進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第61話 龍神と剣神 その3

第61話 龍神と剣神 その3

 

 

レオナはガーリオン・カスタムのコックピットの中で驚きに目を見開いていた。鮮やかな青い機体カラーと、トロイエ隊のエンブレムが刻まれた女性的なシルエットのAMから響いたパイロットの声が信じられなかった。

 

「た、隊長……に、2度とパイロットになれないのでは!?」

 

メカザウルスに噛み付かれたことでコックピットブロックが押し潰され、それによって足を潰されたユーリアはパイロットとしての再起は不可能だと言われていた。そんなユーリアの声が目の前のAMから響けば、驚くのは当然の事だった。普段の冷静さがどこにもない焦りも交えた声でそう問いかけるとAM――ヴァルキリオンから響いたのはレオナを叱責する声だった。

 

『何を呆けた質問をしているレオナ。今はそんな話をしている場合ではないと言う事も判らないのか」

 

「も、申し訳ありません! 隊長ッ!」

 

鋭いユーリアの叱責の言葉にトロイエ隊だった時の事が脳裏を過ぎり、ユーリアを隊長と反射的に呼んでしまった。

 

『しょうがない奴だ。私の所属していた部隊の隊長は今はもう私ではないだろうに』

 

足の怪我もあり、ユーリアは既にトロイエ隊の隊長という役職を降り、別のパイロットがトロイエ隊を率いている。だからもう自分は隊長ではないとユーリアは言うが、レオナは自分の意見を曲げなかった。

 

「いえ、ユーリア隊長は今でも私の隊長です』

 

カチーナも尊敬出来る隊長である事は間違いない。それでも、ユーリアもまたレオナにとって尊敬する隊長である事に変わりは無かった。

 

『ふっ、それならば好きにしろ。だが戦場で呆けるような愚か者に隊長と呼ばれる謂れはない。私達と袂を別ち、磨いた力を私に見せてみろ』

 

「りょ、了解ッ!!」

 

レオナはヒリュウ改と行動を共にし、連邦へと戦時特例で所属することになった。それでも尊敬するユーリアの無事は当然祈っていたし、死ぬ訳が無いと思っていた。そして2度とパイロットとして復帰できないと言われてたユーリアがパイロットとして再起した事を素直に喜び、そして磨き上げた力を見せてみろと言われたレオナは力強く返事を返し、戦線に再び復帰する。

 

『あらあ、隊長さん。お久しぶりね』

 

『そうだな、宇宙以来という所か』

 

宇宙で何度か交戦したエクセレンがヴァルキリオンの隣について軽い口調でユーリアに声を掛け、ユーリアもその言葉に返事を返す。だがその間も高速で飛びまわるヴァイスリッター改とヴァルキリオンは百鬼獣の攻撃をかわし、地上のアルトアイゼンやグルンガストへの支援を続けている。

 

『貴女が助けに来てくれたって事はクロガネとかボスも来てくれるのかしら?』

 

『いや、訳あって私は単独行動していただけだ。クロガネやゼンガー少佐達はこちらには来られない』

 

来られないと言う言葉にエクセレンはクロガネの状態を察していた。少なくともこの戦場に参戦できない位置、もしくは同じ様に百鬼獣の襲撃を受けている。その為にゼンガーやエルザムが助っ人に来る事は無く、ユーリア自身は偵察や、斥候に出ている中にこの状況を見て割り込んできたと判断した。

 

『貴女が助けてくれるだけでも嬉しいわ。短い間かもしれないけど、よろしくね』

 

『ああ、こうして共に戦う間は味方だ。頼りにしてくれ』

 

エクセレンが味方と認め、そしてユーリアもそれを認めた。コロニー統合軍司令のマイヤーの親衛隊であるトロイエ隊の隊長のユーリアだが、今この状況では何よりも頼もしい味方である事は間違いが無く、ユーリアも百鬼獣との戦線に組み込まれる事となった。

