進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第21話 スターバク島の死闘 その2

第21話 スターバク島の死闘 その2

 

メカザウルスの強襲、更に加えてテンザンとトーマスの妨害。それはハガネのPT隊を窮地に追い込んでいた……

 

「キシャアアアッ!!!」

 

戦闘機とは比べようも無い自由な機動で襲い掛かってくるバドはゲシュペンストやシュッツバルトの攻撃を嘲笑うように回避し、ハガネのブリッジに真っ直ぐに向かう。

 

「ちいっ! ならこれでも喰らえッ!!」

 

ツインビームカノンを回避したバドにライが舌打ちと共に搭載しているミサイルコンテナからスプリットミサイルを放つ。弾頭が分裂した事により回避させることなく、いくつか被弾した。だがバドはダメージを受けている素振りを見せる所か、反転し一直線にシュッツバルトに向かって降下してくる。

 

「ライッ! 防御してッ!」

 

「そこ……ッ!!」

 

アヤのゲシュペンストTTと、ラトゥー二のヒュッケバイン009の放ったショットガンの弾雨。それは僅かにバドの機動をずらす事に成功したが、完全に逸らすことは出来ず。コックピットから、右肩へバドの嘴が突き刺さる

 

「うぐああああッ!! な、舐めるなッ!!!」

 

嘴に右肩を抉られながら、コールドメタルナイフでバドの目を貫く

 

「ギシャアアアアッ!!!」

 

苦悶に暴れるバドを押さえ込み何度も何度もナイフを突き立てるシュッツバルト。何度目かの刺突でバドの脳を破壊したのか、ぐったりとしたバドを離すとシュッツバルトの機体を鮮血に染めながら、その死骸が海へと沈んでいく

 

「はー……はーッ……」

 

荒い呼吸を整えるライ。だがライ以上に搭乗しているシュッツバルトのダメージが大きい、右腕は完全に破損。更に全身にも細かい傷が走っている。

 

「ライ。お前は下がれ」

 

「し、しかし!」

 

イングラムの下がれという指示を不服として、ライが反論する。だが誰から見てもシュッツバルトは戦闘に耐えられる状況ではないのは明白だった

 

「ハガネに退避しろと言うわけではない、ハガネの艦首に移動しろ」

 

「……ッ了解しました」

 

直接戦闘に参加できないのなら母艦を守れと言われていると理解したライは唇を噛み締め、ハガネへと後退していく。

 

「ちいっ! 化け物めッ!」

 

「マサキ! 右から来てるニャッ!!」

 

シロの言葉に判ってると返事を返すマサキ。空を飛翔するサイバスターには4体のバドが纏わりついている、だが流石のバドもサイバスターの攻撃力を知ってか、牽制程度のミサイルと火球を繰り返しサイバスターの動きを阻害している。その動きは明らかにサイフラッシュを警戒しての動きだ。

 

「そらよッ!!」

 

「てめえ! テンザン! 状況がわかってんのかッ!」

 

ハガネにメカザウルスを誘導し、更にガーリオンの機動力を生かし、PT隊の動きを妨害しているテンザンにリュウセイが怒鳴り声を上げる。だがテンザンはそんなリュウセイを見て更に楽しそうに笑う

 

「はははッ! 判ってるに決まってるだろ? この化けもんを利用してお前達を倒すんだよッ!」

 

そう笑うと再び旋回し、DC陣営に向かおうとしていたバドの背後からマシンキャノンを当て、バドの注意を引き付ける

 

「はっはーッ! こりゃ楽だ。なんせ俺達が手を下さなくてもいいんだからよッ!!」

 

「貴方って人はッ!」

 

自分は安全な所で、メカザウルスの誘導を続けるトーマスにリョウトが激昂するが、トーマスは飄々と告げる。

 

「おいおい、何を怒ってるんだ? 俺達DCが地球を護るって言っているんだぜ? それに逆らうお前達が悪いのさッ!!」

 

レールガンの一撃がリオンの右肩を捉え、海面に向かって弾き飛ばす。なんとか体勢を立て直したリョウトの目の前には大口を開けて、リオンを噛み砕こうとするズーの姿が飛び込んでくる

