進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第46話 戦う理由 その4

第46話 戦う理由 その4

 

ガルガウとの戦いを終えたリュウセイ達はこれからの事を話し合う為にマオ社のオフィスに集まっていた。

 

「アラドの奴、大丈夫かな?」

 

「思い切りの良さは買うが、思い切りがありすぎだ。あの場合は追ったらいけねえ……あれはそういう場面だった」

 

撤退しようとする相手を追撃する時は細心の注意を払う必要がある。余力を残して撤退するのと、余力も無く逃げる……前者ならば撤退する動きに合わせて、追撃に出た相手を確実に仕留める為の刃を隠している。後者ならば確実に追って仕留めるが、あの戦いの最後の場面に上空から放たれた高出力のビーム――それを見てカチーナ達は伏兵がいると悟り追撃を止めた。だがアラドはそれを追ってしまった……それが量産型ゲッターロボの大破という結果を齎してしまった。

 

「ギリギリの所でベアー号の部分が飛び出てきたから無事だとは思うけど……」

 

「やっぱり心配ですね」

 

量産型ゲッターロボはオープンゲットの機能は再現されていない。一応分離状態にして、装備を変更する事でゲッター2、3に姿を変える事は出来るが戦闘中の分離・再合体は元から想定されていない――いや、正しくは出来ない。新西暦の素材ではゲッター合金の柔軟性に迫る物は無く、3つのコアブロックと、パーツの変更によってゲッターの形状変化を再現するのが今の限界だった。しかし、その中途半端なゲッターロボの合体機能の再現がアラドの命を救う事になっていた。

 

「悪運が強いって奴ッスね」

 

「もしかしたら貴方より悪運が強いんじゃないですの?」

 

「そりゃ無いっスよ~レオナちゃん」

 

クローと火炎放射の段階でアラドは気絶しており、ダメ押しのミサイルがイーグル号とジャガー号の中間部分で炸裂した時に運よく合体用のボルトが弾け、アラドが操縦していたベアー号に当たる部分だけが弾き飛ばされた。今は医者が見てくれているようだが、アラドの安否をリュウセイ達は案じていた。

 

「アラドの事を心配なのは判るけど、こっちの話し合いにも、もう少し集中して欲しいわね」

 

「何かあればラーダが教えてくれる。今俺達がやるべきなのはあの巨大特機の分析結果についてだ」

 

しかしアラドの身を案じている訳にも行かず、ギリアムとヴィレッタに忠告され、オフィスのメインモニターに写されているガルガウの映像にリュウセイ達の視線が集まる。

 

「ではリョウト。簡易的な分析結果で構わない。現段階で判っていることを教えて欲しい」

 

「はい。まずですが、この怪獣型の特機の装甲ですが、ビーム兵器に被弾する事で自己修正能力を持つ特殊な金属で構成されているようです」

 

リョウトがコンソールを操作すると、ビームが命中した箇所の損傷が修復されている光景と、ビームに焼かれている光景の2つの映像が再生される。

 

「こっちのビームはゲシュペンスト・リバイブの物ですが、通常のビーム兵器は無力化されると考えていいでしょう」

 

「ビームを無効にする装甲……やはり地球の技術ではないと見て間違いないですわね」

 

「ビームコートとかならわかるけど、ビームを吸収して、装甲を修復するなんて言うのは整備兵としてもありえねえって断言出来るぜ」

 

整備兵も経験しているタスクがビームを吸収する装甲なんてありえないと断言した。

 

「それにこの映像を見る限りでは装甲だけではなく、パワーも相当な物があると判りますね」

 

「ガンドロを持ち上げて振り回すなんて芸当が出来るのはゲッター3くらいだと思ってたぞ、あたしは」

 

500t近い巨体を持ち上げれる機体と言うだけで地球の技術ではないと言うのは明らかだった。

 

「それに胸部の搭載されているビーム砲、口部の火炎放射、両腕のクローと特異な能力が無い分、戦闘においての癖が少なく、そして武装の少なさを補う馬力もある。それらの点から僕はこの機体が例のバイオロイド兵の指揮官機であると推測します」

 

リョウトは推測と言ったが、それは限りなく確証があると言っても良かった。

 

