進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第56話 四邪の鬼人 その4

第56話 四邪の鬼人 その4

 

月面に立つ2体の巨神――天を突く3つの角と口元から左右に伸びた髭のようなフェイスパーツが特徴的の眩いまでに輝く真紅の龍神「ゲッターロボD2」そしてもう1体は上半身は燃えるような紅、下半身は闇を溶かし込んだような禍々しい漆黒の装甲をした「朱玄皇鬼」――その2機の間には心臓の弱い者ならばショック死しかねない凄まじい殺気が放たれあっていた。その余りに重々しい空気に誰もが動けない中先手必勝と言わんばかりにゲッターD2がその手にしている戦斧を朱玄皇鬼の首目掛けて振るった。

 

『話をしようとか思ったりしないのかい?』

 

『悪いな、時間の無駄は省く主義なんだよッ!! 鬼はぶっ殺す! それだけだッ!!!』

 

朱玄皇鬼が手にしている炎の弓とダブルトマホークがぶつかり合い凄まじい轟音と火の粉が周囲に撒き散らされる。

 

『うわッ!?』

 

『きゃっ!?』

 

『し、姿勢が保てないッ!?』

 

何度も何度も振るわれる弓と斧――そのどれもが必殺。互いにこの一撃で相手を殺してやる、倒してやるという殺意と敵意に満ちた何の容赦もない攻撃の応酬――そこにリョウト達に入り込める余地は無かった。

 

「武蔵が押さえている間に輸送機に下がるぞ」

 

『む、武蔵さんだけを残すって言うんですかッ!?』

 

『いやいや!? 社長さん! その指示はおかしいでしょう!?』

 

リンの輸送機に下がれという指示にリョウト達が声を荒げたが、リオとラーダは違っていた。

 

『リョウト君。冷静に考えて、頭に血が上ってるのは判るけどPTであの特機と戦えるの?』

 

『後から援護射撃するだけでも流れは変わるわ。一緒に並んで戦うだけが全てじゃないのよ?』

 

リオとラーダの言う事は反論の余地が無い完璧な正論だった。PTで60mを越える朱玄皇鬼と80mに迫るゲッターD2と共に戦うことは不可能だ。だが巨体ゆえに的は大きく、攻撃や武器に射撃を当てて軌道をそらす事や動きを阻害する事は可能だ。

 

『判ったようだな。それなら輸送機に下がれ、敵の増援が何時来るか判らないんだからな』

 

リンはどこまでも冷静に戦況を見つめていた。百鬼帝国の目的が月面の制圧ならば、この後も敵の増援が来る事は確実だ。武蔵が自分達を庇いながら戦うにも限界がある。武蔵の事を考えるのならば、いつでも離脱出来る準備を整える事が最善の選択だ。後退するリン達に代わりゲシュペンスト・タイプSが前に出る。

 

(ゲッター線……か。なるほど)

 

リンがすれ違い様に見たのはゲシュペンスト・タイプSの装甲の各所から漏れる翡翠色の輝き――それが示すのはゲシュペンスト・タイプSがゲッター線で稼動しているという事だった。タイプSだったとしても圧倒的に強い理由がゲッター炉心だとすれば武蔵と共に戦えるのも納得だと心の中で呟き、玄王鬼の出現時にレールガンがかすめて墜落しているレディバードに接近する。

 

「ラーダ、ブラックホールキャノンを引っ張り出せ、リョウトとリオはエンジンを臨界点まで高めろ、フルパワーのフルインパクトキャノンの反動は凄まじい、それを押さえ込んで1発で当てろ、出来ないなんて言う言葉は聞かんぞ。アラド、お前は試作型のG・インパクトキャノンを預ける。試作型だから一発しか撃てないから外すなよ、カーク博士達はレディバードの再発進の準備を急いでくれ」

 

確かに一緒に戦うのは無理だ。だがいままで散々好き勝手し、更に人間を殺す事が趣味だと言う朱王鬼と玄王鬼にはリンとて強い怒りを抱いていた。

 

「人間の底力を見せてやるぞ。侮った事をあの世で悔いるが良い」

 