 

「おらああッ!!」

 

「グオオオオンッ!?」

 

グルンガストが割り込み、ズーの横っ面に拳を叩きつける。

 

「す、すみません!」

 

「礼はいいッ! それより戦線を崩すなッ! お前はリオ……あの、青いゲシュペンストとチームで動けッ!」

 

ズーと対峙しているイルムはリョウトにそう怒鳴りつける。飛行する能力を持つ者が少ない以上、飛行能力を持つリオンはバドとの戦いに必要になる。

 

「お前の事は信用してやるッ! ここを乗り切るのに協力しろッ!」

 

「は、はいッ! 判りましたッ!」

 

リオと合流するリョウトを見ながらイルムはコックピットの中で大きく舌打ちする。ただでさえ強力なメカザウルス、それに加えてテンザンとトーマスの妨害もある。戦線を維持する事すら難しい情況だ……武蔵の大雪山おろしでキラーホエールの方向に追いやられたリオンとバレリオンも再び行動に出るが、テンザンとトーマスとは異なり、メカザウルスを撃墜しようとする。

 

「くっ、うわああああッ!?」

 

「来るな来るな来るな……あああああーッ!!!」

 

バドに組み付かれたリオンとバレリオンはコックピットを直接攻撃され、脱出する隙も与えられず搭乗機体と共に爆発する。メカザウルスの攻撃は終始コックピットを狙った必殺の攻撃だ、それに対してPTの攻撃は何発も当ててやっと有効打になるほどに攻撃力と防御力に差があった。

 

「あーあ、世界を救うとか言うから死んじまうんだよ。馬鹿見てぇ」

 

「全くだな、これだから馬鹿は御しにくいぜ。ほらお前らも死にたくなければ、俺達の命令に従いな」

 

死んだ同僚に弔いの言葉を投げかけるでもなく、罵倒するテンザンとトーマス。だが2人の指示をリオン達は聞くことは無く、編成を組んでメカザウルスへと向かっていく。今ハガネとハガネのPT隊を攻撃しようとしているのはテンザンとトーマスの2人だけだった。メカザウルスと言う脅威の前に、馬鹿のようにハガネの撃墜に拘る指揮官にDCの兵士と言えど従うつもりは無かったのだ。

 

「うおらあああああッ!!!」

 

せめてもの救いは10体近く出現したメカザウルスをゲッター3が1体で押さえ込んでいる事だ。

 

「掛かって来いッ! この腐れ蜥蜴共ッ! オイラとゲッターは逃げも隠れもしねえッ!!」

 

暴れ回るゲッター3。グルンガストは1体を相手取るのがやっとだが、ゲッターは複数を相手に戦っている。改めてゲッターの強さを知るイルムだが……だがグルンガストとて特機だ。ここで先陣を切るのは己の役目と自らを鼓舞してズーへと立ち向かう

 

「行くぜッ! ブーストナックルッ!!!」

 

放たれた鉄拳がズーの生身の頭部を吹き飛ばし、そのままテンザンの駆るガーリオンへと迫る。

 

「ちっ! うっとうしいってのッ!」

 

舌打ちしながら回避するガーリオン。だが、イルムの目的はガーリオンを攻撃することではなく、テンザンとリュウセイを引き離すことにあった。

 

「リュウセイ! いつまでもあいつに足止めを喰らってるんじゃねえッ! 早く支援に回れッ!」

 

PT形態のビルドラプターを駆るリュウセイを怒鳴りつける。今脅威なのはズーでもガーリオンでもない、ハガネを撃墜しようとしているバドだ。仮にテンザンを撃墜したとしても、ハガネが落ちればその時点でイルム達の負けとなる。だからハガネを護れと指示を出す

 

「その通りだ。リュウセイ、今お前の成すべきことに集中しろ、テンザンの相手は俺がする」

 

「教官……わかったッ!!」

 

グルンガストとビルトシュバインが並び立つ姿を見て、ビルドラプターを変形させるリュウセイ。飛び立ったビルドラプターを見つめながらイルムがイングラムに声を掛ける。

 

