第41話 進化の光を求める者 その6
上空から降り注いだゲッタービームの雨によって消滅したアインスト・クノッヘン。そしてそれに続くように現れたヒュッケバイン・MK-Ⅲ、グルンガスト・零式改、そしてゲシュペンスト・シグの登場はこの絶望的な状況を覆す、希望の一手となった。
「ハガネの諸君。助太刀はいらないかね?」
ビアンはゲッターVにディバイン・グレイブを装備させながら、広域通信でハガネへと呼びかけた。
『ビアン助かった。ありがとう』
「何、気にすることは無い。私達も調べ物をしていてこの周辺に来ていたんだ。運が良かったな、ダイテツ」
正直な所ケルハム基地での戦闘なので参戦するかはビアンはおおいに悩んだ。ハガネならば大丈夫ではないか? と見ていたのだが、分断され各個撃破されかけている姿を見てビアンは決断を下した。L5戦役を共に駆け抜けた戦友を見捨てる事は出来ないと……こうして連邦軍に自分達の存在が認知されるのを覚悟でハガネの救援に訪れたのだ。
『共闘してくれるのならば助かる。頼めるか?』
「任された」
ダイテツからの救援要請を聞いてビアンは即座に返事を返すと共にゲッターVを操り、アインスト・クノッヘンへと向かわせ、ハガネのPT隊に向かって警告を口にする。
「ハガネの諸君、まずは1度下がりたまえ。巻き込まれるぞ」
ダイテツならば面子や逃亡中であるクロガネを前にしても、攻撃してくることは無い。それが判っていたからビアンは出撃と同時にゲッターVにエネルギーをチャージさせていた。
「まずは戦場を整えさせて貰うとしよう。オメガグラビトンウェーブ発射ッ!!!」
『『『『!!!!!』』』』
ゲッター線を伴った指向性を持つ重力波の嵐は敵味方の識別を行い、アインスト・クノッヘン達を弾き飛ばす。
「ふむ、思ったよりも固いな。全力では無いとはいえ、オメガグラビトンウェーブを耐えるか」
ビアンも初めて対峙するアインストの強固さに驚いたような声を上げる。しかし、アインスト・クノッヘンを倒す事は出来なくとも1度動きを止めさせればカイ達が再び陣形を組むだけの時間を与え、グルンガスト・零式改がペルゼイン・リヒカイトを前に劣勢に追い込まれているゲシュペンスト・MK-Ⅲの救援に入るだけの時間を与えていた。
『大丈夫か、キョウスケ』
『ゼンガー隊長……助かりました』
零式斬艦刀を構え、その背中にゲシュペンスト・MK-Ⅲを庇うグルンガスト・零式改。
『むう、貴方に用はないんですのよ?』
『お前になくとも俺にはある』
『そうですの、なら……少しだけならお話してあげますのよッ!』
『ぬうんッ!』
零式斬艦刀とペルゼイン・リヒカイトの日本刀がぶつかり合い火花を散らす。それが合図となり、再びケルハム基地でのアインスト達との戦いは再び激化し始める。
『久しぶりだな、ライディース』
『……中国でも会いましたよね。兄さん』
『中国? 何の事か判らないな』
『……兄さん……いえ、良いです。助けに来てくれてありがとうございます』
レーツェルとエルザムは別人だと言い張るエルザムにライは追求する事を止めた。乗っている機体も違うから、別人だとゴリ押すつもりなんのだと理解してしまったのだ。
『遅れたが、大丈夫か?』
『遅い、来るならもっと早く来いッ!』
『言うな、俺達にも都合がある』
ゲシュペンスト・シグに手を借りて立ち上がったゲシュペンスト・リバイブ(K)は拳を強く打ち合わせる。
『ぶち抜くぞ』
『ああ、ゼンガーの奴が行ったが、あの鬼面――只者ではない』
オメガグラビトンウェーブで弾き飛ばされたアインスト・クノッヘン達は既に体勢を立て直し、再び隊列を組んでイルム達に向かって行進を始める。それは先ほどまでより勢いがあり、更にアインスト・グリートも加わり先ほどまで遥かに厄介な軍勢となっていたが、ビアン達の参戦によって気力が充実しているイルム達はその軍勢に臆する事無く、挑みかかって行くのだった。
