進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第62話 龍神と剣神 その4

第62話 龍神と剣神 その4

 

太陽の光を浴び、真紅の装甲を輝かせるゲッターロボ――その姿はリュウセイ達の知る旧・ゲッターロボでも、そして敵として戦ったゲッターロボGとも違う、だがその2体の特徴を併せ持った新型のゲッターロボだった。ハガネ組みはその姿をはっきりと見るのはこれが初めてだったが、宇宙に行っていたリュウセイ達はその姿を既に1度見ていた。だからこそ、殆ど反射的に叫んでいた。

 

「武蔵! やっぱり武蔵だったのか!! なんで、あの時何も言ってくれなかったんだよ!!」

 

『てめ! 武蔵ぃ!! 生きてるなら生きてるくらい言いやがれ!!』

 

ストーンサークルの時に自分達を助けたゲッターロボに武蔵が乗っていた。それを知り、リュウセイは悲しかった。生きていてくれた事は嬉しい、こうしてまた会えた事も本当に嬉しかった。だけど武蔵は何も言わなかった、見捨てると言う選択肢しかなかったリュウセイ達に恨みも怒りも見せる事もなかった。そしてその姿も見せてくれなかった……強くなったつもりだった……だけど武蔵とゲッターロボの背中はまだ遥か遠く、近づいたと思っても武蔵はもっと先に居た。

 

(俺達は武蔵の助けになれないのか……)

 

武蔵は何度も助けてくれた。だが武蔵は助けてくれとリュウセイ達に言った事は無かった……助けたいと思っても、武蔵とリュウセイ達の力の差は大きくて、どれだけその差を埋めようとしても埋めようの無い隔絶とした力の差があった。何も言わない武蔵が、本当は自分達を憎んでいるのではないか、恨んでいるのではないか? それでも見捨てられなくて、武蔵がこの場に現れただけで、もう武蔵は自分達を仲間と思っていないのではないか? そんな暗く重い考えがリュウセイの中に生まれた。いや、リュウセイだけではない、きっとこの場にいた全員がそう思っていただろう。L5戦役を終結させた部隊と言っても、その実は武蔵1人の実績と言っても良かった。武蔵とイングラムがMIAになったから……いなくなった人間の変わりに讃えられる存在が必要だった。それがハガネとヒリュウ改のクルーだった……そうではないとしても、自分よりも年下の人間が特攻し、自分達を生かした。それは間違いなくキョウスケ達の心に重い影を残していた。何も言わないのは……自分達を憎んでいるからではないか? 口を開けば恨み言を言ってしまうから、口を開きたくないのか? 誰もが何を言えばいいのか、そして武蔵から言われる言葉を恐れた。

 

『なんて言えば良いのかな、はは、こういう時なんて言えば良いのか全然わかんねえや』

 

ゲッターD2から響いた武蔵の声は自然体で、怒りも恨みもない、記憶の中にある穏やかな武蔵の声のままだった。ゲッターD2もその全身から溢れる闘志をそのままに、頭の後に手を当ててどこか愛嬌のある素振りを見せている。

 

「シャアアアーー!!」

 

「ごガアアアーーッ!!!」

 

『うるせえ! 考え事をしてんのに邪魔すんなぁッ!!!』

 

百鬼獣が無防備なゲッターD2を今なら倒せると思ったのか、飛び掛った瞬間肩から射出された棒が変形し、ゲッターD2の全長を遥かに越える戦斧にその姿を変えた。それを片手で掴んだゲッターD2が腕を振るうと、百鬼獣は両断されゲッターD2の後で爆発し火柱を上げた。

 

『一撃かよ……俺達があれだけ必死で戦った相手なんだけどな』

 

ぼそりとイルムが呟いた。自分達が連携を組み、それこそ決死の思いで戦っていた相手が一撃で屠られる――百鬼獣の群れが相手であっても、ゲッターD2の敵ではないと言う現実は一種の悪い夢のように思えた。しかしそれは敵にとっての悪夢であり、キョウスケ達には希望の証でもあった。

