進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第96話 激動の世界 その1

第96話 激動の世界 その1

 

アメリカ大陸の一部に偽装されていたメガフロートの中で入手出来た資料の大半は恐竜帝国、百鬼帝国のいずれの物の資料ではなく、失われた時代――旧西暦と新西暦の丁度中間点に当たる間の技術が多かった。その中でもビアンとグライエンが目を輝かせたのはゲッター線を使わないゲッターロボの資料だった。

 

「この構造資料を見る限りではグルンガスト系列に近いな」

 

「合体機構持ちとそうじゃない物の2種類が用意されているのは良いな……問題は製造プラントか……」

 

ノイエDC――いや、百鬼帝国がビアンを語っているので思うように動く事が出来ないビアン達に出来る事は可能な限りでの戦力の増産、百鬼帝国、アインスト、インベーダーに有効打撃を与えれる武器の開発が急務になるなか、メガフロートに保管されていたゲッターロボの設計図は非常にありがたい物だった。

 

「見たところ開発コンセプトはイスルギの量産型ゲッターロボに近いですが、完成度が段違いですね」

 

「本当に凄い……使ってる物自体はいまの技術で簡単に真似出来る物なのに」

 

ネオゲッターロボの実物と設計図はビアン達……いや、新西暦に生きる物にとって途方もない価値を持つ宝だった。

 

「コアブロックだけを作り武装を換装するシステムのゲッターロボも良いですね」

 

「うむ、開いている箇所が多いから改造がしやすいというメリットもあるな」

 

変形・分離が出来ないゲッターロボも最初からそのように設計され、そして武装を換装する事で必要な戦場に対応すると開発コンセプトはPTやAMに近いが、特機サイズでそれを運用出来るだけの拠点と技術は新西暦には無く、失われた時代の技術力の高さにはビアンとて驚かされていた。

 

「ビアン総帥、お気持ちは分かりますが今は今後についての話し合いが優先ですよ」

 

「む、そうだな。すまない、これの分析と解析、可能ならば製造を始めてくれ」

 

「「はい!!」」

 

ビアンから設計図を受け取り、分かりやすく目を輝かせて走っていく技術班を見送り、次の議題――イングラムとカーウァイが持ってきたあちら側でのインスペクターと、こちら側のインスペクターの戦力分析になる。

 

「ガルガウという機体のパイロットはヴィガジという男で間違いないようです、カーウァイ大佐」

 

「そうか。武蔵のホワイトスターでの会話データと照合する限り、地球圏に現れているインスペクターの戦力に差はないか」

 

「問題は百鬼帝国になるな、月面を制圧していることを考えると……」

 

「まず間違いなく、インスペクターと鬼は協力体制にあるだろうな」

 

「ラングレーとテスラ研での戦いでは百鬼帝国も出て来たから、それは間違いないな」

 

「となると問題は互いへの技術提供でどこまで強化されるかだな……」

 

「それもあるが、月の人間が鬼に洗脳、もしくは鬼にされている可能性も捨て切れない」

 

百鬼帝国とインスペクターの協力によって、どこまで双方の戦力が強化されるかというのが不明瞭な部分であり。更に言えば、月面に残されている人達の洗脳、もしくは鬼にされている危険性など……人類側が圧倒的に不利な状況に陥っており、そこからどう巻き返すか、そして鬼の洗脳を解除する方法、あるいは鬼にされた人間を元に戻す術を見つけ出すことが優先事項の1つになっている。

 

「エルザムの報告にあったが、テスラ研にいた元・鬼のコウキ・クロガネにかんしてはどうだ?」

 

「味方である事は間違いないです。ラドラと似たような感じに私には感じられました」

 

恐竜帝国のキャプテンとして死に、そして人間に生まれ変った。あるいは旧西暦のラドラに憑依したラドラの事例がある……そうなると武蔵が警戒したとおり、ブライが百鬼帝国側の人間である可能性が極めて高くなるのだが……。

 

「ですが、ブライ議員は数多の人道的な法案の成立などに貢献していることを考えると……操られている、もしくは隠れ蓑にしている。両方の可能性が考えられます」

 

「その通りだ。リリー中佐……どうしたものか……」

 

「グライエンを始末しに来たが、ブライの正体を知ったからか、それとも成り代わりの為なのか……不確定要素が多すぎるな」

 

