第92話 影の軍勢/立ち塞がる龍虎 その5
アビアノ基地に帰還したキョウスケ達。だがその顔は当然の事だが暗い物だった、アビアノ基地に戻るまでにラトゥーニとアラドに話を聞いたのだが、リュウセイが百鬼帝国の手に落ちる一歩手前だった。そしてビーストが割り込まなければ確実にリュウセイは百鬼帝国に連れ去られていたという事実は重くキョウスケ達の肩に圧し掛かっていた。事実今もリュウセイは意識不明で医務室で懸命な処置が施されている状況だ。SRXチームとラトゥーニがそばについているが、目覚めた時に鬼に操られていないとも言い切れず、厳重な警戒態勢が引かれている。
「リュウセイ君大丈夫かしらね……」
「リオ、大丈夫だよ。リュウセイならきっと大丈夫さ」
リュウセイならまたいつもの明るい笑みを見せてくれるとリオを励ますリョウトだが、その本人の顔も暗い。ムードメイカーであるからこそ、リュウセイが倒れたダメージは大きく、その雰囲気を変える為にカチーナがあえて大きな声を出した。
「つうか、あいつは一体なんなんだ? 見た所PTでもAMでもないよな?」
ブリーフィングルームでラトゥーニ達が記録したビーストの戦闘データを見ながらカチーナが不機嫌そうに身体を揺らしながら呟いた。
「ラドム博士とハミル博士の話ではウォン重工業で開発中のゲシュタルトシリーズに少し似ているそうですが、本質的には違うそうです」
ラッセルが解析データを見ながら似ている機体を口にするが、エルアインス同様まだ完成していない機体と言う事で詳しい情報は無かった。
「結局該当する機体の系統はわからねえってことか……それよりも気になるのは……」
「俺の事ですね?」
ズィーリアスのパイロットはキョウスケに並々ならぬ憎悪と殺意を抱いていた。しかしキョウスケには思い当たる節は無く、恨まれる理由があるとすればDC戦争時の事くらいしか思い当たる物がなかった。
「ベーオウルフと言っていたが……ウルブズの事か?」
「ウルブズ? なんですかそれ?」
ベーオウルフと聞いて思い当たる節があったのかカイがそう呟き、聞き覚えの無いウルブズと言う呼称がなんなのかとブリットがカイに尋ねる。
「連邦の特殊部隊の総称だ。秘密主義で、詳しい情報は無いが……クライウルブズがトライアウトに参加していたのを思い出してな」
「でもカイ少佐、キョウスケはウルブズなんて関係ないわよ? 勘違いじゃないかしら?」
「まぁ俺もそう思うが……ウルブズの1人がゲシュペンスト・MK-ⅢのAタイプを使っている可能性も捨て切れないだろう?」
キョウスケしか使えないと言う前提で公式には作られていないが、タイプA自体のデータは連邦にあるのだ。表に立つ事が出来ない部隊の誰かが使っている可能性は十分に考えられた。
「いえ。ビーストのパイロットは俺を標的にしてました。それだけは間違いない」
だがそれは誰でもないキョウスケ自身が否定した。言葉をかわしたわけではない、だがあの怨嗟の叫びが、そして憎悪を込めた視線は紛れも無く自分を見つめていたとキョウスケは断言した。
「それだけ恨まれる心当たりがあるのか? それがないならおかしいだろ?」
マサキの言う通りだ。あれだけの憎悪と殺意を出せると言うのは並の恨みではない、しかしだ。それだけの事をキョウスケが行なっているとはこの場にいる全員がだれも思っていなかった。寡黙ではあるが、仲間思いのキョウスケがそんな事をすると思えないし、思いたくないと言うのが紛れも無い本心だった。
「これから俺がするとしたら?」
「……武蔵と同じという事を考えているのか、キョウスケ中尉」
「ギリアム少佐。はい、その通りです。「今」の俺には何の覚えもない、しかし「未来」の俺ならばそれは違うかもしれない。俺には恨まれる理由があるのかもしれない……」
