第18話 ゲッターロボ 出撃不能
自分の身の上を話した武蔵。嘘偽りのない事実を伝えたのだが、やはり旧西暦、恐竜帝国、メカザウルスと言う話は信じられないと考えていた武蔵だったが、ゲッターロボ、メカザウルスと言う証拠があり武蔵の話は信じられる事となった。それ以上に武蔵の人となりと言うのもあるが、素朴で、そして人の為に怒れ、困っていれば積極的に人助けをする。武蔵の姿は紛れも無く好青年であり、ハガネのクルーに受け入れられる事となった。そして武蔵は今、格納庫にいた……
「やっぱ無理? ロブさん」
「……無理だなあ……いや修理はするよ。修理はするけど……この有様だしなぁ」
ヴァルシオンとの戦いで損傷したジャガー号だけがクレーンで吊るされているが、その背部には鋭い剣の後が残されている。ヴァルシオンのディバインアームの傷跡だ、斬られた場所から配線が剥き出しになり今も火花を散らしている。
「……どれくらいで直ります?」
「……うーん、図面をスキャンして、部品を探して……少なくともアイドネウス島に突入前後までは無理だろうな」
予想よりも遥かに深い傷跡に武蔵も溜息を吐かざるをえない。だがあの場合バドに襲われている人を見捨てる事は出来なかったのだから、仕方が無い。
「うーん、オイラもある程度修理は出来ると思うけど、完全にスキャンしないと駄目ですか?」
「こっちとしても早くゲッターロボは戦闘可能にしておきたいからなあ……武蔵が手伝ってくれるなら、もう少し短く出来るかもしれないな」
恐竜帝国が健在な以上。メカザウルスと戦う事が出来るゲッターの修理は必要不可欠だ。ロブも多少厳しいけど、頑張ってみると笑う。
「しかしまさか本当に過去の人間だったとはなぁ……正直もしかしてって思ってたけど、直接聞くと本当に驚きだ」
「……なんで判ったの?」
「そりゃ、俺もメカニックだしな……細かい傷とか見るとある程度は予想がつくよ」
まぁ、まさか過去から来てるとか馬鹿らしいって自分でも思ったけどロブは笑う。武蔵はその言葉に苦笑する、そんな所で怪しまれるなんて夢にも思ってなかったからだ。
「まぁ俺としては正真正銘スーパーロボットの整備に携われるんだから不満は無いさ」
「……ご迷惑を掛けますけどよろしくお願いします」
深く頭を下げる武蔵にロブはこちらこそよろしくと頭を下げ、2人でジャガー号の修理を始める。
「えっーっと……こっちの配線がこれで……こっちがこれっと」
「へえ、中々やるじゃないか。メンテナンスはしてたのか?」
ロブから見ても武蔵の手際は良かった。武蔵は鼻の頭にオイルをつけながら照れくさそうに笑う。
「いやあ、オイラはゲットマシンもゲッターも大好きなんで、よくメンテを見てたんですよ」
「なるほど、それなら予定より早く……ん? あれはリュウセイとラトゥー二か?」
ロブがジャガー号の上に乗りながらそう呟く、武蔵も振り返ると確かにラトゥー二とリュウセイが話をしている。だけど微妙に険悪な空気だ
「ロブさん、オイラちょっと見てきます」
「あ、ああ。判ったよ、じゃあこっちはこっちで調べさせて貰うよ」
ロブの了承を得た武蔵はジャガー号の上から滑り降りて、リュウセイ達の元へと向かう。
「……っていう訳なんだ。すまないけど、お前のマニューバーデータを貸してくれるか?」
「……」
リュウセイが声を掛けているのだが、ラトゥー二はリュウセイの言葉に返事を返さない。それ所かそわそわとし、リュウセイの前から逃げたいという雰囲気さえ出ている
「ラトゥーニ? リュウセイどうかしたのか?」
武蔵の言葉にラトゥーニはぱっと顔を上げ、武蔵の背後に隠れる。その様子を見て武蔵が眉を吊り上げ、拳を鳴らす。
