこか責めるような響きを感じ、もっと判りやすいように説明してくれとエクセレンが問いかけ、ほんの少し前に出た瞬間。

 

『あぶねえッ! エクセレン少尉なにやってるんだよッ!? 死ぬつもりかッ!?』

 

横から割り込んできたアルブレードが両手に構えたブラスト・トンファーでペルゼイン・リヒカイトの日本刀による一撃を受け止めていた。その光景とリュウセイの一喝にエクセレンは我に帰った

 

(今私は何の警戒心も無かった……どういう事なのよ)

 

何の警戒心もなく、アルフィミィに近づいて何を知っているのかそれを問いただそうとしていた。問いかければ、話し合えば判る。変な話だが、親族か何かに抱く無条件による信頼――それをエクセレンはアルフィミィから感じていた。

 

『……この力……進化の光……貴方は……進化の光に触れている……どこで触れたんですの……?』

 

『てめえッ! 何言ってやがんだッ!?』

 

『答えて欲しいですの、貴方は……どこで進化の光に……触れたんですの?』

 

進化の光にどこで触れたのかと言って、アルブレードに執拗に攻撃を繰り出すペルゼイン・リヒカイト。

 

「このッ! それは教えて欲しいって態度じゃないわよッ!!」

 

リュウセイの援護に入ったヴァイスリッターの射撃に1度、ペルゼイン・リヒカイトは刀を振るう手を止めて後退する。

 

「大丈夫?」

 

『な、なんとか……でもブラスト・トンファーがお釈迦寸前だぜ。何つうパワーだよ……』

 

グルンガストと打ち合っても凹み1つ無かったブラスト・トンファーは凹み、深い切り傷がついている。下手をすれば、ブラスト・トンファーは両断されていただろう。

 

『どうして邪魔をするんですの? 私はただ……聞いているだけですのよ?』

 

どうして邪魔をしたのかとむくれた声でリュウセイとエクセレンに声を掛けるアルフィミィ。その声には本当に何故怒られたのか、邪魔をされたのか判らないと言う響きがあった。

 

「あのね、話をしたいのならまず自分達が何者なのか? って言う事から説明するのが筋でしょ? 急に攻撃してきて貴女の疑問に答えてくれると思っているの? まず武器をしまいなさい、そして攻撃をやめさせるのよ」

 

エクセレンの警告が効いたのかアインスト達の動きが止まり、ペルゼイン・リヒカイトもその敵意を一瞬緩めた。

 

『知りたいんですのよ、私は進化の光――そして鍵を……む? 邪魔者ですのよ』

 

アルフィミィが不機嫌そうに言うと、デブリ帯に隠れていた行方不明部隊のPTやランゼン達とガロイカが姿を現す。

 

「なんでこの距離まで気付かなかったのッ!?」

 

『す、すいません! 熱源反応とかは無かったんです。本当です! 突然現れた……ゲッター線反応感知ッ!! ストーンヘンジ中心ですッ!』

 

エクセレンの責める口調にユンがすぐに謝罪の言葉を口にする。だが自分には非が無いと、突然熱源が現れたと言うユンだったが、ゲッター線反応を感知と叫ぶ。その瞬間、ストーンヘンジの中心からゲッター線の光の柱が浮かび上がった。

 

『な、なんだ!? あの光は』

 

『ゲッター線っ! 何故今になってッ!?』

 

『『『『!!!!!』』』』

 

突然現れたゲッター線反応にギリアム達は驚愕し、アインスト達はまるで喜ぶような鳴き声を上げた。その直後ゲッター線の光の柱の中から黒い異形が飛び出した。

 

『『『キシャアアアアアーーーッ!!!』』』

 

それは全身に目玉がある黒いトカゲのような化け物だった。それはゲシュペンスト・Mk-Ⅲとフライトユニットを装備したゲシュペンスト・MK-Ⅱに飛び掛り、吸い込まれるように姿を消した。そしてその次の瞬間、ゲシュペンストの装甲が異音を立てて凹み、全身に黄色い目玉が浮かび上がり、フェイスパーツが砕けそこから血走った紅い目で現れる。

 

「な、何!? また化け物がッ! 貴女の仕業!?」

 

