進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第40話 進化の光を求める者 その5

第40話 進化の光を求める者 その5

 

ケルハム基地に出現したアインストと戦い初めてすぐキョウスケ達はある違和感に気付いた。

 

「弱い?」

 

中国で出現した個体よりも遥かに耐久力、そして攻撃力が低かったのだ。ゲシュペンスト・MK-Ⅲは確かに優秀な機体であるが、DC戦争、L5戦役の間ずっと強化され続けていたアルトアイゼンと比べると当然その馬力は劣る。更に言えば、換装パーツのリボルビングステークは本家の物よりも衝撃が軽く、取り回しが楽になっている分威力に劣るのだが、それでコアを簡単に粉砕出来た時に弱いと確信した。

 

「アサルト1から各機へ、現在出現しているアンノウンは陽動及び偵察の可能性が高い。弾薬、エネルギーの使いすぎに注意しろ」

 

中国での脅威を知っているから最初から全力だったが、明らかに弱い。この後に中国で戦った個体と同等の強さのアインストが現れる危険性を考え、弾薬などをセーブして戦えとキョウスケが指示を出している間にケイハム基地の砲撃型ゲシュペンスト・MK-Ⅲのレールガンがコアに直撃し消滅するアインストを見て、弱いと言う疑惑は確信に変わった。

 

『キョウスケの言う通りだな。余りにも弱すぎる』

 

『やはり中尉の言う通り偵察隊という事なのでしょうか?』

 

ライトニングステークやシシオウブレードを使わずとも、打撃や牽制の射撃で撃退出来る弱さの個体――これが人間ならば偵察、もしくは陽動と容易に判断がついた。だが今の目の前にいるのは人とは似つかない異形の集団だ。

 

『偵察か、陽動か、どっちにせよ言えるのはこいつらはその程度の戦略を考える程度の頭脳があるって事か』

 

『行動パターンなどを推測すると、私達をこの基地周辺から離脱させるつもりはないようです』

 

『一定の箇所に近づくと途端に攻撃が激しくなるか……ますますきな臭いな』

 

普通に戦っている分には問題ないのだが、基地の外れ、戦闘区域から離脱する素振りを見るとアインスト・グリートの高出力のビームが襲い掛かる、R-2とヒュッケバイン・MK-Ⅲが即座に反転したことで被害は少ないが、直撃すれば一撃で良くて行動不能、そうでなければ撃墜されるほどの威力が秘められていた。

 

『あの蔦見たいのは中国の個体と同程度の能力を持っているようだな』

 

クノッヘンの背後で密集しているグリート達の能力はクノッヘンと比べて非常に高い、コアを攻撃されても消滅しない可能性が極めて高い。

 

『私達をこの場に押し留めて何をするつもりなんでございましょうか?』

 

上空からファントムアローでグリート撃墜を試みたラミアだったが、ファントムアローを簡単に弾かれ顔を歪めながらそう呟いた。

 

「考えられるのは広範囲殲滅兵器が放たれるか、それとも本隊が到着するまでの時間稼ぎだが……アンザイ博士の言う通り、あいつらが百邪だと言うのならば……前回の様に龍王鬼が現れる可能性もゼロではない」

 

あの異形も、百鬼帝国も百邪に分類されるとアンザイ博士は言っていた。なんらかの方法で意思疎通が取れるのならば、自己再生するアインスト達は優秀な足止めと言えるだろう。

 

『中尉は百鬼帝国とあのアンノウンが協力体制にあるとお考えなのですか?』

 

「あくまで可能性の話だ。ボーンの弱さに攻め込んで孤立しないように気をつけろ、俺の勘だと本命が来る」

 

勘と表現したキョウスケ。だが実際はどこかから自分を見ている視線が強くなっているのを感じ、アインスト達が自分達をここに足止めしようとしていると言う事に確信を得ていた。

 

『ま、確かにこの流れだとそうなるか』

 

『一体何が出て来ると言うんでしょうね』

 

『大型の個体か、それとも百鬼獣か――どっちにせよ強敵には変わりはないだろう。各員、伏兵と本隊の両方に警戒し、陣形を組んで戦うことを意識し、ケルハム基地の防衛を最優先に考えろ!』