静かだがその底冷えするようなリンの殺気と怒気にラーダ達は何も言えず、リンの指示に従い動き出すのだった……。

 

 

 

 

 

鳥の頭を模した兜の下から僅かに露出している朱玄皇鬼の口元が大きく歪んだ。だがそれは痛みに歪んだ苦悶の顔だった……。

 

『おらあッ!!!』

 

ゲッターD2の容赦も何も無い前蹴りが胴体に叩き込まれ朱玄皇鬼がくの字に折れ、その巨体がサッカーボールのように弾け飛ぶ。

 

『朱! 距離をこのまま取れ!』

 

「判って……うぐうっ!?」

 

玄王鬼の言葉に頷き、蹴り飛ばされたまま距離を取ろうとした朱王鬼だが、背後から戻ってきたダブルトマホークが背中に突き刺さり、その勢いでゲッターD2に向かって弾き飛ばされる。

 

『よお、さっき振りだなあッ!!!』

 

「『がはぁッ!!!』」

 

朱玄皇鬼の頭をゲッターD2が鷲づかみにし、そのまま月面に叩きつける。コックピットの中の朱王鬼と玄王鬼は叩きつけられたことで凄まじい衝撃が襲う。だがその程度で武蔵の攻撃は収まらず、跳ね上がった所を追撃のサッカーボールキックが叩き込まれ、月面を転がりながら朱玄皇鬼は吹っ飛んだ。

 

『おおおおおーーーッ!!!』

 

地響きを立てて迫ってくるゲッターD2。その威圧感と凄まじい闘気は自分達よりも弱い相手としか戦った事がなかった朱王鬼と玄王鬼を飲み込んで余りある物だった。

 

「調子に乗るなよ! 人間がッ!」

 

自分達はブライに選ばれた特別な鬼だ。そんな自分達が人間に負ける訳が無い……そんな傲慢とも取れる強烈なプライドに支えられ、やっと自分の武器である弓を構え、ゲッターD2に向かって燃え盛る矢を放った。

 

『オープンゲットォッ!!!』

 

矢が命中する寸前にゲッターD2が弾け、朱玄皇鬼の放った矢はゲッターを素通りした。そしてその直後エネルギーを溜めていたゲシュペンスト・タイプSが姿を現した

 

「玄ッ!」

 

『判っておるわッ!!』

 

朱玄皇鬼の両腕に装備されていた亀の甲羅が分離し、朱玄皇鬼の前に浮かぶとエネルギー障壁を作り出した。

 

『ぶち抜けッ! ブラスターキャノンッ!!!!』

 

ゲッター線の光を伴ったブラスターキャノン――いや、最早ゲッタービームと呼んでも差し支えない強力な一撃が障壁にぶつかり、周囲に凄まじい電撃の嵐を巻き起こす。

 

「ぬっくうッ! やっぱりあのゲシュペンスト……ただものじゃない!」

 

『そのようじゃな。大帝様の慧眼を疑った罰かのッ!?』

 

ブライが気をつけろと言っていても、警戒しすぎている。人間なんかに負ける訳が無いと驕っていた朱王鬼と玄王鬼はゲシュペンスト・タイプSとゲッターD2の強さに驚愕し、ブライが警戒しろと言った意味を自らの身体で体験していた。

 

「な、なんとかしの……『チェンジッ! ライガァアアアアアーーーッ!!!』 ぐっぐうううッ!?」

 

ブラスターキャノンの掃射を凌いだ直後にライガー2が高速で飛来し、ドリルを容赦なく朱玄皇鬼に突き立てる。本来朱玄皇鬼は距離を保ち、弓と背中の砲台で中~遠に強い能力を持つ百鬼獣だ。ここまで距離を詰められては戦力の差で押し潰される事は明白だった。

 

『ぐっ、朱よ! ワシに変われッ!』

 

「ま、負けっぱなしで変わるなんて僕のプライドにッ!」

 

『お主のプライドに巻き込んでワシを殺すつもりか? 冷静になれ』

 