『いえいえ、違いますのよ。どーも、偶然繋がってしまったみたいですのよ? 私は悪くありませんことよ?』

 

化け物ではあるが、自分のせいではないと言ったアルフィミィ。そしてペルゼイン・リヒカイトが指を上げると、アインスト達はカチーナ達に目もくれず、化け物になったゲシュペンストMK-ⅢとMk-Ⅱに襲い掛かる。

 

『な、なんだ。化け物同士仲間じゃないのかよ』

 

『残念ですけど、破壊魔は仲間ではありませんのよ? それよりも……気をつけないと……喰われてしまいますのよ?』

 

からかうよう響きがあったがアルフィミィの喰われるという言葉に反射的に動いたヴァイスリッターとアルブレード。ほんの一瞬前まで2機がいた場所にはゲシュペンストの背中から伸びた化け物の首が涎をたらしながら突き立っていた。

 

「こ、こいつら私達を喰うつもり!?」

 

『や、やべえぞ……アンノウン以上に化けもんじゃねえかッ!』

 

機動兵器を喰らい、その姿を変質させる化け物――それはアインストよりも遥かに恐ろしい化け物だった。

 

『気をつけますのよ? 破壊魔はなんでも食べて同胞にしてしまいますのよ?』

 

牙を剥き出しにし、涎を垂らしているゲシュペンストを見れば飢えている、自分達を喰らおうとしているのが本能的に判った。捕食されるという恐怖にリュウセイ達は身体を震わせた。その瞬間、様子を窺っていた化け物がアルブレードを喰らおうと一斉に飛び掛った。

 

『うわあッ!!!』

 

「リュウセイッ!」

 

『逃げなさいッ! 立向かっては駄目ッ!』

 

向かってくるメタルビースト・ゲシュペンストに恐怖し、リュウセイはアルブレードのブラスト・トンファーで迎撃しようとした瞬間。アルブレードの頭上を通り抜けて飛来した何かがメタルビースト・ゲシュペンストを両断し、そのままストーンヘンジに突き刺さった。

 

「な、あ……あれは……」

 

『げ、ゲッタートマホーク?』

 

ストーンヘンジにメタルビースト・ゲシュペンストを縫い付けていたのは両刃の巨大な戦斧だった。

 

『熱源反応が2つ急接近中ッ! 早いッ! 後10秒でこの宙域に出現しますッ!』

 

ユンの報告のすぐ後にストーンヘンジの浮かぶ宙域に2機の機動兵器が現れた。1体は前も現れたゲシュペンスト・タイプS――そしてもう1機は宇宙の暗闇の中でも眩いまでに輝く真紅の特機だった。

 

『ど、ドラゴン?』

 

『ゲッタードラゴンじゃねえかッ!?』

 

『いえ、細部が少し違いますし、ドラゴンよりも遥かに巨大ですッ!』

 

蝙蝠の翼を思わせる漆黒の翼を持つドラゴンに似ているが、ドラゴンよりも更に巨大で、そして力強さに満ちた機体の出現にリュウセイ達の間には混乱が広がり、アルフィミィは小さく笑い出した。

 

『やっと会えましたの……進化の使徒……さぁ、私達を貴方の後継者と……認めるんですのッ!』

 

喜び、羨望、怒り、嘆き――複雑な感情の入り混じった声で自分達を後継者と認めろとアルフィミィは叫ぶ、その声に追従するようにアインストとメタルビースト達のゲッター線を求める叫び声が宇宙に響き渡るのだった……。

 

 

 

第38話 進化の光を求める者 その3へ続く

 

 




ストーンヘンジからアインスト、インベーダー出現、あちら側で勃発していたアインストVSインベーダーVS人間の三つ巴再び。信じられるか? これまだゲームで言うと17話なんだぜ? 後30話以上ある原作シナリオにオリジナルシナリオ――これ完結までに何話かかるんだ? と内心恐怖しながらも地上ルート・宇宙ルートもやるぜと決めた事に若干の後悔を抱きながら話を進めて行こうと思います。
次回は武蔵とカーウァイの視点から入って行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。


PS

スパロボDDの迎撃戦で40万を獲得する事に成功しました
無課金でもいけるものですねと自分でも驚きです。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。