第60話 龍神と剣神 その2
ムータ基地で始まったシャドウミラー、百鬼帝国混成軍とのハガネの戦いは終始シャドウミラーと百鬼帝国が有利に立ち回っていた。
『ちいっ! あのゲシュペンスト一体何体あるんだッ!?』
ゲシュペンスト・リバイブ(K)からカイの苛立った怒鳴り声が響いた。ムータ基地の周辺には破壊されたゲシュペンスト・MK-Ⅱの残骸が散乱している。だがその数は10や20で利かず、更に倒した数以上のゲシュペンスト・MK-Ⅱが赤いバイザーアイを光らせ、一斉のスプリットミサイルを放つ。20機近いゲシュペンスト・MK-Ⅱの放ったスプリットミサイルは絨毯爆撃に等しく、モニター全面に映るスプリットミサイルの姿には流石のカイも背中に冷たい汗が流れた。
『カイ少佐! 下がって! ハイゾルランチャーシュートッ!!!』
『パルチザンランチャーフルパワーモード……ファイヤッ!!!』
『シャドウランサー射出ッ!!』
R-2パワード、ヒュッケバイン・MK-Ⅲ、そしてアンジュルグの放ったエネルギー態の槍がスプリットミサイルを貫き、爆発したスプリットミサイルが空中に赤い花を咲かせ、その瞬間にキョウスケとカイは敵の術中に嵌ったことを悟った。爆発の煙が周囲に広がると同時に搭乗機のセンサーが反応を示さなくなったのだ。
『物量に加えて、こんな鬱陶しい手まで使ってくるのかよッ!』
『うわああっ!? く、くそッ!!!』
チャフグレネードとスモークグレネードがスプリットミサイルの中に混じっており、スプリットミサイルが撃墜されたと同時に巻き込まれて爆発し、モニターとセンサーを纏めて使い物にならなくなった。煙で視界を封じられ、更にセンサーで熱反応を感知することも出来ない……完全に視界を塞がされたこの状態は余りにも不味い状況だった。
「ちっ、これは不味いぞ」
煙の中から飛び出してきたプラズマカッターを装備したゲシュペンスト・MK-Ⅱの攻撃を回避しながらキョウスケは唇を噛み締めた。人海戦術で押し潰しに来たと思いきやチャフなどを駆使し、こちらを幻惑しに来ているその術中に前衛を務めてるキョウスケ、ブリット、カイ、イルムの4人は完全に嵌ってしまった。
『くそっ! どこだッ!!!』
『落ち着け! レーダーが回復するまで防御に徹底しろッ! 下手に動くな、フレンドリファイヤになるぞッ!』
チャフグレネードとスモークグレネードの持続時間はさほど長くない。長くて5分、短くて2分ほど――だがこの乱戦状態で数分間も視界を塞がれると言うのは死に等しい状態だった。
「……ッ! くっ、やはりかッ!」
どうしても1つ、いや、2つは挙動が遅れる。そうなれば武装は二の次でコックピットを守る事を優先せざるを得ない。スクエアクレイモアに深く突き立ったプラズマカッターを見て舌打ちしながら、ゲシュペンスト・MK-Ⅱにリボルビングステークを撃ち込み胴体から両断する。
「……命が助かったと思えば安いが……ちっ、左のクレイモアが死んだか」
右腕でクレイモアに突き刺さったままのプラズマカッターを抜き、左手で構えほんの僅かだけ残っている視界を注視し、奇襲に備える。煙の先に影を見てプラズマカッターを突き出しかけ、それを既の所でキョウスケは止めさせた。
「下手に動き回るなとカイ少佐が言っただろう。何をしている」
『す、すいません中尉! でもリボルビングステークの炸裂音がしたもので』
音を頼りに合流を考えたブリットだったが、下手をすればプラズマカッターでゲシュペンスト・MK-Ⅲ・Sカスタムを破壊する所だった。
「まぁ良い、よく合流した。後ろは任せる、死角を減らすぞ」
『はいッ!』
キョウスケとブリットは運良く合流できていたが、イルムとカイは単独での戦いを強いられていた。
「シャアアッ!!」
「なるほど、俺とリバイブを警戒していると言うことかッ!!!」
煙から姿を現したのは一つ目の百鬼獣。一本鬼だった、鋭い爪を振るい装甲を切り裂こうとするのをカイは的確に見切り、細かい反撃を叩き込む。