 

「と言う訳だ武蔵。このまま戦闘に参加するが問題ないな?」

 

「全然大丈夫ですよ。思いっきり行っちゃってください、オイラだと足手纏いになっちゃうかもしれないけですけど、出来る限り助けには入るんで」

 

「謙遜するな。あれだけの射撃が出来るんだ。頼りにしている」

 

レオナの救出した時の射撃は武蔵が行った物だった。最高加速で敵の攻撃を回避しながらの超精密射撃――それこそユーリアでも10回やって2~3回成功すればいいと言う神業的な射撃を武蔵は平然とやってのけた。

 

「もーそんな事言われちゃうと、オイラ単純だから信じちゃいますよ?」

 

「ふっ、本心さ」

 

航空力学に喧嘩を売っていると言われるゲットマシンの速度は新西暦の機体の中でも最上位と言ってもいい。飛ぶだけで操縦桿がぶれ、それを腕力で押さえ込み、何のサポート機能もなく、レーダーもセンサーも禄に機能しない中で目視で確認し、マッハで飛びながらの射撃は誰がどう見ても一流の技だ。ゲットマシンの速度に慣れている武蔵からすればヴァルキリオンの飛行速度などなんという事はなく、そして的が大きい百鬼獣から攻撃を外す訳もなかった。2人乗りのユーリア専用のヴァルキリオンのシューターとして考えれば、武蔵は類稀なる優秀なシューターだったのだ。

 

「行くぞ、武蔵」

 

「了解! 何時でもどうぞッ!」

 

力強く返事を返す武蔵に笑みを浮かべ、ヴァルキリオンの機首を下げユーリアは強引に百鬼獣の中に突っ込んでいくのだった……。

 

 

 

 

R-2のコックピットの中でライはユーリアの駆る新型のAMを見て、目を細めていた。ユーリアの参戦によって戦況の流れは僅かに変わっていた……。

 

(特殊徹甲弾か……攻撃の通りが格段に良くなっている)

 

ユーリアの機体にはビーム兵器は一切搭載されておらず、その全てが実弾・実剣系の武装で固められ、バックパックにはミサイルやビームマシンガン等の射撃兵装を搭載しており、フライトユニットを装備したゲシュペンストと似たコンセプトの機体であると言うことは明らかだった。女性的なシルエットは空気抵抗をかなり軽減し、そこにテスラドライブが加わっている為、旋回速度・急反転などの速度も非常に速く、射撃型の機体でありながら白兵戦機のような素早い出入りを繰り返している。それ自体は問題はない、ビアン一派に属しているのだからPTやAMの性能は正直連邦よりも遥かに性能が高いのは当然だ。なんせ、ビアン・ゾルダークはEOTの権威……連邦やマオ社とは有している技術、そしてEOTへの理解度の差があるのは当然の事だ。しかし、ライが不信に思ったのはその信じられない攻撃の切り替えにあった。

 

(あの機体……1人乗りなのか?)

 

形状はアーマリオンに酷似しており、シルエットも細身だ。しかし手足を比べるとやや大きめの胴体部がライの中で妙な引っかかりを残していた。

 

『シッ!!!』

 

『ギギィッ!?』

 

椀部から伸びたプラズマを帯びたブレードが十文字の傷をつけると同時に、背部のガトリングがその傷を大きく広げる。実剣と射撃までのスイッチにタイムラグが殆どない――そのあまりに早い攻撃の切り替えにライは1人乗りかどうかを疑っていた。応援が1人乗りだろうが、2人乗りだろうが、そこに大きな差はない。不利な戦況を覆す手助けをしてくれていれば、そしてそれがユーリアならば信用出来る。しかしこの状況でも声を発さない理由――それがどうしてもライの中で払拭出来ないでいた。

 

(声を発せられない理由があるのか……?)