 

『色々と言いたい事とか、うん。話したい事とかあるんですけど……そうですね。今は一言だけ』

 

戦斧を構え、姿勢を低くしたゲッターD2の背中から蝙蝠を思わせる一対の翼が現れ大きくその翼を広げた。

 

『色々あったけど……帰って来れたよ。ただいま』

 

キョウスケ達が抱いていた不安や恐怖が全くの杞憂であり、武蔵は自分達の事を恨んでなどは無く、帰って来るべき場所と思っている――たった一言だったが、その一言で武蔵を犠牲にしたと思っていたキョウスケ達の肩の重みはふっと軽くなった……。だがそれで終わりでは、L5戦役のままから何も変わっていない。あの時のように見ているだけではない、今度は肩を並べて共に戦えるのだと、守られているだけではないという事を示す為に、先陣を切って進むゲッターD2の後を追って、キョウスケ達も動き始めるのだった……。

 

 

 

 

リーを初めとしたシロガネのクルーはその殆どが北京でのエアロゲイター襲撃時にゲッターロボに家族や恋人を救われた者達で固められている。リーがシロガネの艦長に任命された時に、北京で自分が率いていた艦隊の船員の8割をシロガネのクルーにへと希望したからだ。

 

「あれが……ゲッターロボ」

 

リー達はゲッターロボに自分達の生まれ育った街が救われた事、そして自分達の家族が救われた事も知っている。だがこうして戦っている所を、そして武蔵の人柄を知るのは初めての事だった。

 

『うおらァッ!!!』

 

『ギャアッ!?』

 

『ガゴオオッ!?』

 

巨大な戦斧を振るい百鬼獣を両断し、引き裂き破壊するゲッターD2の力強さは想像を絶する物だった。強さの桁が違う……ジガンスクードを優に越える90mという巨体――それが信じられないほどの滑らかな動きで戦場を縦横無尽に駆け巡る。斧が、腕が振るわれる度に百鬼獣は両断され、破壊されていく。それはまるで大人と子供の喧嘩のように見えた。

 

『シャアッ!』

 

『ギイイッ!!!』

 

『へっ! 舐めんなッ! オープンゲットッ!!!』

 

前後左右からの攻撃がゲッターD2に迫ったと思った瞬間。ゲッターD2の姿が爆ぜ、百鬼獣の攻撃は空しく空を切った。

 

『逃がさん、全弾持って行けッ!!!』

 

『武蔵にばっか良い所は持って行かせねえよッ!!』

 

攻撃を外しバランスを崩した百鬼獣に向ってスクエアクレイモアとファイナルビームが放たれ、百鬼獣の装甲を穿ち、熱線でその装甲を歪める。

 

『チェンジドラゴォォンッ!!! いっけええええッ!!!!』

 

上空で再びゲッターD2に合体し、両肩から戦斧を取り出すと同時に凄まじい勢いで百鬼獣の群れに向って投げつける。投擲された瞬間マッハの壁を越え、ソニックブームを引き起こしながら翡翠の光に包まれ百鬼獣へと迫る。

 

『ギャアアッ!?』

 

『グギャアッ!?』

 

百鬼獣は音速で迫るダブルトマホークを回避する事が出来ず両断され、爆発炎上する。その中には機動力に長けていて逃げようとする機体もあった、だが飛び上がった直後に高速で迫る実弾に翼や胴を穿たれ墜落し、ダブルトマホークの餌食になる。

 

『エクセレンさん。ナイス!』

 

『んふふ、私もやるもんでしょ』

 

ヴァイスリッター改を初めとした射撃機に上を取られ、ムータ基地に陣取っているR-2やヒュッケバイン・MK-Ⅲの精密射撃で動きを阻害されれば回避など出来るわけが無く、防御をし致命傷を防いだ所で腕や足を切り落とされた百鬼獣は攻撃力も防御力もがた落ちとなっていた。

 

『一意専心ッ!!!』

 

『T-LINK……ッナッコオッ!!!』

 

