第22話 スターバク島の死闘 その3
グランワームソードをハガネのブリッジに突きつけるグランゾン。メカザウルス達の攻撃はグランゾンが展開しているフィールドで弾かれ、こうして話をしている余裕がある。だが、ハガネの返答によってはメカザウルスだけじゃなく、グランゾンまでもを相手にする必要がある。しかしグランゾンによって破壊された南極の基地、そしてシロガネの轟沈、そして死んでしまったシロガネのクルーの事もあり、冷静な判断が出来るダイテツは勿論、その場に居合わせたリュウセイ達ですらグランゾンを睨みつけている。
「くくくく……さて、返答はいかに? 私はどちらでも構いませんよ? ハガネの皆さん」
だがシュウはその殺気を受け流し、余裕を持った態度を貫いている。その態度がまた、ハガネのクルー達の神経を逆撫でする。
「……艦長」
「……判っている」
グランゾンはヴァルシオンと並ぶDCの最大戦力の1つだ。今の疲弊した状況、しかもメカザウルスとも戦いながらグランゾンと戦う。それは逃れられない死を意味していた。DCとも共闘している以上、ここはシュウの申し出を受け入れるのが生存する道と言う事は判っていた。だがそれでも、南極で死んだシロガネのクルーの事、そして南極基地の隊員の事を考えるとダイテツは共闘を受け入れる。その一言を発する事が出来なかった……
「私も暇ではないのですよ? それとも……くくくッ……武蔵は見殺しですか?」
早く返答しろと促すシュウ。グランゾンのフィールドで攻撃を防がれているメカザウルスはハガネへの攻撃が出来ないと判ると、1人で巨大なメカザウルスと対峙しているゲッター3の方に首を向ける、もう悩んでいる時間が残されていないのは明白だった。
「ぐっ……シュウ! てめえッ! 本当に何を考えてやがるッ!!」
「マサキ。さっきも言ったでしょう? 私は助けに来たと……まさか、ほんの数分前の言葉も忘れてしまったのですか?」
シュウは挑発を繰り返す、マサキでなくてもその言葉には怒りを覚える。助けに来た……その言葉を信じ、背後から撃たれる可能性を考えればどうしても返事を返すことが出来ない。
『ダイテツ・ミナセ中佐。我が艦は本島に支援を要請しました、ビアン総帥からの応援という事であることは間違いがありません』
どうしても判断を仕切れないダイテツにキラーホエールの艦長が告げる。シュウが勝手に来たのではなく、応援である。ダイテツが悩み、返答をしようとした時
「助けてくれるなら早く助けてくれッ!! 今は人間同士でいがみ合ってる場合じゃねえだろッ! ダイテツさんもだッ! 何があったのかは知らないけど! 今はいがみ合ってる場合じゃないだろうッ!?」
メカザウルスの牙を防いでいた武蔵がグランゾンとハガネに向かって叫ぶ。その言葉を聞いてシュウはブリッジからグランワームソードを退けさせる
「くくっ! 彼の方がよほど状況を理解している。私怨で行動を躊躇う等愚の骨頂ですよ」
ハガネとハガネのクルーにそう告げたシュウはグランゾンを反転させ、ゲッター3を襲っているメカザウルスに突撃していく。ダイテツは艦長席の肘掛けを殴りつける、頭ではそれが正しいと判っていた。だがどうしても感情で納得する事が出来ず、武蔵を見殺しにし掛けた自分が腹ただしかった……
「総員、DCのAM隊及びグランゾンと共闘し、この場を切り抜けるッ! 各員奮起せよッ!!」
そしてその怒りを吐き出すかのように、ダイテツは叫ぶのだった……
メカザウルスの弱点は頭部である、それが武蔵から告げられたメカザウルスとの戦闘に置いて最も重要なポイントだ。爬虫類は総じて生命力が高い、仮に尻尾や腕を切り落とした所で怒りを買うだけだ。更に言えば機械化されている部分もあると言えど、その身体の6~7割は生身だ。つまりその性質は生物に近い、自分の生命の危機により凶暴化する。それをさせない為には頭部を狙え、それが武蔵の助言だった……のだが
