進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第38話 進化の光を求める者 その3

第38話 進化の光を求める者 その3

 

ヒリュウ改のメインモニターに映し出された機体を見て、ショーンは口髭を摩りながら、ううーむと唸った。

 

「化け物達に続いて今度はドラゴンとゲシュペンスト・タイプSですか……なんともB級映画染みてきましたなあ」

 

「副長。そんなことを言っている場合ではありませんよ、ユン。あのドラゴンらしき特機からゲッター線反応はありますか?」

 

ドラゴンとゲシュペンスト。エアロゲイターが運用していた機体であり、それが揃って出現したと言う事にレフィーナは嫌でも警戒心を上げざるを得なかった。もしも、もしもエアロゲイターが復活していて、ワンオフで強力なゲッターロボG、そしてゲシュペンスト・タイプSを作成していたらと言う可能性は0ではないからだ。偽者と本物を見極めるポイントは1つだけ――ゲッター線反応の有無だ。ユンにゲッター線反応はあるか? と問いかけるとユンは焦った様子で振り返った。

 

「げっ、ゲッター線レーダーが壊れました……」

 

「「は?」」

 

ユンからの予想外の返答に思わずレフィーナとショーンが間抜けな声を出してしまった。

 

「待ってくださいユン伍長。ゲッター線レーダーが壊れたというのは振り切ったと言う事ですか?」

 

「ざ、暫定ですがクロガネ改のゲッター線レベルの約10倍を確認後、レーダーが沈黙しました」

 

クロガネ改のゲッター線反応の10倍の数値と聞いてレフィーナとショーンは眉を顰めた。だがエアロゲイターにゲッター炉心を複製する技術が無いのはL5戦役時代に判っている。レーダーが壊れるほどのゲッター線反応が感知された段階でエアロゲイターの機体ではないと言う事が判明しただけでも、僅かな安心感があった。

 

「後は味方かどうかと……武蔵さんかどうかですね」

 

「ええ、そこだけはハッキリさせておかないといけませんね」

 

明らかに新型のゲッターロボ。それの搭乗者が何者なのか? 行方不明の武蔵なのか、それとも武蔵と同じく旧西暦から新西暦に現れた使者なのか……それを見極める必要があるとレフィーナとショーンは目を細め、新型ドラゴンに目を向けた。ペルゼイン・リヒカイトが出現した段階で武蔵とカーウァイはストーンヘンジの周辺にいた。しかし合流しなかったのには理由があった、アインストと名乗ったアルフィミィの一言――その一言で失われていたあちら側での世界の記憶が蘇っていたのだ。

 

「ぐっくうう……頭いてぇ……カーウァイさんは大丈夫ですか?」

 

『……なんとかな、気分は最悪だが色々と思い出したぞ』

 

「そうですね。キョウスケさんをおかしくしたのがアインストだったとか、あのクラゲみたいな化けもんの事を思い出しましたよ」

 

『肝心のシャドウミラーの事は思い出せていないがな』

 

肝心のシャドウミラーの記憶は今だ失われたままだが、アインストの事を思い出しただけでも武蔵とカーウァイにとっては意味のある事だった。アインストの言葉を聞けばイングラムも何かを思い出すかもしれない。そうなれば、忘れている何かを連鎖的に思い出す可能性はあるのだ。

 

「っなんだ、ゲッター炉心のパワーがッ!?」

 

『こっちもだ。急に炉心のパワーが上がり始めただと!? 何がどうなっているッ!?』

 

突如ゲッターD2とゲシュペンスト・タイプSの炉心の出力が上がる。メーターを完全に振り切り、正常な数値すら読む事が出来ないほどの出力の上昇に続き、ゲッターD2とゲシュペンスト・タイプSの炉心の上昇に導かれるようにストーンヘンジからゲッター線の柱が出現した。

 

『なにか不味い! 行くぞッ!』

 

「了解ッ!」

 

直感的にあのゲッター線の光の柱が悪い物だと悟り、カーウァイと武蔵がストーンヘンジに急行した時そこには、この時代にはいないはずのインベーダー、そしてインベーダーに寄生されたメタルビースト・ゲシュペンストの姿があった。

 

「あぶねえッ!!!」

 

そしてどことなくR-1に似ている機体にメタルビースト・ゲシュペンストがその牙を突きたてようとしているのを見た武蔵は反射的にダブルトマホークをメタルビースト・ゲシュペンストに向かって投げつけたのだった……。

 

 

 

 

メタルビースト・ゲシュペンストに喰われ掛けたリュウセイを助けた真紅の特機――DC戦争後期、そしてL5戦役で現れたゲッターロボGに酷似した新しいゲッターロボとゲシュペンストの出現にリュウセイ達は混乱していた。

