進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第73話 立ち上がる剣神 その3

第73話 立ち上がる剣神 その3

 

ショーンは呆れ半分、関心半分、そしてゼンガーにグルンガスト参式を託した男の慧眼に素直に賞賛を送っていた。レフィーナにこそ言わなかったが、ショーンとクレイグの計算では避難が間に合わず、最善でも半数のスタッフが取り残される可能性を懸念していた。どれほど効率よく避難出来たとしても、敵の数や、周囲の包囲網の事を考えれば全ての人員を保護している時間はなく、仮に全ての人員を保護できたとしても今度はラングレーから離脱出来ない可能性が極めて高かった。

 

(これも日ごろの行い……いえ、グレッグ司令の助けでしょうか?)

 

ビアン一派としてあちこちを移動をしてる2人だ。その2人が運よくラングレー基地周辺にいる可能性はそれこそ天文学的な確率だ。ショーンにはグレッグの御霊が2人をこの地に呼び寄せてくれた用に思えた。

 

「ゼンガー少佐とエルザム少佐が助けに来てくれるなんて」

 

「そうですなあ。これは嬉しい誤算と言っても良いでしょう、しかし喜んでいる時間がないのが現状ですがね」

 

「判っています。ラングレー基地の隊員の避難を最優先に、残っている副砲及び対空ミサイルによる支援を!」

 

レフィーナが矢継ぎ早に指示を出すのを聞きながら、ショーンは眉を細めた。

 

(ゲッターロボ……それも黒ですか)

 

グライエン・グラスマンの屋敷を襲撃したゲッターロボは黒いゲッターロボという話をショーンは聞いていた。しかしだ、ビアンと同じく、鷹派、そして地球を守る為には徹底抗戦しかないと言っているグライエンをビアンが殺す事を選択するだろうか?

 

(普通に考えて極秘裏に協力関係にあると考えるのが妥当……)

 

レイカーもビアンとは極秘裏に連絡を取り合っていると聞く、そして目の前で戦っている新型のグルンガスト参式を見れば、テスラ研のジョナサンとも連絡を密に取り合っている可能性は十分に考えられる。となると黒いゲッターロボの目撃情報が何を意味するか……ショーンの優秀な頭脳は既にその答えに辿り着いていた。

 

(今議会にいるグライエン議員も偽物という事でしょうね)

 

恐らくエルザム達がグライエンが百鬼帝国に襲われている時に救出に現れたのだろう。そしてそれを幸いに、黒いゲッターロボによる襲撃事件をでっち上げたと考えるのがもっとも自然な流れだ。だがそうなると議会は既に百鬼帝国の手が相当数入り込んでいること示唆していた。

 

「やはりあのノイエDCの演説はビアン博士を騙る偽物というリューネさんの意見が正しかったと言うことでしょうか?」

 

「そうでしょうな。仮に本物のビアン総帥が決起していれば、お2人が助けに来ると言うことはありませんから」

 

レフィーナは決起したビアンが偽物という確証を得れて満足そうにしていた。その顔を見れば、ショーンは自分の脳裏に浮かんでいることをレフィーナに告げる事は出来なかった。

 

(やれやれ、私も甘いですな)

 

1つの窮地を切り抜けただけで安堵するのは艦長と考えれば甘すぎる。常に最悪を想定しなければならない以上、1つの窮地を乗り越えたら2つ、3つの窮地を想定しなければならない。だがホワイトスターで友軍の大量死を目の当たりにし、そしてここラングレーでも人を見捨てることになるかもしれないと言う事になっていた事を考えれば、まだ歳若いレフィーナには余りにも重過ぎる。叩きすぎて潰れても困るので、ショーンは敢えてその事を指摘しなかった。勿論それにはほかの理由も1つあった、ホワイトスターで出現した時のキャノン砲をガルガウは装備していなかった。それはインスペクター側もラングレーを無事に確保したいという理由からだろう。それゆえに向こうが乱暴な手に出てこないという事が予想出来たからこそのショーンの判断だ。