淡々とした玄王鬼の言葉に朱王鬼は何も言えなかった。自分達に下された命令は月面の制圧とインスペクターとの交渉――ゲッターを倒せと言う物ではない。

 

「……人間に負けを認めろと?」

 

『そうではない。だが今は大帝の命令を優先すると言う事だ。ワシらのすべては?』

 

己のプライドを穢されたと怒りを露にする朱王鬼だったが、玄王鬼の言葉で強制的に鎮めさせられた。

 

「大帝様の為に……」

 

『そうじゃ、ワシらの命、誇りなどは何の意味もない。判るな?』

 

諭すように言われた朱王鬼はがっくりと項垂れ、無言のまま玄王鬼に操縦権を引き渡した。ゲッタードリルを受け止めていた朱玄皇鬼の全身から氷が溢れ出し、それを見た武蔵は慌ててライガー2を後退させた。

 

『ほっほっほ、ここからはこのワシ玄王鬼と玄朱皇鬼が相手をしよう。ゲッターロボよ』

 

「なるほど、ゲッターに少し似てるってわけか」

 

氷の中から姿を現した百鬼獣は先ほどまでの重厚なシルエットから一転し、細身で背中に翼を生やし、亀の甲羅を模した盾と鳥の頭がそのまま切っ先になった槍を構えた先ほどとは異なる姿に武蔵は警戒心を強め、互いにジリジリと距離を窺いながら飛び出すタイミングを窺いあうのだった……。

 

 

 

 

炎を纏った鋭い刺突とライガー2のドリルが何度もぶつかり、火花を散らす。姿を現しては消えるを繰り返すライガー2と玄朱皇鬼の速さはマッハの戦いであり、容易に割り込める状況ではなかった。月面の岩等が紙切れのように吹き飛ばされ、凄まじい勢いで破壊されていく月面を見ながらカーウァイは戦況の観察をし、ある決断を下さざるを得なかった。

 

(月の奪還は不可能だ……セレヴィスの住人には悪いが、ここは見捨てるしかない)

 

圧倒的なパワーを持つ朱玄皇鬼と戦っている間にセレヴィスシティ周辺は百鬼獣に完全に包囲されてしまった。それに加えて機動力に長ける玄朱皇鬼は月面からゲッターD2とゲシュペンスト・タイプSを引き離すように立ち回っていた。

 

(悪手だったか……だがあの状況ではな)

 

マオ社から脱出するレディバードとリン達をカーウァイは優先した。セレヴィスからの避難は続いており、百鬼獣が出現した段階では住民の6割は避難完了していた。それに加えてゲッターD2が合流すれば百鬼獣を一掃して、月面の奪還は可能と考えていたが、こちらを撃墜するよりもセレヴィスとマオ社の制圧を優先した百鬼獣――最初からこちらを倒すつもりはないと言う事に気付いた時にはもう遅かったのだ。

 

「リン。脱出の準備は出来ているか?」

 

通信をせずに極力痕跡を残さないという真似はもう出来ない。これだけ派手に立ち回り、L5戦役の時にハガネに乗っていたクルーが複数人この場にいる段階何も言わずに去るという事は出来ない段階になっている。だからこそ通常通信でリンにカーウァイは声を掛けた。

 

『レディバードのエンジンは何とか復旧した。後はエンジンの出力が高まれば脱出は可能だ……だが……』

 

「……私が言えた義理では無いが、無理だ」

 

セレヴィスの奪還をするには戦力的にも、そして時間的にも無理だ。最初からセレヴィスの制圧を目的にしているのならば敵の増援は間違いなく来る。百鬼獣という並みの特機を遥かに越える機体が複数体現れればゲッターD2をもってしても不可能だ。それ所か民間人を人質にされては武蔵は動けなくなる。百鬼帝国にゲッターD2に奪われるようなことがあってはならないのだ。

 

『……判った。脱出の準備を進める』

 

「すまないな、助けに来てこの様だ」

 