「今まではこちらの機体を鹵獲して運用していたが、このタイミングで特機を切って来た理由はなんなんだろうな」

 

「ゲッターロボを執拗に狙ってたし、なんか滅びの化身とか言ってたよな?」

 

「そうそう、あの機体のパイロットとゲッターロボに何か確執でもあったのかしら?」

 

「でも、武蔵君はそんな事言ってなかったわよ?」

 

ガルガウのパイロットはゲッターロボに強い憎悪を見せていた。それはDC戦争で戦った恐竜帝国のバット将軍に匹敵するほどの強い恨みの感情だった。

 

「ゲッターロボは様々な遺跡で発見されている。恐らくそれらと関係しているのだろう」

 

「全くロテクの癖に、随分とオカルト染みた事になって来ましたわね」

 

「カーク博士、マリオン博士、量産型ゲッターロボはどうなった?」

 

リンが量産型ゲッターロボがどうなったか? と尋ねるとカークとマリオンは揃って肩を竦めた。

 

「言いにくいが、完全にスクラップだ」

 

「至近距離の火炎放射がトドメになりましたわね」

 

量産型ゲッターロボが完全に破壊されたと聞いたのに、リンの顔色は明るい物だった。

 

「なんか嬉しそうね。シャッチョーさん?」

 

「無理やり預けられて、強化しろとか言われていたんだ。破壊されればその分他の機体の開発が出来ると判れば、機嫌の1つも良くなる。ヒュッケバイン・MK-ⅢのタイプLとMの開発で今マオ社は手一杯なんだ」

 

そもそも敵対企業のイスルギ重工がメインになって開発されている量産型ゲッターロボを預けられても困るだけだとリンは言い切った。

 

「まぁシャッチョーさんの機嫌が良いならそれに越した事はないけどね」

 

「本物のゲッターロボを知っている私からすればあんなパチモンの開発に関わるなんて悪い冗談ですわ」

 

「確かにな、無理に複数の動力を搭載して火力を上げるにしても、パイロットがいないのでは意味がないからな」

 

マリオンとカークも酷評するほどに量産型ゲッターロボは酷い仕上がりだったようで、リュウセイ達も肩を竦めて苦笑するしかなかった。丁度その時だったオフィスの扉が開き、ラーダとその後に続いて、頭に包帯を巻いたアラドが姿を見せた。

 

「すんません……その俺、あの時夢中で……あいつをここで倒さないとって思って……ほんと、すんませんでしたッ!!」

 

オフィスに入るなりアラドは深く頭を下げて、己の独断専行を詫びた。

 

「アラド。思いきりは買うが、もう少し状況を見極める事を覚えるんだな。あの時のあいつは余力を残していたし、伏兵もいた。ああいう場合の撤退する素振りは罠だ。良く覚えとけッ!」

 

「うっすッ!!」

 

カチーナの言葉にアラドが元気よく返事を返す。その様子を見て、良しとカチーナは笑い肩を叩いた。

 

「お前に足りないのは実戦経験だ。これからあたしがキッチリ鍛えてやるから安心しな。お前タスクより、見込みがあるぜ」

 

「ひどっ!?」

 

「うっせ、お前は肝心な所で尻込みするからいけないんだ。アラドを見てみろ、結果は悪かったがあの思い切りの良さを見習えタスク」

 

ガルガウに突っ込んで行った姿を買うというカチーナにアラドが小さく手を上げた。

 

「なんだ? どうした?」

 

「いや、多分俺も普段だったら逃げてたと思うんですよ、でもマオ社に入る前に俺に色々とアドバイスをしてくれた人がいて……ここで引いたら、あの人があぶねえって思ったら怖いとかそういうのがどっか行っただけっス」

 

元来アラドの性格はタスクに似ている。もしもその出会いがなければアラドはガルガウに立向かうなんて事はしなかったと、嘘偽りの無い自分の気持ちを告げた。だからそこまで買いかぶられても困るとアラドは苦笑しながらカチーナの目を見て言ったのだ。

 

「あん? お前にアドバイス?」

 

「セレヴィスシティは退役軍人も多いからな。その類かもしれん」

 

「なんにせよ良い出会いがあったのね。良かったわね」

 

