進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第52話 再会

第52話 再会

 

ヒリュウ改に順番に着艦するゲットマシン――格納庫には整備兵達に加え、パイロットスーツ姿のまま簡単な手当てを済ませたギリアム達。そしてレフィーナを初めとするブリッジクルーの姿もあった。ドラゴン号、ライガー号、ポセイドン号と順番に着艦し、ポセイドン号のコックピットが開いた。

 

「よっと」

 

そこから姿を見せた武蔵は半年前よりも更に奇抜な服装になっていて、一瞬武蔵を出迎える為に集まっていた全員が動きを止めた。工事現場のヘルメットに剣道の胴、それにニッカボッカにマント……そして首元にはボロボロの赤いマフラーが巻かれていた。しかし面を食らっていたのは一瞬の事で、生きていると信じていたが、それにも疲れ始めていた頃に姿を現した武蔵に歓声が上がった。武蔵はびくんと肩を竦め、驚いた様子だったがすぐに笑みを浮かべて両手を振って、用意されたタラップを降りてくる。

 

「武蔵さん。お久しぶりです。見捨てた癖に何を言ってると思うかもしれませんが……ご無事でよかったです。でも……生きていたなら連絡の1つくらい入れるべきでしょう。皆とても心配していたんですよ」

 

「いやあ。本当に色々あって簡単には説明出来ないです、ご心配をかけたみたいで申し訳無いです」

 

レフィーナの言葉に頭をかきながら心配をかけて悪かったと謝罪する武蔵。その姿は半年前よりも精悍になっていて、力強さに満ちていた。

「ギリアムさん、ヴィレッタさんもお久しぶりです。リューネも元気そうで良かったぜ」

 

レフィーナに続いてギリアム達にも笑みを浮かべて再会出来た事を喜ぶ武蔵。

 

「生きていると信じていたが、連絡くらい入れろ。武蔵」

 

「リクセントの時に返事を返したんだから、ストーンサークルの時に声くらい掛けなさい」

 

だがギリアムとヴィレッタにすぐに釘を刺され、すみませんともう1度頭を下げる武蔵。

 

「いや、責めたい訳じゃないんだ。武蔵、あの時は見捨ててしまってすまなかった」

 

「いやいや、そんなの全然気にしてないし……オイラが勝手にやった事ですし」

 

「でも軍人としては許される事ではないんですよ」

 

「いや、そういうの本当気にしなくていいですから」

 

互いに負い目があるので格納庫で謝罪と気にしなくて良いという言葉の繰り返しになり、全く話が進まないのを見てリューネが手を叩いた。

 

「ここで謝り合っていても何にも進まないし、互いに長い話になると思うからブリーフィングルームで腰を据えてゆっくり話をしようよ」

 

報告しなければならない事が山ほどあるのでゆっくりしている時間は無いのだが、それでも武蔵から話を聞く事が重要な事であるのは明らかだった。

 

「そうだな。そうしよう、武蔵。何があったか説明してくれる時間はあるのか?」

 

「大丈夫ですよ、まぁ流石に一緒に地球に行くとか、連邦の基地に向かうって言うのはお断りですけど……何があったのかって話をする時間はありますから」

 

合流はしてくれた武蔵だったが、まだ完全に行動を共にしてくれる訳ではないと断言した。

 

「それはあのゲシュペンスト・タイプSとR-GUNのパイロットに関係しているのか?」

 

「……まぁそれも含めてブリーフィングルームで話しますよ。まぁオイラあんまり頭良くないんで、上手に話すのは難しいっすけどね」

 

にかっと笑った武蔵に釣られて、どこかから笑みが零れた。そしてそれはどんどん広がって行き、先ほどまでのヒリュウ改に満ちていた悲壮感は何時の間にかどこかへと消えているのだった……。

 

 

 

 

 

 

「まずは連絡出来なかった事は謝ります。でもオイラは連絡できない状況にあったんです」

 

ブリーフィングルームでの話の席で武蔵はレフィーナ達に向かってそう話を切り出した。

 

「連絡できない状況ですか……誰かに囚われていたとか、怪我をしていたと言うことですかな?」

 

連絡できない状況と言う事で真っ先に連想させるのはその2つだ。ショーンがそう尋ねると武蔵は首を左右に振った。

 