 

『ドラゴンッ!? それにゲシュペンストと一緒ってやっぱりエアロゲイターの機体なのかッ!?』

 

『落ち着きなさいタスクッ! もしエアロゲイターの機体ならリュウセイを助ける理由が無いわッ!』

 

『ですが、通信には一切反応を見せないところを見ると容易に味方だと思うのは危険では?』

 

ヒリュウ改、そしてリュウセイ達からの通信にも反応を見せないドラゴンに敵なのか、味方なのか? それの判断がどうしても付けられなかった。

 

『進化の使徒……やっと見つけましたのッ!!』

 

リュウセイ達よりも先に混乱から回復したアルフィミィがゲッターD2に向かってペルゼイン・リヒカイトを走らせる。そしてそれに続くようにインベーダー、メタルビースト・ゲシュペンスト、アインストが咆哮を上げゲッターD2とゲシュペンスト・タイプSに殺到する。目の前にいるリュウセイ達に目もくれず、ストーンヘンジから出現した全ての異形が一直線にゲッターD2に向かう。

 

『なっ!? このッ!!!』

 

『どうなっているのッ!』

 

自分達に何の興味も反応を見せず、一直線に宇宙を走る異形達に向かってオクスタンランチャーのBモードとグラビトンライフルの重力波が放たれる。だが異形達は背中に攻撃を受けても振り返る事無く、一直線にゲッターに向かい続ける。

 

『どうなっているんだよ! あのアルフィミィって奴が言ってた進化の使徒って言うのと何か関係があるのかよッ!!』

 

『判らんッ! だがあれだけの数だ。ゲッターロボとゲシュペンストだけでは対処出来ない筈だ。援護に向かうぞッ!』

 

ギリアムがそう命令した瞬間。ゲッターD2の全身を翡翠色の輝き――ゲッター線が包み込みその姿を消した。

 

『ギャアッ!?』

 

『シャアアアアアッ!?』

 

『!?!?』

 

『ッ!!!!?』

 

リュウセイ達を苦しめていた化け物達の大半が翡翠色の光に飲み込まれその姿を消した。一瞬、再生能力も、防御力もすべてが無意味と言わんばかりに、翡翠色の光が通過した瞬間に化け物達が爆発し霧散する。

 

『な、何が起きたんだッ!?』

 

『ぜ、全然見えなかった……』

 

光の中から姿を見せたゲッターD2の腕の側面のチェーンソー。それが高速回転していたのと、バラバラに切り刻まれて爆発四散したメタルビースト・ゲシュペンストを見て、擦れ違い様の一閃で全てを引き裂いたというのがやっとリュウセイ達に判った。

 

『龍神を捕えるんですの』

 

アルフィミィの指示でヴィレッタとギリアムを追い回していた鬼面が姿を隠しながらゲッターD2に襲いかかる。左右から突如現れた鬼面がその手に持った異形の日本刀をゲッターD2に突き刺そうとした瞬間。ゲッターD2は滑るように後ろに移動し、鬼面の後頭部を鷲づかみにして鬼面同士の顔面をぶつけ合わせる。

 

『『!?!?』』

 

完全な奇襲だったのに見向きもされず、味方と同時打ちさせられた左の鬼面が怒りに身体を震わせ、大上段から日本刀を振り下ろした。だがゲッターD2は右腕で無造作に日本刀を受け止め、力を込めると中程からへし折り。折れた日本刀の切っ先を掴んで左の鬼面の顔面に突き刺した。

 

『ッギャアアアアアアアアアーーーーーッ!!!!』

 

宇宙空間に響く異形の叫び声。ガラスを擦り合わせたかのような、精神を蝕む叫び声にリュウセイ達は思わず目を背けた。

 

『ッ! 貰ったですの!』

 

ゲッターD2が鬼面を相手にしているをしている間に背後に回りこんだペルゼイン・リヒカイトが日本刀を突き出した瞬間。ゲッターD2の姿が爆ぜる。DC戦争時、そしてL5戦役で何度も見た緊急分離――「オープンゲット」だった。3色の戦闘機が高速で飛び交い、ペルゼイン・リヒカイトの一撃をかわし急上昇する。カチーナ達の目にはしっかりと見えていた、紅く輝く戦闘機の姿を初めて見たのではない。1度カチーナ達はその姿を確かに見ていたのだ。

 

『やっぱりあの時のッ!』

 

