進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第63話 偽りの神聖十字軍 その1

第63話 偽りの神聖十字軍 その1

 

タラップを降りた武蔵ははにかんだ笑みを浮かべ、敬礼しているリュウセイやキョウスケ達の前を通り、ダイテツとリーの前に立った。

 

「お久しぶりですダイテツさん。お元気そうで何よりです」

 

「ふっ、そうだな武蔵。君も良く生きていた。しかし……生きているなら連絡の1つや2つを入れてくれても良かったのではないか?」

 

差し出されたダイテツの手を握り返し武蔵は小さく笑った。

 

「いや、すんません。連絡する、しないじゃなくて出来ない状況にあったんですよ」

 

連絡をしなかったのではない、出来ない状況だったと武蔵は告げた。武蔵本人は連絡を望んでいたが、それが出来ない状況であったとダイテツは察した。

 

「色々話したい事もあるが、彼が話したがっているから変わろう」

 

武蔵の話が長くなると察し、1度話を切り上げリーに視線を向けた。

 

「君が巴武蔵君か……初めまして、シロガネの艦長をしているリー・リンジュンだ。握手をして貰っても?」

 

「はぁ? 別にかまいませんけど……」

 

武蔵が手を差し出すと、リーはその手を両手で握り締めた。

 

「ありがとう!私を含め、シロガネのクルー全員が君に感謝している!巴武蔵君」

 

「えっと? すんません、どういうことか判らないんですけど……」

 

リーから深い感謝を感じるが、武蔵はリーにこうして会うのは初めてだ。シロガネのクルー全員が感謝していると聞いても、武蔵には思い当たる節が何も無かった。

 

「私達の生まれは北京だ。私の両親も妻も、いや、シロガネのクルー全員の家族が北京にいた。私達の家族は皆君に救われたんだ、ありがとう。本当に……ありがとう」

 

北京――それは自分のせいでゲッターロボの暴走を招いた因縁の地であり、そして武蔵に良い思いではなかった……だがリーの言葉を聞いて武蔵は笑みを浮かべた。

 

「助けになれてよかったです。リーさん」

 

それでも自分に救えた物はあったのだ。怒りによって我を忘れ、破壊の限りを尽くした。それでも、それでも救えた命があった。それが武蔵にとっての救いになった。

 

「今まで何をしていたのか、聞かせてくれるか? イングラム少佐の事も聞きたい」

 

「はい、でもまぁ凄い色々ありましたから……長くなりますよ?」

 

「あッ!」

 

長い話になると武蔵が言った時だった。ユーリアが何かに気付いたのか、大声を上げた。格納庫にいる全員がユーリアに視線を向け、ユーリアはほんの少しだけ動揺した素振りを見せたが、ライガー号を指差した。

 

「武蔵! ライガー号を見てくれ」

 

「ライガー? ライガーが……あっ!?」

 

ユーリアに言われてライガー号に視線を向けた武蔵は、コックピットの中から不安そうに顔を見せているエキドナに気付いた。

 

「ちょ、ちょっと待っててくださいね!? すぐ戻ります」

 

武蔵はそう言うと慌ててタラップを駆け上がり、ライガー号のコックピット部に近づいて、外からコックピットを開放する操作を行なう。

 

「エキドナさん! 何してたんですか?」

 

「寝てた?」

 

「寝てたッ!? ライガーの中でッ!? って言うかなんで疑問形ッ!?」

 

「いや、判らないから……気がついたらここにいて、外に出ようにもどうすればいいか判らないし……外を見てたんだ。すっごい頭も痛いし……たんこぶとか出来てそう……」

 

ぼんやりとした様子ながらも何があったのかと武蔵に説明するエキドナ。その説明を聞いて武蔵は思わず天を仰いだ……寝てたんじゃなくて、ゲッターの動いている振動で気絶と目覚めるのを交互に繰り返していたのだと察したからだ。こんな事ならばドラゴン号とライガー号のコックピットを確認すればよかったと後悔したのだ。

 

「とりあえず、出れますか?」

 

「うん」

 

