第67話 亡国の姫君 その2
武蔵とブリットの組み手の映像を解析し、対斬艦刀に対するモーションデータを組み上げている時に、格納庫にイルムが駆け込んできた。
「スクランブルが掛かるぞ! 作業は止めて出撃準備に入れッ! リクセント公国の部隊からの救助要請だッ!」
リクセント公国からの救助要請と聞いて、武蔵とラトゥーニがその顔を上げた。
「え? リクセント公国から……ッ!?」
「イルムさん! 状況はどうなっているんですかッ!?」
ラトゥーニと武蔵に詰め寄られ、イルムは少し驚いた顔をしたが、すぐに自分が得た情報を武蔵達に話す。
「ああ。 敵に追われて、こっちへ逃げて来ている機体をキャッチしたらしい……しかも百鬼獣らしい反応も感知されている」
百鬼獣の名前を聞いて武蔵は弾かれたようにゲットマシンに向かって走る。
「武蔵! 1人で行くつもりか! 少し待てッ!」
どれだけの敵がいるのかも判らない中。1人で出撃するのは危険だとカイが叫んだ。すると武蔵は少し減速して、振り返った。
「すんませんね、オイラは1人でも行きますよ。助けるって約束してるから、1回オイラは約束を破った。2度は破れないんですよッ!!!」
再び走り出した武蔵は今度は振り返ること無くゲットマシンに乗り込んだ。
『ゲットマシンで出るぞ! 巻き込まれたくなかったら退避してくれッ!!』
スピーカーによる武蔵の声にリュウセイ達は慌てて気密室に退避し、格納庫が解放されると同時にゲットマシンが凄まじい轟音を響かせて飛び出して行った。
「カイ少佐ッ!」
「……ああっくそッ! 判ってるからそんなに必死そうな目で俺を見るなッ! エクセレン達が月から持ってきた改良型のビルドラプターの組み上げが完了してる、ラトゥーニ。お前が使え!」
デザートスコール作戦で降下してきたエクセレン達はマオ社で受け取ったアルトアイゼンの強化パーツや、分解された状態のビルドラプター等をシロガネに積み込んでいた。ムータ基地の段階では組み上げが完了していなかった為、戦場に投入出来なかった。だが停泊している間に組み立てが完了し、最終調整に入っているビルドラプター・改ならば、相当な速度が出るとカイは判断し、ラトゥーニに使うように命じた。
「了解っ!」
気密室を飛び出し、整備兵の元に走っていくラトゥーニ。その姿に深い溜め息を吐き、出撃の為の指示を出そうとするカイだったが……口を開くより先にライがカイに視線を向けた。
「カイ少佐。私も」
「……ええい! どいつもこいつもッ! 後で始末書を忘れるなよ! ライッ!」
「了解ッ!」
敬礼しラトゥーニの後を追っていくライ。その姿にリュウセイ達が呆然としているとカイの怒号が飛んだ。
「何を呆けている! シャイン王女の救出が最優先だ! 出撃準備を急げッ!」
「「「「りょ、了解!!」」」」
その凄まじい剣幕にリュウセイ達は慌てて敬礼を返し、それぞれの搭乗機へと向かい、エキドナと話をしようと思っていたのだがスクランブルで戻って来たラミアは今のやり取りを見て内心あきれ返っていた。
(感情に流されすぎだ。この状況下で……この者達はいつもこうだ)
周りに友軍はおらず、敗走しているこの状況を考えれば、リクセントの部隊の救助に向かわず、本隊と合流する事を最優先するのが最善の選択だ。それなのに自ら窮地に飛び込んでいくリュウセイ達はラミアには理解出来なかった。
(だが、相互にフォローを行い……部隊としては高いレベルで機能している……考えられん事だな)
感情的で、冷静に物を考える事が出来ない。それは兵士としては致命的だ、それなのに1部隊として成立し、しかもそれが高い水準で機能している。それがラミアには理解出来なかった……何故? どうしてそんなに自分達が不利になりかねない事をするのか? それが理解出来なかった。
(エキドナ……お前なら、私に賛同してくれただろうか?)