 

クノッヘン自身が戦えば、ある程度後退すると言う行動を繰り返している為。カイもキョウスケの言う孤立させる為の戦術を取っていると判断し、攻め込むのではなくケルハム基地の防衛を最優先にし、陣形を組んで対処しろと指示を飛ばしながら自身もケルハム基地へと後退する。

 

「追って来ない……か」

 

『やはり足止めか、化け物の癖に知恵が回る奴らだ』

 

目の前で後退しているのに追う気配も無く、ケルハム基地を囲うように再び動き出すアインスト達。その不気味とも取れる行動にキョウスケ達は背筋に冷たい汗が流れるのを感じるのだった……。

 

 

 

 

 

キョウスケ達がアインストの動きに不信感を抱きながらも戦闘を続けている頃。荒野の無人地帯でのR-SWORDとソウルゲインの戦いは一進一退という状態で周囲を破壊しながら、互いに高速で動き続けていた。

 

「ちぃッ! そう簡単には取らせてくれんかッ!」

 

『それはこっちの台詞だ』

 

ソウルゲインの全長が約40m、それに対してR-SWORDは平均的なPTの全長である約20m前後。機動兵器同士の戦いは基本的には大きいほうが有利である。搭載出来る動力や大型化されたモーターなどによって馬力があり、ソウルゲインは例外だが、更に巨大な分、機動力を犠牲にした装甲の厚さ等例を挙げれば切が無いが、簡単に言えば大きいほど固く、そして強いという点からPTと特機の戦いは基本的に特機が有利とされる。PTは小型な分立ち回りが速いが、特機の装甲を貫通する攻撃力が無いからだ。だが、R-SWORDはその基本を根底から覆していた。

 

「随分と徹底して右側を狙ってくれるじゃないか、イングラム」

 

あちら側でのゲシュペンスト・MK-Ⅲとの戦いで失った右側からの攻撃を徹底してくるイングラム。乗ってくるとは思っていないが、挑発するようにアクセルが問いかける。

 

『相手のウィークポイントを狙うのは戦いの定石。まさか卑怯などとは言うまいな?』

 

「はっ、当たり前だッ!!」

 

青龍鱗による薙ぎ払いで攻め込んでこようとしたR-SWORDの突込みを阻止すると同時に踏み込み、まだエネルギーの残滓が残っている左腕による掌打を打ち込むソウルゲイン。だがR-SWORDはその打撃に自ら突っ込むと同時に跳躍し、ソウルゲインの腕に1度着地し跳躍する。

 

「ぐうっ!? おのれ、ちょこまかとッ!」

 

背後を取りながら放たれたM-13ショットガンの一撃でたたらを踏んだアクセルがいらついた声で叫んだ。だがイングラムは終始冷静だった。

 

『そんな安い挑発には乗ってやらんぞ。アクセル』

 

怒りで冷静さを欠いた振りをして見せたが、イングラムが掛かる訳も無く一定の距離を保ち、クレバーに立ち回っている。だが、そのクレバーさがアクセルにも落ち着かせる余裕を与えていた。

 

(落ち着け、向こうだって突発的な戦闘だ。その証拠に応援が来る気配はない)

 

最初は偵察にイングラムが出ていて、後に武蔵やカーウァイが来る可能性を考えて速攻を仕掛けていたアクセルだったが、何時までも応援が来る気配が無いのに気付いた。

 

(恐らく単独行動中の突発的な遭遇だ。仮に偵察だったとしても30分を過ぎても応援が来ないのはおかしい……)

 

かなりの時間戦闘しているが、ここまで時間が過ぎても応援が来ないと言う事は武蔵もカーウァイも動けない、もしくは近くにいない。あるいは自分のように単独転移をしていて、休める場所を探していた――等々応援が来ない理由も幾つも考えられる。

 

(EG装甲は稼動している、時間を掛ければ俺の方が有利……いや、五分五分か)

 