 

1人乗りの可能性もあるが、1人乗りでは対処しきれない角度からの攻撃にも対応している。ユーリアの操縦にも追従出来るシューター……エースクラスの射撃の腕前を持った「誰か」の正体がどうしても気になっていた。

 

『ふんッ!!』

 

『貰ったッ!!!』

 

アーマーブレイカーとゲッター合金弾頭で傷をつけられた百鬼獣にゲシュペンスト・リバイブ(K)とアルトアイゼンがメガ・プラズマステークとリボルビングステークを撃ち込み破壊する。強固な装甲を持つ百鬼獣もその装甲に細かい亀裂を入れられば、その装甲も意味を失う。

 

「リュウセイ! ブリット! 1度下がれッ! 仕切りなおすぞッ! ハイゾルランチャーシュートッ!!!!」

 

考え事をしながらもライはリュウセイとブリットの支援を続けていた。前に出すぎと気付き、ハイゾルランチャーで百鬼獣の突撃を食い止め、その間にR-1とゲシュペンスト・MK-Ⅲ・Sカスタムが離脱する隙を作り出す。

 

『すまねえ、ライ。深追いしすぎた』

 

『……罠に嵌っていたのか』

 

百鬼獣の間が揺らめき、そこからカメレオン型の百鬼獣がその姿を現す。攻め込めると思って前に出すぎると隠れていたカメレオン型の奇襲を受けることになる。

 

「さっきのはどうしたんだ。リュウセイ」

 

『いや、なんかこうほら、あれだよあれ。殺気って言うのかな? それが濃すぎてよ』

 

リュウセイの要領を得ない説明でも、ライは何を言いたいのかを理解していた。

 

「単独なら判るが、百鬼獣と同時だとわからないという事だな」

 

他の百鬼獣の敵意と殺気を感知してしまい、カメレオン型の百鬼獣の気配を感じ取れないという事だとライは判断した。

 

『あー多分そんな感じだと思うぜ』

 

「ならお前は周囲の警戒をメインにして中間距離を保ってくれ、ブリットは前衛、ラトゥーニはリュウセイとペア、ラミアは俺と行動して遠距離から相手を炙りだす』

 

ライの指示が飛び、フォーメーションを組みなおしムータ基地に攻め込んでくる百鬼獣との戦いは再び仕切りなおすとなった。

 

(戦況はこちらがやや不利だが、ほぼほぼ互角……)

 

シロガネの突貫で増援の飛行型の百鬼獣はその大半が損傷を背負い、本来の機動力と殲滅力は恐らくはない。そしてマオ社で改良されたヴァイスリッター改、Rー1、そしてオクトパス小隊にユーリアの参戦――数の上での不利は続いている。だがそれでも互角に押し返すことが出来ている……しかし敵はここで仕留め切るつもりで増援を送り込んでいる。ならばこのまま互角の戦況が続けば敵は新たな増援を送り込んでくるだろう。その増援を凌げるかどうかがこの戦場での命運を分ける事になる事をこの場にいる全員が感じていた……その時だった。

 

『高速で飛来してくる熱源ありッ! 恐らくミサイルだと思われる!』

 

『広域殲滅兵器の可能性もある! 爆風に備えよッ!』

 

シロガネとハガネからの警告報告の直後……戦場の上空を凄まじい嵐が通過した。

 

『くうっ!?』

 

直撃を回避したヴァルキリオン達だったが、通過した何かが巻き起こした嵐に巻き込まれ、ヴァルキリオンが黒煙を上げ、ムータ基地の反対側へと墜落する。

 

『きゃあッ!? ちょっと!? 今のミサイルじゃないわよ!?』

 

『な、何が通ったんですか!?』

 

『た、隊長!? ユーリア隊長!? 大丈夫ですかッ!?』

 

墜落したヴァルキリオンに向ってレオナが通信をつなげようと必死に叫んでいるとカチーナの怒声が広域通信で響いた。

 

