第44話 戦う理由 その2
セレヴィスシティの駐在連邦軍大佐は目の前の光景を受け入れられないでいた。
「ば、馬鹿な……最新鋭機の拠点防衛用だぞ!? 何故こうも簡単に撃墜されるッ!? こ、これでは私の責任問題になるッ!」
ヒリュウ改に出撃禁止命令を出し、駐在軍で襲撃者を撃退しレフィーナがヒリュウ改に相応しくないと弾圧し、レフィーナを基点にレイカー、ダイテツの責任問題を追及するつもりだった大佐は見る見る間に撃墜されて行く部下の機体を見て顔から血の気を失った。
「相手はただの旧式だぞ!? 何故こんなことになるッ!?」
相手はコスモリオン、アーマリオン、ガーリオンのゲシュペンスト・MK-Ⅲと比べれれば格段に性能の劣る機体だ。それなのに禄に抵抗も出来ず撃墜され、鹵獲されていくゲシュペンスト・MK-Ⅲの姿に大佐は冷や汗を流し始める。
「ひ、ヒリュウ改に伝達! 緊急出撃だ! お前達の初動が……あ……」
自分の裁量ミスで最新鋭機であるゲシュペンスト・MK-Ⅲを8機も失った。降格、いや軍事裁判にもなりかねないとヒリュウ改に責任を押し付けようと指示を出そうとしたがそれは余りにも遅すぎた。司令部を覗き込む赤いカメラアイを光らせるリオンのレールガンの銃口が司令部に向けられ、賄賂、汚職に塗れた駐在軍司令とその司令に付き従い、セレヴィスシティの民間人に横柄な行動を取り続けた部下共々その身体はレールガンの銃弾に押し潰され、わずかな肉片だけを残しこの世から消え去るのだった……。
「武蔵、待て。ここは様子を見るぞ」
「え? いやいや、正気ですかッ!?」
セレヴィスシティの上空を旋回するリオン達を見てゲッターD2に乗り込もうとした武蔵をカーウァイが呼び止めた。今正に司令部が吹き飛ばされたのを見て何故待機なのかと武蔵がカーウァイに食って掛かる。
「落ち着け、あいつらの動きは明らかに陽動をかけている。私達を誘い出そうとしている可能性が高い」
「それならなおの事出撃するべきでしょッ!?」
「だから落ち着くんだ、今この状況で私達を誘い出すことにメリットのある者は少数だ。私達が戦った人造人間が搭載された戦闘機の事を
考えろ、エアロゲイターとは別口の異星人の可能性があるんだぞ?」
「いや、それなら出撃するべきでしょ!」
カーウァイの説明を聞いても出撃しようとする武蔵にカーウァイは溜め息を吐いた。困っている人を見捨てて置けないと言う武蔵の気質は好感の持てる物だ。だが、今この状況での武蔵の気質は武蔵だけではない、セレヴィスシティの住人全てを危険に晒し兼ねない行動に繋がる。
「私達を誘い出すという事は私達を倒す算段があると言う事だ。下手に出撃して、MAPWでも打ち込まれてみろ。迎撃出来なければセレヴィスシティ全体を危機に晒すことになる。それもただのMAPWなら良いさ、毒物系等の深刻な後遺症を齎す類だったのならば月全体が死の星になるぞ」
カーウァイが危惧したのはそこだ。少なくない敵をゲッターD2とゲシュペンスト・タイプSは倒してきていた――それはゲッターD2の存在をこれでもかと示す事に繋がっている。少し考えれば判る筈だ、ゲッターD2に正面から当たれば勝てる可能性の方が低い。それなのに旋回行動などを繰り返し誘い出そうとしているのは倒す算段あるいは、パイロットに強い精神的負荷を掛ける目的があると言う可能性が極めて高い。
「……オイラが出撃したほうが危険って事ですか?」
「ああ、それは武蔵だけじゃない。私も同じ事だ。MAPWの可能性がある以上――今私達が動くのはいらないリスクを高める事にしかならない」
本音を言えばカーウァイだって出撃したいのだ。だが、それをすれば月全体を危険に晒す可能性がある。その可能性が僅かでもあれば、カーウァイは慎重にならざるを得なかった。教導隊を率いていた隊長という役職、そして敵が強大で勝てない可能性がある場合。指揮官として取るべき選択――脳裏に浮かぶ複数の選択肢の中でもっとも確率が高く堅実な策がMAPWによる広範囲を薙ぎ払う事だった。