「生身でも弾き返すのかッ!?」
「本当に化け物なんだからッ!」
ジャーダとガーネットの絶叫が響く、降下してきたバドの頭部を狙いM950マシンガンで頭部を狙い引き金を引く。だがバドの強固な皮膚に弾かれ、有効打撃にならない。
「シャアッ!!」
大きく口を開いたバドの火炎弾が2人に向かって放たれ、慌ててゲシュペンストを後退させるジャーダとガーネット。火炎弾が命中した海が蒸発し、周囲に蒸気の幕を作り出す。
「くそっ! あいつら思ったよりも賢い……うぐうっ!?」
「ジャーダッ!? きゃあッ!!! な、何が起きてるのッ!?」
蒸気の幕を突き破ってきたミサイルに被弾し、ジャーダのゲシュペンストの右腕が肩から吹き飛ぶ。ガーネットが支援に入ろうとするが、ガーネットのゲシュペンストはありとあらゆる計器が異常を起こし、その場から動く事が出来ず。ジャーダ同様ミサイルに被弾して吹き飛ばされる、だが幸いなのはチョバムアーマーに被弾し、本体にダメージが入らなかった事だ。
「くっッ!!! おおおおおおーーッ! サイフラァァァァッシュッ!!!!!」
このままではやられると判断したマサキがサイバスターの広域攻撃である、サイフラッシュを放つ。だが、もっとも撃墜したいバドは即座に空中に逃れ、装甲の厚いゼンとズーを巻き込むだけに留まる。しかもそれもダメージとは言いがたく、体表に僅かな焦げ痕をつけるのがやっとだった……
「くそっ……は……はっ……くそッ! こうなったらサイバードであいつらの群れに突っ込んでサイフラッシュをぶち込んでやるッ!!」
「マサキ、無茶しすぎニャッ!」
「これ以上プラーナを消費したら危ないニャッ!」
シロとクロが無茶だと叫ぶ、だがバドを撃墜しない事にはゼンとズーを相手にする余裕がない。
「ぐおっ……!? なんて力だッ!」
「ガオオオンッ!!!」
サイフラッシュの攻撃によってゼンは飛行能力を失ったが、着水した事でティラノザウルスの強大な膂力を用いてグルンガストに襲い掛かる。
「リオン隊は翼竜を狙えッ!! バレリオン隊は首長竜だッ! 対空ミサイル、1番から11番てぇーッ!!!!」
「主砲照準合わせッ! てぇーッ!!!」
キラーホエールの対空ミサイルの雨がバドに向かって降り注ぎ、ハガネの主砲がズーとゼンをその光の中に飲み込む
「リュウセイ、リオ、ラトゥー二、実弾系の武器は効果が薄い。ビーム兵器を主体にしろッ!」
ビームソードを抜き放ったビルトシュバインが対空ミサイルで高度が落ちたバドの首を根元から両断する。鮮血が噴出し、ビルトシュバインの機体を真紅に染め上げていくがイングラムはそれを気にしたそぶりを見せず、メガビームライフルをゼンに向かって放つ。
「キシャアアアッ!」
「ちっ、当たり所が悪いとダメージは通らんか」
だがメガビームライフルの光はゼンの胴体の機械装甲に命中し霧散する。実弾、実体系、更にビーム兵器にまで高い耐性を持つメカザウルスはPTやAMで相手にするにはあまりにも厄介すぎる相手だ。
「計都羅喉剣ッ! 暗剣殺ッ!!!」
イルムの雄叫びが戦場に響き渡り、少し間を置いてからグルンガストに両断されたメカザウルス・ゼンが断末魔の雄叫びを上げて爆発する。
「はッ! はっ……くそ、こんなに強いのかッ! メカザウルスって奴はッ!」
イルムがいらついた素振りで叫ぶ、グルンガストの強固なはずの装甲にはあちこち鋭い引っかき傷があり、更には噛み付かれたのであろう跡もあり、そこから火花が散っている……まだ稼動することは可能だが、機能停止に追い込まれるのも時間の問題だ。
「リョウト君! 援護してッ!」
「え、あ。わ、判ったッ!!!」