 

(しかし、予断は許しませんな)

 

ガルガウと対峙しているグルンガストだが、ショーンの目から見てその動きは鈍い。グルンガスト参式に慣れていないと考えるのが妥当な所だが、不慣れな機体でガルガウを相手にするには例えゼンガーであっても条件が不利過ぎる。姿を消す百鬼獣は黒いゲッター2が押さえ込んでくれているが、無人機の群れは今だ止まる事を知らない。ほんの少しの油断が死に直結する……この劣勢をどうやって切り抜け、無事にラングレーを離脱するか……この無理難題に直面し、その眉を険しく寄せるのだった……。

 

 

 

 

百鬼獣と戦っている黒いゲッターロボも、そして今ガルガウと鍔迫り合いグルンガスト参式もゲッター炉心で稼動している。ガルガウのコックピットに響くアラートがヴィガジを苛立たせていた。

 

「ちいッ! 忌々しいッ!」

 

ヴィガジはガルガウのコックピットの中で出発前にウェンドロに言われていた事を思い返し、頭に昇りかけた血が下がる。

 

『チャンスは1度だけだ。君は条約違反の武器を使った、そしてゲッターロボのパイロットの交渉の機会も失わせた。それに加えて地球人相手にガルガウを中破させた。本当ならばこの段階で査察員としての資格は剥奪、そして本国に強制送還だ。だけどブライが言っていたんだ、仏の顔も3度までと、まぁ君は既に3度失態をしているからその段階で、もう僕は一切君に期待をしていないんだけどね』

 

栄えある査察員――しかもゼゼーナンが何かを企んで地球で活動している証拠、そしてゲッター線を確保できるかも知れないと言う重要な任務に選ばれた事をヴィガジは誇りとしていた。無論、己が下等と見下す地球人に負ける訳が無いという傲慢な考えが無かった訳ではない。だが実際は地球人にガルガウを中破させられ月の設備の奪取も出来なかった、ネビーイームを強奪は成功したが、それはゾヴォークの条約違反の武器を使っての物だ。しかもその上ゲッターロボパイロットの怒りを買い、交渉の余地は無くなった。失態に続く、失態……正直処刑されていてもおかしくなかった。ダヴィーンの生き残りの言葉があったから首の皮一枚で繋がったが……それも本当にギリギリの所だ。

 

『地球のラングレー、それとテスラ研を無事に奪取してくる事。それを出来れば失態は許そう、しかしだ。そのどちらか片方でも基地、拠点としての価値を損なわれていたら判るね? さ、行って来るんだ。これ以上僕を落胆させないでくれよ、ヴィガジ』

 

これが最後通告であることは分かっていた。だからこそ、怒りに身を任せた普段の戦いは出来なかった。

 

「ええい! 邪魔だぁッ!!!」

 

思うように戦えない、それはフラストレーションを溜めさせていたからヴィガジは怒鳴ってこそいたが、それでも頭の中は冷静だった。

 

『ぬううっ!!!』

 

「何が悪を断つ剣だ! 俺に手も足も出んではないか!!!」

 

斬艦刀を盾にし、ガルガウのクローの連撃を受け止めるグルンガスト参式は反撃の余地が無く、徐々に後退させられていた。

 

『うぉおおおおッ!!!』

 

「ぬっぐっ! 馬鹿力だけでッ!!」

 

ゲッター炉心で稼動しているだけはありパワーはある。だがそれだけだ、それだけで打ち倒される程ガルガウもヴィガジも弱くは無かった。

 

(こいつとゲッターロボを倒せればッ!)