「よろしいのですか、司令」
「何がだね?」
「クロガネと元教導隊は発見次第、ジュネーブに連絡しろとの通達ですが……」
「恩人を売るような真似はしない、我々は友軍機に助けられた。ただそれだけだ……異論は?」
「ありません、連絡しないと言っていただき安心しました」
部下の言葉を聞きながらケルハム基地の司令は司令部から戦況を見つめる。確かにビアン・ゾルダークはDC戦争を起こした、だがそれがなければ人類がL5戦役を勝ち抜く事は出来なかった。ビアンが警鐘を鳴らしたからこそ戦い抜くことが出来た……だからこそケルハム基地の司令はクロガネが出現した事を連邦軍本部に伝えない事を決めた。
「ここからの戦闘記録は全て消去せよ」
「「「了解です」」」
クロガネがここに現れたと言う痕跡を全て消し去る事を部下に命じ、司令席に腰を下ろした。だがその顔は苦渋に満ちており、共に戦う事が出来ない事を悔やむ、1人の男の姿がそこにあったのだった……。
戦場を高速で飛ぶ漆黒のヒュッケバイン・MK-Ⅲは、その手にしたビームライフルでアインスト・クノッヘンのコアを撃ぬき沈黙させる。その光景を見てライの脳裏を過ぎったのは何故という言葉だった……R-2や、ハガネのヒュッケバイン・MK-Ⅲの所持しているビームライフルと同型のビームライフルなのに、何故こうも威力に差があるのか? 考えられるのはビアンによる改造を施されているという事だが、そうなると別の問題が浮上する。
(兄さん達は何処でヒュッケバイン・MK-Ⅲとゲシュペンスト・MK-Ⅲを手にしたんだ?)
L5戦役での活躍で得れる戦時特例を受け入れず、追われる身となり放浪しているクロガネでどうやって連邦軍の最新鋭機を手にしたのかという謎が残る。ゲシュペンスト・MK-Ⅲならば判る、だが少数生産のヒュッケバイン・MKーⅢをどうやって? しかも見た所かなりカスタマイズされているのを見れば、トライアウトの前にクロガネにヒュッケバイン・MK-Ⅲが渡っていたのは明らかだ。
「ちっ、弱体化している訳ではないか」
『このままだとまた分断されてしまいます……』
もしかして最初に出現していたアインスト・クノッヘンと同様の強さなのかと思い、それを確かめる為にフォトンライフルを撃ちこむが、コアに当たっても霧散し、クノッヘンにダメージを与えられない。ラトゥーニが焦った様子でR-2に合流するが、再び追い込まれ始めている光景にライも状況が再び悪化し始めていることを悟らざるを得なかった。
『ライディース、ヴァルキリオンから武器を受け取れ』
その時だったエルザムからそう通信が繋げられたのは……だが聞き覚えのない機体の名称にライは困惑した。
『ヴァルキリオン?』
『もうじきクロガネから出撃してくる。コンテナに入っている武装を装備しろ、良いな。そうでなければお前達はこの戦いでは何の役にも立たない』
エルザムの説明を聞いている途中で、主砲とミサイルで飛行しているクノッヘンを迎撃したクロガネから、コンテナを抱えたアーマリオンに良く似た、しかし女性的なシルエットをした機体が出撃し、R-2達の近くにコンテナを2つ投下する。
『!!』
パラシュートでゆっくりと降下するコンテナ目掛け、アインスト・グリートがビームを放った。それは直撃すればコンテナごと中身を焼き尽くすほどの熱線だった。しかしビームが命中する寸前にヒュッケバイン・MK-Ⅲが割り込んだ。
『良いか、投下されたコンテナから武器を受け取れッ!』
アインスト・グリートの放ったビームに向かって手を突き出すヒュッケバイン・MK-Ⅲ。手首から展開されたバリアがビームを弾き、反撃に撃ちこまれたビームライフルでコアを砕かれ、アインスト・グリートは砂になり消滅する。
