第42話 進化の光を求める者 その7
アインストの襲撃を退けた後、ハガネはビアンの言い残したポイントP4ー078に向かう為の修理を進めていた。
「48時間か……時間的にはかなりギリギリだな」
「もうちっと時間的猶予を取ってくれるとありがたかったんだけどな」
アルトアイゼンの修理が終わるまで22時間、グルンガストの修理が完了するまで37時間。時間的には10時間ほどの猶予しか残されていなかった。
「やはり応急処置を済ませ、先にビアン博士と話し合うのが1番ベストですね」
「そうだな、ダイテツ艦長達も同じ決断を下す筈だ。ラトゥーニが戻って来るまでは何とも言えないが……恐らくそうなるだろう」
今回戦闘したアインストの分析データを渡すのと同時に、スケジュールの確認に向かっているラトゥーニが戻り次第出発になるだろうとカイ達は考えていた。
「しかしビアン博士達も一箇所に留まるのは危険ということなのでしょうね……ゆっくり話をしている時間がないのが残念です」
「新西暦の人間で唯一ゲッター炉心を作成出来る人間だからな。追われているのは当然か……48時間も時間を取ってくれただけでも破格と思わないとな」
「ビアン博士はDC戦争の咎で追われているのではないのですか?」
ラミアが不思議そうに尋ねるとカイが頭を振った。世間一般論で言えばビアンは確かにDC戦争を起こした犯罪者だが、それを差し引いてもL5戦役での功績は大きい。戦時特例を断ったからDC戦争での決起人として追われている――というのが連邦軍がクロガネを追う建前なのだが、真実は全く異なる物となっているのだ。
「公にはそうなっているが本当の理由は違うんだ。ラミア」
現在ビアンが追われている理由として1番大きいのはゲッター炉心で稼動するクロガネ改、そしてゲッター線をPTや特機に応用する技術があるからだ。ゲッター炉心をPTや特機に流用できれば無限動力になり、そしてその機体性能は飛躍的に向上する。だがそれを扱えるのはビアンだけであり、それを軍事転用することを考えている軍上層部から逃げるという意味もあり、戦時特例を拒否したのだ。
「今回の件を見る限りでは、ビアン博士やゼンガー隊長の決断は間違いではないと思いますね」
「ああ、ラドラの選択にも納得だ」
未知の敵であるアインストと互角、いや、互角以上に立ち回ることが出来ていたのは間違いなくゲッター線を応用した技術があるからだ。しかし強すぎる力は新たな争乱を産むと言ってビアンと共に行くことを選んだラドラの判断もまた正しいものであった。マグマ原子炉はそのままでは流用出来ず、ラドラが開発したマグマ原子炉とプラズマジェネレーターを組み合わせた反マグマプラズマジェネレーターでなければ、エネルギーが逆流し機体がオーバーヒートを起す。国連が5つ保持しているマグマ原子炉を使った機体の開発が頓挫したのもラドラがおらず、マグマ原子炉をPTや特機に流用する術が無かったのが大きな要因となっている。マグマ原子炉、ゲッター炉心を兵器転用させないために追われる身となったとしても技術を悪用させない為に行動したビアンとラドラの決断は紛れも無く英断だったとカイはラミアに説明し、今回の戦闘でライ達がアインストと互角に戦えた武器についての事をライに尋ねた。
「エルザムが残して行ってくれた武器はどうなってる?」
「エネルギーを充填する術がないのでビームライフルの方は使用出来ませんが、実弾系の、恐らくゲッター合金を流用した弾頭の物は弾薬の予備があるのであと数回は戦闘出来ると思います」
「そうか……となると、弾を使い切ったら武器の方はイルムとブリットが使ったブレードだけになるか……」
「これからの事を考えるとやはりクロガネとの接触は必要ですね」
ブリーフィングルームで話し合っているとブリッジでダイテツに話を聞きに行っていたラトゥーニが戻って来た。