ソウルゲインはEG装甲による自己修復機能がある。そして少量だがエネルギーを回復する機構も組みつけられており、継戦能力は特機とは思えないほどに高い。そういう面ではR-SWORDもゲッター炉心によるエネルギー回復能力を持つが、装甲の修復能力はない。例え片腕でも、焦って攻め込まず。冷静にヒット&アウェイで削れば、耐久力と攻撃力の差でR-SWORDは行動不能になる。アクセルはそう判断し、今までのように攻め込まず一転し、距離を取っての青龍鱗等での中距離での差し合いを選択した。

 

「ちっ、冷静になったか……」

 

構えを一転させて、ヒット&アウェイの構えを取ったソウルゲインを見て今度はイングラムが顔を歪めた。

 

(厄介な……)

 

突発的な遭遇戦で互いに浮き足立っている中では、どちらが冷静に立ち回れるかが勝敗を分ける。そういう面では先にイングラムが冷静になり、着実に攻撃を重ねていたが、ソウルゲインのEG装甲を前に与えたダメージは殆ど回復されてしまっている。

 

「ブラフももう通用しないな」

 

30分――これだけの時間が経てば通常ならば応援が来る時間だ。それが無いと言う事でアクセルはイングラムが単独行動、もしくは応援がすぐに来れない状況にあると判断したのだろう。そうなれば、自己再生能力を持つソウルゲインで遠距離で削っていればR-SWORDの方が先に限界を迎えるのは明らかだった。

 

「さて、どうした物か……」

 

右腕を失っているから攻撃力が落ちている訳ではない、むしろあちら側では使っていなかった足技を戦闘に組み込んでいるからか、間合いが非常に図りにくくなっている。浮き足立っている間に戦闘でのアドバンテージを稼ごうとしたが、そのせいで攻めあぐねその結果はイーブン……いや機体の性能の差で僅かにイングラムが不利な状況に追い込まれていた。

 

「……ちっ、業腹だが撤退せざるを得ないか」

 

ここでアクセル、そしてソウルゲインを沈めておきたかったイングラムだったが、アクセルが冷静になってしまっては圧倒的な己の不利を悟らざるを得なかった。

 

「……問題は撤退出来るかどうかだなッ!」

 

『青龍鱗ッ!!』

 

ソウルゲインの左腕から放たれるビームをかわし、G・ビームライフルを打ち込むが回し蹴りで迎撃し、返す刀で特殊弾頭弾を打ち込んでくる。

 

「ちっ、厄介になったものだな」

 

頭部のバルカンで迎撃した物の、発生した煙幕を利用し一瞬で切り込んできたソウルゲインの拳をG・ビームソードで受け止め、バルカンを乱射する――だがバルカンが放たれた段階で既にソウルゲインは射程距離から離脱していた。このままでは火力不足でジリ貧に追い込まれると気付き、イングラムはその顔を歪めながらどうやってこの場切り抜けるかを考え始める。その顔には普段の余裕の色は無く、焦りの色が浮かんでいた。

 

「いつまでも持たんな、これがな……」

 

しかしソウルゲイン、アクセルにも実の所余力はさほど残されていなかった。まともにメンテなど受けておらず、アクセルの独学での応急処置で騙し騙しやってきたソウルゲインには行き成りの全力戦闘に耐えるだけの余裕がなかった。EG装甲、エネルギー回復共に稼動しているが、このままでは腕部か脚部……どちらにせよ駆動系がやられて行動不能になるのは明らかだった。イングラムとアクセルは互いに互いを仕留めたいが、それと同時に離脱したいという状況に追い込まれていた。近距離ならばソウルゲイン、中距離ではR-SWORD――互いに得意な距離を奪い合う高度な陣取り戦へと2人の戦いは変わり始めているのだった……。

 

 

 

 

ケルハム基地での戦いは完全な消耗戦になりつつあった。簡単に撃墜出来るアインスト・クノッヘン、そしてその後で陣取っているアインスト・グリート。クノッヘンは幾ら倒しても、無限に出現し続け、その後のグリートはキョウスケ達に目もくれず、ケルハム基地のゲシュペンスト・MK-Ⅲとヒュッケバイン・MK-Ⅲに執拗な砲撃を続けていた。

 

『うあッ!?』

 

『ぐっ……あの後のやつだけ別格だッ』

 

防衛用の盾を装備していたが、何十回と放たれるアインスト・グラートのビーム砲撃についにシールドが融解し爆発する。

 

