第19話 シミュレーター
「バレリオン部隊がハガネに敗れたようだな。アードラー」
「も、申し訳ございません。しかし、実戦での問題点をいくつか発見しましたので、改善を行います」
身体を小さくさせて謝るアードラー。だがビアンはアードラーではハガネを沈める事は出来ないと確信していた。だからこそ、アードラーのこの報告は予想の範囲を出る事は無い。
「ふふふふ。あの艦はまだまだ強くなる。生半可な方法で沈める事は出来んぞ、旧西暦の人類の守護者までいるのだからな」
ビアンの言葉にアードラーは一瞬憎悪を剥き出しの表情で睨みつけるが、ビアンが自分の顔を見ていることを気付きすぐに表情を変える。
「で、では! ハガネへの再攻撃命令を出してくれるのでしょうか?」
「よかろう。次の作戦が始まるまではお前の好きにさせよう」
どうせ無理だろうがなと心の中で呟き、ビアンは司令室を後にする。自動ドアが閉まるとアードラーの怒声が聞こえてきて、やはりアードラーには無理だなと確信した。
「少しばかり趣味が悪いと思いますよ。ビアン総帥」
「ふっ、仕方あるまい。流石の私も興奮しているからな」
シュウはビアンの言葉に笑みを浮かべる。ビアンが興奮していると言うのは地球征服が近いからでも、連邦の本拠地のジュネーブの制圧が近いからでも無い。ハガネが赤道を超え、アイドネウス島に近づいている事が嬉しくて仕方なかったのだ。
「連邦に送りつけた恐竜帝国とやらの話はどうなりました?」
「……ありもしない物として握り潰された。やはり今の連邦は駄目だ」
恐竜帝国とメカザウルスの戦闘データを送りつけたが、国民への発表は無い。もみ消す事は判っていたが、やはり今の政府への失望は隠しきれない。今はまだ日本国土を襲撃していないが、それも時間の問題だ。早い段階で防衛を固めるべきだと言うのに、政府はそれをまるで理解していない。
「ビアン博士。これは頼まれていた物です」
「……早かったな。助かる」
シュウが差し出した紙を受け取るビアン。そこには複数のパスワードがメモされていた……しかしその数と複雑さは凄まじいと言わざるを得ない。
「いきなり政府のデータベースに浸入したいと言うから何事かと思いましたよ」
「……少し気になる事があってな」
メカザウルス、恐竜帝国の事を政府に告げたビアン。しかし政府高官は発表するつもりは無いと口にした後。無意識だろうが、早乙女と呟いたのだ。勿論直ぐに映像は途絶えたが、ビアンの考えていたゲッターロボと武蔵が平行世界から訪れたというのは間違いだった可能性が浮上した。ならばそれについて知る必要があるがパスワードを調べている時間が無いので、シュウに依頼したのだ。
「ゲッターロボですか、私も少し見てみるとしましょうか。顔見知りもいることですし」
「……好きにするが良い。だがやりすぎるなよ」
ビアンの言葉にシュウは判っていますよと返事を返すが、その笑みは邪悪とも言える物でビアンは本当に判っているのか? と不安になったが、それを口にすることは無く私室へと引き返した。
「さてと……蛇が出るか……それとも鬼が出るか」
DCのコンピューターとも繋がりの無い、本当にビアン専用のPC。今設計段階のダイナミック・ゼネラル・ガーディアン……などの数多の極秘研究のデータだけが収められたPCを操作し、シュウが調べてきたパスワードで厳重なセキリュティを突破していく……EOTI機関の総帥としても、テスラ・ライヒの所長としても知る事が出来なかった政府のデーターベースの奥の奥……そこに収められている。最後のセキュリテイを解除する
「……これは……」
モニターに浮かんだのはハザードマーク。そして画面が切り替わり、旧西暦のデータベースが表示される。そこに確かに早乙女研究所、そしてゲッターロボの名前は刻まれていた……
「どういう……事だ!?」
ビアンは混乱した。何故なら、そこに記されていたのは早乙女の乱、量産型ゲッターロボGによる宣戦布告を初めとした武蔵の話とは余りにも異なる早乙女博士の像。そしてゲッター1とは似ても似つかない数多のゲッターロボの姿……
「不確定の宇宙生命体の来襲……地球全体の8割の生命の死滅……ゲッター線による地球全土の汚染……馬鹿な……これはどういう事なんだ……」
読み進めれば進めるほどに新しい情報が出てくる。それは自分の常識が覆された瞬間であった、メテオ1事件の時に既にゲッターはこの世界に現れていたのだ。