 

ゲッター炉心を手に出来れば今までの失態は全て帳消しになる。それだけを考えて、ヴィガジはガルガウを操る。自分に退路は無く、そして戦果を上げ続ける事でしか己の失態を取り返す事は出来ないのだ。

 

「ぬおおおッ!!!」

 

『ぐっ! お、おのれッ!!!』

 

クローでグルンガスト参式の胴体を掴み締め上げる。参式の拳が振るわれ、コックピットにまで衝撃が響いてくる。だがヴィガジはそんな衝撃に一切怯むことは無かった。

 

「俺の前に立った不運を呪えッ!! そのゲッター炉心、俺が貰い受けるッ!!!」

 

『ぐあっ!!』

 

ゼンガーの苦悶の声を聞いて、ヴィガジは薄く笑う。地球人のせいで自分はこんなにも苦しんでいる、こんなにも追詰められている。苦しむの当然だとヴィガジは残虐な笑みを浮かべ、このままグルンガスト参式を押し潰し、その残骸からゲッター炉心を回収しようと考えていた。ラングレー基地、そしてテスラ研を手にし、そしてその上でゲッター炉心を持ち帰れば己の失態は挽回出来る、参式の装甲がきしみ、火花を散らすのを見て、一気に参式を装甲破壊しようと操縦桿により力を込めた時だった。

 

「ぐがあッ!? お、己ぇッ!! 下等なサルの分際でぇッ!!!」

 

ガルガウに走った凄まじい衝撃に操縦桿を握る手が緩み、グルンガスト参式がその手から零れ落ちた。その光景を見てヴィガジは激怒し、再び参式に向かって襲い掛かろうとしたのだが……。

 

「ぐっ! ええいッ! 邪魔をするなッ!!」

 

黒いゲッター2の腕が変形し放たれる重力弾と、空を舞うゲシュペンスト・リバイブ(S)のビームでその場に釘付けにされる。

 

『お前の好きにはさせんぞッ!』

 

『ゼンガー!? 何をしているッ! しっかりしろッ!』

 

ギリアムとエルザムの声が響き、それから少し遅れてラングレー基地からクレイグの声が響き渡った。

 

『何をしている! ゼンガー・ゾンボルトッ!! お前は悪を断つ剣……父さんが見出した剣の筈だッ! 膝をついてどうするッ! 立ち上がれッ!!! 何を恐れている! その剣は何の為にあるッ! 答えろッ! ゼンガー・ゾンボルトッ!!!』

 

避難を勧める部下の声を無視し響き渡るクレイグの声。その声は今のヴィガジにとって非常に腹ただしい物だった……部下を信用し、お前なら大丈夫だと言う信頼……自分には無い物を向けられているゼンガーに怒りを覚えた。

 

「何が悪を断つ剣だ! 何が立ち上がれだッ!!! 目障りだッ! 消え失せろッ!!!」

 

ガルガウの雄叫びが響き、メガスマッシャーの銃口がグルンガスト参式に向けられ、凄まじいエネルギーの奔流がグルンガスト参式に向かって撃ち込まれた。

 

「ははははッ! どうだ! 悪を……なッ!?」

 

メガスマッシャーが「斬られた」その異常な光景にヴィガジは目を剥いた。

 

『……我はゼンガー……ゼンガー・ゾンボルトッ!! 悪を断つ剣なりッ!!! この命を賭して、俺は地球を守る為に戦うッ!!』

 

グルンガスト参式の装甲が展開し、そこからゲッター線の光が溢れる。そしてフェイスガードが展開され紅く輝く、グルンガスト参式のカメラアイがガルガウを睨みつけた。

 

「ぬ、ぬううッ!!! サルの分際でぇッ! 身の程を弁えるんだなッ!!」

 

そのカメラアイの向こう側に自分を睨んでいる人間の……ゼンガーの鬼のような形相を見て、それに気圧されたヴィガジは地球人に恐れを抱くことなどあり得ないと己を鼓舞するように叫び、グルンガスト参式に向かってガルガウを走らせるのだった……。

 

 

 

 

 

