進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第85話 蠢く影 その1

第85話 蠢く影 その1

 

百鬼獣の襲撃によって1日延長されたエリシオネスの稼動テスト。それはケンゾウの直感と武蔵の警告をレイカーに検証させる猶予を与えていた。そしてケンゾウから告げられたエリシオネスの実機データを聞いてレイカーはその眉を顰めた。

 

「……ブラックボックスだらけだと?」

 

「ええ。公表されているエリシオネスとは何もかもが違います。ユルゲン博士はデータ取りの為のワンオフのため提出したデータとは異なると主張していますが、これはワンオフ等という言葉で片付けられる次元の物ではありません」

 

公表されているエリシオネスのコックピットはガーリオンなどのAMを改造した物だが、今伊豆基地に運び込まれているエリシオネスはDMLシステムに似た操縦システムに加え、特殊な培養液の中で操縦する物になっているとケンゾウがスキャンしたデータを元にレイカーに説明する。

 

「ケンゾウ博士はどう思う?」

 

「危険極まりないシステムだと思います。それこそアードラー・コッホのゲイムシステムに通ずる何かがあると私は考えます」

 

DC戦争時にアードラーが運用したパイロットを部品とするシステム……ゲイムシステムに似た何かがあると聞けばレイカーも眉をひそめる。

 

「判った。武蔵君の警告もある事だ、稼動テストは慎重に行なおう」

 

レイカーの言う慎重とは、伊豆基地ではエリシオネスの評価点をつけないと言うことだ。伊豆基地が試験機の評価点を一番多く持つので、伊豆基地が評価しない段階でエリシオネスの軍での正規運用はほぼあり得ない段階になった。

 

「私の思い過ごしならば良いのですが……」

 

「いや、警戒することに越した事はない。私も違和感を覚えているからな」

 

ホルレー・ぺキュアと言う少女の戸籍は確かに存在するのだが、公表されている戸籍や過去と彼女の言動が合致しない。黒い噂の多いウォン重工業はイスルギ重工に合併されたという話だが、当然イスルギも真っ黒だ。どこぞの少女兵などを連れてきて、適当な戸籍を与え、危険な機体のパイロットにしていると言う可能性がゼロではない以上レイカーがエリシオネスを評価することはない。

 

「武蔵君達はジャーダ少尉達の所かね?」

 

「今から向かうと言っておりましたが、暫く様子見をしてもらうつもりです。妊婦には悪いと思いますが場所の移動か、警備をつける必要があるかもしれませんな」

 

「それをするのならばその場にいたと言うコウタ・アズマとショウコ・アズマの2人もだな、出来れば学校にカウンセラーなどを配置して対応して貰いたい」

 

伊豆基地の対応が早かったのはジャーダからの連絡が大きかった。それゆえに警備隊が百鬼獣を発見する前に警報を発令させ、アヤを出撃させる事が出来た。しかしだ、逆を言えばアゲハを狙って現れた鬼を武蔵が退治する所を見ていた4人は百鬼帝国にとって邪魔者になったという事を意味している。

 

「百鬼帝国がどこまで行動するかですな」

 

「その通りだ、だが楽観視も出来ない。サカエ、信頼出来るSPをピックアップしておいてくれ。もし鬼が出現したら、その時は保護出来るようにな」

 

了解しましたと返事を返し司令室を出て行くサカエ。その姿を見送り、レイカーが小さく溜め息を吐いた。

 

「やはり問題はありましたか?」

 

「ああ。だがこれは私は撤回するつもりはない」

 

武蔵を伊豆基地所属の戦時中特別召集にする事に対して、伊豆基地ばかりが戦力を集めていると言う不平・不満が出ているが、レイカーはそれを撤回するつもりはなかった。どこに百鬼帝国に成り代わられた司令がいるかも判らず、そして武蔵とビアンの繋がりはDC戦争時から有名だ。ビアンの居場所を知る為に武蔵を危険にあわせるわけには行かず、何を言われてもレイカーは武蔵を伊豆基地所属のままにし、ダイテツ達と行動を共にさせるつもりだった。