「そのー馬鹿げてるとか、ありえないと思うのは判っているんですけど……あの石ころに突っ込んだ後オイラは気が付いたら怪我が完治して、新品その物のゲッターロボの中で目を覚ましたんです」

 

武蔵の言葉にレフィーナ達の顔にありえないと言う表情が浮かんだ。武蔵もゲッターロボもジュデッカと戦いボロボロの状況だった。そんな状況の武蔵が新品同様のゲッターロボ、そして怪我も完治していたなんて言う話をそう簡単に信じる事は出来なかった。

 

「それは目覚めたのが最近ということかしら?」

 

「いえそういうことじゃなくて、オイラとゲッターは……オイラが死んだ後の旧西暦にいたんですよ。ギリアムさん達が言う空白の歴史の真っ只中ですね」

 

「……ではまさか、武蔵がインベーダーと呼んだのって……」

 

「そ、その空白の歴史で人を殺しまくってたって言う異形の化け物って奴ですよ」

 

今も数多の歴史研究家が解明しようと躍起になっている当時の人類の8割を抹殺した生物の正体――それを目の当たりにしていると武蔵に言われたギリアム達。信じられないと思うよりかは何故かすんなりと納得してしまった。

 

「信じられん……とは言えんな。失われた時代では人類の8割が死んだと聞く……あの化け物を見れば納得さざるを得ないか」

 

無限に再生し、融合し巨大化し、更に人間にも無機物にも寄生し変異する化け物――それを目の当たりにすれば当時の政府がその時代の歴史を全て破棄したのも納得出来た。

 

「武蔵。イングラムはどうなったのかしら? 旧西暦にいたのは武蔵だけなの?」

 

「……」

 

「武蔵?」

 

だんまりを決め込んだ武蔵にヴィレッタが微笑みかける。口元は笑っているが、目が全く笑っていない笑みを向けられた武蔵は目をそらすが、ヴィレッタが余りにじっと見つめるので武蔵は両手を上げた。

 

「すんません、降参です。イングラムさんも一緒でした」

 

MIAの2人が旧西暦にいた。それはどれだけ探しても痕跡なんて見つからないのも納得だった。

 

「では武蔵。あのゲシュペンスト・タイプSのパイロットは誰なんだ? イングラムではないだろう?」

 

今度はギリアムにジッと見つめられ武蔵は深い溜め息を吐いた。

 

「カーウァイさんですよ。って言うか判ってますよね?」

 

「まぁな。動きでは判っていたが、言葉として聞くのと聞かないのでは大きな差がある」

 

動きからカーウァイであると確信していたギリアムだが、こうして武蔵の口から聞くのと聞かないのでは雲泥の差があった。

 

「カーウァイ大佐まで旧西暦で生きていたんですか……もしや他に亡くなられた方も?」

 

「いや、見つけれたのはカーウァイさんだけですね。そもそもオイラもイングラムさんも確実にあの石ころに突っ込んだ段階で死んでるんですよ。オイラは覚えている、ゲットマシンに押し潰されて胸から下が完全に潰れたのも、あの熱さも息苦しさも全部覚えている。だから生きていたって言うのは根底から違う……オイラ達は「生き返らさせられた」んですよ。ゲッター線に」

 

生きていたのではなく、死んだのを生き返らせられたと断言する武蔵。その言葉と目には凄まじい力強さがあり、レフィーナ達はその通りなのかもしれないと思ってしまった。

 

「ゲッター線って言うのはそんなことまでするのかい?」

 

「多分が付くけどな。それにオイラ達には1つ共通点がある――意識が途絶える瞬間にゲッター線の光に包まれたのを3人とも共通して覚えている。そこからまた記憶が始まっているんだ」

 

死の間際に見たゲッター線――それが確実に武蔵達が再び生きているという事に大きく関係していると武蔵達は考えていた。

 

「オイラとイングラムさんとカーウァイさんは旧西暦で竜馬達とインベーダーと戦って、んでまた時間を越えた。今度は未来って言うか……んー? 平行世界って奴だと思う。そこで連邦軍の特殊部隊と一緒にインベーダーとアインストと戦って……んでまたこの時代に帰ってきたって所ですかねえ」

 

「武蔵。その連邦軍の特殊部隊の名前は?」

 

連邦軍の特殊部隊と聞いてギリアムが即座にそう尋ねたが武蔵は首を左右に振った。

 