『お前達は下がれ、後は俺達がやるッ!』

 

『すいません、司令部まで下がります!』

 

これ以上は耐えられないと判断したカイによって撤退命令が出ると、ゲシュペンスト・MK-Ⅲとヒュッケバイン・MK-Ⅲが基地司令部まで後退する。

 

『動きが止まった……?』

 

『何を考えているの?』

 

ケルハム基地のゲシュペンスト・MK-Ⅲとヒュッケバイン・MK-Ⅲが後退すると、ビームを放つ姿勢だったアインスト・グリート達が一斉に攻撃を取り止めた。

 

『こりゃあれか? もしかして俺ら以外には興味はねえって事か?』

 

「ありえますね。あのアンノウンの攻撃はケルハム基地の部隊を排除しようとしていたのかもしれません」

 

あのまま攻撃を続けていればケルハム基地の機体は撃破されていただろう。事実今も射程距離にヒュッケバイン・MK-Ⅲ達の姿はある。それなのに攻撃する素振りがない、それにキョウスケ達が怪訝そうな顔をしているとケルハム基地の機体が一歩前に踏み出した。

 

『うおッ!?』

 

【【【!!!】】】

 

沈黙していたグリート達が一斉に攻撃姿勢に変わり、慌てて後退するケルハム基地の機体。するとグリート達は一斉に攻撃態勢を解除した。

 

『やっぱり邪魔者と受け取っているようだな』

 

『化け物の考えている事は判らんぜ。何がしたいんだよこいつらは』

 

あれだけ執拗に攻撃を繰り返していたのに、一定の距離に下がれば攻撃をやめる。だが前に出ればまた攻撃を繰り出す、その射程にキョウスケ達の機体があっても、奥のケルハム基地の機体だけを狙うという奇妙な行動に出るアインスト・グリート。その奇妙な行動を観察していた時、戦い始めてすぐキョウスケが感じていた視線が一気に強くなった。

 

【……見つけましたの……】

 

「ッ!?」

 

『うっ!!』

 

キョウスケの脳裏に幼い少女の声が響いたのと同時にブリットが苦しそうに呻き声を上げた。

 

『どうした、ブリットッ!?』

 

『く……来るッ! 皆気をつけろッ!』

 

ライの心配そうな声に返事を返す事無く、敵が来る気をつけろとブリットが叫んだ瞬間。アインスト・グリートの背後から無数のアインスト、そしてペルゼイン・リヒカイトがその禍々しい姿を現した。

 

『……敵の中に1機、データに無い人型のアンノウンを確認しちゃいましたです。データを送ります』

 

空中にいたアンジュルグからアインストの後に陣取っているペルゼイン・リヒカイトの姿が全員の機体に送られる。

 

(今の声……あいつか?)

 

脳裏に響いた声の主を探していたキョウスケはラミアから送られた映像を見て、ペルゼイン・リヒカイトが声の主かと当たりをつけ、その視線を鋭くさせた。

 

『おいおい、鬼……か?』

 

『いえ、百鬼獣とはパターンが違います……良く似てますが、百鬼獣ではありません』

 

鬼面で構成されたペルゼイン・リヒカイトを見て百鬼獣か? と呟くと機体のデータを分析していたラトゥーニから百鬼獣ではないと言う報告が入った。

 

『百鬼帝国ではないとしても安心は出来ないな』

 

『……ああ、あいつ只者ではない』

 

ペルゼイン・リヒカイトの放つ圧倒的な存在感――それはハガネを轟沈寸前に追い込み、キョウスケ達を全滅間際まで追いやった龍虎皇鬼に匹敵する物があり、あの時の絶望感を思い出し全員がその顔を引き攣らせる。

 

『あ、あの赤い奴……ッ! さっきのはあいつからです……ッ!』

 

その時だったブリットが自分が感じた気配の持ち主が、ペルゼイン・リヒカイトの中にいると叫んだのだ。

 

「気配……いや、『念』を察知したという事は、あの機体の中には人間が乗っていると言うことか?」

 

念動力者であるブリットがその気配を感じ取ったという事は念を発している人間がいると言うことだ。キョウスケがそう尋ねるとブリットは要領を得ない様子で口を開いた。

 