武蔵の手を借りてライガー号からエキドナが降りる。周囲を見てエキドナは何かに気付いたようだった。

 

「クロガネじゃない?」

 

「まあ色々ありまして、頭とか大丈夫ですか?」

 

「……今気付いたんだけど、もの凄く痛い、泣きそうだ」

 

「医務室に行きましょうか」

 

無表情で痛いと言うエキドナ。その目が潤んでいるのを見て本当に痛いのだと思い、武蔵は医務室に行きましょうかと言って、エキドナの手を引いてタラップを降りた。ライガー号からイングラムが降りてくると思っていたリュウセイ達は武蔵が美女を連れてタラップを降りてきた事に驚いていた。

 

「……シャイン王女になんて言えば……」

 

ただラトゥーニだけは友人のシャインにユーリアとエキドナの事をなんと言えば良いのかと頭を悩ませていたのだが……それに気付いた者はいなかった。

 

「おいおい、武蔵。誰だよ、その美人なお姉様は?」

 

「イルムさん。オイラを助けてくれたエキドナさんって言うんですけど、なんか色々あって記憶喪失なんです。凄い頭を打ったらしくて、

医務室に連れてって上げたいんです」

 

色々あって記憶喪失――1番説明しないといけない所をはしょる武蔵だが、頭を打ったと聞いた格納庫にいた全員は察した。

 

「それはいけないわ。早く医務室につれて行かないと」

 

「精密検査も必要かもしれないな」

 

ゲットマシンだけでも瀕死確定なのに、合体してあれだけ暴れ回っているのを見れば下手をすれば、たんこぶ所ではなくて脳とかが傷ついているかもしれない。

 

「担架、担架持ってきて!」

 

「今持って来ました!」

 

「よし! でかしたラッセル! おい、お前無理すんなこの上に寝ろ」

 

「え、えっと?」

 

「大丈夫ですよ。皆良い人ですから」

 

「そ、そう?」

 

不安そうに担架に横になり整備兵に運ばれていくエキドナ。その視線は最後まで不安そうで、一瞬ラミアと目が合ったが、エキドナはそれに反応を返さず、そのまま医務室に運ばれて行った。

 

(W-16を見つけたと思ったら記憶喪失……わ、私は呪われているのか?)

 

やっと見つけたW-16だったが、その肝心のW-16は記憶喪失で、しかも武蔵と行動を共にしていると知ったラミアは深く溜め息を吐いた。一瞬記憶喪失の振りをしているかと一瞬思ったのだが、その目を見れば本当に記憶喪失のようで、あの様子ではレモンから命じられたことも何もかも覚えていないだろう。その様子を見てラミアは深く肩を落としていた。

 

「ラミアちゃんどうしたのー? ブリーフィングルームで武蔵の話を聞くわよ?」

 

「あ、はい。今行きますエクセ姉様」

 

エクセレンに呼ばれてやっと歩き出したラミアだったが、その足取りは重く、ラミアが胸に抱えている不安がその足取りにははっきりと現れていたのだった……。

 

 

 

 

エキドナをドクターに預け、リュウセイ達は武蔵の話を聞く為にブリーフィングルームに集まっていた。格納庫での厳かな雰囲気は無く、いつものハガネの雰囲気がブリーフィングルームには広がっており、武蔵もはにかんだ笑みではなく、心からの穏やかな笑みを浮かべていた。

 

「武蔵よ、リクセントの時に助けてくれたならそのまま合流してくれてもよかっただろうに、あのボロボロのゲッターロボも武蔵が操縦してたんだろ?」

 

「すんませんね、イルムさん。オイラも色々と調べて動いてたんですよ。それですぐにハガネに合流する訳にも行かないし、でもシャインちゃんが危ないって聞いたらジッともしてられなくてさ。土下座外交してたんです」

 

「「「土下座外交?」」」

 

何の話だ? と尋ね返すキョウスケ達。ブリーフィングルームにいるライだけが、その意味を察していた。

 

「リリー中佐か」

 

「めっちゃ怖かった、ビアンさんも隣で土下座してたし」

 