良い出会いがあったと笑うエクセレン達だったが、その話を聞いてラーダだけが目を細めた。

 

「アラド、その時の話なんだけど……皆にもしてくれるかしら?」

 

ラーダの言葉にアラドは不思議そうに首を傾げながらも、頷いて自分がマオ社に入れない間。近くの公園で出会った青年の話を始めた。L5戦役の時に民間兵としてハガネに乗り、L5戦役終結と共にハガネを降りたという青年に公園で出会い、ホットドッグを奢って貰いながら色んな話をしたのだと嬉しそうに話すアラド。戦いは怖い物だと、それでも自分が守りたい物を守るためには歯を食いしばって、恐怖に抗って戦わなければならない時があると言われ、しかし自分の命と引き換えなんて思うんじゃない――その言葉に感銘を受けたアラドは怖いと思っても、ガルガウに戦いを挑む事が出来たのだとリュウセイ達に話した。

 

「あ、そうそう。リュウセイとリョウトにまた今度って言ってたぜ」

 

「俺とリョウトに? 俺の知り合いで月に来ているのはリョウトとリオくらいだぜ?」

 

「……うーん。L5戦役の時の知り合いはセレヴィスシテイにいなかったと思うけど……アラド、その人の名前は?」

 

アラドの話を聞く限りではリョウトとリュウセイにかなり親しい人物のような印象を受けたが、リュウセイとリョウトには思い当たる人物がおらず、その青年の名前は? とリョウトが尋ねた。

 

「武蔵さんって呼ばれてましたけど……知り合いなんじゃ?」

 

「「「む、武蔵だってッ!?」」」

 

アラドがなんでもないように告げた武蔵の名前にオフィスにいた全員が声を荒げるのだった。

 

 

 

 

武蔵の名前を聞いて顔色を変えて詰め寄ってくるリュウセイにアラドは目を白黒させる事しか出来なかった。

 

「ほ、本当に武蔵って言ったのか!? 背格好はどんな感じだった!?」

 

「え、えっと、あんまり背は高くなくて、でも凄い筋肉質でちょっとこう……なんて言うんだろう? えっと髪を前で固める」

 

「リーゼントか!? 短いリーゼント風の髪型か!?」

 

「そ、そう! リーゼントって奴で、こう凄い優しそうな感じの人で、というかやっぱり知り合いだったんだ」

 

武蔵の身体的特徴を言うリュウセイにアラドはやっぱり知り合いだったんだというが、リュウセイ達はそれ所ではなかった。

 

「月に武蔵がいる! それなら探さないと」

 

「そうだな。あの時の新しいゲッタードラゴンのパイロットはやっぱり武蔵だったんだ」

 

「うっし、出発まで時間があるんだろ。おい、アラド。どこで会った? そこまであたし達を案内しろ」

 

「え? え? い、いや、それは良いんですけど。俺と別れる前に誰かに呼ばれてたから近くにいないかも?」

 

拳を掌に打ちつけながら場所を教えろと言うカチーナに危ない物を感じたのか、武蔵が近くに居ないかも? とアラドは言ったのだが、誰かに呼ばれての言葉にリュウセイが目の色を変えた。

 

「それって青い髪の少し冷たい印象を受ける男じゃないかッ!? えっとヴィレッタ隊長に似てる感じの」

 

リュウセイがヴィレッタを指差しながらそう尋ねる。

 

「どうだったかしら? 私とイングラムは良く似ているといわれるけれど……アラド。私に似ていたかしら?」

 

「い、いや、全然似てなかったと思います。ちょっとくすんだ金髪でアイスブルーの目をした……20代後半くらいの……」

 

くすんだ金髪とアイスブルーの瞳をしていたと聞いて座っていたギリアムが椅子を倒しながら立ち上がった。そして懐から写真を取り出して、アラドに詰め寄った。

 

「アラド。すまないが、この男性ではなかったか?」

 

「そう、この人! この人ですよッ! 間違いないッス!」

 

ギリアムが懐から取り出した写真をアラドが指差して間違いないと断言した。その写真を覗き込んだエクセレン達の顔が引き攣った。

 

「もう1度聞く、この人で間違いないか?」

 

「間違いないっス。あれ? でもギリアム少佐――写真より大分若くないっスか?」

 