かなりの数の百鬼獣を撃墜したカーウァイだが、それでも限界はある。エネルギー残量などはレッドゾーンに入ろうとしている……冷静に考えてこれ以上の戦闘は不可能だと決断せざるを得なかった。リンからの脱出準備を進めるという返答を聞いてからカーウァイは鍔迫り合いをしているライガー2と玄朱皇鬼の戦いの中にゲシュペンスト・タイプSを割り込ませた。

 

「武蔵、離脱する。輸送機が飛び立ったら、それを護衛しながら百鬼獣を振り切るぞ」

 

ゲッター合金弾頭のM-13ショットガンによる面射撃で玄朱皇鬼の動きを阻害しながら、これからの動きを武蔵に口早に説明した。

 

『えッ!? で、でもあの街は!?』

 

「また奪還する機会はある。この場は引く」

 

『鬼が人を殺すかもしれないんですよ!? オイラ1人でも残ります!』

 

セレヴィスの住人を見捨てるという選択に武蔵は当然反対した。だがカーウァイは冷酷に、そして非情に決断を下した。

 

「人質を取られ、ゲッターD2から降りろと言われてお前は反対出来るのか?」

 

『っ! そ、それは……』

 

「最悪はゲッターD2を百鬼帝国に鹵獲される事だ。ここは辛いと思うが……逃げるしかない。リン達も脱出支援をしてくれている、判るな?」

 

ミサイルやビームライフルの攻撃で玄朱皇鬼の動きを封じようとしているリン達を見て、武蔵も今の状況を理解せざるを得なかった。

 

『了解です。でも……最後に一発くらいぶちかましてもいいですよね?』

 

「好きにしろ、私はそれを止めるつもりはない」

 

離脱せざるを得ない、だがそれでも朱王鬼と玄王鬼の言動を許したわけではない。少なくとも、すぐに玄朱皇鬼が動けない状況にしてから撤退するつもりだった。

 

『話をしているとは余裕じゃなッ!!』

 

弾幕を強引に突っ切って玄朱皇鬼がその手にした槍でゲシュペンスト・タイプSとゲッターD2を貫かんと迫る。

 

『オープンゲットッ!!!』

 

「武蔵、きついのをかましてやれッ!!」

 

横っ飛びで玄朱皇鬼の突撃を避けたゲシュペンスト・タイプS。そして玄朱皇鬼の進行方向にはポセイドン2にチェンジしたゲッターD2が立ち塞がっていた。

 

『フィンガーネットォォオオオオッ!!!』

 

『ふぇッ!?』

 

雄叫びと共に放たれたフィンガーネットが玄朱皇鬼を絡め取る。それと同時にポセイドン2の目が力強く光り輝き、その豪腕を振り上げる。

 

『おらぁッ!』

 

武蔵が行なったのは単純だが、凄まじい破壊力を持つ攻撃だった。フィンガーネットで絡めとり動けない玄朱皇鬼を持ち上げて月面に叩きつける、振り回して岩にぶつける。ポセイドン2のパワーで振り回されては玄朱皇鬼は脱出する事も、反撃する事も出来ず。振り回されは叩きつけられる、そんな原始的な暴力の嵐に晒されていた。

 

『うおらぁッ!!!!』

 

ジャイアントスイングの要領で振り回し、トドメだといわんばかりに月面に叩きつけ、更に振り上げてフィンガーネットを切り離す。

 

『しゃああッ!! 行けええッ!!!』

 

月上空を舞う玄朱皇鬼は振り回され、叩きつけられ回避も防御も出来ない状況――そしてセレヴィスに何の影響も与えないと言う最高の位置に玄朱皇鬼が投げ飛ばされる。

 

『ターゲットロックッ! リョウト君! 照準は合わせたわッ!』

 

『判ったッ! 反マグマ原子炉リミッター解除ッ! 臨界点突破ッ!! フルインパクトキャノン……発射ッ!!!!』

 

避ける事も、防御することも出来ない玄朱皇鬼に向かって赤黒く輝く4つの重力砲が放たれた。

 

『ぬおおおおおッ!! 舐めるなよ人間があああああああッ!!!』

 

【ガアアアアアアアーーーッ!!!】

 

