進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第81話 彗星と流星/頑張れ武蔵さん その3

第81話 彗星と流星/頑張れ武蔵さん その3

 

サイバスターのコックピットの中でマサキはほんの少しだけ落胆していた。ゲッターロボを見つけ、武蔵を見つけたと思ったら乗り込んでいたのはエルザム……レーツェルで武蔵ではなかった。

 

「マサキ、落ち込んでるのは判るけど、今は目の前の敵ニャッ!」

 

「左から虫見たいのが来てるニャッ!」

 

シロの叱責とクロの警告を聞き終わる前にマサキはサイバスターを操り、半月状のレストジェミラのブレードを受け止めると同時に蹴りを叩き込み、レストジェミラの細身の身体を蹴り飛ばす。

 

「シロ、クロ! 頼むぜッ!」

 

「はいはーい、お任せニャッ!」

 

「ファミリア使いが荒いのニャ……」

 

サイバスターから射出されたハイファミリアがレストジェミラを追い回し、カリオン改とアステリオンへと近づけさせない。その間にマサキはカロリックミサイルの発射と同時にサイバスターを加速させ、ゲシュペンスト・MK-Ⅲの胴体に深い切り傷を入れて離脱する。

 

「やるな。あんた」

 

サイバスターが離脱すると同時に撃ちこまれたレールガンの弾頭がディスカッターの一撃で傷が入ったゲシュペンスト・MK-Ⅲの胴体に飛び込み、動力を破壊して爆発四散させる。サイバスターの横を通り、反転しミサイルによる先制攻撃を放つカリオン改を見てマサキは思わず通信でそう声を掛けた。

 

『もっと派手に暴れてくれても良いぞ。私が楽になるからな』

 

「そうかい、ならもっとド派手に行くとするかッ! シロッ! クロッ! さっさと片付けて本命を引きずり出すぜッ!」

 

マサキもどこからか自分を見ている誰かの視線を感じていた。相手の思惑通りに戦い疲弊した状態で敵の本隊とぶつかるつもりはない、相手が転移で増援を送り込んでくるのは見ていた。だがそれも無尽蔵ではない、ここで破壊しつくされるわけには行かないと判断させ、敵を引きずり出すことを考えていた。

 

『ブレイクフィールドONッ! ソニックブレイカーGOッ!!!』

 

『行くぞトロンベッ! 駆けろその名の如くッ!!!』

 

そしてそれはレーツェル達も同じ考えで、無人機への攻勢を強める。カリオン改とハイファミリアが無人機を追い、その装甲を傷つけ、そこをサイバスター、ゲッター2・トロンベ、アステリオンが撃墜する。ハイファミリアはサイバスターからのエネルギー供給があれば半無限動力で、カリオン改は武装全てが実弾およびミサイルと言うその性質上長期戦には向かない。ここで全て弾薬を撃ち切り、敵の増援を全滅させると言わんばかりの勢いで攻撃を続ける。攻撃の勢いは激しいが、本命のサイバスター、ゲッター2・トロンベの消耗は少ない。しかしそれをカリオン改、アステリオンが派手に立ち回ることで感じさせず、敵の転移による増援の勢いが目に見えて穏やかになった時……それは現れた。

 

「マサキ、 こっちに何かが向かってくるニャッ! 真っ直ぐサイバスターに突撃を仕掛けてきてるニャッ!」

 

「どっちの方角だッ!?」

 

「こっちで指示をするから勝手にうごかニャないでッ! 右ニャアッ!」

 

クロの指示に反射的にディスカッターを正眼に構えた瞬間、凄まじい勢いで切り込んできた何かとぶつかりサイバスターが大きく弾かれる。

 

「ぐっ! は、速いッ!」

 

態勢を立て直し奇襲を仕掛けてきた機体に視線を向けるマサキ。両腕がブレード状で下半身に脚部のない異形の半人型の機体がサイバスターの上に陣取っているのだった……。

 

 

 

 

 

シルベルヴィントのコックピットの中でアギーハは感心した様な、それとも対等な敵を見つけたような楽しそうでありながら嗜虐的な笑みを浮かべていた。

 