「少佐……そうは言ったが、これはかなりキツイぜ」

 

「判っている……これは撤退戦になる。問題はタイミングだ」

 

DCとメカザウルスとの三つ巴。このまま戦っていれば、補給をする余裕も無い以上、アイドネウス島に辿り着けたとしてもとてもではないが戦うことは出来ない。この絶望的な状況をどうやって切り抜けるか? イングラムとイルムは顔を歪めながらメカザウルスを睨みつけるのだった……

 

 

 

 

ハガネのブリッジに座るダイテツの表情は険しい。何度も危機と呼ばれる物は乗り越えてきた、だが今回の状況は余りに酷すぎる。歴戦の艦長であるダイテツといえど、この状況で勝利するのは無理だと判る。口に咥えていたパイプを握る

 

「伍長。PTの消耗具合はどうなっている」

 

「は、はい! ライディース少尉のシュッツバルト、メイロン曹長の量産型ゲシュペンストの損傷率が7割を越えています。更にべネルデイ、サンディ少尉の量産型ゲシュペンストの損傷率も5割を越えようとしています!」

 

悲鳴と言ってもいいだろう、エイタの報告にダイテツの顔は険しさを増す。最も脅威であろう首長竜のメカザウルスは武蔵が奮闘し、その数を4頭まで減らしている。だがその反面ハガネを狙い続けている翼竜のメカザウルスはまだその殆どが健在だ

 

「無理をしないでッ! 深追いをしたら駄目だッ!」

 

「判ってるッ! 判ってはいるのよッ!」

 

ハガネのブリッジに聞こえてくるパイロット同士の会話。その会話に余裕は無く、追い込まれているのが判る。

 

「スゥボータ少尉とコバヤシ大尉が弾薬補充の為一時帰還の許可を求めていますッ!」

 

その言葉に思わず顔を歪める。損傷率が危険域を超えようとしている少尉達の機体……可能ならばそちらから収容したいのだが、メカザウルスの攻撃は周到で撤退する機会すら与えない

 

「くっ、本艦の損傷率はどうなっているッ!」

 

「5番から8番の対空砲座、10~14の副砲が使用不能ですッ!!」

 

テツヤからの報告も、エイタからの報告も自分達が窮地に追い込まれているという報告だった。なんとかこの場を切り抜ける策略を考えるダイテツだが、どう足掻いても撤退戦か消耗戦になるという判断しか思いつかない。

 

「くそっ! シロ! クロ! 頼んだぜッ! 少しでもいいから数を減らしてくれッ!!」

 

「任せるニャッ!」

 

「いっくぞーッ!」

 

サイバスターから射出された小型の射撃兵器がメカザウルスを追い回し、サイバスターの前に誘導する。間合いに入ると同時にサイバスターが手にした剣でメカザウルスを両断するが、それでもその数は減らない。

 

「ひゃはははッ! 良いぜ良いぜッ! そら行けッ! メカザウルス共ッ!!」

 

「アンフェアって言うんじゃないぜ? 狙われるお前達の運が悪いのさッ!」

 

DCの指揮官である2人は弱い攻撃でメカザウルスの注意を引き付けるだけ、引き付け、自分達は安全な所に退避する。このままではハガネの轟沈も時間の問題だ……だがリオン達だけはテンザン達と異なり、メカザウルスと戦闘している。それがハガネが轟沈されず、PT隊も健在の理由だった。

 

「大尉。DCの戦艦に通信を送るぞ」

 

「艦長!?」

 

ダイテツの言葉にテツヤが信じられないと言う表情をする。それはダイテツが投降すると思ったからだろう、だがその名前を叫んでテツヤは違うと悟った。その目に諦めの色は無いからだ……何か目的があるとその目を見れば判る。

 

「待ってくださいッ! キラーホエールより通信入りました。今メインモニターに回しますッ!」

 

エイタからの報告にダイテツは開きかけた口を閉じ、映し出された壮年の男性に視線を向ける

 

「何の用だ? 本艦は決して投降などせんぞ」

 