行方不明部隊に襲われた時に支援し、ゲシュペンスト・タイプSと一瞬の内に消え去った戦闘機――それがあのゲッターロボのゲットマシンであったというのがカチーナ達の目の前で明らかになった。

 

『っきゃあああッ!?』

 

ペルゼイン・リヒカイトの頭上を取ったゲッターD2の腹部から放たれたゲッタービームがペルゼイン・リヒカイトを呑み込み、ゲッタービームに焼かれたアルフィミィの悲鳴が周囲に木霊する。その声を聞いて、一瞬ゲッターD2が動きを止めた。その動きには躊躇っているようにも、このまま攻撃していいのか悩んでいるようにも見えた。

 

『『『シャアアアーーッ!!!』』』

 

『いかんッ! 後……ッ』

 

その隙をインベーダー達が見逃す訳が無く、一斉に背後から飛び掛るのを見てギリアムが警告を発しかけたが、その言葉は最後まで発せられる事は無かった。伸びた触手を前を向いたまま左手で掴んだゲッターD2。その全身から溢れる殺気と怒気――その気配は歴戦の戦士であるギリアムでさえも言葉を失うほどの濃密な殺気だった。

 

『ギロリッ!!』

 

そしてカメラアイの中心に突如浮かび上がった瞳がインベーダーを睨みつけるのを見て、ギリアム達は自分達に向けられていないと判っていても死を感じ、ゲッターD2の頭部が一瞬光り輝いたと思った瞬間。ゲッタービームの翡翠色が宇宙を眩く染め上げた。

 

『『『キシャアアアーーーッ!!!』』』

 

『『『!?!?』』』

 

全身をボロボロにさせながら消滅していくインベーダーとアインスト達。数が多かろうが何の利点もない、ただ等しくゲッターロボによって蹂躙される。ゲッターロボとインベーダー、そしてアインストには隔絶した戦闘能力の差があった。

 

『ッ!?』

 

『ギャアアッ!?』

 

圧倒的な強さを見せたのはゲッターロボだけではない、ゲシュペンスト・タイプSもだった。背部から射出された大型のスラッシュリッパーがアインスト・クノッヘンを胴体から両断し、戻って来た刃が背後からインベーダーをXの字に引き裂きその身体を消滅させる。

 

『シャ……グギャアッ!?』

 

隕石に擬態していたインベーダーがゲシュペンスト・タイプSの背後から飛び掛るが、振り返りもせず、腰にマウントしていた異様に銃身の短いビームライフルを手に取りインベーダーの貫くと同時に反転し銃身から伸ばした翡翠色の刃で両断する。流れるようなその動き、レーダーにも感知されないインベーダーを一瞬で補足するその空間認識能力――機体性能だけではない、カチーナ達とは隔絶した操縦技術の差がそこにはあった。

 

『早い……ッ! 私達とは操縦技術が違いすぎるッ』

 

『……これ、マジでカーウァイ大佐とか言わないよな?』

 

自分達が完全に蚊帳の外になっているのは判っていた。だがそれは脅威度の違いと考えれば当然の事だった、アインストに苦戦し、インベーダーの速度には完全に対応出来ていなかった。だがゲシュペンスト・タイプSとゲッターロボはアインストもインベーダーも一瞬で撃破し、撃墜せしめている。

 

『あたし達は敵にもならねえってかッ! ふざけんなぁッ!』

 

『中尉ッ! 止めて下さいッ!』

 

カチーナが自分達など眼中にないと言わんばかりのインベーダーとアインストに怒りを露にし、攻撃を仕掛けようとするがそれはラッセルによって制された。

 

『止めるなッ! また見ているだけかッ! あたしはそんなのはごめんだぜッ!!』

 

『……判ってますッ! でも、それでもッ!! 今は動いたら駄目ですッ!』

 

L5戦役の最終局面――カチーナ達はボロボロの状態でメテオ3との戦いに挑み、そして自爆したゲッターロボを見ている事しか出来なかった。情けなかった、そして武蔵を、イングラムが死ぬのをただ見ていることしか出来なかった。そんな自分が嫌でカチーナは己をまた1から鍛え上げた、今度は見ているだけではない。最後までちゃんと一緒に戦える力をつけたはずなのに、今も見ていることしか出来ない。己の力の無さを恥じ、見ているだけじゃない戦えるんだとそれを証明しようとするカチーナをラッセルが必死に止める。

 

『今は……耐えてください、中尉ッ!』

 

