進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

18 / 349
第16話 強襲その3

第16話 強襲その3

 

今まで敵対していたヴァルシオンとゲッター2が殿を務めることでハガネに帰還したPT部隊は即座に再出撃の準備に入っていた

 

「ちっ! マシンガンの弾がねえ! ガーリオン用のバーストレールガンあったな!? シュッツバルトに搭載するぞ! シュッツバルトのマシンガンはそのままゲシュペンストに回せ! 今8丁あっても4つ分しか弾薬を補充できないなら、ハガネの護衛隊に回せ! 遊撃隊にはそれ以外の武器を搭載するぞッ!」

 

「グルンガストのエネルギーの充填完了までは!?」

 

「780秒ですッ!!でも最低限の数値です! ファイナルビームなどの使用は出来ません」

 

「それでも構わんッ! 動けるだけのエネルギーを充填出来れば良いッ! その間に大尉のゲシュペンストタイプTTにチョバムアーマーをつけるぞ! 装甲を直してる暇が無い!」

 

「マシンガンの弾ありましたッ! ただコンテナの下です」

 

「くそがあッ! 誰だぁ! でて来い! スパナでぶん殴ってやるッ!!!」

 

「整備長! 落ち着いて! 落ち着いてくださいッ!!! おい! 誰でも良い! 早くクレーンでコンテナを移動させろッ!!!」

 

外で戦っている以上に整備兵は修羅場となっていた。だが無理も無い、統合軍エース部隊のトロイエ隊、そしてヴァルシオンに続いて恐竜帝国と名乗る異形の集団。トロトロしていてはハガネが撃墜される、それはなんとしても防がなければならないからだ。

 

「部隊の編成を変更する。ジャーダ、ガーネットそしてアヤはハガネの直衛だ」

 

ダメージの深刻さで言えばゲシュペンストMK-Ⅱ2機とアヤのタイプTTが深刻な状態だった。いまは応急処置として増設のチョバムアーマーを搭載しているが、そのダメージは深刻で足回りや背部もブースターは焼き切れる寸前だ。だから動くことの少ない、ハガネの護衛として配置する

 

「リュウセイ、イルムガルドは俺と一緒に前衛に出る。リュウセイは俺とツーマンセルだ、独断専行をするな」

 

「りょ、了解! でも教官、あんな化け物とどう戦えば……」

 

モニターの中では50m級の恐竜が暴れ回り、ハガネも何度も何度もその船体を揺らしている。直撃すれば、PTなど一たまりも無いだろう

 

「巨体だからどうしたと言うんだ? 当たらなければどうと言う事は無い。ライとラトゥー二は中間距離でハガネと俺達の支援だ」

 

射撃能力に秀でた2人をハガネと自分達の支援に回すように指示を出す。それは最悪の場合を想定した保守的なフォーメーションだった

 

「少佐、武装の変更はどうなりますか?」

 

「……シーリオンから回収したマルチミサイルポッドをPT用に調整してある、それをバックパックとして装備する。ただし使い捨てだ、

弾数を使い切ればただのデッドウェイトになる点だけ気をつけろ。調整不足で切り離しまでは出来ないからな」

 

「……了解です。射撃の補助システムはどうなりますか?」

 

「そちらも調整はしてあるが、ある程度は自分達で調整してくれ、他に質問のある者は? 無ければ全員機体に乗り込め」

 

そう言ってブリーフィングを終ろうとしたイングラムだが、イルムが背を向けたイングラムに言葉を投げかける。

 

「少佐。あの恐竜帝国ってやつらは武蔵とゲッターを怨敵と呼んだ。なぁ、武蔵は民間人なんだろ? なんであんな化け物に怨敵って言われてるんだ?」

 

イルムが鋭い目付きでイングラムに問いかける。元々民間人と言うのを信じたわけでは無い、見極めようとしている所での化け物の襲撃。イングラムが何か知っているのでは無いかと尋ねるイルム、睨みあうイルムとイングラムにアヤが制止に入ろうとした時イングラムが口を開いた

 

「特級機密事項だ。この戦闘終了後に教える、知りたければ生き残るんだな」

 

「……ったく、わぁーたよ。終ったら全部説明して貰うからな」

 

にやりと笑うイングラムにイルムは溜息を吐きながら頷く、イングラムもまた笑みを浮かべながら戦況を写しているモニターに視線を向ける

 