「それにだ。これから広がる戦火を私達だけで消す事なんて出来はしないんだ。武蔵」
ゲッターD2は確かに強い。単騎で戦場の雰囲気を一瞬で変える事だって出来るだろう。だがそれには限界がある――同時に部隊を展開されれば、必ずその手から零れ落ちる物が存在するのだ。
「その上宇宙でインベーダーが目撃された、下手に動けば月面がインベーダーに埋め尽くされるぞ」
インベーダーはゲッター線に反応する。可能な限りは倒したが、生き残りがいる可能性がある以上カーウァイは月面での戦いを避けるべきだと考えていた。
「じゃあオイラはどうすれば……」
「簡単だ。仲間を頼る事を覚えるんだ――武蔵1人で何もかも背負う必要はない。お前の仲間は守られなければならないほどに弱い存在か?」
「違います」
「だろう? ならば、仲間を信じろ。大丈夫だ、ヒリュウ改は無事にこの戦いを切り抜けるだろう」
武蔵とカーウァイの隠れている廃工場の上を通過していくヒリュウ改の姿を見上げ、カーウァイは武蔵に仲間を信じろともう1度言うのだった……。
ヒリュウ改から避難勧告とリオンからのミサイル攻撃で激しく振動を繰り返すマオ社の通路をよろめきながら格納庫に向かってリン達が歩み進める。
「ちい、あの無能な輩め。最後まで余計な事をしてくれる」
駐在軍の司令部が壊滅し、駐在軍からの出撃禁止命令が解除されたと判断したヒリュウ改が出撃した事で、先程よりも振動の数は減っているが、ヒリュウ改が出撃するまでの時間のロスでどれだけの被害が出ているかを考えるだけでリンは頭が痛かった。
「……常務、従業員の避難は?」
「プロジェクト関係者以外はシェルター内に入りました。後は……」
ユアンが一瞬言葉に詰まった。それが何を意味するかをリンは一瞬で理解していた。
「開発中の試作機やパーツか」
ケイオスプランで開発を進めているアルブラスター・アルガードナーを初めとした簡易版Rシリーズ。そしてゲシュペンスト・ヒュッケバインMK-Ⅲ用のアーマーパーツ等……容易に移送出来ない装備が余りにも今のマオ社には多かった。
「ええ。 現在、ハミル博士やリョウト達が最下層ブロックへ移送させている所ですが……動力の問題で起動出来ない、アル・ブラスター、アル・ガードナーの2機の移送に手間取っています」
「仕方ないな、あの2機は新型エンジンを搭載する予定だったからな」
アルブレードの成功に続き、R-2、R-3の量産計画も大きく進んだ。だがその反面トロニウムを使用せずに高出力を得る為に試作型のエンジンの開発を待っていた2機は装甲こそ装着しているが、エンジンが無く張子の案山子に等しい状態だった。
「仕方ない。常務。今、使える機体は何体残っている?」
リンの言葉のユアンが眉を細める。リンが何を言おうとしているのかユアンが察するのは簡単であり、常務という立場からリンを止めなければならないのだが、リンの性格上止めれないと判ってしまいユアンは深く溜め息を吐いた。
「万が一に備えてだ。すぐに使える物は?」
「トライアウトから帰って来たゲシュペンスト・MK-Ⅲの砲撃戦用とデータ取り用に改造したヒュッケバイン・MK-Ⅲの剣撃と射撃仕様がそれぞれ1機ずつ。それとファルケン・タイプKと量産型ゲッターロボですね。残りはバラしていたり、シーリングの解除に時間が掛かったりで使えません。後トライアウトで使用された機体なので、各パイロットの操縦の癖が付いていて、かなり操縦しにくい筈です、それに各関節の磨耗具合を考えると耐久力はかなり落ちると思います」
各基地で持ち回りで使われたゲシュペンスト・MK-Ⅲとヒュッケバイン・MK-Ⅲは関節部の交換が必要なほどに磨耗していた。だから廃棄する前提でデータ取り用に改造していたが、その中身も外もボロボロに近い。
「私はあの2人に出撃要請を出すべきだと思いますが……」
