第17話 武蔵の真実
ハガネのブリッジは痛いほどの沈黙に満ちていた。それはメカザウルスとの戦いを終えたと言う疲弊感だけではない、たった今連邦政府から送り届けられた返信にあった。この戦闘記録及び破壊されたメカザウルスの記録……ハガネからではない、DCから地球政府及び極東支部へと送られ、ジャマーが一時的に解除され極東支部とハガネの通信が回復していた。それは明らかにビアンの思惑通りだった……
「……遺体を全て焼却し、恐竜帝国との交戦記録の一切を消去せよとはどういう事だ?」
『ダイテツ、すまないが命令通りにして欲しい。これは上層部だけではない、政府の決定だ。メカザウルスも恐竜帝国も存在しなかった……とな』
「しかしレイカー司令ッ! これは紛れも無い事実であり、大々的に公表するべき事件ですッ!」
『テツヤ・オノデラ大尉。私もそれは重々承知している、だが我らは軍人だ。上層部の決定には逆らえない』
レイカーが苦しそうに告げた言葉にテツヤもダイテツも言葉に詰まる。何故ならばモニターの外から重火器を構えるような音が響いたからだ……それはレイカー自身も今現在も脅迫され、真実を告げる事が出来ないと言う証だった。
『アイドネウス島攻略後、ムサシ・トモエ及び彼が騎乗する特機もまた軍によって徴収する事も決定している』
更に告げられた言葉にダイテツの眉が上がる。だがレイカーが監視されている以上この命令に逆らうことは出来ない、ダイテツそしてハガネのクルーとレイカーは互いに人質として扱われているからだ。
「……了解した。ハガネ及びPT隊の戦闘データの破棄及びメカザウルスの残骸の焼却処理を行う」
『うむ、頼んだぞダイテツ。引き続きアイドネウス島攻略任務に当たれ』
その言葉を最後に極東支部とハガネの通信は再びジャマーによって繋がらなくなった。恐らく今の話は極東支部にいるスパイによってDC側にも政府の決定として流れるだろう……
「艦長……本当に命令に従うのですか?」
「ああ、それが軍人と言う物だ。だがな大尉、命令はハガネ及びPT隊のみだ。それ以外はワシの管轄ではない」
ダイテツの言葉にテツヤは驚いた顔をする。今現在ハガネにはゲッターロボ及びサイバスターと言う軍属ではない機体がある、それらに戦闘データを集めろと言う指示だ。
「了解しました、では1時間後にナパーム弾による焼却処理とデータの破棄を行います」
「うむ。頼んだぞ、大尉。指揮はお前に任せる」
ダイテツの意図を汲んだテツヤが敬礼する。命令には従う、だが民間であるサイバスターとゲッターには関与しない。ダイテツの出した命令は極めてグレーゾーンの指示だった
「艦長。しかし今回の戦闘データはDCから発信されるのではないでしょうか?」
「だろうな、だが伍長。目の前で繰り広げたあの戦いを信じられるか?」
目の前で繰り広げられた戦いではある、だがどうしても信じられないという気持ちが無いわけでは無い。夢であって欲しいと言う気持ちが無いわけでは無い、だが目の前の破壊の跡と残骸がそれが真実であると言うことを告げていた。
「艦長! 大尉ッ! 武蔵君が暴れてゲッターで出撃しようとしていますッ!」
だがそこに息を切らし駆け込んできたリオの報告で、テツヤとダイテツもブリッジを後にした。今ここで武蔵を出撃させてしまえば、メカザウルス、そして恐竜帝国の情報を得る事が出来ない。それはこれから何度も交戦する可能性がある以上避けたい事であり、ハガネの最高責任者であるダイテツが説得に向かうのは当然の事であった。格納庫に続く通路には人だかりが出来ていた。だがそのほとんどは遠巻きに見ているのがやっとだった、野次馬根性と言うわけでは無い。武蔵はメカザウルスに噛み付かれ、何度も叩き付けられたことで全身打撲であり、今も頭に巻いた包帯からは血が滲んでいた。どう見ても重症患者と言うのに、その怒気と殺気は軍人であるハガネのクルーでさえも威圧していた。
「オイラの邪魔をするなッ! 恐竜帝国を今叩かないと大変な事になるんだッ!!」