『え、ええ……多分ですけど……人が乗っていると思います』

 

『多分ってなんだよ。もっとこうハッキリ判らないのか? ブリット?』

 

『す、すいません。でも俺にも良く判らなくて……知っている人の気配に良く似ているような……でも違うような……すいません。俺じゃあ、感覚が全然掴めません。アヤ大尉か、リュウセイなら判ると思うんですけど……』

 

念動力者として劣っているブリットは奇妙な感覚を感じたが、それが人の物なのか、そうではないのかというのが判らなかった。

 

『別格と言う事だけ判ればいい。全員警戒を強めろ、何をしてくるか判らんぞ、全員戦闘……』

 

【……キョウ……スケ……】

 

アインスト・クノッヘン、グラートとは姿だけではない、その強さも別格と言う事だけ判ればいいとカイが戦闘に入れと指示を飛ばそうとした瞬間。幼い少女のキョウスケの名を呼ぶ声が全員の機体に響いた。

 

「何ッ!?」

 

自分の名を呼ぶ声にキョウスケが驚きの声を上げる。だがその少女の声が聞こえたのはキョウスケだけではなかった。

 

『キョウスケだとッ!?』

 

『自分にも聞こえました。一体、これは……』

 

『音声……記録出来ましたです』

 

「お前達にも 今の声が聞こえたのか?」

 

口々にキョウスケを呼ぶ声が聞こえたという声が聞こえる。何故今までは自分にだけ聞こえていた声がカイ達にも聞こえたのかとキョウスケが尋ねる。

 

『はい、確認出来たりしました。 隊長の名を……女の声で』

 

『ああ、間違いねえな。随分と若いが女の声だ、間違いない』

 

ラミアとイルムの女の声が聞こえたという言葉。それはキョウスケに聞こえていた声と合致しており、自分が聞こえている声とカイ達が聞こえている声が同じだというのが明らかになった。

 

『そう…… 貴方が……キョウスケ……会いたかったですの』

 

「何者だ? 何故、俺の名を知っている?」

 

嬉しくて仕方ないと言う様子の少女の声にキョウスケが固い声で何者だと問いただす。

 

『私の名はアルフィミィ。アインスト・アルフィミィ……と、申しますの』

 

「アインスト……アルフィミィだと? それがお前の――いやお前達の名前なのか……いや、それはどうでもいい。お前達は何者だ、何故俺達に攻撃を仕掛ける」

 

喜色に満ちた声で自己紹介をする声にキョウスケが更に問いただす。

 

『……キョウスケ……エクセレン……疑問……』

 

「エクセレンだとッ!?  お前は何を言っている……ッ!?」

 

だが聞こえて来たのはエクセレンと己の名前。何故自分だけではなく、エクセレンの名前も知っているとキョウスケが声を荒げた。だがアルフィミィは返答を返さず、ペルゼイン・リヒカイトに日本刀を抜かせた。それに付き従うように停止していたアンノウン――いやアインスト達が一斉に動き出した。

 

『貴方達の相手は……アインストクノッヘンが致しますの……キョウスケは私が相手をしますのよ?』

 

アルフィミィの愛らしさを残しつつも、隠し切れない敵意の込められた声が響き、アインスト達が一斉にブリット達へと襲い掛かり、キョウスケとブリット達は一瞬で分断されてしまった。

 

「お前は何者だ? 何故、俺やあいつの名を知っている?」

 

目の前に立ち塞がったペルゼイン・リヒカイト。その圧倒的な威圧感に背中に冷たい汗が流れるのを感じながら、キョウスケがそう問いかける。

 

『私、進化の使徒に苛められましたの、ですからキョウスケに慰めてもらおうと思いましたのよ?』

 

「……進化の使徒?」

 

アルフィミィから告げられた新たなキーワード。虐められたという事はここに出現する前に他の勢力と戦っていたのかと、与えられた僅かな情報からキョウスケは状況の推測を行なう。

 

(そう言われると、確かにダメージを負っている様に見えなくも無い)

 

両肩の鬼面には深い切り傷があり、殴られたのか凹んでいるように見えなくも無い。

 