武蔵という過去からの使者がいる。それならば未来から過去に来ている者がいてもおかしくないというキョウスケの考えもあながち間違いではない。しかしそれは「IF」であり、今のキョウスケには何の罪はない。
「だとしてもそれはお門違いでしょ? ビーストのパイロットは完全に八つ当たりをしてると私は思うわよ? それより、あの鎧騎士の方がよっぽど気になるわ」
犯してもいない罪を考え、不安に顔を歪めるキョウスケを見据え、エクセレンはきっぱりとそう断言した。仮に未来でキョウスケが虐殺を行なったとしても、今のキョウスケには何の罪も無い。それを悔やむ必要も、自分の責任だと思う必要も無いとエクセレンは笑みを浮かべてキョウスケを励ますように言う。
「エクセレン……だが」
「大丈夫よ。キョウスケがそんな事をする前に止めてあげるから心配ないわ」
だからズィーリアスのパイロットの事は気にしなくて良いわとエクセレンが笑いながら言う姿を見て、ブリーフィングルームの雰囲気はズィーリアスよりも転移して現れたツヴァイザーゲインの正体についてに変り始めていた。
「角付きと盾持ちは同型機のように思えるな。機体のシルエットが良く似ている」
角付きと呼称されたツヴァイザーゲインと盾持ちと呼称されたヴァイサーガがブリーフィングルームのモニターに映し出される。
「……いえ、待ってください。カイ少佐、僕はマスタッシュマンに似ていると思います」
「マスタッシュマン? リョウト。なんだそりゃあ?」
「『ヒゲ男ちゃん』って意味よ、カチーナ中尉」
そんな事を聞いてるんじゃねえと怒鳴るカチーナだが、エクセレンはどこ吹く風で笑う。その姿を見てラミアは薄く目を細めた、エクセレンを見つめているのではない。ツヴァイザーゲインとマスタッシュマン――いや、ソウルゲインの関連性を見出したリョウトに驚いたのだ。
「オペレーションSRWの時に月面に現れた化け物を武蔵と共に撃破した所属不明の人型機動兵器だ。望遠だが、戦闘データが残されている筈だ」
ギリアムがDコンを操作し、ブリーフィングルームのモニターにソウルゲインの姿を見せる。
「この化け物って、ストーンサークルで出て来た奴じゃねえかッ!?」
「ええ。武蔵がいなければ危なかったわね……」
無機物にも寄生し、その姿を変える異形の化け物――インベーダー。それと戦うゲッター1とソウルゲインの姿がノイズ交じりだがモニターに映し出される。
「確かインベーダーと武蔵は呼んでましたね」
「旧西暦の失われた時代の理由なったっていう化けもんだな」
武蔵がレフィーナへと話したインベーダーの事はイルム達も把握していた。それが少数ながら新西暦でも確認されている、生き残りなのかそれとも再び地球圏に現れたのかは未知数だが、警戒を緩めることは出来ないだろう。触手を伸ばし、叩き潰されてもそこから2体に分離するという異常な行動をするインベーダーと互角に戦っているゲッター1とソウルゲインの姿を見ていると確かにツヴァイザーゲインとの共通性が見えてくる。
「所属不明って事は地球の兵器じゃないって事?」
「いや、恐らくだがエアロゲイターと戦っている事を考えると地球製と考えるべきだと思うよ、リューネ」
「だけどよ、そうなると地球で転移を実用化させているやつらがいるって事になるだろ? あたしには到底地球の兵器には思えないぜ、ギリアム少佐。転移装置を作れる科学者って言えばビアンくらいなもんだろ?」
地球の兵器と考えると地球人で転移を実用段階に持ち込んだ研究者がいるが、転移を実用段階に持っていける研究者と言えばビアンくらいしかいない。だから地球人の機体ではないとカチーナは主張したが、ギリアムは首を左右に振った。
「いや。間違いなく地球の兵器だ」
「ギリアム、そこまで断言するという事は何か証拠があるのか?」