「私は落ち着けと言っているんだ巴武蔵」
武蔵を止めに入っていたのはイングラムの姿だった。リュウセイ達も説得に来ていたのだが、その殺気に押され近づく事が出来ないでいた。今の武蔵は手負いの獣と言っても良かった、足元がふらつき、鮮血が滴り落ちているのにそれを全く意に介した素振りを見せず邪魔をするなと叫ぶ。
「お前こそ判ってるのかッ! 恐竜帝国をほっておいたら大変な事になるッ! 今ッ! ここで叩くしかないんだッ! あいつらを滅ぼさないと人類が滅ぶのが判らないのかッ!!!」
「だからこそ待てと言っている。今のその有様で戦えると思っているのか? ゲッターロボだって修理中。そんな状態で追いかけていけると思うのか」
イングラムの正論に武蔵は言葉に詰まる。だがそれでも武蔵はイングラムを押しのけて格納庫に向かおうとして、膝を付いた
「そらみろ、今のお前は極度の興奮状態で身体の痛みを忘れているに過ぎない。その状態でゲットマシンを操れると思っているのか?」
「……ぐっ、それでもオイラは……行かないと……リョウや隼人……早乙女博士も居ない……オイラが……オイラが何とかしないと……」
もう既に意識が朦朧としているのだろう、頭を振り何度も何度も立ち上がろうとする。だが武蔵は立ち上がる事が出来ないでいた
「武蔵君。止めるんだ」
「……ダイ……テツさん」
そこにダイテツとテツヤが来て武蔵の説得に加わる。焦点の合っていない目で、動かない身体でそれでも格納庫に向かおうとする武蔵。その必死な様子はどれだけ恐竜帝国を脅威と思っているのを如実に現していた。
「1人であれだけの大軍を相手に出来ると思っているのか? ワシ達にとっても恐竜帝国は倒すべき相手だ」
ダイテツが武蔵に諭すように言葉を投げかける。武蔵はダイテツに顔を向け、その話に耳を傾ける。
「1人で何もかも背負う必要は無い。ワシ達を頼ってくれれば良い、それともワシ達は信用出来ないか?」
「……すい……ません……でした」
武蔵はダイテツにそう返事を返すと、意識を保っていられなかったのかその場に完全に崩れ落ちた
「……少佐。武蔵君を医務室へ、目を覚まし容態が安定していたらブリーフィングルームへと連れて来て欲しい。監視としてコバヤシ大尉
と医療班とクスハ医療兵を医務室へ、総員警戒態勢を続けよ。敵はDCだけでは無いのだぞ」
ダイテツの言葉に敬礼し動き出すクルー。ダイテツはその姿を見ながらテツヤと共にブリッジへと足を向ける
「艦長。武蔵の話は……真実だったのですね」
「事実は小説よりも奇なり、だ。大尉、常識だけに囚われては大局を見失うぞ」
ダイテツの言葉にテツヤは神妙な顔付きで頷く、この短い時間でテツヤは様々な経験をした。それは紛れも無くテツヤを大きく成長させた、ダイテツはそう確信し笑みを浮かべるのだった。
眩いゲッター線の輝きに包まれながら武蔵は様々な物を見ていた。武蔵が知る由も無い様々な光景が浮かんでは消えて、浮かんでは消えていく……そして武蔵が最後に見たのは凄まじく大きなゲットマシンの姿
【ならば私は待とう。武蔵、お前がゲッターの本当の意味を悟るその時まで】
「リョウ、リョウなのかッ!!! あっ……つつう……」
そのコックピットであろう部分から自分を見つめる人影と親しみを持った言葉に一気に意識が覚醒し、手を伸ばした。だがその手は届かず、そして武蔵の手は医務室の天井に向かって伸ばされていた
「だ、大丈夫!? 武蔵君!」
「……あいたた。クスハ……か、ここは……オイラは? そうだッ! 恐竜帝国ッ! あいつらは……うっくう……」
目覚めたばかりだったから意識がぼんやりしていたが、恐竜帝国の事を思い出しベッドから跳ね起きた武蔵。だが立っている事が出来ず、そのままその場に膝をつく
「武蔵。無理をしちゃ駄目よ、それとも艦長の言葉は覚えてないの?」
アヤに声を掛けられた武蔵は一瞬何のことは判らなかったが、直ぐに思い出した。自分が焦って出撃しようとしてダイテツに窘められたこと、そしてイングラムや自分を心配していたリュウセイに怒鳴り散らした事を……