「どうだった?」
「キルモール作戦は実行すると決定されたそうです。72時間後までにムータ基地へ向かうようにとの事です」
キルモール作戦は既に失敗していると言っても良い段階だが、ジュネーブの連邦本部はまだキルモール作戦の遂行を諦めていないようだ。レイカーの意見も封殺され、修理の時間を加味しても72時間だけがハガネに与えられた時間だった。
「となるとビアンと話し合って、そこからケルハムに戻ってくるのは無理か」
「時間的なことを考えるとそうなりますね」
応急処置を済ませ、P4ー078で待つクロガネと合流し、ビアンとの話をしてケルハムに戻りムータ基地へ向かうという最初のプランは破棄し、ハガネと機体の修理を済ませてからクロガネと合流し、話をした後にムータ基地へ向かうと言う時間ギリギリのスケジュールになってしまった。
「あのアンノウン――アインストだったか? あれのせいで随分と予定が狂ったな」
「アルフィミィと名乗った個体……一体何者だったりしちゃいますのでしょう?」
カイの話に合わせる様に言うラミアがアルフィミィの事を言う。すると話の話題は自然とアインストの方に変わり始める。
「俺達の言葉を使っていた事から判断すれば、人間なのかも知れんが……声だけという可能性もある」
「俺の勘じゃラトゥーニよりちょい下……それも、美少女と見た。でもよ、気になるのがキョウスケを好きって言ってたのはどういう事だ? キョウスケ。一応聞いておくが、お前の知り合いじゃないんだよな?」
キョウスケに熱烈なラブコールをしていたアルフィミィ。キョウスケの知り合いじゃないよな? と確認するように問いかけるイルムにキョウスケは小さく頷いた。
「少なくとも俺の知り合いではない。ただ……1つ気になる事はある」
「気になる事? あのアルフィミィに何か関係のあることですか?」
「ああ、俺はエクセレンに似ていると感じたが……カイ少佐達はどうですか?」
ラトゥーニの問いかけに頷き、キョウスケがエクセレンに似ていると感じなかったか? と尋ねるとカイ達はハッとした表情になった。
「確かに言動や立ち回りはエクセレンに似ていたな」
「獲物は違いますが、あの機体操作の感じは確かにエクセレン少尉の物に似ている」
キョウスケの言葉でアルフィミィがエクセレンに似ていると言う声があちこちで上がり始める。
「そ、そう言われるとあの赤い奴の意思のような物を感じた時にエクセレン少尉に似ていると感じました」
「意思……『念』か……イルム中尉。念動力が似ていると言う事はあるのですか?」
「おいおい、俺に聞くなよ。ライ、そういうのはどうなんだ?」
「……少なくとも似ていると言うことあるそうですが……俺も専門ではないので何とも……」
念――すなわち念動力。それで感じ取られたと言う事はアルフィミィが人型である事は間違いがない。だが、何故エクセレンに似ているのかという謎が残る。
「キョウスケ中尉が知らないだけで妹とか、親族という可能性はありんせんのですか?」
「ラミアは俺の親族がアインストに取り込まれていると考えているのか?」
「可能性の話でございますことです。親族だからキョウスケ中尉を求めていると言うのはおかしくない推測だと思うのでありんすが?」
「だけどラミアの推測だと、あの化け物共――アインストは人間を取り込むって事になるぜ?」
ラミアの言う通りならばアインストは人間を取り込み、その知識や記憶をえるという事になる。
「ええ!? そ、それじゃあ俺達が倒したのは人間って事に?」
「お前が驚いてどうするよ? ブリット。俺が聞きたいのは、他のアインストを倒したときに念を感じたかって事だ」
「あ、いえ……他の個体を倒した時は何も感じませんでした」
