進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第48話 邂逅 その2

第48話 邂逅 その2

 

ソウルゲインの手の中にいる老人……いや化け物をアクセルはコックピットの中から睨みつけていた。

 

『ほっほ、そう殺気をむけんでくれんかの? ワシもつい……それについ答えたくなってしまうじゃろう?』

 

瞳孔が縦に開き、白目と黒目が反転する化け物を見て、アクセルは僅かに殺気を緩めた。ソウルゲインを越える巨体の化け物から老人の姿にへと変わった。それだけでアクセルの中ではアインスト、もしくはインベーダーに属する化け物であり殺す対象なのだが、ヴィンデルとレモンの元へ案内するという言葉。そして損傷しているソウルゲインと1年にも及ぼうかというサバイバル生活で体力・精神力共に磨耗している今の自分では勝てないと悟り、ソウルゲインの手の中にいる化け物に従わなければならないと言う状況に強い不快感を露にしていた。

 

『ほっほっほ、若い、若いのう? 永遠の闘争なんて物を求める割には若い。ワシが何者であれ、このように争乱を起すのならばそれはお主らの望み通りじゃろうに』

 

「俺が求めているのは、コントロールされた争いだ。無秩序な争いではない」

 

『はっ! はははははははッ!!!!』

 

「何がおかしい、化け物」

 

『制御出来る争いなどはありはしないわ。憎み、蔑み、嫉み、裏切り、血に濡れた殺戮こそが闘争の本質。戦いの中で人間の業は明らかとなり、血は血を求め、死は死を呼び寄せる。カカカカカカカカッ!!! お主らの思想の愚かさ、それがワシには面白くてしょうがないのよ。だからあの若造の頼みを聞いてやったのだ! トウコツの奴も言うじゃろうなぁ。争え、戦え、逃げるな、戦い続けて血を血で洗え! そしてその上で死ね! その骸はこのワシ饕餮が喰らってやろうぞ。クヒャヒャヒャッ!!!!』

 

「化け物め」

 

赤黒い瘴気を放つ饕餮を見てアクセルが思わずそう吐き捨てると饕餮は鋭い歯をむき出しにして、更に笑い出した。

 

『ひゃひゃひゃ、それは褒め言葉かのう? それともワシが人間に見えるかの?』

 

「見えるか、化け物」

 

『ひゃひゃひゃッ!! 安心したわい。これで人間等と言われたら、笑いすぎてワシは死ぬ所だ!!』

 

狂ったように笑い続ける饕餮。その姿を見てアクセルの脳裏を過ぎったのはアインストやインベーダーに食われ化け物になっていった仲間、そして敵だったはずの軍人が寄生されながら殺してくれと懇願する姿だった。

 

(ヴィンデル。お前こんな奴らと手を組んで何をするつもりだ――これではあちらと何も変わらんぞ)

 

あちら側ではコントロールが出来ないアインストとインベーダー、そしてベーオウルフによってシャドウミラーは敗走を繰り返した。今度はあんな間違いをしない為にここまで時間を掛けて準備をしたはずなのに、アインスト達に匹敵……いや、明確な知性と悪意を持つだけこの饕餮のほうがよっぽど化け物だと思っていると、饕餮が声を上げた。

 

『ほれ、あれがアースクレイドルじゃ。お主の愚かな同胞が待っておるな』

 

「ふん、化け物が人の事を化け物と罵れるほど上等か?」

 

『はははッ! これは一本取られたなッ! ワシなんざ食欲最優先だからのう……確かに人の事は言えんわ!!』

 

アクセルの言葉が何か琴線に触れたのか楽しそうに笑う饕餮。その顔は本当に楽しそうで、馬鹿にされたとも挑発されたとも感じていないのは明らか。強いて言うのならば、粋がっている子供を見て、調子に乗っていると感じている大人と言うべきとも取れる表情を浮かべていた。その顔を見てアクセルはもう1度化け物めと心の中で呟き、饕餮の案内でアースクレイドルにソウルゲインを向かわせる。