「すいませんでした」
自分らしくない、今ならばそう言える。だが恐竜帝国を……バットを見た武蔵は頭に血が上っていた。それは竜馬もいない、隼人もいない、そして早乙女博士やミチルも居ない。自分が全て何とかしなければならないと言う焦りからだった……
「冷静になったみたいで良かったわ。それで良かったら武蔵の知ってることを教えて欲しいの」
「……判ってます。ふっ!!」
武蔵はアヤの言葉に返事を返し、気合を入れて立ち上がる。それを見てクスハが慌てて車椅子をと叫ぶ、だが武蔵はクスハの肩を掴んで笑う。
「大丈夫だ。丈夫で長持ちの武蔵さんだからな、行きましょう」
「本当に大丈夫? 無理しないほうが……」
「大丈夫です。この程度でどうこうなる軟な鍛え方はしてないですから」
だから行きましょうと言う武蔵をアヤとクスハは止める事が出来ず、早足で歩き出す武蔵の後を追って行こうとして、その足を止めた。何故ならば早足で医務室を出た武蔵が通路の真ん中で立ち止まっていたからだ。
「……オイラ。どこに行けば良いんですか?」
今思い出したと言わんばかりに振り返った武蔵に、2人揃って苦笑いを浮かべるのだった……
「どうも、ご迷惑を掛けました。本当にすいません」
アヤに案内されブリーフィングルームを訪れた武蔵は入室と同時に深く頭を下げる。倒れるまでの事は覚えていないが、それでも自分が怒鳴ったり突き飛ばしたことは覚えている、だから武蔵が一番最初に行ったのは謝罪だった。
「こうして来てくれたと言う事はワシ達を信用してくれると受け取って構わないのかな?」
ダイテツの言葉に武蔵が頷く、こうして冷静になれば武蔵にだって判る。今のゲッターでは、自分1人では恐竜帝国と戦い勝つ事など不可能な事は判りきっていた。ならば協力するしかないのだ、DCと戦う事にはまだ迷いはある。だが恐竜帝国と戦うことになれば武蔵に迷いは無いのだから……
「では武蔵、お前の素性とそしてお前が知っている事を全て話して欲しい」
イングラムに促され、武蔵はゆっくりと口を開き、ブリーフィングルームにいるリュウセイ達は武蔵の言葉に耳を傾ける。謎の襲撃者、恐竜帝国について知る為に……
一番最初に武蔵が言った言葉がブリーフィングルームにざわめきを起こした。武蔵が一番最初に口にしたのは自分が旧西暦の人間であると言う事だったからだ。
「静かにしろ、聞きたい事があれば武蔵の話が終ってからだ」
イングラムの静かだが、良く通る声にそのざわめきは一旦は収まるが、それでも僅かなざわめきは残る
「オイラは早乙女研究所にいて、ゲッターロボは早乙女博士が恐竜帝国と戦う為に作ったスーパーロボットなんだ。オイラはよく知らないけど、日本政府や海外の政府とも早乙女博士は仲良くしてたのは知ってる」
武蔵から告げられる言葉はそのどれもが信じられないことであり、そして自分達の常識を覆す物だった。旧西暦に既に人が乗り込める大型の機動兵器が存在し、そして地球の先住民族だと言う爬虫人類との戦いを繰り広げていた。そんなのは今まで聞いたことも無かったからだ
「恐竜帝国によって地球の海は恐竜や古代の海洋生物に溢れ、人が入れば一瞬で食われるか、毒気で死ぬかって言う状況になった。もっとも大きな被害を受けたのはアメリカだった。恐竜帝国の拠点である「マシーンランド」によって大気が汚染され、生き残ったアメリカ人はアメリカを捨てて逃げるしかなかった」
ゴールは決して無能な指揮官ではなかった。彼が一番最初に打った手は拠点となる場所の確保である、メカザウルス……恐竜をベースにした兵器であり、翼竜や海洋生物も多数いた。だが彼らがもっとも力を発揮するのは陸地だ。膨大な陸地と開発拠点としてゴールが選んだのはアメリカ大陸だった。恐竜の化石が多数発掘されているアメリカは恐竜の復元技術を持つ恐竜帝国にとって最適な土地だった。更にアメリカを押さえる事で食料の供給や医薬品の供給も妨げることが出来る、核兵器さえも徴収できるアメリカは恐竜帝国の拠点として最も相応しい場所であった。
