進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第77話 深き海の底から その1

第77話 深き海の底から その1

 

格納庫に広がる殺伐とした雰囲気と疑惑の眼差しは全て頭と腹に包帯を巻いた痛々しい姿のコウキに向けられていた。――テスラ研での百鬼衆、鉄甲鬼と叫んだコウキに疑いの眼差しが向けられるのは当然の事だったが、それはアイビスにとって耐えられる物ではなかった。

 

「待って、待ってよ! コウキ博士を疑うとか、おかしいって! 何度もコウキ博士は助けてくれたじゃないかッ! それに見てよ、この怪我をッ! こんな所で詰問したらそれこそコウキ博士が死んじゃうよ! 1回落ち着いてから……」

 

フィリオの事で心を痛め、涙を流したことで真っ赤になった目でコウキに疑惑の視線を向けている研究者達を睨みながら、両手を広げコウキを守ろうとしてアイビスが声を上げた。

 

「いや、良い。素性のわからぬ者がいればお前達とて安心出来ないだろう、それにこの程度では俺は死なないし、死ねない。そんな柔な体ではない」

 

せめて安全が確保されてからとコウキを庇おうとするアイビスの声を遮ってコウキが口を開いた。その額からは脂汗が流れ、顔から血の気が引いているのにその目だけは爛々と獣のように輝いていた。

 

「大丈夫なのか?」

 

その言葉自体はコウキの事を案ずる言葉だったが、その言葉に込められているのはお前は味方なのか、それとも敵なのかと言う警戒するような声色が込められていた。レーツェルとバンの鋭い視線を向けられても、コウキに動揺も恐怖もなかった。旧西暦を知るコウキからすれば、いや、竜馬を知るコウキからすればその程度の殺気など恐れるに足りない……言うならば思春期のやたら斜に構えている子供と同じ程度に感じていた。仮に襲われたとしても叩き伏せる自信がコウキにはあった。

 

「問題はない。どうせ暫く俺は動けん、バンとレーツェル、それにクスハを頼るしかないんだ。話をするくらいは……はっはっ……問題……ない」

 

「こ、コウキさん! これ、早く飲んでください!」

 

「すいません、薬を探しているの手間取ってッ! コウキ博士を責め立てて貴方達は何をやりたいのですか! 恥を知りなさいッ!」

 

問題はないと言うがコウキの顔色は見る見る間に悪くなり、クスハと医療班が鎮痛剤を飲むようにと水のボトルと錠剤を渡す。しかしコウキは鎮痛剤のボトルを奪い、逆さにし全て口の中に入れて噛み砕いた。

 

「こ、コウキ博士! そんなに飲んだらッ吐いて、吐いてくださいッ!」

 

それを見て医者が吐き出せというが、コウキはペットボトルの蓋を開けて中身を一気に飲み干した。それは完全に致死量の量で、コウキを疑っていた付き合いの短い研究者達でさえ、心配そうな表情を浮かべたが、コウキは薄く笑った。

 

「薬が効きにくい体質なんだ。飲んだ所で死にはしない……それよりも俺が何者か……だ」

 

そう笑ったコウキの身体の痛々しい怪我に薄皮が張る。それは普通の人間ではあり得ない、異常な回復速度だった。

 

「コウキ博士、君は鬼なのか?」

 

レーツェルが身構えながら尋ねる。余りにも速い回復速度、そして致死量の薬を飲んでも平気そうにしている。コウキが普通の人間ではないと言うのは火を見るよりも明らかだった。

 

「いや、今は鬼じゃない……かつて、そうだな。旧西暦では俺は鬼だった、味方……いや、そんな上等な者ではないか。自分の戦果だけを求めるクソみたいな上官に嵌められて、ゲッターロボと戦い。死んだ……筈だったんだがな」

 

旧西暦では鬼だった。ゲッターロボと戦った、そして死んだ筈だったと語るコウキの姿にレーツェルの脳裏にある男の姿が過ぎった。

 

「ラドラと同じじゃないか」

 

教導隊で肩を並べて戦った戦友。しかしラドラもまた旧西暦の住人だった……コウキの経歴は余りにもラドラに似ていた。

 