記憶喪失になっているエキドナだが、もしも彼女が記憶を失っていなければ自分に賛同してくれていただろうか? そんなことを考えながらラミアはアンジュルグの起動を始めた。だが彼女もまた、自分が変わり始めていることに気付いていなかった……W-16ではなく、自然にエキドナの名前を呼んでいる事に……それがW-17ではなく、ラミア・ラヴレスという1人の人間に自分がなろうとし始めているという事にラミアは気付くことが無いのだった……。
海上をボロボロになりながらリオン、そしてシュヴェールト改の編隊が進む、部隊の中央に配置されたリオンを守りながら飛ぶシュヴェールト改に向かって背後から無数にビームや実弾が放たれる。
『ぐあっ!? くそッ!!!』
『まだだ! なんとしても姫様をッ!!』
機体の表面を通過するビーム、実弾にバランスを崩しながらもシュヴェールト改はリオンを守る為に必死に飛び続ける。
『こちらルーメン4ッ! 自分がここで盾になります! ルーメン1、ルーメン3は隊長の護衛をッ!!』
1番損傷が酷いシュヴェールト改から若い兵士の決死の覚悟を秘めた言葉が響いた。
『馬鹿をいえ! ルーメン4ッ! 殿なら俺がやるッ!』
『お前はまだ二十歳になったばかりだろうがッ! こんな所で死ぬなんて思うなッ!』
ルーメン1、3から響いた壮年の男性の声にルーメン4のパイロットは小さく笑って、咳き込んだ。通信機越しに響いた粘着質な音に全員がその顔を歪めた。
『……そのお言葉は嬉しいですが……コックピットの内装が腹に……刺さってましてね。どうせ死ぬのならば……姫様の盾になりたいのです……ごほっ! げほっ!!……はぁ……はぁ……さ、最後まで痩せ我慢もできなくて……申し訳ありません』
最後までルーメン4は自分の重症の事を言うつもりはなかった。だが仲間からの温かい言葉に、僅かに気が緩み。痛みを、苦しみを吐き出してしまった。
「ルーメン1、ルーメン3、ルーメン4を牽引してこの場を離脱してください」
『『『姫様ッ!?』』』
やりとりをリオンのサブパイロットシートで聞いていたシャインが通信に割り込み、この場を離脱するように言う。その言葉にルーメン1、3、4のパイロットが声を上げた。
「死んではなりません、まだリクセントの民は皆私の守るべき民。私の為に死んではなりません」
『ひ、姫様! じ、自分は! 自分は最後まで貴女を……』
「……今まで私を守ってくれて嬉しく思います、ルーメン4……いえ、フランシス」
自分の名前をシャインが知っていた。その事にルーメン4は驚きを隠せなかった。
「ルーメン1……ジョセフ、ルーメン3 カーター……私は大丈夫です。フランシスをお願いします。貴方方も限界でしょう」
ここまで逃げる中で何機も撃墜された。その中でジョセフとカーターの機体も少なくない損傷を受けていた……だが、自分の娘に近い年齢のシャインに逃げろと言われて、はいそうですかと受け入れられる訳がなかった。
「お互い生きていれば、また会える日も来ちゃったり……いえ、来ることでしょう……さ、早く脱出なさいませ。これは命令ですわ」
幼くとも1国を治めて来たシャインの有無を言わさないその強い口調にジョセフ達は何も言えず、唇を強く噛み締めシャインの無事を祈りその場から離脱して行った。
「マルコ、貴方と私だけになってしまいましたが……お願いします。何としても国外まで……私を逃がしてくれた ジョイスや衛兵達の気持ちに報いる為にも……私の国をノイエDCから取り戻す為にも……! なんとしても国外までお願いします」
泣きそうになりながらもシャインは涙を堪え、リオンのパイロットにそう訴える。
「お任せください、このマルコ……必ずや貴女の命令を果たしますッ!!」