 

「アクセル。無事……とは言えないわね。何よその顔」

 

「レモンか、ずっとサバイバル生活でな。身嗜みに気を使っている余裕など無かったんだ」

 

無精ひげにぼさぼさに乱れた髪、そして薄汚れた服を見て眉を顰めるレモンだが、アクセルは1年近くサバイバルをしていたのだ。身嗜みを整えている余裕などは無く、こうなっているのは当然でそれに文句を言われる筋合いなど無かった。しかしアクセルはレモンの嫌そうな顔よりも饕餮を出迎えた若い男の存在の方が気になっていた。

 

「饕餮様。お疲れ様です」

 

額に角の生えた男が饕餮に必要以上にへりくだり、恐れを伴った視線を向けながら深く頭を下げたのだ。

 

「おう、出迎えご苦労。準備は出来ておるかの?」

 

「はい、饕餮様のご要望の若い女の鬼をご用意しました」

 

「ひゃひゃっひゃ、それは良い。ではな、アクセル。お主らの行く末でワシらを楽しませて見せよ」

 

そう笑い角の生えた男と共に格納庫を後にするアクセル。若い女と聞いて一瞬好き者か? と思ったが、涎をたらすその姿は情欲よりも食欲を刺激されているように見えた。

 

「おい、レモン。なんだ、あの化け物は」

 

「何って見た目通りよ。若い女を抱きながら食い殺すおぞましい化け物よ」

 

レモンの言葉のすぐ後に艶声と苦しみ泣き叫ぶ男の声が響き渡った。その声は饕餮を出迎えた角の生えた男の絶叫だった――その声を聞いて、そちらに向かおうとしたアクセルの腕をレモンが掴んだ。

 

「行ったら殺されるわよ」

 

その目を見れば、その言葉が冗談ではないのは明らかで、アクセルは大きく舌打ちを打った。

 

「……ちっ、なんだ。この様は、これではあちら側と変わらんぞ」

 

「そうね、私もそう思うわ。でもヴィンデルはそれで良いと思ってるみたいよ」

 

「ヴィンデルの所に「先にお風呂で垢を落として髭くらい剃って来なさい」……判った」

 

自分の言葉を遮り押し付けられたタオル。その中に包まれている金属的な感触を感じたアクセルは文句を言わず、レモンに案内されるまま空き部屋に案内され、その中でシャワーを浴びる振りをしてタオルに包まれていた小型端末を起動させた。

 

「……なるほどな、大体は理解したが……迷走が過ぎるぞ、ヴィンデル」

 

人智を越えた相手を利用し、それらを同士討ちさせ、漁夫の利を狙う。その考え自体は判らないでもないが、百鬼帝国はアインストやインベーダーに匹敵する脅威だ。それを利用しようと考えているヴィンデルはアクセルから見ても無謀にしか見えず、苛々した様子で端末を投げ捨て、アクセルはシャワーを浴びながら何故ヴィンデルがそんな考えに辿り着いたのか、そしてそれが勝算のある計画なのか――それを問いただす事を決めるのだった……。

 

 

 

ソウルゲインの回収――それはヴィンデルが探し続けていたアクセルの帰還を意味していた。Wー15を投入し、連邦軍の出鼻を完全に挫くよりも、ソウルゲインを修理し、アクセルを戦線に投入する方が確実と考えていたヴィンデルだが、レモンのドクターストップに忌々しそうに眉を顰めた

 

「何? アクセルを動かさないというのか?」

 

「逆に聞くけど、1年もサバイバル生活をしていて、肉体も精神もギリギリまで磨り減ってるアクセルを戦線に投入できると思う? 今シャワー浴びてるけど、相当酷いわよ? アクセルの今の状態」

 

「……ちっ、やはり最後の戦いが響いているか」

 

こちら側に転移する前のベーオウルフとの最後の戦い。あの場には武蔵もいたが、それでもアクセルのダメージは深刻だったようだ。

 