ギリアムが差し出した写真はプロトタイプのゲシュペンストの前に教導隊のメンバーが集まっている写真だった。だがそこに写るゼンガー達の姿は若く、10代後半という様子だった。

 

「俺が若いのは当たり前だ。これは10年近く前の写真だからな」

 

「……うえ?」

 

「そしてこの男性……カーウァイ・ラウ大佐は既に亡くなっている。L5戦役時にエアロゲイターに捕まりサイボーグにされたのを俺達で倒したんだ。そしてアラドが見た武蔵もMIAになっている武蔵である事は間違いないな」

 

既に故人である人物を見たと知ったアラドの顔から血の気が失せた。

 

「え? お、俺が見たの幽霊なんですか!? で、でも俺一緒にホットドッグを食べたんですよ!?」

 

ゲッターロボのパイロットである巴武蔵は限りなく殉職に近いMIAとされている。そんな人物と一緒にホットドッグを食べたアラドは驚きと混乱を隠せないでいた。

 

「や、やっぱりあのゲッターロボのパイロットは武蔵だったんだよ! 武蔵は生きてたんだよ!」

 

「落ち着きなさいリュウセイ。仮にあのゲッターロボのパイロットが武蔵だとしたらリクセントで見たボロボロのゲッターロボはどうなるの?」

 

ヴィレッタの言葉にリュウセイは口を紡ぐんだ。リクセントで見たゲッターロボと宇宙空間で見た新型のドラゴンはどう見ても別機体だ。それに、武蔵が乗っていたゲッターロボはメテオ3との戦いで完全に消滅している。

 

「ビアンが回収してたっつうのはどうだ?」

 

「ビアン博士なら生存を教えてくれる筈だ。だから武蔵がクロガネで保護されていたと言う線は薄い」

 

リクセントで目撃されたゲッターロボは音声通信のみだが、武蔵の声を確かに聞いている。

 

そして月面でホットドッグを食べていた武蔵をアラドが目撃し、話もしていたと言う。そしてアラドの言う武蔵の特徴は完全にリュウセイ達の知る武蔵の物と合致していた。

 

「あの新型のドラゴンには別のパイロットが乗っていると言うのはどうですか?」

 

「うーん……考えられるのはそれなんだけど……実際どうかしら?」

 

「……判りません。ゲッター1とドラゴンは戦闘スタイルは良く似てますけど、PTやAMのようにOSがあるわけでも、TC-OSがあるわけでもないですから……言うならばその時の状況で戦闘方法は変わります。ですから操縦で武蔵さんかどうかと見極めるのは不可能かと……」

 

ゲッターロボは無数のペダルとレバー、そして操縦桿で操作する。現代の人型機動兵器とは根底から異なる操縦方法はこれという固定パターンを持たず、戦闘ごとに全く異なる戦闘パターンをとる。

 

「それならゲシュペンストのほうは?」

 

「それは断言出来る。カーウァイ大佐の戦闘パターンとモーションデータだ」

 

「じゃああれか? エアロゲイターに改造されて死んだ筈の人間が生き返って生身に戻っているとでも言うのかよ?

 

新しいゲッターロボと武蔵の因果関係が判らない。武蔵が月面にいるとなれば、考えられるのは地上から宇宙に出たゲッターロボを武蔵が操っていたと言うことだが、それだとリクセントで目撃されたゲッターロボと武蔵の声はなんだったのかと言う事になる。10年前のカーウァイの姿をした男についても、僅かな肉片と脳組織だけが回収されたガルインと呼ばれていたカーウァイの全てだった。しかし突如現れた生きているカーウァイに関してもかなりの謎が残る。何故アンドロイドにされたカーウァイが生身なのか、そして何故10年前の姿のままなのかという謎だ。

 

「エアロゲイターが武蔵とカーウァイ大佐のクローンを作ったと言うのはどうでしょうか?」

 

「ラッセル少尉、それはありえないわね。ホワイトスターの機能はその殆どが死んでいるわ。クローンを作る事は愚か、新型のゲッターとゲシュペンストを再生することすら出来ない筈」

 

「ああ、これから俺とヴィレッタが調査に向かう予定だが……ホワイトスターは宇宙に浮かぶスクラップに等しい。クローンも新型の機体を作り出すことも出来ない」

 