玄王鬼と玄朱皇鬼の雄叫びが響き渡り、手にしている亀の甲羅が展開しそこから放出されたバリアがフルインパクトキャノンを受け止めるが、見ている前で亀裂が走った。

 

『うおおおおおッ!!!』

 

玄王鬼の雄叫びと共にフルインパクトキャノンは弾かれたが、ヒュッケバインとビルトファルケン・タイプKが巨大なキャノン砲を構え、その照準を玄朱皇鬼に向けていた。

 

『ターゲットロック、照準リンク開始、行けるな? アラド』

 

『うっすッ!! いつでも行けます!』

 

ブラックホールキャノンとGインパクトキャノンの砲口にエネルギーが溜まるのを見て、朱王鬼と玄王鬼は顔色を変えた。

 

『朱ッ!』

 

『判ってる!』

 

札が玄朱皇鬼を囲うように展開され、札同士が繋がり作り出されたバリアにブラックホールキャノンとGインパクトキャノンの凄まじい重力波が玄朱皇鬼を飲み込まんと迫り、球体のバリアがそれを防ぎきった時月面に着陸していたレディバードとヒュッケバイン達の姿はそこには無かった。全身から火花を散らし、動かない玄朱皇鬼のコックピットで朱王鬼と玄王鬼は屈辱にその顔を歪ませるのだった……。

 

 

 

 

月面から離脱したレディバードと平行するようにゲッターD2とゲシュペンスト・タイプSは移動していた。

 

「社長、月面からの離脱に成功しましたね」

 

百鬼獣の追撃も振り切り安堵の表情を浮かべたラーダだが、ちらりと窓の外を見て若干気まずそうな顔をした。

 

「仕方あるまい、ゲッターD2とゲシュペンスト・タイプSまでは収容できんからな。 それで敵の追撃は?」

 

一緒に戦ってくれた2人だが、レディバードはあくまで輸送機で超大型特機のゲッターD2と色々と強化され、準特機サイズのゲシュペンスト・タイプSは収容する事が出来なかったのだ。

 

『いやあ、オイラの事は気にしなくていいですよラーダさん』

 

『私の事も気にしなくて良い、ある程度連邦の勢力下に入ったら離脱するからな』

 

離脱するつもりだからレディバードに乗り込まなくて都合がいいと言う武蔵とカーウァイ、そう言われてはラーダも強く言う事が出来ず。丁度格納庫からコックピットルームにリオ達が入って来たので、リンに尋ねられたセレヴィスの今の現状を報告した。

 

「セレヴィスも無事のようです。あの特機――百鬼獣に囲まれているようですが、それ以上は無いようです」

 

「ほ、本当ですかッ!?」

 

「セレヴィスの人達は無事って事で良いんですね!?」

 

最後まで避難誘導していたユアンは脱出が間に合わなかったとリンから聞いて気落ちしていたリオだが、セレヴィスに直接的な被害が出ていないと聞いてその顔を輝かせた。

 

「ええ、どうも街はおまけで彼らの本命は月の製造工場だったみたいね」

 

マオ社を初めとしたPTの製造工場に無数の角を生やした男達がなだれ込んでいる姿を遠隔操作で見つめながらマリオンは顔を歪めた。

 

「本当に鬼なのですね。鬼と名乗っているだけかと思いましたが」

 

「……マジで角生えてるのかよ」

 

額やこめかみから角を生やしている男達を見て流石のリンも驚きの顔を隠す事は出来なかった。百鬼帝国、四邪の鬼人と名乗っていたが、まさか本当に鬼だとは思っていなかったのだろう。

 

「しかし奴らの行動には謎が残るな、何故我が社の工場を手に入れようとしたんだ?」

 

百鬼帝国の戦力である百鬼獣はPTを遥かに越えている。仮に月で百鬼獣を作ろうとしても規格が違えば、製造等出来る訳も無い。

 

『それは予測になるが、インスペクターとのやり取りに使いたいのではないか?』

 

「どういうことだ?」

 

『インスペクターの求める物は優れた技術だという、百鬼獣は確かに強力だが、それはロテクで決して最新の技術ではない』

 

『ああ、オイラのゲッターと同じって事ですね』

 