「武器……そうか! ラトゥーニ、イルム中尉! 投下されたコンテナの武器を装備してくださいッ!』
地響きを立てて降下したコンテナを抉じ開け、中に収納されていたビームライフルを装備し、振り返ると同時に引き金を引いた。
『!?』
一撃でコアを撃ち抜きクノッヘンを消滅させる。それは破壊力があるとか、改良されているとかそういう次元のレベルでは無かった。
『ふんッ!! やはりか、ゲッター線ならば効果があるッ! 今の内にコンテナの中の武器を装備するんだッ!』
ゲッターVが手にしたディバイン・グレイブを振るう。両断されたクノッヘンは再生する気配もなく、苦しみ悶えながら消滅する。
『なるほど、そういう事か。ライ、ラトゥーニ。悪いが、この実体剣は俺とブリットが貰うぜ。ブリットッ! 受け取れッ!』
『イルム中尉! ありがとうございますッ!!』
飛来したバスターソードを受け取り、飛び掛ってきたアインスト・クノッヘンに向かって振るうゲシュペンスト・MK-Ⅲ・Sカスタム。
『凄い……なんて威力だ』
『いや、こりゃ威力じゃねえな。この化けもん達はどうもゲッター線に弱いみたいだな』
切り裂かれた部分から溶けるように両断されている、それは重度の放射線障害のように見えた。
「アンジュルグには使える武装がない。すまない」
『いえ、問題ない。私の事は気にしないでくれ』
コンテナの中の装備は標準的なAMとPT用の装備であり、アンジュルグに装備出来る物ではない。ライの言葉にラミアは判っていますと返事を返し、ファントムアローを構えさせ、クノッヘンに向かって打ち込んだ。
『ギッ!』
『貰ったッ!』
『!?!?』
ファントムアローの直撃を受けて僅かにクノッヘンの動きが鈍くなった瞬間にイルムのヒュッケバイン・MK-Ⅲがブレードを突き出し、コアを両断する。断末魔の声を上げて消滅していくクノッヘンを見て、今装備している武装がアインストに効果的であると言う事が判明した。
「ラトゥーニ、ラミア、俺達でアンノウンにダメージを与えて、イルム中尉とブリットがトドメをさせる状況を作るぞ」
『了解です』
『了解、上空からアンノウンの動きを把握し、密集している場所を伝えます』
バスターブレードは一撃でクノッヘンを倒せるが、その重量とリーチのせいで近くまで近づかなければ効果は期待出来ない。イルムとブリットがトドメを刺しやすい状況を作ると指示を出す。クロガネから渡された武器によって、劣勢だった状況は少しずつ変わり始めているのだった……。
コンテナによって渡された武器を手にし、戦況を巻き返し始めたライ達を見てカイは隣でクノッヘンのコアを抉り出しているラドラに声を掛ける。
「俺の使えそうな武器はないのか?」
『あるなら渡している』
「だと思ったッ!!」
『!?』
飛び掛ってきたクノッヘンのコアにメガ・プラズマステークを叩き込み、そのままの勢いで地面に叩きつける。
「ぬんッ!!」
地面に叩きつけた状態で拳を更に打ち込みコアを砕く、するとクノッヘンはもがき苦しみながら消滅する。
『思ったよりも固い。中国の物よりも強いな』
「ああ、だから苦戦しているッ!!」
背後から組み付いてきたクノッヘンの頭を掴み、地面に叩きつける同時にコアに踵落としを叩き込みクノッヘンを沈黙させるカイ。
『カイ少佐、ラドラ。左右に分かれたまえ、クロスマッシャー発射ッ!!』
カイとラドラが左右に分かれたと同時に、ゲッターロボVの放ったゲッター線の光と赤と青の3色の色の混じった光線がアインスト達を薙ぎ払った。
『むう、これでも駄目なのか』