背後から追ってきた戦闘機……4機のソルプレッサと2機の百鬼獣――状況は絶望的、それでもマルコは己を奮い立たせ、リオンを操る操縦桿を強く握り締めた。その時だった、何かを感じ取ったシャインの顔から悲壮感が消えた。
「マルコ、進路は南東へ、大丈夫です。私達は助かります」
震えているマルコの肩に手を当てて、シャインは南東の山を指差した。
「も、もしや、姫様……ッ!?」
シャインの持つ予知能力――それが発動したのだとマルコは気付いた。そしてシャインも満面の笑みを浮かべた、それは一国を治める姫ではない、歳相応の少女が浮かべる笑みだった。
「ええ、助けが来ます……! そんな予感が……ううん、確信がしますのッ!」
その顔を見れば誰が助けに来るのか、マルコでも察する事が出来た。この華のような笑みを浮かばせることが出来る人間は1人しかいない……それはリクセントに住む誰もが知っている。
「しっかり掴まっていてください! 必ずお守りしますッ!!」
雄叫びを上げる百鬼獣。その殺気にさっきまでのマルコならば動けなくなっていた。だが今は絶対にシャインを守るのだと強い意思に支えられ、操縦桿を強く握り締め、ペダルの上に足を乗せ追っ手を振り切るためにリオンを操るのだった……。
ソルプレッサ4機と試験的にテスラドライブを装備した白骨鬼と飛龍鬼の2機が加わり、計6機の追っ手から死に物狂いで逃げているリオンを見て、アーチボルドは笑いを抑える事が出来なかった。
(……ああ、なんて面白いんですか)
その気になれば白骨鬼と飛龍鬼は一瞬でリオンを確保する事も出来る。だが旧式のリオン相手では下手をすればシャインごと殺してしまう……それがあるから威嚇射撃などに留まっているが、その威嚇射撃も掠っただけでリオンを粉砕しかねないレベルの物だ。シャイン王女をコックピットに匿っているパイロットが相当精神をすり減らしている事が容易に想像でき、更に言えば恐怖に身を縮めているシャイン王女を想像するだけでアーチボルドは自分が感じていたフラストレーションが発散されるのを感じていた。
『アーチボルド、ガーリオンやアーマリオンはまだか?』
「……どうも出撃に手間取っているようですね。こればっかりは何とも」
三角鬼からの捕獲要員はまだ来ないのか? という言葉にアーチボルドは肩を竦めて、自分も計算外なんですよ? と言わんばかりの返事を返した。だが実際はアーチボルド自身が楽しむ為に部下への出撃時間を遅らせるように命じていた、後10分はこの場には現れないはずだ。
『必要以上に恐怖を与える必要はないはずだ』
「別に僕のせいではありませんよ。早く確保しろというのならば僕が動きますが……どうしますかね?」
アーチボルドの言葉に三角鬼は何も言えない。アーチボルドという男の気質を知っていれば、捕獲を命じられる訳がない。アーチボルドはそれが判っているからエルシュナイデのコックピットの中でほくそ笑んだ。
「大丈夫ですよ。もう少しで援軍も来ますからね、僕達はソルプレッサの皆が捕獲してくれるのをのんびりと待ちましょう」
無言で通信をきる三角鬼に鬼の癖にと内心嘲笑いながらアーチボルドは逃走を続けるリオンを見つめていた。
(ふふ、全部僕の計算通りですしね)
ソルプレッサに捕獲用の装備などはない、元から装備をさせていないのだ。それに逃げ切れるかもしれないという希望を抱かせ、その瞬間にブースト・ドライブで組み付いて、バルカンで撃墜し、そこを白骨鬼に回収させる算段をアーチボルドは立てていた。
「んん?」
撃墜された時の悲鳴、そして助かるかもしれないと言う希望を抱かせてからの絶望――その時にパイロットとシャインがどんな顔をしているかと想像し、悦に入っていたアーチボルドはこの時ある事に気付いた。ソルプレッサに回り込まれても、それを回避し執拗に南東を目指しているリオンの姿にアーチボルドは不信感を抱いた。
