第80話 彗星と流星/頑張れ武蔵さん その2
シルベルヴィントのコックピットに響く声を半ば聞き流しながら、アギーハは自分の爪に鑢を掛けていた。
『聞いているのか? アギーハ』
「聞いてるよ、あんたが逃がしたテスラ研の輸送機を追えって言うんだろ? でもねえ、態度悪いんじゃない?」
レーダーで既に捕捉しているが、ゲッター線の反応もある段階でアギーハは追うつもりなんて微塵も無かった。ゲッター線に関われば破滅する。それはアギーハとシカログの生まれた星での常識だ、ゲッター線の調査に向かうと言う段階で祖父母にも両親にもゲッター線から逃げろと口を酸っぱくして注意されていればアギーハも積極的に動こうという気持ちにはならない。
『お前にも手柄を立てさせてやろうと言っているのだぞ』
「あーはいはい、ありがとね、でもあたいはそういうの良いから、あんたから報告を聞いて、ウェンドロ様の所に戻るだけだから手柄とかどうでも良いのさ」
手柄を立てさせてやるではなく、自分の尻拭いをしろと言う意味があるのは判りきっているのでアギーハは余計に動く気にならない。そもそもシカログと離されている段階でやる気なんて物はないのだ。
『……む』
「なに? 聞こえない。用が無いなら通信を切るよ」
鑢で削り終え、ふっと息を吹きかけて綺麗に整ったのを確認しながらアギーハが言うと、ヴィガジが通信機越しで唸り、震える声でアギーハに頼み込んだ。
『試作機等を奪えとは言わん。お前の目から見た戦闘データも記録してくれ、頼む』
「最初からそう言えば良いのさ、ま、ほどほどであたいも手を引くからね」
『それで構わん、頼む』
ヴィガジから頼むと言う言葉を引きずり出したので、アギーハはやっと身体を起こした。
「あんたが遭遇した地球人の機体のデータをこっちに回して」
『判った。すぐに送る、頼んだぞ』
「はいはいっと、気が向いたらね」
シルベルヴィントに送られて来たデータを確認する為に通信を切るアギーハ。気が向いたらと言っておきながらその目は鋭く、完全にスイッチが入っていた。その時だった、既に捕捉していた輸送機から高速で移動する熱源が3つを探知したのだが、その速さは自身の愛機であるシルベルヴィントに匹敵していた。
「へえ、面白いじゃないのさ」
その中にゲッター線反応があるのは判っていたが、ヴィガジから送られて来たデータの中に宇宙で遭遇したゲッターロボではなく、旧式のゲッターロボであると判れば、恐れは無く自分の愛機と同等のスピードを持つ3つの熱源に対する強い興味を抱いていた。
「まずは様子見だね」
だが興味を抱いているからと闇雲に襲い掛かるような真似はしない。確かにアギーハは感情的で、地球人を見下している。だがまぐれか実力かは判らないが、ヴィガジを何度も退けて脱出して見せている。ヴィガジは直情的でそして失態を繰り返しているが査察団に選ばれるほどの実力の持ち主だ。そんなヴィガジが自分の進退が掛かっているところで手を抜く訳がない、その段階でゲッターロボほどでは無いが、地球人も警戒するには十分な相手だとアギーハは判断していた。
「あたいは油断も慢心もしないよ」
まずは様子見、相手の動き方を調べた上でそこから攻め込むのだ。その為に様子見を兼ねて攻撃を仕掛ける事にしたが、ヴィガジの言う手柄等には興味は無く、今後の為を考えた戦いをするつもりだった。
「ま、逃したところであたいの責任じゃないし、輸送機は見逃してやるねえ」
輸送機を確保した所でヴィガジの手柄になる。自分が苦労してヴィガジに手柄を立てさせるほどつまらない物は無く、アギーハは停泊している輸送機に目もくれず、高速で移動する3つの熱源だけをターゲットにし動き出すのだった……。
カリオンの胴体に挟み込むような形で装着された拡張パーツ。それらによって空気抵抗は今まで以上に軽減され、ノーマルのカリオンの2倍近い推進力と加速力を得たカリオン・改のコックピットからスレイはアイビスに通信を繋げた。
「何をしているアイビス。スペック上はアステリオンの方が上なのだぞ、編隊から外れるな」
『ま、まって、バランスが……』