身体を欠損した百鬼獣が痛みに悶えている間に接近したゲシュペンスト・MK-Ⅲ・Sカスタムのシシオウブレードが百鬼獣の頭を刎ね、R-1のT-LINKナックルが百鬼獣の頭を押し潰す。

 

『ラッセル! レオナ! お前らはタスクの面倒を見てろッ! 行くぞッ!!! ライトニングステークセットッ!!』

 

『武蔵にばかり良い所は見せられんなッ!!』

 

ステークを放電させて百鬼獣へと突撃するゲシュペンスト・MK-Ⅲとゲシュペンスト・リバイブ(K)その姿を見たゲッターD2は両手を百鬼獣、そしてスレードゲルミルへと向けた。

 

『ゲッタァアアアブラストキャノンッ!!!』

 

生えるように現れたゲッターD2サイズのアサルトマシンガンが火を噴き、百鬼獣、スレードゲルミルの装甲を容赦なく穿った。

 

『ぬううッ!!!』

 

『ギャアッ!?』

 

『ぐギイイッ!?』

 

スレードゲルミルは斬艦刀を盾にし、直撃を回避すると同時に後方に飛びブラストキャノンの弾雨から逃れる。だが百鬼獣はゲッター線を纏った銃弾の嵐にその装甲を穴だらけにされていた。

 

『トドメは任せましたよッ!!』

 

翼を羽ばたかせたと思うと同時に翡翠の光に包まれたゲッターD2が飛行型の百鬼獣を引き付ける。それによってPT隊は格段に動きやすくなった。頭上を押さえられていると言うのは想像以上に劣勢を強いるからだ、それを悟り味方の支援を行った後は、敵をひきつけて動くゲッターD2の動きは明らかに支援に慣れている者の動きだった。

 

「これがゲッターロボ……これが巴武蔵なのか……」

 

リーは近くでキョウスケ達を見ていた。生身での訓練、そしてシュミレーターを使ったPTの訓練……その密度の濃さに驚いた。そしてそれと同時にそれだけの力があったからL5戦役を潜り抜けることが出来たのだと感じていた。だが、実際はそうではなかったのかもしれない。常に先陣を切り戦い続けたゲッターロボに、巴武蔵に追いつこうとしていたのかもしれない……初めて目の前でゲッターロボと武蔵の戦いを見てリーはそう感じていた。その時だったシロガネのブリッジに警報が鳴り響き、リーは思考の海から引き上げられた。

 

「警報!? まだ増援か!? 増援が来る方角はッ!」

 

「北と南、南西より3方向から熱源多数! 熱源のサイズから百鬼獣だと思われます!」

 

ゲッターD2の参戦によって戦場の流れは大きく変わった。しかし百鬼帝国がそれを許すわけが無く、奪われた流れを奪い返す為に更なる増援がムータ基地に現れようとしていた。

 

「ムータ基地の兵士の回収はどうなっている」

 

「は、はい! 現段階でハガネと共に8割の人員の回収が完了しております」

 

「判った。ハガネに通信を繋げてくれ、武蔵に今作戦の内容を伝えてくれとな」

 

シロガネのモニターからリーは戦況を見つめる。確かにゲッターD2の参戦で流れは変わり始めている……だがここまでの戦い、機体の損傷、エネルギー、弾薬は危険域に近づいているだろう。

 

「……引き際だな」

 

これ以上は戦えない、これ以上戦えば死傷者が出る可能性がある……武蔵の帰還で勢いの乗っているが、それも一過性の物だ。疲労を認識すれば身体は動かなくなる……ここが引き際だとリーは感じているのだった……。

 

 

 

 

ウォーダンはスレードゲルミルのコックピットでその身体を震わせていた。恐怖による身震いではない、ゲッターD2という規格外の戦闘力を持つ特機――あちら側で何度もその強さを間近で見ていた。だがこうして敵対することで知っているつもりだったのだとウォーダンは思い知らされていた。

 

(マシンセルの修復も始まらないか……だがそんな事はどうでもいい)

 