「ラドラ? ああ、キャプテンラドラか」

 

「ラドラを知ってるのか?」

 

「いや、俺が一方的に知っているだけだ。面識はない、俺はゲッターロボGに敗れ、気がついたら若返った上に人間となってスラム街を彷徨っていた。この回復力の高さは恐らく鬼の名残だろうが……今の俺に鬼としての力はない」

 

死んだ筈の人間が生き返った上に若返り彷徨っていた。それはテスラ研の研究者達には簡単に受け入れられる物ではないが、レーツェルやクスハ達は武蔵とラドラと言う前例を知っている。だからこそ、その信じられない話を簡単に受け入れる事が出来た。

 

「こ、コウキ博士が前は鬼だったとしても今はあたし達の味方でしょッ! そうだよね!? スレイも何か言ってよ!」

 

「騒ぐな、私はコウキ博士がスパイだったなんて微塵も疑っていない。むしろコウキ博士を疑っている連中は恥を知れと言いたい気分だ」

 

泣いた事で目が赤く染まっているが、スレイは普段通りに振舞い、コウキを疑っている研究者達に強い怒りを向けていた。どれだけコウキがテスラ研に貢献してきたか、そして死ぬかもしれないという状況でも皆が逃げれるように奮闘し続けていた。もしもスパイだったとして、信用を得る為とは言えここまでの事は出来ないだろう……スレイに睨まれ、コウキを疑っていた最近テスラ研に来たばかりの研究者は気まずそうに目を逸らし、その連中に感化され疑惑の眼差しを向けてしまったコウキと付き合いの長い研究者達は項垂れ、自分達がどれだけコウキに助けられたかと思い返した。

 

「すみません、コウキ博士。一瞬でも貴方を疑った私が馬鹿でした」

 

1人の謝罪が始まりになり、あちこちから謝罪の言葉が広がって行く。テスラ研から命掛けで脱出し気が立っていた事もある。しかしそれでコウキへの疑いを向けて良いと言う訳ではない。

 

「ごめんなさいコウキ。少佐の事とか、私も頭の中がぐちゃぐちゃで……ごめんなさい。コウキを責めたかった訳じゃないの、本当にごめんなさい」

 

ツグミの謝罪の言葉を聞いたコウキは小さく笑い手を上げた。

 

「あんな事があれば誰だって気が立つさ。だから俺は気にしない、こういう事は早く明らかにしておいたほうが良いからな」

 

疑惑や疑い、そして疑念が合ってはこれからの戦いを切り抜ける事は出来ない。真実を明らかにし、そしてその上で協力し合う真の絆が必要だった、

 

「俺は確かにかつては百鬼帝国だった。これは何をしても変えようが無い過去だ。だが今の俺はテスラ研のコウキ・クロガネだ。いや、コウキ・クロガネが良いんだ。鬼ではなく、人として生きたいんだ」

 

人として生きたいというコウキの目は透き通っていて、嘘ではなく本心からの言葉であると言うことは明らかだった。

 

「ここまで命を賭けてコウキ博士は戦ってくれた。彼がいなければ我々はこうして話をする事も出来ていない」

 

「彼が味方であると言うことは明らかだ。異論のある者はいないな?」

 

レーツェルとバンの問いかけに異論を唱える者はおらず。生きてテスラ研を脱出した全ての者がコウキを味方と認めるのだった……。

 

 

 

 

コウキへの疑いの視線や、責める様な雰囲気が無くなった所で改めてツグミが意を決した表情でコウキに問いかけた。

 

「百鬼帝国の事……知っていることだけで良いの教えてコウキ」

 

未知の敵である百鬼帝国についての事を知りたいと思っているのはツグミだけではなく、レーツェル達も同じだった。

 

「勿論と言いたいが、俺の知っているのは旧西暦の百鬼帝国の事だけだ。今の百鬼帝国の事はまるで判らんぞ」

 

増血剤やカロリーバーを無理やり口に運び、点滴を打っているコウキが少し申し訳なさそうにして言うとレーツェル達は驚きの表情を浮かべた。

 