「世界を超えたのか、時間を越えたのかっていうのは全然判らないんですけど……どうしても思い出せない事が多々あって」

 

「その特殊部隊の名前を覚えてないという事ですかな?」

 

「そうなりますね。いや、本当に申し訳無いです」

 

ぺこぺこと何度も頭を下げる武蔵の姿を見てギリアムは目を細めていた。

 

(武蔵は覚えているが……それを伝える事は出来ないと言うことか……)

 

地球圏に広がっている争乱――それを更に広げる可能性がある存在をどこにいるかも判らないのに伝える事は出来ない。武蔵はそう判断して、本当の事を告げていないという事をギリアムとヴィレッタは感じていた。本当はもっと詳しく聞いても良かったのだが……武蔵が、いや、武蔵だけではないイングラムも生きていると聞けただけでも今は十分と考え、ギリアムとヴィレッタはそれ以上深く話を聞くことは無かった。

 

 

「武蔵は百鬼帝国の事は知ってるかしら? 百鬼帝国も旧西暦に存在していたらしいけど、何か知ってるかしら?」

 

地球で猛威を振るっている百鬼帝国――それも旧西暦に存在した集団と言う事で武蔵に何か知らないか? とヴィレッタが尋ねる。

 

 

「百鬼帝国に関してはオイラも殆ど知ってることはないですよ? 判ってるのは人間に化ける事と百鬼獣っていうのを使うって事と……後は大帝って言われる奴がトップって事くらいで」

 

旧西暦の生まれではあるが、武蔵は自分が生きた時代と百鬼帝国の時代は微妙に違うと言って、詳しくは知らないとヴィレッタに返事を返した。

 

 

「だがリクセントに現れた百鬼獣はゲッターロボを知っている様子だったけれど……」

 

「リョウや隼人、それにオイラの代わりにゲッターに乗り込んだ弁慶って奴がいますからね。だからゲッターロボを知ってるんでしょう」

 

武蔵が何か隠しているとヴィレッタは感じていたが、百鬼帝国については殆ど知らないという武蔵を暫く見つめ、武蔵の言葉が真実だと判ると判ると小さく頷いた。この件に関しては武蔵は嘘を付いていないと判ったのだ。

 

「武蔵は今までどうやって過ごしていたんだ?」

 

「そりゃまあ、ゲットマシンの中で寝たり、たまーに街に出て飯を食ったりしてですよ。名前は知られてるけど顔は知られてないんで騒ぎとかにもなりませんでしたし」

 

名前は知られていても顔は知られてないので、あっちうろうろこっちうろうろして過ごしていたと言う武蔵だったが、それにリューネが待ったをかけた。

 

「待って武蔵。親父とつるんでるだろ?」

 

武蔵が既に父親であるビアンと行動を共にしていると言うのは間違いないと感じていた。そしてそれを問いただすと武蔵は思いっきり目をそらした。

 

「……」

 

「目をそらすな。こっちむけ」

 

目をそらし続ける武蔵の頭を掴んで強引に自分の方に向かせるリューネ。武蔵は青褪めた顔でゆっくりと口を開いた。

 

「……も、黙秘権」

 

「あると思ってるのか?」

 

ぴしゃりと断言され武蔵はがっくりと肩を落とした。

 

「ビアンさんと合流したのは1ヶ月くらい前かな」

 

「そうか、その頃ならあたしはバン大佐とメールでやり取りしてたよ。なんでバン大佐、いや親父に……そうだな。ゼンガー少佐達もそれを知ってたのに、それを隠していたんだろうなぁ? あたしが地球をあっちこっち調べて、木星の近くまで探しにいってたのにさぁ?」

 

リューネの責める言葉に武蔵はダンと両手を机の上に置いて深く頭を下げた。

 

「すんませんでしたぁッ!!」

 

「あたしは武蔵じゃなくて親父に怒ってるんだよッ!!」

 

「いや、本当に色々事情がッ!」

 

「武蔵ぃ! クロガネの場所を教えなッ! 親父に直接文句を言ってるやる!」

 

「すんません! 勘弁してくださいッ!!」

 

何もかも知っていたのにそれを隠していたビアンに対して怒るリューネを必死に宥める武蔵。ブリーフィングルームは一時騒然となり、武蔵の話も、ギリアム達も自分達の近況を話している状況ではなくなり、全員で激怒しているリューネを必死に宥めるのだった……。