歯を噛み締める音が接触通信でコックピットに響いた。悔しいのは、力が無いと悔いているのはカチーナだけではない。ラッセル達だって悔しい思いをしたのは同じだ、だから歯が砕けかけるほどに噛み締めたラッセルの言葉にカチーナは動きを止めた。止めざるを得なかった……悔しいのは、悲しんだのはカチーナだけではないのだ。この場にいるゲッターとゲシュペンストの戦いを見ている事しか出来ない全ての者が己の無力さを噛み締めていた。

 

『強い……なんて強さなの』

 

『応援どころじゃない、俺達では足手纏いにしかならないじゃないか……』

 

強さの桁が違うと言うのをギリアム達は肌で感じていた。今の動きを見ることが出来ず、そして自分達を歯牙にもかけない異形達。ギリアム達はこの場にこそいたが、既にもう戦闘に参加する資格は無く、ただの傍観者と化しているのだった……。

 

 

 

 

 

 

目の前を交錯する翡翠と真紅の閃光をリュウセイは見ている事しか出来なかった。L5戦役から力をつけた、操縦技術も格段に上がった。L5戦役の時とは肉体も精神も格段に成長したと慢心している訳ではないが、己の成長を実感していた。それでも、今リュウセイには何も出来なかった。あの時と同じく……ただ見ている事しか出来なかったのだ。

 

(これでもまだ足りないのかよッ!?)

 

割り込む事も、応援することも出来ない――圧倒的な力の差。どれだけ鍛えても、どれだけ技術を磨いても決して届かない、隔絶した世界でゲッターロボは、武蔵は戦っていたのだ。

 

(違う、違うッ!!! 俺は……俺は――もう後悔しないってそう決めたんだッ!)

 

何度も己の無力さに泣いた、武蔵がイングラムが生きているとそう信じていてもそれでも涙は流れた。

 

もっと強くなりたいと、後悔したくないと心から思った。

 

ただ壊すだけの力ではない守れるだけの、誰かを救える力が欲しいと心から願っていた。

 

『捕まえましたの……』

 

「ッ!」

 

砕かれた鬼面が4方向からゲッターを押さえ込んでいる。凄まじい力で振りほどこうとしているが、両手、両足に1体ずつ、そして鬼面から伸びた蔦が全身に巻きついていた。ゲッターが力をこめれば蔦がちぎれ、鬼面も亀裂が走る。ゲッターの力から考えれば、鬼面の妨害なんて1秒、いや2秒にも満たない微々たる時間稼ぎ――ゲッターの力を考えればその2秒という時間は凄まじく価値のある物だった。

 

『少しだけで良いんですの……少しだけ、動きが止まればッ!!』

 

ペルゼイン・リヒカイトの腕がゲッターに伸びるのを見た。ゲッターの力を求めているアインスト――それがゲッターに触れれば何が起きるのか? 間違いなく禄でもないことになるというのは明らかだった。

 

『思いとおりにはさせないんだからッ!!』

 

『やらせんッ!!』

 

『リュウセイ、何をしているッ! アルフィミィを止めるんだッ!』

 

オクスタンランチャー、メガ・バスターキャノン、グラビトンライフルの攻撃を受けてもゲッターに手を伸ばし続けるペルゼイン・リヒカイト――その光景がリュウセイにはスローモーションに見えていた。

 

「俺は見ているだけじゃねえッ!!!! 今度は、今度はッ!!」

 

後悔しない力を、最後まで一緒に戦えるだけの力を――それをリュウセイは欲した。目の前で仲間が死ぬ光景も、置いて行かれるのも、2度とあんな思いはしたくないと心から思った。

 

「今度は俺が助けるんだッ!!」

 

リュウセイはそう叫ぶと同時にアルブレードを走らせ、ペルゼイン・リヒカイトの背中にブラスト・トンファーを振るう。それはゲッターが鬼面を砕き、ペルゼイン・リヒカイトの腕がゲッターの胸部に触れる瞬間だった。

 

「うおああああああああああッ!!!」

 

『そんな攻撃効かないですのッ!』

 

リュウセイの渾身の力が込められた一撃だったが、それは確かにアルフィミィの言う通り、通常ならばペルゼイン・リヒカイトの強固な装甲を貫くことが出来なかっただろう。だがリュウセイの咆哮と共に振るわれたブラスト・トンファーによる一閃――本来エネルギーバンカーを打ち込む筈のその一撃から放たれたのは高密度に圧縮された念動力の刃だった。

 

『うううッ!? な、なんでですの?』

 

アルフィミィの困惑した声が響くと同時に念動力の刃はペルゼイン・リヒカイトの装甲を貫き、ゲッターの手前でその動きを封じていた。

 

『あ……ああああああーーーッ』

 