「まさか苛めてたのか?」
「いやいや! 違う! 違うから! 今度の作戦でビルドラプターの変形が必要だから、それのデータが欲しかっただけで……」
自分の勘違いでリュウセイを威圧していたと気付いた武蔵は悪かったと謝る。
「と言うわけらしいけど……無理なのか?」
ラトゥーニの目線に合わせて尋ねる武蔵。ラトゥーニはぼそぼそと武蔵に呟き、背を向けて格納庫から出て行ってしまう。
「なんだって?」
「今はヒュッケバインに乗ってるから直ぐデータは出せないとさ」
「あ、そう言う事……それなら言ってくれたら良いのに」
武蔵が仲介役になってくれた事でラトゥーニの返事を聞けたリュウセイはそう呟く、武蔵もそう思ったが内向的で人見知りが激しいのは判っていた。
「ジャーダさんかガーネットさんが一緒にいると案外話しやすいぞ?」
リュウセイにそう助言し、武蔵はロブと共にジャガー号の修理を再開するのだった……
武蔵の了承を得てゲットマシンの解析を始めているロブ。今までは自分で推測しないといけない部分もあった。だが今は違う、パイロットである武蔵に細かい質問が出来る。それはなによりもロブの心を滾らせていた。旧西暦の時代に人類を守り戦った正真正銘のスーパーロボット。それを整備出来ると言うのはメカニックとしても、ロボットオタクとしても素晴らしい経験だった。
「このジャガー号だけ調子が悪いように見えるけど、何かあったのかな?」
イーグル、ベアーと比べると損傷度が大きい。それに修理した痕跡も見えるので武蔵にそう尋ねるロブ、武蔵は苦笑しながらジャガー号の真ん中を指差す。
「敵の攻撃で風穴開いていたんですよ」
「……そうか、3万対1で戦っていたんだったな」
「そんなに戦力差あると思ってませんでしたけどね」
味方もいない、増援も無い。1人で絶望的な状況で未来を親友に託し、1人で戦いに出た……それがどれだけ過酷な事かロブには……いや、他の誰にも武蔵の気持ちなんて理解出来ないだろう。
(……辛いんだろうな)
「よう、兄弟。悪いな、こんなにボロボロにしちまってよ」
ゲットマシンを撫で、親しみを込めた言葉を投げかける。汚れている部分を丁寧に磨き、傷ついている部分を見て悲しそうな顔をする。今の武蔵は自分が生きた時代とは遠い時代に居て、そして仲間もいない。自分が命を賭けて救おうとした世界は人間同士で争っている……それを口にすることは無いが、武蔵はきっと傷ついているのだろう。ビアン・ゾルダークを止める為にハガネに乗り込んでいると言う目的も、一番最初に出会い、そして自分に良くしてくれたビアンを殺させたくないという思いの現れだろう。
(俺達に何が出来るんだろうな)
武蔵の孤独も悲しみも、誰も理解出来る訳が無い。理解していると言うのは簡単だし、そして同情する事も出来るだろう。本当なら荒れていてもおかしくない、それなのに人を思いやれる優しいその性格
「……武蔵は強いな」
「何か言いましたー?」
身体も勿論だが、何よりもその精神が強い。ロブは聞こえないだろうと思い、そう呟いたのだが武蔵には聞えていたようだ。ロブは慌てて手を振りながら
「いや、そろそろ作戦海域だからな。細かい作業は中断しようかってね」
今ハガネはアイドネウス島に向かう為に赤道付近を通過している。本当ならばこのまま修理を進めたいが、戦闘の衝撃で修理に失敗しても困るというと武蔵はなるほどと手を叩く。
「じゃあ、コックピットですね。イーグルからで良いですか?」
「ああ、どの機体からは武蔵に任せるよ」
ロブは笑みを浮かべてそう告げる。自分達に出来る事はそう多くない、でも武蔵がハガネにいる間は居場所を作ってやりたい。ロブは心からそう思うのだった……