「駄目だ。確かにあの2人に出て貰えば退ける事は出来るだろう。だがその後に齎される被害を考えれば出撃要請は出来ない」
「しかし「5機もあれば十分だ。ヒリュウ改のPTと連携して、セレヴィスシテイを守る事くらいは出来るだろう」
「ですがタイプKと量産型ゲッターロボはまともに運用できないですよ!?」
「それも判っている。私が剣撃型のカスタマイズのヒュッケバイン・MKーⅢで出る。ラーダにはゲシュペンスト・MK-Ⅲ、リオには射撃使用のヒュッケバイン・MK-Ⅲで出て貰う。出撃準備を……」
「ま、待ってください、社長! 彼を、アラドにも機体をッ!」
「ラーダ、正気かッ!?」
アラドを連れて走ってきたラーダの言葉にリンは思わずそう叫んでいた。精神鑑定を行なうと言ってから1時間ほど、機体を貸すには余りにも時間が短い。レフィーナとダイテツ、そしてレイカーの観察眼を疑っている訳では無いが機体を貸し与えるには余りにも博打が過ぎる。
「お願いします! 俺にも機体を貸してくださいッ! 逃げたり、裏切ったりしませんから! お願いしますッ!!!」
「何故、そこまで機体を貸して欲しいと言うんだ。アラド」
深く頭を下げるアラドにリンはそう言葉を投げかけた。これが月の出身と言うのならば生まれ故郷だからという理由で納得も出来る。だが、幼い頃の記憶が無く、自分の出身地も定かではないアラドが命を賭ける理由はない。だから何故だと問いかける。
「俺に飯を奢ってくれて、大事な事を教えてくれた人がこの近くに居るんですッ! 俺はその人を助けたいんですッ! それにあの人の……武蔵さんの言葉で俺は戦う理由が判ったんですッ! だから俺はあの人を助けたいんですッ!」
アラドから出た武蔵の名前にリンとユアンは驚いた。武蔵とカーウァイを廃工場で匿っているのはリンとユアンしか知らない事だ。
「武蔵!? 武蔵君に会ったの!? どこで!?」
「え、えっと、ち、近くの公園でですけど……」
ラーダは武蔵を匿っている事を知らないので、MIAの武蔵が生きているかもしれないと言う言葉にアラドの肩を掴んで詳しい事情を聞こうとしている。
「ラーダ、後にしろ」
「で、ですが、社長ッ! 武蔵君が生きて月にいるのなら早く見つけないと」
「それは判っている。だが、同名の別人という可能性の方が高いだろう……今は襲撃者を退ける方が先だ。アラド、そこまで言ったんだ。途中で撃墜されるなんて真似はするなよ」
「うっす! ありがとうございますッ!」
リンからの出撃許可が降り、アラドも格納庫へと向かう。
「リョウト! アラドをタイプKに乗せる! OSのセッティングを急げッ!」
「しょ、正気ですか!? これはぶっつけで操縦出来るようなPTじゃないんですよ!?」
マ改造されすぎて、並みのパイロットでは乗れない機体のなっているビルトファルケン・タイプKにアラドを乗せると聞いてリョウトが声を荒げると、一緒に作業してたカークとマリオンが振り返った。そしてアラドを見つめ、にやりと笑った。
「アラド・バランガにタイプKを預けるのは無理だ」
「ええ、私もですわ。でも、タイプK以上にアラドに相応しい機体がありますわよ」
アラドの簡易的な身体能力の測定結果を知るマリオン達はファルケン・タイプKに乗せるよりも相応しい機体があると笑った。
「相応しい機体? お前らまさか「あれ」を使うつもりか!? それこそ正気か!?」
「ミハル博士!? 何を言っているんですかッ!?」
リンとリョウトに怒鳴られるが2人の意見は変わらなかった。
「アラド。この状況を覆せる機体が1機ある」
「ですが、並の人間では操縦出来ず気絶する代物ですわ」
「「それでも乗るか(乗りますか?」」
「乗ります!!」
2人の問いかけに迷う事無く乗ると返事を返し、アラドはマリオン達に連れられて地下の格納庫へと向かう。
「ええい、リョウト。ヒュッケバインの剣撃・射撃用の設定とゲシュペンスト・MK-Ⅲの準備を始めろ! リオ、ラーダ! 出撃準備だッ! いそげッ!」