グルンガスト参式のコックピットの中でゼンガーは強く操縦桿を握り締め、唇を噛み締めていた。懐かしい古巣……ラングレー基地、クレッグ司令やキョウスケ達と過ごした時間は決して永くはなかった。だがそれでも、ラングレーで過ごした時間はゼンガーにとっては大切な物だった。しかし、ゼンガーはそれを裏切った。グレッグが脱出するまでの時間を稼ぐつもりで殿を務めようとしたが、グレッグ本人に説得され、ラングレーを見捨て、そしてグレッグを死なせた。だが死ぬ瞬間までグレッグは己を信じ、ヒリュウ改と共にいる事でDC戦争を戦い抜き、そして地球を守ってくれるとグレッグは信じていただろう。だがゼンガーはエルザムの真意を知り、キョウスケ達を裏切り、地球を守る刃を見出す為とは言え、ゼンガーはグレッグを裏切った。それがゼンガーの心に重く、引っかかっていた。

 

『友よ、やはりバン大佐に変わって貰うべきだ』

 

「いや、俺は己の罪と真っ向から向き合わねばならぬ。例え恨まれていようとも、この程度で己の罪全てが許されないとしてもだ」

 

ラングレー基地が襲われていると知った時。エルザムとバンはゼンガーに自分達が行くと言ったが、ゼンガーが自分からラングレーに向かうと言ったのだ。

 

『しかし、ゼンガーよ。慣れていない機体で戦えるのか?』

 

「大丈夫です。それに、今ラングレーに行かなくては俺が俺を許せなくなるのです」

 

グルンガスト参式の操縦には確かに慣れていない、それは大きなハンデとなる。それはゼンガーとて承知していた、だがそれでもゼンガーはラングレーに行かなくてはならなかったのだ……1度は見捨てた、だが2度は見捨てられぬ……己が己であるために。

 

(なんと情けない……)

 

口の端から零れた血を手の甲で拭い、目の前の恐竜型の特機――ガルガウを睨みつける。正直な所ゼンガーはラングレーに来るのが恐ろしかった。再編成されたラングレーは崩壊する前のラングレー基地から脱出した者も多い、それになによりもグレッグの息子であるクレイグが司令をしている。何を今更と言われるかも知れぬ、偽善と罵られるかも知れぬ、ゼンガーと言えど人間だ。心に鎧は纏えぬ、不安や恐怖を感じる事もある。親の仇と言っても良い、正直あの時ゼンガーが残れば、ゼンガーは戦死することになったがグレッグ達は逃げれた。逃亡者、敗残兵と言われても生き延びろとグレッグに命じられたとは言え、そのもしもをゼンガーは思わずにはいられなかった。だがクレイグは己を激励した……何故膝をついている、何を恐れている、お前は選ばれた剣だと、お前を見出したグレッグに恥じるような戦いはするなと叫ぶクレイグの声。自分を憎んでいるだろう、何故グレッグを助けてくれなったと思いもしているだろう。だが己の感情を越え、悪を断つ剣として立ち上がれと、己の使命は何だと言われ、ゼンガーほどの男が奮起しない訳が無かった。

 

『う……すげえ』

 

『アラド、下がりな。あたしがフォローする』

 

剣気と言うべき闘気に当てられ、アラドが呻く声を聞いてリューネがアラドに下がれと命じる。

 

『よし、これでゼンガーの方は心配いらないな』

 

『エルザム、百鬼獣を抑えれるか?』

 

『私はレーツェルだ。エルザムでは無いが、百鬼獣は抑えよう』

 

『……もう好きにしてくれ。そっちは頼むぞ』

 

『任せれた、行くぞゲッターロボ。いや、トロンベよッ!』

 

残像を残しながら駆けるゲッター2・トロンベとレーツェルだと言い張るエルザム。それらにギリアムは力が抜けたが、気を抜いている暇もない。

 

『リョウト、リオ! AからBの8まで下がれ、そのブロックの避難は完了した。ヴィレッタ達はDの12まで、リューネはC-7、避難の完了したブロックは放棄しろッ!』

 