「旧西暦と新西暦では百鬼帝国の活動内容が違うのか?」

 

「ああ。百鬼帝国の指導者、大帝と呼ばれている鬼は自分以外の全てを見下している。そんな鬼がインスペクターやノイエDCと手を組んでいる。その事自体が俺からすれば異常事態だ。百鬼帝国を名乗っているが、実際は別の勢力と言う可能性も別の鬼が大帝を名乗っていると言う可能性も捨て切れない」

 

その性格、気質から誰かと手を組むことはあり得ないと断言し、別の陣営と手を組んでいると言うことから百鬼帝国を名乗る別の勢力、もしくは別の鬼が新しい大帝となっている可能性もあるとコウキは告げた。

 

(流石にこの話は出来ないな)

 

レーツェル達にはグライエンが持ち出した旧西暦の資料がある。それとコウキの話のすり合わせを行なえば、新西暦と旧西暦の百鬼帝国の違いを知ることも出来る。だがその話をすれば、必然的に成り代わりなどの話にも触れることになり、今の極限状態のテスラ研の職員の前でする話ではないと判断し、その口を紡ぐことになった。

 

「それに百鬼獣の動きもかなり制限を掛けている。今の所は様子見と言う所だろうな」

 

コウキの言葉にレーツェル達が絶句し動きを止め、その言葉を信じられないアイビスがおずおずと手を上げてコウキに声を掛けた。

 

「あのーコウキ博士、百鬼獣正直めちゃくちゃ大暴れしていると思うんですけど……それでも制限が掛かっているってことなんですか?」

 

百鬼獣の目撃情報こそ少ないが、出現すれば連邦軍は壊滅的な打撃を受け、その周辺の地形が変わるほどの凄まじい被害を起している。それの事を考えれば動きに制限が掛かっていると言う言葉は信じられる内容ではなかった。

 

「ああ、まるっきり別物と言ってもいい。そもそも百鬼衆が出てきていない段階で手抜きも良い所だ」

 

「そう言えばコウキ博士も百鬼衆と言っていたが、百鬼衆とはなんだ? 聞く感じでは指揮官のように思えるが……」

 

テスラ研でコウキは自分の事を百鬼衆と名乗った。そして今も出た百鬼衆と言う言葉にスレイが指揮官のように思えると尋ねるとコウキは少し違うと返事を返した。

 

「百鬼衆は百鬼獣に搭乗出来る階級を示す物だ。階級によって違うが、俺は軍の階級で言えば大尉~少佐クラスの百鬼衆で指揮官としての役割も兼任していた。有人の百鬼獣と無人の百鬼獣ではその戦力差は約5~10倍ほどだ。無人機の百鬼獣しか投入されていない段階で様子見としか言いようがない」

 

無人と有人の百鬼獣で10倍ほどの戦力差があると告げたコウキの言葉にその場にいる全員の顔が引き攣った。百鬼獣と言うだけでも脅威だと言うのに、その戦闘能力が10倍ほども跳ね上がると聞けば顔が引き攣るのも当然の事だった。

 

「ではあのハガネを大破させた四邪と言うのは大将格と考えていいのか?」

 

ハガネからの戦闘データで回ってきた龍王鬼、虎王鬼の2人の鬼と龍虎鬼皇の事を尋ねるバン。だがコウキの返答は判らないだった。

 

「俺の時に四邪なんて階級はなかった。それにあんな百鬼獣は見た事が無い、恐らく新西暦で新しく作られた百鬼獣、そして鬼なのだろう。それに関しては俺には何も判らない……危険な百鬼獣としか言いようが無いんだ」

 

「そう……か、何か判ればと思ったんだがな」

 

手を抜いていてもハガネとそのPT隊を壊滅寸前に追い込んだ百鬼獣と鬼の情報があれば、何か対策が練れると思っていたので判らないと言う言葉にバンは落胆を隠せなかった。

 

「その百鬼獣が本当の百鬼帝国の主戦力級って事って事ですか?」

 