「再出撃までゲッターとヴァルシオンの戦闘を見ておけ、相手の行動パターンの把握になる。良いか、全員で生き残る事を考えろ」

 

モニターには全方位からの攻撃で思うように動けないゲッターとヴァルシオンの姿が映し出されているのだった……

 

 

 

 

ヴァルシオンとゲッターの即席タッグでメカザウルスの進撃を防いでいた。だが状況は時が経てば経つほどに不利になっていた……全てが特機もしくは準特機サイズの敵が隊列を組んで襲ってくるのだ。いかにヴァルシオン、ゲッターロボだとしてもそれは倒しきれる量ではなかった

 

「ぬっぐうッ……こいつまだ動くのかッ!?」

 

ディバインアームでメカザウルスを両断したヴァルシオンだが、両断されたメカザウルスの頭部から伸びた鞭がその腕に絡みつく

 

「ゲッタービームッ!!!」

 

それを見た武蔵はゲッター2の眼部に搭載されたビームで、鞭の根元……肩から顔を出しているトカゲの頭部を焼くと同時にドリルアタックで突っ込んできたサイのようなメカザウルスと正面からぶつかり、ドリルとマッハの速度による突撃でメカザウルスの一瞬で破壊する。だがその残骸にドリルが突き刺さり身動きが取れないゲッター2に四方から火炎弾が迫る

 

「オープンゲットッ!!」

 

ゲッター2は命中する寸前に合体を解除し、上空から降下してきたメカザウルスにミサイルを放つ。それは空中を舞うメカザウルスの怒りを買い、メカザウルスはゲットマシンを追いかけて行く。メカザウルスがゲッターを最優先にして戦うと言う性質を理解した、武蔵の作戦だった。

 

「ビアンさんッ!」

 

「ああ、クロスマッシャー……発射ぁッ!!!」

 

螺旋状のエネルギー波が放たれると同時にゲットマシンは急降下し、クロスマッシャーの射線から逃れる。そして地面にぶつかるという瞬間にゲッター1へとチェンジし反転すると同時にヴァルシオンの隣に立つ。

 

「ビアンさん、メカザウルスを攻撃する時は機械の部分よりも生身の部分、それも頭部を狙ってください」

 

「……そのようだな。全く、恐ろしい生命力だよ」

 

今のクロスマッシャーの掃射を受けてもメカザウルスはまだ生きていた。もう兵器としての能力は失っているが、それでも生物としては生きている。それがメカザウルスの脅威である点なのだ……爬虫類の異様な膂力と生命力と機械の融合、それがメカザウルスがメカザウルスたる由縁だった。

 

「足とか腕に絡み付かれると一気に不利になりますよ。だからちゃんと踏み潰してください」

 

ゲッターが足を振り上げメカザウルスの頭を踏み砕く、脳が撒き散らされ血液が吹き出る。凄惨ともいえる光景だが、そうしなければ自分達が追い込まれると判っているからの徹底振りだった。

 

「ハガネの部隊も再出撃してきたか……」

 

モニターに再び姿を見せるPT部隊。応援ではあるが、この状況でPTがどこまで役に立つかと言う不安がビアンの脳裏を過ぎる。それに武蔵は平気そうにしているが、ゲッターの動きは明らかに鈍い。

 

(……やはりあの一撃のせいか……)

 

ユーリア達がメカザウルスに追われていると気付いた武蔵はヴァルシオンからの攻撃に背を向け、ドリルハリケーンを放った。だがそれはヴァルシオンの攻撃を受けると言う事を意味していて、ジャガー号に深刻な打撃を与えていた。エネルギーが不安だと言うのにゲッター3ではなく、ゲッター1にチェンジしたのもビアンの予想を確信へと変えていた。恐らくジャガー号は不調なのだ、3では脚部になるジャガーが壊れていればゲッター3の機動力は失われる。それならばとゲッター1にチェンジをしたのは良いが両腕の反応が明らかに鈍い

 

「早く来い、エルザムッ!」

 

近くまで来ている事は判っている。だがこの状況でいつまでも耐えれるとは思えない、ビアンはヴァルシオンのコックピットの中でそう怒鳴らずにはいられなかった。だがそれはこの戦況を見ていたバットの怒声で掻き消された

 