カイがそう尋ねるとギリアムは少し考え込む素振りを見せた。
「すまない。まだ確証はないんだ……だが、間違いなく地球の兵器だ。それだけは言える」
証拠が無いが地球の兵器だと繰り返し主張するギリアム。情報部の秘匿情報で言うことは出来ないのかもしれないとカイは判断し、再びツヴァイザーゲイン、ヴァイサーガ、ズィーリアスの解析を始める。
「ラミアちゃん、どうかした?」
「いや、すこし気分が優れないので休ませていただきたいと思うのであります」
「大丈夫? 付き添おうか?」
「大丈夫です、ありがとうございますです」
エクセレンの言葉に大丈夫だと笑い、ラミアはブリーフィングルームを出て、自室へと足を向ける。
「あ……ど、どうも」
その道中でエキドナに出会い、頭を下げて自分の横を通り過ぎようとするエキドナの肩をラミアは掴んだ。
「な、何か……?」
「1つ……聞きたいんだが、良いか?」
「は、はぁ……でも私にはその……昔の記憶が無いので……」
記憶が無いというエキドナ。その姿を見て、自分も記憶を失えればどれだけ楽だったんだろうなと思いながらラミアはエキドナの目を見つめる。
「やれと言われている事と、自分がやりたいことが違う時……どうすれば良いと思う?」
アクセルとヴィンデルを本気でラミアは撃墜しようとしていた。その時はそれが正しい事の様に思えていた、だがこうして着艦し、戦闘時の気分の高揚がなくなれば自分はなんて事をしたのだという罪悪感が込み上げて来た。本来ならば自分と同じ様に行動するべきエキドナ――だが記憶を失い、幼い少女のように振舞う姉妹にラミアはそう問いかけずにはいられなかった。
「私は自分のやりたいようにやれば良いと思います。武蔵さんもそう言ってました、迷った時はやりたくない事はやらなければ良いっていってましたから」
「……そう……か。ありがとう」
「いえ? どういたしまして?」
首を傾げながら歩いていくエキドナの背中をラミアはジッと見つめた。人形……自分達は人形だ。だがエキドナは自分で自分の糸を切って歩き出している……仮に記憶を取り戻してもきっとエキドナは自分の意志を貫くラミアにはそう思えた。
「……ああ。羨ましいな」
敬愛する創造主が望む領域に足を踏み込んでいるエキドナの姿を見て、ラミアは無意識に羨ましいと呟くのだった……。
ダイテツ、リー、テツヤの3人がいる艦長室でアラドは自分が見た光景を再び説明していた。スクールの仲間であるゼオラとオウカ、そして自分の保護者であったクエルボ。リュウセイの念動力に目を付け、罠を仕掛けていた百鬼帝国の朱王鬼の存在。カイ達に話したものよりもより詳細に、そして己の主観も交えて話を続けた。
「……リュウセイには本当……その申し訳無い事をしたと思ってます」
アラドが助けたいと言わなければ、リュウセイは念動力で干渉しなかった。今リュウセイが昏倒しているのは自分のせいだというアラドは俯いて小さく震えている。
「アラド・バランガ。お前は1つ思い違いをしている、お前がすべき事は謝罪ではない。感謝だ」
「感……謝?」
「そうだ。感謝だ、仲間の為に、お前が助けたいと思った者を助ける為にリュウセイ少尉は行動に移した。その行動は偽善ではない、英雄になりたいという願望でもない。仲間を助けたいと言う純粋な願いだ、お前が謝ると言う事はリュウセイ少尉の思いを無碍にすること、それは許されない。してはならない、ならば感謝するのだ。自分の願いを聞きいれ、命を賭けてくれた仲間に感謝しろ。安心しろ、リュウセイ少尉はL5戦役の英雄だ。必ず立ち上がるだろう、それなのにお前は俯いているのか? 違うだろう歯を食いしばって前を見ろ、今度こそと己を鼓舞しろ、今回の事で判った事は多い。それを1つたりとも無駄にするな、必ず今度はその手で仲間の手を掴めアラド・バランガ」