研究者2人が暴走しているが、止める手段はないと気付きリンはイラついた素振りを見せながら、リョウトにそう指示を出すのだった……。
セレヴィスシティとマオ社を守らなければならないヒリュウ改のPT隊は必然的に拠点防衛と敵を積極的に撃墜に行く2班に分かれる事を強要されていた。8人しかパイロットがいない以上分断されると言うのは考えられる最悪の展開だったのだが、強化パーツを装備したヴァイスリッターとR-1の機体性能が想像以上に高かった事で、ヴァイスリッターとR-1をフォワードに据えて、ギリアム達はセレヴィスシティとマオ社の防衛に集中する事が出来ていた。
『リュウセイ、前に出すぎよ。セレヴィスシティに帰還出来る範囲で戦いなさい』
「りょ、了解ッ!!」
ヴィレッタからの忠告で逃げるアーマリオンを追おうとしていたR-1はその動きを止めて、一旦後退する。その直後セレヴィスシティの方角から放たれたレールカノンがアーマリオンを貫き粉砕し、エネルギー波がコスモリオンを纏めて3機飲み込み爆発させる』
『レオナ少尉、命中しましたか?』
『レオナちゃん命中しただろ!』
『ええ、ワンアプローチとはお見事です。ラッセル少尉』
『いえいえ、レオナ少尉の正確な着弾予想のお陰ですよ』
『待って! レオナちゃん。俺を無視しないでッ!?』
レオナのガーリオンが着弾地点を予想し、射角を計算しラッセルのゲシュペンスト・MK-Ⅱとジガンスクードのギガワイドブラスターによる範囲攻撃でセレヴィスシティとマオ社に侵入しようとしているコスモリオン達の動きは完全に封殺されていた。
『ラッセル、あんまり無理すんなよ』
『大丈夫です、中尉。まだまだ持ちそうですから』
現在ラッセルのゲシュペンスト・MK-Ⅱはゲシュペンスト・MK-Ⅲ用の砲撃装備を無理やり装備していた。フレーム強度が異なるゲシュペンスト・MK-Ⅱのフレームは一撃撃ち込む事に大きく軋んでいたが、それでもラッセルは大丈夫だと笑って返事を返したが、フレームの耐久値がイエローとレッドゾーンの中間にあり、口調ほど余裕は残されていなかった。
『こんな時に嫌な報告になりますが、敵影更に増加。力づくで私達の包囲網を抜けるつもりのようですわ』
索敵をしていたレオナから更に敵影確認の言葉を聞いてカチーナ達の眉間に険しい皺が寄った。
『ちっ、まだ攻め込んでくるか……ギリアム少佐このまだと更に押し込まれちまう。あたしもリュウセイとエクセレンの方に回るか?』
セレヴィスシティとマオ社を守る必要があり、思うように動けないカチーナがイラついた様子でギリアムにフォーメーションの変更を提案する。この波状攻撃が何時まで続くか判らない以上慎重にならなければならない。だがなんらかしらのアクションを起さなければ何時までもこの波状攻撃が続くとカチーナは直感で感じていた。そしてそれはギリアム達も感じていた――だからカチーナの提案を直ぐに受け入れた。
『カチーナ中尉。俺とヴィレッタでセンターに入る。オクトパス小隊は引き続きセレヴィスシテイの……』
『3時方向に熱源反応多数! 識別はバレリオンとアーマリオンです!』
ギリアムが指示を出している間にアラートが鳴り響き、ユンの報告の声が響きバレリオン部隊とそのバレリオン部隊の上空に浮かぶ、7機のアーマリオンの姿にレフィーナは顔を歪めた。
「どうやら敵はよほどセレヴィスシティを掌握したいようですね」
「ええ、そのようですな。しかし、これはちと不味いですな」
アーマリオンの最大特徴はAMでありながら、全くの別機体を思わせる程の改造を施せるその拡張性にある。背部に大型ブースターを複数装備したアーマリオンは防衛網を強行突破し、セレヴィスシティを制圧する為に送り出されたのは明らかだった。更にバレリオンで周囲を固めることでアーマリオンへの攻撃を防ぐのと同時に、アーマリオンに隣接しようとするリュウセイ達の動きを止める役割も果たしていた。