「となると、他の個体は人間を取り込んでいない、もしくはあのアルフィミィって奴だけが特別ってことになるんじゃないのか? んでエクセレンに似ているとなると、取り込まれているのはキョウスケの親族じゃなくて、エクセレンの親族って事になるんじゃないか?」
ラミアの説でアルフィミィがアインストに取り込まれ変質したエクセレンの親族なのではないか? という説を唱えるイルム。
「エクセレンからそういう話は聞いた事はないのですが」
「アンザイ博士が言うには百邪という存在なのですよね? キョウスケ中尉かエクセレン少尉の先祖という可能性はないですか?」
今度はラトゥーニがアルフィミィがキョウスケかエクセレンの先祖ではないか? という説を出す。
「親族は親族でも過去の親族か、そうなるとありえるかもしれないな」
「確かに、武蔵やラドラ元少佐の事もありますしね」
旧西暦からやってきた武蔵と生まれ変わって人間になったラドラという前例がある分だけ、ラトゥーニの説は真実味を帯びていた。
「あいつらの正体に関しては不明だが、1つだけ確かなことがある。アインストが俺達の敵だということは確実だな」
「ええ。それに今回の事で蚩尤塚だけでなく、他の所を襲う可能性も高まりましたね」
「やれやれ、百鬼帝国だけでも厄介だって言うのに、その上更に厄介な敵が現れたってか……」
テロリストの台頭から始まり、百鬼帝国、宇宙で多発する行方不明部隊、そしてアインスト――半年の間の平和が嘘だったかのように立て続けに起きる事件、そして現れる敵勢力――地球圏を燻る戦火は今、大きな大火となろうとしているのだった……。
ソウルゲインとの戦いの間に割り込んできた謎の異形によって致命傷を受けたR-SWORD。自力で動かせる段階ではないと言うイングラムからの救難要請でクロガネからやってきたエルザム達によって、R-SWORDはビアンの隠しアジトの中へと運ばれていた。
「すまない、わざわざ世話をかけさせたな」
「いや、気にする事はない。クロガネにゲシュペンスト・MKーⅢ・トロンベを置いておく訳には行かないからな。私がレーツェルだとばれてしまう、そういう面では隠し場所としてこの場所に来るつもりだったから問題はないさ」
真顔でレーツェルだとばれてしまうというエルザムにイングラムは本気でバレていないと思っているのか? と言いかけたが、その言葉をぐっと飲みこみ、ソウルゲインとの戦闘データをエルザムに渡す。
「俺はハガネとの話し合いが終わるまではこの場所で待機している。面倒だが、それが終わったら迎えに来てくれ」
R-SWORDもゲシュペンスト・MKーⅢ・トロンベもクロガネにあれば、そこから武蔵、イングラムとなし崩し的にばれてしまう。今はまだ、表舞台に立つ訳には行かないイングラムはハガネとの話し合いが終わるまで、この場に留まることにした。
「アクセルもすぐにここに戻ってくる事はあるまい。数日は安全だろう」
「シャドウミラーの構成員だったな、まさか鉢合わせになるとはお前も運が悪い」
「全くだ。ソウルゲインが本調子でなくて良かった」
片腕、そして整備不良というハンデがあってイングラムはソウルゲイン相手に有利に立ち回ることが出来た。もしもソウルゲインとアクセルが本調子ならば結果はまた異なる物となっていただろうとイングラムは感じていた。
「戦闘データと突然襲ってきた異形の映像だ。持ち帰って分析してくれ」
「ビアン総帥に渡しておこう。月のカーウァイ大佐との連絡コードを渡しておこう」
「助かる、カーウァイと武蔵と話しておきたかった事があるからな」
イングラムからソウルゲインと謎の異形のデータを受け取ったエルザムは変わりにカーウァイの連絡コードをイングラムに預け、ビアンの隠しアジトを後にした。
「……しかしあの異形は一体……」
飛び去るヴァルキリオン達を見送り、イングラムは戦闘データの解析を始める。