後悔するな、後ろを見るな。それは全てアラドの為に行動したリュウセイの思いを無駄にする。それだけは決してしてはならないとリーは告げる。
「は、はいッ!」
「よしッ! 良い返事だ。お前も辛いと思うが、今は休め。次の為にな、宜しいですか? ダイテツ中佐」
「ああ、構わない。辛い話をさせたな、アラド曹長。ゆっくりと休んでくれ」
ダイテツとリーの言葉を聞いて、敬礼して退室するアラド。その姿が見えなくなってからリーの顔は険しい物に変わる。
「リュウセイ少尉の容態は相当深刻なそうですね」
リュウセイの意識は依然戻らず集中治療室で眠っている。念動力というものが何なのかはリーには判らないが、肉体面ではなく精神面に大きなダメージを受けたのは明らかだった。
「モニターでケンゾウ博士に見てもらいましたが……直接見ないことには容態は判らないとのことです」
「そうか……1度リュウセイ少尉は伊豆基地に向かって貰うべきか悩むな。オペレーション・プランタジネットの事もある」
地球圏防衛委員会のメンバーが立案したインスペクターへの反攻作戦……オペレーション・プランタジネットの発令前にリュウセイが倒れた。オペレーション・プランタジネットの主力になるのはSRXとゲッターロボD2の2機の特機になる……その片翼が倒れたという事は作戦の変更も視野に入る。
「しかし今の状態のリュウセイ少尉を動かすのも危険かと」
意識不明の重傷患者を移動させるリスク、そして百鬼帝国がリュウセイを狙っている事を考えると輸送機なので移動させるのも危険だとテツヤが進言する。その話を聞いてリーが自分の考えをダイテツに提案する。
「アビアノ基地に残すべきだと思う。オペレーション・プランタジネットの前にノイエDC、百鬼帝国に奪取された基地の奪還作戦を行う。その間様子を見るべきだと思います。武蔵君がアビアノ基地に戻る際にケンゾウ博士を連れてきてもらう事も可能な筈です」
何時戻ってくるか判らないが、今伊豆基地にいる武蔵にケンゾウ博士と共に戻って来てもらうという道もあると言うリー。確かにそれが1番安全で、そしてリュウセイにも負担が掛からない。だがダイテツとテツヤは眉を顰め、ダイテツに促されテツヤが手にしていた資料をリーに差し出した。
「これは?」
「我々が交戦中、伊豆基地に龍虎皇鬼が出現し、ゲッターD2と交戦。伊豆基地に被害は無いが、百鬼帝国の出現確率が高く今すぐに武蔵は動かせない状況にある。アラド曹長の話では術に長けた鬼は月にいるらしいので、地球に戻ってくる前にとワシは考えているのだが……」
「どちらもリスクがありすぎる状況です」
「……どうしたものか……」
意識を取り戻さないリュウセイをどうした物かとダイテツ達は頭を抱えて悩む中。集中治療室の前ではライ、ヴィレッタ、ラトゥーニの3人がソファーに腰掛けていた。
「ラトゥーニ、少し休んできなさい」
「……もうちょっとだけいたら駄目ですか?」
「偵察で疲れている筈だ。休んで来い、リュウセイに何か変化があったらすぐに呼びにいく」
ヴィレッタとライの2人に言われてもラトゥーニは立ち上がろうとしなかった。
「……怖いんです」
「大丈夫よ。リュウセイは……「違う、違うんです……ビーストのパイロットが……怖い。上手く説明出来ないんですけど……あいつがリュウセイをどこかに引きずり込んでしまうんじゃないかって……」
「大丈夫よ、ラトゥーニ。リュウセイはどこにも行かない、ちゃんと起きてくれるわ。私とライでちゃんと見ているから、休んで来なさい。ひどい顔よ。そんな顔を見たらリュウセイが心配するわ」
ヴィレッタがハンカチでラトゥーニの涙の後を拭いながらそう言って、やっとラトゥーニは立ち上がった。