「貴様ッ! 弱い、弱すぎるぞゲッターロボッ!!! いや、巴武蔵ッ!!! あの時ニューヨークで3万のメカザウルス大隊と戦った時の力はどうしたッ!! 何故そんなにも弱くなっているッ! 答えろぉッ! 巴武蔵ぃッ!!!!!」

 

激しい殺意と怒気を伴ったバットの怒声が響き渡る。それは失望とも取れる響を伴ったバットの懇願とも取れる嘆きの叫びなのだった……

 

 

 

 

ハガネから再出撃したリュウセイ達は改めてこれから自分達が戦おうとしている相手を見た。体の半分以上が機械化されたメカザウルスの血走った瞳が向けられる、それは純粋な殺意でありリュウセイ達の足を止める。

 

「各員冷静に対処せよ。攻撃対象は頭部に絞れ、胴体に攻撃を加えても効果は薄いようだ」

 

イングラムが浮き足立ち掛けたリュウセイ達に素早く指示を飛ばし、冷静になれと告げる。

 

「うおおおおおおッ!!!」

 

「ギ、ギシャアアアアッ!!!」

 

ゲッター1は噛み砕こうとしたメカザウルスの上顎と下顎を掴んで、稼動域を超えて広げ頭部を粉砕する。血飛沫が舞い、ゲッターの身体を真紅に染め上げていく

 

「ふん、その程度でこのヴァルシオンを止められるなどと思わない事だ」

 

そしてヴァルシオンもメカザウルスの頭部を掴み握り潰す。閉じられた拳から鮮血が滴り落ち、それを見た女性陣の顔色が青くなる。PTやAM同士の戦いではない、生物との戦い。痛みに叫び声を上げ、鮮血を上げる姿は兵士とは言えど、そう簡単に受け入れられる光景ではなかった。

 

「リュウセイ、判っているな?無理に突っ込むな。俺とお前はイルムの支援だ」

 

「りょ、了解! わ、判ってるぜッ!」

 

恐怖に声を震わせながらもそれでも戦意を失わないリュウセイにイングラムは笑みを浮かべる。恐怖を感じているが、これなら戦えると確信したようだ。

 

「グルアアアアアッ!!!」

 

「くっ! 思ったよりも圧力があるなッ!!」

 

大口を開けて突っ込んできたメカザウルスをグルンガストの両腕が食い止める。だがメカザウルスの突進の勢いは凄まじく、グルンガストはそのまま後方へと押し込まれていく。

 

「いいぞ、イルムそのまま押さえておけッ!」

 

固定されたメカザウルスの口の中にビルトシュバインの放ったミサイルが飛び込む。それは少しずれればグルンガストへの直撃コースで、流石のイルムも怒鳴り声を上げる。

 

「どわっ!? あ、当たる所だったぞッ!?」

 

「当たらなければ問題は無い。リュウセイ、PTの攻撃でもメカザウルスには有効打となる。だが攻撃箇所を見誤るな」

 

いかに強力であっても生物である、口の中に攻撃を当てられればひとたまりも無いだろう。それは生き物だからこその弱点でもあった……

 

「少佐、グルンガストが血塗れに関しては何か言う事は無いのか?」

 

イルムの恨めしそうな言葉にイングラムが返事を返すことは無く、突進してくるメカザウルス・ザイの一撃をかわす。それにザイは怒りを覚え何度も突進してくる、それこそがイングラムの狙いだった。

 

「……そこだっ!」

 

「!?」

 

そして何度目の突進でビルトシュバインが跳躍し、かわしたと同時にビルトラプターのハイパービームライフルがザイの頭を貫く。鮮血を撒き散らし倒れるザイの姿にリュウセイが息を呑む……生き物を殺したという罪悪感がリュウセイの肩に伸し掛かる。

 

「良くやったリュウセイ。良いか、殺さなければ殺されるのは俺達だ。躊躇うな」

 

「うっぷ……りょ、了解ッ!」

 

込み上げてくる吐き気を堪えリュウセイは正面を睨む、メカザウルスの大半はゲッターとヴァルシオンに向かっている。それでもメカザウルスの群れはハガネやPTを狙っている……ここで立ち止まっている余裕なんてリュウセイ達には無かった

 

「計都羅喉剣ッ!!」

 

「キシャアッ!」

 

計都羅喉剣とその鉤爪を打ち合う2頭のメカザウルス……リュウセイ達は知らないが、メカザウルス・サキにビルトシュバインと共にビルドラプターは向かっていく。

 