『了解! リオ、行くよッ!』

 

『うん! 判った!』

 

ギリアムの指示が矢継ぎ早に飛ぶ、避難が最優先だ。ラングレーは陥落する……それがわかっているからこその撤退準備だ。その声を聞きながら、ゼンガーはガルガウをこれ以上進ませまいとグルンガスト参式で立ち塞がる。

 

「『うおおおおおーーーッ!!!』」

 

ゼンガーとヴィガジの雄叫びが重なり、アイアンクローと斬艦刀が何度も火花を散らす。

 

『舐めるなあッ!!!』

 

「ぬうおおおおおおッ!!!!」

 

上段からガルガウを両断しようと斬艦刀を力を込めて振り下ろすグルンガスト参式と両腕のクローでその刃を受け止めるガルガウ。互いの力は完全に均衡し、ガルガウとグルンガスト参式の足元に蜘蛛の巣状の大きな亀裂が走る。

 

『喰らえぃッ!!!』

 

「ぬうっ!! ぐああッ!?」

 

至近距離からの火炎放射で視界を塞がれ、その熱が容赦なくグルンガスト参式を、ゼンガーを焼く。グルンガスト参式の電子機器が悲鳴をあげ、モニターのいくつがブラックアウトし爆発する。その衝撃にゼンガーが顔を逸らした瞬間ガルガウの尾の一撃がグルンガスト参式の胴を穿ち、グルンガスト参式を大きく弾き飛ばす。

 

「ぐっくっ……!」

 

熱で焼かれたモニターは今も尚復旧せず、僅かに生きているモニターはグルンガスト参式の装甲や駆動系が熱と衝撃でやられ、レッドアラートを灯していた。

 

(ゲッター炉心に感謝しなければ)

 

だがそれでもグルンガスト参式はまだ動く事が出来ていた。それはゲッター炉心、そしてゲッター合金による形態変化による、装甲の強化そしてゲッター線バリアによって致命的なダメージを避けていた。レッドアラートも良く見ればダメージによっての物ではなく、排出しきれない熱による、駆動系によるダメージであり、熱さえ排出すればグルンガスト参式はまだ戦える。それが判れば、ゼンガーにとっては何の問題もない。操縦桿を握り締め、目の前の敵を睨みつける。

 

『貴様はここで死ねッ!!』

 

僅かに映るモニターにはガルガウの腕部のブースターが火を噴き、今にもグルンガスト参式に飛びかかろうとしている姿が見えていた。あの質量、そしてあの加速で追突を受ければゲッター線バリア、ゲッター合金でコックピット部分の強化を施されているグルンガスト参式と言えど耐え切れない。

 

「眼前の敵は全て打ち砕くのみッ! 伸びろ斬艦刀よッ!!!」

 

参式斬艦刀の鍔が開き、ゲッター合金、そしてゾル・オリハルコニウムを特殊な比重で混ぜ合わせ、作り上げられた新型斬艦刀が変形し、日本刀から巨大なバスターブレードへとその姿を変える。

 

『そんなこけおどしの刃を恐れる俺ではないわッ!!』

 

ヴィガジはその刃をこけおどしと断じた。グルンガスト参式を遥かに越える全長を振るえる訳が無い、ヴィガジはそう考え腕部のブースターを全開にし、グルンガスト参式に向かってアイアンクローを突き出すように構え、質量と加速を生かした突撃を繰り出す。

 

「一意専心ッ!!! 受けよ我が乾坤一擲の一撃をッ!」

 

ゼンガーが吼え、グルンガスト参式の紅いカメラアイが力強く光を帯び、ガルガウの突撃に負けない速度で走り出す。

 

『「うおおおおおおーーーーッ!!!!」』

 