グライエンの暗殺騒動だが……これ自体のミスリードを誘う物と勘繰らずにはいられなかった。ブライ議員とブライ大帝――過去の知識を持つ者はイコールで結びつけるだろう。だがそれすらも罠だという可能性も捨て切れないのだ。

 

「もう少し尻尾を出してくれたら楽なんだがな……いや、そうなるとそれも罠かもしれないか……厄介だな」

 

洗脳の技術、そして成り代わりの技……十数年の間アメリカの改革の為に動き続けたブライ議員の実績。それらを踏まえるとブライは限りなく黒に近いグレー。それがイングラム達の出した結論だった、怪しいが明確な証拠が無く、今ここでブライを害すればビアン達のほうが不利になる……だから手を出すことが出来ない状況だった。

 

『武蔵から連絡が入りました。至急ブリッジに集まってください、繰り返します。武蔵から連絡がありました、至急ブリッジに集合願いします』

 

武蔵からの連絡が入ったというブリッジのオペレーターの報告を聞いて、イングラム達は腰を上げブリッジへと足を向けた。

 

「武蔵君、そちらの調子はどうだね?」

 

『とりあえずレイカーさんとブライアン大統領さんになんか戦時特例特別なんチャラって言う証明書を貰いました。これでなんか、ダイテツさん達に協力していても、拒否権はオイラにあるとかどうとか……これは他の大統領の命令は拒否できるそうです』

 

アビアノ基地に戻る前に1度クロガネと連絡を取る事にした武蔵は日本にいる間何があったのかをビアン達に報告していた。

 

「なるほど、大統領権限で特別な枠を作ったわけか……だがブライアンがその札を切ったという事は……」

 

「近いうちに退陣に追い込まれそうだな……」

 

武蔵とゲッターロボの存在は地球では非常に大きな意味合いを持つ、L5戦役を終結させた英雄機とそのパイロットだ。量産型ゲッターロボ計画はゲッターロボの視覚的安心感も大きく関係している。そんな武蔵が生きていて、新型のゲッターロボを持っているとすれば完全に後手に回っている連邦軍は喉から手が出る程に武蔵とゲッターロボが欲しい筈だ。

 

「少し派手に立ち回りすぎたな、武蔵」

 

『いや、あの場合はああするしかなかったんですよ。すみません、カーウァイさん』

 

浅草、伊豆での武蔵の立ち回りは既に日本のみならず、世界中に発信されている。まだTVなどでは放映されていないが、ネットでは既に死んだと思われていた英雄が生きていたなどの見出しで様々な憶測が飛び交っている状況だ。

 

「別に怒っている訳ではない、仮に私でも同じ事をした」

 

『そう言って貰えると助かります。ハガネを轟沈させかけたって言う百鬼獣と戦ったんですけど……ありゃ駄目ですわ。オイラ1人じゃ良くて相打ちって所です』

 

龍虎皇鬼の話はビアン達も聞いていた。それでもゲッターロボD2ならと思っていたが……武蔵が無理だと告げた事にブリッジにいた全員の顔が険しくなる。

 

「戦ってみてどうだった? 武蔵よ」

 

『ゼンガーさん……そうですね。オイラやゼンガーさんは多分不利だと思います、相手の戦い方は基本的に徒手空拳でとにかく早くて、馬力があります。それに機体の大きさもゲッターと殆ど同じなのが厳しいですね。ポセイドンで互角、ドラゴンだと武器の振りがあるぶん不利、ライガーだと攻撃力不足って所ですね』

 

龍虎皇鬼と戦った感想と所管をビアン達に正確に伝える武蔵。レイカー達に伝えた物と違い、ビアンならば有効な対抗策を考えてくれると思い、より詳しくビアンに情報を伝える。

 

『ゲッターと互角か支援してくれる相手がいれば大分楽ですけど……ゲッターロボと同格っぽい、百鬼獣も確認したんでデータを送りますね』

 

ゲッターD2から送られて来た百鬼獣を見てイングラム達は眉を細めた。今までの百鬼獣と違い、洗礼された最新鋭機という印象を強く感じた。そしてそれは危惧していたインスペクターと地球の技術を応用した物だとイングラム達は確信した。

 

「このクラスの百鬼獣が増えてくると厳しいな」

 

「ああ。明らかに特機やPTの特徴を抑えている。このままこちら側の技術を取り込んだ百鬼獣が増えると厳しいな」

 