「そのままオペレーションSRWで武蔵と戦っているし、しかもその後で治療も受けずに自己流の応急処置と完全な栄養不足。これでアクセルを戦わせるって言ったら流石の私も切れるわよ」

 

簡易のスキャンデータを見せられればヴィンデルも諦めざるを得なかった。

 

「W-15は?」

 

「調整は完了しているわ。後はマシンセルが参式に定着するまで36時間って所ね」

 

「ではマシンセルが定着次第送り出せ。連邦軍が敗走を続けている今を利用して万全な状態で送り出すんだ」

 

「はいはい、判ってますよ」

 

百鬼帝国の戦力である百鬼獣、そして四邪の鬼人、四狂の鬼人の投入によって連邦のタイムスケジュールは最早意味を成していない。それでも作戦の失敗を認めず、キルモールを続行しようとする上層部の愚かさ――それはヴィンデルの嫌悪する権力の一極化、そして軍人を捨て駒としか思っていないと言う証だった。

 

「このままの状況で行けば私達の思想に共感する者も出てくるだろう。その為には百鬼帝国だけに戦果を上げさせる訳には行かないのだ……与えられた平和、それがどれだけ脆く儚い物か、それをこの世界の住人は知る必要がある」

 

「平和になれば癒着と腐敗が広がるから?」

 

「そうだ。その結果が私達の世界の崩壊だ」

 

上層部の愚かさを知れば、権力と金だけに拘る上層部に対する不満も高まる。そうなれば自分の思想に共感する者もいるだろう、平和こそが腐敗の始まりだ。人類は常に争っていなければ、権力による横暴が始まる。そうなればヴィンデルのように戦いの中でしか生きれない者はその行き場を失う、そしてそれだけではなく一部の上流階級だけが全てを得ると言うのは許されないとヴィンデルが高説を続ける。

 

「ヴィンデル。愚かと言うが、お前もそうなりかけているのではないか?」

 

「アクセル……どういう意味だ?」

 

首からタオルを下げたアクセルがブリーフィングルームに入るなり投げかけた言葉にヴィンデルは眉を顰めた。

 

「あんな化け物と手を組んで本当に俺達の思想は叶うのか?」

 

アースクレイドルで短い間だが見た、人外の存在。そしてあのおぞましい絶叫と醜悪な老人――それら全てがアクセルにあちら側の破滅を思い出させた。そんな存在と手を組んでいるヴィンデルに批判的な意見を向けるアクセルだったが、ヴィンデルはアクセルの言葉を聞いて納得したように笑った。

 

「大丈夫だ。化け物には化け物同士で潰し合って貰う」

 

「そう上手く行くのか?」

 

「行く。百鬼帝国はゲッターロボを憎んでいる、それを利用しない手はない」

 

百鬼帝国は言われなくてもゲッターロボを狙う。そしてゲッターD2の力を考えれば百鬼帝国相手でも十分に勝利を掴む事が出来るだろう。仮にゲッターD2が敗れても百鬼帝国もそれと同等に戦力を疲弊する筈――そこを叩けば百鬼帝国を下すことは十分に可能だと断言するヴィンデル。

 

「そうなると武蔵の信頼を失うぞ」

 

「それも対策は考えている。W-16との連絡は付かないが、武蔵と共にいるのは確実だ。仕込んでいるウィルスを起動させ、ゲッターD2を停止させ回収する。その後はリマコンでこちらの手駒に加えればいい」

 

理想論。そして不安要素やイレギュラーを考えていない自分達に都合の良い展開だが、レモンの事だからW-16――エキドナがいなくてもゲッターD2に施している仕掛けを起動させることも可能だろうとアクセルは判断した。

 

「まぁ良い。お前の計画が完璧だと言うのなら良い」

 

百鬼帝国の対策も出来ていると聞いてアクセルはそれ以上深追いせず、手にしているスポーツドリンクの封を切って、中身を口にする。

 