統合軍の中佐であり、自分の父であるマイヤーの副官を務めていたリリーならと呟いたことで武蔵がその時の事を思いだし、若干震えながら呟いたのだが、うっかりというか、気が緩んでいたのかビアンの名前を口にしてしまっていた。

 

「トロイエ隊の隊長と一緒だからクロガネに同行していると思ったが、やはり武蔵はクロガネと一緒だったのか」

 

「……あ。どうしましょう、ユーリアさん」

 

「私に言うな……まぁどの道ばれる事だが……」

 

出来ればクロガネと合流していたこと、そしてビアン達と行動をしていたことは伏せておきたかったが、そうも言ってられないとユーリアは肩を竦めた。

 

「メテオ3の後にすぐゲッターロボを回収していたんですか? ユーリア隊長?」

 

「勘違いしないで欲しい。我々も武蔵と合流したのはつい最近の事だ。リクセント公国が襲撃される少し前に武蔵と合流したんだ。それまでは我々も武蔵を探していた」

 

クロガネで武蔵とゲッターロボを回収したと思われては困るとユーリアがそう告げる。

 

「つまりあの時には既にラドラ達も武蔵の事は知ってたわけか」

 

「蚩尤塚の段階でもな。やれやれ、ビアン博士の秘匿癖にも困った物だ」

 

リクセントの後となれば蚩尤塚の段階でラドラとエルザムは武蔵の生存を知っていただろうし、クロガネと合流した際もビアン達は武蔵の生存を知っていた。それが判り、ブリーフィングルームの中に若干のビアン達に対する不信感が生まれたが、その話を聞いてブリットが武蔵に詰め寄った。

 

「ゼンガー隊長は!? ゼンガー隊長はクロガネにいるのか!? あのウォーダンとゼンガー隊長は関係ないのか!?」

 

つい先ほどまで戦っていたウォーダン・ユミル、そしてスレードゲルミル――ゼンガーと関係はないのかとブリットが焦りを浮かべた表情で武蔵に尋ねる。

 

「落ち着いてくれブリット。大丈夫だ、ゼンガーさんはエルザムさんとバンさんと一緒にライノセラスで出撃したのを見てる。ウォーダンとは何の関係もない」

 

「そ、そうか……良かった」

 

ウォーダンが百鬼帝国に捕まったゼンガーという可能性があり、気が気ではなかった様子のブリット。確かに念動力で違うという事を感じ取っていたが、それが正しいかどうかは定かではなく、武蔵から違うと断言され安堵した様子を見せた。ブリットに大丈夫だと声を掛けている武蔵だが、話しはそれで終わる事は無かった。

 

「しかし武蔵、お前はウォーダンを知っている素振りだったが、それはどういうことなんだ?」

 

ムータ基地での武蔵とウォーダンのやりとりは明らかに互いに知り合いという様子だったとキョウスケが指摘する。

 

「うーん、すっごい説明難しくなるんですよ……参ったな。これならイングラムさんも一緒だったら詳しく説明してくれると思うんですけど……」

 

「教官も生きてるんだよな!? イングラム教官は今クロガネか!?」

 

武蔵の口からイングラムの名前が出た。それを聞いて、聞きたいと思っていたのだが黙りこんでいたリュウセイが武蔵に尋ねる。

 

「おう。今クロガネにいるはずだ、カーウァイさんと「武蔵、やはりゲシュペンスト・タイプSのパイロットはカーウァイ大佐なのだな?」……あ、やぶへび」

 

カーウァイの名前を出した瞬間にズイっとカイが前に出て武蔵の肩を掴んだ。

 

「武蔵。俺は怒っていないんだ、だから素直に教えてくれ。ゼンガー達はカーウァイ隊長と一緒か?」

 

怒っていないと言うが、その目が全く笑ってない。武蔵はカイから目を逸らそうとしたが、肩を掴まれている事もあり、それも叶わずカイの眼力に恐怖しながら口を開いた。

 

「一緒です。一緒にいて、殆ど毎日投げられてます」

 

「指導を受けていると言うことか?」

 

「いや、毎日怒られてますかねえ……うん」

 