イーグル号のコックピットに武蔵が座り、搭乗口にロブが腰掛ける形でゲットマシンの分析を行っていた。
「よし、じゃあ武蔵。可能な限りで良い、イーグル号の出力を上げてくれるかい?」
「うっす、了解」
今現在イーグル号は戦闘機出撃用のカタパルトの上に置かれていた。それは実際に稼動させる事でゲットマシン、そしてゲッターロボ用のシュミレーターを作る為だ。ゲットマシンの背部から炎が噴出す、ロブはその振動に顔を歪めながらも膝の上に乗せているコンピューターに視線を向ける。
「マッハ0.4……凄いパワーだな」
「いや、これで半分位」
武蔵の言葉にロブは絶句するしかない、対重力装備もなくマッハの速度で飛行。しかもこれで合体となると更なるGがコックピットを襲うだろう……正直研究者の視点から言うと良く耐えれるなと言わざるを得ない。
(……これはハガネのクルーで乗れるパイロットを見つけるのは無理かもしれないな)
ゲッターは3人乗りでフルパワー、2人で半分、そして1人では更に半分。そのスペックでも十分に脅威なのだが、恐竜帝国、メカザウルスを相手にするには全く持って足りない。せめて後1人パイロットが欲しいと言う武蔵の要望に答えてやりたい所だが……コッククピット回りを改造しない事にはそれすらも難しいかもしれない
「っと!」
「危ないッ!!」
突如ハガネを襲った振動にロブが姿勢を崩し、コックピットから上半身を出した武蔵がロブの制服を掴む。
「た、助かったよ。武蔵……大分戦闘が激しくなってるみたいだな」
今ハガネは赤道を突破中だ。敵も新型を出してきていると言う報告はさっき出て、整備班から何人かが解析に向かった。
「……オイラ、こんな事してて良いのかな」
戦力的にハガネの方が不利である。敵の防衛網を突破して赤道を抜ける、本来ならば武蔵が出撃できれば更に万全となるだろう……だがジャガー号が自力で飛ぶ事が出来ない今、出撃してもただの的になる。
「……それなら状況だけでも見てみるか?」
本当はイングラムからもダイテツからも禁止されているが、その余りに落ち込んだ表情にロブはそう声を掛ける。武蔵の性格は良いも悪いも真っ直ぐだ、ゲッターロボで出撃できない以上。下手な暴走をさせないためにも戦闘を見るのは禁止と命令されていた、それでもロブはその武蔵の表情を見てモニターに外の状況を映す。そこには頭部が巨大な砲塔になっているDCの新型AMの姿がある
「これか……そう言えば、ロブさん。気になっていたんですけど良いですか?」
「俺で判る事なら答えれるけど、なんだ?」
モニターを見るなり気になる事があると尋ねてくる武蔵。ロブはゲットマシンを飛ばす際にかかる重力や、パイロットの負担などを計算しながら返事を返す。
「ハガネのえーっとゲシュペンストとかは何で飛ばないんですか? あんなにでかいのが飛んでるのに」
武蔵の質問にロブは苦笑する。確かに普通ならAMが飛んでるのに、PTが飛ばないのは気になるよなと笑う。
「AMはテスラ・ドライブって言う飛行装置と重力遮断装置を兼ねた装置で飛行しているんだ。それはEOTI機関……つまりDCの前身の組織が開発していた物なんだ」
「つまりどう言う事?」
「……連邦にはPTに搭載できるような小型化されたテスラ・ドライブの技術が無いって事さ」
「じゃあDCの機体が飛べるのって」
「そ、ビアン・ゾルダークの技術力の賜物って訳さ。俺も研究してるけど、どうすれば、PTサイズにまでダウン・サイジング出来るのか皆目見当もつかないよ。武蔵が確保してくれたリオンも分析はしてるんだけどね」