「それでアクセル。今まで何をしていたの?」

 

本当はもう少しヴィンデルの説得を試みて欲しかったレモンだが、アクセルにその気がないのを感じ取り何をしていたのかとアクセルに問いかける。

 

「武蔵の協力でゲシュペンスト・MK-Ⅲを完全に粉砕してきた。代わりにソウルゲインも片腕を失ったがな。その後は武蔵の言っていた通りだ、オペレーションSRWになしくずしで巻き込まれ、下手を打って地球に墜落した訳だ。ソウルゲインでなければ俺は死んでいたな」

 

「道理で身体もボロボロなのね。ソウルゲインの膝も肘もボロボロだし、良く無事だったわね」

 

生身での大気圏突破、しかもソウルゲインは大破した状況で良く五体満足で突破出来たとレモンは正直感心していた。

 

「ソウルゲインが大破したのはR-SWORDと交戦したからだ。忌々しいが、饕餮が割り込まなければ俺は死んでいたな」

 

R-SWORDと交戦した――それはイングラムが明確な殺意と敵意を持ってアクセルを殺しにかかったという事を意味していた。

 

「やっぱりそうなったのね」

 

「想定内だ。あいつらとてこの世界では死人。好きには動けまい」

 

元々あちら側を脱出する前の共闘だ。無事にあの世界を脱出した今敵対するのは当然の事だった。だからアクセルの報告を聞いてもヴィンデルには何の動揺もなかった。むしろ、この世界では死人なのでその意見は弱いだろうと考えていたのだが、次のアクセルの言葉に眉を細めた。

 

「俺がお前達の顔を思い出したのは1週間ほどまえ、転移した際に記憶を一部俺もイングラム達も失っていた」

 

「え? 私達はそういうの無かったけど?」

 

「時間軸の問題なのだろう。だからイングラム達は俺達の顔を思い出せない、あいつらが思い出す前に大きく動くなら今の内だぞ」

 

自分が思いだしたのだから段階的にイングラム達もヴィンデル達の事を思いだす。そうなれば、永遠の闘争を掲げるヴィンデル達は狙われる。その前にある程度の土台を作っておけと言うアクセル。

 

「なるほど、ではW-15を送り出した後に動ける範囲で勢力を広げておくとしよう」

 

「そうしておけ、この世界では随分と武蔵の発言力がある。リクセントが全面的に武蔵のパックアップを公表している、早い段階でリクセントは押さえておけ、面倒なことになる」

 

「それは判ってるから心配ないわ、それよりもアクセルの方が今は不味いんだからそろそろ素直に休みなさいな」

 

レモンに休めと言われたアクセル。だがそういわれるのも当然だ、目の下には深い隈があり欠伸をかみ殺しきれていない……逃走といつ見つかるかという周囲を警戒し続けていたアクセルはレモンとヴィンデルに出会った事でその緊張の糸が切れてしまったのだ。深い睡魔に襲われている表情のアクセルだが、最後に1つだけ教えろとヴィンデルとレモンへ問いかけた。

 

「……『こちら側』のベーオウルフはどうなっている?」

 

武蔵達から話を聞いているのでベーオウルフ――キョウスケ・ナンブがいる事を知っているアクセル。1年近くの間接触を試みたが、それが出来ないでいた。あちら側とこちら側が違うと知っていても、それを聞くまでは安心して眠れないとアクセルの目が2人に訴えかけていた。

 

「現在の奴の所在は押さえている。今はスペースノア級戦闘母艦……ハガネにいる」

 

「それにWナンバーの1人にマークをさせてるわ。だから余り心配しなくてもいいわ」

 

場所も割れている、最悪の場合処理も出来ると聞いても、皺の寄ったアクセルの眉は離れる事はなかった。

 

「……それなら構わないがあの人形達で大丈夫なのか? 下手を打てば……俺達の場所を逆に特定されるぞ」

 

「ふふ……あなたなら絶対にそう言うと思って、人選は拘ったのよ? Wシリーズの最高傑作……ラミアなら文句はないでしょう?」

 