ゲッター2・トロンベとカリオン改はぴったりと地上と空中の差こそあれど、ぴったりと並走していた。だがスペック上はカリオン・改を圧倒的に上回っている筈のアステリオンが遅れている。それはアイビス自身が乗りこなせていないといないと言うのが大きな要因になっていた。
『落ち着いて操縦するんだ。フィリオが君を選んだんだ、操縦は問題なく出来る筈。カリオンと同じ感覚で操縦すれば良い』
「そうだ、スピードと空気抵抗に惑わされず。普段通りに操縦すれば良い」
レーツェル、スレイの助言を聞いて徐々に遅れていたアイビスがスピードを上げてくる。その姿を見てスレイは操縦桿を握り締め、ジリジリとスピードを上げる。
『あまり意地悪をしてやるなよ。スレイ』
「大丈夫です。アイビスはこの程度ではへこたれません、むしろ私に喰らいついてくるでしょう」
スレイの言葉の言う通り、徐々にスピードを上げてくるアステリオンを見て、レーツェルは小さく苦笑する。スレイには越えるべき壁が無く停滞していたが、アイビスにとっては超えるべき壁であり、そして同じプロジェクトの仲間として切磋琢磨して信頼している。スレイが出来るなら自分も出来ると奮起するのは上を目指す上で必要な物だった。
「熱源感知、掛かったようですね」
『えっ!? こ、こんなに早くッ!?』
しかし微笑ましく過ごせるのは此処までだった。レーダーに熱源反応が複数探知された、熱源の大きさからPT・AMサイズ……インスペクターの追っ手を想定通りに引き寄せることに成功していた。計画通りと言えば、計画通りだがまだアステリオンの操縦に慣れていないアイビスからは悲鳴にも似た声が上がった。
「落ち着け、シュミレーターで実戦トレーニングは何回もしているだろう。後は普段通りにやれば問題ない」
『で、でも、あたしじゃこの子を落としちゃうかもしれない』
不安と恐怖で雁字搦めになって動けなくなっているアイビス。以前のままのスレイならアイビスをフォローする事はなかったが、フィリオのメッセージ、そしてコウキによって課せられたハードなトレーニングで仲間意識を芽生えさせていたスレイは不安そうなアイビスを励ます言葉を口にした。
「皆で生き残るんだろう? 私もレーツェルさんもフォローする。まずはやるだけやるんだ。やる前から緊張し、縮こまっていては何も出来んぞ」
1人での作戦ならばこのアプローチが全ての明暗を分ける。いや、もっと言えば自分だけではなく部隊全員の命に関わるのだから緊張するのもわかる、だがだがこの作戦は3人による共同作戦だ。アイビスが失敗しても、レーツェルとスレイがフォロー出来る。だから緊張しすぎるなと言うスレイのぶっきらぼうだが、アイビスを心配する言葉にアステリオンのコックピットでアイビスは小さく微笑んだ。
『スレイ……うん。判ったッ!』
スレイの言葉に一瞬驚いた様子だったが、すぐに普段の明るい声で返事を返す。
『大丈夫そうだな。我々はこのまま南西にしライノセラスが後を取れる方角に移動する。エンゲージポイントはマーカーで指定する、そこまで移動したら反転し応戦する。隊列を乱すなよ、加速してレディバードから引き離す』
「『了解ッ!』」
先陣を切って加速していくゲッター2・トロンベの後を追ってカリオン・改、アステリオンは加速し、それを追って加速してくるインスペクターの機体を振り切らないギリギリの速度を維持したまま荒野を駆け抜けていく。加速のGと、吹っ飛んでいく景色――それらを文字通り全身で感じながらスレイは小さく唇を舐める。新型機で緊張しているのはアイビスだけではない、スレイもまた緊張し、なれぬ機体を必死で使いこなそうとしていた。
『そろそろだ。落ち着いて対応すれば問題ない、3、2、1で反転する。2人の先制攻撃で相手の出鼻を挫くぞ』
今回の作戦の為に特別に搭載されたCTM多目的戦術弾頭弾による開幕先制攻撃、これで相手の多くにダメージを与える。レーツェルの号令にスレイとアイビスの2人は全神経を集中し、0の合図と共にブースト・ドライブを解除、即座に反転しCTM02-スピキュールを全弾発射するのだった……。