『キョウスケも進化の使徒は知っている筈ですのよ?』

 

「何?」

 

『……そう確か……ゲッターロボ……と呼ばれている筈ですのよ?』

 

アルフィミィから告げられたゲッターロボの名にキョウスケが一瞬硬直した瞬間。ペルゼイン・リヒカイトが切り込んできて日本刀を振るう。それを咄嗟にリボルビングステークで受け止め、そのまま受け流し蹴りを叩き込んだが、ペルゼイン・リヒカイトはびくともせずゲシュペンスト・MKーⅢの方が後方に弾かれる。

 

「慰めて欲しいとか言っておきながら、俺を殺すつもりか?」

 

『……大丈夫ですの、殺してもちゃーんと生き返りますのよ? だから大丈夫ですのよ?』

 

悪意も敵意も無い、自分がやっている事に何の躊躇いも、罪悪感も無い――幼い少女の声だからこそ余計に不気味さをキョウスケは感じた。

 

(ちっ……長くは持たんぞ)

 

たった一撃受け流しただけでゲシュペンスト・MK-Ⅲのリボルビング・ステークには亀裂が入っている。キョウスケの見立てでは後1撃受け流せるかどうか程度の耐久性しかないだろう。

 

(アルトならば何とかなるが……ゲシュペンスト・MK-Ⅲでは……)

 

確かにゲシュペンスト・MK-Ⅲの性能は高い。だがキョウスケ用にカスタマイズされたアルトアイゼンと比べれれば、その性能は低いと言わざるを得なかった。

 

『大丈夫ですのよ? 優しく、優しく致しますの、だから痛いのは一瞬ですのよ?』

 

日本刀の切っ先がコックピットへと向けられると同時に、一直線に突きこんで来るペルゼイン・リヒカイト。

 

「ぬっぐうッ!?」

 

反射的に飛び退かせ回避したが、ペルゼイン・リヒカイトの刺突でゲシュペンスト・MK-Ⅲの肩部が切り飛ばされる。その衝撃と爆発にコックピットで顔を顰める。

 

『どうして避けますの? 大丈夫ですのよ? 痛いのは一瞬ですの』

 

悪意も敵意も無い、だが幼い子供が持つ特有の純粋な悪意――いや、傲慢とも取れる善意の押し付け。それがアルフィミィの持つ、幼さゆえの狂気だった。

 

『逃げないで欲しいですの、感覚が狂ってしまいますのよ?』

 

(くっ……これは不味いッ! 逃げ切れんッ!)

 

ぴったりと吸い付くように距離を詰め続け、日本刀を振るってくるぺルゼイン・リヒカイト。その正確無比の斬撃の嵐にゲシュペンスト・MK-Ⅲの装甲を次々と斬り飛ばされながら、キョウスケは必死にこの場をどうやって切り抜けるか策を考え、必死に頭を巡らせるが、どれほど考えてもこのままではそう遠くない内に追詰められるという結論にしか辿り着けず、逃げ切れない死神の魔の手が自分をしっかりと捕えている姿を幻視し、死神の鎌が自分の喉元に突きつけられていると感じるのだった……。

 

 

 

 

ペルゼイン・リヒカイトと単騎で対峙するキョウスケのゲシュペンスト・MK-Ⅲが見る見る間にボロボロにされていく。その姿を見てカイ達はキョウスケの救援に向かおうとするが、凄まじい勢いで向かって来続けるアインスト・クノッヘンの妨害にあい、完全に足止めを受けていた。

 

『くっ、このままじゃキョウスケがやばいぞッ!!』

 

『しかし、このアンノウン強くなっていてそう簡単に突破出来ませんッ!』

 

今まで容易に倒す事が出来ていたアインスト・クノッヘンではない、中国で出現した個体よりも更に強力なアインスト・クノッヘンの群れは非常に強い上に強固でゲシュペンスト・リバイブ(K)を駆るカイでさえも押し返されていた。

 

『ライ! ラミアッ! そこからキョウスケの支援を行えッ!』

 