 

 

 

 

全員の説得が功を奏したのか、まだ怒りを隠せないでいるリューネだったが何とか一時的にしろ怒りを押さえ込んでくれた。

 

「とりあえず親父を見つけたらぶん殴る」

 

「すんません、本当勘弁してくれませんか?」

 

「駄目だ」

 

武蔵の生存を隠していたビアンに対するリューネの怒りは深く、ビアンを見つけたら殴るというのは決定事項になってしまった。その事に武蔵は心の中でビアンへと謝罪の言葉を呟いていた。

 

「この後武蔵さんはどうするつもりなんですか?」

 

「えっと……月で待ってるカーウァイさんと合流して地球に戻るつもりです。ゲッターD2なら単独で大気圏突入も、突破も出来ますし」

 

レフィーナの言葉に武蔵がそう返事を返すと、話を聞いていたショーンが手を上げた。

 

「ゲッターD2というのですか? あの新しいゲッターロボは?」

 

「ういっす。早乙女博士の作った最後のゲッターロボですよ。旧西暦で見つけてからずっと使ってますよ。正直ゲッターD2が無かったらオイラ達は無事に戻って来ることは出来なかったと思いますよ」

 

「ゲッターD2を使っても窮地に追い込まれるような状況だったのか?」

 

ゲッターD2の力はギリアム達から見ても凄まじかった。それこそ、ゲッターD2だけで戦場を制圧する可能性のある機体だ。それがあっても苦戦を強いられていたと聞いてレフィーナ達の顔が強張った。

 

「アインストもインベーダーも人に寄生してたし、機体にだって寄生した。見たと思いますけど、でかくもなるし。化け物にもなる……これ以上増える前に対策を考えないといけないんだ。あの世界みたいにならない為にも……」

 

「あの世界って武蔵が戻ってくる前にいたって言う未来の? どんな世界だったの?」

 

リューネが疑問に感じたことを尋ねると穏やかに笑っていた武蔵の顔が鬼の形相になった。

 

「あんなにひでえもんはオイラは見た事が無い。インベーダーとアインストに人間が狩られ、寄生され化け物になってインベーダーとアインストとして化け物どうし潰しあう。人に出来る事は逃げる事……そんな酷い有様だった。あれを一言で言うなら……地獄としか言いようがない」

 

そう言って黙り込んだ武蔵は平行世界のついての事はこれ以上話したくないと言う雰囲気で、レフィーナ達もこれ以上武蔵に平行世界についての事を尋ねる事はしなかった。事実アインストとインベーダーを目の当たりにしたレフィーナ達も武蔵の言う事が真実だということを疑う余地は無かった。

 

「対策などありますか? もし知っていれば教えていただきたいのですが?」

 

「……赤黒いコアを破壊すればアインストは倒せます。でもインベーダーはゲッター線を使った武器じゃないと倒すのは厳しいと思います」

 

アインストの弱点がコアであると言うことは今までの戦いでも判っていた。しかしインベーダーにはゲッターロボでなければ有効打を与えれないと聞いてレフィーナ達は眉を顰めた。ゲッター線を使えているのはビアンだけ、そして武蔵のゲッターロボだけだ。何時何処に出現するかも判らないインベーダーを相手にゲッターロボしかまともに戦えないと言うのは不味いという物ではなかった。

 

「ほかに何か対策はないかしら?」

 

「……そうだ、目玉。目玉を潰していけば弱体化するって弁慶が言ってました、あとは凄い火力で細胞1つ残さず消滅させる方法があるくらいですね」

 

目玉を潰すといってもインベーダーは全身に目玉があり、それを潰すのそう簡単に出来る物ではない。更に高火力で消滅させると言っても、それだけのレベルに出力を高めればエネルギーの消耗も激しくなる。

 

「ゲッターロボしか有効的な対策はないと言うことか……」

 

「それはかなり不味いですなあ。今は宇宙でしか確認されていませんが、地球にも出現するかもしれない可能性を考えると……武蔵には出来れば同行していただきたいところなんですが……」

 

ちらりとショーンが視線を向けるが武蔵は深く頭を下げた。

 

「すんません。まだオイラも調べる事があるんで、一緒に行くのは無理です」

 