そして動きの止まったペルゼイン・リヒカイト目掛け、ゲッターD2の腹部から放たれたゲッタービームが放たれペルゼイン・リヒカイトの姿はゲッタービームの光の中へと消えた。

 

「はぁ……はぁ……い、今のは……どうして?」

 

アルブレードにはT-LINKシステムが搭載されていない。それなのに、今ブラスト・トンファーから放たれた刃は紛れも無く念動力による一撃だった。

 

『う、うう……やっぱり欲張ったのが駄目だったですの……』

 

全身から火花を散らすペルゼイン・リヒカイトが姿を現すが、その姿に覇気は無く、これ以上戦えないと言うのは誰の目から見ても明らかだった。

 

【うう……キョウ……スケ……】

 

「!!」

 

【キョウスケ、彼に……彼に会いに行きますの……最初からそうしていれば、こんなに痛い思いをしないで済んだのに……】

 

「な、何で 貴女がキョウスケの事をッ!?」

 

苦しそうな声でエクセレンの脳裏に響いたアルフィミィの口から告げられたキョウスケの名にエクセレンは声を上げる。

 

『エクセレン、アルフィミィはキョウスケの名を言ったのか?』

 

『おい、何を慌ててやがるんだ、キョウスケに何かするって言ったのかッ!?』

 

「え、皆には聞こえてない……の?」

 

しかしアルフィミィの声はエクセレンにしか聞こえておらず、動きの鈍いペルゼイン・リヒカイトを鹵獲しようとしていたカチーナ達の動きが一瞬止まった。その一瞬の隙にボロボロだったペルゼイン・リヒカイトの姿はほんの少しだが回復する。

 

【私に無い物…… 私が……私である為に……では……また会いましょうですの】

 

「待ってッ!!」

 

アルフィミィはそう言い残すとペルゼイン・リヒカイトを反転させ、凄まじい勢いでこの場から離脱して行った。

 

『逃げやがったかッ!  追うぞッ!!』

 

『あの速度では無理です。それにまだアンノウンは残っていますッ!』

 

アインストは消えたが、全身に黄色い目玉が浮かんでいる異形が残っているとレオナに告げられ、カチーナは舌打ちと共にその動きを止める。

 

『あの化け物は一体……アルフィミィとは関係がないのでしょうか?』

 

『化けもんなら化けもんらしく、襲ってくればいいだろッ!!』

 

タスクがそう叫ぶとインベーダー達は一斉に反転し、アルフィミィとは別の方角に向かって逃走を始める。

 

『逃げたッ!?』

 

『逃げるというだけの知性があると言うことかッ!?』

 

知性も何も無い、食欲だけの化け物に思われたが逃げると言う行動を見せた。それは今まで攻撃一辺倒だった化け物達の始めての知性ある行動に見えた。そしてゲッターとゲシュペンストは化け物が逃げた方角に姿を消す、通信を繋げる間もその正体を尋ねる間もなかった。

 

『あの化け物を追いかけていった……という事は、あのゲッターとゲシュペンストはあの化け物を追いかけてこの場に現れた?』

 

『……でもよ、あのアインスト・アルフィミィだっけ? あいつらとあの化け物は化け物同士で戦ってたぜ?』

 

アインストとインベーダーが争い、そしてそこにゲッターとゲシュペンストが現れた。

 

『全てはストーンヘンジから放たれたゲッター線から始まった』

 

『ええ。なんにせよ全員ヒリュウ改へ帰還しましょう、ここで話し合っても何も始まらない。ヒリュウ改の分析データを基に話し合いましょう』

 

ストーンヘンジ、そしてそこから現れたアインストとインベーダー。そしてその両者に狙われていたゲッターロボとゲシュペンスト――与えられた余りにも多すぎる情報。それを1度整理する為にリュウセイ達はヒリュウ改へと帰還して行くのだった……。

 

『ピピピピ……』

 

ストーンヘンジの残骸に張り付くようにして隠れていたガロイカがどこかへと帰還していくのに最後まで気付く事無くヒリュウ改へと帰還してしまうのだった……。

 

 

 

 

マオ社へ向かう道中でストーンヘンジから現れたアインストとインベーダーの簡易分析結果がブリーフィングルームで告げられていた。

 

「……調査の結果、 ストーンサークルを形成していた岩石に異常は無かったそうです。強いて言えば、ゲッタービームの直撃によってゲッター線反応が検知されたくらいだそうです」

 

「馬鹿言うな。 あんな化け物共が出てきて、何もねえってのか?」

 

「重力反応だけではなく、可能な限りの検査結果を取った上で何も無かったって事か?」

 

「いやいや、マジでないって、絶対あのストーンヘンジが原因だって、もっかい調べた方が良いって」

 