「艦回頭! 本艦で敵機を迎撃します!」
バレリオンを撃墜しなければアーマリオンのセレヴィスシティ侵入を許すと判断したレフィーナは、コスモリオン、ガーリオンの部隊に無防備な船体をさらす事になるがヒリュウ改でバレリオンの迎撃に出る事を決断した。
『いや、その役割は私達でやるッ!』
レフィーナの指示が飛んだ直後、広域通信でリンの声が響きマオ社の格納庫から3体のPTが出現した。
『これより貴隊を援護する。バレリオンの撃墜はこちらに任せてくれ』
『わお! シャッチョーさん自らご登場!?』
『セレヴィスや開発中の新型に何かあったら大変ですもの。 私達もお手伝いしますわ』
『あんまり派手に動けないですけど、バレリオン相手なら問題ないです! エクセレン少尉達はアーマリオン達をお願いします!』
リン、リオ、ラーダの3人が加わり、戦況は少しずつだが変わり始めていた。
「ちっ、この程度ではまだゲッターロボを炙りだすには足りないか」
だがこの戦況をコントロールしている者はこの展開を受け入れるつもりは無く、更なる攻撃の一手を打ち出そうとしているのだった……。
リン、リオ、ラーダの3人が加わった事でリュウセイとエクセレンは先ほどまでの、何時でもセレヴィスシティに帰還出来る位置から移動し、より攻撃的な位置取りをし、バレリオン部隊とアーマリオン部隊をカチーナ達に任せ、コスモリオン、ガーリオンの混成部隊への積極的な攻撃を始めていた。
「オラオラッ! こっから先は通さないぜッ!!」
換装装備を装着している余裕が無く、標準装備しかしていないR-1だが、その機動力とパワーを活かしガーリオンに突撃する。それは一見無謀な行動に見えたが……コスモリオン達の放つレールガンはR-1が展開している念動フィールドに弾かれ、R-1の装甲にただの1発も届かない。
「行くぜR-1ッ!!!」
L5戦役から高まり続けていたリュウセイの念動力はアルブレードに乗っている間も高まり続け、そしてリクセントで見たゲッターロボ、宇宙空間で遭遇したペルゼイン・リヒカイトと新型ドラゴンとの戦いを見て更に高まり、T-LINKシステムを搭載していないアルブレードでも念動刃を作り出す事に成功していた。
「破を念じて刃となれッ!!!」
そして今念動力を十分に引き出す事が出来るポテンシャルを持つR-1に乗った事でその高まり続けた念動力はやっとその出口を見つけたのだ。
『おいおい、マジか……』
『R-1でこんなことまで出来るんですの?』
R-1の背後に浮かび上がる無数の念動力で出来た刃にタスクとレオナは思わずそう呟いていた。タスクとレオナも念動力者だが、ここまでの事は出来ない。確かにタスク達の念動力も向上していたが、リュウセイの成長具合とは隔絶した差があった。
「敵を貫けッ! 念動爆砕剣ッ!!!」
R-1の指の動きに沿って一斉に念動力の刃がコスモリオンとガーリオンに突き刺さり爆発する。だが撃墜するには威力が僅かに足りず、1度落ちた速度を再び上げてコスモリオンとガーリオンはR-1の頭上を通過する。セレヴィスシティに向かおうとしたがその瞬間上空から射抜かれて爆発四散する。
『OK、操縦の感じは掴んだわ、ここからは本気で行くわよぉッ!』
アルトアイゼンが強化アーマーを装着すると、ヴァイスリッターはその速度について行けず、連携を取れなくなると言う欠点があり、L5戦役の後からヴァイスリッターの強化はマリオンの中ではゲシュペンスト・MK-Ⅲの設計の次に重要な事になっていた。そしてゲシュペンスト・MK-Ⅲがトライアウトに合格するのを確認すると直ぐにヴァイスリッターの強化に取り掛かっていた。
『さーヴァイスちゃん、全力で行くわよッ!』
可変式のウィングが展開され、ヴァイスリッターの姿が掻き消える。
『それッ!』
『!?』