ゲッター線は不可思議な現象を起す。マシンセルによる修復が始まらない事も、そして今この場にいるのが自分だけになっていても、ヴィンデルに優先して殺せと言われてたキョウスケ達が撤退している事も……その全てが今のウォーダンにとってはどうでも良い事だった。

 

「真剣勝負だ武蔵ッ!! 邪魔者である百鬼獣は全て消えた……。ハガネとシロガネの機体が撤退するのも俺は邪魔しない。俺が望むのはただ1つッ!! 武蔵ッ! お前に正々堂々一騎打ちの決闘を申し込むッ!!!」

 

武蔵にウォーダンのこの要求を呑むメリットはない。普通に考えれば既に撤退を始めており、殿を務めている武蔵は機体の収容が終われば離脱すれば良い……誰もがそう思っていたが、ウォーダンだけは違っていた。武蔵はこの要求を飲むと判っていた。

 

『良いぜ、相手してやるよ。ウォーダン』

 

射出したダブルトマホークを両手で構えさせ、スレードゲルミルの前に立つゲッターD2……その姿を見てウォーダンはその身体を歓喜に震わせた。

 

「お前ならそう言ってくれると思っていた」

 

斬艦刀を構え姿勢を低くするスレードゲルミルとダブルトマホークを構え翼を広げるゲッターD2――武蔵とウォーダンの闘志がぶつかり合い、誰も口出しできない邪魔できないそんな雰囲気が2人の間にはあった。

 

『行くぜ』

 

「来いッ!!!」

 

ゲッターD2の姿が消え、スレードゲルミルの周りを翡翠の光が高速で駆け巡り、その光が消えた瞬間。スレードゲルミルの視界に黒い影が落ちた。それを確認するよりも早くスレードゲルミルは斬艦刀を振り上げていた。

 

『うおらあッ!!!』

 

「ぬううんッ!!!」

 

ダブルトマホークと斬艦刀がぶつかり合い、凄まじい衝撃が周囲を駆け巡る。誰もがゲッターD2がスレードゲルミルを押し潰す光景が脳裏を過ぎった……だが弾き飛ばされたのはゲッターD2の方だった。武蔵は油断していた訳でも、慢心していた訳でもない。全力でウォーダンと対峙していたが、武蔵の予想よりもスレードゲルミルの力が上だったのだ。

 

『くうっ!?』

 

左手を叩きつけ吹っ飛ばされた衝撃と勢いを殺すゲッターD2に向ってスレードゲルミルが駆け出した。

 

「おおおおおッ!!! 斬艦刀ッ!! 雷光斬ぃぃいいいいッ!!!」

 

両手持ちに加え、背部のブースターで加速した唐竹割りの一撃がゲッターD2に向って振り下ろされた。ウォーダンはこの一太刀の必中を確信していたが、それすらも慢心だったと次の瞬間に思い知らされた。

 

『舐めんなッ!!!』

 

ダブルトマホークの迎撃が間に合わない――武蔵はそう判断するや否やダブルトマホークを投げ捨てさせ、振り下ろされる斬艦刀を両手で挟み込み、斬艦刀の勢いを完全に殺した。

 

『『『真剣白羽取りッ!?』』』

 

特機で真剣白羽取りという常識はずれの事をした武蔵に驚きの声が上がった。少しでもタイミングがずれればゲッターD2は両断されるか、腕を失う。殆ど線でしか見えないその踏み込みを完全に見切り、受け止めるという方法に出た武蔵にはウォーダンも驚きを隠せなかった。

 

「ぬ、ぬうううッ!!!」

 

『ぐ、ぐぬううううッ!!!』

 

押し切ろうとするスレードゲルミルと、そうはさせまいと力を込めて受け止めるゲッターD2……スレードゲルミルとゲッターD2の力比べはゲッターD2にへと軍配が上がった。

 

『うおらあッ!!!』

 

受け止めていた部分から斬艦刀をへし折り、折られた斬艦刀がそのままの勢いでスレードゲルミルの顔に向って飛んだ。

 

「ぬうっ!? ぐあッ!」

 