なるほどと頷く武蔵。武蔵の攻撃で無傷で回収で来たリオンは相当数あるが、脱出時にプログラムが破壊されているため使用出来ないでいる。もしプログラムが破壊されておらず無事に回収出来ていれば、リオンから取り出して搭載するんだけどなあとロブは残念そうに呟く
「ゲッターの飛行技術を組み込めれば良いんだけどな。ゲッター線を溜め込む炉心が理解出来ん」
「……まぁゲッターの生命線ですしね。オイラもよく判ってないし……って! あいつらミサイルを撃って来やがったッ!?」
モニターにはキラーホエールから発射された対艦ミサイルが5つ映し出されていた。
「馬鹿なッ!? この距離で撃てば友軍すら巻き込むぞッ!? あいつらの指揮官は何を考えているッ!」
ロブもさすがにそれには怒鳴り声を上げた。対艦ミサイルはその名の通り戦艦を相手にするために開発されたミサイルだ。その破壊力は言うまでもなく、爆発の余波ですらPTやAMを破壊するには十分の火力を秘めている
「総員! 対衝撃防御を取って下さいッ! 格納庫及び、通路にいるクルーは至急避難場所への移動を開始してください!」
リオの艦内放送で格納庫にいた整備兵達が一部を除いて、格納庫から退避していくロブも武蔵を連れて退避しようとしたが、武蔵は動かない。
「武蔵聞えなかったのか……!?」
だがロブは武蔵を連れ出す事が出来なかった。その理由は武蔵の全身から溢れ出す怒気、その怒気が自分に向けられた物では無いと判っていても、ロブは恐怖した。
『なんだ、てめえ……知らねえのか。そのガキはな、人形なんだよ。ゲームのアイテムみたいなもんさ』
スピーカーから聞えてくるテンザンのラトゥーニを蔑むような言葉。それが武蔵の逆鱗に触れていたのだ
『アイテムだとッ!? お前何言ってやがるッ!!!』
『はは、何まじになってんだよ馬鹿見てぇ、アイテムで不服なら、強化パーツでもいいぜ? 最も欠陥品だがな』
リュウセイの怒声にテンザンは笑いながら告げる。だがそれがこの場で最も怒らせてはいけない相手にも聞えているとは思っていなかったのがテンザンの不幸であった。
『ちょっと、あんた! ラトゥーニの気持ちも知らないで……適当な事を言ってんじゃないわよ!」
『おお、こわっ!けどな、スクール出身のガキの殆どは実験が原因でな』
ガーネットの怒声がオープンチャンネルで響く、武蔵にはそのスクールが何かは判らない。だがそれが原因でラトゥーニの顔から笑顔が消え、そして対人恐怖症とも言える、人見知りを発症したと言うのが判った
『それ以上言うなッ! 言えばただですまさねぇぞ!』
『へっ、脇役が気分出すなよ。やれるもんならやってみろっての、この雑魚がッ!』
機械が砕ける音がした、ロブが恐る恐る振り返ると武蔵が手にしていた端末がその桁並外れた握力で握り潰されていた
『テンザン! てめえッ!!』
テンザンの言葉で怒りを爆発させたのは武蔵だけでは無い、リュウセイもだった。バレリオンの包囲網を一瞬で突破し、バレリオンへと肉薄する。その動きは先ほどの物と異なり、熟練の戦闘機パイロットと比べても遜色ない物だった……
「ロブさん。黙ってオイラを行かせてくれ」
「だ、だが! ゲッターロボに合体できない出撃するのは危険だッ!」
武蔵がテンザンに対して激しい怒りを抱いているのはロブにも理解出来た。ゲッターロボに合体出来ないのに出撃するのは危険だと止める、だが武蔵は首を左右に振る。
「人間には土足で踏み入っちゃあいけねえ部分がある。あいつはそれを踏み躙った、オイラはそれを許せないんだ。止めるって言うなら……無理にでも出撃するぜ」
武蔵が握り締めた拳が音を立てる。それを見てロブは溜息を吐く、もう止める事が出来ないと判ってしまったから……