カイの指示でR-2、そしてアンジュルグの放ったハイゾルランチャーとファントムフェニックスがペルゼイン・リヒカイトへと向かうが、クノッヘンの背中に蝙蝠状の翼が生え、飛び上がるとその身体を盾にしてハイゾルランチャーとファントムフェニックスからペルゼイン・リヒカイトを庇う。

 

『ッ! 最初から狙いはキョウスケ中尉だったのねッ!』

 

『くそ、最初から向こうの思う壺だって言うのかよッ!!』

 

焦れば焦るほどにアインスト・クノッヘンの攻撃を受け、劣勢に追い込まれる。完全な悪循環にカイ達は陥っていた、その光景を見て、ラミアは上空からの突破を試みたのだが……即座に動きを止めざるを得なかった。

 

「やはり最初から狙いは隊長か……」

 

アインスト・クノッヘン達が肋骨を一斉に飛ばした。流石のアンジュルグの機動力でも一面を覆い尽くす刃の群れを回避し切るのは不可能で動きを止めざるを得なかったのだ。

 

『ふふ、ダンスは楽しいですのね?』

 

『こんな物騒な踊りなんかあるものかッ!』

 

『そうなんですの? 踊りとはこういうものだと思っていましたのに』

 

ペルゼイン・リヒカイトの猛攻撃を紙一重で避けているゲシュペンスト・MK-Ⅲだが、その姿はボロボロで機体の各所からはオーバーヒートを示す黒煙が上がり始めていた。

 

(やはりアインストはベーオウルフに執着しているのか)

 

あちら側でのキョウスケの変異にアインストが関係している事はレモンから与えられている情報で把握していた。あちら側では既に寄生されていたが、こちら側ではこれから寄生されると言うことなのかとラミアは考えを巡らせる。

 

(ここでベーオウルフを処理するのが確実か)

 

あちら側のように化け物になられても困る。アインスト・クノッヘンの壁もあり届く可能性は低いが、攻撃が届けばキョウスケがアインストになる前に処理できるとファントムアローをつがえようとした時ラミアは始めて己に起きている異変に気付いた。

 

「手が……」

 

後ほんの少し操縦桿を動かすだけで良いのに、手が震えて動かなかった。

 

(こんな時に故障したと言うのかッ!)

 

『ラミアさん! 危ないッ!』

 

「っうあッ!?」

 

手が震えていると言う事に動揺したその一瞬。ラミアの中からアインストへの警戒が緩まってしまった。アインスト・クノッヘンの放った肋骨がアンジュルグに直撃し、真っ逆さまに降下する。

 

(私はどうなってしまったというんだ……レモン様達のお役に立てないのならば……もう私は壊れてしまった方が……)

 

言語障害だけではない、身体の回路のどこが故障したのだとラミアは感じた――ベーオウルフの危険性は知っている、それを排除するべき事がW-17とやるべき使命だったはずなのに、それすらも遂行出来ない。レモン達の役に立てないのならばこのまま墜落し完全に壊れてしまった方が良いのではないか? そう思った直後脳裏にレモンの言葉が過ぎった。

 

【自分で考えて自分で正しいと思う決断をしなさい】

 

「舞え! 紅蓮の不死鳥よッ!!!」

 

レモンの言葉が過ぎった直後震えていた手に力が戻った。墜落しながら放たれた一撃は地を這うようにアインスト・クノッヘンを潜り抜け、ゲシュペンスト・MK-Ⅲに向かって刀を振り下ろそうとしていたペルゼイン・リヒカイトの頭を貫いた。

 

『う、ううう……い、痛いですのッ』

 

まさかの攻撃にアルフィミィがたたらを踏んだその一瞬の隙にゲシュペンスト・MK-Ⅲはペルゼイン・リヒカイトから距離を取る事に成功していた。

 

『すまない、助かったぞラミア』

 

「い、いえそのご無事で何よりです」

 

『やるじゃねえかッ! まさか墜落する振りをするとは驚きだ』

 

『す、すいません。ラミアさんの計画の邪魔をしてしまいましたか』

 

『なんにせよだ。キョウスケがアンノウンから距離を取る事に成功したッ! このまま包囲網を突破してキョウスケと合流するぞッ!』

 

皆からの賞賛の声を聞きながらラミアは困惑していた。W-17としてはあそこでゲシュペンスト・MK-Ⅲを破壊するのが正解だった。だが「ラミア・ラヴレス」としてはキョウスケを救いたいと思ったのだ――それが神業とも言える絶技をラミアに使わせたのだ。

 

(レモン様、私がやった事は正しかったのでしょうか?)