「メテオ1落下時にこんな物が現れていたのか……ッ!?」
浅間山に現れた朽ち果てた研究所の一部。その中に早乙女研究所、そして過去で起きた事件の資料が眠っていたらしい、そして最も信じられなかった物……それはジュネーブの地下深くに封印されている存在……
「早乙女研究所の研究データのバックアップと回収されたゲッターロボ……」
地球政府が隠し続けていたゲッター線。それを地球政府が把握していると言う事実……だが武蔵の話とは余りにも食い違う記録……
「平行世界であることはあっていたが、まさか更にそこが分裂していると言うのか……」
平行世界であるのか、それとも過去が間違って記録されているのか……ビアンの優秀な頭脳でも判断がつかなかった。それを知る為にはジュネーブの地下深くに封印されている研究データ……それを手にする必要があるのだった。
ビアンが政府によって隠されていたゲッターの真実にその手を伸ばしている頃。武蔵はと言うとハガネのデータ解析室にいた
「どうだろうか? 大分良い感じだと思うが?」
「いや、全然駄目」
ロブの言葉に武蔵は即座に首を振る。ロブのゲッターの分析データによって作成されたゲッターのシミュレーター……これによりゲッターに乗れるパイロットを見つけようと言う物だった。だが武蔵は被っていたデータ取りのヘルメットを外して座席から立つ。
「最低でもこの20倍は必要かな」
「……に、20倍か……そんなに駄目か?」
ロブが引き攣った表情を見て武蔵は慌てて、でもでもと口にする。
「身体に掛かる感じとかは全然駄目だけど、合体の所は凄く良い感じだった。身体に掛かる衝撃さえ完璧なら本当言う事なしッ!」
慌ててそうフォローする武蔵にロブは小さく笑い、勢いよく手を叩く
「よし! 分かったッ! どうせシミュレーターだッ! 武蔵の言う通りにしてみるよッ!」
生半可なシミュレーターでは駄目と分かったロブは気合を入れた表情で再びPCの操作を始める。武蔵はその様子を隣に座って見つめながら、さっきの光景の事を尋ねてみる事にした。
「アヤさんがなんか苦しそうにしていたけど、大丈夫なのか?」
自分の前にデータ解析室にいたアヤの様子が気になり、ロブなら知っていると思いそう問いかける武蔵。
「……あれか、アヤは念動力って言う超能力を使える人間なんだ」
ロブの言葉に武蔵は超能力? と尋ね返す。恐竜帝国という人智を越えた存在と戦っていても、超能力は未知数だったのかと思いロブは笑う。
「大尉の機体にはその超能力を受けて作用する部品が搭載されているんだが、大尉にも負担を掛けるんだよ」
「……調子悪くなるなら使わなければ良いのに」
「そうも言ってられないんだよ。よし、出来た。行こう、武蔵」
設定を終えた所で武蔵に声を掛けるロブ。武蔵は今自分が座っていたシミュレーターを指差して
「あれじゃないんですか?」
「ああ、あれは試作用に作っただけだからな、ハガネのシミュレーションルームで最終調整したいんだ」
ロブの言葉に武蔵はそういう物かと呟く、だが早乙女研究所にもシミュレーターはあった。自分が知らないだけで、早乙女博士もそう言う調整をしていたのかと納得する事にした。
「それでだ。悪いんだが、俺はやる事があるからそれを済ませてからシミュレーションルームに向かう。中尉がいるから、それを設定して
貰って試していて欲しい」
「……中尉って誰ですか?」
武蔵の言葉にロブはすまないと謝る。武蔵は軍人では無いので階級で言われてもわからないのは当然だ
「イルムガルト中尉だ。判るだろ?」
「イルムさんか、それなら判ります。じゃあ預かりますね」
ロブの差し出したデータディスクを受け取り、武蔵はシミュレーションルームに走る。ロブはその姿を見つめ、微笑んでいたが武蔵の姿が見えなくなると険しい顔付きで仕官用の部屋に足を向けた。
「イングラム少佐。話があります」
ゆっくりと扉が開き、イングラムはロブを部屋の中へと招きいれた
「調整作業を中止しろと?」
「そうだ。今のアヤにとって、ハイレベルでのT-LINKコンタクトは負担となっている、伊豆ならともかく、ハガネの艦内でテストを続けるのは止めた方がいい」
武蔵にはそうも言ってられないと言っていたロブだが、やはり納得できない物があるようでイングラムへと直談判へと訪れたのだが……イングラムはロブの話を聞いた上できっぱりとした口調で告げた。