反射的にかわしたが、その瞬間にゲッターD2が立ち上がり、スレードゲルミルの首を掴むとそのままその巨体を投げ飛ばした。

 

「ぐうう……流石というべきか」

 

重量が全てそのままウォーダンに跳ね返り、口元から溢れた血を拭いスレードゲルミルを立ち上がらせ、折られた右肩の斬艦刀を投げ捨て、左肩の斬艦刀を変形させ再び構えさせると同時に地面を蹴り、ゲッターD2へと斬りかかる。

 

『おりゃあッ!!』

 

「うおおおッ!!」

 

互いに立ち位置を何度も変えながらダブルトマホークと斬艦刀がぶつかり火花を散らす、どちらの一撃もまともに当たればその瞬間に敗北が決まる。それほどの激しく、この一撃でしとめてやるという気合の乗った一撃の応酬が続く。

 

「ぬうおおおおッ!!!」

 

『ぐっ!?』

 

下からの切り上げでダブルトマホークごとゲッターD2の腕を跳ね上げ、がら空きの胴に向かって横薙ぎの一閃を叩き込もうとするスレードゲルミル。

 

『そう簡単にッ!!』

 

だが武蔵もそう簡単にスレードゲルミルの一撃を受ける訳がない、ダブルトマホークの柄で斬艦刀を受け止め、そのまま押し返すように弾き飛ばす。スレードゲルミルの巨体が後方に押し飛ばされ、距離が十分に開くと同時にゲッターD2とスレードゲルミルは大きく振りかぶった横薙ぎの一閃を同時に叩き込んだ。

 

『おらッ!!!』

 

「ぬおおおおッ!!!」

 

互いに両腕を振れる距離、フルスイングでの斬艦刀とダブルトマホークがぶつかり合い。互いの獲物は持ち手部分だけを残し、木っ端微塵に砕け散り、互いに地面を蹴って距離を取った。獲物を全て失ったが、ウォーダンの闘志は萎えておらず、むしろより激しく燃えていた。

しかし、その闘志はレモンからの通信で消される事となった。

 

【ウォーダン。楽しんでいる所悪いんだけど、どうも百鬼帝国はゲッターロボをよっぽどそこで潰したいみたい。かなりの数の百鬼獣が動いてるわ、引けるなら引きなさい】

 

「……承知」

 

余計な横槍が入ったとウォーダンは舌打ちをし、スレードゲルミルから闘志が消えた事に気付き武蔵も構えを解いた。

 

「百鬼が増員を送り出した。これ以上は邪魔者が入るだけだ」

 

『手打ちにしようって事か、良いぜ。ハガネとシロガネも撤退した、これ以上はオイラも戦う理由がない』

 

ムータ基地に残っていたのはスレードゲルミルとゲッターD2だけだった。スレードゲルミルとゲッターD2の戦いが激しさを増し、周囲を破壊しながら戦う間にハガネとシロガネは撤退を完了させていた。それゆえに武蔵は手打ちにしようと言ったウォーダンの提案を受け入れたのだった。

 

「……次はその首、貰い受ける。ゼンガー・ゾンボルトの首と共にな」

 

『楽しみにしておく、じゃあな、ウォーダン。一応レモンさん達に言っておいてくれや、あんたらはオイラ達が止めるってな』

 

そう言い残すとゲッターD2はシロガネとハガネの後を追ってその場を離脱した。

 

「……甘いな、だが……そうだな。お前らしい」

 

武蔵にはここでウォーダンを倒す事も出来た。だがそれをしなかったのは武蔵の甘さだった……だがその甘さが何故かウォーダンには悪い物には思えず、仮面の下で小さく微笑んだ。離脱する前に砕けていたダブルトマホークの残骸を拾い上げ、百鬼獣が現れる前にウォーダンもその場を離脱した。それから数分後――百鬼獣が制圧したムータ基地は動力の爆破によって消し飛び、百鬼獣はその爆発に飲み込まれその姿を消すのだった……。

 

 

 

 