胴体部で薙ぎ払われたアインスト達が崩れ落ち消滅するが、倒した数以上のアインストが再び出現し、防壁を作り上げる。物言わぬアインスト達だが、その動きを見ればペルゼイン・リヒカイトと対峙しているグルンガスト・零式改、そしてゲシュペンスト・MK-Ⅲと合流させたくないとしているのは明らかだった。
「何故あそこまでキョウスケに拘るんだ」
『何? そうなのか、カイ』
どうしてここまで徹底してキョウスケとカイ達を分断しようとするのか、その理由を考えていたラドラはカイの言葉を聞いて驚いた。
『確実に仕留めるためではなく、キョウスケ中尉に執着しているという事なのか……』
『……前世の縁者とか言わないよな?』
「何を……いや、ありえるな」
前世の縁者と口にしたラドラに何を馬鹿なと言いかけたカイだが、途中でありえるかもしれないと自分の意見を覆した。何故ならばラドラは旧西暦の生まれでかつて恐竜帝国に属していたと言う経歴がある。前世と言うのはありえない話ではない、なにせ生きた証人がカイとビアンの目の前にいるからだ。
『なんにせよだ、キョウスケ中尉とゼンガーが危ない。私はそちらに合流する、この場は任せるぞ。カイ少佐、ラドラ』
ただ分断するのではない何らかの因縁があるのならば、キョウスケとゼンガーが危ないというと同時にゲッターロボVの腹部から放たれたゲッタービームがクノッヘンを薙ぎ払い、ほんの僅かだけ包囲網が抜けた隙に潜り抜け、グルンガスト・零式改と切り結んでいたペルゼイン・リヒカイトへと斬りかかるゲッターロボV。
『やはり無理か』
「俺達まで抜けたらエルザム1人でライ達の支援は無理だからな。ここで食い止めるしかないだろう」
包囲網に穴が出来たのはほんの数秒で再び壁を作り出す、アインスト・クノッヘンの姿を見てカイは小さく溜め息を吐いた。
『聞かないのか?』
「聞いたら教えてくれるのか?」
互い機体を背中合わせにし、死角を消す飛び掛ってくるクノッヘンを捌きながら尋ねてきたラドラにカイは逆にそう尋ね返した。
「お前も、ゼンガーもエルザムも俺には何にも言わん。ずっとそうだ、昔からずっとそうだ」
『ギギャァッ!?』
『グガアッ!?』
カーウァイに鍛えられている頃からそうだったとカイは昔を思い出すように呟いた。
『それはそのすまん』
「良いさ、話せる時になったら話してくれるんだろ? ならそれを待つだけだ」
ゼンガーとキョウスケが危ないとビアンは慌てた様子だった。そしてラドラもそれを止めなかった……その二点からカイはゼンガーとキョウスケがアンノウンと対峙することに何らかの危険性があるのだと悟ったのだ。
『話せるときは良い酒と摘みを準備する』
「ああ、そうしろ、毎回俺にばっかり貧乏くじを引かせやがって、良い加減にしろよ」
『『『『シャアアアーーッ!!!』』』』
1体ずつでは勝てないと判断したのかクノッヘン達が雄叫びを上げながらゲシュペンスト・シグとリバイブ(K)に襲い掛かる。だがその直後に背中合わせだったゲシュペンスト・シグとリバイブ(K)は弾かれたように構えを取った。
「『やかましいぞッ!』」
リバイブ(K)が両腕を振るうとその軌道に沿うように雷が地上から空中に向かって放たれ、クノッヘン達を消し炭へと変貌させる。
シグは高速回転する両手のエネルギークローでクノッヘンの胸部からコアを抉り出す。
『本当によ、化け物って言うのは馬鹿だよな。教導隊2人に突っ込んで行くとか、自殺行為にしか思えねえぜ』
呆れたように言うイルムの呟きにこの場にいた全員は賛同さぜるを得ないのだった……。
ペルゼイン・リヒカイトの猛攻からグルンガスト・零式改に庇われながら、キョウスケは一矢報いる機会を虎視眈々と狙っていた。
(……腰部エネルギーバイパスカット、エネルギーラインを背部・脚部ブースターに集中……)