「ギギィッ!?」
鳩尾、脇腹を素早く打ち抜かれた一本鬼は苦悶の声を上げて煙の中に姿を消し、変わりに三日月刀を手にした百鬼獣が飛び出してくる。
「余り舐めないで貰おうかッ!!」
三日月刀の一撃を左腕で受け止め、反撃に右拳を突き出し顔面を穿つ。背中から地面に叩きつけられ、転がって行く百鬼獣を見てカイは眉を細めた。
「良い具合に決まりすぎた……か」
煙の中を駆け回る百鬼獣とゲシュペンスト・MK-Ⅱの気配――微弱な殺気とも取れるそれを感じながら致命傷をかわし、反撃を繰り出している。だが相手は即座に逃げに回り、あるいは攻撃を受けてわざと煙の中に逃れるという戦法を取られては当然攻めきれる訳も無い。
「仲間意識もないか……面倒な事だ」
そしてゲシュペンスト・MK-Ⅱと百鬼獣に仲間意識などは無く、それこそ味方ごと攻撃する勢いの百鬼獣の攻撃はゲシュペンスト・MK-Ⅱに当たり、わずかに威力と勢いを削がれている。だが元が百鬼獣という巨大な特機の攻撃だ、多少威力が削がれた所でそのダメージは決して低い物ではなくゲシュペンスト・リバイブに少量だがダメージを蓄積させる。
「ハガネはまだかッ!」
ゲシュペンスト・MK-Ⅱが健在な限りはまた何度でもこのチャフグレネードとスモークグレネードによるかく乱は続く、ゲシュペンスト・MK-Ⅱも条件は同じだが、相手は死兵であり死ぬ事前提の突撃だ。しかも百鬼獣はゲシュペンスト・MK-Ⅱごとこちらを攻撃してくる。少しでもゲシュペンスト・MK-Ⅱの数が減らなければこの状況は変わらない――カイは焦りを覚え始めているのだった。そして焦りを覚えているのはチャフとスモークグレネードのせいでキョウスケ達と連絡が付かないハガネ、そしてライ達も同様だった。
「照準ゲシュペンスト・MK-Ⅱ! これ以上あいつらの好きにさせるな!」
テツヤの指示が飛び、対空砲座とミサイルが放たれゲシュペンスト・MK-Ⅱを捉える。だが撃墜したと思えば新たなゲシュペンスト・MK-Ⅱが姿を見せる。
「くそッ! あのゲシュペンストはどうなっているんだ!!」
「落ち着け大尉! 我々が動揺してどうする!」
「艦長……すみません」
テツヤを一喝したダイテツ。だがダイテツも悪化の一途を辿る状況に眉を顰めていたチャフとスモークで姿が見えないキョウスケ達。そして煙の中に突入していくゲシュペンスト・MK-Ⅱと百鬼獣――煙が晴れた時に残骸が広がっているのではないか? という最悪の予想が脳裏を過ぎる。
「ライディース少尉達にはゲシュペンストを狙うように指示を、対地ホーミングミサイルをスモークの密集地帯手前に打ち込め。爆風でスモークを散らすぞ!」
ダイテツの指示が飛びエイタがそれを復唱しようとした時――ハガネのブリッジに警報が鳴り響いた。
「巨大な熱源確認! 所属は不明ですが、恐らく百鬼帝国だと思われます!」
ゲシュペンストと百鬼獣の後方に現れた空中母艦。そしてそこから無数の飛行型の百鬼獣が出撃し、ダイテツはその顔を歪めた。ここで飛行型の百鬼獣を切ってきたという事はハガネ、そしてPT隊も一掃するつもりだというのが明らかだった。こんな時にトロニウムバスターキャノンが使えれば……普段は考えもしない泣き言がダイテツの脳裏を過ぎった時、更なる警報がブリッジに響いた。
「今度は何だ!? また敵の増援か!?」
「い、いえ! 友軍反応です! 所属照合……プラチナム1シロガネです!! だ、だけど早い、早すぎる!? どうなっているんだ!?」
所属照合を終えたエイタがパニックになった様子で叫んだ。スペースノア級であっても異常な速度でハガネと空中母艦、その中間を横から突入してくるシロガネの反応。その速度に百鬼帝国に利用されているのかという考えが脳裏を過ぎった時、広域通信でリーの叫び声が響いた。
『総員対衝撃防御! 突っ込むぞッ!!! シロガネ……突撃ィいいいいッ!!!』