ガーリオンの目の前に現れると同時に急上昇し、ガーリオンの攻撃を誘発しそれを回避すると同時に再び加速し、背後を取るとオクスタンランチャーの銃口を背後からコックピットに押し当て、一撃でガーリオンを粉砕する。
『ふふ、良いじゃない。さーどんどん行くわよッ!』
左右からのコスモリオンのレールガンを急旋回して回避し、バレルロールしながら左腕の5連装ビームキャノンでコスモリオンを撃ち抜いた。
「しゃあッ! T-LINKナッコォッ!!!!」
高度が落ちたコスモリオンの動力部にRー1のT-LINKナックルがめり込み爆発する。だが敵陣のど真ん中に切り込んだことでコスモリオンとガーリオンの攻撃の矛先が一斉にR-1に向けられるが、ゲシュペンスト・リバイブ(S)とゲシュペンスト・タイプRの放ったメガバスターキャノンとM-13ショットガンによる援護が入り、R-1は体勢を立て直す時間を得る事が出来ていた。
『操縦の感覚は掴めたみたいね、それと余り突っ込む過ぎないことよ。念動フィールドを過信しすぎては駄目』
「ああ、すまねえ。隊長……思ったより操縦の感覚がシビアで、でももう大丈夫だ」
『エクセレンは?』
『こっちも大丈夫よん♪ ヴィレッタお姉様』
機体パワーの上昇に最初は手間取っていたが、今は完全に乗りこなし、波状攻撃で攻め立ててくる無人機の群れを完全に押し留めていた。
『ターゲットロック。そこよッ!』
『貴方の動きはもう捉えたわ……ッ』
セレヴィスシティの正面と両側面からの侵入を試みる無人機群に向かってレールカノンの音速の弾丸が迫る。回避も許さず、上半身を消し飛ばされたアーマリオンは爆発しながら墜落し、月面に落下すると爆発炎上する。
『少尉は無理せず、ジェネレーターの冷却をッ!』
『すいません、少し無理をしすぎました』
ラーダとリオが加わり、無理に砲戦使用の装備を装着していたゲシュペンスト・MK-Ⅱのジェネレーターはオーバーヒート寸前で、機体の各所から火花を散らしていた。その姿を見てリオがラッセルの位置と立ち位置を後退し弾幕を張り、突っ込んできたアーマリオンの出鼻を挫き失速させる。
『捉えた。逃がさんぞッ!』
『ライトニングステークセットッ! ぶち抜けッ!!』
それを見てリンとカチーナがアーマリオンの撃墜に動くと、待ってましたと言わんばかりにバレリオンがその銃口をヒュッケバインMK-Ⅲとゲシュペンスト・MK-Ⅲに向ける。だがその銃弾が放たれることは無く、その巨体を大きく揺らす事になった。
『主砲、副砲照準あわせッ! てぇッ!!』
『てめらの好きにはさせねえぜッ! こいつでぶっとびなぁッ!』
ヒリュウ改からの連装主砲と副砲とジガンスクードのギガワイドブラスターの直撃を受け、バレリオンの最大の特徴である大型レールガンを粉砕されてしまえばバレリオンの攻撃手段は一気に封殺される。
『やるじゃねぇか、社長さんよ』
『ふ、まだまだ。私は現役さ』
バレリオンからの援護射撃を受けることが出来なかったアーマリオンは、コールドメタルブレードの一閃とライトニングステークの一撃を受け、増設された大型ブースターによる加速を生かす事が出来ず爆発し墜落する。執拗な波状攻撃に苦しめられていたリュウセイ達だが、連携とフォーメーションを組む事でセレヴィスシティへの無人機の侵入を防いでいた。
「ッ! やべえッ! クレバスに気をつけろッ!」
その時だった。何かを感じ取ったリュウセイがそう叫んだ瞬間、クレバスから飛び出したアーマリオンがブレード・ソニックブレイカーを展開し最大加速でセレヴィスシティへと向かう。
『止めろッ!』
誰が叫んだのかは判らない、いや全員が叫んでいたのかもしれない。突貫するアーマリオンに攻撃が命中するが完全に展開されているブレード・ソニックブレイカーの防壁を貫く事が出来ず、アーマリオンがセレヴィスシティに侵入する寸前にマオ社の方から飛来した何かに両断され爆発した。アーマリオンを両断した何かはリュウセイ達の目の前で音を立てて月面に突き刺さった。