「その申し出は却下する」
「何故だ? 本格的な調整は今回の作戦が終わってからでもいいだろう?」
「そういう訳にも行かんのだ、今は出航前とは状況が違う」
その言葉にロブは眉を顰める。その理由はDCだけではなく、メカザウルスと恐竜帝国という脅威が現れたのが理由だろう。
「だが、このままでは彼女は……」
「それは本人も覚悟の上だ」
情に訴えても駄目、しかも本人が望んでいると言われればロブもそれ以上は言えない。以前のロブならばそれで引いていたが、今回は違っていた。
「少しでもいい、アヤの調子を考えて欲しい。でなければ、俺にも考えがある」
懐からディスクを取り出しながら告げる。イングラムはそのディスクに視線を向ける、それがなんなのかは言わなくても判っているのだろう
「……ゲッターロボの更なる分析結果か……」
「これが必要なのは判っています、分析結果はここにしかありません、返答によっては俺にも考えがある」
ゲッターの分析結果を盾にした脅し……イングラムは少し考える素振りを見せた後に頷く
「判った。だがDCだけではなく、メカザウルス、恐竜帝国の事もある。無理なスケジュールでの調整はやめることだけは約束しよう」
イングラムの言葉を聞いたロブは机の上にディスクを置き、イングラムに背を向ける
「失礼な事を口にしたことは謝罪いたします。申し訳ありませんでした、シミュレーションルームにゲットマシンのシミュレーターの配置も行いますので少佐も1度お越しください」
敬礼し出て行くロブをイングラムは鋭い視線で見つめているのだった……
ハガネのシミュレーションルームに配置されたやけに古めかしいシミュレーターが3つ。PTのシミュレーターが主流となった今では珍しい戦闘機用のシミュレーターだ。その周りにはリュウセイやイルム、更にはジャーダと武蔵の姿があった……見ていて心配になるほどあれ回っているシミュレーターにジャーダが顔を引きつらせながら武蔵に尋ねる。
「これマジでこんなに揺れるのか?」
「いや、まだ優しい方だと思いますよ? リョウだと遅いと急制動かけて突っ込んでくるし、エンジン全開で突っ込まれるのもざらだし、隼人のやつはインテリだけど、思考回路自体はオイラとかリョウと大差無いから、むちゃくちゃしますし」
話を聞いてイルムやリュウセイの脳裏にはむちゃくちゃ凶暴な大男と、イングラムを強暴にしたような男の姿が浮かび、温厚な武蔵で良かったと思ったのは無理もないだろう。そんな話をしているとシミュレーターが停止し、ライが姿を見せる。だがその顔は青を通り越して、真っ白で心配そうにしているリュウセイ達を無視して、早足でシミュレータールームを出て行く。間違いなくその行き先はトイレだろう……
「ライも駄目か。じゃあ次はリュウセイ乗ってみるか?」
イルムの問いかけにリュウセイは顔を引き攣らせながらも、目を輝かせシミュレーターに乗り込む。外から見るモニターにはハガネの発進口から飛び出すゲットマシンの姿がある。しかし飛行して10秒後にシミュレーターは緊急停止して、リュウセイが這い出てくる
「……武蔵、良くこんなの乗れるな」
それが遺言となりリュウセイは白目を向いてシミュレータールームに倒れこむ。ライは何とか1分耐えたが、リュウセイは10秒でKOされた
「……おっそろしいマシンだな。お前も相当訓練したのか?」
「いや、オイラは乗ってすぐ昼寝出来たからなあ……むしろ何で乗れないのかが不思議だ。初めて乗った時も1人乗りの所を3人で乗り込んで3対1でむちゃくちゃ大変でしたし」
武蔵のイルムとジャーダは黙り込むことしか出来ず、小声で旧西暦の人間って皆化け物と呟くのがやっとだった。
「……うし、じゃあ今度は俺だ。もし乗りこなせたらジャガーでも、イーグルでも良いから頼むぜ」
「わかってますよ。オイラだって3人揃って欲しいって思ってますから」
AMやPT相手ならば単独操縦でも問題は無いが、メカザウルスを相手に取るにはあまりに戦力が足りない。乗りこなせるならば、ゲッターに乗り込んで欲しいと思っているのは誰でもない武蔵本人なのだから。
「流石はジャーダって所か」
ジャーダは元々戦闘機乗りである、流石に発進時の重力には顔を歪め、歯を食いしばり耐える素振りを見せていた。だがそれさえ超えてしまえば機首を安定させ、旋回やバレルロールなどを連続でやって見せる。