『馬鹿野郎! 今は目の前に集中しろ! 敵さんの本命が来たみたいだぜ』

 

百鬼獣の群れの上に現れた巨大な特機――額から赤い角を生やし、純白と漆黒の装甲を持つ西洋の騎士のようなシルエットをした特機が右腕を掲げる。すると先ほどムータ基地を通過した何か……高速回転するドリルを装備したブーストナックルがその腕に収まった。

 

『やっぱりかよ、どっかで見たと思ったんだ』

 

ミサイルではなく通過した何かを見たイルムはそれが拳であるという事を悟っていた。それはグルンガストを駆るイルムだからこそ判る物だった。

 

『百鬼獣?』

 

『いや、違う。あれは百鬼獣ではない……なんにせよ、只者ではないと言うのは確実だ。後詰でやってきた機体だ。気をつけろ』

 

額の角に見えるパーツから百鬼獣にも見えた。だが百鬼獣にある生物的なパーツがない……それを見てカイは百鬼獣ではないと断言し、警戒を強めろと告げた瞬間だった。謎の特機の肩のパーツが分離し、紫電を撒き散らしながらその姿を変え、特機の手の中に納まった。

 

『ざ、斬艦刀だとッ!?』

 

『馬鹿な……ッ!? どうなっている!?』

 

機体の全長を越える巨大なバスターブレード……その武器の名を全員が知っていた、そしてその武器を駆る事が出来る男の名もだ。

 

「我はウォーダンッ! ウォーダン・ユミルッ!!! メイガスの剣なりッ!!!! 我らに刃向かう者は全て粉砕するッ!!!! チェストオオオオーーーッ!!!!!」

 

「う、うわあああああッ!?!?」

 

凄まじい加速で突っ込んだ特機――スレードゲルミルの一閃がジガンスクード・ドゥロを捉え、両腕のシーズアンカーに深い傷跡を残し弾き飛ばす光景を全員が信じられない物を見る目で見つめ、ただ1人……ラミアだけが薄く口元に笑みを浮かべているのだった。

 

 

 

90mに迫るジガンスクード・ドゥロを一撃で仕留めた謎の特機――スレードゲルミル。その機体から発せられた声、そしてその手にする武器を全員が信じられない物を見る目で見ていた。

 

『い、今の声って……』

 

『おいおい、嘘だろ……』

 

その声、その立ち振る舞い……それら全てがゼンガーに瓜二つだった。その鋭い踏み込み、そして全てを両断する斬艦刀の一閃……それら全てがゼンガーであると言うことを悠然に語っていた。

 

『タ、タスクッ!!』

 

『タスク、大丈夫かっ!?』

 

深い切り傷を受け、沈黙をしているジガンスクード・ドゥロに向ってレオナとリュウセイが声を掛けると、火花を散らしながらジガンスクード・ドゥロは立ち上がろうとしたが、大きな爆発と共にその膝をついた。

 

「貴様…… 我が斬艦刀を受けきったか」

 

スレードゲルミルが再び斬艦刀を振りかぶった。スレードゲルミルから響く男の声は紛れも無くゼンガーの物だった。それ故に目の前の特機のパイロットがゼンガーではないかと言う疑惑が一瞬で全員の中に広がった。

 

『そ、そんな馬鹿な……!  しょ、少佐がどうして……!?』

 

『おい、ゼンガー少佐ッ! 何の冗談だ、こりゃあッ!?』

 

ゼンガーが再び敵に回ったと言う事が信じられないと声を震わせるラッセルに、ウォーダンに向って声を荒げるカチーナ。しかしウォーダンは何の反応も示さず、スレードゲルミルに斬艦刀を再び構えさせた。

 

『おいおい、どういう事だよ。あの名乗り、あの打ち込み……どう見てもゼンガー少佐だろ?』

 

『しかしイルム中尉。あの男はゼンガーと名乗りませんでした』

 