リョウトの乗るリオンの放ったチャフグレネードがズーの目の前で炸裂し、一時的にズーの視界を奪い、その後にズーに向かって撃ち込まれたスプリットミサイルがズーの機械の頭部を吹き飛ばす
「いっけええええッ!!!」
背部と脚部のブースターを全開にしたゲシュペンストがズーに向かって突っ込んで行く、その左腕のプラズマステークは放電しており、ジェットマグナムでの撃墜を狙っているのが判る。だがズーも愚かではない、チャフグレネードで視界を失いながらも口を開く
「ジェット……マグナムッ!!!」
「ガオオオンッ!!!」
放たれた火炎弾はリオのゲシュペンストを素通りし、ジェットマグナムは大きく開いたズーの口の中に突きこまれ、その強力な電圧でズーの脳を焼き尽くす
「はぁ……はぁ……な、なんとかなったわねッ!」
「なんて無茶をするんだ! 君はッ!」
推進剤を限界寸前まで消費し、動けなくなったリオのゲシュペンストにバドが迫り、リョウトが怒鳴りながらゲシュペンストの支援に入る。
「支援するッ! 今の内に後退しろッ!」
「ハイパービームライフル……シュートッ!!」
シュッツバルトとビルドラプラターのビームが降下しようとしてきたバドに向かって放たれる。その隙にリョウトとリオはハガネの付近まで離脱する事が出来た
「……そこッ!!!」
「スプリットミサイル射出ッ!!」
DCのリオンとガーリオンとも連携が取れ始め、弾薬の消費も機体の損傷も甚大だが、徐々に徐々にだが戦線を押し返していく
「アカシック……バスターッ!!!」
魔法陣から召喚した火の鳥と共にゼンとズーに突撃するサイバスター、加速のついた一撃はゼンとズーを撃破する。シュウの参戦のおかげと言うのは癪だが、シュウとグランゾンの参戦によって戦況は大きく変わろうとしているのだった……
グランゾンの巨体がメカザウルスの一撃で大きく揺らぐ、巨大な質量と膂力を伴った一撃はグランゾンの湾曲フィールドを貫きその濃紺の身体に傷をつける。
「そいつは尻尾でぶん殴ってくるから気をつけろ!」
「そういう警告は……もう少し早くして欲しい物ですねッ!!」
唸り声を上げて振るわれた尾の一撃をグランワームソードで受け止めながらシュウがぼやく、正直シュウの予想よりもこのメカザウルスの攻撃力は高かった。
「ゲッターミサイルッ!!」
「シャアアアーッ!!」
ゲッター3から放たれたミサイル。だが上半身を覆っていた鎧が分離し、機械のプテラノドンにへと変形すると目から放ったビームでミサイルを撃墜する。
「なるほど、このメカザウルスは3体で1体と言う事ですか」
戦況を観察していたシュウが感心したように呟く。今この場に居るメカザウルスよりも2回りは巨大な体躯、しかもその両腕は進化しており人間の手のように実に器用に動く。そしてその身体の割りに大きな尻尾だと思ったが、それも独立したメカザウルスであり、射撃武器と打撃兵器としての役割を両立している。最後にあの翼は完全に機械だが、電子頭脳で制御しているのか本物の翼竜と比べても引けを取らない自由な機動を描き、メカザウルスを支援している。普通のPTや特機ならば、警戒すべき強大な敵。だがシュウとグランゾンにとって仕掛けさえ判ってしまえば、ただの的に過ぎなかった。
「言ったでしょう? 私も暇ではないのですよ」
グランゾンの胸部が怪しく輝き、グランゾンの前方の漆黒の穴が開いた。その異様な雰囲気に翼竜型のメカザウルスは距離を取るが、本当に助かりたいのならば、グランゾンが現れた瞬間にメカザウルスは撤退するべきだったのだ。
「受けなさい、ワームスマッシャーッ!!!」
グランゾンの胸部の球体が光り、そこから光の矢が漆黒の穴に向かって放たれる。1発や、2発ではない、何十発と光が撃ち込まれていく。
「ギィッ!?」
「うげッ……なんて攻撃だ」