(はて、おかしいですね)
本来この近辺にいる連邦軍はさっさと撤退している。なんせシャイン王女によって左遷された部隊だ、リクセントからの脱出部隊の救助に何て動く訳がない。だからこそ、こうして悠々と狩りにアーチボルドは出てきたのだ。
(……連邦が集まっているのはポイントは南東ではないはず……)
アビアノ基地とは違う方面だし、何よりも連邦が撤退している方角とも違う……。
「あーあー、第12陸戦部隊聞こえますかな? 南東方面に敵影はありますか?」
周囲を占拠している陸戦部隊に敵影を補足しているかと問いかけるアーチボルド、すぐに陸戦部隊の監視兵から通信が入る。
『いえ、それらしい敵影は感知しておりません。連邦部隊はアビアノ基地を目指し移動中ですから、こちらへは来ておりません』
「ですよねえ……ありがとうございます。そのまま周囲の警戒を続けてください」
そもそも今の連邦軍にリクセントからの脱出部隊を救助する余力はない筈だ。それに反連邦的な発言を繰り返すシャインを助ける訳がない……だからこそ、南東を目指して逃走を続けているリオンにアーチボルドは不信感を抱いた。
「三角鬼さんはどう思いますか? 僕はプリンセス・シャインが予知をしていると思っているんですけど」
『……確かに気になるな。シャイン王女があのリオンに乗っているのならば……例の予知能力と言うものだろう』
予知能力で何かを感じていると考えると面倒な事になる。南東の方角に何があるのか……アーチボルドは少し考えてから三角鬼にある提案をした。
「空戦鬼から百鬼獣を出してくれませんかね? 逃げ切られると面倒ですし、周囲を囲んで降伏勧告をしましょう。僕としては撃墜してもいいんですが……貴方の性格を考えるとそれも嫌でしょう?」
『良いだろう。すぐに呼ぼう』
アーチボルドにやらせるくらいならばと三角鬼は百鬼獣を呼び寄せる決断を下した。
(もう少し楽しみたい所でしたが……ま、しょうがありませんねえ)
もっと恐怖を与えて、追い回したい所だったアーチボルドだが、自分の趣味を優先して失敗してはまた自分の評価が下がるとぐっと己の欲求を押さえ込んだ。
(大物が来てくれてもいいですが、それはあくまでプリンセス・シャインを確保してからですからねえ)
この状況でもし救助が来るとすればハガネかシロガネ、もしくはその両方だとアーチボルドは考えていた。あのお人よし達ならば、シャインを人質にすれば何もできずに嬲り殺しに出来る……そのためにまずはシャインの確保をアーチボルドは優先した。
「「「「シャアアッ!!!」」」」
『なっ!?』
上空から急降下してきた百鬼獣に囲まれ、驚愕の声を上げるリオンのパイロットの声、完全に囲まれてもう逃げられないと言うのはパイロットも悟った筈だ。アーチボルドが完全勝利を確信し、降伏勧告を告げようとした瞬間凄まじい怒号が周囲に響いた。
『ダブルトマホーク……ブゥゥウウウウメランッ!!!!!』
上空から飛来した何かが百鬼獣を胴体部から両断する。そしてその直後上空から急降下した紅い影がリオンを爆発から庇った、爆煙の中でも見えるその真紅の巨神にアーチボルドは深い溜め息を吐いた。
「大物が過ぎるでしょう? やれやれ、僕は運は良い筈だったんですけどねえ……」
カメラアイを輝かせる真紅の龍神……ゲッターD2の登場にアーチボルドは思わず呪われているんでしょうかねえと呟くのだった。
気丈に振舞っていたが、シャインだって恐怖に今にも泣き出してしまいたかった。自分の国をノイエDC……そして百鬼帝国に制圧され、自分を此処まで逃がす為に様々な者が犠牲になった。