「今の一撃をかわすんだね。流石は風の魔装機神――って言う所だね」

 

警戒するべき地球側の兵器としていくつかピックアップされている機体がある。ゲッターロボは勿論、サイバスター、グランゾン、そしてゾヴォークから技術提供を受けていながら、バルマーの技術を採用したブラックホールエンジンを搭載した機体――それらは事前の調査で警戒するべき地球の機体として記録されており、可能な場合は鹵獲、それが不可能な場合は破壊せよという命令が下されていた。その中でもアギーハが注目していたのは風の魔装機神サイバスター……その速さが自分の相棒であるシルベルヴィントより上なのか、それを確かめたいと言う1つの欲求にも願望を抱いていた。速さとは美しさであり、そして己だけがいる孤高の領域、自分だけが見れるその領域を誰にも見せたくない、しかし誰かに触れて欲しい――速さに対する独特な哲学を持つアギーハは自分の領域に手を伸ばそうとしているのか、それとも自分の領域に踏み込んでくるのか、そんな期待をサイバスターへと抱いていた。

 

「しかしまあ、こんな所で風の魔装機神に出くわすなんて……残り物に福があるって言う地球の言葉は本当だね」

 

だがサイバスターの目撃情報はアギーハ達が地球に来た段階でほぼ0。それに落胆していたのだが、こうしてサイバスターと出会い、出会いがしらの挨拶にも対応して見せたサイバスターにアギーハの興味は完全に向けられていた。

 

『てめえ、何者だッ!? 答えやがれッ!』

 

血気盛んと言う様子で広域通信で叫ぶマサキ。アギーハはそれを無視しても良かったのだが、今回の作戦の責任は全てヴィガジにあり、自分はあくまで応援という事もあり、あえて広域通信で返事を返した。

 

「あたいはアギーハ。インスペクターさ、そうだね。あんた達の星に攻め込んできた異星人の1人って所だよ」

 

マサキ達にも判っていた事だが、こうして面と向かって異星人であると言うこと、そして攻め込んできたと告げたアギーハにマサキ達の間に緊張が走る……だがその緊張は次の瞬間に霧散した。

 

「あ、そうそう。 付け加えとくと裏のリーダーね。よろしくね♪」

 

声のトーンを一転させ、柔らかい声で声を掛けてくるアギーハに気勢を削がれるマサキ達。この裏表の激しさ、スイッチのONとOFFの切り替えの速さもまたアギーハと言う女性の性格だった。敵は冷酷に殺すが、敵として見定めるまでは表面上だけでも友好的に接する。ヴィガジとは違うが、自分の方が圧倒的に上だという傲慢さがアギーハにはあった。

 

『裏? 表は誰ニャ?』

 

『シロ、突っ込むトコはそこじゃニャいでしょ』

 

広域通信で聞こえてきた声、人間とも違う声にサイバスターには猫が乗ってるって言うのは本当なんだと思いながら、アギーハは小さく笑いマサキに向かってある一言を投げかけた。

 

「ねえ、あんた達……シュウ・シラカワを捜してるんでしょ?」

 

『奴を知ってんのかッ!?』

 

シュウ・シラカワの名前が出ただけで一気に頭に血が上ったマサキの声を聞いてアギーハはけらけらと笑う。隙だらけに見えるが、スピードで完全に上回っているからこそこの態度で、今攻撃を仕掛ければ一気に増援に加えて、アギーハも襲い掛かってくる。この隙だらけの時に攻撃するよりも、少し出も情報を引き出すべきだと判断したレーツェルは文章通信で攻撃停止と言う文を送り、マサキとアギーハの会話を邪魔するなと言う通達を入れてた。

 

「ま、話だけはね。あたいも知ってるよ。あいつ色々と好き勝手やってくれちゃったからさ」

 

グランゾンとシュウ・シラカワ。ゲッターについで警戒する相手であり、ゼゼーナンが何かを仕掛けていると言う情報はウォルガでも掴んでいた。しかしそれ以上の情報は無く、因縁がありそうなマサキを利用して、シュウを発見することをアギーハは考えた。