アインストとインベーダーが出現したストーンヘンジ――そこに何かあると考えていた面子は多く、ラッセルの何も無かったと言う分析結果の報告に異を唱えた。

 

「調査班もそう思い、10回以上調べた結果です。恐らくですが……感知された重力反応とゲッター線反応によって、「どこか」と繋がったと言う事ではないでしょうか?」

 

「どこかってどこだよ? ええ?」

 

カチーナの凄んだ声にラッセルは苦笑しながら、手にしていた資料を机の上に並べる。

 

「L5戦役中の物ですが、ゲッター線の高反応の後、ゲッターロボが転移したというデータがあります」

 

「あ、そう言えばジュネーブでのゲッターロボGの時も合ったわね」

 

「それを言うとアイドネウス島でのビアン博士との戦いの時もだ」

 

なんどもリュウセイ達は見ていたのだ。ゲッター線が齎す不可思議な現象の数々を、それは空間を歪め絶対に間に合わないと思わせる状況で、シャイン王女を救い、そしてヴァルシオンに苦しめられていた時の逆転をも起した。

 

「ゲッター線は未知のエネルギーだ。何が起きても不思議ではない。不思議では無いが……」

 

「そう簡単には受け入れられないわね」

 

理解を超える現象を全てゲッター線だからという理由で片付けてしまえば、そこから進めなくなってしまう。確かに不可思議な現象を起しているゲッター線だが、すべてが全てゲッター線のせいにしてはいけないのだ。

 

「所でだ、あのゲシュペンストとゲッターロボの反応は?」

 

「すいません、振り切られてしまったそうです。方角はホワイトスターの方角という事は判っているんですが……それ以上は」

 

「ホワイトスターのほうで見失ったぁ? おい、本当にエアロゲイターじゃないんだろうな? あの化けもんとエアロゲイターが敵対してるからあたし達を助けたってオチじゃねえだろうな?」

 

「いや、違うぜ。中尉――ドラゴンもゲシュペンストも敵じゃねえ」

 

存在しないゲシュペンスト・タイプSとドラゴンの改良機――そのどちらも現在は地球には存在しない物だ。今回は助けられたが、実は敵の敵は味方ってオチじゃないだろうな? というカチーナにリュウセイが違うと異を唱えた。

 

「なんか確信でもあるのかよ?」

 

「いや、そういうのは無いんだけど……俺には判るんだ。あれは――きっと人が乗ってる、もしかすると武蔵かもしれない」

 

「いや、そりゃ気持ちは判るけどよ? リュウセイ。あんだけ馬鹿げた機動をしてた「人間の生命反応が感知されていますよ。タスク少尉」……マジか」

 

ゲッターもゲシュペンストも重力装備で対応出来る加速と機動ではなかった。だから無人機の可能性があると言い掛けたタスクだが、有人反応があったと聞いてげえっと呻いた。

 

「しかしそうなると何故通信に応じなかったのかというのが気になりますわね」

 

「それに関しては通信に出ている余裕が無かったのが理由だろう。あの化け物が相手では一瞬の油断でさえも命取りだ」

 

機体を喰らい、取り込み進化する異形の化け物――それと戦うには極度の集中が必要だとギリアムが呟いた。

 

「しかし、危険性くらいは教えてくれても良かったのでは?」

 

「それだけ必死だったんだろう。その証拠に化け物が逃げたと同時に離脱して行ったしな」

 

「……俺喰われると思った。すげえ飢えてるって感じた……めちゃくちゃ怖かった」

 

「今回は無機物だったが……恐らくあの化け物は人間すらも喰うのだろうな。だから応答にも反応せずに追いかけていったんだろう、あいつらが生きていたらそれこそ大規模なパンデミックになりかねないからな」

 

「コロニーにもぐりこまれたら、それこそ一巻の終わりね」

 

無機物に寄生し、化け物に作り変える異形、人間すらも喰らいその数を増やすのならば、コロニーに侵入されたら一巻の終わりだ、それこそバイオハザードになり、コロニーを破壊しなければ対処出来なくなる、いや、仮に破壊しても自己再生することを考えると、余計に被害が広がる可能性もある。そう考えるとそれを防ぐ為に追いかけて行ったと考えれば応答する余裕が無かったと容易に推測することが出来、ゲッターとゲシュペンストが味方である可能性は極めて高いと言えるだろう。

 

「それとあのアンノウンですが……アインストと呼称する事が決定しました」

 

「あのアインスト・アルフィミィって奴がそう名乗ってたな。 あたしは気になるんだがあいつ、人間なのか?」

 