 

「元々武蔵君は連邦に良い感情を抱いていない。下手な所に行かせて反発させるわけには行かない」

 

「勘違いしている者が多すぎるということですね」

 

ゲッターロボと言う力を民間人が持っているのは危険だと言う者が多いが、その大半以上がゲッターロボを解析し己の力にしようとしていると見ていい。民間人が操縦できるのならばと思うのは勝手だが、ゲッターロボはそう簡単に操れるものではないのだ。

 

「今は余りにも情勢が危うい……警戒を緩める事も、大きく動く事も出来ないからな」

 

インスペクター、百鬼帝国、謎の生物群――そして本物かどうかと言う疑いは当然残っているがビアンの決起で世論は大きく揺れている……何かの切っ掛け1つで大きく地球の情勢は変わりかねない。武蔵の生存は喜ばしいことであったが、一部の連邦軍高官のせいで武蔵が連邦に見切りをつけて去る事になれば連邦への不満は一気に爆発するだろう。

 

「武蔵君は今の状況ではジョーカーとなるだろう」

 

士気を上げる事にも、下げることにもなりかねない武蔵は文字通り鬼札であり、それゆえにレイカーは慎重に動かざるを得ず、武蔵の生存を大々的に発表することも出来ないのだった……。

 

 

 

 

レイカーが武蔵を伊豆基地所属にしたその頃。パリの連邦政府・大統領府には連邦軍の総司令部からの密告じみた報告があり、その報告を聞いてブライアンは眉をひそめていた。

 

「それに何か問題があるのかな? 総督」

 

『は? いえ、ですから伊豆基地のレイカーばかりが力をつけるのは問題だと……』

 

「反逆者に仕立て上げて追いまわした相手よりも、気心知れた相手の方が誰だって良いと思うだろう?」

 

ブライアンは武蔵の事をさほど知っているわけではない。だがシュトレーゼマン達に反逆者に仕立てられ、その部下に追い回された武蔵は連邦に対する心象が悪いのは判りきっていた。

 

『しかしこの状況ならば、彼を大々的に……』

 

「だから、彼はそんな事を望まないだろうし、何より何時後から撃ってくるような人間を信用する馬鹿には思えないよ。レイカー司令には僕の方から大統領命令として武蔵に対する連邦のすべての命令の拒否権を証明する書類とカードを送ることにしよう」

 

『な!? 正気ですか!?』

 

「正気に決まっているだろう? 大丈夫だよ。彼は地球を守る為に戦ってくれるさ、何も言わなくてもね。話はそれで終わりかい? それなら君達も自分がやるべき事をやりたまえ」

 

苦虫を噛み潰したような顔をして通信を切る総督にブライアンは溜め息を吐いた。武蔵の生存、そして新型ゲッターロボの存在は非常に大きい――なんせL5戦役を終結させた英雄と地球を守った英雄機だ。顔と名前が合致しないとしてもそのネームバリューは凄まじく、それに乗っ取ったものが量産型ゲッターロボ計画だが、それも上手く行っているかと言われるとそうではない。キルモール作戦の失敗、リクセント公国の乗っ取りと、応援・救援に向かわないという旨の連邦軍の司令部からの指令書の流失……それらを挽回する為に武蔵を連邦軍本部の直属に考えている高官は多い。だが武蔵は連邦に対して良い印象は無く、L5戦役を共に戦ったダイテツ達だからこそ協力体制にあるという事を誰も判っていない。

 

(そう簡単になんで御せると思うかねえ)

 

武蔵のようなタイプは決して損得で動くことはない、義理と人情と言っても良いかもしれない。助けられたから助ける、そして地球を守ると言う願いが合致しているから共に戦っているが、百鬼帝国を恐れて穴熊を決めようとしている総司令部の要請等武蔵が受け入れる訳がない。

 