 

「最も、あの事件はあたい達にとっちゃ都合が良かったんだけどね。あたい達のトップって意味でね」

 

地球人は好奇心が旺盛で何かの情報を掴めば、それを真実かどうか確かめようとする。DC戦争と呼ばれる地球での戦いが起きる前にゾガルが勝手に暴走していた事はウォルガでも大きな問題になっていた。その事に触れれば、マサキ達が気色ばむのを見て計算通りとアギーハは笑みを浮かべた。

 

『何……ッ!? そいつはどういう意味だッ!』

 

「そのまんまの意味さ、何もかも聞こうとしないで少しは自分で考えてみなよ」

 

真実はある、だがその中に虚偽もある。それをどれだけマサキ達が理解し、その中から真実を手にするか、なんせ相手は神出鬼没だ。少しでもグランゾンとシュウを探す相手は多い方が良い。 

 

『ど……どういう事ニャんだッ! マサキッ!?』

 

『そいつは こっちが聞きてえぐらいだぜ……ッ! でもこいつが何かを知ってるのは間違いねえッ!』

 

マサキの怒りようから相当深い遺恨があるのは明らかで、マサキを利用することを考えたのは間違いではないと判り笑みを浮かべ、猫撫で声でアギーハはマサキに声を掛けた。これが駄目押しになると判っての問いかけだ。

 

「さ、細かい話は抜きにして……あんた、シュウ・シラカワの居場所を知らないかい? あたい達のトップがお礼を言いたいそうなんだよ。地球人同士何か知ってるだろ? それを教えてくれたら見逃してやるよ」

 

圧倒的な上から目線での言葉、そして甘い猫撫で声は挑発としか受け取ることが出来ない。それに気が短いマサキは完全に乗ってしまった。

 

『待て! ま『うるせえッ!何が見逃してやるだッ! こうなったら、力ずくでも訳を聞き出してやるぜッ!』

 

レーツェルの言葉を遮ってアギーハへの啖呵を切ったマサキ。それこそがアギーハの狙いだった、今まで沈黙していた無人機の群れが再び現れ、レーツェル達を取り囲んだ。

 

「ふふふ……レディの扱いが下手ね、ボク。そんなんじゃ、あたいのダーリンみたいなシブい男になれないわよ」

 

『こ、この!  ふざけやがってッ!! シロ、クロッ! 行くぜッ!』

 

「ふふふ、少し遊んであげるよ。シルベルヴィントと サイバスター……どっちのスピードが 上か、ハッキリさせときたいからね」

 

今までのふざけた雰囲気が一転し、冷酷な気配を纏うアギーハにマサキは息を呑み、自分がアギーハの手の中で踊らされている事に気付いた。だが今更止まることもできず、完全に冷静さを失った様子で向かってくるサイバスターを見て、アギーハは余裕の表情を浮かべたまま操縦桿に手を掛けるのだった……。

 

 

 

 

レーツェルはゲッター2・トロンベを操り、最後の敵の増援だと思われるゲシュペンスト・MK-Ⅲとヒュッケバイン・MK-Ⅲを相手にしながらスレイとアイビスに通信を繋げた。

 

「アイビスとスレイはマサキの支援に入れッ! 地上は私が何とかするッ!」

 

完全に冷静さを失っているマサキはアギーハに完全にイニシアチブを取られていた。このままでは撃墜されるのも時間の問題だと判断し、レーツェルはアイビスとスレイに援護に向かうように命令した。

 

『で、でも、敵の数が多すぎますよッ!?』

 

『いくらなんでも無謀だと言うものだッ!』

 

敵の数が多すぎる、いくらレーツェルが凄腕だったとしても数の不利が過ぎるとアイビスとスレイはその命令に反対した。

 

「大丈夫だ、ツグミ君からヒリュウ改からの迎えと合流したと言う通信が入った。ライノセラスもこちらに後4分もあれば合流する、その後は撤退に切り替える。しかしこのままではマサキが離脱出来ない、それは避けねばならん」