「形状は百鬼獣に似ているが、それよりも遥かに生物的……しかし機械でもある。一体あいつは何なんだ」
現れた時に感じた圧倒的な負の気配にケイサル・エフェスの分身かそれに順ずる物かと推測したイングラムだったが、こうして分析していると自分の予想が的外れだったのを感じた。
「……全く未知の敵と言う事か……いや、可能性は低いが武蔵が知っている可能性もあるか?」
調べれば調べるほどにあの謎の異形の不気味さが際立っていく……生物であり機械。それはメカザウルスに酷似しているように見えるが、根本的に何かが違うとイングラムは感じていた。
「これからこの世界はどうなって行くと言うんだ」
因果は乱れに乱れている。それこそディス・アストラナガンとクォヴレー・ゴードンが何時現れてもおかしくないほどに乱れきっているこの世界――これからこの世界はどうなっていくのかとイングラムは思わずにはいられないのだった……。
アルトアイゼンとグルンガストの修理が完了してからハガネはビアンから指定されたポイントに訪れていた。
「これは正に自然の要塞と言う所ですね」
「ああ。クロガネが見つからないのにも納得の理由だな、当初の予定通り、ワシとカイ少佐、キョウスケ中尉でクロガネへ向かう。大尉、周囲の警戒を怠るなよ」
「了解です。お気をつけて」
スペースノア級は万能戦闘母艦というだけあり、単独での大気圏離脱や深海での活動にも特化している戦艦だが、その性質上並みの戦艦よりも遥かに巨大と言う長所であり短所を抱えている。一部の連邦軍高官が血眼になって探しているクロガネは海溝に潜んでいるとダイテツは考えていたが、ビアンに指定されたP4ー078は切り立った渓谷の中にあるスペースノア級が余裕で停泊する事の出来る深い渓谷だった。ドッキングブリッジでダイテツ、カイ、キョウスケの3人が代表として、クロガネの中に足を踏み入れていた。
「来たか、悪いが時間がない。こっちだ」
ドッキングブリッジの所で待っていたラドラに案内され、ダイテツ達はクロガネのブリーフィングルームに案内される。
「良く来てくれた。ダイテツ」
ブリーフィングルームで待っていたのはビアン1人だけだった。ダイテツ達ならば自分を捕える事が無いというビアンの無言の信頼にダイテツは思わず苦笑した。
「すまない、グルンガストとアルトアイゼンの修理で思った以上に時間を食ってしまってな」
「なに謝ることはない、このポイントは自然の磁気嵐が発生するポイントだ。衛星等で発見される心配もない」
とは言え、あまり長時間留まっている事も出来ないがなとビアンは苦笑し、ダイテツに1枚の図面を差し出す。
「これは?」
「ゲッター合金弾頭の作成書だ。ゲッター合金をハガネに運び込む、伊豆基地で製造すると良いだろう。ビームパックに関しては申し訳無いが、ゲッター炉心がなければ定期的にエネルギーを補充する事が出来ない。一応予備で5つほど用意しているが、それ以上の用意は難しい」
「いや、ここまでやってもらって文句など言うまいよ。助かる」
アインストに効果的なダメージを与えれるゲッター合金の弾頭とビームライフルの予備パック。決してその数は多くないが、それでも有効な武器があると言うだけでかなりの安心感がある。
「ビアン博士、ゼンガー隊長達は?」
「周囲の警戒を行なっているよ。話をしたいという気持ちは判るが我慢してくれたまえ、私達は連邦だけではない、百鬼帝国にも追われているからな」
さらりと告げられた百鬼帝国に追われていると言うビアンの言葉にダイテツ達は驚きを隠せなかった。
「大丈夫だったのか?」
「なんとか切り抜けられたがかなり危ない所だった。その時なのだが……私は私を名乗る百鬼帝国の鬼に追われていた」
その言葉にリクセントでのシャインと同じ顔をした鬼の存在が脳裏を過ぎった。
「もしや百鬼帝国の狙いはビアン博士の名前と顔を使い、世界に散っているDC兵を再び集める事なのでしょうか?」