ヴィガジとゼンガーの雄叫びがラングレー基地へ響き、ガルガウとグルンガスト参式の姿が交差する。2機の着地した位置がそのまま2人の勝敗を示していた。グルンガスト参式は突っ込んだ勢いのまま、真っ直ぐに進みヒリュウ改達の前に着地し、ガルガウは斜めに逸れた位置に着地した。それはガルガウが斬艦刀の刃から逃げた証であり、切り落とされたガルガウの尾と右腕が後一歩深くガルガウが踏み込んでいれば両断されていた事を表していた。

 

『ゼンガー少佐! ヒリュウ改に着艦を、本艦はラングレーから離脱します!』

 

「承知ッ!」

 

レフィーナの言葉に頷き、グルンガスト参式が着艦すると同時にEーフィールドを展開したヒリュウ改を先頭に5機の輸送機と共にラングレー基地を放棄しその場を離脱する、その姿を火花を散らすガルガウのコックピットの中でヴィガジは忌々しそうに睨みつけていた。地球人相手に恐れを抱き、そして逃げたことが自分の命を繋げたことは判っていた。だが査問官として誇りを持つヴィガジは地球人相手に逃げた己を恥じ、そして怒りを抱いた。

 

「……次はこうはいかんぞ。地球人共め……貴様らはこの宇宙に存在するべきではないのだ」

 

ヴィガジの中で既にゼンガー達は下等な猿ではなく、抹殺すべき敵とし認めた。ラングレー基地を完全に掌握する為に、そしてネビーイームから運び込まれるガルガウのアタッチメントを待ち、テスラ研の制圧に向かう為にラングレー基地へと歩みを進めるのだった……。

 

 

 

 

ラングレー基地から逃れたヒリュウ改、そして輸送機はスペリオル湖に停泊していた。追っ手への警戒、そして救助に訪れたゼンガーとレーツェルから話を聞いていた。

 

「ゼンガー少佐。よく助けに来てくれた、感謝する」

 

クレイグにそう声を掛けられ、ゼンガーは気まずそうな顔をする。だがクレイグは強引にその手を取り握り締めた。

 

「ッ」

 

ゼンガーが顔を歪めるほどの力でクレイグはゼンガーの手を握り締め、その目を真っ直ぐに見つめた。

 

「ゼンガー少佐。DC戦争での行動は確かに私とて思うことはある……だがそれはそれ、これはこれだ。もし、この場に父さんがいたのならば……過去の因縁に囚われ大局を見誤るなと私を叱っただろう。それとも、あの時の命を賭して地球を守ると言うのは嘘だったのか?」

 

「い、いえ! そんな事は」

 

「ならばそれで良い。ゼンガー少佐のこれからの活躍に期待する」

 

握り締めていた手を放し、ゼンガーの肩を叩き激励するクレイグの目には恨みや、殺意の色は無く純粋にゼンガーを信じる光が宿っていた。

 

「……承知しました。このゼンガー・ゾンボルト……必ずやそのご期待に答えて見せます」

 

敬礼し一礼するゼンガーにクレイグは満足そうに頷き、レフィーナ達に視線を向ける。

 

「すまないな、私のせいで会議が遅れた。早速今後の方針を話し合おう」

 

ラングレー基地をインスペクターに奪取され、そして北米全体はインスペクターの手に落ちたといっても良い。しかも増援も期待出来ず、百鬼帝国がインスペクターと協力していることも判明し、状況は最悪を通り越して最低に近い。だがそれでも、この場にいる全員の瞳から闘志の色は一切失われていなかった。

 

「ではこれより作戦会議を始めます。本艦の位置から行ってテスラ研へ救助へ向かうのは難しい位置にあります、それに加えて敵の追っ手の可能性を考えれば、戦力を分散することも極めて難しいです」

 

テスラ研の近くに向かう予定だったが、インスペクターの追っ手は想像以上に激しく、テスラ研から大きく距離を取る事になってしまった。

 

「テスラ研に連絡を取り、脱出時の進路をこちら側にとってもらうというのはどうだろうか?」

 