 

ゲッター2・トロンベは地中に潜って逃げることも出来る。殿とおとりを務めるのは最善の機体だ。だが、サイバスターは完全にシルベルヴィントに捕捉されている。危険度で言えばマサキの方が圧倒的に上なのだと説明され、アイビスとスレイは空中で激しいドッグファイトを繰り返しているサイバスターとシルベルヴィントの戦いにその機体を滑り込ませた。

 

『はははッ! 良いね良いねッ! そらどんどん掛かってきなよッ!!』

 

3対1になってもアギーハの余裕は消えなかった。むしろその状況を楽しんでいる節さえあった、それだけアギーハはスピードに拘り、そして自分が負けないと言う自負を持っていた。

 

(だがそこが付け込む隙になる)

 

己もスピードには自信を持っているからこそ、アギーハの考えている事は手に取るように判る。3対1でも幻惑し、自分が圧倒的な有利な状況で負ける訳がないと思っているこの状況こそがレーツェルの作り出そうとしていた状況だった。高速で頭を回転させ、上下左右から向かって来るミサイルや、パルチザンランチャーによる狙撃をゲッタービジョンを応用し、回避しながら的確にその数を減らしながら、レディバードを出発してから念入りに準備していた策がその効力を発揮するときを待った。

 

『さあ行くよ、坊やッ! 風の魔装機神の力をあたいに見せてみなよッ!!』

 

カリオン改とアステリオンの攻撃を緩急を使い、挟撃を同時に回避しサイバスターへと肉薄するシルベルヴィントの両腕のブレードが光を放つ。

 

『抜けたぞッ!』

 

『気をつけてッ!!』

 

マサキへの警告の言葉を口にし、即座に反転してシルベルヴィントを追うカリオン改とアステリオン。だがシルベルヴィントとは圧倒的な速度の差があり、シルベルヴィントへ追いつくことが出来ない。高速でサイバスターへ肉薄し、その両腕のブレードを振るうシルベルヴィント。そのスピードに加え、緩急を混ぜる事でその姿がぶれる。

 

『あ、当たらないッ!?』

 

『くっ! 操縦の腕が違いすぎるッ!』

 

そのぶれた姿にスレイとアイビスは幻惑させ、背後を取っているのにシルベルヴィントの姿を捉える事が出来ないでいた。サイバスターの直前で更に加速し、すれ違い様にシルベルヴィントの高周波ブレードとサイバスターのディスカッターが交錯する。

 

「こいつもくらえッ!!!」

 

姿勢を崩したのはシルベルヴィントだった、即座に反転し放たれたカロリックミサイルがシルベルヴィントの背中で爆発し、シルベルヴィントが僅かに高度を落とす。

 

「どうだッ!! 何時までも甘く見てるんじゃねえッ!」

 

確かにシルベルヴィントは速かった。だがそれだけだった、風の魔装機神操者であるマサキは空気の流れを読み、不自然な風の流れをその全身で感じ取り、目で見るのではなく心の目でその姿を捉えたのだ。

 

『アハハハッ!!……ハハハハッ! 良いね良いねッ!! 流石だよ、坊や。風の魔装機神ってのは伊達じゃないみたいだねえ』

 

墜落するシルベルヴィントから狂気と歓喜の入り混じったアギーハの声が響いた。事実アギーハは楽しかった、そしてそれと同時に煮えたぎるような怒りも感じていた。自分のいる世界に踏み込んでいる者がいると言う歓喜、そして自分だけの神域に相手が無遠慮に踏み込んできたことに対する怒り――アギーハの中でスイッチが切り替わり、それに呼応するようにシルベルヴィントの全身のスラスターが火を噴いた。

 

『どうやら、あたいはあんたを甘く見てたようだ……次は本気で行くよッ!』

 

墜落していたシルベルヴィントが一瞬で浮上し、残像を作り出しながらサイバスターへ肉薄する。

 

「お決まりの台詞を言いやがってッ! きやがれ! 何度だって叩き落してやるッ!」

 

