進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第97話 激動の世界 その2

第97話 激動の世界 その2

 

アビアノ基地に戻って来たゲッターD2の姿は格納庫や司令部、ブリーフィングルームからも見えていて、キョウスケやエクセレン、それにカチーナやアラドといった面子が出迎えに来ていた。

 

『これ、伊豆基地からの支援物資どこにおけばいいですかねー?』

 

コンテナをどこに置けばいいか? という声が響き整備兵に誘導されゲッターD2がゆっくりと移動し、コンテナを指定された場所に置いていると格納庫の扉が開く音が響き、すぐに揉める声が響き始める。

 

「邪魔ですわ!」

 

「そっちが邪魔ッ!」

 

シャインとエキドナの2人が口論しながら格納庫にやって来て、そのやり取りを見てエクセレンが楽しそうに笑い出した。

 

「なんか一気に2人とも元気になったわね。やっぱり恋は原動力よね? ねー、キョウス……」

 

キョウスケに頭を撫でられ停止するエクセレンを見てキョウスケは余り騒ぐなと小さく笑った。

 

「……あいつも人をからかえる立場じゃねえな」

 

「借りて来たニャンコ状態っすね」

 

偶にキョウスケが攻勢に出た瞬間にフリーズするエクセレンも十分恋する乙女であり、カチーナはやれやれと肩を竦め、首にタオル巻いているアラドに視線を向け、シャインとエキドナを指差した。

 

「アラド、お前あれ、止めて来い」

 

「無理っす」

 

「しゃぁッ!!!」

 

「ふーッ!!」

 

言語を捨てて威嚇しあっているシャインとエキドナは12歳の少女と記憶喪失で定かでは無いが20代前半の女性がやるやり取りではない。

 

「何をしている。止めるんだ」

 

その怒声は中破したヴァルキリオンとレオナのガーリオン、そしてマリオンの設計図を使い新しいアーマードモジュールを開発している区画にも響いていたのか、ユーリアがシャインとエキドナを止めにやって来たのだが……。

 

「「うるさいッ! 残念ッ!!!」」

 

「誰が残念かぁッ!!!」

 

残念と言われてユーリアもそのもみ合いに参戦してしまった。誰がどう見てもそれは地獄絵図としか言いようのない光景だった……。

 

「おい、レオナ。お前の元隊長止めて来い」

 

「……すみません、無理です」

 

「なんかこう頭いいはずなのにあの人武蔵のことになると途端にIQ下がらない?」

 

3人が3人とも優秀と言えるだけの頭脳を持っているのだが、このIQの下がりよう……恋は盲目とよく言った物だ。ユーリア、レオナと続き迎えに来ていたタスクが同意を求めるように尋ねる。

 

「……適齢期が近いそうですから」

 

「そりゃあ死活問題だな。結婚願望があるならな」

 

「カチーナ中尉はないんですか?」

 

「はっ! あたしが結婚して寿退社みたいなタマに見えるか?」

 

適齢期が近いと言うのはある意味カチーナも同じだが、ワイルドすぎるだろうとタスクは苦笑していた。

 

「今戻りまし……たぁッ!?」

 

「遅い。すぐ帰ってくるって言ったのにッ!!」

 

タラップで降りて来た武蔵の足をエキドナが体勢を低くした完璧なタックルで捉え引っくり返す。

 

「あいつさ。偶に本当に記憶喪失かって思うのあたしだけか?」

 

「いえ、俺もそう思います」

 

世間常識などは確かに欠落しているのだが、妙に体捌きとかが優れているとカチーナとキョウスケは感じていた。体術に関しては教導隊レベルと言ってもいい武蔵の足を刈り取ってダウンさせて、完全にマウント姿は完全に熟練の戦士の物だ。

 

「いや、カチーナ中尉もキョウスケも問題はそこじゃないと思うわ……」

 

「あ、みえそ……「タスク?」……はい、ごめんなさい」

 

「……そー「アラド? 何をしてるの」……え、いや、何もして……ないですよ?」

 

武蔵に会えなかった分を取り戻すかのように倒れている武蔵に抱き付いているエキドナなのだが……連邦の正規の制服を借りており、その制服がミニスカートなので、下着が丸見え寸前でそれを覗き込もうとしたタスクはレオナに耳を捻り上げられ、アラドはシャインがもめていると聞いて呼ばれたラトゥーニに睨まれて呻いていた。

 

「い、いややや、エキドナさん」

 

「うー……」

 

そして武蔵は武蔵でエキドナの豊かな胸が自身の胸板で押し潰されている上に、エキドナの顔が近くあわあわしていた。

 

「エキドナ、離れろッ!」

 