「……すぐ戻りますから」
そう言って歩いていくラトゥーニを見送るライとヴィレッタだが、その顔は暗い。
「まさか念動力を逆手に取られるなんてね」
「想定外でしたね」
リュウセイの念動力を逆手にとって洗脳を仕掛けてくる敵なんて想定している訳が無い。そしてリュウセイが倒れた事でラトゥーニの精神状況は目に見えて悪化している。
「少ししたらライも休んで来なさい。1時間ごとに交代よ」
「……了解です」
リュウセイが倒れた事でSRXチームはアビアノ基地での待機となるだろう。今の内に休んでくるようにライに命じ、通路の壁に背中を預け、腕を組んで目を閉じるヴィレッタ。その脳裏には暴れ回るズィーリアスの姿があった……。
「似ているわね、どういう事なのかしら」
ズィーリアスと己の半身が操ったアストラナガンが似ていると感じていた。何か共通点があるのか、それともアストラナガンを研究している組織がいるのか……と考えにふけりながらヴィレッタは集中治療室の扉が開くのをただひたすら待つのだった……。
時間はキョウスケ達がツヴァイザーゲイン達と戦っていた時間にまで遡る、伊豆基地の応接間にレイカーと武蔵、そしてその向かい側にブライアン・ミッドクリッドの姿があった。
「初めましてムサシ・トモエ君。こうして君に会えた事を喜ばしく思うよ」
「ど、どうも、巴武蔵です」
忙しい時間の合間を縫って武蔵に態々会いに来たと言う地球連邦の大統領に武蔵はどう対応すれば良いのかわからなかった。
「そう緊張しなくても良いよ。そうだね、知り合いのおじさんに会っている程度の気持ちで良いよ」
「はぁ……そうですか」
朗らかに笑うブライアンだが、その目は鋭くその軽い口調に対して武蔵は警戒するべき相手だと言う判断を下していた。
「流石と言った所かな? さて君に会いに来た理由だけど……これを受け取って欲しい」
ブライアンが武蔵に差し出したのは地球連邦軍のマークと大統領府のマークが刻まれたカードだった。
「これがその戦時特例って奴のカードですか?」
「その通りだ。だけど伊豆基地の戦時特例だけでは、連邦本部の命令を覆せない。地球連邦大統領ブライアン・ミッドクリッドが武蔵君に
お願いする。君の力を、地球を守る為に貸してほしい」
「勿論ですよ。その為にオイラは戻って来たんですから」
ブライアンの言葉に即答する武蔵、その言葉を聞いてブライアンは子供のような楽しそうな笑みを浮かべた。
「ありがとう。武力で解決しなくて済めば、それに越した事はない。だがそれは理想論と言うのは僕も判っている。守る為には戦うしかないってね。そのカードは僕の一代限りの物だ。仮に、僕が失脚しても次の大統領が君に命令を出すことは出来ない」
「ブライアン大統領。もしや……?」
「ありえる話って事さ。これだけ地球の中が騒がしくなれば、大統領は何をしているって言う世論になる。それはしょうがないことなんだ」
ブライアンは自分が近々大統領の座を追われることを予感していた。だからこそ、大統領として活動出来る間に武蔵の独自権を認め、それを証明する物を作り上げた。
「武蔵君。君は君が思うままに行動してくれれば良い。だけど、地球征服するとかそういう物騒な事は止めてくれよ?」
からかうように言うブライアンの姿を見て、武蔵は先ほどまでの鋭い視線が自分を確かめているのだと判った。
「大丈夫です。オイラに出来る事なんてそんなに無いけど、全力で頑張ります」
「ありがとう。そう言って貰えて嬉しいよ。そうだ、武蔵君。ゲッターロボを見て見たいんだが良いかな?」
「オイラは別に良いですけど……」
「レイカー司令は?」
「ここまで来たのですから、駄目とはいえませんよ、どうぞ、大統領」