ウォーダンと武蔵を残し、ムータ基地を離脱したシロガネとハガネは森林地帯に停泊し、ゲッターD2と武蔵が戻るを待ちながら補給と簡易的な修理を始めていた。武蔵が食い止めてくれているとは言え、百鬼獣の襲撃の危険性が高く全員がそれに備えていた……武蔵と行動を共にしていたユーリアの姿もあるが、だんまりを決め込んでおり話すつもりはない様子だった。それに加えて、ユーリアの部下だったレオナは斬艦刀の一撃を受けて昏倒しているタスクの看病の為に医務室にいた。レオナならばユーリアから話を聞くことも出来ただろうが……タスクの身を案じているレオナを医務室から出てくるようにも言えず、ハガネの格納庫には嫌な沈黙が広がっていた。

 

「武蔵は本当に俺達と合流してくれるかな」

 

「……リュウセイ」

 

「いや……さ、正直言うとよ。武蔵が生きていたのは嬉しい、でもよ。怖いんだよ……武蔵に恨まれているんじゃないかってさ」

 

ただいまと武蔵は言った。それでもだ、L5戦役最終盤……リュウセイ達はメテオ3に特攻する武蔵を見ている事しか出来なかった。その

事を責められるのではないかとリュウセイはそれを怖がっていた。

 

「……大丈夫」

 

「そう……かな」

 

不安そうにコンテナに腰掛けているリュウセイの手の上にラトゥーニがその手を重ねた時。ヴァルキリオンの近くに腰掛けていたユーリアが腰を上げた。

 

「武蔵はお前達を恨んでなどいない」

 

「え?」

 

「あの時はああするしかなかった。むしろ、自分のせいでお前達を悲しませたのではないか? 武蔵はそればかりを心配していた。だからすぐにお前達の前に顔を見せるのを躊躇っていた」

 

ユーリアはリュウセイ達が武蔵に恨まれているのではないか? そう考えているのを聞いて、その考えは間違っていると静かな声の中に怒りを込めてリュウセイに声を掛けた。

 

「……武蔵が俺達の事を心配してたって?」

 

「ああ、悲しませたし、泣かせたと思う……だからどんな顔で会いに行けばいいのかと武蔵は悩んでいた。それでも、それでもだ。武蔵はお前達が危ないと知れば助けに行った。そんなやつがお前達を恨んでいると本当に思っているのか?」

 

リクセントでの百鬼獣の侵攻の時も武蔵は助けに現れた――、宇宙でのストーンサークルの時も、そして今もまた百鬼獣と謎のゲシュペンストの大群とウォーダンを名乗る男の襲撃を受けた時も武蔵は助けに現れていた。もしも憎み恨んでいる相手が窮地に追い込まれていると知っても助けに来ることはないだろう。だが武蔵はそれを助けに来た……それが武蔵がリュウセイ達を恨んでいないと言う証拠だった。

 

「……すんません、変な事を考えて」

 

「いや、余計なお世話だったと忘れてくれてもかまわない。だが武蔵はお前達を恨んでなんかいない、出迎えるのなら笑って迎えてやってくれ」

 

ユーリアはそれだけ言うとリュウセイとラトゥーニに背を向けて、再びヴァルキリオンの近くのコンテナに腰を下ろした。

 

「……俺達の事を心配してたって……そりゃ違うだろうよ」

 

「……あたしはよ、正直言って武蔵の奴には恨まれてるって思ってたぜ」

 

自分の特攻で泣かせ心配させた。だから合わせる顔がないと言っていたとユーリアは告げた……だがそれは違う。軍人である自分達が生きて、民間人の武蔵が死んだ……武蔵には自分達を恨む権利があると全員が感じていたのに、逆に武蔵はリュウセイ達の事を案じていたのだ。

 

「本当……人が良いって言うか……邪気がないって言うか……」

 

「笑ってろ。いつものようにな」

 

「……ごめん、今ちょっと無理」

 

エクセレンがキョウスケの背中に顔を埋め、キョウスケは腕を組んで何も言わずエクセレンの好きにさせた。武蔵の事で思う事は誰もが同じだった。

 