アルフィミィはアインストと告げた、それがあのアンノウンの種族の名称である可能性は極めて高い。だがアルフィミィが人間であるかどうかには疑問が残っていた。

 

「私達の言葉を使っていたことから判断すると……その可能性は無きにしも非ずですが……隊長はどうお考えですか?」

 

「他の奴が骨に植物だぜ? 声だけ女の化け物だと思ってるぜ」

 

他の個体が化け物だからアルフィミィも化け物だと断言するカチーナ。確かに普通に考えればその通りなのだが、エクセレンには違うと言う確信があった。

 

「う~ん……中身はともかく、見た目は人間の女の子じゃないかしら?」

 

「俺もそう思うぜ。凄い小さい女の子だと思う」

 

声の感じからして幼い少女だとリュウセイとエクセレンが口を揃えて言うと、レオナが思い出したように頷いた。

 

「そういえば2人とも声が聞こえるって言ってましたわね。それと関係してるんですの?」

 

「確かにな、お前。なんか感じなかったのか?」

 

「あの赤いのが出てくる前に頭がズキンと来てからはハッキリと声が聞こえるようになったんだ。それにこう、誰かに見られてるって感じもしたんだ」

 

「私もそれを感じたわ。なんだったのかしらね? もしかして、アヤ大尉が良く言う念って奴かしら?」

 

「その可能性はゼロではないわね。ただ、念と仮定すると……」

 

「何故念動力者ではない、エクセレンにその声が聞こえたかが謎だ」

 

念動力者にだけ聞こえると仮定すればリュウセイだけではなく、レオナやタスクにも聞こえてなければおかしい。だがレオナとタスクにはその声が聞こえなかった。そうなると念動力は関係していないと考えるべきなのか、それともタスクとレオナがリュウセイのレベルに到達していないのが原因なのかと色々と考察をしているとブリーフィングルームにユンの艦内放送が響いた。

 

『各員、至急ブリッジへ集合。繰り返します、至急ブリッジへ集合してください』

 

ユンの切羽詰った集合通信にブリーフィングルームで話し合っていたギリアム達は急いでブリッジへと足を向けたのだった。

 

「な、何だって!?  テロリスト共に出し抜かれただぁッ!? あの百鬼帝国って奴のせいなのかッ!」

 

レフィーナから告げられたのはキルモール作戦で連邦軍の敗退が続いていると言う報告だった。ハガネが敗走した理由である、百鬼帝国の襲撃で敗走が続いているのか? と尋ねるとショーンは首を左右に振った。

 

「百鬼帝国は関係ありません。確かに百鬼帝国の姿を見て連邦軍の攻め手が緩まったのは事実ですが……ハガネの敗走で浮き足立ち、そこに広範囲に部隊を同時展開され、物量の差で押し込まれてしまったのです」

 

DC戦争、L5戦役での英雄であるハガネが轟沈寸前に追い込まれたと聞けば誰しもが浮き足立つ。そしてハガネを轟沈寸前に追い込んだ、百鬼帝国の襲撃があるかもしれないと恐怖する。そうなれば、動きは鈍り隙が生まれる。そこを一気に突きこまれ、劣勢に追い込まれてしまっていた。

 

「考えられる最悪の展開になってしまったな」

 

「ここから巻き返すのは厳しいわね、ユン。今の状況はどうなっているのかしら?」

 

ハガネがいれば大丈夫という安心感から、ハガネがいても駄目だったと変われば他の部隊の士気も下がる。そして士気が下がった所の電撃作戦――連邦軍という巨大になった組織だからこそ、効果的なカウンターパンチだった。

 

「現在テロリスト軍はニジェール地区の自治政府を管轄下に置き……現在はアルジェリア南端へ進出中だそうです」

 

想像以上に攻め込まれている事にギリアム達は顔を顰めた。だがそれと同時に余りにも手際が良すぎる事にも気づいた。

 

「今回の作戦――情報が漏れていたのではないか?」

 

「……レイカー司令もそれを危惧しておられました」

 

今回のキルモール作戦は広範囲に展開し、アースクレイドルを制圧するという旨の作戦だった。その中でハガネがどこに配属されているかも判らない筈なのにピンポイントでハガネに大打撃を与えた。それは何処にハガネが配置されるか判っていなければ打てない戦略だ。

 

「またDC戦争の時みたいに内通者がいるとギリアム少佐はお考えなのですか?」

 

「あくまで可能性の話ですが……ありえなくはないでしょう。敵の進路を考えれば、この作戦――連邦は大敗する」

 

ギリアムはそう断言し、ショーンもその意見に賛同した。

 