「次にゴール……恐竜帝国の指導者で、地底魔王って名乗ってた爬虫人類の親玉は日本をターゲットにした。爬虫人類が地底に逃げたのはゲッター線に極めて弱い性質で、恐竜を全滅させたのもゲッター線だと早乙女博士は言っていた」
恐竜は隕石の落下で滅んだと思っていたのが、ゲッター線による死滅と言う情報。思わずその話を聞いていたライが呟いた。
「世界中の考古学が根底から引っくり返るな」
今まで討論されていた物はなんなのだと世界中の学者が叫ぶだろう。人類の前に爬虫類から進化した人型の生物がいたなんてそう信じられるものでは無い。
「恐竜帝国にとっての脅威はゲッターロボだった。だから恐竜帝国はゲッターロボとゲッター線を研究している早乙女博士を狙って、日本にも侵略を繰り返していた」
武蔵が語る恐竜帝国による日本襲撃事件。北海道が地熱を利用した人口太陽生成で滅び、ありとあらゆる物を吸収し、巨大化するクラゲによって東京が壊滅寸前になった事件、そのどれもが凄まじい物であると言うのは容易に想像出来た。
「その当時の軍は駄目だったのか? ゲッターロボのような特機があるんだ。日本を護る事だって出来たのではないのか?」
ライの言葉に武蔵は首を振った。確かにゲッターロボが量産出来ればそれも不可能ではなかっただろう……だが量産できない理由があった
「まずだけど、ゲッターロボみたいなのはそんなに何体もいた訳じゃない。あくまで当時の武器の基準は戦車や戦艦だったし、ロボットは確かに開発していたけど、メカザウルスには勝てなかった」
数は少ないが、確かに新西暦で言うPTやAMに当たる機体は存在していた。だが、メカザウルスに勝てるようなレベルの機体ではなかった
「それに、ゲッターロボの量産計画もでたけどそれは頓挫した。根本的かつ大きな問題があった」
「「「根本的な大きな問題?」」」
ゲッターが恐竜帝国に有効ならば量産すれば良い、新西暦ならばそうするだろうし、仮に旧西暦だったとしても同じだろう。
「えーっと、もしかしてゲッターの材質がめちゃくちゃ稀少だったとか?」
「ゲッター合金はゲッター線を照射すれば生成できる。確かに、それほど量産は出来ないけど、ゲッターを複数体作るのは可能だった」
機体を形成してる金属が稀少と考えたジャーダだが、それは武蔵によって違うと断言された。
「あ、じゃあ! ゲッター炉心って奴が準備出来なかったんじゃない?」
「いや、炉心は合金を作るよりも簡単に量産が効いた。問題はそんな事じゃあない……ゲッターを操れる人間がいなかったんだ」
ゲッターを操れる人間がいないと聞いても、リュウセイ達はぴんと来ない。新西暦ではこのパイロットしか乗れないという機体はあまり存在しない、だが旧西暦で考えればその限りではない
「まず日本の自衛隊のエースといわれるパイロットが100人、二度と戦闘機に乗れない身体になった。次に海外のパイロットだけど……
合体に失敗して……ミンチになった」
ミンチになった。その言葉を一瞬理解出来なかったが、その言葉を理解した瞬間ブリーフィングルームにいた全員の顔が青くなった
「何人もの犠牲者、何体もの試作ゲッターの失敗の中で、オイラが乗ってるゲッターがやっと出来た。だけどパイロットがいなかった……だから早乙女博士は民間人の中からパイロットの選別を始めたらしい」
「正気じゃねえな」
民間人からパイロットを集めたという武蔵の言葉にイルムはそう呟いた。言ったら悪いが、パイロットを使い捨てしかねない機体のパイロットを民間人から探す……それはとても正気とは思えない行動だ。だがそれはそれだけ人類が恐竜帝国に追詰められていたという証拠でもあったのだ
「イーグル号には「流竜馬」、ジャガー号には「神隼人」、そしてベアー号のオイラ。3人とも学生だったけど、日本を……地球を守る為に戦った。だけど……ある日竜馬が恐竜帝国との戦いでオイラと隼人を助ける為に行方不明になった……敵の前線基地の爆発に飲み込まれて、皆死んだって思ってたよ」