「……後で謝るのを手伝えよ」
「すまねえ……迷惑を掛ける」
敬語ではなくタメ口。ロブはその言葉を聞きながら、そっちの方が武蔵らしいと笑い。ゲットマシンの出撃準備を始めるのだった……
武蔵がイーグル号の出撃準備をしている頃。リュウセイと対峙しているテンザンは自分を追い詰めているビルドラプターに顔色を変えていた。
「こいつ、さっきと動きが違うッ!?」
ミサイルランチャーとビームキャノンで近づけまいと射撃を放つが、ビルドラプターはその弾幕を潜り抜け、バレリオンVへと接近していく
「ああ、ラトゥーニが送ってくれたデータのおかげでなッ!」
リュウセイは怒りに満ちた声でテンザンに向かって叫ぶ。ラトゥーニの気持ちを考えず、非道な言葉を投げかけたテンザンにリュウセイは完全に切れていた。
「ほ! あの短時間で新しいパターンを作ったって言うのか? やっぱ、お前は俺と同じ人種だぜ」
だがテンザンが動揺したのは僅かな時間で、即座に気持ちを切り替え頭部の2門のレールガンでビルドラプターを狙う
「テンザン! 人の心を踏みにじるてめえだけは許せねぇッ!!!」
「ほ~お、いつになくかっこをつけてくれるじゃないの、でもな! 所詮お前も俺と同類だってことを忘れるんじゃねえッ!!」
お互いにロックオンの警告音を交互に鳴らしながら空中戦を繰り広げるテンザンとリュウセイ。それでもテンザンはリュウセイを挑発するのを止めない、それは余裕の表れではない。リュウセイの動きが予想を超えて上昇した為、怒りによるコントロールミスを狙った物であった。
「うるせえ! 俺はお前とはッ!」
「はっ! だから甘いんだよッ!!」
反論しようとしたその瞬間。僅かにだがビルドラプターの動きが鈍る、それを見逃すテンザンではなく、頭部のレールガンの砲塔を向けた瞬間。ロックオンの警告音が響く
「なっ!? どこからだッ!?」
ハガネはグレーストークと撃ち合いになっており、バレリオンVを狙う余裕は無い。PT隊もまだ自分とリュウセイの側まで来ていない、どこからロックオンされているのか判らず困惑し、急旋回したビルドラプターのホーミングミサイルがバレリオンに向かって放たれる
「ちいっ!!」
舌打ちしながら回避し、直撃は交わすがその代わりに左側のミサイルポッドが被弾した。それなのにまだロックオンの警告は途絶えない
「どこだ、どこから「うおりゃあああああッ!!!」 っ! 上かッ!!!」
太陽を背にして急降下してくる赤い戦闘機……イーグル号だ。太陽を背にしているからか照準を合わせる事が出来ず、すれ違い様にビーム砲がバレリオンVの2門のレールガンの砲塔のうち1つの砲口を貫き爆発させる。
「てめえッ! よくもやりやがったなッ!」
「遅せえッ!!!」
バレルロールからの再びのミサイル。ロックオンの警告音もならず放たれたそれは正確にバレリオンVの脚部を捉える。それは射撃管制システムも使わないパイロットの腕によって狙われた神業的な射撃技術……武蔵の力がゲッターロボ頼りではなく、戦闘機パイロットとしても優秀な腕を持っていると判明した瞬間だった。
「オイラはてめえみたいな、人の痛みを判らねえ野郎が大ッ嫌いだっ!! 覚悟しやがれッ! てめえに味わわせてやる……ゲットマシンの恐ろしさをなぁッ!!!」
赤道付近に展開していたバレリオン部隊。強力なレールガンによる砲撃と密集形態による強固な防御、それはハガネのPT隊の攻撃を防ぎ、強固な防衛網として働いていた。更に後方にテンザンのバレリオンV型による連射が可能なレールガンとビームキャノンとミサイルによる攻撃はテンザンには援護しようと言う意図が無いとしても、援護に近い形になっていた。