「武蔵、その調べ物ってなんなのかしら? ヒリュウ改やハガネで一緒に調べるのは無理な物なのかしら?」

 

武蔵にビアンが付いているのは判っているが、ハガネとヒリュウ改と共に調べるという選択肢もあるはずだとヴィレッタが武蔵にそう問いかける。

 

「そうだよ。リュウセイ達も会いたがっているし、一緒に行けばいいじゃないか」

 

名案だと言わんばかりのリューネだが、武蔵の顔は優れない。心情的には一緒に行きたいと思っているのは明らかだが、それでも一緒に行けない理由があるというのをギリアムはその顔を見て感じ取っていた。

 

「……その調べ物は公になれば俺達――もっと言えばレイカー司令達の立場でさえも危うくなるものか?」

 

ギリアムの問いかけに武蔵は黙り込んだまま小さく頷いた。レフィーナ達だけではない、レイカーの立場まで危うくなる調べ物――武蔵が一緒に行けないと言うのはギリアム達の事を心配しての物だった。

 

「……すんませんね。オイラとしては一緒行きたいんですよ……でも、それをすると今はまだ危ないんで、オイラはそろそろ行きます。ギリアムさん。個人的に連絡取れる端末のコードとかあります? それで連絡を取り合えると嬉しいんですけど」

 

「ああ。判った、少し待ってくれ」

 

ギリアムは手早く個人的な端末の通信コードをメモし、武蔵に手渡した。武蔵はそれを受け取ると小さく頭を下げた。

 

「もう少し何か判ればまた顔を見せに来ます。それじゃあ、また」

 

ブリーフィングルームを後にする武蔵をギリアム達は黙って見送った。武蔵の生存を知る事が出来たギリアム達だが、その武蔵から告げられたのは地球を滅ぼしかねない人智を越えた敵の存在――そして武蔵を明言することを避けたが、百鬼帝国が既に相当数上層部に潜り込んでいる事を暗に示していた。ゲッタードラゴンに似た形態に合体すると同時に翡翠色の光に包まれ、高速で飛び去るゲッターD2をギリアム達は無言で見送るのだった……。

 

 

 

 

 

武蔵がヒリュウ改を出た頃。月面のカーウァイはリンと連絡を取り合っていた。

 

『やはり早い内に月を脱出するべきと言うのだな?』

 

「ああ、武蔵がまたインベーダーと遭遇している。宇宙はもう安全ではない、シャトルがあるのならば早く脱出を考えろ」

 

マオ社で現在開発されている機体は今後の戦況の明暗を分ける。それらがインベーダーに寄生されるのも、インスペクターに奪取されるのも避けなければならない事態だとカーウァイはリンに警告する。

 

『判った。1度ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプLとMのエンジンを停止させる。その後脱出の準備に入る』

 

「そうしろ。いやな雰囲気になってきているのは間違いない」

 

月から地球に脱出するシャトルが次々と出立しているが、それは一部の人間だけでセレヴィスシテイに在住している人間の殆どが月面に取り残されたと言ってもいい状況になっている。

 

『……迷惑をかけることになると思うが、最悪の場合は助力を頼む』

 

「ああ。任せてくれ。そのために私が月に残ったんだ」

 

『そう言って貰えると助かる。では私達も脱出の準備に入る』

 

その言葉を最後にリンからの通信は途絶えた。カーウァイは廃工場の椅子に深く背中を預け目を閉じて、深く溜め息を吐いた。

 

「……駄目だな。胸騒ぎが収まらない」

 

首筋にちりちりと感じる静電気にも似た感覚――それは殺気と呼ばれる物に良く似ているとカーウァイは感じていた。それだけではなく、月面全体から言いようの無い邪気のような物をカーウァイは感じていた……深い闇から伸ばされた手が全身を絡めとるような……底なし沼に嵌っていくような……上手く言えないどす黒い何かを感じていた。

 

「何事も無ければ良いのだが……」

 

リン達の避難もそうだが、民間人の避難が済むまで何事も無ければ良いのだがと祈るカーウァイだが、その願いは届かず月での争乱の幕は開かれようとしているのだった……。

 

 

 

 

武蔵がヒリュウ改を後にし月面に向かっている頃、ホワイトスターでは……最後のインベーダーが悲鳴を上げながら消滅したところだった。。

 