「……そんなに凄い爆発だったのか?」
「日本の地形が変わるレベルの大爆発だったよ」
日本の地形が変わるレベルと聞いて、リュウセイは息を呑んだ。そしてその話を聞いていたイルムが武蔵にへと問いかける
「じゃあ、その竜馬って奴は?」
「奇跡的に竜馬は生きていた。だけど記憶喪失になり、恐竜帝国とは違う組織によって回収されていた。オイラは遠目に見ただけど、隼人は言っていた「鬼」だったと……」
爬虫人類の次は鬼……新西暦に伝わっていない、旧西暦はどれだけ恐ろしい世界だったのか……それを想像する事しか出来ないリュウセイ達は何も言えなかった
「その鬼と言うのはどうなったんだ?」
「すいません、鬼に関してはオイラは全然知りません。ただ早乙女博士は新しい敵と言ってました。それよりも話を戻しますね、リョウは記憶喪失になってある病院の地下に幽閉されていて、オイラと隼人で救出しました。でもそこに恐竜帝国の襲撃があって、院長になりすましていた鬼が人間を操り……」
武蔵はそこで思い出すのも辛いのか、唇を噛み締めて黙り込んだ。拳を強く握り締める姿にそれだけ酷い事があったのかと尋ねたいが、それを尋ねることも出来ない。暫く沈黙していた武蔵だが、搾り出すようにして告げた
「鬼に改造された人間が恐竜帝国に挑み、メカザウルスによって死者400人。改造されたことで発狂死した事で600人……合計1000人近い人間が鬼によって殺された」
「この時代に伝わっていないのも納得だ」
1000人と言うとんでもない数の死人、しかしそれはあくまで1つの事件に過ぎない。北海道の消滅や、恐竜帝国によって齎された被害は甚大で、軍は何も出来ず民間人である武蔵達によって恐竜帝国は退けられていた。当時の日本の政府を初め、各国の政府だってそんな事件は隠蔽したいだろう。だからこそ、新西暦にはゲッターロボや恐竜帝国の事が何一つ伝わっていなかったのだろう。
「ゲッターロボは3人揃う事で初めてフルパワーを発揮できる……リョウはゲットマシンに乗ると激しく錯乱して、とてもゲッターに乗せれる状況じゃなかった。だけど恐竜帝国は進撃を止めない、アメリカから無限に送り込まれてくるメカザウルス。日本が壊滅するのも時間の問題だった……」
武蔵が目を閉じて顔を上げる、閉じられたその瞼には恐竜帝国との戦いが思い返されていたのだろう。その姿に誰も口を開くことは出来なかった。
「早乙女博士は戦闘用の改良されたゲッターの開発をしていた。完成すれば新ゲッターロボで恐竜帝国を倒す事が出来ると早乙女博士は言った。だが時間が無かった……だからオイラは1人でゲッターロボに乗ってアメリカに向かった。恐竜帝国の本拠地を攻撃すれば日本への攻撃は一時的でも弱まると思ってな」
それは武蔵がたった1人で恐竜帝国に特攻を仕掛けたという事を意味していた。
「オイラは元々無理矢理ゲッターに乗り込んだ学生だった、早乙女博士に選ばれたリョウや隼人とは違う。2人が生きていればゲッターは動く、世界は救われる。だからオイラはゲッターの炉心のリミッターを解除して、恐竜帝国との戦いに向かった……いや違うな……やつらを巻き込んで自爆するつもりだった……いや、自爆したんだ。炉心を握り潰して、溢れ出たエネルギーに飲み込まれたと思ったらオイラはアイドネウス島にいた」
これが自分の話せる全てだと武蔵は告げ、何か聞きたいことはあるか?と尋ねたが、誰も武蔵に声を掛けることは出来なかった。その余りに悲惨と言えるたった17年の人生……それは華々しい訳では無い、そして漫画やアニメのような都合の良い展開はなく、友の為、日本を守る為……ただ1人で散ることを選んだのだ
「武蔵君。恐竜帝国は健在だと言うのか?」
「判らないです、でもバットはいる。恐竜帝国将軍のあいつが生きていると言うことは……メカザウルスを開発しているガレリィも生きているかもしれない、いや、もしかすると恐竜帝国の支配者のゴールだって生きてるかもしれない……オイラにはそれしか言えないです」