「恐らくですが……あの周辺の自治区は旧西暦時代の植民地政策の歴史の反動で……連邦政府樹立後も民族独立運動や部族抗争で内戦が続き、 連邦の干渉が上手く行っていません。それを利用し、地勢を味方につけたのかも知れませんな」

 

軍上層部にスパイがいたのか、それとも作戦の発令前に動いていた連邦軍を見た地元の反連邦勢力を味方につけたのかは不明だが……戦況は間違いなく連邦にとって不利な状況に回っている。

 

「しかし、反連邦勢力とは言え、主義主張は違うでしょうし、そう簡単に行くものではありません、副長とギリアム少佐の考えすぎでは……」

 

反連邦と言ってもそれぞれの集団の掲げる主義・主張は異なる。それらを纏め上げるのは不可能だとラッセルが言うが、ギリアムとショーンの眉間の皺は深く寄ったままだった。

 

「ここまで大規模侵攻に打って出たんだ。間違いなく、制圧した後の事も考えているだろう」

 

「恐らくテロリストとしていますが、敵勢力はDC残党と見て間違いないでしょう」

 

「そしてその残党の中には反連邦勢力に顔の効く人間がいる、彼らの目的は反連邦主義者を纏めあげ、地歩を固めてヨーロッパへ侵攻し……連邦大統領府があるパリを制圧する気なのかもしれない」

 

ギリアムの予想はあまりにも大規模な物だった、だが決して違うとも言い切れない。そうなると言う可能性が極めて高い物だった。

 

「ラングレーを制圧したロレンツォって言う大佐かしら?」

 

「ふむ、ロレンツォ大佐はコロニー側の反連邦勢力のリーダーとも言えますが……コロニーと地球では状況が違いますからなぁ。関与している可能性は高いですが……恐らくは違うでしょう」

 

コロニー統合軍に所属し、そしてDCでビアンの元で戦ったロレンツォ・モンテニャッコを旗頭に立てるには無理があるだろう。だが間違いなく地球での反連邦勢力のリーダー格をテロリスト達が有している可能性は高い。しかし、宇宙にいるヒリュウ改に出来る事は今はない、大破したハガネが戦況に復活することを願い。レイカーの指示に従って行動するしかない。

 

「レイカー司令からの指示でリュウセイ少尉達はマオ社で新型を受け取り次第、オクトパス小隊と共に地球に降下しハガネと合流して欲しいと通達がありました。これより本艦は最大戦速でマオ社へと向かいます」

 

全てが手遅れになる前に、戦うだけの戦力を揃えなくてはならない。解決するべき謎は多数残っているが、現在の状況では解決する術が無い以上それに拘っている時間は無く、少しでも早くハガネへと合流する為にヒリュウ改はマオ社に向かって進路を取るのだった……。

 

 

 

第39話 進化の光を求める者 その4へ続く

 

 

 




宇宙ルートは1回ここで終了! 次回は地上ルートの異形の呼び声を書いて行こうと思います。その後はオリジナルシナリオを1つ挟んで、戦うべき敵をオリジナル展開で書いて、ノイエDCと剣神現るを飛ばして星から来る物、第3の狂鳥と続き、ノイエDCで武蔵とハガネ、ヒリュウ組と合流という風に話を進めて行こうと思います。話を前後左右させているので、整合性に若干の不安を抱いておりますので、もしどこか間違っている部分などありましたらご指摘お願いします。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。



PS

スパロボDDにノワール3実装予告

待ってたぜ、この時をッ!溜めに溜めた3000ジェムをブッパする時が来た。天井までは引けるので、確実にノワール3のSSRは入手出来る算段ですが、ガチャという性質上複数出ることもあるでしょうし、何よりもノワールのゲッタービームの時はダブルダークネストマホークもピックアップされました、つまりノワール3の時はトマホーク・ビーム・ノワール3の必殺技と3種類のピックアップになると踏んでおります。

なので、天井まで引くまでに出たゲッターノワール関連のSSR1枚につき、1話の連日更新をしたいと思います。
おいおい、正気かよと思うかもしれませんが大丈夫です、安心してください。だって武蔵ですよ、今作の主人公のムサシのクローンですが、武蔵は武蔵ならばやるしかないでしょう?ゲッタービジョンからマッハスペシャルになる時が来たのです。(なお、その後は燃え尽きる可能性が特大です)

私は早朝5時から昼12時までの勤務なので6時間もあれば恐らく1話書ける計算です。ではノワール3実装時のガチャの結果は活動報告で触れるつもりなので、どうなるのか楽しみにしていてください。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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