『判っています。本艦もこうして連絡したのは投降通達ではありません』

 

きっぱりとした口調で告げるキラーホエールの艦長。その目は力強い光に満ちている

 

『これよりキラーホエール27番艦とライノセラス3~5番艦および両艦におけるAM隊全機でハガネおよび、ハガネのPT隊の支援に入ります。これはビアン・ゾルダーク総帥の直々の命令であり、本時刻14・15時より、このスターバク島におけるDC部隊はハガネへの攻撃行動を中止する物とします。ダイテツ・ミナセ中佐もまた我が艦隊への攻撃の中断を要請します』

 

その言葉にハガネのブリッジに沈黙が満ちる、その言葉が罠か、否かと判断する時間が必要だった。

 

「お前達の指揮官は攻撃を繰り返しているのはどういう事だ」

 

テツヤの問いかけにキラーホエールの艦長は被っていた帽子を取り、モニター越しに深く頭を下げる

 

『緊急通達は送りましたが、お2人は無視しているので、現段階を持ってこの部隊の指揮権の剥奪をビアン総帥が決定致しました。本島と連絡がつくまで時間が掛かった事は謝罪いたします。申し訳ありませんでした』

 

その誠実な対応にダイテツも険しい顔を僅かに緩める。判っていたことだが、DCとて一枚岩ではない。それが判った瞬間でもある

 

『メカザウルスと言う人類の脅威を前にして、人類は争っている場合ではない。私も総帥もそう考えております、ダイテツ・ミナセ中佐返答を、返答の結果によっては本部隊はこの戦域を放棄し撤退致します』

 

判断を急げと言うキラーホエールの艦長。メカザウルスは脅威であり、PTとAMで単機で戦うのは自殺行為に等しい。それに敵味方お構いなしで襲ってくることを考えれば、人類の脅威と言うのも納得だ。この状況でも執拗にハガネを撃墜しようとするトーマスとテンザンの行動が異常すぎるのだ、戦争をゲームという男がまともな訳が無いのは当然の事ではあるが……

 

「……了承した。今この時より本艦およびハガネのPT部隊はリオン及びバレリオンとの戦闘行為を一切行わない。ただし、指揮官については攻撃行動を続行する」

 

『英断感謝いたします。リオンの7~12番発進急げッ! ハガネ及び、ハガネPT隊の支援を急ぐんだッ!』

 

即座に行動に出るキラーホエールの艦長。その姿を見てテツヤが小さく呟く

 

「DCにも話の判る男が居るのですね」

 

テンザン達の様に戦争を楽しむ男だけではなく、心から人類の存続を願う男もいる。このような形で無ければ、僚友として肩を並べる機会もあっただろう……ダイテツだけではなく、ハガネのブリッジのクルー全員がそう思うのだった……

 

 

 

 

 

ガーリオンのコックピットの中でテンザンは違和感を感じた。今までと戦場の流れが変わって来ている事に気付いた、それまでメカザウルスに追われていたリオンやバレリオンが自分達が追い詰めているハガネとハガネのPT部隊に協力してメカザウルスと戦っている事に気付いたのだ。

 

「てめえら! 何やってやがるッ! なんでハガネを援護しているんだ! ああんッ!! てめえらも裏切り者かッ!!」

 

キラーホエールの艦長に通信を入れ、怒鳴り声を上げるテンザン。キラーホエールの艦長は怒り狂っているテンザンを冷ややかな視線を向ける。

 

『命令コード334に従ったまでですよ』

 

「はぁ!? 334? んなもんしらねえよッ!!!」

 

テンザンの言葉にますます艦長は冷ややかな視線を向ける。それは明らかに自分を見下した視線で、モブキャラがしていい眼じゃないとテンザンは怒鳴り散らす。

 

「おいおい、待てよ艦長。俺達はアードラー副総帥の指令で動いているんだぜ?」

 

『お言葉ですが、トーマス・プラット少佐。アードラー副総帥と、ビアン総帥どっちの命令を優先するべきだと思うのですか?』

 