庇われながらと言ってもペルゼイン・リヒカイトの攻撃は激しく、日本刀による斬撃だけではなく、今では鬼面から光線や、出現するまで感知出来ない鬼火と多彩な攻撃を織り交ぜて来ていた。
『ぬんッ!!』
『ふふ、当たらないですのよ?』
現れた時に負っていた傷は既に回復しており、動きは現れた段階と比べると格段に良くなり、更に言えば攻撃の威力も段違いに高まっている。
『進化の使徒……とは少し違うようですのね』
アルフィミィが繰り返し告げる『進化の使徒』と言う言葉。それがアルフィミィ達の求める物であり、与えられた情報から整理すればアルフィミィ――いやアインストが欲しているのはゲッター炉心という事になる可能性が高い。
『そんなにもゲッター線が欲しければくれてやるッ! 斬艦刀・飛竜一閃ッ!!!』
グルンガスト・零式改の手が斬艦刀の表面を撫でるよう動くと、零式斬艦刀の刀身に淡い翡翠色の輝きが灯る。斬艦刀を振りぬくとその切っ先にそって三日月状の飛ぶ斬撃がペルゼイン・リヒカイトに向かって放たれた。今まで近接攻撃しかしていなかったグルンガスト・零式改の初めての遠距離攻撃――キョウスケもゼンガーも必中を確信した一撃だったが、ペルゼイン・リヒカイトは手を突き出すようにしてその飛ぶ斬撃を正面から受け止めた。
『……やっぱり違いますの、これは私の探している進化の光ではありませんの』
そしてそのまま薙ぎ払うように腕を振るうとグルンガスト・零式改の放った飛竜一閃は明後日の方向に弾き飛ばされた。
『何ッ!?』
流石のゼンガーも攻撃を受け止められ、それを無造作に弾き飛ばされると言うのは想像していなかった為、一瞬その動きを止めてしまった。
『まがい物の進化の光はいらないですのよ』
その隙をペルゼイン・リヒカイトが見逃す訳が無く、唖然としているグルンガスト・零式改に向かってペルゼイン・リヒカイトが切り込んだその瞬間……第3者の声がこの場に響いた。
『では本物のゲッター線の輝きはいかがかね?』
『っつうッ!?』
ゲッターロボVの手にしたディバイングレイブによる一閃。その刃にはゲッター線の輝きが灯っており、ペルゼイン・リヒカイトの装甲に深い傷を残す。
『進化の光……やっと見つけましたの――宇宙のは強すぎましたが……その進化の光なら手に出来ますのッ!』
宇宙の進化の光――それが意味するのは先日確認された地上から宇宙へと向かう姿が確認された新型のドラゴンらしきゲッターロボの事だろう。
『悪いがそう簡単にはゲッター炉心はやれんな』
『いいですのよ? 奪い取るだけですのッ!!』
ディバイングレイブとペルゼイン・リヒカイトの日本刀が火花を散らし、何度も何度も交差を繰り返す。
『俺を忘れてもらっては困るなッ!』
『大丈夫ですのよ? 忘れておりませんの』
左肩の鬼面の下から異形の日本刀を手にした腕が伸び、グルンガスト・零式改の一撃を受け止めそのまま弾き飛ばす。
『まだ姿を見せる事は出来ませんが……これくらいなら出来ますのよ?』
『その異形の姿は伊達ではないと言うことか……ッ』
両肩から腕が出現した事で、ペルゼイン・リヒカイトは計4本の腕にそれぞれ日本刀を手にし、グルンガスト・零式改とゲッターロボVを徐々に押し返し始める。
『進化の光、進化の使徒とは何を意味しているのだね?』
『ふふ、そのままですのよ? 全ての存在が欲するエネルギーとだけ言っておきますの』
『何故キョウスケを付けねらうッ!』
『いやん、少女の想いをこの場で告白させようなんて酷いですのよ?』
『ぐっ!?』
軽口を叩きながらも正確無比な攻撃を繰り出すその姿はエクセレンの物に酷似していた。これはキョウスケだけではなく、ゼンガーも感じていた。
(何故こんなにもエクセレンに似ている)
(気配までも似ているとはどういうことだ)