「ぜぇ……ぜぇ……おい、アギーハ、生きてるかあ」

 

『な、なんとか……生きてるよ』

 

『……』

 

「おう、シカログもすまねえな。そんなボロボロなのによ」

 

両腕を失い、爆発を繰り返していたドルーキンだが、旧式であるがゆえにコックピット回りの装甲が厚く、負傷こそしているがそれでも命に関わる怪我ではなく、インベーダーとの戦いに苦戦していたメキボスとアギーハへの支援へ入り、3体となった事で辛うじてインベーダーを退ける事に成功していた。

 

『こんな事を言うのはなんだけどゲッターのお蔭だね。あたい達をボロボロにしてくれたけどね』

 

「おう、俺もそう思うぜ」

 

新西暦のインベーダーはゲッター線に餓えていたが、ゲッターD2の密度の高いゲッター線はインベーダーにとって猛毒にも等しく、ゲッターサイクロンの余波で消滅しながら戦いを仕掛けてきていたのが、メキボス達の命を繋いでいた。

 

『ゲッターのお蔭ってどういう事かな? 僕に説明してくれないか』

 

安堵の溜め息を吐いたメキボス達だったが、通信に割り込んできた穏やかな少年の声に引き攣った表情を浮かべた。

 

「ウェンドロ様」

 

『うん、この宙域のありさまとホワイトスターにめり込んでいるガルガウの件も含めて、全部説明してくれよ』

 

有無を言わさない自分達のボスの要求にメキボスは厄日だなと心の中で呟きながら、了解と返事を返すのだった。

 

 

「以上がことの推移になります。ヴィガジの暴走さえなければ交渉の機会があっただけに無念の極みであります」

 

疲労もあり、今回のすべての責任は全てヴィガジにあると言わんばかりに悪意のある報告をするメキボスだが、8割方事実であり、戦闘記録の映像もある為ウェンドロはメキボスの報告を真実として受け入れた。

 

「なるほど、ヴィガジの暴走でゲッターとの交渉の機会を失い、なおかつインベーダーの襲来でゲッターを見逃したと……ヴィガジ、謹慎だ。最悪査察官の資格を取り上げられる事も覚悟するように」

 

「ウェ、ウェンドロ様ッ! わ、私の話も聞いてくださいッ!」

 

「いいや聞く必要はないよ。ゲッターとは交渉優先だった筈なのに攻撃を仕掛け、交渉を失敗させた。謹慎で済んでいるだけありがたいと思うんだ……あ、いや、待てよ。ホワイトスターが基地として使えないレベルだ、謹慎よりもその修復をしてもらおう。その完成度によっては君の話ももう1度聞くし、挽回のチャンスも与えよう。メキボス達はお疲れ様、少し休んでから報告書を上げるように」

 

 

「了解です。失礼します」

 

「……失礼……します」

 

敬礼し退室するメキボスと震える手と声で顔を青褪めさせてヴィガジが退室していく。

 

「ふふ、本当にゲッターロボがいるなんてね……面白くなって来たじゃないか」

 

1人だけになったウェンドロは上機嫌に笑う、ヴィガジのせいで交渉と言う名目で罠を仕掛ける事は不可能になったが、地球にゲッターロボが存在する。それだけでも十分すぎる価値がある。それに映像と報告でゲッターのパイロットは単純で罠を仕掛けやすいというのも判れば、十分幾らでも手の内用はあるとウェンドロはほくそ笑む。

 

「未開の地の猿にゲッター線なんて勿体無い、あれは僕達ゾヴォークが管理するべきものなんだ」

 

ゲッター線を手にしゾヴォークでの立ち位置をより磐石にすることを企むウェンドロ。己が優秀だと驕る愚者は悪意を持った上位者にとっては絶好の駒となる、自分が利用されていると気付いた時……それは己が死す時なのだが、己が優秀だと信じているウェンドロはそれに気付く事無く、そしてそれを悟らせる事も無く、無数の悪意はウェンドロにへと迫っているのだった……。

 

 

第53話 四邪の鬼人 その1 へ続く

 

 




今回はシナリオデモの話になり、ヒリュウのメンバーが武蔵の生存と、今の地球を取り囲む不味い状況を知りました。次回は第三の狂鳥の話を書くつもりですが、インスペクターではなく百鬼帝国を敵にしたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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