『そういう事だ、不安定な物は必要ないと言う所だろう』

 

予測と言ったがあちら側でのインスペクターの目的を知っているカーウァイは予測ではなく確信だった。どうもインスペクター達は技術はあってもその技術を武器に転化する能力に劣っていて、武器などの開発に長けている地球人の開発データと機体を求めているようだった。

 

「となると今ごろはムーンクレイドルも」

 

「恐らく制圧されていますわね。武器を現地調達しようなんてずいぶんとセコい異星人ですわね」

 

やれやれと言う様子のマリオンだが、事実そうだろう。制圧に来て、使う武器は侵略している所の物――それをセコイと言わず何というと思うのは当然の事だった。

 

「そ、そうだ! 武蔵さん。あん時のホットドッグありがとうございました!」

 

『アラドか! なんだ元気そうだなあ』

 

「元気そうだなじゃないですよ! 何でゲッターロボのパイロットって言ってくれなかったんですか!?」

 

『あり? 言ってなかったっけ?』

 

「言ってないです!!」

 

武蔵と話をしているアラドを見たリオは武蔵と話がっていたリョウトに視線を向けたが、リョウトはぐったりとした様子で椅子に横たわり、額に濡れたタオルを乗せていた。

 

「リョウト君、大丈夫……?」

 

「う、うん……大分落ち着いたよ」

 

ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプMから降りたリョウトはその瞬間に崩れ落ちた。その理由は反マグマ原子炉による熱による軽度の焼けどと熱中症に近い状態だったのだ。

 

「その程度で済んで御の字ですわ。私が用意したリミッターを解除した上に、無理やりプログラムを組んでガンナーとドッキング、そして

その上フルインパクトキャノンを2発も、私の言ったことをぜんぜん聞いてないんですのね」

 

「す、すいません。頭に血が上ってて」

 

マリオンに怒られ、リョウトが謝罪の言葉を口にする。だがマリオンが責めていたのはリョウトではなく、カークの方だった。T-LINKシステムがウラヌスシステムに変化することを知っていた素振りを見せていたカークに対しての言葉だった。

 

「どうやら、あのシステムは火事場の馬鹿力を誘発する為の物らしいですわね。良い加減にパイロットに詳しく説明したらどうですの?」

 

「……私はタイプMの再調整をしてくる。放熱は済んだだろうからな」

 

逃げるように格納庫に向かうカークを見てマリオンは眉をひそめた。マリオンの指摘はカークにとって耳の痛い物だったのだろう。だがここで逃げた事でマリオンの中にはT-LINKシステムへの不信感が生まれ始めていた。

 

「武蔵君。今までどこにいたの?」

 

「そうですよ、武蔵さん。今までどこにいたんですか?」

 

リオに支えられながらどこにいたのか? と武蔵に尋ねるリョウト。あれだけ探していたのに見つからず、そして生きていたのに連絡もなかった。その理由はなんなのか? と尋ねられた武蔵は笑いながら口を開いた。

 

『ちょっと旧西暦でリョウ達と化けもんと戦って、んで今度は未来? なんか訳の判らんところでまた化けもんと戦ってた』

 

「「「は?」」」

 

理解を超える武蔵の言葉にレディバードにいた全員から困惑の声が零れた。

 

『武蔵もう少し詳しく説明したらどうだ?』

 

『いやいや、オイラ馬鹿ですから頭のいい説明はどうも苦手で、カーウァイさんが代わりにしてくれません?』

 

『……やれやれ、私達はインベーダーとアインストと戦っていた。戦闘データはヒリュウ改から貰ってないか?』

 

「ああ、貰っている。だがあの化け物達は旧西暦の生き物なのか?」

 

最近宇宙で確認されている謎の化け物。アインストとインベーダー……その両方が旧西暦の生き物なのか? とリンに尋ねられたカーウァイと武蔵の返答は……。

 

『さぁ? インベーダーは旧西暦にもいましたけど、なんか未来にもいましたよね?』

 

『いたな。アインストもだが、まぁあれだ。化け物の正体など気にする事も無いだろう』

 