「あのクラスが早々出てくるとは俺も思っていないが……恐らくは本格攻勢に出れば有人の百鬼獣と共に出てくるのは確実だな。まだ百鬼帝国が様子見をしている今の段階でもっと戦力を整えなければ……俺達は負ける」

 

今でさえ苦戦を強いられている百鬼獣との戦い、それでも百鬼帝国からすればそれは手抜きの偵察に等しいと聞き、百鬼帝国がどれほどの力と余力を隠しているのか、不安ばかりが募る。格納庫に重い沈黙が広がった時、ツグミの手を叩く音が響いた。

 

「今私達の敵は百鬼帝国じゃなくてインスペクターよ。目の前にいない敵よりも、今私達に迫っている脅威の事を考えましょう、ラングレー基地が制圧されたって脱出した兵士がいない訳じゃない、彼らを探すとかやる事は沢山ある。それにコウキだって傷のせいでネガティブになってるからそんな不安なことばかり言うのよ。そんなのはコウキらしくないわ」

 

ツグミの言葉にコウキは一瞬驚いたような顔をし、そして笑い出した。

 

「ああ。確かにその通りだな、俺らしくない。すまん、余計な事を言った。確かに百鬼帝国は強い、だが対策が無いわけではない。現に1度人類は鬼に勝っているのだから」

 

旧西暦で1度百鬼帝国を退けているのだ。人間にだって鬼と戦う術も希望もあると言うとツグミはやっと笑った。

 

「よろしい、スレイもアイビスもクスハも不安ばっかり考えてないで前向きなことを考えましょう。まずは……そうね、何かご飯を食べましょう。それでそれからどうするか考えましょう、後ろや足元を見ていてもその先に道はないわ」

 

ツグミだってフィリオ達を残して脱出した事に後ろめたさや、無事に生きていてくれるかと言う不安も抱いている。だがそれでも、前を向かなければならない。無事にアメリカを脱出し、そしてテスラ研を奪還するという目的の為に進もうとツグミは不安と恐怖に飲み込まれようとしている全員の考えを前向きに変えさせた。

 

「判った。では私が何か作ろうじゃないか」

 

雰囲気が明るくなった所でレーツェルがその腕を振るうと言ってレディバード内の簡易キッチンに足を向ける。その時には既に格納庫に広がっていた悲壮感は完全に消え去っているのだった……。

 

 

 

 

一方その頃、ゲッターロボを求めて海中を進むクロガネ改の中ではカーウァイ、イングラムも含めて百鬼帝国、シャドウミラーに対する会議が熱を帯びていた。

 

「私の偽物が大々的に動き始める前にもう少し対策を練りたいのだが……」

 

「いや、酷な言い方になるがビアン。お前の偽物は泳がすべきではないだろうか?」

 

「その理由は? 何か納得出来るだけの根拠はあるか?」

 

「ある。反抗勢力をあぶり出し、一網打尽にするべきだと私は思う」

 

自分の偽者が大々的に動き出す前に戦力を整えたいと言うビアンにグライエンが自分の意見を口にし、イングラムもグライエンの意見に賛同した。

 

「俺も同じ意見だ。ビアンを旗頭にする事で反連邦勢力を誘き出せる。それにビアンに賛同している者達は殆ど既に仲間に入れているのならば、あちら側のビアンに合流するのはテロリストと考えて良い筈だ」

 

「だがそれでは民間人への被害が拡大することになる」

 

「俺も反対だな、そのやり方は余りにも非道が過ぎる」

 

カーウァイとラドラはグライエンとイングラムの考えに反対意見を投じた。確かにそれを利用して、反連邦組織を炙りだすと言うのは得策だ。これが変装や、整形でビアンに扮しているのならばカーウァイとラドラもその意見に賛同しただろう。しかし相手は百鬼帝国だ、どんな仕掛けをしてくるか判らない以上必要以上に犠牲者が出るかもしれないと言う可能性は常に念頭に入れるべきだとカーウァイとラドラは主張する。

 

「ビアン、お前はどう思う?」

 

カーウァイとラドラ、グライエンとイングラムの意見が割れ、ビアンはどっちだとイングラムが問いかける。

 

「今はまだ決断を下すには早いと思う」

 