こってり絞られているとしか言い様がないと武蔵が言うとカイはそうかと小さく呟き、武蔵の肩から手を放した。

 

「なんとも羨ましいことだ。またカーウァイ隊長に指導をして貰えるとは……」

 

心底羨ましそうにしているカイに武蔵は何も言えなかった。その訓練の光景を知らないから羨ましいと言っているのだろうと思う事にした。

 

「多分そのうち会えると思いますよ?」

 

「ああ、それは楽しみだな。ギリアムの奴もきっと喜ぶだろう……おっと、すまないな。リュウセイ達にイングラムの事を話してやってくれ」

 

自分が割り込んだせいでイングラムの話を遮ってしまった事を武蔵とリュウセイの2人に謝罪し、話を続けてくれと武蔵に促すカイ。

 

「ちょっと待ってくれ、その前に聞きたい事がある」

 

武蔵が口を開く前にタスクが手を上げて話に割り込んだ。

 

「タスク。もう少し大人しくしていたらどうですの? 具体的には武蔵の話が終わるまで」

 

エキドナと入れ代わりで医務室を出たタスクにレオナがそう言う。言っている事は辛辣だが、その顔はまだふらついているタスクを案じている色が確かに浮かんでいた。斬艦刀の一撃を喰らい、脳震盪を起し、そして頭に包帯を巻いたままのタスクは若干青い顔をしたまま武蔵に問いかけた。

 

「武蔵とイングラム少佐は生きていたって言うのは判る。カイ少佐には悪いけど……カーウァイ大佐は確実に死んでた。それは確認されてる――どうして死人が生きてるんだ? 俺はそれが気になってしょうがない」

 

武蔵とイングラムが生きていたというのは判る。だがカーウァイは確実に死人だ……何故そんな人物が生きているのか? このお祝いムードの中で言うことではないとタスクにも判っていた。だがそこをはっきりさせないとタスクは素直に喜べなかった……だから何でだ? と武蔵に問いかけた。問いかけられた武蔵は少し考え込む素振りを見せてから、タスク……いや、タスクだけではない、この場にいる全員を見つめてゆっくりと口を開いた。

 

「……生きてたつうのは多分間違ってると思う。オイラ達は……確かにあの時死んだんだ、そいつは間違いない事だと思う」

 

自分達は生きていたのではない、確かにあの時死んだのだと武蔵はハッキリとした口調でそう告げた。ブリーフィングルームには誰かが……いや、全員かもしれないヒュっと息を呑んだ音がブリーフィングルームの中に響き渡るのだった……。

 

 

 

 

重苦しい雰囲気の中リュウセイが首を左右に振りながら武蔵に視線を向けた。

 

「いやいや、武蔵は生きてるだろ? 足もあるし、温かいじゃないか」

 

だから死んでない、メテオ3に特攻した後も生きていたんだというリュウセイ。だが武蔵は首を左右に振った。

 

「正直こんな話をするのもどうかと思うが……オイラはあの時間違いなく死んだ。オイラはちゃんと覚えてる」

 

武蔵はそう言うと鳩尾に下に手を当て、目を伏せた。そして意を決した表情で言葉を続けた。

 

「こっから下、全部潰された。腕も、足も全部だ。イングラムさんは左半身が完全に潰れたって言ってたぜ」

 

即死は免れたかもしれない……それでも死を避けることが出来ない重傷だ。武蔵が自分の身体に手を当てたこともあり、潰れた姿を想像したの何人かの顔色が青くなった。

 

「待て待て待て、じゃあ何か? お前も死んでるのに生きてるって事か?」

 

「いや、ここら辺はオイラもイングラムさんも、カーウァイさんも本当によく判ってない。1回ためしに3人ともナイフを腕に刺したりして、血が流れるかどうかとか、痛いとかどうとか試したし」

 

「武蔵……お前そんなこともしてたのか?」

 

知らなかったというのをその顔に浮かべ、武蔵にそう尋ねるユーリア。武蔵は肩を竦めて、小さくすいませんねと謝ってから言葉を続ける。

 

「即死はしなかったとしても、絶対に死ぬって確信してたんですよ。だから何で生きてるんだって思ったら、こう刺してみるかって」

 