「ジャーダさん。次の段階に入りますけど大丈夫ですか?」
『……合体だな。やってくれ』
ジャーダの了承を得てからシミュレーターが次の段階。つまりゲッター1への合体に移行する……これさえ乗り越えることが出来ればと武蔵は思っていたがジャーダが悲鳴を上げて意識を失ったのでシミュレーターを緊急停止させる
「……やっぱり今の人には無理なんですかね?」
ジャーダをシミュレーターから引き摺り下ろしながら武蔵がイルムに尋ねる。ライ、リュウセイ、ジャーダと続けてシュミレーションを見ていたイルム。観察していて思いついた事を試してみてはどうかと尋ねる、武蔵は驚いた表情をし、イルムの提案を鸚鵡返しで尋ねる
「合体した段階からですか?」
「ああ。飛ばすのはきついが、多分俺も大丈夫だ。となると問題は合体と戦闘になるはず」
仮に飛ばす、合体するを重点的に訓練したとしても、いざ戦闘になれば勝手は違う。まず戦闘に耐えれるかどうか、そこが重要だとイルムは考えたのだ。
「最悪合体した状態で出撃って事も出来るだろ? そうなると分離とか、再合体は難しくなると思うが……物は試しだ。やってみないか」
どうせこのまま続けても良い結果は出ない。それならば別のアプローチと言うのは良いアイデアかもしれない、武蔵はイルムの提案を受けシミュレーターに乗り込む。
「じゃあ、オイラの得意なゲッター3で始めます」
『おう、お手柔らかにな』
イルムの返事を聞いてからシミュレーターを起動させる。そしてゲッター3に合体した状態でシュミレーターが始まる。まずは前進、後退、右旋回、左旋回という基本的な動作。だがイルムは操縦桿を握り締めて、歯を食いしばっている。新西暦の対重力装備になれているイルム達に牙を向くのがゲッターの殺人的な加速と重力だ。ゲッターに重力装備をつけるのは合体や変形の構造上非常に厳しく、現段階では素で耐えるしかない。それが新西暦のパイロットがゲッターを操る上で最大の壁となっている。
「じゃあ、今度は少し動きますよ」
『……ああ』
イルムに許可を得てから武蔵はシミュレーションのゲッター3を攻撃させる。武蔵がゲッター3を選んだのは自身が一番操作に慣れていることに加えて、ゲッター1のようにトマホークを手に暴れ回るわけでもなく、その飛行で上下左右から恐ろしい重力が掛かる訳でもない。そしてゲッター2のようにマッハで暴れ回るわけでもない、変な話だがゲッター1とゲッター2と比べればゲッター3は大雪山おろしを使わなければ比較的穏やかな性能だ。だからゲッター3なら大丈夫かもしれないと思っての選択だったのだが……
『……ギブアップ。降ろしてくれ』
移動は何とか耐えれたイルムだが、それも数分の事でギブアップ宣言をする。それを聞いて、武蔵はシミュレーターを停止させる。
「……悪いが、多分ハガネのクルーにゲッターを操れるパイロットはいないな」
「……そう……ですか、付き合ってくれてありがとうございました」
悪いなと言ってふらつきながらシミュレータールームを出て行くイルムを見送り、武蔵は再びシミュレーターに乗り込むのだった……
戦闘機のシュミレーターを改造したゲッターのシミュレーター。ロブに良く出来ていると言っていた武蔵だが、その言葉に嘘は無い。
「ゲッター1やゲッター2にも慣れておかないとな」
本来武蔵はベアー号およびゲッター3のメインパイロットである。ニューヨークでの恐竜大隊との戦闘を終始有利に進める事が出来たのは、3つの炉心のリミッターを解除したことによるゴリ押しだ。だが今はジャガー号の炉心はほぼ空、イーグル号とベアー号も最大量の半分以下と出力はニューヨークの時と比べて劣悪となっている。
「せめて3人揃えば……いや、無理……か」
エースパイロットと呼べる人間がゲッターのシミュレーターを試した。だがその結果は悲惨な物であり、その結果を見て武蔵は後2人のパイロットを見つける事を諦めたのだ。
「ぐっ……くそッ!」
ロブが何度も何度も分析を繰り返し、作り上げられたゲッターシミュレーターは短時間で作られた物とは思えないほどにゲッターに迫っていた。それだからこそ判る、自分にはやはりゲッターを操る才能がないと……
(リョウや隼人みたいには行かないよな……)