「うーッ!」

 

「うーじゃない! うーじゃッ!!」

 

ユーリアがエキドナを引き離そうとするが、エキドナの抵抗が非常に強固で引っ張り合いになった挙句、武蔵の方に倒れこみ更に武蔵の顔を赤面させる事となった。

 

「……」

 

そしてシャインは自分の平らな体型を見て絶望的な表情をしていて、その邪気というか瘴気は格納庫にいる全員を絶句させた。武蔵の帰還……たったそれだけでアビアノ基地の格納庫は地獄絵図の形相を呈しているのだった……。

 

 

 

出立前に浅草などでドラ焼きやカステラ等の茶菓子をキョウスケ達に土産として買い込んできた武蔵。アビアノ基地の食堂でいない間の情報交換をしていた武蔵はリュウセイが意識不明と聞いて、その手にしていたドラ焼きを机の上に落とした。

 

「え!? リュウセイが意識不明ってそれ大丈夫なのか!?」

 

「肉体的に怪我をしているわけではない。ただ念動力の感応現象による精神的な物が原因だから動かせない状況だ」

 

「……マジか」

 

自分がいない間にあったという襲撃の話を聞いて武蔵はその顔を歪めた。確かにその可能性は考えていたが、まさかリュウセイが意識不明になるのは武蔵に取っても想定外の内容だった。

 

「武蔵様の方も鬼の襲撃が会ったと聞いておりますが……大丈夫だったのですか?」

 

シャインが武蔵の土産のぬいぐるみを抱きかかえながら、武蔵は大丈夫だったのか? と問いかける。なお、ぬいぐるみを貰えなかったエキドナがいじけているがそこに触れてはいけない。

 

「あー、うん。そうだな……負けた」

 

「「「「負けたッ!?」」」

 

武蔵が負けたと明言した事で食堂にいた全員が嘘だろっと言わんばかりの表情を浮かべる。

 

「龍虎皇鬼って奴が出て来たんだけど、まぁ強いのなんのって」

 

「武蔵でも勝てないと思うほどなのか?」

 

龍虎皇鬼と戦った経験のあるブリットが信じられないと言う表情で尋ね、武蔵はみたらし団子を1つ頬張りうーんっと悩む素振りを見せた。

 

「戦いの後、どうなってもいいなら多分勝てる「そんなの駄目ですわよ!」「……駄目、絶対」……判ってるよ。オイラも相打ちで倒すつもりなんてさらさら無いし」

 

シャインとエキドナに怒られ、たははと苦笑した武蔵は団子を皿の上に戻し、熱い緑茶を啜る。

 

「力的には多分互角か、少しゲッターの方が上って感じでタイマンで引き分けには持ち込んだけど、1時間くらい気絶してた」

 

「マジか……」

 

「ちょっとそれは信じられないですね」

 

武蔵のタフさは全員が知っている。そんな武蔵が1時間近く気絶していたと言うのは武蔵本人から告げられた言葉だったとしても、はいそうですかと信じることが出来ない驚愕の事実だった。

 

「あいてはどうなったのさ。話を聞く限りだとあたしは引き分けだと思ったんだけど」

 

「向こうはなんか楽しい勝負だったって笑いながら帰ってった。だけど……正直オイラの負けだな、リューネ」

 

「なんでだ? タイマンで2人とも行動不能なら引き分けだろ?」

 

繰り返し負けという武蔵にカチーナがそう尋ねる。すると武蔵はDコンを机の上に置き、自分が負けだという理由を説明した。

 

「シャインちゃんを追いかけてたグルンガストみたいな奴、新しく見るジガンスクードみたいなのと、サイバスター見たいの、それとなんとなくヒュッケバインに似てる新型の百鬼獣がいたんだ」

 

Dコンに写されている百鬼獣は確かに細部は違うが、武蔵が似ていると言った通りグルンガスト、ジガンスクード、サイバスター、ヒュッケバインに酷似していた。

 

「これってもしかして内通者がいるってことですか!?」

 

「いや、それは早計だと思うぞ。似ていると言っていても先入観があるからだ。パッと見関連性は余り感じられない」

 

クスハはそれを見て内通者がいると思い、機体データが流出していると感じたようだが、ギリアムは違うと断じた。

 

「確かにそう言われるとそう見えるってだけかもしれないけど……」

 

「でもこりゃ似すぎだぜ、翼の感じとかサイバスターの構造と殆ど同じだ」

 

似ていないと言えば似ていないが、似ているといえば似ている……本当に難しい所だが、今までの獣染みた百鬼獣と一線を画すシルエットは最新鋭機というのを十分に感じさせた。