喋る間の取り方、話の中に混ぜる虚――相手の神経を逆撫でする挑発とも取れる言動をしながらも、その癖操縦は正確無比。それらペルゼイン・リヒカイト――いや、アインスト・アルフィミィを名乗る少女は余りにもエクセレンに似すぎていた。
(だがこれは好機だ)
グルンガスト・零式改とゲッターVにペルゼイン・リヒカイトの注意が向けられている。ビアンとゼンガーを囮にするような形になったが、逆転の一手をキョウスケが打ち込む最初で最後の機会が訪れていた。
(あと少し……)
薄暗いコックピットの中で最後の博打に出る為に集中力を研ぎ澄ますキョウスケ。右腕以外のエネルギーラインを全て背部と脚部に回し、一撃に全てを賭けるキョウスケはその時を待ち続けた……そして、その時は訪れた。
「貰ったッ!!」
直線にしか進めない今、ペルゼイン・リヒカイトの姿がゲシュペンスト・MK-Ⅲの前に来た瞬間。爆発的な加速でペルゼイン・リヒカイトに迫るゲシュペンスト・MK-Ⅲ。その殺人的な加速が齎すGに耐え、渾身の一撃をペルゼイン・リヒカイトに向かって繰り出す。
「な、何ッ!? う、うぐっ!?」
キョウスケの全てを賭けた一撃がペルゼイン・リヒカイトを捉える寸前。ペルゼイン・リヒカイトの姿は溶けるように消え去ったのだ。攻
撃を空振りしたゲシュペスト・MK-Ⅲはそのまま地面に叩きつけられ、バウンドし川に半分ほど落水する形で動きを止めた。
『少し頑張りすぎて時間切れになってしまいましたの……』
時間切れとアルフィミィが口にするとケルハム基地へ襲撃を繰り返していたアインスト達が次々に溶ける様に消滅する。
『な、なんだ? 何が起こってる!?』
『活動限界がある生き物とでも言うのか?』
『あ、危ない……基地を攻撃する所だった』
打ち合っていたブリットは突然戦っていた相手が消えた事でたたらを踏み、アインストに照準を合わせていたライやラトゥーニは危うくケルハム基地に向かって攻撃を撃ちこむ所でそれぞれのコックピットで冷や汗を流していた。
『ほんの少し……理解…出来ましたの……キョウスケ……でも、まだ……貴方は未熟ですの』
「……お前は何者だ? アインストとは何だ? 俺が未熟とはどういうことだ」
消えかけているペルゼイン・リヒカイトに向かってそう尋ねるキョウスケ。すると、現れた時の様に喜色に満ちた声でアルフィミィの声が響き渡った。
『また……会いに来ますの。私の……キョウスケ……私は貴方が好きですのよ』
「な……に?」
キョウスケを好きだと告げ、ペルゼイン・リヒカイトの姿は完全に消え去り、アインスト達もその姿を消した。
『ふむ、逃げた……いや見逃されたかな? キョウスケ中尉。怪我はないかね?』
「え、ええ。助かりました、ビアン博士」
思っていたよりフレンドリーに声を掛けられ、困惑するキョウスケにビアンは続けて言葉を投げかける。
『間に合ったのなら何より、出来れば君の救助を行ないたいが、私達には私達の都合がある。私達と話をしたければ、ポイントP4ー078にクロガネは停泊している。今から48時間はそこで停泊するつもりだ、用があれば尋ねて来てくれたまえ』
キョウスケからの返事を一切聞かず、接触通信で一方的にそう告げてクロガネと共に姿を消すビアン達。その姿を見つめながら、キョウスケは被っていたヘルメットを後ろに向かって投げ捨て、最低限のエネルギーしか残っていないゲシュペンスト・MK-Ⅲの操縦席に背中を預けた。
(アルフィミィ……一体何者なんだ?)
親しげに、そして会えて嬉しいとそして好きだと告げて消えていったアルフィミィ――だが当然キョウスケはアルフィミィなんて知り合いはいない。
(それに……雰囲気と声がエクセレンに似ている……?)
声こそ幼いが雰囲気や喋り方、そして戦闘での立ち回りがエクセレンに酷似していた。
(俺とあいつの間には何があると言うんだ……?)