「ジャーダ、ガーネット。そっちは大丈夫!?」

 

「な、何とか……でも結構やばいッ!」

 

「ほ、本当よね!? なによ! こいつらッ!」

 

ハガネに襲い掛かってくるメカザウルス・バドはトロイエ隊も追いかけていたプテラノドン型のメカザウルスだ、他のメカザウルスと比べれば小さいがそれでも28mとゲシュペンストよりもはるかに大きい。しかも翼に備え付けられた6連のミサイルが絶え間なく降り注ぎ続け、ハガネの船体を揺らしている。

 

「ハガネの対空砲で支援します。なんとか撃墜してください」

 

M-13ショットガンを装備しているゲシュペンストMK-ⅡとタイプTT。相手は素早く、損傷により機動力が低下しているゲシュペンストには追いきれない相手だ。ショットガンで弾幕を張り、広範囲に攻撃を仕掛けるが嘲笑うかのようにバドは攻撃をかわし、急降下からの爪攻撃でゲシュペンストのコックピットを狙う。近づかせまいとハガネの対空砲とショットガンの弾幕が放たれるが、バドは急降下の勢いを利用してその攻撃を防ぐ。

 

「ギシャアッ!?」

 

「キイッ!?」

 

あとわずかでコックピットを貫かれるという瞬間。突如後方から放たれたミサイルによってバドは撃墜される、そのミサイルが向かってきた方向に視線を向け、そして唇を噛み締めるアヤ。視線の先には黒のガーリオン・カスタムに率いられたリオン部隊の姿があるのだった……

 

「随分と苦戦しているようだな。ライディース」

 

「くっ、兄さん何をしにきた!」

 

対抗心を剥き出しにするライディースにエルザムは笑みを浮かべる。以前の従順だった弟よりも今のライの方が好ましいと思ったからだ。

 

「何を? 応援に来たのだが? それともお前は今の状況を理解せずに、私怨で戦うと言うのか?」

 

「……少尉。ここは協力しなければ……」

 

ラトゥー二の言葉にライは舌打ちしつつも判っていると返事を返す、口惜しいがエルザムの腕を知っているのはライ自身なのだから

 

「今この場は頼りにさせて貰う、だが決着はいずれつける」

 

「ふっ、それで良い。今この一時の共闘だ」

 

シュッツシバルトとヒュッケバイン009の間に浮遊するガーリオン・トロンベ。試作機だったガーリオンを更に改良し、エルザム専用機としてカスタムされた機体だった

 

「中々の速さだ。だが私とトロンベを舐めないでもらおうッ!!」

 

「ギッ!」

 

戦場を縦横無尽に駆け回る鋭利な頭部と両肩にミサイル発射口を持つ、メカザウルス・ギロ。そのミサイル攻撃と火炎弾によりシュッツバルトとヒュッケバイン009の援護攻撃は潰され、リュウセイ達の支援が出来ていなかった。だがエルザムの参入によってやっと支援が届く

 

(口惜しいが、やはりエルザムの腕は俺よりも遥かに上だ)

 

ミサイルを発射するタイミングを計りながらライは唇を噛み締める。自分とラトゥー二を翻弄していたメカザウルスがエルザムが相手をすれば、あっと言う間にその自由な機動を奪われているからだ。自分との腕の違いをこれでもかと思い知らされる

 

「ギギッ!」

 

「速ければ良いと言うものでは無い」

 

「ギギャアッ!?」

 

ブレードがつけられたレールガンでメカザウルスの頭を貫き、そのまま引き金を引いた。鮮血と共に脳が飛び散る、瞬殺と言って良かった。速さはメカザウルスの方が上なのに、緩急をつける事でメカザウルスを誘導していたのだ。攻撃一辺倒では無い、戦場すらもコントロールするエルザム。自分の方を見向きもしないその姿に自分等見る価値も無いと言われてる様で、ライはその拳をコンソールに叩きつけるのだった……

 

 

 

 

ダイテツは人知れず唇を噛み締めていた。武蔵と言う存在が居るのだ、武蔵が戦ったと言うメカザウルスが襲撃を仕掛けて来る事も考慮しなければならなかったのに、それを怠った。己を恥じていた

 

「艦長。トロニウム・バスターキャノンのエネルギー充填70%を超えました」

 