元々強力な百鬼獣がその攻撃力と防御力を有したままより柔軟に戦闘に対応出来るように進化するというのは考えられる中で最悪の展開だった。

 

『それとなんかインスペクターと百鬼帝国への反攻作戦を連邦が始めるみたいなんで、とりあえずオイラはハガネとシロガネと一緒にリクセントの奪還に向かいます。ヒリュウ改は日本に向かうそうなので、出来ればそっちの方の応援をお願いします』

 

「了解した。武蔵君も気をつけてくれたまえ、これからの戦いは今までよりもより厳しくなるぞ」

 

『判ってます。ビアンさん達も気をつけてください、じゃあオイラはアビアノに向かいます』

 

その言葉を最後に通信が終わり、ビアン達は武蔵から伝えられた情報、今後のヒリュウ改、ハガネの方針を聞いて、自分達の次なる方針を話し合い始めるのだった……。

 

 

 

 

 

一方その頃、大統領府に戻り、連邦の総司令部のオペレーション・プランタジネットの計画を聞いて、その眉を顰めていた。

 

「……という、完璧な計画になります。ブライアン大統領」

 

「……すまないが、僕にはそれが到底完璧な計画とは思えないのだが……?」

 

総司令部の計画はラングレー基地に向かって北米西海岸からヒリュウ改とシロガネを突入させ、その道中でテスラ研を奪還し、北米東海岸からハガネとノイエDCを突入させラングレー基地を奪還するという計画はどう考えても無謀にしか思えなかった。

 

「ノイエDCと交渉しているのかな?」

 

「今現在交渉中ですが、ビアン博士ならば地球を守ると言う目的で協力してくれるでしょう」

 

「それでトロニウムバスターキャノンで邪魔者を一掃でもするかい? あれは不安定で作戦には使えないとレイカー司令から聞いているけれども?」

 

ブライアンの言葉に眉を顰める総司令部につめている連邦の上層部の人間を見て、ブライアンは懸念をますます強くさせた。

 

「L5戦役でのダイテツ・ミナセ中佐やレフィーナ・エンフィールド中佐の活躍を君達は良く思っていないようだね。ヒリュウ改に機雷を巻きつけた話は僕の所にも来ているよ」

 

「あれは戦闘中の連絡の混雑で……」

 

「ふうん。じゃあ月面でのヒリュウ改の出撃禁止命令はどうなのかな?」

 

「……それにつきましては月面の司令が殉職したので、我々はなんとも……」

 

総司令部の大半がL5戦役でのハガネ達の戦果を面白くないと思っている。オペレーション・プランタジネットは発令しなければならないが、それによりハガネとヒリュウ改を失う訳には行かない。

 

「こんな杜撰な計画を立てておいて、ゲッターロボと武蔵君の徴収は認められないよ。そもそも彼には僕から特別な戦時特例を認めた、連邦の総司令部であれ、僕の次の大統領であれ、彼に命令することは出来ない」

 

「「「なっ!?」」」

 

ブライアンの言葉に総司令部に混乱と驚愕の声が広がる。

 

「何を考えておられるのですか!? ゲッターロボの力は地球を守る為に必要です! 我々が管理する必要があります!」

 

「心配ない、彼は地球を守る為に戦ってくれる。それで構わないじゃないか」

 

「しかし! ダイテツ中佐達達と行動を共にしては」

 

「冤罪を押し付けた君達に武蔵君が協力してくれると思っているのかい?」

 

「で、ですがッ」

 

「くどいよ、もう既に彼は僕たちの手の中に納まるべき器ではない。地球を守る最後の剣にして盾だ、話して判ったよ。武蔵君は自由であるべきだ」

 

伊豆基地で話をした時にブライアンは感じていた。武蔵は自分で考える事が出来ない子供ではない、自分で考え最善の選択をしてくれる。

地球を守る為に、大事な人を守る為に武蔵は戦ってくれるとブライアンは感じていた。

 

「あんな突出戦力を自由にさせて逃亡でもされたらどうするおつもりか!」

 

「ほら、そこだ。君達は武蔵君個人では無く戦力としか考えていない。そんな相手に武蔵君を預けることは出来ないって事さ、オペレーション・プランタジネットの今の計画の内容ではとても認められない。もう1度良く考えて作戦を再提出してくれたまえ」

 