「と言う訳だ。アルテウル、武蔵君への大統領特例の発令とそれを証明する証明書の準備を頼みたい」

 

「お任せください」

 

アルテウルの目に最近野心の光が宿っているのは知っていたが、アルテウルの力がなければ大統領としての仕事は出来ない。何時までこの大統領に席に座っていられるかブライアンには判らなかったが、こうして座っていられる間に出来るだけの事はやろうとしていた。

 

「僕の名前で、ほかの人間が命令権を持たないようにしてくれよ」

 

「……判りました。では完成しましたら日本の量産型ゲッターロボ計画の査察と共に1度伊豆基地に向かうようにご予定を立てておきますね」

 

「ああ。よろしく頼むよ」

 

一礼し出て行くアルテウルを見送るブライアン。そしてそのやり取りを見ていたニブハルが小さく笑みを浮かべ、ブライアンに声を掛けた。

 

「今のこの情勢で日本に行かれるのですか?」

 

「あんまり乗り気じゃないけどね、ブライ議員の量産型ゲッターロボも見ておきたいし、大統領として武蔵君に会わない訳には行かないだろう? さてと、待たせて悪かったね。北米の様子はどうなっているのかな?」

 

インスペクターが活発に活動している北米の様子を尋ねると、ニブハルは報告書を片手に現在の状況の報告を始める。

 

「現在、ラングレーを始めとする北米方面軍基地の約9割がインスペクターに制圧されております、テスラ研も同様で現在一部の職員がインスペクターの人質状態となっております」

 

ニブハルの報告を聞き、先ほどの連邦軍総督の陳述を聞いていた時よりもその顔を歪めた。

 

「北米にはヒリュウ改が降下していると聞いていたけど、それはどうなったのかな?」

 

「はい、現在ヒリュウ改がテスラ研から脱出した面子と合流し脱出を試みております」

 

完全に出遅れた形になるが、テスラ研の研究者の脱出にヒリュウ改が協力してくれているのならば大丈夫だろうと僅かにブライアンは息を吐いた。

 

「インスペクターの様子は?」

 

「各基地を中心とした地区を封鎖していますが、他方面へ侵攻する素振りは見せていません」

 

民間人および基地関係者の避難が完全に完了しているわけではないが、捕虜扱いではないと言う事に安堵したブライアンだが、次のニブハルの言葉にブライアンは眉を顰めざるを得なかった。

 

「ただし、勢力圏内へ近づく者、圏外へ脱出しようとする者に対しては攻撃を仕掛けています。これは大人しくしていろと言う警告だと思われます」

 

「都市部の状態は?」

 

軍関係者、基地関係者ならばこういう事態への訓練も受けている。救援までは耐えれるとブライアンは考えていた。だが民間人はそうではない、都市部への攻撃は行なわれているのか? とニブハルに問いかける。

 

「大規模な攻撃を受けた地区はほとんどありませんが、各ネットワークが寸断され……日を追うごとに混乱が激化しているようです。さらにインスペクターの軍勢に百鬼獣らしき姿も確認されており、百鬼帝国との関係性が匂わされています」

 

インスペクターと百鬼帝国の関係性をにおわす行動――協力体制にあるかどうかも判らないと言うのは嫌な展開だった。しかし判っている事は1だけある、最早地球人に残されている猶予はさほど多くないと言うことだ。

 

「……もう猶予はないね。彼らと連絡は取れそうかい?」

 

「様々な方法でコンタクトを試みておりますが……返答はありません」

 

ジッとニブハルを見つめるが、それが真実かどうかも判らない。暫くブライアンはそうしていたが、首を左右に振った。

 

「難しいのは判っているけれど、何も出来なかったと諦めるわけにはいかない。何とかして突破口を見つけてくれたまえ」

 

「承知致しました。 それで、次のご報告ですが……連邦軍統合参謀本部からインスペクターへの反攻作戦案が提出されております。大統領どちらへ?」

 