自分にまで冷ややかな視線を向けられ、トーマスは流れが完全に変わった事に気付いた。だがそれは余りに遅かった、AM隊の支援によって1度帰還したハガネのPT隊が再出撃する。それを見てトーマスはゲームオーバーだなと気付いた。

 

「OK、じゃあ俺の帰還を認めてくれ。この海域を離脱する」

 

そう言ってキラーホエール、ライノセラスの方角に向かおうとする。だがキラーホエールやライノセラスの行動は威嚇射撃だった、いやそれだけではなく、リオンやガーリオンもその砲口を2人のガーリオンに向けている……それは明らかに友軍への対応ではない。

 

『命令コード334に従い、トーマス・プラット少佐、テンザン・ナカジマ少佐の我が艦隊への指揮権の剥奪及び、着艦を拒否いたします。撤退したければ、ご自分らでご勝手にどうぞ。この海域から3000m先の海域でアードラー副総帥管轄のキラーホエールが哨戒しているのでそちらに乗り込めばよろしいのでは?』

 

その言葉にテンザンもトーマスも絶句する。今まで戦闘していて推進剤なども限界が近い、それなのに自力で帰れる訳がない。

 

「てめえふざけ「ふざけているのは貴様らだッ! テンザン・ナカジマッ! トーマス・プラットッ!!!」

 

ふざけるなと叫ぼうとしたテンザンの言葉を艦長が怒声で遮る、その圧倒的な気迫にテンザンは息を呑んだ。

 

「大局すら見えず、戦争をゲームと言う餓鬼がッ! そんなに戦争がしたいのなら1人で紛争地帯にでも行けッ! 我らはビアン総帥の地球を守ると言う理想に集いここまで来たッ! 地球を脅かす敵が居るにも拘らず、やれゲームだの、やれビジネスだの! 貴様らこそふざけるなッ!! ビアン総帥の命令で全員が集められた上で新たに発令された334すら知らぬとほざく馬鹿共は知らん! 勝手にしろ! 本艦も我が艦のAM隊も貴様らの支援など行わんッ!」

 

そう怒鳴り散らした艦長は通信を切り、リオンとバレリオンを伴い。ハガネへと接近していく、モブキャラと見下していた艦長に怒鳴られたテンザンは暫く呆然としていたが、すぐに怒りに身を震わす。

 

「このモブがぁッ!!」

 

「馬鹿! 止めろテンザンッ!!」

 

ガーリオンをキラーホエールに向かって突撃させた。それに気付いてトーマスがテンザンを止めるが、だがその警告は余りに遅すぎた。

 

「がはあッ!?」

 

雲の間から奇襲してきたバドが背後からガーリオンに喰らいつく。その衝撃と振動でテンザンの口から鮮血が零れる。

 

「お、おいおいおいッ! 嘘だろッ!?」

 

破砕音を立ててガーリオンのコックピットが押しつぶされていく、その光景にテンザンはトーマスに助けを求める。

 

「うるせえ! 今やってるッ!!」

 

だがテンザンの叫びにトーマスもまた怒鳴り返す。トーマスはテンザンに助けを求められる前にバドに攻撃を加えていたが、予想以上にバドが硬く思うように攻撃が通らない。

 

「くそっ! くるなッ! があッ! 止めろよッ! ふざけんなッ!!」

 

バドの噛み付きによって押しつぶされ行くコックピット、砕けたコンソールや、モニターが爆発しテンザンの身体を傷つける。必死に両手を伸ばし、自身に迫ってくるコックピットの壁を押し返そうとする。だが当然人間の力で押し返せるわけも無い。

 

「お、おい! 助けろ! 俺様を助けろよッ!!」

 

パニックになったテンザンがオープンチャンネルで助けを求めるが、同じDCの兵士は勿論、ハガネも救出には動かない。ノイズ交じりのモニターにはゲシュペンストとリオンが助け合いながら、メカザウルスと対峙しているのに自分を助けようと動く者は誰もいない。

 

「くそっ! ふざ……うおおおおおッ!?」

 