今回は他のメンバーにも聞こえていたが、前回の中国ではキョウスケとエクセレンにしかアンノウン――アルフィミィの口振りではアインストと呼ばれる生き物の声は聞こえなかった。自分とエクセレン、そしてアインスト・アルフィミィの間にはどんな関係があるのかカイ達が救助に来るまでの間キョウスケはそればかりを考えているのだった……。
ケルハム基地での戦いが一区切りした頃。アクセルとイングラムとの戦いも佳境を迎えていた。
『お前に恨みはない、だがお前達の思想はこの世界にとって害悪だ。故に死ね』
一時はソウルゲインが有利に立ったが、それ以上にイングラムの立ち回りが上手かった。障害物を駆使し、変形しての4足機動でアクセルの視界を幻惑し、ソウルゲインの膝だけにダメージを与え続けた。その結果がソウルゲインの再生能力を持ってしても回復しきれず、ついには自重すら支えきれずに膝をついて動けなくなるという状態だった。
「死ねと言われて、はいそうですかと言って諦めるほど俺は諦めが良くないんだよ、これがなッ!! ぐっ!」
『悪いな、お前の行動パターンは読めている』
残された左腕すらも捨てて、青龍鱗の暴発で自分もろともR-SWORDを吹き飛ばし、R-SWORDが立て直す隙に離脱しようとしたのだが、左腕にエネルギーが溜まりきる前に速射で腕を撃ちぬかれ、青龍鱗の発射装置だけを破壊された。
(く、万事休すか……)
遭遇した瞬間に逃げる――逃げた所で行き先などない。やっと思いで辿り着いたこのアジトを捨てるのも惜しく、迎撃に出たのが間違いだったのか……立ち上がる余力さえないソウルゲインのコックピットで自分の行動を思い返すアクセル。
『案ずることはない、すぐに他の奴らも送ってやる。先に地獄で己の行動を悔いていろ』
R-SWORDの指に力が入った瞬間――それは現れた。
【ギゴガハアアアアアアアーーーーーッ!!】
『な、なんだ!? う、うぐうっ!?』
身の毛もよだつ獣の雄叫び、太陽をその巨体で覆い隠しながら飛び込んできた異形がその巨大な拳を振るい、R-SWORDを殴り飛ばすと同時にソウルゲインを抱え上げ、地面を蹴って一瞬でR-SWORDの前から離脱する。
(助かったのか……いや、そうとは言い切れんぞ)
人の顔に獣の胴体を持つ異形はR-SWORDから十分に距離を取ると、ソウルゲインをまるでゴミのように投げ捨てた。地面に叩きつけられた衝撃にアクセルが顔を歪めているとその異形がソウルゲインを指差した。
【ソウルゲイン……アクセル・アルマーじゃな?】
「何? 貴様何故……な、なんだ!?」
何故ソウルゲインの、そして自分の名前を知っているのだとアクセルが問いただそうとした時。異形の身体から黒煙が溢れ、アクセルの見ている前で見る見るその巨体を小さくさせる。
「ふぇふぇふぇふぇ、助けてやったのに随分な態度じゃなあ?」
「……お前。何者だ?」
ソウルゲインを越える巨体が一瞬で腰の曲がった老人の姿になり、アクセルが困惑しながら尋ねると老人は歯抜けの歯を見せて声を上げて笑い出した。
「ヴィンデル殿の頼みでお前を探しに参った。我が名は四凶の鬼人 饕餮(とうてつ)じゃ」
四凶の鬼人と言う2つ名も気になったが、ヴィンデルの名前が出た事にアクセルは僅かに警戒心を緩めた。
「ヴィンデルの? あいつが俺が探してお前に頼んだのか?」
「うむ。ヴィンデル殿と協力しておる大帝の頼みでな。ほれほれ、ワシは疲れた。道案内はしてやるからワシを手の上に乗せい」
「あ、ああ。判った」
アクセルは困惑しつつも饕餮をソウルゲインの手の上に乗せ、饕餮に案内されながらその場から移動を開始するのだった。
「くそ、駆動系がやられた……何だ今のは……」
奇襲による一撃で駆動系を粉砕されたR-SWORDのコックピットから出た、イングラムは突然襲ってきた異形について考えていた。
「負の念の集合体……ケイサル・エフェスの分身か?」
身の毛もよだつような邪悪な気配から仇敵であるケイサル・エフェスの分身の可能性を考えたイングラムは即座に救難要請を出した。
「やはりこの世界はもう乱れきっているという事なのか……」
武蔵を初めとする旧西暦の使者、そして百鬼帝国の復活に加え、アインストの進軍、そしてケイサル・エフェスの分身の可能性がある巨大な異形の出現――フラスコの世界はもはや修正しきれない程に正史から離れ始めているのをイングラムは感じるのだった……。
第42話 進化の光を求める者 その7へ続く。
次回はシナリオエンドデモとビアンとの話し合いを書いて、宇宙ルートへと話を向けて行こうと思います。時間の流れなどはある程度前後することになりますが、話の都合及び時間の流れをあまり把握してい無いと言う事で温かい目で見てください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い