『だったら、かわしてみなッ! さっきみたいにさぁッ!』

 

マサキはこの時1つ思い違いをしていた。シルベルヴィントの最大加速がさっきのものだと思いこんでいた、それよりももう一段階速い速度をシルベルヴィントは残していた。マサキが見切ったと思った瞬間、その姿がぶれディスカッターが空を切り、背後からの凄まじい衝撃にマサキは苦悶の悲鳴を上げた。

 

「何ッ!? ぐうっ!?」

 

完全に捉えていたシルベルヴィントの気配を見失った。ただ速いだけでサイバスターの知覚感覚を潜り抜けた事にマサキが驚き、態勢を立てなおす僅かな時間で更に数発の攻撃が叩き込まれる。

 

『ほらほら、どんどん行くよッ!!』

 

サイバスターの回りを回転しながら爆発的に加速を高めていくシルベルヴィント。今サイバスターが何10体ものシルベルヴィントに囲まれているようにマサキにも、スレイ達にも見えていた。

 

『こ、このままじゃ! スレイッ! CTMで何とかならないッ!?』

 

『馬鹿を言えアイビスッ! ここで攻撃してみろサイバスターだけを攻撃することになるぞッ!』

 

支援をしようにもシルベルヴィントの速さにカリオン改とアステリオンのセンサーは誤認を繰り返しており、ロックオン機能は殆ど死んでいる。その上サイバスターを取り囲むように移動しているのでシルベルヴィントがよければサイバスターに命中するという状況にスレイとアイビスは支援を言う手立てを完全に防がされてしまった。しかもその上無人機からの攻撃もあるので、それを避ける為にサイバスターから距離を取るしかないと言う状況に追い込まれていた。スレイとアイビスの中に焦りが生まれた時ゲッター2・トロンベのレーツェルから通信が入る

 

『2分後にライノセラスからの支援砲撃が入る、その後隙を作り出す! そこを畳み掛けるんだッ!』

 

『隙ッ!? そんなのどうやって』

 

『説明をしている時間はない! 今2人で出来る最大攻撃をすればいいッ!』

 

レーツェル自身も余裕はさほど残されておらず、半ば怒鳴りつけるようにスレイとアイビスに指示を出し無人機の群れに向かって重力弾とドリルを使い分けその数を減らそうと奮闘するが、ゲッター2・トロンベに対するインスペクターの警戒は凄まじく、PTの代わりにアーチンなどの無人の偵察機を送り出し、スパイダーネットや空中機雷を用いてゲッター2・トロンベの移動できる範囲を少しずつ削り始める。

 

『レーツェルさん!』

 

『アイビスッ! 今はサイバスターだッ! 与えられた命令を優先しろッ!』

 

レーツェルが追い込まれているのを見てアステリオンが降下しようとするのをスレイが一喝して止める。シルベルヴィントの攻撃によってウィングを破壊され高度を落としている。鹵獲もしくは撃墜されるのが時間の問題であるという事をスレイは悟っていた。

 

『でもあたしじゃ』

 

『フォローしてやる、好きに飛べッ! マニューバG-AXとマニューバRaMVsをあわせるぞッ!』

 

『そ、そんなこと出来るの!?』

 

『出来る出来ないじゃないッ! やるんだッ! 行くぞッ!!』

 

アイビスに強い口調で檄を飛ばし、無人機の攻撃をかわしながら再びサイバスターの元へ向かうカリオン改。アイビスは少しの間カリオン改とゲッター2・トロンベを交互に見つめ、自分が何をするべきか、今最善の選択は何かとは考えアイビスはアステリオンの操縦桿を握り締めた。

 

『やってやる! やってやるさッ!!』

 

カリオン改の後を追ってサイバスターとシルベルヴィントのほうにアステリオンを走らせる。

 

「ぐっ! くそッ!」

 

『ほらほら、どこを狙ってるんだいッ!』

 

舞うように加速と減速を組み合わせ、マサキを翻弄し続けるアギーハ。その動きを言葉に完全にマサキはペースを取られ、集中力を失っていた。超音速の戦いの中で集中力を失ったことで反撃する事も出来ず、防御する事がやっとと言う状況で徐々にレッドアラートが灯っていく光景に焦りが募り、強引に反撃に出るマサキ。