「私はそう考えている。故に、私を真似ている百鬼帝国の鬼が決起を告げる前にハガネに接触したのだよ。カイ少佐」
アインストからハガネを助けるという目的はあったが、本当の目的は自分達は決して再び決起しないと言うこと、DCを名乗る事はないという事をダイテツ達に告げる為だったとビアンは言う。
「ビアン博士。お気持ちは判りますが、俺達だけにその話をしても何の意味も無いのではないですか?」
「キョウスケ中尉の心配も判るが、私達はレイカーとも何度も話し合いを重ねている。故に心配は無用だよ」
心配は無用だと笑うビアンだが、百鬼獣は強い。ゼンガーやエルザム達がいてもその脅威を退けることは難しいだろう……それなのに何故ビアンがここまで強気に出れるのか……ダイテツは核心をつく事にした。
「最近確認されている黒いR-GUN、ゲシュペンスト・タイプS、そして新型と思われるゲッターロボG――お前の強気はそれらと何か関係しているのか?」
「いや、そう言う訳ではない。私達は1度もそれらの機体に遭遇した事は無いんだ」
「無いのか?」
「ああ。それらしい目撃情報を聞いて探しているが、私達は見た事が無い」
ダイテツとビアンが互いに見つめあう。真実を口にしているのかどうなのか――ダイテツは長年人を見てきた己の観察眼を頼った。
「そうか。そうだな、お前なら武蔵が見つかればすぐに連絡してくるな」
「判ってくれて何よりだ」
ビアンは武蔵の事をとても信頼していた。そして武蔵が特攻した事に1番心を痛めていたのはビアンだ。武蔵が生きていると判れば、最も喜び、そしてダイテツ達に連絡してくるのは明らか。それが無かったと言う事はビアンは武蔵に出会っていないとダイテツは判断したのだ。
「我々はハガネを見送ればまた姿を消す。クロガネを百鬼帝国に渡す訳には行かないからな。本当はもう少しゆっくりと話をして、百鬼帝国の脅威に備えたかったが、そうも言ってる時間が無いのだ」
時間が無いと姿を消すと言うビアンにキョウスケは何故そこまでビアンが焦っているのか、その理由を悟った。
「……そうか、DCの旗艦はクロガネとヴァルシオン――そのいずれかが揃わなければ、ビアン博士として決起したとしても信憑性は低いッ」
「その通り、確かに百鬼帝国の技術力は高い。だが、クロガネはそう簡単に用意出来る物ではない上に、オリジナルのヴァルシオンを用意するのは更に難しいという事だ」
DCとしてビアンの名を語って決起するにはクロガネ、そしてヴァルシオンの存在が必要不可欠だ。それが無い以上、百鬼帝国がビアンを語ろうが、その信憑性は低くなる。それでも反連邦組織等は賛同するだろうが……以前のようなDCとして組織が成立する可能性は低い。
「しかしそれも長くは続かないでしょう」
「うむ、時間を掛ければクロガネやヴァルシオンの姿だけでも百鬼帝国は作り上げるだろう。百鬼帝国がクロガネとヴァルシオンを作り上げる前に私達は百鬼帝国の存在を世論に明らかにする」
「単独で挑むつもりか、ビアン」
「今はその必要があると言うだけだ。何れまた私達の道は重なるだろう――その時には力を貸してくれ、ダイテツ。私の願いは何時だって
変わらない、地球の平和を願っているのだからな」
ビアンの言葉に偽りはないと判断しダイテツも頷いた。今はまだ、ビアン達とダイテツ達の道は重ならないがいずれまた、そうL5戦役の時のようにその道は重なるだろう。
「クロガネとの連絡コードだ。百鬼帝国の事で何か判れば情報を送ろう」
「ならばワシからもだ。これはワシのプライベートな物、逆探知などの心配はない」
別れ際にビアンから差し出された特殊コードで作られた連絡コードを受け取り、ダイテツもプライベートな端末の連絡コードをビアンに渡し、クロガネから譲られた支援物資を乗せてP4ー078を後にする。