「どうせ武蔵君を主力。いや、彼1人に押し付けようと言う魂胆だろう? もっと作戦を煮詰めてから連絡するように言っておいてくれ。僕はアルテウルと共に一度日本に行って武蔵君に挨拶をしてくることにするよ」

 

これ以上話を聞いていても意味はないと報告を続けようとするニブハルを一瞥し、ブライアンは席を立つ。だがその胸中にはもうこの椅子に座ることは数回しかないか、それとももうないだろうと言う確信めいた予感があるのだった……。

 

 

 

 

ヒリュウ改との合流の為にライノセラスに誘導されながら進むレディバードの中でマサキは自分がいない間に何があったのかと言うのをレーツェル達から聞いていた。

 

「ふーん、量産型ゲッターロボねぇ……それはどこの馬鹿が考えんたんだ?」

 

「アメリカのブライという議員だ。とは言え外見だけでゲッターロボと呼べるほどの戦闘力は無く、特機としては中の上っと言った所だな」

 

「ガワだけって事か、しかしゲッターロボを見た時は武蔵を見つけた! って思ったんだが、また探しなおしか」

 

落胆した様子で呟くマサキ、それだけゲッターロボを見て武蔵と思ったのか相当気落ちしているのが見て取れた。その様子を見てクスハが小さく笑った。

 

「大丈夫。武蔵君見つかったらしいですよ」

 

「本当か!? どこで見つかったんだ!? 俺がテスラ研に行く前に地球を3周した時は見つからなかったぞ!?」

 

地球を3周したと言うマサキにツグミはその航続距離と連続稼働時間に目を見開いた。

 

「ねぇ、スレイ。カリオンで地球1周って出来るの?」

 

「今の段階では無理だな、武装を全部外してプロペラントを2つ……いや4つほど必要だな」

 

「うへえ……とんでもないね」

 

自分達の機体から根底から違うんだと言うアイビスを見てスレイは溜め息を吐いた。

 

「んで今武蔵はどこにいるんだ? ヒリュウ改か?」

 

今向かっているヒリュウ改に武蔵がいるのか? とマサキが尋ねる。レーツェルは手にしていた端末を操作し、暫くメールかなにかを確認する素振りを見せてから口を開いた。

 

「今は伊豆基地にいるようだ。3日ほど滞在したあとにアビアノ基地に向かうと連絡が入っていた」

 

今すぐ会えないと判って少し落胆した様子のマサキだが、ヒリュウ改と合流すればその進路はアビアノ基地になる。少し待てば会えると判り、その顔に笑みを浮かべた。

 

「武蔵に会ったら2度とあんな馬鹿はやるなって言わないとな、いや……俺達ももっと強くならないと駄目か」

 

「うん。私もそう思うよマサキ君。武蔵君だけに負担を掛ける訳には行かないしね……」

 

L5戦役の時よりも状況は悪い。だからこそ、あの時の二の舞にならないようにもっともっと強くならなければならないと改めてクスハ達は心に誓った。

 

「話は変るんだが、レーツェルさんよ。あのビアンのおっさんは偽物だよな?」

 

「ああ。我々はビアン博士の指示で動いている、ノイエDCのビアン博士は偽物だ」

 

「やっぱりな。ビアンのおっさんがあんなことする訳無いって思ってたぜ」

 

1つ気になっている事が解決したのかマサキは明るい顔で笑ったが、すぐにその顔を鋭く引き締めた。

 

「レーツェルさんにも、テスラ研の人達にも聞きたいんだけどよ。シュウの奴を見てないか?」

 

武蔵を探すと共にシュウを探していたマサキはどこかでシュウを見てないか? と尋ねる。するとパイロットの待機室の扉が開き、コウキが端末を確認しながらマサキの問いかけに返事を返した。

 

「シュウ……シュウ・シラカワ博士か、いやテスラ研には来てないな、ついでに言うとグランゾンの活動データも記録されていない」

 

「あんたは?」

 

「コウキ・クロガネ。テスラ研の技術主任と防衛主任をしているものだ、マサキ・アンドーだな。話はカザハラ博士達から聞いている」

 