 

「百鬼帝国がこちら側の技術をまねていると言うことか……」

 

「パイロットみたいのも乗ってましたよ。無人機の奴より、もっと強いのは間違いないですね」

 

「本格的に百鬼帝国が動き出したと言う所か……苦しくなるな」

 

今までは様子見の無人の百鬼獣、だが伊豆基地で出現した有人の百鬼獣の出現はオペレーションプランジネッタの前の最悪の知らせとなった。

 

『各クルーはブリーフィングルームへ、繰り返します、各クルーはブリーフィングルームへ集まってください』

 

丁度その時に入った館内放送はオペレーションプランジネッタの打ち合わせであるという事を、全員が察した。

 

「正直アビアノを出る前にこの話を聞けて良かったぜ」

 

「そうだな。警戒し、立ち回ることが出来るからな」

 

「武蔵はどうするんだ?」

 

「勿論、オイラも顔を出しますよ。行きましょう」

 

ほんの僅かな休息は終わり、新たな戦いがもうすぐそこに迫っているのだった……。

 

 

 

 

オペレーションプランタジネットに向けての戦力強化、そして今後の方針がブリーフィングルームで話し合われる事となった。

 

「武蔵に関してだが、ブライアン・ミッドクリッド大統領からの戦時特例が下され、我々に協力してはくれるが独立戦力として命令権などはない、特殊な立ち位置になることになった」

 

伊豆基地のレイカーの指揮下に入ると言う話だったはずだが、ダイテツから告げられた武蔵の立ち位置はキョウスケ達の想像を超える物になっていた。

 

「それだけ総司令部がうるさいという事ですね?」

 

「まぁ。判らんでもないけどな」

 

武蔵とゲッターロボの存在は非常に大きい、なんとしても自軍の戦力に迎えようと思うのは当然の事だ。そう考えればブライアンの直属となれば武蔵の自由は保障され、総司令部などの命令なども突っぱねることが出来る。

 

「むしろ武蔵の場合はそちらの方が都合が良いな」

 

「ビアン博士やカーウァイ隊長との橋渡しにもなるしな」

 

武蔵はあくまでビアン派の面子なので、連邦軍の内部が怪しくなった際にハガネとヒリュウ改の脱出先にもなる。そう考えるとブライアンの判断は最善の一手だと言えるだろう。

 

「武蔵さんは独立戦力となりましたが、これからも協力してくれる事に間違いありません。協力し合い地球を守りましょう」

 

「勿論です。その為のゲッターロボですからね!」

 

武蔵は飾り物の英雄などになるつもりは無く、地球を守る為に戦う。その思いは決して変ることなく、そしてその為にキョウスケ達と共に戦うのが最善と判っていたので、これからもハガネ、そしてヒリュウ改と行動を共にすることを決めていた。

 

「話を戻そう、オペレーションプランタジネットに向け、戦力の強化、鬼やノイエDC、そしてインスペクターに奪取された基地設備や、国の奪還が最優先となる。その為、シロガネとハガネはアビアノ基地に残り、ヒリュウ改には伊豆基地に向かって貰うことになる」

 

武蔵の扱いと立ち位置が定まった所でリーがこれからの動きをキョウスケ達に告げる。

 

「何だ、せっかく合流したってのにまたバラバラになるのかよ」

 

「しょうがないよ。インスペクターの連中が極東を狙ってるって言うんだからさ」

 

やっとの思いで合流したマサキはまた分かれることになり不満げだが、リューネはしょうがないと言って不貞腐れているマサキを窘める。日本近辺に出現しているインスペクターに百鬼獣は無視できる物ではなく、それに加えて伊豆基地でメンテをされているR-3やR-GUNを回収する必要性もあり、ここで戦力を分散するのは必要なことでもあった。

 

「シロガネとハガネもこちらでの任務が済み次第、伊豆へ向かうことになる。ここまで敵の攻撃が激しくなっている中で戦力を分散するのは出来るだけ避けたい所だからな」

 

百鬼帝国、ノイエDC、インスペクター、アインストと地球圏を覆う敵勢力が多いと知りつつ、その上で戦力で分散すると言うテツヤの言葉を聞いて、キョウスケがその理由を尋ねた。

 

「そこまで判っていて、あえて戦力を分散する……その任務とは?」

 

「リクセント公国……そして、北アフリカ地区の奪還だ」

 

連邦にとっても重要な拠点である北アフリカの製造拠点の奪還、そしてそれと同時にノイエDCや何度も出現しているゲシュペンスト・MK-Ⅱを運用する部隊への資金の流通元と思われるリクセント公国の奪還は必要不可欠の任務だった。