武蔵の言葉が静まり返ったブリーフィングルームに響く、DCとは違う。地球全体を相手取り戦争を起こした恐竜帝国の復活、それはハガネのクルーに重く伸し掛かるのだった……
ハガネで武蔵が自分の境遇を語っている頃。ビアンもまたアイドネウス島で演説を行っていた……
「ついに私が危惧していた人類への外敵が動き出した」
モニターに映し出されるのはメカザウルスの群れと戦うヴァルシオンとゲッターロボの姿。腕を切り裂かれても、右半身を失ってもなおヴァルシオンとゲッターに向かう歩みを止めないメカザウルスにテンペスト達も息を呑む。
「そして今私は武蔵君の真実を語ろう。彼は私の知人の孫などでは無い、旧西暦……そう、一切の歴史的資料が残されていない失われた時代を生き、メカザウルスと戦い地球を守る為に戦った勇敢な青年だ。戦いの中でこの時代へと飛ばされて来たのだ、これは彼の所持していた物やゲッターロボに使われている技術から真実であると言うことは明らかである」
過去からの使者。その言葉に司令部にざわめきが満ちる、信じられないと言うものも大勢いた。だがメカザウルスとゲッターと言う証拠があればそれを信じるしかない。
「総帥。では武蔵君がアイドネウス島を脱出したのは……今の情勢を知らないからだったのですか?」
「そうだ、彼は今の情勢を知らず。戦争と聞いて袂を別ったが、こうしてメカザウルスの脅威が現実となった今。再び道が重なることもあるだろう」
武蔵は裏切り者では無いと繰り返し説明するビアンだったが、今までの穏やかな表情を一転させる。
「だが政府はハガネにメカザウルスの焼却処分と、戦闘記録の公表を禁じ、消し去る事を命じた。これは断じて許されることでは無い! そして
私は確信した、今の政府と地球連邦では異星人にも恐竜帝国にも勝つ事は出来ないとッ! 栄えあるDCの兵達よッ! 地球を守る為、そして人々を守る為! 今まで以上の奮起を願う! 地球を守るのは我らディバインクルセイダーズだッ!!」
「調子はどうだ? ユーリア」
ビアンが演説を行っている頃。エルザムはアイドネウス島の医務室を訪れていた、その理由は勿論ユーリアだ。コックピットブロックごとメカザウルスに噛み砕かれそうになった所をゲッターに救われたユーリアだが、両足の骨折、そして脇腹に砕けたモニターの破片が刺さるなどの重傷を負っていた。少なくとも数ヶ月はAMに搭乗する事は出来ないと医者に診断された。それはユーリアにとって何よりも辛い言葉だった、大事なこの時期に戦えない、エルザムが訪ねてて来たのも叱責だと判断し、ベッドから身体を起こして深く頭を下げる。
「エルザム様……申し訳ありません。この大事な時に、このような無様な姿をお見せして」
「いや、構わない。よく生きていてくれた、父もきっと生きていた事を喜んでくれるだろう」
優しく微笑むエルザムだが、ユーリアは今にも泣きそうな顔をしていた。それは使命も果たす事が出来ず、指令すらも全うできない己を恥じての事だった。
「……しかし私達はマイヤー総司令の命令を果たす事が出来ませんでした」
「いや、お前達は良くやってくれた。恐ろしいメカザウルスとの交戦記録を無事に持ち帰ってくれたではないか、ガーリオンや支援物資はこちらからシャトルを用意する手筈になっている。君は指令を果たしたんだ」
ユーリア達のリオンにはメカザウルス・バドや海中を割って現れた4つ首のメカザウルスとの戦闘記録が収められていた。それは未知の敵と戦わなければならないDCと統合軍にとって何よりも必要な情報だ。
「……ありがとうございます。そう言って貰えればほんの少しは気が軽くなります」
「フッ、ユーリア。お前は優秀な兵士だが、その石頭は少し柔らかくした方がいいな」
エルザムに笑われ、ユーリアはこれは性分ですのでと頭を下げる。だがその前には僅かだが微笑が浮かんでいた
「エルザム様。あのゲッターロボのパイロットと言うのはどんな人物なのですか?」
「巴武蔵君か、気持ちの良い青年だよ。気は優しくて力持ち、やや肥満気味だが、そのおかげか妙に気を許してしまう。そんな青年だ」