「一々説明する手間が省ける。ところでグランゾンの活動データがないって言うのはどういう意味なんだ?」

 

「簡単な話だ。グランゾンの動力は桁違いに強力だ、地球上で活動すればそのエネルギー反応を感知出来る。少なくともこの半年間の間に

グランゾンが大きく動いたと言う記録はない。まぁ通常稼動の範囲ならばは感知は出来ないから絶対とは言えないがな、レーツェルはどうなんだ?」

 

「いや……南極でのシロガネ轟沈の時から彼には会っていない。ビアン博士ならば何か知っているかもしれないが……私には何も判らない。すまないな」

 

コウキの説明に続いてレーツェルも口を開いたがシュウには会っていないと言う物で、もしかしたらと言う期待を抱いていただけにマサキは落胆する素振りを見せた。

 

「まぁしゃあねえ。また振り出しに戻っただけだ、それにお前らと一緒にいたら案外向こうから来るかもしれないしな!」

 

「ヒリュウ改やハガネに乗ってた方が情報も集めやすいニャ」

 

「闇雲に移動するよりよっぽど確実ニャ」

 

無理に明るく笑うマサキとそれを励ますようにシロとクロがハガネと行動を共にするほうが良いと口々に言う。

 

「判ってる。でも今は今はインスペクターとノイエDCを何とかしなくちゃならねえ。シュウの事は二の次だ」

 

シュウとの因縁があるのはレーツェル達も判っていた、だがそれを飲み込んで地球を守る為に戦うと言うマサキ。半年の間にマサキも精神的に大きく成長し、何を優先するべきかと言う分別がついていたようだ。

 

「こちらコックピット。 ヒリュウ改を確認しました。ランデブーポイントの指定がありますので、そちらまで移動します」

 

ヒリュウ改と言えど複数の輸送機を受け入れる事は不可能だ。1度着陸し、機体や機材の運搬から怪我人の受け渡しを行い。そこからアビアノ基地に向かうと言うことなのだろう。

 

「レーツェルさんはどうするんですか? やはりここでお別れですか?」

 

「いや、ヒリュウ改に我が友が乗っている。アビアノ基地周辺までは我々も付き添う予定だ」

 

ここからアビアノ基地に向かうまでの間に敵の襲撃を受けるかもしれないと不安に感じていたツグミだったが、レーツェルにアビアノ基地まで同行するという言葉を聞いて安心したような表情を浮かべた。

 

「ツグミ。気を緩めるには早い、これからだ」

 

「そ、そうね。ごめんなさい」

 

「怒ってる訳じゃない。ただこれだけの編隊で動くんだ……敵の襲撃がある可能性を忘れるな。バンが戻ってからこれからの方針を再び話し合うことにするとしよう」

 

ヒリュウ改、ライノセラス、そして輸送機が5機……これだけの編隊で動く以上熱源などで感知される可能性は極めて高く、ヒリュウ改と合流できたとしてもまだ安心するには早い……ガーリオン・レグルスと共にこちらに向かってくるヒリュウ改を見つめながらコウキは鋭い口調でそう指摘する。

 

「確かにな、これからだ。皆気を引き締めていこう」

 

「「「「はいッ!」」」」

 

まだ完全に安全圏に入った訳ではない。だが仲間と合流することが出来、希望の芽が生まれたことによりレディバードのクスハ達の顔は明るい物となっているのだった……。

 

 

 

 

 

一方その頃、テスラ研を制圧したヴィガジの元にサイバスターとアステリオン、カリオン・改に手痛い反撃を受けたシルベルヴィントとアギーハが訪れていた。

 

「取り逃がしたと言う訳か」

 

「うるさいね。元々あんたが取り逃がしたんだ。あたいの責任にするんじゃないよ」

 

元々ヴィガジが取り逃がさなければシルベルヴィントもここまでダメージを負う事はなく、責任のすり替えをしようとするんじゃないとアギーハは強気に言い返し、テスラ研の応接間に腰を下ろす。