ビアンの返答はあやふやなお茶にごしの様な返答だった。ビアンの心情的にはカーウァイ大佐達に賛同したい。だが、戦略的にはグライエンとイングラム少佐と言うことも判る。だが泳がすのか、早急に制圧するのかを決断するには余りにも情報が少なかった。

 

「珍しいですねビアン所長、悩んでいると言うことですか」

 

「ああ、正直に言うとどれが正しいかと判断するには資料が少なすぎるんだ」

 

百鬼帝国の危険性は把握しているが、まだ大きな被害と言えばハガネしか受けておらず。また政治家や軍上層部にどれだけ百鬼帝国が入り込んでいるかが判らない。

 

「もしもだ、私の偽物をハガネ、ヒリュウ改が倒したとして、それが計算通りだったとしたら、洗脳などの可能性も捨て切れない」

 

「ユウキからの報告か」

 

リマコンの技術を百鬼帝国は同時にアレンジしていると言うこと、そしてそれによって既にスクールの生き残りの1人が心を砕かれて人形同然になっている。それを知るからこそ余計に慎重になるべきだとビアンは主張する。

 

「倒した相手が鬼ならばいい、だがそれが洗脳、整形された一般人だとしたら? 鬼だと思っていたのが洗脳されていた人間だとしたら? それらを判別する術を見つけるまでは攻勢には出れん。だからこそ戦力を整えるべきだと私は考える」

 

リターンよりもリスクが大きすぎるというビアンの言葉も一理あった。洗脳、成り代わり、敵なのか味方なのかも判らないと言う状況を打破したいと言うのは判る。だがそれを知らない相手からすれば殺人者、クーデーターを思わせることになり、味方である人間からの攻撃を受けるような自体になってはならないとビアンは言う。ありとあらゆる可能性を考え、その上で細心の注意を払う必要がある。

 

「判った。この件は一時保留にしよう。まずは本来の目的であるブラックゲッターのサルベージを優先しよう。そろそろッ……」

 

本来の目的であるブラックゲッターロボのサルベージポイントが近いとグライエンが言いかけた瞬間凄まじい振動がクロガネを襲った。

 

「な、なんだ!? この感じは砲撃かッ!?」

 

「馬鹿なッ!? この深度まで潜って来れるのはスペースノア級でなければ不可能だぞッ!?」

 

敵がいないはず深海でクロガネ改を襲う凄まじい衝撃と振動に全員がバランスを崩し、その場に膝をついた。

 

「スペースノア級であったとしてもこの深度には潜ってこれない筈だ! ゲッター合金で強化しているクロガネだからこそ耐えれる圧力だぞッ! 新西暦ッ……」

 

新西暦の技術では不可能だと言おうとしたビアンが口を閉じた。新西暦の技術で無理ならば何が襲ってきているか、それを推測するのは容易だった。

 

「この深度まで百鬼獣は潜ってこれると言うのかッ!? メカザウルスでも不可能だぞッ!」

 

「だがそれしか考えられないッ! 百鬼帝国もブラックゲッターを狙っていたのか、それともクロガネを追ってきたのかは判らんが状況が不味すぎるッ!」

 

護衛機を出撃させる事も出来ず、緊急浮上をするにしても敵がどこにいるのか判らない。動力部を破壊でもされればクロガネは浮上できず、このまま沈み圧壊するのをただただ待つしかない。

 

『キシャアアアアアアーーーッ!!』

 

勝ち誇るような百鬼獣の雄叫びがクロガネを揺らし、その船体を大きく何度も左右に揺らされる。それは巨大な何かがクロガネの回りを泳いでいるような振動で、百鬼獣にクロガネが補足された言う証だった……。

 

 

 

コーウェンとスティンガーによってブラックゲッターの場所を補足し、そこに共行王を向かわせたブライの脳裏に楽しそうに、しかし残酷な響きを伴った女の声が響いた。

 

『黒き箱舟を見つけたぞ、少しばかり遊んでも構わんじゃろう?』

 

「壊すなよ。クロガネは必要だ」

 