悔しそうに顔を歪める連邦の上層部達を一瞥し、ブライアンは会議室を後にする。

 

(さて、嫌な流れだね)

 

日本での百鬼帝国の戦いで武蔵とゲッターロボの事が明らかになってしまったが、それから半日ほどで、武蔵の人格を無視して戦力として徴収することを考えている相手が増えすぎている。それにノイエDCは宣戦布告の後一切表に出ていない、そんな相手とどうやって司令部は連絡を取ったのか……余りにも情報ルートが不確かだ。それがブライアンが司令部の中の動きを怪しいと感じた理由でもある。

 

「ブライアン」

 

「やぁ。グライエンにブライ議員、どうかしたかな? もしかして作戦に口を出したことが不満かな?」

 

「いや、それに関しては私もおかしいと思っていたので問題はない」

 

……ブライアンの予想ではグライエンは既に成り代われているはず。今1番サシで立ち会いたくない相手の言動が読めず、ブライアンは眉を細める。

 

「ノイエDCとの交渉は私が提案したものだ。オペレーション・プランタジネットに向けて、私が必ず協力すると言わせて見せよう。だからこの件は私に任せてくれないか?」

 

「月面を制圧している者達と交渉をしないわけにも行かないだろう。月に関しては私に1度チャンスをくれないか? 人の姿をしているのならば、言葉を交す事も出来るはずだ。百鬼と名乗ってはいるが、本当に鬼と言う訳ではないだろうからな」

 

(なるほどね……嵌められた)

 

グライアンの要望は的を得ており、それを拒否すれば大統領としての判断ミスを疑われる、そして月で人質にされている民間人についてなんの要求も出さない百鬼帝国に関してもいつまでも放置するというわけにも行かない……総司令部のオペレーション・プランタジネットの提案自体がこの流れになるように向けられている事を察した。

 

「私も協力しますから、心配ありませんわよ」

 

そしてミツコまで顔を見せ、ブライアンは自分が完全に詰みに追い込まれていることを悟った、だが向こうが動き出してくる前に一矢報いる事は出来た。

 

「良いよ、それじゃあノイエDCの件は任せるよ、武蔵君への戦時特例を覆すつもりはないけどね」

 

武蔵へと出した決断は覆さないと口にし、忌まわしそうに自分を見ているミツコとグライエンを見て、僅かに溜飲を晴らし、ブライアンは今度こそ自分の執務室に向けて歩き出すのだった……。

 

 

 

 

 

 

武蔵がいない間のアビアノ基地は急ピッチでテスラ研から運び出された機体や武装の組み上げが行なわれていた。

 

「テスラ研でゲッター炉心が実用段階になってるとか聞いてねえぞ」

 

「言ってないからな」

 

その中でも最も大きな物――それはテスラ研で開発されたゲッター炉心だった。アビアノ基地の一角に仮配置されたゲッター炉心から溢れる翡翠色の輝きに照らされながら、イルムが調整をしていたコウキにそう声を掛ける。だがコウキはシレっと言ってないからなと振り返ることもなく口にし、コンソールを叩き続ける。

 

「コウキさん、これは機体に組み込めたりするのですか?」

 

「期待している所悪いが、これは出力が低い試作型の物だ。機体に組み込んだりは出来ないぞ、ブリット。一応俺の鉄甲鬼には組み込んであるが、60m級でなければ安定した出力を得る事は難しい」

 

ゲッター炉心を組み込めば、出力などが大幅に向上すると思っていたブリットはコウキのNOの言葉にそうですかと言いつつ、落胆した素振りを隠せなかった。

 

「今は無理だが、後にPTや特機に組み込めるゲッター炉心も開発出来るのか?」

 

「申し訳ないが、今の段階では無理としか言いようが無いな。カイ少佐」

 

無理というコウキに話を聞きに来ていたギリアムが何故だ? と問いかける。

 

「ここまで出来ているのに無理なのか? コウキ」

 

「出力がどうしても足りないのだ、ギリアム少佐。このサイズでもPTの定番の動力であるプラズマジェネレーターと同じか、少し低いくらいの出力になる」

 

PTを保管する格納庫の半分を使っているのに、それでもプラズマジェネレーターに劣る出力しかないと聞いてキョウスケがありえないと口にし、話の中に加わってくる。

 

「このサイズで? しかし、これはゲッター1に搭載されていた炉心よりも大型だろう?」

 