(泣いては……泣いては駄目)
脱出する姿は見えていた。それでも、脱出する場所が悪ければ当然死んでしまうし、破壊された機体の破片等で怪我をしている可能性もある。自分を守る為に命を落とす者がいる……それがシャインには何よりも辛かった。
(なんで……どうして)
今まで窮地の度にハウゼン家に伝わる予知は自分を助けてくれていた。だが今回は自分を助けてはくれなかった……ジョイスや、城の近衛兵達によってマルコの操るリオンに押し込まれ、脱出させられた時もシャインが生きていれば、リクセントは復興出来る。だから生き延びてくれと言われて脱出させられた。
(駄目……駄目……)
自分の為に命を落としたかもしれない兵士達の名前と顔がシャインの脳裏に浮かんでは消え、浮かんでは消え、涙が溢れそうになった。それでも自分はリクセントの王女なのだと、泣いてはいけないと自分に言い聞かせていた……だがその悲壮なまでの決意はリオンのモニターいっぱいに広がる真紅の影と、戦場に響いた声にあっけなく崩された。
「あああ……あああッ」
言葉にならないほどの感動と喜びがシャインの胸を埋め尽くし、今まで泣くのを堪えていたシャインの目から涙を溢れさせた。
『助けに来たぜッ! シャインちゃんッ!』
「武蔵様ぁッ!」
その声が届かないと判っていても、シャインはリオンのコックピットの中で武蔵の名を叫んだ。前に百鬼帝国の襲撃を受けた時も、公に姿を見せる事は出来ないからと顔を隠してでも武蔵は自分を助けに来てくれた。DC戦争の時はアードラーに囚われ、ゲッターロボGに組み込まれた時も武蔵は助けに来てくれた……その時からずっと武蔵はシャインにとっての王子様なのだ。
「姫様……良かったですね」
「マルコ……はい……ごめんなさい、貴方も命を掛けて守ってくれたのに……」
「いえ、お気になさらず。姫様のお気持ちは私も、いえ、リクセントの皆が判っております」
「え、あ……その」
頬を赤らめ、目を逸らすシャイン。その姿は歳相応の少女であり、一国の女王ではなく、1人の恋する乙女だった。その微笑ましい光景に思わず笑いそうになるマルコだが、凄まじい数の百鬼獣とAMが姿を見せ浮かびかけた笑顔が一気に凍りついた。
『ゲッターロボ……なるほど、お前が巴武蔵か……助けに来たと言うが1人で来るとは蛮勇が過ぎるんじゃないか?』
如何にゲッターロボが強かろうがリオンを守りながら戦える数ではない。その光景を見てシャインは自分のせいで武蔵が窮地に追い込まれたと思い、赤らんでいた顔から血の気が引いた。
『またお会いしまたね。ミイラ男君? ああ、武蔵君でしたね。失敬失敬、どうです? 今度こそ僕達の所に来ませんかね? 悪いようにはしませんよ?』
数の差による自分達の圧倒的な有利性を鼻に掛け、アーチボルドが武蔵に降伏勧告をするが武蔵はそれを鼻で笑った。
『あ? 何言ってやがる腐れ外道、女の子をこんな大勢で追い回しやがって、てめえら許しちゃおけねえなぁッ!!! シャインちゃんが怖がった分てめえらにも味わわせてやるよ……ゲッターロボの恐ろしさをなぁッ!!!』
その手にした両刃の斧を打ち合わせるゲッターD2と武蔵の気迫にAMのパイロット達は完全に飲み込まれ、無意識に後ずさった。
『やれやれ熱いですねえ、ですが気持ちだけでこれだけの数を引っくり返せると? 僕達は君を倒す必要が無いのですよ? お1人でこれだけの数からシャイン王女を守れると本気で思っているのですか?』
アーチボルドの言うことは正論だ。武蔵はシャインを守る必要があり、派手に動く事が出来ない。そうなればゲッターの移動力も攻撃力も