L5戦役の後から何度も調査に行っていたギリアムとヴィレッタがホワイトスターの機能は完全に停止していると言った事でラッセルの口にしたクローン説とエアロゲイターの復活の線は消えた。

 

「あーだこーだ考えてないで武蔵を探しに行ったほうが良いんじゃないか?」

 

「あたしもそう思うぜ、まだ出航まで時間があるんだろ? 時間が許す限りで良い、武蔵を探しに行こうぜ。おい、アラド。武蔵を見つけた場所に案内しろ」

 

「う、うっす!」

 

カチーナとタスクがここで話し合っているよりも探しに行った方が早いと口にし、アラドに武蔵を見かけた場所まで案内しろと言ってオフィスを出ようと出入り口に足を向けようとした時に先に外から扉が開いた。

 

「申し訳無いですが、武蔵君を探している余裕はないようです。ヴィレッタ大尉、ギリアム少佐はヒリュウ改へ、カチーナ中尉達は輸送機へ向かってください」

 

オフィスに入ってきたレフィーナが固い口調でリュウセイ達にそう告げた。

 

「急にどうした? 何かあったのか?」

 

「はい、先程、総司令部から新たな命令が下り……私の艦はホワイトスターの護衛任務に就く事になりました」

 

本来ならばヒュッケバイン・MK-ⅢのタイプLとタイプM、そしてビルガーとファルケンを受け取った後。ギリアムとヴィレッタをホワイトスターまで送り届け、地球に降下する予定だったヒリュウ改だが、総司令部からヴィレッタ。ギリアムと共にホワイトスターの護衛に回れという命令が下されたとレフィーナは告げた。急な命令の変更、配置の移動の理由は明らかだった。

 

「それは彼らの襲撃に備える為か?」

 

「はい。事態を重く見た連邦政府と軍上層部は……ケースEを発令し、月や各コロニーに警告を出しています」

 

セレヴィスシティを襲撃した無人機群とガルガウの存在を敵性異星人の襲来と判断し、宇宙の連邦軍達に厳戒態勢を敷くことを上層部は決定したとレフィーナが自分が受けたのと同じ説明をリン達に告げる。

 

「ヒュッケバイン・MK-Ⅲとファルケンを受け取った後にホワイトスターに向かう予定だった筈だが、レフィーナ中佐。そこはどうなったんだ?」

 

「ヒュッケバイン・MK-ⅢのタイプLとMに関しては機体の受け取りの延期が決定されました。受け取りに時間が掛かるのならば、今回は見送ることにしたそうです」

 

頭の固い上層部ならば、何をしてもタイプLとMの両機の受け取りを優先した筈だが、それに猶予を与えてまでホワイトスターへ向かえという指示を出した。それだけ、あの無人機群とその指揮官機であろうガルガウの存在を危険視したと言うことである。

 

「しかし随分と早い対応じゃないか?」

 

「ですね。交戦記録を送ってから2時間も経ってないのでは?」

 

異星人の物らしき特機との戦闘データを送ってから2時間も経たずとケースEそして、ヒリュウ改への新しい命令の発令……それは普段の上層部からは信じられないほどの対応の早さだった。

 

「それに関してはレイカー司令の口利きに加えて、政治的な動きがあったようです。それがなければ調整不足のタイプLとMを抱えて、我々はホワイトスターへ向かい、Uターンして地球に降下する事になったでしょうな」

 

政治的なやり取りと聞いて、ギリアム達の脳裏を過ぎったのはニブハル・ムブハルの存在だった。SRX計画の続行、そしてケイオスプランの発令にも大きく関係している。そんな相手が出張ってきたと言う事に、一抹の不安を抱く事となる。

 

「何はともあれ、 私達にとっては朗報ですわね」

 

「まあな、量産型ゲッターロボの破壊の件も追求されなかったという事だけで十分だ」

 

「本当すんません……」

 

自分の暴走で量産型ゲッターロボを失ったので、アラドがカークとマリオンに深く頭を下げて謝罪する。

 

「いえいえ、構いませんわよ。あれを動かせる人材というだけで貴重です」

 

「ああ、これでビルガーの完成形も見えてきたな」

 