E-フィールドを展開し、その上からテスラドライブを臨界させた事で発生するブレイクフィールドで覆ったシロガネが最大速度のまま百鬼獣の群れのど真ん中に突っ込みその質量と速度を用いて百鬼獣を弾き飛ばした。
「な、なんて言う無茶を……ッ! す、スペースノア級でソニックブレイカーをやるなんて正気か!?」
「だがその無茶に我々は救われたぞ大尉!」
シロガネが最高速度で戦場を突っ切った事でスモークは弾き飛んだ。アルトアイゼン、ゲシュペンスト・MK-Ⅲ、グルンガスト、そしてゲシュペンスト・リバイブ(K)そのすべてが健在だった。
『総員出撃! 巻き返すぞッ!!』
そしてシロガネから出撃するオクトパス小隊、そしてR-1、ヴァイスリッター……奇しくも両舷から部隊が展開され、左右からの挟撃という陣形になった事で、圧倒的に不利だったムータ基地で戦いは辛うじて互角という状況になろうとしているのだった……。
シロガネのブリッジではあちこちでイエローアラートが点灯していた。想定していない地上でのオーバーブースト、Eフィールドの全力展開とテスラドライブを臨界点まで高めた事による不調をシロガネは訴えていた。だが、艦長席でリーは小さく笑みを浮かべていた。
「流石はスペースノア級……良く耐えてくれたッ」
並みの戦艦では辿り着く前に爆散していただろう。それに耐え切ったシロガネは紛れも無く、人類の希望である箱舟であるとリーは笑った。
「総員出撃ッ!! 巻き返すぞッ!!!」
E-フィールドを解除すると同時に弾かれたようにゲシュペンスト・MK-Ⅲを先頭にしてオクトパス小隊、そしてR-1、ヴァイスリッター改が出撃していく、敵の包囲網を抜け味方を全て無事にハガネの元に運ぶ事が出来た……それだけでリーの捨て身の作戦は意味があっただろう。
「使用可能な対空砲座、主砲、副砲の数はッ!」
「はっ! ぜ、全体の4割ほどかと……」
「十分だッ! 照準をゲシュペンスト・MK-Ⅱ! そしてアンノウンに合わせろッ!」
想定されていないソニックブレイカーを行った事でシロガネはその武装の半数を失っていた。それでも支援を行うだけの武装が残っていれば良いとリーはそのまま支援射撃を命ずる。
「か、艦長。ハガネより通信です」
「繋げてくれ」
戦況図を確認し、ここからどうやってムータ基地を防衛するかと計算しながらハガネからの通信に応じるリー。
『助かった。リー中佐、お前とシロガネのお陰で我々は窮地を脱する事が出来た』
「助けになれたのならば何よりですダイテツ中佐。これより本艦はダイテツ中佐の指揮に入りますが、作戦目的はムータ基地の防衛でよろしいのでしょうか?」
リーの問いかけにダイテツは首を左右に振った。
『ムータ基地は既に動力を停止、更に非戦闘員も離脱している。残っているのは囮の部隊だが彼らも脱出準備を進めている』
「……ムータ基地が万全だと思わせ、敵を引き付けるということでよろしいでしょうか?」
戦力の差、そして敵の数――リーはダイテツの指示を最後まで聞かなくても、その作戦の意図を理解した。
『そうなる。合図をしたら全ての機体を回収後、この場を離脱する。だが、シロガネはどうだ? 長距離航行に耐えれるか?』
ダイテツの言葉を聞き、リーはオペレーターに視線を向ける。するとオペレーターは首を左右に振った。
「申し訳無い。ここまで来るのに無茶をした為武装のみではなく、動力にも些か不調を抱えております」
敵陣のど真ん中を無理に突っ切ってきたのだ。正直良く考え直してみればよく轟沈していないと言うレベルの無茶をしている。こうして飛行し、戦闘に参加出来るだけでも奇跡の様な状態だった。
『了解した、脱出時はハガネが先導する。シロガネはハガネの後部についてくれ』
ダイテツからの指示にリーが頷くとダイテツは暫く戦闘を続けると言い残し、通信を切った。
(良くあれだけの戦力で耐えた……流石はダイテツ中佐。私では持ち堪えられなかったぞ……)