テツヤの言葉にダイテツは判断を迫られた。ここでヴァルシオンを倒すという目的でチャージを始めた、だがここで仮に倒したとしてもメカザウルスは残る……ビアンを倒しても、敵は残るのだ

 

「……大尉。エネルギーの充填を中止する」

 

「……了解です」

 

ここで仮にビアンと相打ちになったとしよう、それでもあのメカザウルスは残るのだ。DCよりも遥か強敵が残るかもしれない、そう判断した以上ダイテツはバスターキャノンの使用に踏み切れなかった。

 

「貴様ッ! 弱い、弱すぎるぞゲッターロボッ!!! いや、巴武蔵ッ!!! あの時ニューヨークで3万のメカザウルス大隊と戦った時の力はどうしたッ!! 何故そんなにも弱くなっているッ! 答えろぉッ! 巴武蔵ぃッ!!!!!」

 

その時だった。4つ首の恐竜が雄叫びを上げて、自分達の同類であるメカザウルスを踏み潰しながらゲッター1へと襲い掛かる。

 

「弱いッ! 弱すぎるぞッ!! ゲッターロボォッ!!!」

 

「がっ! ぐっ! うおっ!?」

 

4つ首のうちの1本がゲッターの胴体に噛みつき何度も、何度も地面に叩きつける。

 

「武蔵君ッ!」

 

「邪魔をするなッ! 人間ッ!!!」

 

ヴァルシオンが救助に向かうが3本の首の猛攻で近づくことは愚か、完全にその場に足止めされる

 

「貴様らもだッ! 邪魔をするなあああッ!!!」

 

バットの狂ったような叫びが木霊し、胴体から放たれたミサイルの豪雨がハガネ、PT、メカザウルスもお構いなしで打ち込まれる

 

「PT部隊はハガネ周辺まで後退ッ! エネルギーフィールド内に入れッ!! DCのAM隊もだッ! 急げッ!」

 

テツヤが即座に指示を飛ばす。あれだけのミサイルの弾幕を防ぐ事も避ける事も不可能、敵同士ではあるがそれでも今は共闘関係にあるからテツヤはAM隊にもハガネのエネルギーフィールド内に入れと叫ぶ

 

「大尉ッ! ゲッターの救出を忘れるな! 主砲、副砲照準合わせ!」

 

今この場でゲッターを失う訳には行かない。ハガネの主砲と副砲によるメカザウルスへの攻撃が行われる、だがそれは発射し続けられるミサイルに妨害され本体まで届かない

 

「答えろ巴武蔵ッ! 何故そこまで弱くなった!! 答えろッ! それでも我が怨敵かッ! こんな弱い貴様に我らは滅ぼされかけたというのかッ!!!」

 

バットの叫びがゲッターとハガネにまで響く、怒りに満ちた叫び、だがその声には悲壮さも混じっていた

 

「少佐! ゲッターの救出は無理かッ!」

 

このままではゲッターがやられる。それだけは防がなければならない。PT隊に救助は無理かとダイテツが叫ぶ、だがその返答はエネルギー不足により、そこまで向かえないという非情な返答だった。だがそれも無理は無い、連戦が続きまともに補給も修理も施されず戦ったPTとグルンガストはモーターは既に限界を超えていた。ハガネのフィールド内に退避こそ出来たが、再び動く事は出来ない

 

「くっ!」

 

黒いガーリオンが救助に向かおうとする。だがミサイルの雨に押され前に進む事が出来ないでいる……

 

「エネルギーフィールドを艦首前方に限定展開ッ! ハガネを微速前進ッ! 突撃する!」

 

「艦長!? 本気ですか!」

 

「本気だッ! ここでゲッターを失うわけにはいかんッ!!」

 

ダイテツの気迫にテツヤが本気だと悟り、命令を復唱しようとした時。ハガネの格納庫が開く

 

「発進準備だと!? リオ誰だ!」

 

「マサキ君ですッ!」

 

ブリッジが確認している間にサイバスターがハガネから飛び出し、即座に通信を繋げて来る。

 

「話は聞いてたぜ! 出遅れた分俺が助ける! 行くぜッ!!」

 

サイバスターが粒子を撒き散らしながらメカザウルスへと向かう、だがその途中でサイバスターは人型から鳥型へと変形し、自らミサイルに向かっていく事で最小限の動きで回避して行き、メカザウルスの頭上に陣取る。

 