DC……ディバインクルセイダーズの開発した大気圏内外、地対地、空対空などの区別なく、あらゆる状況に対応した兵器で、フィリオが基礎設計を行ったからか、恒星や惑星、銀河の名前を関したミサイル群で、その中でCTM02-スピキュールは高速で移動しながら発射するという前提で開発されており、攻撃範囲、攻撃速度共に優秀な多弾頭ミサイルだ。癖が無く、使いやすいと欠点らしい欠点がないミサイルだが、強いて弱点と言うか欠点を上げるとすればその多弾頭ミサイルという性質上非常に嵩張る装備で、カリオン・改、アステリオンでは1回の出撃で使えるのは1回か2回と言う弾数の少なさが欠点だが、開幕先制広範囲攻撃として考えれば1回でも発射できる段階で十分なのだ。
(うわ、こんな風になるんだ。ゾンビみたい)
有人機ならば機体の全身に穴が空けばその機体は駄目だと判断し、脱出しようとするだろう。だが無人機はそんな事はお構いなしで、オイルを撒き散らしながら動くレストジェミラや、ゲシュペンスト・MK-Ⅲを見てアイビスはゾンビと言う感想を抱いていた。
『何を呆けているアイビス! 数を減らすぞッ!』
「わ、判ったッ!」
スレイの叱責で我に帰り、急降下しながらマシンキャノンを掃射し、動きの鈍いヒュッケバイン・MK-Ⅲを的確に撃ち抜いた。だがあくまでマシンキャノンは牽制用の武器であり、装甲が穴だらけになっても手にしているビームソードや、腕に装着されている4連マシンキャノンの銃口をアステリオンに向ける。無機質な機械から向けられる冷たい殺気――それに背筋が冷えるのを感じたアイビスだが、操縦桿をしっかりと握り締め、小刻みにペダルを踏みしめる。
「ふぅううう……ッ」
深く、長く息を吐きその集中力を極限まで高めたアイビスには敵機の動きがとても遅いスローモーションに見えていた。
胴体に風穴の開いているヒュッケバイン・MK-Ⅲの腕から射出されたチャクラムシューターをマニュアル操作を駆使し、あえて左側の動力をカットし、右のテスラドライブだけで高速反転しM-950マシンガンを打ち込みその頭部を破壊すると同時に、手にしていたM-950マシンガンを投げ捨て、腰にマウントしていたアサルトブレードを手に取り気合と共に振り上げる。
「このぉッ!!」
その瞬間に襲ってきた凄まじい衝撃と無機質な殺気に飲み込まれないようにアイビスはアステリオンのコックピットの中で雄叫びを上げる。
「「!!!」」
ライトニングステークを突き出し飛び掛ってきたゲシュペンスト・MK-Ⅲの一撃は装備していたアサルトブレードを犠牲にする覚悟で受け止め、耐えるのではなく受け流すようにして地面に叩きつけ、1度ゲシュペンスト・MK-Ⅲの背中に着地し、それを踏み台にして上空に舞い上がる。それを追ってレストジェミラがその形状を触手状に変えてアステリオンの足へと伸ばそうとした瞬間、凄まじい暴風がレストジェミラの身体を大きく揺らした。
『ドリルストームッ!!』
ゲッター2・トロンベが突き出したドリルから放たれた暴風によって、レストジェミラ、ゲシュペンスト・MK-Ⅲ、ヒュッケバイン・MK-Ⅲの身体が浮かび上がる。
『逃がさんッ!!!』
ブースターで空中に浮遊し、パルチザンランチャー、レクタングルランチャーの照準を合わせようとする。それは無人機特有のパイロットがいないからこそ出来る挙動であったが、スレイ相手では完全に悪手だった。各機体の間に照準を合わせ、カリオン改に搭載されている着弾点指定型CTM-05プレアディスを撃ち込み、ゲシュペンスト・MK-Ⅲ、ヒュッケバイン・MK-Ⅲの装甲から零れているオイルに誘爆させ、空中に浮かんでいたゲシュペンスト・MK-Ⅲ、ヒュッケバイン・MK-Ⅲを纏めて吹き飛ばす。
「スレイ。やっるうッ!」
『何がやるだ馬鹿ッ! アステリオンで接近戦を挑む馬鹿がいるかッ!!!』
アステリオンはその機動力を生かし、ぎりぎりまで近づいてのピンポイント射撃と一撃離脱をコンセプトにしている。そんな機体で敵陣のど真ん中に突っ込んで接近戦を仕掛けるのは愚の骨頂。スレイのお叱りの言葉が飛ぶのも当然だった。
「ご、ごめん」
『全くだ! もっと機体特性を生かした戦い方をしろッ!』
アイビスを叱りながらもカリオン改を操り、CTM-05プレアディスの爆風から生き残った無人機を撃墜するスレイ。
『遅いッ!!』