「いえ、ギリアム少佐それは出来ませんな。ジャミングが酷く、テスラ研との連絡は取れておりません」

 

「そうですか、クレイグ司令。テスラ研と定時連絡した際に襲撃の可能性は伝えてくれましたか?」

 

ショーンの言葉を聞いてギリアムはクレイグに定時連絡の際の事を尋ねる。

 

「定時連絡の際に敵の襲撃を受ける可能性は一応は告げてある……連絡が途絶えた事を不審に思い脱出準備を進めてくれている可能性はあるが……」

 

襲撃の可能性を伝えてはある。連絡が途絶えた事を不審に思い、テスラ研が脱出準備を進めてくれている可能性と口にしたクレイグだが、そこで口ごもった。

 

「脱出をしてくれたとしてもこちら側に来てくれるかどうかは判らないと言うことですね? クレイグ司令」

 

「その通りだ。レーツェル、やはり誰かがテスラ研に向かう必要がある、機動力があり隠密行動が出来、なおかつ百鬼獣と戦えるだけの機体がいい……その条件を満たしているのはゲッターロボだけだが……頼めるだろうか? 何も単騎で行けとは言わない、ギリアムかアラドも「いえ、私1人で十分です。我が友はヒリュウ改と輸送機の護衛に残してくれて大丈夫です」

 

敵機の追撃を振り切り、単騎でテスラ研へ向かう。そして道中で出現する可能性の高い百鬼獣、インスペクターの司令官機とも戦う……その余りにも難易度の高い条件を満たせるのはゲッターロボ・トロンベとレーツェルの組み合わせしかなかった。単独で向かうのならばゲシュペンスト・リバイブ(S)とギリアムの組み合わせもある、アラドとビルトファルケンという組み合わせもあるとクレイグが口にしたが、レーツェルはその言葉を遮り、自分1人で十分だと口にした。

 

「エル……いや、レーツェル。お前の実力は判っている、だが単独で向かうには……」

 

「案ずるな、私も自殺志願者ではない。テスラ研にバン大佐とライノセラスが向かっている。彼らと合流し、テスラ研の撤退支援を行うつもりだ」

 

レーツェルも百鬼獣の脅威は判っている、単独で向かい戻って来ることが不可能という事は十分に承知している。

 

「なるほど、我々ではライノセラスの兵士達の危機感を煽ることになると」

 

偽物のビアンがノイエDCの決起を行なった為再び追われる身となった、それゆえに連邦軍の識別コードが近づけばライノセラスはテスラ研から離れてしまうだろう。通信もジャミングで不可能となればゼンガーかエルザムがライノセラスとコンタクトを取る必要があるが、グルンガスト参式は鈍足でテスラ研が襲撃が行なわれる前にライノセラスに合流し、テスラ研に向かうのは難しい。テスラ研に救出に向かえるのはレーツェルただ1人なのだった……。

 

「……」

 

「どうした? コウキ博士」

 

「バン大佐、悪いがライノセラスに連絡を入れてくれ、後お前も出撃準備をするんだ」

 

「……嫌な風だな……判った。出撃準備を始める」

 

「頼む急いでくれ。もう時間が無い」

 

レーツェルがヒリュウ改を出た頃、テスラ研に戻っていたコウキはテスラ研に向かってくる敵意を感じ取っているのだった……。

 

 

 

第74話 黒き暴風と鬼神 その1へ続く

 

 




今回はここで終わりで、次回はレーツェル、バン、コウキの3人を主体でのテスラ研での戦いを書いて行こうと思います。インスペクターだけではなく、百鬼帝国も出してベリーハードモードで行きたいですね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。


アークの最終話は想定とおりと言えば想定通りですが、コーウェンとスティンガーが特別ゲストで出たのは思わず吹きましたね。

しかし不完全燃焼な終わり方で、少しばかり残念でしたが続編がオリジナルで作られることを祈ります。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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