コーウェンとスティンガーが自身を怪訝そうな顔で見つめてくるのに眉を顰めながら、共行王にしっかりと釘を刺すブライ。ブライの計画でクロガネは必要不可欠だ、更にビアンの知識も欲しい以上ここで轟沈させ、ビアン達を殺されては困るのだ。それゆえに念話ではなく、しっかりと声に出し、言霊と共に共行王を縛る。

 

『判っておる。この身体の力を確かめるだけだ、壊しはしないさ』

 

「手加減を忘れるな、絶対にだぞ」

 

『何度も言霊で縛るな、私も馬鹿ではないぞ。では少しばかり戯れ、黒き鬼神を持ち帰ろう。戦果を楽しみにしているがいい』

 

その言葉を最後に共行王からの念話は途切れ、ブライは小さく溜め息を吐いた。

 

「すまないな、話の途中だった」

 

「いえいえ、構いませんよ。ごらんください、これが我々のゲッター合金の製造プラントです」

 

地下に隠されたコーウェンとスティンガーが作り出したゲッター合金製造工場――その中心にはドラゴンの残骸があり、引きずり出された炉心とパイプが直結されていた。

 

「私がお前達に回収させたドラゴンか」

 

「ええ、ですからブライ大帝にゲッター合金をお譲りするのは当然の事でしょう?」

 

「な、なんせ、貴方がいなければシュトレーゼマンもゲッターロボGの修理には踏み切りませんでしたからね!」

 

そもそもゲッターロボを危険視しているシュトレーゼマンがドラゴンの修理に着手したのは、ニブハルの甘言もあったがブライの暗躍もあった。新西暦のゲッターロボの価値を知らない馬鹿からゲッターロボGを取り上げるという目的があったのだ、そのためにコーウェンとスティンガーを紹介し、資金を提供し修理させたのだ。

 

「それで私に譲ると言うゲッター炉心はどこだ?」

 

ゲッター合金が手に入る事よりも今重要なのはゲッター炉心だとブライが言うとコーウェンとスティンガーは更に地下へとブライを案内する。

 

「あ、おかえりなさい! お、お客さんですか?」

 

地下にいた子供を見てブライは眉を細めた。だがその理由はその子供が只者ではないと一目で悟ったからだった。

 

「フォーゲル。すこーし向こうに言ってくれるかな? お仕事の話なんだ」

 

「は、はい。判りました! あ、お茶でも用意しますね! ごゆっくり!」

 

にこにこと笑い駆けて行くフォーゲルと呼ばれた子供の姿が見えなくなってからブライは口を開いた。

 

「ゲッター線を照射した人造人間か」

 

「ほほう! 流石はブライ大帝! 一目で見抜きましたか!」

 

「ひ、一目で見抜きましたか!」

 

コーウェンとスティンガーを一瞥するブライに煽てる様な口調だったコーウェンとスティンガーは黙り込んだ。

 

「アースクレイドルで研究されている者を譲り受けましてね」

 

「それでそれがお前達の子飼いの兵士か?」

 

「まさか、アースクレイドルの戦力ですとも」

 

そう笑うコーウェンだが、その瞳の奥から聞こえる蟲の蠢く音にブライは何か仕掛けがあると思う事にした。

 

「私はいらんぞ」

 

「おや、残念、とても従順でそして強いですよ」

 

「獅子中身の虫を自ら迎えいれる趣味はない」

 

スパイと判っていて、いつその正体であるインベーダーが沸いて出るか判らない化け物を好き好んで迎えるものかと告げたブライ。

 

「まぁ必要となれば声を掛けてください。ではこちらがブライ大帝にお譲りするゲッター炉心です」

 

倉庫の奥に安置されている大型ゲッター炉心――それを見てブライは牙を剥き出しにし、にやりと獰猛な笑みを浮かべるのだった……。

 

 

第78話 深き海の底から その2 へ続く

 

 




今回は短いですが此処までです。77話、78話は短い話で流星夜を切り裂いては半分オリジナルで武蔵をメインでやろうと思うのでここは短めのインターミッション的な話になります。その分後の話はもっと話のボリュームをふやそうと思うのでご勘弁を、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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