2人の返答は正体は判らないと言う物だったが、次の全く同じタイミングで言われた言葉にリン達は絶句した。

 

『『化け物は殺す。それだけだ』』

 

敵の正体がなんであろうが襲ってくるなら殺す――シンプルだが、それが最も正しい選択と言うのはリン達にも判っていた。

 

「ふ、確かにその通りだな。その方がシンプルでいい」

 

『インベーダーはマジで人を食いに来るんで、考えている暇があったら攻撃した方が良いですよ。じゃないと、食われて死にます』

 

「肝に銘じておこう、ありがとう」

 

考える暇があったら自分の身を守る事を考えろと言う武蔵のシンプルな助言。しかし、それは化け物と戦っていた武蔵達だからこそ、非情に説得力のある言葉だった。

 

「武蔵さんはこれからどうするんすか? やっぱり行っちゃうんですか?」

 

『おう、悪いけど、オイラ達もやることもあるし、それにもう護衛もいらないみたいですしね』

 

護衛がいらないと武蔵が告げ、その言葉の意味をリン達が考えているとラーダの嬉しそうな声がコックピットに響いた。

 

「ヒリュウです!  ヒリュウ改から通信が入っています!」

 

武蔵達の視線の先からヒリュウ改がレディバードに向かっている姿があった。

 

「武蔵さん、もう行ってしまうんですか?」

 

『おう、でもまぁ、これが今生の別れって訳じゃねえ、また会おうぜ。リョウト、リオもな』

 

「ええ、武蔵君も元気で」

 

『おう! また……でもまあ、もう本当すぐに会うことになると思うぜ。じゃあな!』

 

もうすぐ会うことになると思うと言い残し、武蔵とカーウァイはヒリュウ改から背を向けてその場から離脱していく。

 

「武蔵君が元気そうで良かったわね」

 

「うん。生きているって判れば、それだけで良かったと思うよ」

 

飛び去る赤の光――その光が見えなくなるまでリョウト達はゲッターD2とゲシュペンスト・タイプSが飛び去った方向を見つめ続けているのだった。

 

 

 

ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM

ビルトファルケン・タイプK

 

を入手しました。

 

ビルトファルケン・タイプK

 

テロリストに奪取されたビルトファルケンのTC-OSを解析されていることを考え、TC-OSの書き換え作業を行なっている間にマリオンが暴走し、マ改造されたビルトファルケン。タイプKの「K」はキメラであり、キメラのように複数のコンセプトが組み込まれているためにマオ社のスタッフの間でそう呼ばれるようになった。まず大きな改造点としては背部大型の可変翼であり、プロジェクトTDの機体に匹敵する加速力を持つが、その加速力を得るために極限まで軽量化され、装甲は紙と言われるほどに薄く、当然のようにパイロットへの負担は度外視され、可変翼による突然の方向転換や、急旋回も可能だが、可能と言うだけでそれをすれば間違いなくパイロットはブラックアウトすると言う代物。更に両腕と両足にビームステーク発射機構が組み込まれ、コンセプトとしては可変翼による爆発的な加速で相手の懐に飛び込み、ビームステークを打ち込むと言う射撃型でありながら、アルトアイゼンのような改造を施されてしまった。射撃武器として極限まで接近し、射撃を行ない速やかに離脱する為に銃身を短くし、ジェネレーターと直結させ取り回しと威力を両立させたオクスタンランチャー改、両腰にマウントされているアサルトマシンガンも銃身が短くなり射程が短くなった代わりに銃身の横を操作することでショットガンモードへの切り替え機能に加え、銃弾は特殊加工を施された専用のカートリッジを与えられ、凄まじい破壊力を持つ兵装となってる。こう聞くと非常に強力な機体に聞こえるが、操縦出来るパイロットが居らずお蔵入り確定だったが、アラドが乗りこなした事でアラドの専用機となった。なお、このコンセプトに合わせビルガーのマ改造が始まっているのだが……それを知る者はいない。

 

 

ビルトファルケン・タイプK

 

HP5500(7800)

EN200(350)

運動性170(215)

装甲900(1500)

 