メカザウルスと武蔵の嫌そうな声が重なる。漆黒の穴へと消えた光の矢は翼竜型の機械の背後から、同じような漆黒の穴を展開すると、そこから無数に飛び出してくる。背後から命中した光の矢に顔を上げると今度は顔面、その次は左右、更にその次は前後から、メカザウルスを嬲るように漆黒の穴から飛び出してくる光の矢。それは的確にメカザウルスの身体を削っていく。グランゾンの強さは、この時代の機動兵器ではメカザウルスに勝つ事は難しいと言う武蔵の考えを改める結果となった。
「しゃあッ! あの鬱陶しいのさえいなければッ!!」
武蔵にとっては因縁のあるメカザウルスだった。正直ゲッターが大破寸前にまで追い込まれたのだから苦手意識はあったし、事実万全な状態でこうして対峙すると確かに強くはあった。だがそれは3体のメカザウルスの連携ありきの強さであり、その内の1体が既にその機能を失っていれば、その強さは半減する。
「うおおおおおーーーッ!!!」
雄叫びと共にメカザウルスに向かってゲッター3を走らせる。ゲッター3を近づけさせまいとメカザウルスは丸まってハンマーのようになった尾を大上段から振り下ろしてくる、それは直撃すればゲッターですら一撃で破壊しかねない必殺の一撃だった。
「オープンゲーットッ!!!」
だが命中する寸前でゲッター3の身体は爆ぜ、ジャガーは海中にもぐり、メカザウルスの足元を通り背後に回りこむ、そして旋回し回りこんだイーグル号と上昇した事でハンマーの一撃を回避したベアー号がそのまま頭上を飛び越えて背後に回りこんだ。
「チェンジッ! ゲッタァーッ! スリィーッ!!!」
メカザウルスの背後でゲッター3へとチェンジし、その両腕が伸びながらメカザウルスの身体を締め付けていく。
「ぐ、グギャアアアアアッ!!!」
「ギ、ギイイイイイッ!!!」
90万馬力のゲッター3の力で締め上げられ、メカザウルスが苦悶の叫びを上げる。
「必殺ッ! 大ッ! 雪ッ!! 山ッ!!!」
南鳥島、そしてこのスターバク島で使った大雪山おろしではない、本来の大雪山おろしが初めてハガネのクルーの前で使われた。メカザウルスの身体を締め付けていた腕が高速で伸びながら螺旋回転を描く、ゲッター3の両腕に締め付けられたメカザウルスはまるで独楽のように回転させられながら、巻き起こされた竜巻に飲み込まれ全身を切り刻まれながら上空へ、上空へと舞い上げられていく……
「あんなの喰らったらPT……いや、戦艦だって一撃だぞ……」
「信じられねえ……」
メカザウルスとの戦闘中ではあったが、リュウセイ達は初めて見る本当の大雪山おろしに絶句する。今までの暴風を相手に叩きつけるのではなく、その暴風によって相手を引き裂く大雪山おろしの威力に息を呑む
「おろぉぉぉーーーしッ!!!!」
武蔵の雄叫びと共に台風に巻き上げられたメカザウルスは螺旋回転をしながら上空に向かって弾き飛ばされ、そしてそのまま高速で回転しながら海中に向かって突き刺さり断末魔の雄叫びを上げて爆発四散するのだった……
武蔵はゲッター3のコックピットで爆発したメカザウルスの残骸を見つめていた。
「あの時より強いって思わなかったな……」
武蔵にとっての悪夢であった巨大メカザウルス・ラド……グランゾンの支援があったが、それでも自分の記憶の中より強いとは思わなかった。だが実際早乙女研究所を破壊し、ゲッターをも追い詰めたメカザウルスとは同一固体だが、電子制御されているメカザウルスと、ニオンが乗り込んだ武蔵の記憶の中のメカザウルスでは雲泥の差があった。これがもしニオンが操縦していたのならば、武蔵はもっと苦戦していただろう。
「本艦への支援感謝する」
『いえ、こちらこそ』
メカザウルスの波状攻撃も、この巨大メカザウルスを出撃させる為の足止めだったのだろう。あのメカザウルスが大雪山おろしで撃破されると蜘蛛の子を散らすように撤退して行った。本来なら追撃するべきなのだが、損傷度や消耗度からメカザウルスを追撃することは出来なかった。