地上では両腕がライトニングステークのゲシュペンスト・MK-Ⅲを万力のような腕で受け流し、ドリルを振るい粉砕しているゲッター2・トロンベの姿がアイビスの目の前に広がる。
(そうか、ああすれば良いのか)
それはアイビスにとって知らない戦術、考えたこともない戦法だった。機動力、速度、それらを全て十二分に理解しスピードだけではなく緩急を生かして、技術で逃げる。実践と言う緊張感、そして当たれば死ぬという恐怖――それらの中で生存本能を刺激されたアイビスは戦いの中で大きく成長しようとしていた。スレイの自分よりも数段上の射撃術を自分の物に落とし込み、レーツェルの神技めいた操縦技術を自分で再現できる範囲で己の物とする。
「行くよ、アステリオンッ!!!」
蟲のような形状に変形し、荒野を高速で駆けるレストジェミラに照準を合わせ、巡航形態に変形し急降下しながらマシンキャノンとCTMを撃ち込み、カリオン改を追い抜いて急降下する。
『おいアイビス! そんな速度で急降下するなんて正気かッ!?』
スレイの叱責の声がコックピットに響くが、超集中状態のアイビスにはその声は酷く遠くに、そしてぼんやりとした物に聞こえていた。スレイの射撃術、ゲッター2・トロンベの巨体を物ともさせない軽やかな機動、そしてコウキによってやらされたゲッターシュミレーター……その3つは今まではバラバラだった。だがそれが今アイビスの中で1つになろうとした。
「ここだぁッ!!」
地面ギリギリでブレイクフィールドを展開、それを基点にして宙返りをしたアステリオンは強引に機首をレストジェミラの群れのど真ん中に向ける。
「マニューバG-AXッ! ぶち抜けぇッ!!!!」
巡航形態からAM形態に変形し、機体全面に展開したブレイクフィールドは盾であり、矛だ。強引に機体を安定させ、ソニックブレイカーを地面ギリギリで発動させ、それによって得た浮力で重力を跳ね除けアステリオンは、地表すれすれを滑るようにしてソニックブレイカーでレストジェミラを薙ぎ払いながら加速する。その光景はスレイからすれば悪夢のような光景であると同時に、フィリオ、コウキの2人がアイビスにアステリオンを託した理由なのだと納得した。
(あれは私には出来ない……)
あんな特攻めいた、イチバチのマニューバはスレイには出来ない。いや正確にはする必要がないから出来ない。卓越した操縦技術、射撃勘、空間認識能力を持つスレイにとってそんな博打をしなくとも安全に、そして的確に撃ち抜く事が出来る。だからそんな危険な行動に出る必要がないと理性がそれを押し留める。だが戦いの中では、時に強引に、命を賭けて突破口を開く必要がある。そうなった時にスレイは反射的に動き出すことが出来ず、1度考えてしまう。
(私に足りないのはこれか……)
予測出来ないイレギュラーが多発するであろう星間飛行、次々に訪れる脅威に直感的に対応出来る才覚はスレイにはない、それをフィリオ達は見抜いていたのだと巡航形態に変形し、螺旋回転しながら空中に逃れるアステリオンを見てスレイはそう感じていた。
「やったあッ!!! できたあッ!」
本来想定されているプロジェクトTDのマニューバではない、だがアイビスはこの土壇場で、再び自分だけのマニューバを作り上げた。それはアイビスが一歩前に、いや大きく前に踏み出す飛躍となったが、一瞬の気の緩みを無人機は見逃さなかった。
『馬鹿ッ! 喜んでいる場合かッ!』
「え、あっ!?」
岩を砕いて姿を見せたレストジェミラがアステリオンの足に巻きつき、強引に地表に向かって引き降ろす。それを振り解こうとするが、1本、2本と増えアステリオンの推進力を上回る力で引き摺り始める。
『調子に乗るからだ! 今支援にッ! なっ!?』
『く、このタイミングで転移かッ!?』
蹴散らしても蹴散らしても連続転移で現れ続けるレストジェミラにスレイとレーツェルは完全に動きを封じられ、アステリオンの動きを封じたレストジェミラの後方に現れたゲシュペンスト・MK-Ⅲがその手にしたパルチザンランチャーをWモードに変形させ、その銃口をアステリオンに向けた瞬間だった。
『サイフラァァアアアシュッ!!!!!』