生かせず、むしろ巨大さとその攻撃力ゆえに完全に動きを封じられてしまう。それが判っているからこそのアーチボルドの降伏勧告だったが、武蔵はアーチボルドと三角鬼の言葉に馬鹿がと吐き捨てた。
『オイラが何時1人で来たって言った? オイラはシャインちゃんの救助と、てめえらの目を引き寄せる囮だ』
武蔵がそう嘲笑った瞬間戦艦の主砲がゲッターD2を取り囲んでいる百鬼獣とAMを薙ぎ払い、包囲網を完全に瓦解させた。
『散れッ!!! ぐっ!?』
『あぐっ!? 馬鹿な、警備隊は何をッ!?』
三角鬼の警告で撃墜されることは間逃れたが、それでも少なくないダメージを受けたアーチボルドは警戒に当てていた陸戦部隊はどうしたのだと声を上げた。その視線に先には悠然とこの空域に侵入してくるハガネとシロガネの2隻のスペースノア級――そしてハガネとシロガネのPT隊の姿があった。
『シャイン王女! 無事ですか!?』
『武蔵! 間に合ったか!?』
R-2から響いたライディースの声とラトゥーニの声――それだけではなく、DC戦争の時に顔を合わせたハガネとシロガネのPTのパイロット達からの安否を気遣う声がリオンに響き続ける。
『あっちに合流しな。ここはオイラが食い止める』
「む、武蔵様……ですが……」
主砲で散らされたとは言え、まだ敵の数は健在だ。1人では無理だとシャインが武蔵に声を掛ける、だが武蔵は大丈夫だと豪快に笑った。
『大丈夫だ。シャインちゃんには指一本触れさせねえよ、それにオイラがあんな奴らに負けると思うか?』
蝙蝠を思わせる翼を広げ、両手に斧を持つその姿は禍々しさもあったが、それと同時に凄まじい力強さと一種の神聖さの様な物を兼ね備えていた。
「い、いえ、思いませんわ」
武蔵だけを残し、ハガネと合流する事を渋っていたシャインだが、武蔵とゲッターロボが非道なテロリストと醜悪な百鬼獣に負ける姿が想像出来ないと即座に返事を返す。
『だろ? だから大丈夫さ、リオンのパイロットさんよ、シャインちゃんを無事にハガネまで送り届けてくれよ』
武蔵はシャインから聞きたかった言葉が聞けたと言わんばかりに笑い、マルコにシャインをハガネまで送り届けるよう口にする。
「あ、ああ。判った、姫様。行きますよ」
武蔵に言われ、マルコはペダルをゆっくりと踏み込み徐々にゲッターD2から距離を取る。
「武蔵様」
『だから様付けはいいって、なんだ? シャインちゃん』
「……お気をつけて……」
『おう、大丈夫さ。今度はちゃんとミイラ男じゃなくて、顔を見せて会おうな』
「はい、マルコ……行ってください」
武蔵に激励の言葉を口にし、通信は切られリオンはハガネに向かって飛んだ。その後を追って、百鬼獣が動き出すが、一歩踏み込んだ瞬間にダブルトマホークでバラバラで切り刻まれた。
『おっと、ここを通りたかったらオイラを倒していくんだなあッ!!!』
(武蔵様……お気をつけて……)
武蔵の力強い雄叫びを後ろに聞きながら、シャインは胸の前で手を組んで武蔵の無事を祈るのだった……。
第68話 亡国の姫君 その3へ続く
いい区切りだったので今回は此処までです。シャイン王女のヒロイン力が凄い事になってますが……大丈夫、多分……大丈夫ですよね? 次回は戦闘を書いて行こうと思いますが、武蔵を1度分断させて、陸上と海中での戦闘見たいに書いて行こうと思います。新西暦の海でのポセイドンの初陣ですね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
PS
やはり武蔵艦長は駄目だな、今作の武蔵はどう足掻いてもあのルートに進化しそうにないなあ……。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い