「大きさが上だったとしても炉心の圧縮率などがまるで足りていないのだと思う。ビアン博士から送られて来た資料を基に4基製造されたが、運用レベルの物は1基しか開発できなかった。同じ作り方なのにな」

 

4基の内1基しか実用可能ではないと聞いて、話を聞いていたキョウスケ達はそれこそ理解出来ないと口にした。

 

「同じ要領で作ればいいのではないのか?」

 

「もしくは製作の際に何らかのトラブルがあったとかではないか?」

 

同じ材料、同じ作り方をしているのに何故だ? とカイとキョウスケが尋ねる。

 

「判らない、出力が一定以上上がらないんだ。これは最早意志としか言いようがない」

 

「……ゲッター線は意思を持つエネルギー、俺達に味方するに値しない……そういうことですか?」

 

武蔵が言っていた言葉、ゲッター線は意思を持つ。その意志が力を貸すことを拒んでいるという結論に至ったブリットがそう呟いた。

 

「もしくは頼りすぎるなという事かも知れん」

 

ギリアムはゲッター線の意志が試練を与える為に力を貸さないのでは? という考えを口にした。

 

「結局の所、それは判らん。とりあえず今あるゲッター炉心でゲッター合金は作れる。これで装甲の強化や実弾の弾頭のコーティング……出来る事はそれなりにある」

 

コウキがコンソールを叩き、格納庫全てを照らす出す翡翠色の輝きがゲッター炉心から溢れ出した。

 

「そうだな、今はそれだけでも御の字という事だな」

 

「ないもの強請りをするよりもある物で最善を導き出すのが人間だ。判ったらPTに乗り込んでくれ、ゲッター合金を製造次第運び出してコーティング作業を行ないたい」

 

格納庫に集まっている面子は生成されたゲッター合金の運搬係だった。コウキに促され各々の機体に乗り込んでいく面子を見つめながら、コウキの目は鋭く細められていた。

 

(グルンガスト参式、ダイナミックゼネラルガーディアンの1号、2号機、そして俺の鉄甲鬼の段階では問題なく製造で来ていた。何故、何故なんだ)

 

その4つ以外の炉心の出力は非常に低く実用段階には程遠い、何故その4基の炉心だけゲッターロボに匹敵する出力を得れたのか? ブリットの言う拒絶しているのか、それとも試練なのか……その両方に思えてしょうがないのだった……。

 

「リー、少しいいか?」

 

「ん? テツヤか、少し待て」

 

ゲッター合金の運搬作業が行なわれている頃、テツヤはリーの部屋を訪れていた。

 

「どうした?」

 

「……少し聞いてほしいことがあってな。今、迷惑か?」

 

「お前は休憩か?」

 

「あ、ああ。そうだが……」

 

「なら、入って来い」

 

部屋の中に消えるリーの後をついてリーの私室に入るテツヤは壁に貼られているポスターを見て、驚きの表情を浮かべた。

 

「これは……どうしたんだ?」

 

「良いだろう、ゲッターロボのポスターだ。私のお気に入りなんだ」

 

マントを翻し、空へ飛び立つ瞬間のゲッター1のポスターを見て上機嫌に笑うリーの頬は朱が差していた。

 

「お前まさか飲んでいたのか?」

 

「当たり前だ、休める時には休む物だ。ほら、お前も飲め」

 

「すまん、俺は下戸なんだ」

 

ウィスキーのボトルを差し出してくるリーにテツヤは下戸なんだというと、リーはそうかと呟き代わりにソーダのボトルを差し出した。

 

「つまらん奴だ」

 

「悪いな、それよりも飲んでいるのならばまたの機会にしようか?」

 

「いいから座れ、尋ねて来て帰るな」

 

グラスに氷を入れて差し出してくるリーに苦笑しながらそのグラスを受け取り、サイダーを注いだテツヤはそれを口にし、小さく息を吐いた。

 

「それでどうした?」

 

「……ダイテツ中佐が俺にスペースノア級の第四番から陸番艦のいずれか艦長に推薦したと聞かされたんだ」

 

「ほう、良いじゃないか。大出世だな、いや、出世街道からは外れているか、私もお前もな」

 

スペースノア級の艦長に推薦されたと聞いてリーは良かったじゃないかと笑うが、テツヤの表情は優れない。

 