ついにバドの牙がコックピットの3重の装甲を突破し、テンザンに迫る。バドの牙で配線が切られたコックピットは小さい爆発を繰り返しており、その度にテンザンを傷つける。

 

「くそっ! くそっ! くそくそッ!! 俺様は主役だぞッ!? こ、こんな……こんな所で……がああああああッ!!! 痛いッ! いてええええッ!!! だ、誰でもいい! 俺を助けろよおッ!!」

 

爆発したコックピットの破片がわき腹に突き刺さり、更に爆発でヘルメットも破壊され、目の前が真紅に染まる。その痛みと恐怖に助けを求める、自分を噛み砕こうとしていた牙が顔の目の前で止まる。だが狭いコックピットの中にアンモニア臭と酷い悪臭が広がる、自分が漏らしたと気付いたテンザンはその顔を羞恥で染め再び吼えようとするが、バドの最後の攻撃かほんの僅か食い込んだ牙の先端が肩に突き刺さった。

 

「が、ガアアアアアアアッ!?」

 

その信じられない激痛に喉が枯れるんじゃないかと言わんばかりに絶叫する。その痛みに意識が闇に沈む寸前テンザンの耳にトーマスの叫び声が響く。

 

「テンザン! 脱出装置を使えッ! 俺が回収するッ! 聞こえたか!? 生きているなら脱出装置を使えッ!」

 

トーマスの言葉にテンザンは無意識の内に緊急脱出装置のレバーを引くのだった……

 

 

 

 

テンザンのガーリオンがメカザウルスに噛み付かれ、牙が食い込む度に痙攣するかのように動く手足。零れ落ちるオイルも伴って、武蔵には人間が食われている姿を幻視した。少しだが顔見知りであり、今までの言動もあるから助けたいとは思わなかったが、それでも僅か、本当に僅かだが、助けてやってもいいかと思った。これがリョウや隼人なら因果応報だと笑い、見捨てる。だがそれが出来ないのが武蔵の良さであり、甘さだった。だが武蔵が助ける前に、トーマスのガーリオンによって救助されていく姿を見て、僅かに安堵の溜め息を吐いた。これでメカザウルスと戦うのに集中出来ると……

 

「おらおらッ! くたばりやがれええッ!!!」

 

最後のズーの頭部に拳を叩き込み、頭蓋を砕く。最後のズーが血しぶきを上げて海中に沈んでいく、これで終わったと思ったのだが、ゲッター3のゲッター線メーターが更に上昇する。

 

「まだだ! まだ敵が来るぞッ!!」

 

ゲッターの警告に従い、そう叫ぶ。すると雲を切り裂き新たなメカザウルスが姿を見せる。バドと異なり、ティラノザウルスの上半身が機械化され、翼を持ったメカザウルス……メカザウルス・ゼンが4体雲を裂き姿を見せた。

 

「おいおい、まだ来るのかよ。しかも明らかに上位個体じゃねえか」

 

グルンガストを駆っていたイルムが溜め息を吐きながら呟く、ズーとバドで苦戦していたのに明らかに更に強い固体の登場……連戦続きでぼやきたくなるのは当然だが、ゼンにはそんなことはお構いなしであり、頭部のミサイルを乱射しながら、バドよりも素早くPT隊に接近していく。

 

「今オイラも合流するッ!」

 

ズーを足止めする為に先行していた武蔵がゲッター3を反転させた瞬間。太陽の中に隠れていたメカザウルスが急降下してくる、その姿を見た武蔵は思わず硬直した。メカザウルスの中でも更に巨大な姿、機械で出来た翼とプテラノドンの頭部を思わせる兜を装着したメカザウルスの姿。

 

「てめえはッ!!」

 

「グゴオオオオオンッ!!!」

 

武蔵の叫びに呼応するかのように吼えたメカザウルスがゲッター3に組み付く。今現れたメカザウルスは武蔵がゲッターのパイロットになった当日に襲ってきた恐竜帝国の特殊部隊「地リュウ」の長であると言うニオンが乗り込んでいた因縁深いメカザウルス・ラドの姿だった。

 

「うおおおおッ!!!」

 