応急処置を施されただけのハガネと、10にも満たないPT隊。それで良くここまで耐えていたとリーは感心すると同時に、自分とは隔絶した指揮能力の高さを感じていた。
「主砲てぇッ! 妨害をさせるな!」
「「「了解ッ!」」」
だがその能力の差を嘆いている場合も、そして羨んでいる時間も無い。それに加えて、重く圧し掛かってくる嫌な気配を感じ、その気配を振り払うように矢継ぎ早に指示を出すリーだったが、時間が経てば経つほどその重く圧し掛かるような重圧が増してくるのを感じ顔を歪めるのだった……。
シロガネとオクトパス小隊の参戦によって今まで様子見をしていた百鬼獣も本格的に攻撃に参加してきた。だが味方が増え、そして士気が向上し始めている今百鬼帝国が攻勢に出るのは余りにも遅すぎたと言える。
『おらぁッ!! 行くぜぇッ!!!』
真紅のゲシュペンスト・MK-Ⅲが先陣を切り、それに付き従うようにグリーンのゲシュペンスト・MK-Ⅱが続き、その上をガーリオン・カスタムとヴァイスリッター改が続く。
『行くぜッ! こいつでぶっ飛べッ! ギガワイドブラスタアアアアアーーッ!!!!』
先制攻撃と言わんばかりのジガンスクード・ドゥロの撃ち込んだギガワイドブラスターの熱線が百鬼獣の密集地帯で炸裂する。
『キョウスケ! 一気に攻め込むぞッ!』
『了解ッ!!』
脱出するにしろ、ここまで攻め込まれていは退却する事も容易ではない。1度百鬼獣を押し返し、戦況を互角に戻す必要がある。ゲシュペンスト・リバイブ(K)とアルトアイゼンがスラスターを全開にし、ギガワイドブラスターの直撃を喰らい動きが鈍っている百鬼獣に突撃する。
『ちょっと、ちょっとキョウスケぇ~なんか言う事があるんじゃないの~?』
『後で言ってやる。今はこの場を切り抜けるぞ』
『んふふ、りょーかいッ! いっくわよーッ!!!』
アルトアイゼンの頭上をぴったりと飛ぶヴァイスリッター・改からエクセレンの楽しそうな声が響き、再び集まろうとしていた百鬼獣の中心にオクスタンランチャーのBモードを撃ち込み、合流をさせない。そしてその上にスプリットミサイルが叩き込まれ、百鬼獣の全身に細かいダメージを与え、装甲を傷つける。
『行くぞッ! 貫けッ! ジェットマグナムッ!!!』
『この距離……外さんッ!!!』
ゲシュペンスト・リバイブ(K)にもアルトアイゼンにも単独で百鬼獣を撃墜するだけの攻撃力はない。しかし、ギガワイドブラスター、オクスタンランチャー、そしてスプリットミサイルと続け様に攻撃を喰らったことで装甲が傷つき、内部が見えてみれば話は違う。メガプラズマステークの高圧電流で動力が暴走し、動力にピンポイントでリボルビングステークを撃ち込まれれば以下に強靭な装甲を持つ百鬼獣と言えどひとたまりも無かった。
『ギャアアッ!?』
『ゴガアアアアーーッ!?』
動力に直接攻撃を叩き込まれ、内部から爆発四散する百鬼獣。その爆発に紛れ戦線から後退するキョウスケ達。
『次はこうはいかんぞ、慎重に立ち回れ』
『了解』
『了解っと、相手化け物みたいだけど、案外賢いみたいですしね』
損傷を受けた百鬼獣が後退し、損傷が軽微な百鬼獣が前に出る。その動きは動けない仲間を庇う動きその物だった……ゲシュペンスト・MK-Ⅱは味方として認識していないようだが、同じ百鬼獣には仲間意識があったようだ。
『おら! タスク! さぼってねえで突っ込めッ!!!』
『さぼってねえっすよぉッ!! 敵が多すぎるんですって!!!』
放電を続けるシーズアンカーを振るい続けるジガンスクード・ドゥロからタスクの悲鳴が響く、ジガンスクード・ドゥロの一撃があたれば百鬼獣と言えどただではすまない。装甲さえ拉げれば、そこを狙い撃てばPTでも撃破の目が出て来る。
『泣き事言ってないで仕事しなッ! おら! 邪魔だッ!!』
『ぎゃあッ!?』
グルンガストを駆るイルムは計都羅喉剣を振るわせ、百鬼獣の胸部に傷を付け、あるいは腕を切り落とす。
『しゃあッ! ぶちぬけッ!!!』