アラドを見て邪悪な笑みを浮かべている2人にカチーナ達は心の中で南無と呟いた。そしてそれと同時にビルガーがビルト・ファルケンタイプKを越える色物になるのが決まった瞬間でもあった。

 

「余り設計図案を変更しないでくださいね。それと一時的に受け取りに余裕を持たせましたが、実際余裕はありません。調整は前倒しでお願いしたい所ですな」

 

ショーンが釘をさすが、カークとマリオンにその忠告は届かず、アラドを連れてオフィスを後にしてしまった。その後姿とアラドに話しかける言葉にショーンは天を仰いだ。

 

「チェーンソー型のブレードとかは好きかね?」

 

「アルトアイゼンを見た事は?」

 

「え? え?」

 

それは完全にマ改造される事が決定した瞬間であり、受け取りしてもアラド専用機になると言う事が判った事による嘆きの反応でもあった。

 

「……嘆いている所申し訳無いんですけどレフィーナ艦長。私とリュウセイ君もホワイトスターへ行く事になるんですか?」

 

「受け取りが出来ない以上、俺達もヒリュウ改に残る事になるのか? それなら俺は武蔵を探したいんだけど……」

 

リュウセイとエクセレンの本来の任務はR-1の受け取り、それとヒュッケバイン・MK-Ⅲの受け取りにある。それが延期されたなら、ヒリュウ改に残る事になる。それなら武蔵を探したいというリュウセイにレフィーナは首を左右に振り、小脇に抱えていた命令書を捲った。

 

「いえ、総司令部からの命令で、エクセレン少尉とリュウセイ少尉は……カチーナ中尉達と共に、『デザートスコール作戦』へ 参加してもらうことになります」

 

「デザートスコール? キルモール作戦じゃなくて?」

 

今発令中の大規模作戦はキルモール作戦だった。聞き覚えの無い作戦にリュウセイが思わずそう尋ね返した。

 

「アフリカ北部へ降下し、テロリスト軍と交戦中の友軍を支援する作戦です。上空からの奇襲と速やかな殲滅行動が要求されますな」

 

「そんなのをやるって事は……まだ連邦軍が劣勢なんですか?」

 

宇宙空間からの輸送機による急降下と、そのままの戦闘参加――無茶を通り越して、無謀に近い作戦案は連邦がテロリストの勢いを止めれていない事を現していた。

 

「ええ……テロリストの勢いを止められぬようですし、百鬼帝国でしたか? それらに属する特機の出現もあり劣勢のようですな」

 

「それで奴らの頭の上から 水をブッかけようってのか……面白れえ、やってやるぜ。百鬼帝国つうやつらもこの目で見てみてぇと思ってたんだ」

 

好戦的なカチーナの言動は劣勢に追い込まれている地上の連邦軍にとっては良い起爆剤になるだろう。不利な状況によって生まれた重い空気は戦果、そして味方を鼓舞する存在によって覆される物だからだ。

 

「艦長、地球へ降下した後、私達はどうすれば良いのですか?」

 

「合流目的地点にシロガネが待機しているそうです。降下後はリー中佐の指揮下に入って下さい。では、各員は直ちに準備をお願いします」

 

「武蔵に関してはマオ社の社員で探すことを約束する。見つければ連絡しよう」

 

「僕とリオのほうでも探してみるよ」

 

「絶対見つけておくから、安心して!」

 

「「「よろしくお願いします」」」

 

レフィーナの指示によってリュウセイ達は動き出し、リンとリョウト達の武蔵を見つけたら連絡するという言葉にリュウセイ達は安堵し、月から出発する準備を始めた。

 

「気をつけてな皆。また今度会おうぜ」

 

数時間後には輸送機で降下ポイントに向かうカチーナ達とホワイトスターへと向かうヒリュウ改をセレヴィスシティのカフェで見送っていた武蔵だったが、真向かいに座った男にその眉を顰めた。

 

「相席良いかな? 巴武蔵君」

 

白いスーツに胸元に白百合の華を刺した金髪の若い男。明るく、そして口元に笑みを浮かべているがその目を見て武蔵は警戒心を強めた。

 

「……どうぞ」

 