「ガオオオッ!!!」

 

ベアー号のコックピットを噛み砕こうとするメカザウルスの牙を両手で受け止めるが、その圧倒的なパワーに引きずり回される。3人乗っているゲッターでも苦戦したのに、単独操縦、更にジャガー号が不調というハンデがあるのでゲッター3は得意の海中なのに劣勢に追い込まれていた。

 

「敵増援来ますッ!」

 

更にハガネのブリッジからエイタの叫び声が木霊する。空中からはバドの群れ、海中からは数こそは少ないがズーが再び姿を見せる、DCが協力してくれたおかげで1度目の襲撃はかわしたが、2度目の襲撃。しかも今度は頼みの綱のゲッター3は巨大なメカザウルスに組み付かれ動く事が出来ない上に、明らかに上位のメカザウルスであるゼンまでも参戦した。テンザンとトーマスは撤退したが、状況は以前悪いままだ。いや、武蔵とゲッター3が動けない今、状況は更に悪い物となっていた。

 

「ま、待ってください! 南西の方角から、接近してくる機体を感知ッ!」

 

「まだ増援が来るというのッ!?」

 

「あの恐竜帝国っていうのはどれだけ戦力を保有してやがるんだッ!?」

 

これだけ撃墜しているのに、まだ敵の増援が現れる事にアヤとジャーダが叫び声を上げる。

 

「また敵の増援か!? 数はどうなっているッ!」

 

テツヤがエイタに尋ねるが、エイタはモニターを見て顔を青くさせている。

 

「ち、違う! め、メカザウルスじゃない……あ、あいつだッ!」

 

小刻みに震えながら、モニターを凝視するエイタ。

 

「ちゃんと報告をせんかッ!」

 

テツヤの一喝で我に返ったエイタが顔を青ざめさせ、震えながら報告を続ける。

 

「た、大尉! し、シロガネを沈めたあいつが……来ますッ!?」

 

「な、何ィッ!?」

 

そして海面を引き裂き、濃紺の機体がこの海域に姿を現した。大きな肩パーツ、胸部の展開装甲。そしてその機体が現れただけで、圧倒的な重圧がハガネとハガネのPT隊に襲い掛かる。

 

「あ、あの青いロボットは、南極の時のッ!?」

 

リュウセイが思わずそう叫ぶ、南極事件で基地およびシロガネを撃墜し、DCの宣戦布告の切っ掛けとなった忌まわしき特機……「グランゾン」の姿だった。

 

「グランゾンかッ!?」

 

その姿を見たダイテツも艦長席から勢いよく立ち上がり、グランゾンを睨みつける

 

「シュウ! 貴様、こんな所にッ!!」

 

メカザウルス・ゼンを相手にしていたサイバスターが鍔迫り合いをしていたゼンを蹴り飛ばし、グランゾンに敵意を見せる。

 

「ほう、マサキですか。これは奇遇ですね、貴方はいつから群れるようになったのですか?」

 

マサキの言葉に挑発するような言葉を投げ返すシュウ。マサキはその言葉に怒りを露にする

 

「貴様こそ、何を考えている!? DCに協力するなんてッ!」

 

マサキの言葉にシュウは小さく笑い声を上げる

 

「ふふふ、そんなことも判らないのですか? 貴方達を助けに来たんですよ。ビアン総帥の頼みでね」

 

虚空から剣を取り出しグランゾンの手に握らせるシュウ。だがその切っ先はメカザウルスではなく、ハガネへと向けられる。

 

「ですがまぁ……貴方達が私と戦うと言うのならば……貴方達はこのグランゾンとメカザウルスを相手に戦うことになりますが……」

 

貴方達はどうしますか? シュウは余裕を感じさせる声でダイテツ達にそう告げるのだった……

 

 

第22話 スターバク島の死闘 その3へ続く

 

 




これがアンチになるのかは不明ですが、テンザンは酷い目に合ってもらいました。少なくともアイドネウスで出てくることは無いでしょうね。そしてメカザウルスの追加とグランゾンの出現、まだまだスターバク島の戦いは続く予定です。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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