武蔵とレイカーの許可を得て、旧西暦から何度も地球を救ったスーパーロボットを見る事が出来るとうきうきした様子で立ち上がろうとしたブライアンだったが、その直後凄まじい振動が伊豆基地を襲った。
「うおっと!?」
「大丈夫ですか!?」
倒れ掛けたブライアンを武蔵が受け止めるのと伊豆基地の警報が鳴り始めるのはほぼ同じタイミングだった。
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「よーし、撃ち方やめッ!!!」
伊豆基地の上空に翼を羽ばたかせて浮遊する百鬼獣 龍王鬼から攻撃停止の命令が下り、百鬼獣がその動きを止める。
『ちょっと派手な挨拶だったけど、こんな物よね、龍』
「おうさ。それに基地には当ててねえ、ちょいと派手な目覚ましくらいなもんだろ?」
ヴィンデルがハガネと戦い戦力を見極めようとしている。ゲッターD2ならば戦いの中に乱入する事も十分に可能だ。だからこそ、龍王鬼と虎王鬼が態々日本にまでやってきて足止めをしているのだ。
「ったく、大帝の命令とは言えめんどくさいにも程があるぜ」
『嘘を言いなさい嘘を、戦いたいんでしょう? ゲッターロボと』
めんどくさいと言いつつも、その言葉から滲み出るような闘志を感じ取った虎王鬼がからかうように言うと、龍王鬼は大声で笑い出した。
「がははははははッ! そうだ。そうだな! 俺は戦いたいからここに来た! 命令なんぞなくても俺は来ていたさ!!」
百鬼帝国も組織である。独断専行、命令違反はいかに龍王鬼とは言え許されるものではない。だが今回は違う、ヴィンデルの頼みを聞いたブライからの足止めをするようにと言う指示の元訪れている。大手を振ってゲッターD2と戦う事が出来る。その事に龍王鬼の闘志は百鬼獣 龍王鬼の周りを歪めるほどに充実していた。そして伊豆基地を取り囲む百鬼獣に乗る鬼達も自分達が大将と慕う龍王鬼とゲッターD2を見届ける為に、自分達の大将がゲッターロボよりも強いという事をその目にする為にやってきた。
『やり過ぎないようにね? ま、あたしも人の事は言えないけどね』
本来ならば虎王鬼もまた龍王鬼を諌める所だが、虎王鬼もまたどれだけゲッターロボが強いのかという好奇心、そして自分もまた百鬼帝国の将として最強の敵であるゲッターロボに挑みに来ていたのだ。口調こそ穏やかだが、その目は爛々と輝き、龍王鬼に負けないほどに凄まじい闘志を全身からほとばらせていた。
「さてと、おめえら。邪魔すんなよ、闘龍鬼しっかりと子分共の手綱を握っておけ、俺と虎が危なくても割り込んでくるんじゃねえぞ」
シャインをアーチボルドと共に追っていた他の百鬼獣とはシルエットが異なる機体……百鬼獣 闘龍鬼に向かってそう命令を下す龍王鬼。
『判っています。龍王鬼様の邪魔はしません、思う存分戦ってください』
「はっ、たりめえだ。俺様よりも先にゲッターロボと戦ってやがるんだ。邪魔なんてしてみろ、ゆるさねえぞ」
龍王鬼の言葉に闘竜鬼は何も言わず、武器を手放し頭を下げることでその意を示した。自分はこの場では戦わないと、見ているだけだと行動をもって龍王鬼に告げた。
「よっしゃ、行くかあ。最強の鬼が最強の男に挑みに来たッ!!! 巴武蔵! 俺様と勝負しやがれぇぇッ!!!!!」
龍王鬼の宣戦布告……いや自分と同等かそれ以上の男への挑戦を望む龍王鬼の決闘を望む雄叫びが伊豆基地周辺に響き渡るのだった……。
第93話 影の軍勢/立ち塞がる龍虎 その6へ続く
区切りの良い所なのでここで話を切りたいと思います。次回は龍王鬼と武蔵のバトルをみっちり書いて行こうと思います。龍王鬼と対決していたので武蔵は救援にいけなかったという事でご理解の程を1つお願いします。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い