「……武蔵が喜ぶ事ってなんだと思いますか、カイ少佐」

 

「今は笑って迎えてやる事だろうな……正直難しいがな」

 

生きていたと信じて……いや願っていた。自分達が見捨てた武蔵が生きていたと願っていないと、罪の意識に押し潰されそうだった。その感情はきっと武蔵を見た時に爆発する事になるかもしれない。

 

「ブルックリン少尉。その刀は……」

 

「武蔵の刀です。ラッセル少尉――武蔵が戻って来たら俺はこれを返さないとって思っていたんです」

 

この刀に恥じない男になる――それを誓っていたブリット。だが武蔵が生きていたのならば、この刀は武蔵に返すべきだ。ブリットはそう思って私室から武蔵の刀を持って格納庫に戻って来ていた。

 

「武蔵が喜びそうなことっつたら飯だよな? あいつって高級な店とか好きなのか?」

 

「知りませんよ。俺達は武蔵の事を余りにも知らない……だからこれから知れば良い。俺はそう思いますよ」

 

「……っだな。財布の中身とか、んなこと考えないで飯を腹一杯奢ってやるか」

 

「ご馳走になります。イルムガルト中尉」

 

ライの言葉にイルムは少し驚いた表情をし笑った。武蔵が居なくて出来なかった祝勝会……それをやれる時が来たのだ。

 

「俺だけじゃ無理だな。ダイテツ中佐達やカイ少佐達も巻き込んでやるか」

 

「おいおい、勝手に決めるな」

 

「カイ少佐は反対なんですか?」

 

「馬鹿を言え、賛成に決まってるだろう」

 

武蔵が戻ったら何をしよう、何をしてやろうと話をする中、ラミアだけは腕を組んで鋭い視線を格納庫に向けていた。

 

(……巴武蔵。ヘリオスと共に最優先ターゲットになっている男……一体どんな男なんだ)

 

ラミアと武蔵は直接的な面識はない……筈だ。転移の前にアンジュルグは見られていて、声を聞かれているがそれだけだ。

 

(……最悪の場合は覚悟を決めなければならないな)

 

自分がシャドウミラーの構成員だと知られていれば、自分の身が危ない。武蔵の発言力が大きいのは格納庫でのやり取りを見ていれば判る……自分がいかに身の潔白を訴えても、武蔵の一言の方が信憑性が高くなる。ラミアはそれを危惧し、背筋に冷たい汗が流れるのを感じながら武蔵とゲッターロボがハガネに到着するのを待った。

 

『ゲッターロボが接近中。各員出迎えの準備を、俺達もすぐに向かう』

 

格納庫に響いたテツヤの声、それからすぐにダイテツ、テツヤ、そしてシロガネからリーの3人が格納庫にやってくる。それから少し遅れて格納庫が開放され、ドラゴン号、ライガー号、ポセイドン号が順番に着艦しタラップがポセイドン号の横に取り付けられ、武蔵がそこから姿を見せた。

 

「総員敬礼ッ!!!」

 

ダイテツ自ら敬礼しながら指示を出すと一糸乱れぬ動きで全員が敬礼した。武蔵はその様子を見て一瞬目を丸くし、次の瞬間に笑みを浮かべた。

 

「やっぱり何て言えばいいか全然わかんねえや……でもうん。ただいま」

 

武蔵のその言葉に格納庫の中に歓声が響き渡った。決して予断を許さぬ状況――地球圏の危機、劣勢に追い込まれている連邦軍。それでも、武蔵が無事に戻って来た。悪い事ばかりが続く中、それは紛れも無く吉報なのだった……。

 

 

第63話 偽りの神聖十字軍 その1へ続く

 

 




リュウセイ達と武蔵の再会です。次回からは暫く会話フェイズを続けて行こうと思います、漸くここまで来れたなあと思いつつもまだこれ半分も完成してないんですよね。OG2のシナリオの内容を考えると……まだまだ頑張って行こうと思いますので、応援よろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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