『ゴガアアアああッ!?!?』
剥き出しの配線にゲシュペンスト・MK-Ⅲの電極がねじ込まれ、頭部が吹き飛んだ百鬼獣は痙攣し、ゆっくりと倒れこむ。
『レオナ少尉!』
『了解、良いサポートですわ!』
鉄甲弾を撃ち込み百鬼獣の装甲に亀裂を入れ、そこにガーリオンカスタムが手にしたメガビームライフルが飛び込む。
『ギイイッ!?』
さすがに倒しきるには至らなかったが、動きが鈍ったそこにシーズアンカーが叩き込まれ百鬼獣の上半身が吹き飛び、胸部から噴水のようにオイルを飛び散らせ百鬼獣は倒れ込んだ。
『うげえ……気持ちわる』
『何泣き事言ってやがる! 宇宙のあの化けもんと比べれば全然だろうが!』
『宇宙の化けもん? 宇宙にも出たのか?』
タスクを叱咤するカチーナの声を聞いたイルムが化け物と聞いて中国で出たアインストが宇宙にも出たのかと思いながら尋ねる。
『この場を切り抜けたら説明するぜ、とんでもねえ化け物が出たんだよ』
『おいおい、まだ化け物が増えるってか、勘弁してくれよな。全くよぉッ!!!』
百鬼獣を両断しながらぼやくイルム。ゲシュペンスト・MK-Ⅱがその数を減らした変わりに攻撃の勢いを増させた百鬼獣。テロリストに百鬼獣、そしてアインストでも手一杯なのにこれ以上化け物が増えると聞いて勘弁してくれと思うのは当然の事だった。
『おらぁッ!!』
『ギャアッ!?』
ラトゥーニ、ライと合流したリュウセイは基地に攻め込んでくる百鬼獣と殴り合い……いや、一方的に百鬼獣を殴り続けていた。
『動きが前と全然違う』
『最適化すると言っていたが、こういうことか……』
ライとラトゥーニはリュウセイの支援を行っているが、リュウセイの駆るR-1はまるで軽業師のように百鬼獣の攻撃を利用し、ヒット&アウェイで攻撃を積み重ねる。
『ブリット! 頼んだッ!!!』
『グギャア!?』
『ああ、任せろッ! チェストォオオオオオッ!!!』
百鬼獣をゲシュペンスト・MK-Ⅲ・Sカスタムに向って蹴り飛ばすと同時にR-1はムータ基地に手を当てて、両腕の力で機体を跳ね上げる。
『ラトゥーニ! 頭を下げろッ!!』
『え、う、うんッ!!』
ラトゥーニのヒュッケバイン・MK-Ⅲが頭を下げ、その上をR-1が飛び蹴りの恰好で跳び越す。その瞬間凄まじい衝突音が響き、浮き出るように爬虫類を思わせる百鬼獣が姿を見せた。
『なッ!?』
『う、嘘……全然気付かなかった……』
レーダーだけではない、センサーでさえもすり抜け、そして視認さえもさせないカメレオンのような百鬼獣の胴体にR-1の飛び蹴りの後がくっきりと刻まれ、仰け反りながら痙攣しているその口の中にアンジュルグの放ったファントムアローが飛び込み、串刺しになったカメレオンのような百鬼獣と、ゲシュペンスト・MK-Ⅲ・Sカスタムに首を両断された百鬼獣が時間差で爆発する。
(……リュウセイ・ダテ。なるほど、人類の希望と言われていたが……データよりも強いな)
ファントムアローで百鬼獣を屠ったラミアは冷静に、リュウセイの評価を改めていた。SRXを駆り、アインスト、インベーダーと戦い続けた鋼の戦神――それはある意味連邦の象徴であり、希望の証だった。それゆえにSRXが倒れた時に連邦の士気は一気に崩れた。ラミアも勿論リュウセイのデータは持っていたが、それを上回る反射速度、そして攻撃力にSRXが無くてもリュウセイは強いとその評価を改めた。
『リュウセイ! 今のは気付いていたのか!?』
『ああッ! なんかいるって感じてたんだけどよ、場所が判らなかったんだ! それよりも気をつけろッ! 囲まれてる!』
『な!?』
『ぐっ!? こんな隠し球が!?』
『レオナちゃん! あぶねえッ!!』
『え!?』