「どうかな。俺が奴らを評価していない理由……」

 

「何? 何かあるの?」

 

「いや、警戒しているならいい。悪いが俺は少し休む」

 

まだ言いたい事はあっただろうが、疲労が限界を超えたのかレモンとヴィンデルに後は任せるといってブリーフィングルームを後にした。

 

「流石に言えないわよねえ?」

 

「そうなるな。私達の始まりだからな」

 

本当はアクセルに話そうとしていた事――月で確認されたガルガウ。それはあちら側でシャドウミラーが結成された理由であり、アクセル達が数多くの戦友を失った戦いが始まろうとしていたのだ。

 

「どうする?」

 

「ハガネと百鬼帝国の対抗馬にもなってくれるだろう。暫くは様子見だ」

 

あちら側とこちら側。その差異を調べる為にヴィンデルはインスペクターの襲来を予期しつつも、それを伝える事も戦力の分析データも百鬼帝国に伝える事はなかった。今は協力関係にあっても、後に戦う事になるのだ。そんな相手にヴィンデルは伝える事など何もない、むしろ潰しあってくれれば好都合とまで思っているのだった……。

 

 

 

 

 

中国の奥地で共工王を迎え入れたブライの姿は巨大空母型の百鬼獣戦空鬼の中にあった。玉座に腰掛け書類に目を通していたブライの前に怒り心頭という様子の若い女が立ち塞がり、ブライの手にしている書類を奪い取った。その背後には女を止めようとした百鬼帝国の兵士が胴体から両断され、鮮血の中に沈んでいた。

 

「鬼。これはどういう事だ」

 

「ほほお? 随分と愛らしい姿になったな。共工王よ」

 

凄惨な殺害現場が後で起きているのにブライは眉1つ動かさず、からかうような言葉を投げかけた。

 

「貴様が何かしたのだろう?」

 

「おいおい私はただ肉体を与えただけだ。写し身は男の鬼を与えた、そうだろう? それはお前の魂の質によって変質した物だ。私のせいではない」

 

ブライが行なったのは共工王がこの世に現界するための器と不安定な魂魄を安定させる為の生贄を用意しただけだ。それ以外は何もしていない、共工王が若い女の姿になったのは共工王自身の問題だとブライが言うと共工王は思い当たる節があったのか、手にしていた書類を机の上に戻し、不機嫌そうに鼻を鳴らすだけだった。

 

「まぁ良いだろう。お前は約束通り肉体を与えた、仮初の肉体なのだから性別などはどうでも良いか」

 

「判ってくれたようで何より。魂魄は安定したかね? もしまだ不安定ならば、もう少し生贄を用意するが?」

 

「いや、今はいい。余り一気に取り入れすぎても不安定になるだけだからな」

 

超機人は全て「五行器」と言う自然エネルギーで稼動する無限動力を内包している。四罪の超機人である共工王の五行器は操縦者を有しない変わりに定期的に他の機人を喰らい、その魂を吸収する必要がある。それが機人喰らいの四罪の超機人なのだ、機人を喰らわずとも鬼を喰らい魂魄を取り入れれば問題なく活動出来ると言うのは、饕餮で既に判明している。だからこそブライは封印もしくは魂だけになった超機人に器を与え、生贄を与える事で仲間に引き入れてきたのだ。

 

「私の肉体はどうなる?」

 

「しばし時間をいただこう。有象無象で良ければすぐに用意するが……そうなると強い力を発揮するのは難しくなる。お前の好みに合わせて肉体を用意した方が良いと思うのだが、どうだろうか?」

 

ブライにとっても超機人に百鬼獣の肉体を与え、マシンセルにより更に変質させるという製法で超機人を擬似的に再現する以上、マシンセルを投入する最初の素材というのは非常に重要になる。弱い素体では共工王の力を発揮できない所か、足枷にすらなりかねない。戦空鬼には豪腕鬼などの量産型の百鬼獣は多数搭載しているが、焦って弱い肉体で共工王を復活させても量産型の百鬼獣に毛の生えたくらいでは態々中国の奥地まで行って共工王をスカウトに行った意味がない。故にワンオフの百鬼獣を作るのを待てと共工王に告げる。