「普通そうは考えないぞ? 武蔵にしても、イングラム少佐にしてもだが……」

 

生きてるかどうかを確かめる為にナイフで刺すって言う発想は絶対に無いとライが言う。だが武蔵はそれだけ一杯一杯だったと苦笑した。

 

「これは連絡出来なかった事に繋がるんだけど……意識を失う寸前にオイラ達3人はある共通があった」

 

「共通点……それが武蔵が生きていると言うのと繋がってるのか?」

 

「はい。オイラ達は意識を失う前にゲッター線に包まれた……見た事も無いほどに透き通った、でも凄まじい力強さを持ったゲッター線で出来た海に落ちた……そして目が覚めたら怪我も治って、ゲッターロボのコックピットの中にいたんです」

 

「待ってくれ、頼むから待ってくれ武蔵。つうとなんだ、ゲッター線って言うのは死人を生き返らせる事も出来るって言うのか? 武蔵」

 

自分達の理解を超えていて、混乱している者が多い中カチーナがありえないだろ? という顔をしながら武蔵に問いかけた。

 

「死ぬ寸前で怪我を治されたとか、そういう可能性もあると思いますけど……オイラ達が生きているのはゲッター線が関係していると思いますよ。なんせ、オイラ達が目を覚ましたとき――3人とも旧西暦にいたんですから、しかも失われた時代って言ってたとんでもない時代のど真ん中ですよ」

 

連邦が語ることを禁じ、それまでの技術等を全て捨てたとされる失われた時代。正体不明の敵性存在に襲われ、地球人口の8割が死滅したと言う暗黒の時代――そこに武蔵達はいたと言うのだ。

 

「連絡出来なかったと言うのは過去にいたからということなのか……」

 

「ええ、流石に過去から未来に通信するとか無理でしょう? ダイテツさん」

 

監禁されていたとか、怪我をしていたとかではない。時間を越えていた為、物理的に通信が不可能だった。だから武蔵とイングラムは通信することが出来なかった。

 

「……頭が痛くなってきたんだけど……え? 武蔵とイングラム少佐って過去にいたの? しかも失われた時代のど真ん中?」

 

今もその時代を知ろうとすれば牢屋送りにされる――そんな暗黒時代にいたと言う武蔵。その言葉を最初信じられなかったエクセレンだが、武蔵の顔を見てそれが真実だと判ると絶句した。

 

「なんか知っちゃうとやばいらしいですけど……何があったか聞きたいですか? 不味いって言うなら止めますけど……」

 

連邦に所属しているリュウセイ達が知ると不味い内容なら言わないと言った武蔵。だがこうして話を切り出してきたと言う事は、少なくとも何か今の情勢に関係する内容だとダイテツとリーは感じた。

 

「続けてくれ。リー中佐もそれで良いな?」

 

「ええ。問題ありません、続けてくれるか?」

 

ダイテツとリーというこの場の最高責任者2人に許可を得た武蔵は話を続ける。

 

「失われた時代って言うのはオイラが恐竜帝国に特攻してから20年くらい経った後だった」

 

20年――それは決して長くは無いが、短くはない。そして武蔵の懐かしそうな顔を見れば、そこで誰に出会ったのかというのは容易に想像出来た。

 

「……仲間に会えたか?」

 

「おう。竜馬に隼人、オイラの変わりにゲッターに乗ってくれた弁慶。皆オイラより年上だったけど、全然変わってないでやんの……年取ってるんだからもっと落ち着いてろよって思わず思ったもんさ」

 

掌に拳を打ち付けながら呆れたように言う武蔵だが、その顔は本当に嬉しそうな顔だった。

 

「んでだ。そこでは化け物が闊歩してた、動物も、人間も、機械も何もかもに寄生する化けもんだ。この中だと……リュウセイやカチーナさん達が見ているはずだ」

 

「あの全身に目玉があるトカゲの化け物?」

 

「おう、そいつだ。インベーダーっつう化け物なんだが、そいつらが地球を埋め尽くさんばかりに増えていてな。酷い有様だった……これ

一応写真を撮っておいたんだが、こんなかんじだ」

 