エルザムが先ほど浮かべた微笑とは異なり、本当に笑っているのを見てユーリアは少し驚いた。
「……敵同士ではありますが、再びまみえる事があれば礼を言いたいのです」
「そうか、武蔵君はハガネに乗っているが、連邦と言うわけでは無い。私とビアン総帥を止める為にハガネに乗っている、だから敵同士とは言えないな」
「そうですか……DCと統合軍に協力してくれればいいですね」
「そうだな。私は再び彼と道が重なることを願っているよ」
エルザムはそう笑うと無理をさせたと謝罪し、医務室を後にする。1人残されたユーリアは痛み止めの効果で眠りに落ちる中、殆ど無意識に武蔵の名を呟いているのだった……
「ぐぉおおおお!! 熱い! 熱い!! オノレェエエエエエエエ!! ニンゲンがァ!!」
覚えているのは凄まじいゲッター線の光に焼かれた痛みと熱さ、そして顔の半分が吹き飛んだ事による気が狂いそうになる痛み……それだけが、彼に認知できる全てだった。それから何があったかは、判らない……だが、気が付けば船と飛行機の墓場の様なところに居た。焼かれた痛みが、憎しみが身を焦がす。正気を失いかけたその時……彼の目の前に何かが過ぎる
「は……はははは……ハハハハハハハハッ!!」
巨大過ぎる影がおのが身を覆う。振り返ったそこに見えたものは……かつての戦いで失われた筈の物の一部……それを見た男は狂ったように……いや、事実狂っていたのだろう。発狂したかのように笑い続け、そして力尽きるまで笑い倒れこんでもなお嗤い続ける。
「……れ、……だ、……これダ! コレだ!! こレだ!!!」
影を見た博士の顔に知性の色が滲み出る……だがその声は狂気に満ちていた。
「――ミテイロ、ニンゲン共、オモイシラセテヤル、必ズ…………ゲッタァあア!!!!! 貴様をコロス! ころす!! 殺してやるぞオオオオッ!!!!」
身を焦がす憎悪、そして全身を焼かれた痛み血反吐を吐く。そして……半分吹き飛んだ頭部から紫の血液が流れ出していても、彼は……ガレリィは嗤い続ける。これがある、そして己がいる。ならばいるはずだ……いや、居ない筈が無いのだと嗤い続ける……
「戻ったぞ、ガレリィ」
狂ったように笑っていたガレリィだが、背後から声を掛けられその瞳に知性の色が宿る。
「おオ! 戻ったか! どうだ! どうだった! ギガザウルスの力は!」
「素晴らしい物だった。だがやはりまだまだだな……やや暴走気味だ」
「しかたあるまいて、ここ元第4ブロックはにっくきゲッターに破壊されたメカザウルス製造工場じゃ。電子頭脳などの制御に問題が出るのも当然だ」
いままでの狂ったような笑い声とは異なり、理知的な口調で暴走の理由を話すガレリィだったが、その目が黒く濁りと再び口調が怪しいものとなる
「な、何をしておるかぁ! 我らの偉大なる帝王ゴール様への報告が済んでおらぬぞオああ!?」
「……ああ。判っている、今報告に向かうところだ」
「ならば! ならばよいぞあおあ!! 我らの偉大なる帝王ゴールは今も健在なりいいッ!!」
狂ったように叫ぶガレリィ、その視線の先に鎮座する巨大なメカザウルス……それをゴールと呼ぶ姿にバットは僅かに目を伏せてから
「帝王ゴール、バット将軍。ただいまもどりました」
「……」
物言わぬメカザウルスに臣下の礼をとる。そしてその姿を見て嗤うガレリィの声だけが、マシーンランドの中に響き続けるのだった……
第18話 ゲッターロボ 出撃不能 へ続く
連邦がややアンチとなりました。どうしてもこういう話になってしまいました、でもゲームの中を見ていると連邦政府も汚職とか、そいうのが酷いのでこんな感じかなって、なおユーリアヒロインルートと言うわけでは無いですが、生存ルートのフラグとなります。ヒロインとかは全然考えていませんしね。オーバー・ザ・ラインと、トーマスの罠ではゲッターロボは出撃不能で書いて行こうと思います、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い