「良かったのかね、グライエン」
「ああ、今私が姿を見せて政治の場にいる私が偽者とハガネが知るほうが危険だ」
「もはや政治家も軍上層部にもどれだけの百鬼帝国の鬼が潜り込んでいるかも判らないからな」
ダイテツが訪れた時にその事を伝えるか否かを悩んだ。だが、今ここでそれを告げればダイテツ達は不信感を抱くだろう――そうなれば上層部の中に潜んでいる鬼に目を付けられるだろう。
「疑心暗鬼に陥るのが1番危険だ」
味方と敵の区別がつかない状況で味方の中に鬼がいると明らかになるほど恐ろしい事はない。今はまだ鬼の中には人間に完全に擬態できる存在がいると言うことだけを明らかにし、急に言動が変わった相手に注意しろと警告するのがやっとだった。
「それでグライエン。次の目的地だが、本当にニューヨークで良いのかね?」
「ああ、グライエンの家に残されている資料によればそこに旧西暦の資料が残されている。そこに百鬼帝国の資料があることを願う事にしよう」
グライエンの家に伝わっているゲッターロボの資料。それと同じ物がニューヨークにあると言う話を聞いて、ビアン達はイングラムを回収した後。ニューヨークへ向かうことを決めるのだった……。
ビアン達が動き出した頃、月のセレヴィスシティのカフェ街に武蔵とカーウァイの姿はあった。
「んーうめえ。でも、こうちょっと物足りない感じですね」
「カフェ街だからこんな物だろう。それよりも余り食いすぎるなよ、まだ私達は動かなければならない」
「了解っす」
パスタを食べ終え、ナプキンで口元を拭った武蔵は砂糖とミルクをたっぷり入れたコーヒーを口にする。
「それで次は?」
「リン社長に言われているエリアを見て回る。イスルギ重工の工場で何か不味い事になっているそうだからな」
今カーウァイと武蔵はリンの依頼でセレヴィスシティにある工場街を見て回っていた。その理由はイスルギ重工の管理する製造ラインに申請されている部材よりも多くの部材、そして推進剤などが納入されている痕跡があったからだ。連邦に言っても賄賂で黙り込んでいる以上、別口で証拠を掴む必要があったからだ。
「ん? な、お前はもがっ!? 「ふんッ!」うっ……」
侵入したイスルギ重工の工場で行き成り研究員とはちあった武蔵とカーウァイだったが、武蔵が素早く研究員の口を塞いで腹に拳を叩き込んで意識を刈り取る。
「カーウァイさん。着ます? それなら剥ぎ取りますけど?」
「いや、良い。私とこいつでは体格が違う。どうせバレる変装なら必要ない」
「じゃ、喋られないように縛り上げて、カードキーとかを奪いますね」
カーウァイの返事を聞いてから武蔵は用具入れに気絶した研究員を引きずり込み、てきぱきと後始末をする。その手馴れた仕草を見てカーウァイは関心半分、呆れ半分という様子だ。
「お前がまさかここまで隠密行動を出来ると思ってなかった」
「必要に駆られて覚えただけですよ、まぁ昔はどうしてもゲッターのパイロットになりたくて早乙女博士にも同じ事をしましたけどね……まぁ若気のいたりって事でんじゃま。行きましょうか」
帽子もサングラスも身に付けず堂々と武蔵とカーウァイは歩みを進める。獅子身中の虫――イスルギ重工が行っている悪事の証拠を手にする為に武蔵とカーウァイはたった2人で厳重な警備が敷かれているイスルギ重工への最深部へと侵入している頃。セレヴィスシティの頭上をヒリュウ改が通過していくのだった……
第43話 戦う理由 その1へ続く
今回は短いですがエンドデモなのでこれくらいで行こうと思います。次回はまた宇宙ルートで話を進めて行こうと思います。アラドと武蔵とかを何とか遭遇させたいなとかバラルとかを出して行こうかなとか色々考えて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い