 

「任務の内容に納得していただけ用なのでメンバー割りを発表します。ATXチームとカチーナ隊、マサキ、リューネ、リオ少尉とリョウト少尉は……私の方……ヒリュウ改に乗って下さい」

 

ヒリュウ改には元々ヒリュウ改に所属していた面子とマサキとリューネと言った広域攻撃が可能な2人に加え、マオ社に出向していたリョウトとリオが選ばれた。その理由はインスペクターが日本を狙っている情報があり、それに加え、目撃情報が多い。インスペクターの基本戦術が無尽蔵の増援を送り込んでくるインスペクターやゴーストに対応する為の編成になっている。

 

「じゃ、あたしら以外の連中はしばらくアビアノに居残りか、武蔵はどうするんだ?」

 

「オイラですか? オイラはアビアノに残るつもりですよ」

 

カチーナの問いかけに武蔵はアビアノに残るつもりと聞いて、エクセレンがからかうように笑った。

 

「シャイン王女の為かしら? もー、武蔵。このままだとますますシャイン王女の王子様になっちゃうわよ?」

 

「いやいや、オイラは王子様ってキャラじゃないですよ。でもまぁ、リクセントを取り戻すって約束しましたからね、約束は守らないと」

 

特別なことを言っているわけではない。だが自分が1度口にした以上それを守ると言う武蔵は男らしさに満ちていた、からかうつもりが余りにストレートな返事を返され、エクセレンは困ったように笑う事になった。

 

「武蔵が来てくれるなら頼もしい。一緒にリクセントを取り戻そう」

 

「おう。任せとけ」

 

リクセントを制圧しているノイエDCは百鬼帝国との関連性が見られているので、武蔵がアビアノに残ると言うのはダイテツ達にとってもありがたい話だった。

 

「話に割り込むようで悪いが……レフィーナ艦長、私も参式1号機やAMボクサーと共に伊豆へ行こう」

 

「ハミル博士もですか? それは構いませんが……アビアノの方がいいのではないですか?」

 

設備が充実しているアビアノに残る方がいいのでは? とレフィーナが尋ねるがカークは首を左右に振った。

 

「ボクサーはロバートの手を借りねばならない上に、参式は今のエンジンをトロニウム・エンジンに交換する予定だ。それらの作業はアビアノでは出来ないのでな」

 

「判りました。リン社長とラドム博士は?」

 

カークがヒリュウ改に同行する理由を聞いたレフィーナはリンとマリオンはどうするのか? と問いかける。

 

「私は事後処理の為にパリ支社へ行くつもりだ。 あとオルレアンの工場で改修作業を行っている機体の様子も見に行きたい」

 

「私はビルガーの調整がありますから、アビアノに残りますわ」

 

「了解です。 では、ヒリュウ改のクルーは直ちに出発の準備をして下さい」

 

伊豆基地に向かうクルーも決まり、レフィーナからヒリュウ改に乗り込むように指示が出て、ヒリュウ改に向かう面子はブリーフィングルームを出て行った。

 

「……アラド、これをお前に渡しておく」

 

「ちょっとキョウスケ? どうしたのよ?」

 

出てくる気配の無いキョウスケに気付き、1度ブリーフィングルームを出たエクセレンが引き返してきて、どうしたのか? と尋ねる。

 

「アラドにアルトの戦闘データを渡しておこうと思ってな。お前の戦い方は俺に近い……すぐに行くから、先に行っていてくれ」

 

アラドにとんでもないデータを渡しているキョウスケを止めようと思ったエクセレンだが、既にデータを渡しているの見てエクセレンは手遅れねと呟いて、今度こそブリーフィングルームを後にし、アラドと二言三言かわしたキョウスケもその後を追ってブリーフィングルームを後にした。

 

「……結局、 何だかんだで杯を交わす時間がありませんでしたな、ダイテツ中佐」

 

「やむを得まい。それはオペレーションプランタジネットが成功した後にしよう。その時はワシのとっておきも出すぞ」

 

杯をかわすことが出来ず残念そうにするショーンに杯をかわすのはオペレーションプランタジネットを終え、勝利の美酒にしようとダイテツは笑い、ショーンもそれに同意するように笑みを浮かべた。

 

「そうですね。その時は私の取っておきも出すことにしましょう。ではレフィーナ艦長……私達も参りましょうか」

 

「はい。ダイテツ中佐、リー中佐もお気をつけて」

 

「すみません、少しよろしいでしょうか? 艦長」

 

ダイテツとリーの2人に敬礼し、レフィーナがブリーフィングルームを出ようとした時、レオナがレフィーナを呼び止めた。

 