「いやあ、ありがとう! 君とはこうやって顔を見合わせて話してみたかったんだ。僕の名前は孫光龍(そんがんろん)よろしく」

 

「ええ。よろしく」

 

差し出された手を握り返しながら武蔵は既に臨戦態勢に入っていた。人の姿をしているが、その目は目の前にいる武蔵さえも映していない。何もかも見下しているその瞳を見て、孫光龍を名乗った青年が恐竜帝国の同類だと武蔵は直感的に感じ取っているのだった……。

 

 

 

 

そして武蔵と孫光龍がセレヴィスシテイで邂逅を果たしていた頃――地上では……。

 

「ブライ議員。ブライ議員ッ!!」

 

「なんですかな?」

 

ヘリコプターに乗り込もうとしていたブライだが、背後から自分を呼ぶ声に足を止め穏やかな笑みを浮かべて振り返った。

 

「ブライ議員が震源地や被害の大きい地域の見回りと激励をしておられるのは知っておりますが、今回はおやめください!」

 

ブライを呼び止めたのは連邦軍の制服に身を包んだ。肥満気味の大佐の腕章をつけた中国系の男性軍人だった。

 

「ハオ大佐。私は連邦議員の1人として、原因不明の船の転覆、そして行方不明になった民間人の捜索を行わなければならないのです」

 

「いけません、この土地は呪われた土地。そこを切り開き、都市を作ろうとした企業が悪いのです。ブライ議員――どうか私の顔を立てて、この場は引いてください。お願い申し上げます」

 

中国大陸で現在多発している原因不明の船の転覆事件、そして何百人という行方不明者の発生。その理由と捜査をしている連邦軍の激励という名目で視察に訪れていたブライに行ってはいけないとハオ大佐が必死で説得を試みる。

 

「呪われた土地とは?」

 

「この土地は四罪の悪神共工(きょうこう)が没したと言う土地です。河川には共工の念が宿り、決して船を行き交いしてはならぬと言われた場所。どうぞお考え直しを……」

 

中国に数多ある神話。その中に登場する悪神の1人――共工が死んだ場所。故にその怨念が宿り危険だというハオ大佐にブライは声を上げて笑う。

 

「今の時代に怨霊・怨念などはありえないですよ。大丈夫、すぐに戻りますので」

 

「ぶ、ブライ議員! お、おやめ、おやめください!!」

 

ハオ大佐の静止を振り切り、ブライはヘリコプターに乗り込み軍基地を飛び立った。そしてヘリが飛び立った瞬間ブライが浮かべていた笑みは消え去り、連邦議員ブライから百鬼帝国のブライの顔が姿を現した。

 

「大帝、いかがしますか?」

 

「目的通りだ。行け」

 

「了解です」

 

そしてハオは与り知らぬが、既に自分の基地の軍人の大半が百鬼帝国の尖兵に入れ代わっていた。ハオよりもブライの命令を優先するパイロットの操縦によってヘリコプターは視察地よりも更に奥へと進んで行く。そして川の源流である山奥に着陸したヘリコプターからブライが降りた直後。雨が降り始め、穏やかだった川面が風もないのに逆巻き始めた。それを見てブライは当たりだと気付き笑みを浮かべた。

 

「共工よ! このような土地で燻り、大した糧にもならぬ船や人間を喰らっていて満足か! そのような事をしてもお前の願いは叶わぬぞッ! 仮にも神と呼ばれた者が何時までもこんな小物のような真似をして満足か! 己の力を取り戻したいとは思わぬのかッ!」

 

【……何用だ。鬼よ】

 

ブライの呼びかけに呼応するように水が盛り上がり、その口腔の中に人の顔を持つ巨大な大蛇の幻影が姿を現した。

 

「取引に来た! 四罪の神である超機人共工王になッ!」

 

【取引だと? はッ! 鬼の分際で身の程を知れッ!!!】

 

共工の一喝と共に雷鳴がブライを襲うが、ブライはその雷鳴を何もせずに防御する素振りも見せずに無効化してみせた。その光景を見て幻影の共工が興味深そうな声を上げた。

 

「私の力はこれで判っていただけたと思うが、まだ不満か?」

 

【……我の雷鳴を弾くか、ふん。良いだろう、話くらいなら聞いてやってもいいぞ】

 