「行くぜえッ! サイフラァァッシュッ!!!」

 

サイバスターが変形したサイバードから放たれた閃光がメカザウルスではなく、その頭上にいるバット将軍に向かって降り注ぐ

 

「ぐうっ! ちょこざいなッ!「ゲッタアアア……ビィィィッムッ!!!!」ぬうおおおおおッ!?」

 

バットの視線が自分からずれた瞬間。今までぐったりとしていたゲッター1のカメラアイに光が灯り、腹部から凄まじい威力のゲッタービームが放たれる。直撃を受けた事で、メカザウルスの巨体が揺らぎゲッター1が地響きと共に地面に落下する

 

「ちいっ! 余計な横槍が入ったわッ! 巴武蔵ッ! 再び合間見える時を楽しみにしているぞッ!!! さらばだッ!!!」

 

バットがマントを振り上げると4つ首のメカザウルスの首2本が変形し翼となる。そしてハガネよりも遥かに大きい巨体が天高く舞い上がり、生き残っていたメカザウルスもまたバドと合体し天空へと姿を消すのだった……

 

 

 

 

メカザウルスの残した爪痕と破壊された残骸。それが今までの戦いが夢でも、幻でもなく現実だと訴えていた。ヴァルシオンの背後にガーリオンとリオン達が移動する、それは共闘は終わりだと言う証だった。ヴァルシオンは倒れているゲッター1を抱え上げ、ハガネのPT隊の前に横にし、地響きを立てながらガーリオンの前に立つと再びオープンチャンネルで言葉を投げかける。

 

「見ただろうハガネ、そして連邦の兵士よ。これが人類を滅ぼさんとする外敵だ」

 

炎が上がり、抉られた地面。そして鮮血に濡れた大地にヴァルシオンが両手を向ける、その仕草に思わず目が動き荒れ果てた大地に視線が向く。無人島だから被害は最小だったが、これが街ならばと考え背筋が凍る物を感じた者が何人いただろうか?

 

「政府や連邦の一部の上官は南極で異星人に降伏することを選び、今も尚自らだけが生き残る事を計画している。地球を捨て、そこに住まう人類を見捨て己らだけが生き残るを事を考えている。そんなことを私は断じて認めはしないッ! その為に我らディバイン・クルセイダーズは立ち上がったのだ。人類をそしてこの美しい地球を守る為に」

 

その言葉には力があった。そして真実を語っているという説得力もあった……

 

「だがお前は戦争と言う道を選んだんだろうッ! 何を言っても説得力は無いぜッ!」

 

一番参戦が遅かったマサキがビアンにそう怒鳴る。だがビアンはその怒声に怒る事は無く、悲しげな声で言葉を続けた

 

「私は何度も何度も政府と軍の上層部に危機を訴えたが、私の言葉は届く事は無かった。ならば力で思いを……平和を願う意志を貫く道しかなかった! 私とて戦争など本意では無い! だが我らには時間が無いのだッ! 強大な敵に立ち向かう為には武力で地球を征服するしか道は無かったのだッ!!! 少しでも被害を小さくするにはこの道しかなかったのだッ!」

 

メカザウルスと言う脅威……それは異星人よりも明確な敵としてハガネのクルー全員に焼きついた

 

「ハガネ……いや、ダイテツ・ミナセ。そしてハガネのクルー達よ。貴君らの賢明な判断を願う。これだけ話しても尚私が間違っていると言うのならば私の前に立つが良い」

 

ビアンは己の行動が間違いであると認め、そしてその上でその道を貫こうとしていた。地球を、そして地球に住む人々を守る為に……

 

「だがもし、私に協力するというのならば私は喜んで君達を迎え入れよう。では失礼する、再び合間見えた時。君達の答えを聞こう」

 

ガーリオンとリオンを伴ってアイドネウス島へと飛び去っていくヴァルシオンをダイテツ達は見送る事しか出来なかった。

 

「……各員ハガネへと帰還せよ、ゲッターロボはハガネが着水後回収し、本艦は応急処置を施し、この海域から離脱する」

 

疲れた声でダイテツはそう命令を下すのがやっとなのだった……

 

 

 

第17話 武蔵の真実へと続く

 

 




次回は武蔵の話を書いて行こうと思います。メカザウルスも出しましたから、もう民間人と言うわけにもいかないですしね。ここら辺からオリジナルの要素を加えていこうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。