「げ、ゲッタートマホークッ!?」
その形状は紛れも無くゲッタートマホークの姿だった。――何故ゲッタートマホークがここにとリュウセイ達が驚いていると、ゲッタートマホークの飛来した方向にある地下格納庫から灰色のゲッターロボがカタパルトによってリフトアップしていた。
「りょ、量産型ゲッターロボッ!?」
『おいおい、誰があんなもん動かしてるんだ』
『マジか……あれ動かせるやついたのかよ』
オリジナルと比べれば衝撃は少ないが、それでも常人なら気絶するレベルのGや衝撃がある量産型ゲッターロボが動いていると言う事に少なくない衝撃を受けるリュウセイ達だったが、量産型ゲッターロボから響いた声に更に驚かされることになった。
『うぐう……こ、これちょっとやそっとって言うレベルじゃないんですけどッ!?』
『当たり前だ、リミッターを外しているからな』
『文句を言う暇があったら敵を倒しなさい、エネルギー配分は細心の注意を払うんですわよ』
アラドの苦しそうな声に続いて冷静なカークとマリオンの声が響き、完全に姿を現した量産型ゲッターロボのカメラアイが力強く輝いた。
「あ、アラド!? お、お前が動かしてるのかッ!?」
それはラーダによって精神鑑定を受けているはずのアラドの声だったからだ。
『うっす! 俺も手伝いますッ! セレヴィスシティはやらせねえぞッ! かかってこいッ! こっから先には1歩も行かせねえぞッ!!』
ゲッタートマホークを構えた量産型ゲッターロボから響くアラドの声。その姿はリュウセイ達の知るゲッターロボと色も姿も僅かに異なっている。それでも味方を鼓舞するその力強さは紛れも無く、ゲッターロボの姿だった。
『ヘッ……あのガキ、なかなか根性あるじゃねえか』
『そうですね、この状況で味方が増えてくれるのはありがたいです』
『マジかあ……信じらんねえ』
『貴方は直ぐ諦めましたからね』
『いやいや、無理だって!? あれ暴れ馬ってレベルじゃねえんだよッ!』
安定して動かすにはリミッターを幾つも使用してやっと動かせるレベルの量産型ゲッターロボ。それをリミッターもなしで動かしているアラドは正直異常だった。新西暦の人間では、恐らく誰もフルパワーで動かせないとまで言われたそれが動いている事にカチーナ達は驚きを隠せなかった。
『アラド、こうして出てきたんだ。泣き言は聞かんぞ』
『大丈夫、貴方なら出来るわ』
「アラドッ! 一緒に頑張ろうぜッ!」
『うっす! しゃあ、行くぜぇッ!!』
リュウセイ達の激励の声を聞いてアラドが気合の入った返事を返した直後。ヒリュウ改からの警報が鳴り響いた。
『8時方向に局地的な重力異常を感知ッ! こ、これは……空間転移反応ですッ!!』
ユンの空間転移反応感知の報告の直後。セレヴィスシティの南西端に異形の特機が地響きを上げて転移してきた。
『な、何だありゃッ!?』
『か、怪獣かッ!?』
現れたのは黄色の装甲を持つ巨大な恐竜のような姿をした超巨大特機だった。
『アインスト……!? いえ、違うわッ!!』
『なるほど、あれが人造人間を使って我々に攻撃を仕掛けてきた敵と言うわけね』
『そのようだな……全員警戒を強めろ、このタイミングで出て来たんだ。俺達ごとセレヴィスを潰すつもりかもしれん』
凄まじい威圧感を放つ超巨大特機の出現にギリアム達は警戒を強め、恐竜のような特機――ガルガウを睨みつけるのだった……。
第45話 戦う理由 その3へ続く
ファルケンLがマ改造されてファルケン・キメラになっているので、アラドは量産型ゲッターロボで出撃中。ちなみにタイプKのモチーフはラピエサージュなのであしからず。アラドは普通に旧ゲッターロボなら操縦出来ると思うんですよね。D2になるとどうなるか判りませんけども……なので、ガルガウと戦う際に量産型ゲッターロボを投入します。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い