白銀の閃光が上空から舞い降りてくると同時にと翠緑の光を周囲に撒き散らす。それはカリオン改、アステリオン、ゲッター2・トロンベには何の被害も与えなかったが、レストジェミラを初めとしたインスペクターの無人機には甚大な被害を与え、無人機達は撃墜こそされなかったが、そのダメージは大きく爆発しその動きを鈍くさせた。
『なんだあの機体はッ!?』
「あんなスピードが出る機体があるなんて……ッ」
スレイとアイビスはPTともAMとも違うプロジェクトTDの機体を上回る速度を持つ白銀の機体――サイバスターへの驚きと警戒を隠せなかった。ただ1人レーツェルだけがその機体とパイロットの事を知っていた。
『サイバスター……ッ! マサキ・アンドーかッ!』
風の魔装機神 サイバスター。DC戦争時に現れ、ハガネと行動を共にしL5戦役後にその姿を消した機体の登場はスレイとアイビスに衝撃を与えた。
「あれがサイバスターッ」
『なんて速さだ……我々の機体よりも遥かに速い』
戦闘データは残されておらず、話で聞いただけのサイバスター。恐らく現行の機体全てを上回る速度を持つとは聞かされていたが、スレイもアイビスも話半分だった。だが実際にその速度を見て、それが真実なのだと思いしらされた。
『武蔵じゃねえのか、その声……エルザムさんか? んだよ、やっとゲッターロボを見つけたと思ったのによ』
『いや、私はレーツェル……いや、今はそんな話をしている場合ではないな』
サイフラッシュで無人機達は手痛いダメージを受けたが、サイバスターの出現を知り、今まで以上の数の無人機が荒野を埋め尽くさんと言わんばかりに出現する。
『そうみたいだな。とりあえずこいつらをぶっ飛ばしてから話を聞かせてくれ』
『勿論だ。スレイ、アイビス。これから敵の本命が出てくる、気を引き締めるんだ』
「『了解ッ!』」
文章通信でライノセラスが近づいて来ている事、ほかに応援が近くに来ている事を伝えるレーツェル。囮となり、敵を引き寄せると言う作戦はサイバスターの登場によってさらなる敵を呼び寄せる事になったので成功したと十分に言えるレベルだ。だが今度はレーツェル達が撤退するのも難しくなる程の敵の増援――しかもここに足止めするように展開される無人機を見れば誰だって指揮官機が現れるまでの時間稼ぎであるということは明らかだった。徐々に強くなる向かい風がレーツェル達に行く末を現していた……。
~東京・浅草~
ノイエDCの決起、エアロゲイターに次ぐ異星人の出現によって地球内は大きな転換期を迎えていた。それでも人の営みは止まらない、確かに再び戦争が起きるかも知れないと言う恐怖はある。それでもそれを恐れて閉じ篭ったりする者はおらず、恐れているからこそ普段通りの生活を行い。その恐怖を紛らわそうとしていた……。
「よっと」
そしてそれは今階段を飛び降りた茶色の学生服を着た少女も同じだった。学校が終わってすぐ待ち合わせ場所に来たのだが、自分よりも早く授業が終わっている筈の兄の姿がない事に眉をひそめた。
「もー、お兄ちゃん。何してるのよ……時間に遅れちゃうよ」
活動的な性格を現しているショートカットの髪型と凜とした雰囲気を持つ少女「ショウコ・アズマ」は腕時計を見て、焦った様子で足踏みをしていた。
「ジャーダさんとガーネットさんの手伝いをするって約束したのに……またどこかで喧嘩でもしてるのよッ! もうっ!「あいたッ!」……ああッ! ご、ごめんなさい」
最近引っ越して来た夫婦であるジャーダ・べネルデイとガーネット・サンディの手伝いをするように祖父のキサブロー・アズマに言われていたのにまだ来ていない兄への怒りで振り上げた拳が歩いていた人物に当たってしまいショウコは慌てて謝罪の言葉を口にする。
「ああ、いや、オイラもぼーっとしてたから悪いのさ」
「い、いえ。私が急に手を振り上げたから、ごめんなさい」
「いやいや、オイラが悪いのさ。気にしないでくれよ」
「いえいえ、私が悪いんです」
短めのリーゼントの上から帽子を被った学生服姿の青年とショウコがお互いにお互いが悪いと謝罪を繰り返す。その姿はショウコが柄の悪い不良に絡まれているように見えた。
「てめえッ! 人の妹に何してやがるッ!!」
「ん? うおッ!?」