 

『ほらほら、鬼さんこちら、手の鳴る方へ』

 

「ぐっ、やっぱりあたらねえッ!? ぐあっ!?」

 

しかしそんな破れかぶれの攻撃に当たるほどアギーハは甘くは無く、痛烈な一撃を喰らい、右のウィングまで破壊されサイバスターの速度は完全に殺された。

 

『そんなのは当たらないねッ! そろそろとどめだよッ! はっ! あんたらなんかおよびじゃっ!?』

 

アギーハがとどめを誘うと動き出した瞬間。ライノセラスの主砲とライノセラスの護衛機のヴァルキリオンの一斉射撃がシルベルヴィントに向かって放たれた。奇襲ではあったがその攻撃は十分に見てから躱す事は十分に可能だった。しかし避けた瞬間に撃ちこまれたドリルにシルベルヴィントの装甲が大きく軋みを上げた。

 

『ドリルロック、ゲッター2の切り札の味はどうだッ!』

 

ドリルミサイルやドリルアタックとは違う、ゲッター2の肘部から切り離し射出する文字通りゲッター2の最後の切り札。それがドリルロックだ。完全に攻撃手段を失うというリスクを背負っているが、その破壊力、速度共に段違いの一撃がシルベルヴィントの腰から右肩の装甲を抉るように突き抜けた。

 

『ぐっ! やっぱりゲッターロボに関わると……きゃあッ!?』

 

油断していたわけではない、だが飛行能力のないゲッターロボならば地上に釘付けにすれば良い。そう思っていたからこそ対応の遅れたアギーハ、そして続け様に襲ってきた衝撃にアギーハは思わず悲鳴を上げた。

 

『いけええええッ!!』

 

『闇雲に撃つなアイビスッ!!』

 

マシンキャノンを乱射しながら両手にM-950マシンガンを持ったアステリオンの一斉射撃とその後をぴったりとついているカリオン改から放たれたCT-Mの弾雨がシルベルヴィントの装甲を容赦なく抉る。加速力を得る為に装甲を薄くしているシルベルヴィントは避ける事が前提であり、こうして完全に動きを止めた状態では旧式の武器でさえ危険な威力となっていた。

 

「しゃあッ! 今のうちだッ!」

 

そちらの防御にアギーハが気を割いた瞬間サイバスターは一気にシルベルヴィントを振り切ることに成功していた。

 

『ちいっ! 待ちな坊やッ!?』

 

それを見てアギーハがそれを追おうとするがカリオン改の放った高速長距離射程特殊レールガン「ケルベロス」の音速を超えた2発の弾丸を感知し、それを避ける為に上昇した瞬間白銀の流星がシルベルヴィントを貫いた。

 

『いっけぇえええええッ!!!!』

 

『くうっ!?』

 

最大速度のまま突っ込んできたアステリオンのソニックブレイカーに弾き飛ばされるシルベルヴィント。だが命中の瞬間に後退した為、仕留め切るには足りなかった

 

『このシルベルヴィントを捉えるとはね……ッ! だけど、浅いんだよッ!!』

 

自分の領域に踏み込んできたが、まだスピードが足りないと吼え、態勢を立て直したアギーハの視界に広がったのは紅蓮の彗星と白銀の流星が絡み合いながら自身に向かってくる光景だった。

 

『遅れるなよアイビスッ!』

 

『わ、判ってる!』

 

巡航形態に変形したアステリオンとカリオン改が螺旋を描くように空を駆け、回転しながら放たれるミサイルの嵐に完全にシルベルヴィントは飲み込まれた。

 

『『ソニックブレイカーセットッ!』』

 

『マニューバGーAXッ!』

 

『マニューバRaMVsッ!!』

 

『『ゴーッ!!!』』

 