ゼンガーと名乗らなかった。だからゼンガーではないと言う一縷の希望が生まれる……だが、ラトゥーニの呟きに全員の脳裏にもしかしてという言葉が過ぎった。

 

『百鬼帝国に囚われて、リマコンを受けたのかもしれない……ッ』

 

百鬼帝国の能力を考えれば、ゼンガーを捕える事も不可能ではない。そう考えれば、スレードゲルミルのパイロットが百鬼帝国に捕まったゼンガー本人であると言う可能性も強まる。

 

『もしそうだと言うのなら、ユーリア隊長が言っていた誰も来られないと言う言葉は……ッ!?』

 

『クロガネが百鬼帝国に手に落ちたと言うことか!?』

 

1度生まれた最悪の予想は不安と共に爆発的に加速する……クロガネがこの場に現れない理由、そしてユーリアだけが応援に現れた理由……それらが最悪の予想と繋がり、この場にいる全員の脳裏にクロガネが百鬼帝国の手の中に落ちたと言う最悪の可能性が過ぎった。

 

『落ち着け! 仮にそうなら追っ手が来る筈だ。それもないと言う事はクロガネは無事という可能性が高い! この目で見ていないことに気を取られるんじゃない!』

 

『それにあのパイロットが洗脳されたゼンガー隊長だと言うのならば……この手で取り返せばいい、それだけだ』

 

キョウスケとカイの一喝が響き、スレードゲルミルのパイロットが洗脳されたゼンガーだと言うのならば助け出せばいい。そう口にした時沈黙していたタスクの声が広域通信で全員の機体のコックピットの内部に響いた。

 

『ド、ドゥロって名は…… 伊達じゃ……ねえんだ……それに……斬艦刀を……受けたのは……初めてじゃ……ね……え……ッ! て、てめえ……何もんだ……親分じゃねえ……なッ!!!』

 

血反吐を吐くような……いや、実際に血反吐を吐いていたのだろう。タスクの血を吐くような叫びに男……ウォーダン・ユミルはスレードゲルミルの中でその動きを止めた。次の瞬間には凄まじい殺気と怒気を周囲に撒き散らした。

 

「言った筈だ。俺はウォーダン・ユミル。ゼンガー・ゾンボルトなどではない! 俺は俺だッ! ウォーダン・ユミル。メイガスの剣だッ!!」

 

ゼンガーと呼ばれた事に怒りを露にし、斬艦刀を振るうスレードゲルミル。その一閃は重く、そして鋭い……だが直接受けたタスクに加えて、カイも本能的に感じていた。

 

『違う、こいつはゼンガーではない!』

 

『か、カイ少佐!? で、でもこの声、あの立ち振る舞いはどう見ても!』

 

あの特機のパイロットがゼンガーではないかと言う声が上がる中……カイがゼンガーではないと声を荒げた。だがそれは元・教導隊のメンバー同士と言う事で、それを信じたくないだけではないかと思ったとき、黙り込んでいたリュウセイとブリットが声を上げた。

 

『違う、あれはゼンガー少佐じゃない!』

 

『ああ、間違いないぜ! ゼンガー少佐じゃないって俺達は断言出来るッ!』

 

念動力の持ち主であるブリットとリュウセイが揃って違うと声を上げる。

 

『けど、 あの声に名乗り、斬艦刀…… ど、どう考えたって! ゼンガー少佐ですよ!』

 

『もしかして、 そっくりさんとか……?』

 

『馬鹿野郎! あんなとんでもやろうが2人もいるか!! おい、リュウセイ! ブリット! なんか根拠があるのか!?』

 

リュウセイとブリットにゼンガーじゃないと言うのに根拠があるのかとカチーナ問いかけようとしたとき、スレードゲルミルが刀身を大きく頭上に掲げた。

 

「斬艦刀! 電光石火ッ!!」

 