「何です?」

 

「命令違反である上に、身勝手な申し出なのは重々承知しておりますが……私をリクセント奪還作戦に 参加させていただけないでしょうか」

 

レオナは頭を下げて伊豆基地ではなく、アビアノ基地に残りたいとレフィーナに直談判をした。その理由をすぐに見抜いたショーンが目を細め、レオナに視線を向けた。

 

「その理由は……ノイエDCのアーチボルド・グリムズという人物に関係があるのですかな?」

 

国際指名手配のテロリスト……アーチボルドがリクセントを制圧していると言うのはダイテツ達も手にしていた情報だった。コロニーに住む者すべてにとって忌むべき相手……それがアーチボルドという男だった。

 

「は、はい……彼が起こしたエルピス事件はブランシュタイン家だけでなく……ガーシュタイン家にとっても許し難く忘れ難い過去なのです」

 

「なるほど、貴方がたの手で彼との決着をつけたいとおっしゃる……ふーむ……レフィーナ中佐はどう思いますか?」

 

「私としてはレオナ少尉の思いを聞いてあげたいと思います。ですがリクセント奪還ダイテツ中佐とリー中佐の管轄なので、ダイテツ中佐達はどう思われますか?」

 

レフィーナに話を振られたダイテツは鋭いレオナに向けて問いかける。

 

「私怨だけではあるまいな?」

 

恨みがあるのは判っている、だがそれは冷静な判断を奪いかねない。普段冷静な分、怒りで我を忘れる危険性をダイテツは危惧し、レオナを睨みつけるように、うそは許さないと言わんばかりに鋭い視線を向けた。

 

「はい……あの男を野放しにしておけば、エルピス事件以上の悲劇が起きるかも知れません。それだけは……何としてもこの手で食い止めたいのです」

 

「んーダイテツさん、リーさん。オイラはレオナさんに来て貰った方が良いかなって思います。あいつは恐竜帝国とかに似た、すごい嫌な感じがしますから」

 

レオナの言葉を聞いて武蔵もレオナに助け舟を出した。武蔵から見てもアーチボルドは危険人物で、何をしでかすか判らない相手だ。少しでもアーチボルドのやり口を知る相手がいる方が良いと思うのは当然の事だった。

 

「私も武蔵の意見に同意します。アーチボルドという男は死を偽装し、数多のテロ行為を行っておりますが、その大半が宇宙であり、我々にはアーチボルドと対峙した経験が殆どありません」

 

「……彼のやり口を知る者がいれば、 奪還作戦を有利に進められるかも知れん……と言う事だな。リー中佐」

 

アーチボルドの主戦場は宇宙であり、地球で暮らしていたダイテツ達はアーチボルドの悪辣さを十分に理解しているとは言い難い。そう考えればライとレオナの2人がいるのはリクセント奪還作戦を優位に働かせる要因となる可能性が極めて高いとリーも判断し、レオナをシロガネ、ハガネの部隊に編成すること進言した。

 

「レフィーナ艦長、レオナ少尉をワシの部隊に組み入れたいのだが、どうか?」

 

レオナの真摯な頼み、そして武蔵とリーの助言もあればダイテツもそれを無碍にする事は出来ず。レオナを奪還部隊に加える事を決め、レフィーナに最後の確認を取る。

 

「構いません。 リクセント公国の奪還は急務ですから、ただし、レオナ少尉……私情に駆られての行動は謹んで下さい……ライディース少尉も」

 

「……判りました」

 

「……ありがとうございます。レフィーナ艦長……」

 

アーチボルドへの恨みはレフィーナも十分に察して余りある物だったが、それに飲み込まれ暴走しないようにとライとレオナにレフィーナ釘をさすと、話を聞いていたギリアムが手を上げた。

 

「レオナ少尉が抜けた代わりに俺が日本に同行しよう」

 

「ギリアム少佐……ありがとうございます。助かります」

 

「なに、日本に用があるのでな。そのついでになるが、戦力として数えてくれて構わない」

 

レオナの代わりにギリアムがヒリュウ改に同行する事が決まり、オペレーションプランタジネットの為にダイテツ達は1度分かれ戦う為の準備を始めるのだった。だがヒリュウ改、そしてハガネとシロガネの前には想像を絶する強大な壁が立ち塞がることを、今のダイテツ達は知る良しも無いのだった……。

 

第98話 超音速の神姫/2つの斬艦刀 その1へ続く

 

 

 




ここからは原作の雰囲気を大事にしつつもオリジナルの要素も頑張って混ぜて行こうと思います。鬼アーチボルドとかも出していこうと思いますので、どんな展開になるのか楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

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