真っ直ぐにシルベルヴィントを貫かんとするアステリオン、その周囲をバレルロールをしながら突っ込んで来るカリオン改から撃ち込まれるバルカンとミサイルは狙いなど定まっていない、その速度と攻撃範囲で完全にシルベルヴィントの動きを封じていた。

 

『くっ、舐めるんじゃないよ! 小娘がッ!』

 

しかしアギーハも女の身でありながらウォルガの査察団に選ばれるほどの女傑だ。しかもその専門は高速戦闘、地球人にスピードで負ける訳がない。負けてはならないと言うプライドがアギーハの命運を分けることになった。

 

『なっ!?』

 

メガビーム砲とボルテックシューターで迎撃しようとした瞬間――アステリオンとカリオン改のブレイクフィールドが互いに干渉し、2機を同時に跳ね除け強引にシルベルヴィントの視界から白銀の流星と紅蓮の彗星の姿が消え、アギーハの目の前に現れたのは燃え盛る紅蓮の不死鳥の姿だった……。

 

「アカシックバスタァァアアアアアーーッ!!!」

 

燃え盛る紅蓮の不死鳥はサイバスターだった、火炎を纏ったその一撃はシルベルヴィントを完全に貫いた。

 

『ぐうっ! ば、バランサーがッ!!』

 

攻撃を此処まで連続で受けたことはシルベルヴィントにもアギーハにも未知の事で、バランサーや機体のコントロールに関係する部分が不調を次々に訴えた。

 

『うあああああああッ!!!』

 

『これで決めるッ!!』

 

その直後に互いのブレイクフィールドを干渉させ、弾かれていたカリオン改とアステリオン改が上下から挟み打ちにするようにソニックブレイカーを展開し突っ込んできたのはその直後の事で高周波ブレードを辛うじて盾にし、コックピットを守ったアギーハだったが、その余波で推進系まで破壊された。バランサー、推進系、そして武器まで失った……無理をすればまだ戦えない事はなかったが、今回の出撃自体がヴィガジのフォローであり、これ以上は自分の命に関わると判断した。

 

「これでどうだッ!」

 

『あーはいはい、あたいの負けだよ。ま、今回は少し顔を見せるだけだったのが少し熱が入りすぎただけだし、そっちの輸送機も戦艦に合

流したみたいだから、これ以上やってもあたいには何の旨みもないね』

 

「逃げるのか!」

 

最後まで挑発するような素振りを隠さず、続ける意志もないと言う様子のアギーハを逃がす物かとマサキが声を荒げる。だがアギーハはその挑発に乗る事はなく、最後までその言動と調子を崩す事はなかった。

 

『逃げるんじゃなくて帰るのさ、今回の勝負はとりあえずあんた達の勝ちで良いよ、でも今度は最初からもっと本気で行くよ。じゃあねえ~♪』

 

転移で逃げるシルベルヴィントの無人機達、転移されては追う事など出来ず。マサキ達はその場に呆然とした様子で残された。

 

「ちっ、逃がしたか」

 

逃がしたといいつつ、マサキは見逃されたという事を判っていた。無人機は無尽蔵に来るのだ、それを盾にしてアギーハが下がればそれでマサキ達は攻撃が出来ない。それが判っているから勝ったというよりも見逃されたというのが強く、マサキはその顔を歪めた。

 

『マサキ、 我々はここを離脱しヒリュウ改と合流するが……君はどうする?』

 

レーツェルは問いかけと言う様子で声を掛けたが、状況も何が起きているのかも判らないマサキはその申し入れを受け入れるしかなく、ゲッター1・トロンベとアステリオン、カリオン改に先導されヒリュウ改へと向かう事となるのだった……。

 

 

 

第82話 彗星と流星/頑張れ武蔵さん その4へ続く

 

 




ちょっと中途半端な形になりましたが、今回は此処までこの後はヒリュウ改での話もありますし、そこも書こうと思えばもっと文が長くなるので、丁度良い此処できります。次回は浅草での話に移動し、その話の後で伊豆基地やヒリュウ改での話を書こうと思います。話の分割が少しおかしいかもしれないですが、書きたい話やりたい事がかなり多いのでご了承ください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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