ハガネから武蔵に貸し出していたDコンが机の上に差し出され、リュウセイ達はその端末を覗き込んだ。

 

「マジかよ……」

 

「おいおい……こんなのアニメとか映画の世界だろうが」

 

「……確かにこんな有様では地球政府が失われた時代として封印するのも納得だな」

 

空は漆黒の雲で覆われ、時折翡翠の光が走り、大地は荒廃し砂しか存在しなかった。地球という存在が死んでいる……そう思わせるほどの凄惨な光景だった。

 

「インベーダーっつうのか、あの化け物は……アインストとは……あ、武蔵はアインストを「知ってますよ。旧西暦の後はこの時代の未来でアインストとインベーダーと戦ってましたから」……あのよ? こんな事言うのなんだけどよ? お前呪われてね?」「……イングラムさんは俺かもしれんって言ってました」

 

旧西暦で化け物と戦って、その後は今カチーナ達が生きている時代の未来でも化け物と戦っていたと聞いてカチーナが思わず呪われてるんじゃないか? と尋ねると武蔵はイングラムが呪われてるかもしれないと告げた。

 

「いや、なんでそこで教官が出てくるんだ?」

 

「いや、オイラもよく判らんのだけどな? イングラムさんはそう言ってた。なんか思い当たる節はあるんだろうな」

 

なんでだよっとリュウセイは呟くが、武蔵も詳しい理由は判らないので、イングラム本人に聞くしかない。ちなみに言うと、この映像は武蔵達の話を聞いてビアンがシミュレートした物で、厳密には旧西暦物とは少し違うのだが……かなり真に迫っていると3人とも認め、それを証拠の映像の1つとしてビアンがDコンにインストールした物だ。

 

「それでこの時代の未来と言っていたが、この後どうなるか知っているのか?」

 

「あーすんません、ちょっと違うのかな? エアロゲイターが最初に襲撃してきましたよね? オイラ達がいた未来は、インスペクターって言う――今ホワイトスターを制圧してる異星人が先に現れたえっと……なんでしたっけ?」

 

「平行世界だ。エアロゲイターか、インスペクターか先かという分岐世界らしい」

 

「そうそう、その平行世界っていう奴なんで詳しいことは判りませんけど、とにかく1つだけ言える事がありますね。イージスシステム? とか言うバリアをはるとインベーダーとアインストが大量出現して地球滅びます」

 

「……本当か?」

 

今ブライアン大統領が主軸になって計画しているバリア。それを発動させると地球が滅びると言われ、テツヤは引き攣った顔で武蔵に尋ねる。

 

「こんな感じになります」

 

武蔵がDコンを操作して差し出す。そこにはゲシュペンストや、ヒュッケバインの残骸が転がっており、アインストとインベーダーが戦っていた。

 

「「「「地獄絵図じゃないか」」」」

 

旧西暦の滅んだ世界より酷いありさまだった。化け物同士が争い、そして地球はボロボロに成り果てていた。その光景は誰がどう見ても地獄としか言い様のない光景だった。

 

「まぁ平行世界らしいんで、確実とは言えないですけど……かなり信憑性はあると思います。アインストもインベーダーもなんとかしないと大変な事になるってことは確実です」

 

地球圏に出現したインスペクター、そしてアインスト、インベーダー……過去の地球を1度滅ぼした悪魔、そして平行世界とは言え、新西暦の地球を支配した異星人、そしてインベーダーと覇権を争い、地球を破壊しつくしていたアインスト――どれか1つでも地球を滅ぼしかねない存在が同時に、しかもそれに加えて百鬼帝国までもが地球を狙っている。武蔵から与えられた情報――それはリュウセイ達が思う以上に地球に窮地に追い込まれていると言うものなのだった……。

 

 

第64話 偽りの神聖十字軍 その2へ続く

 

 

 




次回は武蔵の話を聞いたダイテツとリーの話と、クロガネ、ライノセラスでのビアン達の話、そして最後に百鬼帝国による偽りの神聖十字軍の決起の演説の話と続けて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

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