「くそっ! うざってえなぁッ!」
「オラオラオラッ!!!」
「くそがッ!!!」
だがそのテンザンが今はリュウセイと武蔵にとって完全に足を止められた今。それはこの赤道の防衛網を突破する最大のチャンスとなった。
「そこだッ!!!」
錐揉み回転しながらイーグル号が放ったレーザー砲はキラーホエールから放たれた、2つの対艦ミサイルをも撃墜する。それに続けてビルトシュバインとヒュッケバイン009の放ったレールガンとショットガンが対艦ミサイルを撃墜し、ハガネへの脅威は完全に無力化される。
「各員に告ぐ、防衛網に穴が空いた。今のうちにハガネの突破するラインを確保する」
ゲットマシンの登場はDC側のパイロットに動揺を与えていた、仮に合体していないとしてもゲットマシンは脅威としてDCに認識されていたからだ。
「しゃッ! 行くぜッ!!」
イングラムの指示が出るよりも先に勿論動き出した者もいた。イルムだ、グルンガストの飛行形態であるウィングガスト。その攻撃力と防御力を持って突破口を探していたが、テンザンがリュウセイと武蔵を相手にしているこれが最大の好機と判断したからだ。ウィングガストの全身がエネルギーフィールドによって守られると同時にバレルロールをしながらバレリオンの密集地帯へと向かっていく、ウィングガストの最大の攻撃である「スパイラル・アタック」だ。速度と質量による必殺攻撃だが、その反面十分な速度を得る必要がある為今まで出す機会が無かったが、テンザンが押さえられている今が最大のチャンスとイルムは判断したのだ。
「近づけさせるな! 撃てッ! 撃てッ!!!」
ゲットマシンの登場で動揺していた兵士達が我に返り、射撃態勢に入るが、それは僅かに遅かった
「ターゲットインサイト……ツインビームカノン発射ッ!」
「TーLINKリッパー射出ッ!!!」
シュッツバルトのツインビームカノンがレールガンを放とうとしていたバレリオンの下部から放たれ、バレリオンの密集防御を崩し、更にそこにTーLINKリッパーの追撃が放たれバレリオン同士の間隔を大きく開く。
「ジャーダ、ガーネット、一気に防衛網を貫く、続けッ!」
ビルトシュバインの左腕の盾からビーム刃が展開され、海面を滑りながらバレリオンへと接近していく。その後を続くようにプラズマステークを起動させ、左腕を放電させたゲシュペンストが続く。
「くっ! 固まれ! 防御姿勢をとれッ!」
バレリオン部隊の隊長の出した判断は迎撃ではなく、防御だった。ウィングガストが接近している今迎撃に出るのは危険と判断し、防御することを選んだのは決して間違いでは無い。だがそれは余りにも遅すぎた
「……リープ・スラッシャー……シュートッ!!」
ヒュッケバイン009から放たれたビーム刃を放つ遠隔操作ユニット「リープスラッシャー」が防御姿勢に入ろうとしていたバレリオンの頭部の砲身を切り裂いていく、それは威力自体はバレリオンが撃墜されるほどの威力ではなかった。だが姿勢を崩すには十分すぎる威力だ
「スパイラルアタァックッ!!!」
「アカシックバスタァァーッ!!!」
魔法陣から召喚した火の鳥と一体になったサイバスターとウィングガストの一撃がバレリオン部隊に風穴を開ける
「落ちろッ!!!」
「「ジェットマグナムッ!!!」」
完全に包囲網が崩れた一瞬ビルトシュバインのサークルザンバーとジェットマグナムが僅かに生き残っていたバレリオンの胴体を貫き破壊する。
「今だ! 全速前進ッ! この海域を突破するッ!! 各機着艦せよッ!」
バレリオン部隊の包囲網が崩壊した隙にハガネにPT隊が着艦し、一気に赤道の突破を図る。
「照準セットッ! アンダーキャノン発射ぁッ!!!」