話を遮るように振るわれた斬艦刀の切っ先から飛び出したエネルギー刃がムータ基地周辺と、キョウスケ達に降り注いだ。

 

「最早問答無用ッ! 戦う意志なき者はここで我が斬艦刀の錆となるがいいッ!!」

 

「「「グオオオオンッ!!!」」」

 

周囲に響いたウォーダンの雄叫びと百鬼獣の咆哮――それを皮切りにムータ基地での戦いは最終局面へと向かって行くのだった……。

 

 

 

 

ムータ基地の反対側に墜落したヴァルキリオンは墜落した森の木々を薙ぎ払い、その身体を森の中に横たえていた。

 

「いっつつ……ユーリアさん、ユーリアさん、大丈夫ですか?」

 

「うっく……あ、ああ。なんとかな……」

 

武蔵に声を掛けられて目を覚ましたユーリアも頭を振り、ゆっくりと身体を起こしヴァルキリオンの状態を確認し始める。

 

「……武装の管制システムがやられた。戦闘には参加出来そうに無いな……」

 

「何とかならないですかッ!? リュウセイ達が危ないんですよッ!?」

 

ノイズ交じりのヴァルキリオンのモニターにはスレードゲルミル、そして百鬼獣との戦いを続けているリュウセイ達の姿が映し出されていた。意識を失い、中破しているジガンスクード・ドゥロを庇いながらの戦いになり、連携は乱れ、お構いなしに襲い掛かってくる百鬼獣の勢いに窮地へと再びリュウセイ達は追い込まれていた。

 

『その程度の踏み込みでこのスレードゲルミルを打倒出来ると思っているのか!!』

 

『ぬっぐうッ! ちい、あの図体の癖に速いぞッ!!』

 

斬艦刀でゲシュペンスト・リバイブ(K)のメガ・プラズマステークを受け止め、前蹴りで蹴り飛ばすスレードゲルミル。

 

『ならこいつはどうだッ!!! ファイナルビームッ!!!』

 

グルンガストの胸部から放たれた熱線の中にスレードゲルミルの巨体が消えた。

 

『へっ! 調子に『斬艦刀! 一刀両断ッ!!!』 ぐあっ!? おいおい……どうなってやがるッ!?』

 

斬艦刀の一撃を辛うじて避けたグルンガストのコックピットでイルムが驚愕の声を上げた。ファイナルビームを真正面から直撃で受けたスレードゲルミルの装甲には確か命中した後が残っていた……だがそれはビデオの巻き戻しのように修復され、数秒後には完全に元通りになっていた。

 

『あのパワーで自己修復する機体ってどんなインチキよ』

 

『ちっ、不味いな……ッ』

 

瞬発力・パワー・装甲。そのどれもが特機の中でも上から数えた方が早いほどの高水準――それに加えてウォーダンの卓越した操縦技術によって斬艦刀も100%その能力を発揮している。そんなインチキめいた性能を持つ機体が自己再生まで行なう……それは誰が見ても悪夢のような光景だった。

 

『ぬっ……』

 

斬艦刀を振り切った所を見極めて、突撃したアルトアイゼンのリボルビングステークがその脇腹を抉ったが、引き抜くまでの間に修復を果たしていた。

 

『ちいッ! これでも駄目かッ』

 

反撃に振るわれる斬艦刀を回避し、後退しながらキョウスケは舌打ちを打った。改心の手応えとは言い難いが、それでも装甲を完全に貫いた感触はあった。それほど深く攻撃を撃ちこんでも、回復を果たすスレードゲルミルには流石のキョウスケもその顔を歪めた。

 

『ふっ、この戦力差を見ても諦めんか、流石はベーオウルフ……いや、キョウスケ・ナンブッ! 貴様はここで我が斬艦刀の錆と消えろ!!!』

 

ウォーダンが叫んだベーオウルフの名前――それを聞いた武蔵を激しい頭痛が襲った。

 