 

「別にそう言う訳ではない。風の魔装機神が地球に存在すると判っただけで大金星だ」

 

「冗談じゃない。あたいのシルベルヴィントが使えない状況のどこが大金星だい。あんたのガルガウだって使えないじゃないか」

 

サイバスターが存在することが判ったとしてもシルベルヴィントもガルガウも中破して動かせない段階だ。更に言えばグレイターキンとドルーキンも宇宙でのゲッターロボとの戦いで修理段階……インスペクターの中で動かせる指揮官機は全滅してしまっている。

 

「逃げた連中は?」

 

「放置だ。今手にした資料を纏めることを優先する」

 

無人機であれば追っ手を出せるが相手はエースパイロット揃い……数を失うだけならば追っ手を出す意味はない。それに無人機は相当数が破壊されたが戦闘データは十分に取れたので、鹵獲も破壊も出来ないのならば動くべきではないとヴィガジは判断し、ウェンドロにもその旨を説明し、追撃中断の許可を得ていた。

 

「あたいはどっちでも良いさ、少し休んだら宇宙に帰らせて貰うよ」

 

「それに関してだがお前が宇宙に戻る際にガルガウを持って戻って貰いたい」

 

関係ないから帰ると言うアギーハにヴィガジがそう告げるとアギーハは見るからに不機嫌そうに眉を細めた。

 

「は? なんであたいがそんなことをしなくちゃいけないのさ?」

 

「ウェンドロ様のご指示だ」

 

ヴィガジの頼みならば跳ね除けたが、ウェンドロの名前が出てしまえばアギーハもその頼みを聞き入れるしかない。しかし命令まで出されるとなると只事ではない、その命令が出る理由は1つしかアギーハには思い当たる節が無かった。

 

「ダヴィーンの使いが本当に約束通りゲッター合金を持ってきたってことかい」

 

「そのようだ。ネビーイームで我々の機体をゲッター合金で改修し、地球人の機体のデータを元に改造する。その間は我々の活動は防衛とデータのまとめになるそうだ」

 

「なんとまぁ、随分と慎重だねえ」

 

ウェンドロらしからぬ戦術だと言おうとしたアギーハだったが、ヴィガジに名前を呼ばれ軽い口調で判ってるよと返事を返した。

 

「じゃあ逃げた連中は無視って事ね、判ったよ」

 

「業腹だが仕方あるまい。シカログが迎えに来るから後は頼む」

 

不平不満を言うと思いヴィガジはシカログを迎えに呼んでいた。案の定シカログの名前を出すと、途端に上機嫌になり鼻歌交じりで応接間を出て行くアギーハをヴィガジは呆れた様子で見送った。

 

「……だが確かにウェンドロ様らしくはないな」

 

ゲッター合金を手に出来たのは非常に大きな戦果だ。だがゲッター線を安易に使っても良いものなのか、しかもそれが自分達の機体に使われると言うことには流石に思う事がない訳ではない。何故と言う疑問がヴィガジの脳裏を過ぎったが、ヴィガジはその考えを振り払うように頭を振った。

 

「ジョナサン・カザハラ。時間だ、情報を提出してもらおうか?」

 

『準備は出来ているよ。すぐに持って行こう』

 

今自分がやるべき事はウェンドロの行動に疑問を抱くことでも不信感を抱くことでもない。自分がしくじったことで失った信頼を取り戻す事だと気合を入れるヴィガジだったが、ジョナサンが運んで来た紙媒体の資料を見て途方に暮れることになるとはこの時のヴィガジは想像すらしていないのだった……。

 

 

第86話 蠢く影 その2へ続く

 

 

 




次回も今回に続き状況整理の話になります。主にヒリュウ改とクスハ達の合流の話、ハガネでの話、アビアノ基地での話などを書いて行こうと思います。後はシャドウミラーが動く辺りでオリユニットを出しますかね、黄色ユニットで狂犬見たいのをね? それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

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