 

自分で考えた正しい行動――それはシャドウミラーとしての構成員としては間違った行動だろう。だけど、何故かラミアには自分が正しいことをしたと言う確信があったのだった……。

 

 

 

 

ラミアの絶技によってキョウスケは一時窮地を脱した。だが、依然分断されている状況は続いており予断は許されない状況だ。

 

「副砲、対地ミサイル! 照準あわせッ! てぇッ!」

 

ハガネとケルハム基地の支援は続いている。だがアインスト・クノッヘンが想像以上に固く、支援は殆ど効果を持っていない状況だった。

 

(こんな時に主砲が使えないとは……)

 

龍虎皇鬼へと打ち込んだフルパワーの連装主砲は完全に砲身が焼きついており、今もまだ使用出来る段階では無い。もしも主砲が使えれば、支援の状況が変わっていたとダイテツが歯噛みしているとハガネのブリッジに警報が鳴り響いた。

 

「何事だッ!」

 

「きょ、巨大な熱源がケルハム基地に接近中!」

 

エイタの報告を聞いて脳裏を過ぎったのは百鬼獣の襲来だった。

 

「くっ、このタイミングで百鬼獣まで来るというのかッ!」

 

「落ち着け大尉ッ! 動揺しても何も始まらない、冷静に対処せよッ!」

 

テツヤに落ち着けと叫ぶダイテツだが、状況は最悪に等しい。無限に出現するアインスト・クノッヘンに加え、ペルゼイン・リヒカイトという指揮官機までいる……しかも分断までされているのだから戦況は悪化の一途を辿っている。

 

(このままではジリ貧で敗れる……)

 

ハガネはまともに飛行できず、連装主砲も使えない。ハガネのPT隊はボロボロで代替機で出撃している者も居る……この状況で百鬼獣までも出現すれば勝機はない。

 

「待ってください、識別信号ありッ! そんな、この識別信号はッ!」

 

絶望感に満ちていたエイタの声に覇気が戻り、その瞳にも何とかなるかもしれないと言う希望の光が宿った。

 

「識別は何だ! エイタッ! 報告は最後まで行なえッ!」

 

「は、はいッ! 識別信号アイアン3ッ! クロガネですッ!!」

 

「何ッ!? く、クロガネだとッ!?」

 

エイタの報告と共に雲を引き裂き漆黒のスペースノア級のクロガネがこの絶望的な状況に現れた。

 

『ゲッタァアア……ビィィイイイムッ!!!!!』

 

『『『!?!?』』』

 

クロガネに驚いた直後、上空から急降下してくる翡翠色の光の柱がアインスト・クノッヘンを呑み込み消滅させ、ケルハム基地の上空にゲッターロボVが滞空し、その後に続くように漆黒のヒュッケバイン・MK-Ⅲ、グルンガスト・零式改、ゲシュペンスト・シグの3体がクロガネから出撃してくる。

 

『ハガネの諸君。助太刀はいらないかね?』

 

そしてビアンからの助太刀はいらないかねの言葉にダイテツは思わず苦笑すると同時に、奇妙な安心感を得ていた。自分でも気付かない内に冷静さを失っていたのだと気付いたからだ。飄々としたビアンの言葉に冷静さを取り戻したのを感じていた。

 

「大尉、広域通信準備。ビアンに通信を繋げろ」

 

「りょ、了解です!」

 

クロガネ、そしてゲッターロボVと教導隊の3人の応援――それは絶望的なこの状況を覆す希望の光となるのだった……。

 

 

 

第41話 進化の光を求める者 その6へ続く

 

 

 




今回はクロガネとビアン達の参戦で終了となります、ゲームで言うと黄色の第三軍ユニットですね。原作よりもパワーアップしているアインストが敵なので、応援が登場するのは当然ですね。ビアン達の参戦でケルハム基地での戦いがどうなるのか、次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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