「うっぐう!?」

 

「武蔵!? 大丈夫か!?」

 

額から大粒の汗を流し、歯を食いしばっている武蔵を見てユーリアが心配そうに手を伸ばすと、武蔵はその手を掴んだ。

 

「思い出した……あいつ、シャドウミラーだ」

 

世界を超えた事で忘れていたシャドウミラーの構成員の名前と姿、ベーオウルフの名前が鍵となり武蔵はウォーダンの事を思い出していた。

 

「ユーリアさん。なんとか飛べないですか?」

 

「飛ぶことくらいは出来るが……武器が無いんだ。的になるだけだぞ?」

 

「大丈夫です。オイラに任せてください、オイラをヴァルキリオンの手の上に乗せて飛んでくれれば後はオイラが何とかします」

 

「なっ!? お前自分が何を言っているのか判ってるのか!?」

 

この乱戦の中。AMの手の中とは言えミサイルの爆風やビームが掠めるだけで人間は簡単に死んでしまう。そんな中を武蔵を手の上に乗せて飛んでくれという頼みをユーリアは聞き入れることが最初出来なかった。

 

「お願いします。ユーリアさんなら出来るでしょう?」

 

「しかし」

 

「お願いします。このままだと皆危ないんです! 大丈夫です! オイラは死にませんッ! 信じてくださいッ!」

 

「武蔵……」

 

自分の手を握り信じてくれと、自分は死なないという武蔵。普通に考えれば、それは決して受け入れられる物ではなかった。だが自分の目を真っ直ぐに見つめる武蔵に、ユーリアは何とかなるのではないかと思ってしまった。ゲッターも何も無いのに、飛べれば何とかなると言う武蔵の言葉を何故かユーリアは信じられると思ったのだ。

 

「判った。何をするつもりか判らないが……飛ぼう」

 

「ありがとうございますッ!」

 

ヴァルキリオンのコックピットを開き、武蔵がヴァルキリオンの指を掴んだのを確認してからユーリアは慎重にペダルを踏み込み、ヴァルキリオンを再び戦場に向って飛翔させるのだった……。

 

 

 

 

 

それに最初に気付いたのは誰だったか、戦線に復帰したヴァルキリオン――その手の上に誰かが乗っていると誰かが言い出した。

 

『なッ!? 正気かッ!?』

 

『何を考えているんだ!?』

 

スレードゲルミルと百鬼獣という規格外の特機と戦っている中での、異常な光景に誰もが声を荒げた。誰かがヴァルキリオンの支援に入れと口にし、ヴァルキリオンの手の中の人物をズームで確認した時。その人物は被っていたヘルメットを投げ捨て、首元に巻いていたマフラーを下にずらした。露になったその顔にヴァルキリオンの手の上を確認していた全員がその目を大きく見開いた。

 

『『『『む、武蔵ッ!?』』』』

 

ヴァルキリオンの指に掴まり、鋭い視線をスレードゲルミルと百鬼獣に向けているのは紛れも無く武蔵だった。

 

「ゲッタァァアアアアアアアアアーーーーーッ!!!!!!」

 

武蔵の姿を確認した瞬間、戦場に武蔵のゲッターを呼ぶ叫び声が戦場に響き渡った。

 

「な、なんだ!? 何が起きている!?」

 

「これはゲッター線かッ!?」

 

1度クロガネに得た資料等を運び込んでいたビアン達を出迎えたのはクロガネの格納庫を照らす出すゲッター線の輝きだった。

 

「何が、何が起きているんだ」

 

「い、いかん! 総員退避ッ!!!」

 

ゲットマシンが無人で動き出し、エンジンが火を噴くのを見てビアンが退避しろと叫んだ。その瞬間ゲットマシンはクロガネの格納庫へ向って飛び、壁に触れる瞬間にゲッター線の光に包まれ、その場から消え去った。

 

「て、転移……したのか」

 