「こいつも喰らっとけッ!!!」
イーグル号のミサイルとビルドラプターのアンダーキャノンがバレリオンVのレールガンの発射口と動力を同時に貫く
「ぐ、ぐううううッ! お、覚えてやがれえええええッ!!!!」
テンザンはそう叫ぶと脱出装置で脱出する。そして赤道を突破ハガネの後を追ってイーグル号とビルドラプターもその空域を離脱していくのだった……
「ラトゥーニ、マニューバーデータを転送してくれてありがとよ。おかげで助かったぜッ!」
リュウセイはビルドラプターから降りるなり、ラトゥーニの元へと走り感謝の言葉を告げる。
「ううん……リュウセイが無事でよかった。それに……お礼を言うのはこっち」
「え? なんだって?」
「あ……う、うん。な、なんでもないッ!」
ラトゥーニの言葉が上手く聞き取れず聞き返すリュウセイだが、ラトゥーニは少しだけ声を荒げ、なんでもないと言うとリュウセイから背を向けて走り去ってしまう
「あらら……また行っちまったぜ。嫌われてんのかな、俺」
逃げてしまったラトゥーニを見てリュウセイは肩を落としながら呟くとガーネットが違うわと笑う
「違うわ、照れてるのよ。あの子……それにあんたの事が頼もしかったのよ」
「何言ってんだよ。俺はあいつのデータと武蔵に協力してもらって、何とかテンザンと戦えたんだぜ?」
リュウセイは自分だけじゃ勝てなかったとガーネットに言う。だけどガーネットはそうじゃないわと笑ってリュウセイの肩を叩く。
「……そうじゃないわよ。テンザンがスクールの話を持ち出した時、あんたと武蔵が本気で怒ったでしょ? それが自分の意思を上手く伝えれないあの子にとって頼もしかったって思うんだ」
「……ただ無口って事じゃないのか?」
「あいつはな。スクールって言うパイロット養成機関の出身でな……そこでの訓練や精神操作が原因で重度の対人恐怖症になっちまったんだ。今でこそ大分マシになってきたがな」
リュウセイの質問に近くに来ていたジャーダが答える。
「そうだったのか……」
ただ無口という訳ではなく、他人が恐ろしくて仕方ない。それがラトゥー二の無口な理由だと知り、リュウセイはラトゥーニを傷つけたテンザンへの怒りを更に強くさせる。
「だから、皆と打ち解ける切っ掛けを作ってあげたくて……こないだみたいな事をやったのよ」
「俺は正直あれはどうかと思うけどな」
あのゴスロリ服の事を思い出し、ジャーダと共に苦笑する。確かに可愛い服装だったが、流石に軍艦には似合わない光景だろう。
「それはともかく、これからもあのこと仲良くしてやってね」
ガーネットの言葉に勿論と返事を返し、リュウセイは1度格納庫を振り返る
「武蔵。お前のおかげで助かりはしたが、勝手な出撃が許されると思っているのか?」
「すいませんすいません……本当すいません」
「出撃するのなら艦長かオノデラ大尉の出撃許可を取ってからにして、後始末も大変なのよ」
「はい、はい。判ってます、本当すいませんでした」
ぺこぺこ何度も頭を下げる武蔵にアヤは溜息を吐きながら、止める立場にあるロブにも注意をする。
「はぁ……オオミヤ博士も止めてくださいよ」
「すまん。あの時は下手にとめたら、俺まで殴られそうだったからな」
イングラムとアヤの2人に説教されている武蔵に南無と手を合わせ、リュウセイも格納庫を後にするのだった……
第19話 シミュレーター へ続く
戦闘シーンとかむっちゃ難しいですね……今回は割りと頑張ってみたつもりですが、不安は消えません。次回はトーマスの罠の話ですが、これは本当に戦闘無しで書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い