そしてそれは喧嘩っ早く、自信家だが、妹のショウコには優しいコウタ・アズマが誤解するには十分な光景で、石段の上から飛び降り、叫びながら拳を帽子を被っている青年に向かって拳を突き出した。だがその拳は簡単に帽子の青年に受け止められ、コウタはその事に驚きながらも着地し、再び拳を突き出す。
「っとと、待て待て、お前は誤解してるって」
「何が誤解してるだッ! 人の妹にちょっかい掛けやがって!」
大きく拳を振りかぶったコウタが青年に向かって駆け出そうとした瞬間。青年とコウタの間にショウコが割り込んだ。
「ストーップ! お兄ちゃんストップッ!」
頭に血が上っていたコウタだが、ショウコが割り込んだ事で虚を突かれ動きを止めた。そしてショウコの話を聞いて、手を合わせて頭を下げた。
「すまねえッ! 俺が悪かったッ!!」
「良いって事よ。誰だっててめえの妹が絡まれてるって思ったら飛び出しちまうもんさ。オイラは気にしてねえよ、むしろ誤解されるような真似をしたオイラが悪いのさ」
「いや、悪いのは俺だッ! すまねえッ!」
さっきのショウコとのやり取りの焼き増しのように謝罪合戦になる。互いにどっちも悪いと謝罪を繰り返しているとショウコが声を上げた。
「あーっ!! 時間! お兄ちゃん時間過ぎちゃってるよッ!」
「なにいッ!? お、おい。あんた、悪い。俺とショウコは用事がある、また2時間もしたらここに来てくれ」
「いや、良いってそんなに気にしなくてよ」
「駄目だ! こういうのはキッチリしねえといけねえッ! 2時間後、またここに来てくれ! 頼むぜ。ショウコ、行くぞ」
「う、うん! 本当にごめんなさいッ!!」
2人揃って頭を下げて駆けて行く兄妹を見て、青年――武蔵は肩を竦めて笑った。
「こりゃ2時間後に来ないと探されそうだなあ。やれやれ」
ジャーダとガーネットに挨拶したらすぐ帰ろうと思っていた武蔵だが、この様子ではあの2人に探されると苦笑し、2時間後に再びこの広間に来ることにし、学生服のポケットからメモを取り出す。
「えーっと……こっちか」
ラトゥーニに書いて貰ったジャーダとガーネットの家の住所を確認し、土産も買わないとなぁと呟いてのんびりと歩き出すのだった……。
この浅草にある脅威が迫っている事を武蔵は知らなかった。
「はぁ……はぁッ! もう冗談じゃないわよッ!」
マフラーとサングラスで口元を隠した女性が裏路地を走りながらそう叫ぶ。その背後からは裏切り者を逃がすなと言う怒号が響き、逃げている女性――アゲハ・キジマは顔を苦々しそうに歪め息を切らして百鬼帝国の追っ手から逃亡を続け……。
「博士ー、ねえ博士。なんで日本になんか来たのさ? 普段みたいに戦場に乱入して、どっちとも戦えば面白いじゃんかー」
柔和な笑みを浮かべた老紳士を博士と呼んだくすんだ金髪の少女はロリポップを口にくわえ、幼いと言う態度だったが、その言葉と瞳には隠しきれない狂気の光が宿っていた。
「ちゃんとした実戦データを提出しないといけないからね。まぁゲームだと思って楽に行こうか、ホルレー」
「りょーかーい。あーあ、でもさぁ、博士ぇ。お綺麗な軍人との模擬戦とかあたしつまらないよ、ねー博士ぇ、ユルゲン博士ぇ……」
ユルゲンと呼ばれた男性は柔和な笑みを崩す事無く、そして少女の狂気を諌めることも無く、周囲を狂気に満ちた瞳で見つめ続ける少女の手を引いて、浅草の街中をゆっくりと歩み続けるのだった……。
第81話 彗星と流星/頑張れ武蔵さん その3へ続く
次回はレーツェルサイドの話をヒリュウ改と向かう所まで書いて、日本のサイドに切り替えます。ヒリュウ改とハガネの合流は次の話にして、視点をぐるりと変えたいと思います。OG2.5のユルゲン博士+オリキャラ、コウタ、ショウコ、ジャーダ、ガーネットに加えて、胡蝶鬼と武蔵と言う感じでイベント盛りだくさんでお送りしたいと思います。
なお筆者はムーンデユエラーズ、ダークプリズンは未プレイなのでそこちょっと違うぜ! 見たいな部分は暖かい目で見てください、一応プレイ動画はポツポツ見てますが、多分理解しきれていないと思いますので、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い