特殊能力

分身

 

 

フル改造ボーナス

 

運動性+15 分身発生率+10%

 

 

コールドメタルナイフ ATK2400

アサルトマシンガン改 ATK2900

アサルトショットガン ATK3300

オクスタンランチャーEモード ATK3500

ビームステーク(腕) ATK3900

ビームステーク(足) ATK4200

B・K・Kコンビネーション ATK4900

 

 

 

 

ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM

 

マオ社で開発されていたマグマ原子炉搭載型PTの1号機であり試作機。開発コンセプトは表向きはレイオスプランの1つである「小型化されたSRX」だが、それと同時に「新西暦の技術で作成されたメカザウルス」と言う2つ目のコンセプトも隠されている。ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプMはマグマ原子炉を搭載するに当たり、ボデイとフレームは新規構造の物となり、背部に大きくせり出したバックパックと一体化した独特な胴体形状を持つ。マグマ原子炉の出力は不安定でT-LINKシステムによる制御を試みているが、マグマ原子炉の出力が高すぎてT-LINKシステムの不調を起しており、本来想定された使い方は出来なくなっている。レフィーナが受け取りに来た時には既に完成していたのだが、マグマ原子炉の抱える欠点――稼動時に周囲に齎す熱はパイロットすらも火傷させる凄まじい物であり、専用のパイロットスーツが完成するまでは引き渡し出来ないと言うことで完成の目処は立っていないと言われた。百鬼帝国の襲撃の際にリョウトが操縦し、玄王鬼に大ダメージを与えたが、その時のリョウトは非常に荒々しい言動をしており、TーLINKシステムによる制御は出来ていないが、T-LINKシステムを通じてパイロットに何らかの影響を与えているのではないか? と危惧されている。派手なメタリックレッドだが、これには理由がありマグマ原子炉の熱を外部に放出しつつ、機体とフレームに熱を篭もらないようにする為の物の特殊装甲で、稼動時は真紅に輝くのが最大の特徴。あくまで試作機である為手持ち火器は少なく、まだまだ改良段階ではあるがマグマ原子炉から供給される無尽蔵のエネルギーにより機体スペックは極めて高く、熱を攻撃に転用している為、機体とパイロットに同時にダメージを与えることが可能となっている。並みのPTを越えるスペックを持つが、その出力でもリミッターの掛けられた制限された出力である。MAガンナー、AMボクサーについで、ヒュッケバイン・MK-Ⅲ用の強化パーツAMハウンドによる可変式による装甲を装備する事で初めてフルパワーでの稼動が可能となるとされていたが、リョウトが戦闘中に組み上げたプログラムにより、本来想定されていないガンナーとの合体を行い、フルパワーを発揮する事になったが、本来のコンセプト、小型化されたSRX、そして新西暦の技術で建造されたメカザウルスと言うコンセプトとは全く異なる物となっている。

 

 

ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM

 

HP6800(8400)

EN280(410)

運動性125(195)

装甲1400(1900)

 

特殊能力

EN回復(小)

念動フィールド(炎) 1000以下の攻撃無効+回避率+8%UP

????

 

 

フル改造ボーナス

 

すべての武器の攻撃力+500、移動後使用不可の武装の使用可能

 

 

頭部バルカン ATK1900

ファングスラッシャー ATK2500

ビームソードH ATK3000(命中時装甲ダウン)

フォトンライフルH ATK3300(命中時ダメージとは別に500の追加ダメージ)

グラビトンライフルH ATK4100(命中時 装甲ダウン+命中ダウン)

ヒートバーン ATK4900(命中時 敵ユニットの移動力-1)

ヒートプレッシャー ATK5200(命中時 装甲ダウン、気力ダウン)

G・インパクトキャノンH ATK5500(命中時 装甲ダウン、気力ダウン、敵ユニットの移動力-1、攻撃力ダウン、確率行動不能付与)

 

 

 

第57話 動き出す世界 その1へ続く

 

 




今回で宇宙ルートは1回休みで、ノイエDCと剣神現ると1回前の話に戻るので、その方向に迎えるようにオリジナルの話を書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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