リュウセイがそう叫んだ瞬間。滲み出るように無数のカメレオンのような機体が姿を現し、スパイク付きの舌を伸ばした。完全に不意打ちであり、背後、側面からの奇襲に反応しきれず少なくないダメージを受ける。タスクの叫び声に振り返ったガーリオン・カスタムの目の前にはカメレオン型の百鬼獣の姿があり、両手首から伸びる槍でコックピットを貫こうと迫った瞬間だった。高速で飛来した何かがカメレオン型の百鬼獣の頭部を捉え、姿勢を崩した所に高速で切り込んできた何かがその首を跳ね飛ばした。
『なんだありゃあ……アーマリオンか?』
ガーリオンカスタムを庇うように浮かんでいる謎のAM。アーマリオンに酷似しているが、そのフォルムは女性的で細身な印象を受ける。装甲は中世の鎧のような装飾が施されており、その形状から戦乙女のような印象を与えた。
『こちらトロイエ隊。ユーリア・ハインケルだ。訳あって貴官らを支援する』
そしてその機体から発せられた女性の声はL5戦役から姿を消していたビアン一派の1人。ユーリア・ハインケルの物なのだった……。
シロガネ、ハガネと百鬼帝国、そしてシャドウミラーとの戦いは激化の一途を辿っていたが、仲間が集まり、徐々にその戦況を劣勢から互角に巻き返している頃クロガネはアメリカ大陸内部のメガフロートに辿り着き、ビアン達は隠されている旧西暦の資料を手にする為に何百年も浮かび続けたフロート内の捜索を始めていた。
「一体ここに何が眠っているのか……」
「私も詳しくは知らん。この設備を作った人間が何を何を思い、そして何を願いここを封印したのか……ここに眠る物が我々の助けとなれば良いのだが……」
ビアン達とて今の地球の状況は判っている。数多の陣営、そして人智を越えた恐ろしい侵略者達の襲撃――だがそれらはまだ始まったばかり、本当の戦いはまだ始まってすらいないのだ。劣勢に追い込まれていることも、窮地に追い込まれていることも判っている。
「ハガネのクルーならばやり遂げてくれる」
「そうだな。進もう、我々には我々の出来る戦いをする」
だがL5戦役を潜りに抜けた者達ならば必ずや勝利してくれる。それを信じ、ビアン達はこの中に隠された物がこれからの戦いを助けとなる事を信じ、闇の中をゆっくりと進んで行く。そして無人のクロガネの格納庫でもまた新たな胎動が始まろうとしていた。
【器を持たぬ者よ、さぁゲッターに集うが良い】
【数多の時、数多の世界を超え、今再びゲッターと共に1つとなるが良い】
無人の格納庫に響く2人の早乙女博士の声――その声に導かれるように、ビアン達が進んでいった通路から翡翠の輝きが溢れ、1つ、また1つとドラゴン号、ライガー号、ポセイドン号に集い、ゲットマシンは人魂のようなゲッター線を取り込み、その力を増大させる。
「こ、これは……一体何が……」
クロガネの中にただ1人残されていた記憶喪失のエキドナは格納庫に満ちるゲッター線の光を見て、その輝きに魅入られていた。怪しく、禍々しく、しかし神々しいその進化の光に無意識にその手を伸ばし、そしてゲッター線にふれたエキドナはその意識を失い、ゆっくりと格納庫の床の上に崩れ落ちた。
【虚ろなる者。しかして人の形に魂は宿る】
【主に与えられた命に逆らい、己を確立させるか】
【それとも己で考える事を忘れ、与えられた道を進むか】
【【己が望み、そして進みたいと願った道を行くが良い。その先にお前だけの進化があるだろう】】
2人の早乙女の幻影が手を掲げるとエキドナの姿は浮かび上がり、ゲッター線の中に満ちたライガー号の中へと運ばれて行った。しかしゲッター線の奔流は今だ止まることを知らず、ゲットマシンへと流れ込み続ける……己が必要となる戦いが、自分を必要とする武蔵の叫びが響くまで、その力を高め、己が呼ばれるその時を待ち続けているのだった……。
第61話 龍神と剣神 その3へ続く
今回は良い区切りなのでここで話をきりたいと思います。スレードゲルミルとゲッターの所は気合を入れたいので、次の話の冒頭から書いて行こうと思います。それでは次回の更新もよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い