「これがゲッター線の力……なんと凄まじい」

 

格納庫を埋め尽くしていたゲッター線の光は消え、蛍の光のような残滓がそこにゲットマシンが存在したと言うことを示していた……。

 

「シャアアアーーッ!!!」

 

「ガアアアーーッ!!!」

 

ヴァルキリオンに向って百鬼獣が飛んだ。それを見て誰もが声を発することも無く、武蔵を助ける為にてにしている武器の銃口を百鬼獣に向けた。だが引き金が引かれる前に、虚空から飛び出したミサイルが百鬼獣に命中し、その巨体を弾き飛ばす。

 

『げ、ゲッター線反応、転移反応感知! 5……4……3……熱源が転移してきますッ!!』

 

エイタのその叫びと共にゲッター線の幕が現れ、そこから赤・青の2機の戦闘機が高速で飛び出した。

 

『げ、ゲットマシン!? ゲットマシンだッ!?』

 

航空力学に喧嘩を売っていると言っても良い。異常な形状の戦闘機が太陽の光にその機体を光らせ、戦場を飛び回る。そしてその姿を確認した武蔵は躊躇うこと無くヴァルキリオンの手の上から飛び降りた。

 

『『『武蔵ぃッ!?』』』

 

『む、武蔵ッ!?』

 

リュウセイ達だけではない、ヴァルキリオンのユーリアも武蔵のを名を叫んだ。赤と青――2機のゲットマシンは太陽に向って飛翔を続け、落ちている武蔵と距離を開け続けている。このままでは武蔵が地面に叩きつけられる――誰もがそう思った瞬間だった……黄色の戦闘機がゲッター線の渦の中から飛び出し、武蔵を開け放たれたコックピットの中に受け入れる。

 

「しゃああッ! 行くぜッ!!!」

 

ゲットマシン――ポセイドン号に乗り込んだ武蔵の叫び声が響き、機首を上げて先行しているドラゴン号、ライガー号を追って急上昇していく。敵味方問わず、その場にいる全員が急上昇していくゲットマシンの姿に目を奪われた。

 

「シャアア!!」

 

「ガアアアー!」

 

「グオオオーーンッ!!!」

 

隙だらけキョウスケ達など眼中にないと言わんばかりに百鬼獣がゲットマシンを追う。だがゲットマシンに百鬼獣は追いつけない、そして太陽の中にゲットマシンの姿が消えた瞬間再び武蔵の叫び声が響いた。

 

「チェェエエエンジッ!!!! ドラゴォォオオオオンッ!!!!!!」

 

はるか上空でゲットマシンがぶつかり合う衝撃音が響き渡り、ゲットマシンを追っていた百鬼獣を上空から降り注いだ翡翠色の光……ゲッタービームが貫き、爆煙を突っ切って真紅に輝く特機がリュウセイ達の前に舞い降りた。太陽の光を浴びて、真紅に輝くその姿――ゲッターロボともゲッターロボGとも異なる姿をしているが、力強く味方を鼓舞するその姿は紛れも無く、ゲッターロボの姿だった。

 

「掛かって来やがれ百鬼の雑魚共ッ! ゲッターロボと武蔵様が相手になってやるぜッ!!!」

 

戦場に響くその声は紛れも無く巴武蔵の物なのだった……ッ!!!

 

 

第62話 龍神と剣神 その4へ続く

 

 




リュウセイ達の前に武蔵とゲッターD2が登場。次回は百鬼獣、スレードゲルミルと戦うゲッターD2を書いて行こうと思います。ゲッターを名前を叫んで召喚するのは武蔵の適合率が上がっていると言う所をイメージしてみました。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。


あと分かると思いますが、今作のゲッターD2は勝手に火星に飛んでいってしまう可能性のあるゲッターと成ります。
下手すると武蔵を取り込んでしまうやべーいやつなのをこの場で発表しておきますね。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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