 

「そう言う物なのか。判った、ならば待とう」

 

「判って貰えて何より。それよりもだ……こうして肉体を与えたのだ。2つほど私の頼みを聞いてくれないかな?」

 

ブライの言葉に共工王は楽しそうに笑みを浮かべた。

 

「なんだ、対等な関係と言っておきながらいきなり命令か? たかが知れるぞ鬼」

 

「私は肉体と生贄を用意した、故に2つだ。私が労力を裂いた分、そちらも労力を提供して欲しい。それだけだよ」

 

対等な関係なのだから自分が動いた分だけ、共工王にも動いてくれというブライ。それは確かに理に叶っている、一方的に与えられた物を受け入れるだけでは対等な関係とは言えない……。

 

「良いだろう。私に何をしろというのだ?」

 

「何そう難しいものではない。水神である共工ならば簡単な話だよ。肉体が出来てから海中に沈んでいるある物を2つほどサルベージして欲しいのだよ」

 

「なんだ、それだけでいいのか?」

 

「ああ、それだけで良いんだ。頼めるかね?」

 

共工王はブライの頼みに拍子抜けしたようだが、ブライにとっては海中に沈んでいる物をサルベージする為に共工王を復活させたのだ。勿論他の「四罪」「四狂」の超機人も復活させるが、それよりも先に共工王を選んだのは今の技術力では海溝の奥深くに沈んだ物をサルベージ出来なかったからだ。

 

「良かろう。その程度の頼みごとならば聞いてやるさ。その代わり私の肉体を早く用意するのだぞ?」

 

「勿論だ。アースクレイドルに到着したらすぐに取り掛かろう」

 

ブライから言質を取った共工王は踵を返し引き返していく、これ以上話す事はないと言う不遜な態度だが、神を名乗るのだから必要以上に媚び諂わない実力で周囲を黙らせるその態度にブライは好感を抱いていた。

 

「さて、五本鬼よ、そろそろ再びお前の出番だが……次はないと判っているな?」

 

「は、ははは、はい!! わ、判っております」

 

ビアンの姿になっている五本鬼が地面に頭をこすり付けるように土下座をする。その顔は青く、冷や汗さえも浮かんでいる。

 

「本来ならばクロガネを奪取してから計画を進めたかったが、そうも言ってられん」

 

ケースEの発令によって地球の内外の警戒は大きく高まった。そうなるとクロガネを奪取するよりも先にハガネに合流される可能性がある。一度は轟沈寸前に追い込んだがそれは戦力が不足していたから、ヒリュウ改と合流し戦力が整えば状況は互角になる。それをさせないためにもクロガネを――強いて言えばビアン達を孤立させる必要があった。

 

「良いな。2回までは許そう、しかし3回目はないぞ」

 

「は、はい!! 必ず、必ずや!! 大帝のご期待に応えて見せます!」

 

「ならば行け、私の合図が合ったらすぐに動き出せ。私の期待を裏切るなよ」

 

引き攣った顔で返事を返し、逃げるように玉座を出て行く五本鬼。その姿をつまらなそうに見つめ、机の上の2枚の写真に手を伸ばす。

 

「裏切り者は許さない。その罪はお前たちの命で償って貰うぞ」

 

写真に収められていたのは胡蝶鬼――新西暦では「キジマ・アゲハ」と名乗っている女優と、テスラ研の主任研究者という立場を手にしている鉄甲鬼「コウキ・クロガネ」――裏切り者の2人を許さないと口にしたブライは写真を握り潰し、その瞳に強い怒りの色を浮かべるのだった……。

 

 

 

 

 

 

百鬼帝国が徐々に勢力を強めて行っている頃――宇宙では……。

 