運動神経に反射神経、更に言えば知能指数も劣っている……これはリョウや早乙女博士にも言われた事だ。やる気だけでは、ゲッターのパイロットは務まらないとリョウに言われ、そして腕力ならばリョウや隼人にも負けないと言った。その時の事を思い出し思わず苦笑する……
「腕力でゲッターのパイロットが出来れば全員相撲取りだったよな……隼人」
今ならば判る、アレは隼人なりに自分を心配しての言葉だったのだと……リョウと隼人は早乙女博士に見出されゲッターのパイロットになった。
「オイラは無理やりなったもんだしな……」
あのエネルギーを無限に取り込み巨大化していくメカザウルス。あの時に早乙女博士の代わりにベアー号に乗り込み、敵の体内に飛び込みエネルギーを全て放出しそのメカザウルスを倒した。だがリョウと隼人が気絶しても自分は意識を失わなかった、その身体の頑丈さでベアー号のパイロットとなった。
「無理なのは百も承知なんだ」
リョウの野生的な反射神経も、運動神経も自分には無いし、隼人のような自分を戒める冷静さも的確な判断力も自分には無い。自分にあるのはどこまでも愚直に前に進む事と少しばかり身体が頑丈と言う事だけだ
「少しでもいい、ゲッターを乗りこなすんだ」
この世界には武蔵だけではない、恐竜帝国もいる。PTやAMで対応するのは不可能だ、ならば自分が何とかするしかない。自分には才能がないなんて甘えは許されない……ダイテツやリュウセイ達も協力してくれる。それでも矢面にはゲッターが立つ必要がある。少しでもいい、今まで以上にゲッターを使いこなす必要がある。武蔵は長時間シミュレーターを降りることなく、ひたすらにゲッターの訓練を続けた
「……ふう」
腹が鳴ったのでシミュレーターを出て、首から下げたタオルで汗を拭う。時計を見ると実に4時間訓練していた訳だが、その訓練の時間に応じて手応えでもあれば武蔵の顔も明るいが、成果が出なかった事で武蔵の顔は暗い。
「飯でも食うか」
これ以上続けていても成果は出ない、適度な休憩も必要だと思いシミュレータールームを出る。するとイルムに連行されている少年と鉢合わせした。それは、自分がアイドネウス島を脱走する前に食事を運んできてくれたリョウトの姿だった……
「リョウト! リョウトじゃないかッ!」
まさかこんな所で会うと思ってもいなかったので、リョウトへと駆け寄る。リョウトは両腕に手錠こそ嵌められているが元気そうな様子で武蔵も安堵する、
「武蔵さん……そうですよね。ハガネに乗っているって言ってましたよね、お久しぶりです」
頭を下げるリョウト。DCの兵士であるリョウトがなぜと混乱する武蔵にイルムが問いかける
「武蔵、このDCの兵士と知り合いなのか?」
「知り合いって言いますか……脱走前に飯を持って来てくれたやつで……なんでハガネにいるんですか?」
「お前気付かなかったのか? DCの襲撃があって、それにリョウトも参加してたんだよ」
イルムの言葉にリョウトの顔を見る武蔵。リョウトは気まずそうな表情をして
「命令には逆らえませんから……」
「リョウト……」
その悲しそうな顔に思わず手を伸ばしかける武蔵。だがそれはイルムによって制された
「武蔵、悪いがこれは規則だ。彼は捕虜としてハガネに収容されたんだ、だから彼には牢に入って貰う」
「……そ、そうですか……話をしたりするのは……駄目ですよね?」
武蔵の質問にイルムは渋い顔をする。これが軍人なら何を言っていると一喝して終わりだが、相手は旧西暦の人間ではあるが民間人である。その対応を間違えば、武蔵のハガネの脱走にも繋がりかねない。
「……一応聞いて見るくらいはしてやるよ。ほら、行くぞ」
「は、はい……では、武蔵さん。また」
イルムに連れられ独房に足を向けるリョウトの背中を武蔵は見つめる事しか出来なかった。自分はDCを止める、恐竜帝国を倒すという目的でハガネに乗っていた。周りの人間も優しいが、今のリョウトへの対応で今戦争中と言う事を思い知らされたのだった……
第20話 スターバク島の死闘 その1へ続く
今回はシュミレーターの話となりました。次回はスターバク島波高しの話を大胆にアレンジして行こうと思います、その3までくらいまでで書いていけたらと思いますね。どんな話になるのか、楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い