ただの鬼ではなく、神である己の一撃を防いでみせた。共工はそれに興味を抱き、ブライの話に耳を傾ける事にした。

 

「今のお前には肉体がない、だが私達にはお前に新しい肉体と、そして力を取り戻す為の魂魄を与える事が出来る」

 

【だからお前に従えと?】

 

「まさか、私に従え等とは言わない、同等な同盟を結びたいのだよ。私はお前に肉体を与え、力を取り戻す為の生贄を用意しよう。お前は好き勝手に暴れてくれて構わない、時々私の願いを聞いてさえくれれば良いのだよ。そしてその上で私が気に食わぬと言うのならば、すべてが終わった後に覇権を競えば良い。どうだ? 悪い取引ではなかろう?」

 

【お前に何の益でもないではないか。そんな契約を受け入れるほど我は愚かではないぞ。寝言は寝て言うのだな】

 

肉体を失い、魂だけになった共工――いや、四罪の超機人「共工王」はブライの提案を蹴ろうとしたのだが……ブライがにやりと笑い口にした言葉に反応を見せた。

 

「進化の使徒が今この時代に居ても? そしてその使徒を取り入れようとバラルが動いていてもかね?」

 

【……ッ】

 

地震を思わせる激しい揺れと土砂崩れを起しかねない豪雨。それが共工王の怒りの深さを現していた。その凄まじい殺気と怒気に当てられて百鬼帝国の兵士が崩れ落ちる中ブライだけは両手を上げて高笑いをして見せた。

 

「いい憎悪と殺意だ、それでこそだよ。共工王よ、いつになるか判らぬ復活の為に時間を浪費するか? それも良かろう。だが今度はバラルに魂さえも滅されるぞ。あの愚かな仙人達がお前を何時までも見て見ぬ振りをしてくれると思うか? 断じ否ッ! これは最初で最後の交渉だ! 私の頼みを聞きいれ、肉体を得るか! それとも恨みごとだけを口にしバラルに滅せられるか! 今ここで返答を聞うッ!!!」

 

かつて無理に使役され、バラルの捨て駒にされ、龍虎王に肉体を破壊された忌まわしき過去が共工王の脳裏を過ぎった。

 

【我の失った肉体を完全な形で用意できると?】

 

「それよりもはるかに強力な物を用意して見せよう。そしてお前が持つ忌まわしき衝動も封じて見せようぞ」

 

四罪の超機人は他の機人を喰らうという性質上、単騎でしか戦えず。その性質ゆえに共工王は人間の連携の前に敗れた。しかし、その衝動を抑え、仲間と共に戦えるとなればかつてのように敗れることはないだろう。

 

【はっははッ! 大きく出たな鬼よ。あの素晴らしき肉体よりも強力な物を用意出来るとお前は言うのか?】

 

「出来る! それが私にはワシには出来るのだ! さぁどうする! 忌まわしきバラルに、進化の使徒――いや、ゲッターロボにまた敗れるのをよしとするのか?」

 

【否! 良かろう鬼よ。お前の戯言を聞き届けてやろうではないか! バラルに、進化の使徒にこの牙を突き立てる事が出来るのならば! 一時の隷属を誓おうぞッ!】

 

「そう言うと思っていたぞ。これより我らは同志! 共に戦おうではないか!」

 

共工王の叫びにブライは満面の笑みを浮かべた。かつて己が敗れたのは、自身と同格の戦力が足りなかったからだ。自分の立場を脅かす強者それを招きいれることで、かつての百鬼帝国よりも遥かに強い帝国を作り上げる。その為の慈善活動、世界に封じられた悪神――いや機人大戦で敗れた超機人を鬼に転生させると言うブライの計画はゆっくりだが、しかし着実に遂行されているのだった……。

 

 

 

第47話 邂逅 その1へ続く

 

 




今回はシナリオエンドデモなのでやや短め、そしてここでハッピーかい?を突っ込むという暴挙をやります。この後は前も書きましたが、星から来る物と第三の狂鳥を書いて、剣神現る、ノイエDCの話とゲームと順番を前後させたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。


PS

迎撃戦は44万点でSランクで攻略出来ました。
しかし45万の壁は大きいですね。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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