「なんだい、ヴィガジ。地球人にここまでやられたのかい? あーあ、みっともないったらありゃしない。こんな様で良くリーダーなんて名乗れたね」

 

「五月蝿いぞアギーハッ!」

 

大破寸前のガルガウを見たアギーハに罵倒され、額に青筋を浮かべて怒鳴り声を上げるヴィガジは、アギーハに掴みかかろうとしたがシカログがヴィガジとアギーハの間に割り込み、ヴィガジを無言で睨みつける。

 

「俺に逆らうというのか?」

 

「……ッ」

 

「シカログ、やっちゃってよ! 調子乗っているヴィガジは1回痛い目を見た方が……ああ、もう見てたね。あははッ!」

 

一触即発という雰囲気のヴィガジとシカログ。その後でヴィガジを煽るアギーハにヴィガジが拳を握り締めた瞬間、手を叩く音が響いた。

 

「そこまでにしとけよ。アギーハ、ヴィガジが馬鹿をやったのは事実だが、俺達にはホワイトスター制圧って言う大きな仕事があるんだからよ。シカログもだ、もし決闘するなら正式な場でやれ。ここでヴィガジを殴れば、お前の立場が悪くなるぞ」

 

ヴィガジの味方をするわけではなく、独断専行をし、ガルガウを中破させたとは言えシカログよりも上の地位を持つヴィガジを殴ると問題になるぞと言うメキボスにシカログは頷き、アギーハの隣に移動した。

 

「お前もだぜ? ヴィガジ。アギーハとシカログはきっちりスカルヘッドを押さえた。しっかりと命令通りにな、馬鹿にされても当然。それが嫌ならホワイトスターの制圧で挽回するんだな。と言ってもガルガウが使えないから、内部制圧になるから戦果は上げれないけどな」

 

「ちいっ! 判っている!」

 

メキボスの言葉に舌打ちし部屋に引き返していくヴィガジ。その姿を見てメキボスはやれやれという様子で肩を竦めた。

 

「あいつも馬鹿だねえ、ゲッターロボがいないって証明したいのは判るけどさ」

 

「まぁ気持ちは判るけどな。それよりもだ、アギーハ、シカログ。ホワイトスター制圧の時は気を締めていけよ」

 

「どうしてさ? 地球人の軍隊相手にそこまで警戒する必要があるのかい?」

 

「……月面で確認されたゲッター線を俺もヴィガジも確認して無いんだ。偽者のゲッターロボは見たが、じゃあ。俺達が見たゲッターロボとゲッター線反応はどうなる? 月面では自分達が割り込む必要がないと判断しただけで、ヴィガジの戦いを見ていたとしたら? ホワイトスターを制圧しようとしたら動いてくるだろうぜ」

 

「……OK。判ったよ、警戒しとく」

 

「判ってくれて何よりだ。相手は銀河系の星を幾つも滅ぼしたゲッターロボだ。警戒は幾つしても足りないからな」

 

ゲッターロボなんていないと言い切れれば楽だろう。だがそれは叶わない願いだという事はメキボスには判っていた。ホワイトスターを取りに行けば自分達の前に確実に立ち塞がるゲッターロボ――それと戦う事を想像したメキボスは憂鬱そうに溜め息を吐いた。宇宙船の外から見えるバルマーの起動要塞――それを制圧する事自体は簡単な話だろう。しかし戦いの最中で確実に現れるであろうゲッターロボの事を考えると、簡単に制圧出来る筈の要塞だが、行く事は出来ても戻る事の出来ない地獄の入り口のようにメキボスには見えるのだった……。

 

 

 

第49話 怒る海神 その1へ続く

 

 




今回はインターバルミッション。色んな陣営の動きを書いて見ました、ちょっとおかしいだろ? みたいなところがありましたら教えてください。シナリオの前後、時間系列の変更などをしておりますのでもしかすると自分でも混乱している部分があるかもしれないので、指摘していただけると嬉しいです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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