「どうした? 誇らしい事だろう?」

 

「……俺にはダイテツ中佐のような機転も、お前のような人徳もない、はたして俺に勤まるものかと……」

 

「情け無い事を言うな、確かにダイテツ中佐は素晴らしい艦長だ。だがお前はいつまでダイテツ中佐に甘えているつもりだ?」

 

グラスにウィスキーを注ぎ、ジャーキーを咥えたリーはテツヤを指差した。

 

「ダイテツ中佐も高齢だ。いつまでも心配をかけてどうする、ダイテツ中佐を安心させようとは思わないのか?」

 

「それは……」

 

「誰だって不安はある、私とてスペースノア級、しかも因縁が酷いシロガネの艦長などごめんだと思ったものだ。だがな、やらねばならぬ。スペースノア級は地球の盾であり剣なのだぞ、誇るべき事だ」

 

「……そうか、そうだな。悪いリー……俺にも一杯貰えるか?」

 

テツヤの言葉にリーはにやりと笑い、グラスの中にウィスキーを注ぎテツヤの方に自分のグラスを向けた。

 

「何に乾杯する?」

 

「何に? 決まっている。ダイテツ中佐に恥じない男になるだ」

 

「おいおい、それはハードル高すぎないか?」

 

「ハードルは高い方が良い、ほれ、乾杯」

 

酔いが回っているリーに促されテツヤもグラスを差し出し、カチンっと言う涼やかなグラス同士をぶつける音がリーの部屋に小さく響くのだった……。

 

 

 

鬼の精神攻撃を受けたリュウセイは起きる気配が無く、今もまだ集中治療室で眠り続けていた。

 

「ラトゥーニ、そろそろ交代だよ」

 

集中治療室の中で眠っているリュウセイを心配そうに見つめていたラトゥーニにリョウトがそう声を掛ける。振り返ったラトゥーニの目のしたには濃い隈と強い疲労の色が浮かんでいた。

 

「リョウト……うん、判った」

 

返事を返し、ふらふらと歩いていくラトゥーニを見て、リョウトは一緒に来ていたリオに視線を向けた。

 

「リオ、ラトゥーニに着いててくれるかな?」

 

「うん。判った、ほら。ラトゥーニ、行きましょう」

 

「で、でも……」

 

「僕は大丈夫だよ。ラトゥーニはしっかり休んできて、じゃないとリュウセイが心配するよ」

 

おどおどとしていて、DC戦争時の時の様になっているラトゥーニの手を引いてリオが集中治療室の前から移動し、暗い通路に赤いランプ、そしてピッピッピっと言う音を聞きながらリョウトはソファーに腰を下ろし、眠り続けているリュウセイの病室に視線を向けるのだった。

 

『……会えた、会えた……あえたあえたあえたあえた』

 

『あえたあえたあえたあえたあえたあえたあえたあえた』

 

【止めろ、もうやめてくれ……なんなんだ、誰なんだよ……】

 

眠り続けているリュウセイの意識は深い闇の中にあり、狂ったように響き続ける会えたという歓喜に満ちた「2人」の少女の声に耳を防ぎ、止めてくれと懇願していた。

 

『嬉しい……生きてる』

 

『死なないで、お願い』

 

『憎い憎い憎い憎い憎い……』

 

『あ、ああああああああ――ッ!!』

 

知っているような知らない声……狂気と歓喜、絶望と懇願――正と負の入り混じった声は耳をふさいでも、リュウセイの心を蝕んでいた。リュウセイはまだ眠り続ける……。

 

「ねえ。あいつ大丈夫なの?」

 

「だ、大丈夫って言ってたよ……?」

 

「僕達は見ていればいいって……」

 

「でもあいつ狂ってるんじゃない? おかしいって絶対」

 

そしてどこかも判らない闇の中で1人の少女が泣き、笑い、怒り、吠え、ありとあらゆる感情を暴走させている少女とリュウセイの意識は繋がっていた。どちらから干渉が断たれない限り、2人……いや「3人」の精神感応は切られる事がなく、また闇から脱することもないのだった……。

 

 

第97話 激動の世界 その2へ続く

 

 




次回はルート分岐の話を書いて、それに次の話「超音速の妖精」と「燃えよ斬艦刀」の話に入っていこうと思います。今回はオリジナル要素少なめで、原作準拠っぽい感じにしたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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