「ふふふ……では私もここで失礼するとしましょうか」
グランゾンが浮かび上がり、キラーホエールと撤退しようとするリオンの先頭に着く。
「シュウ! お前は何を考えている!」
「私の話を信じるとは思えない貴方に話すだけ時間の無駄ですよ、マサキ」
最後まで嫌味っぽいシュウの言葉にマサキは更に噛み付こうとするが、プラーナを限界まで消耗していることもありそれ以上シュウを怒鳴りつけることは無かった。
「では御機嫌よう、今度はアイドネウス島でお待ちしています」
ブースターを吹かし信じられない速度で離脱するグランゾン。キラーホエールも海中に沈んで行き、生き残ったリオンとバレリオンはそんなキラーホエールを守るかのように上空を編隊を組んで離脱していく
「……艦長。あの陸上戦艦も帰還していきますが……そのあれは……」
テツヤが口ごもる。スターバク島のDCの基地に引き返していく、3隻のライノセラス。だが明らかに回収させる目的のコンテナが4つハガネの進路の無人島に放置されている。
「……PT部隊及び、ゲッターロボの回収後。あのコンテナを回収し、本艦は海中へと潜航する」
ダイテツの下した決断はあのコンテナが罠ではなく、こちらの支援物資だという判断だった。テツヤは命令を復唱し、PT隊への帰還命令を出す。ダイテツはその命令を聞きながら艦長席に背中を預ける、今回のメカザウルスの攻撃は前回よりも激しく、送り込まれるメカザウルスもより強力になっていた。ゲッターロボ、DCとの共闘、そしてグランゾンが現れなければハガネは轟沈し、そしてPT隊は壊滅していただろう……
(なぜそこまで意地になるのだ、上層部は)
メカザウルスが脅威と言うのは上層部も把握しているだろう。だが執拗にメカザウルスの存在を認めず、そしてDCの壊滅を命令する上層部。レイカーを人質にしてまで、メカザウルスをナパーム弾で燃やせと言った命令も腑に落ちない。今の情勢ならば、DCを無理に制圧せず、停戦要請をし、更にメカザウルスという脅威に一丸になって立ち向かうべきだ。ビアンは決して話の判らない男ではない、だが今の上層部はそれを認めない……それはダイテツを初めとしたハガネのクルーに連邦への不信感を与えていた。
(何か……ワシ達では想像もつかない思惑が動いているような……嫌な感じだ)
伊豆基地を出航した時は感じなかった、粘りつくような重い重圧を感じダイテツは深く溜め息を吐くのだった……
ハガネがメカザウルスとの戦いの傷を癒す為深海に身を潜めている頃。連邦の本拠地であるジュネーブの地下深くではあるプロジェクトが開始されていた……
「なぁ、これ本当に修復できるのか?」
「言うな、俺達は与えられた仕事を全うすることだけを考えろ」
地下深くに作られた格納庫で作業する整備兵がそう呟く、その整備兵の視線の先には60M近い非常に大型の特機がハンガーに保管されていた。燃え上がるような真紅のボディ、髭のようなフェイスパーツ、それに鋭利な肩パーツ。それら全てが整備兵としてPTの整備に関わってきた彼らの常識を覆す代物だった。
「でもさ、これ修理って言うけど……殆ど駄目じゃないのか?」
「ぼやくな、仕事だぞ」
先輩の整備兵に睨まれ若い整備兵は黙り込む、だがハンガーに吊るされている特機はその全体を三分割にされており、とても修理できるようには見えない。修理出来るのか?と疑問を抱くのは当然だ
「良いか、こいつは3体合体の特機なんだ。これは壊れているんじゃなくて、メンテ用に分割してあるんだ」
「ええ!? ほ、本当ですかッ!?」
合体する特機と聞いて若い整備兵のテンションが一気に上がる。その姿に壮年の整備兵は溜め息を吐きながら作業を始めろと促す。
「判ったらさっさとコックピット周りの改装を始めるぞ」
「了解です」
凄い特機の修理に関われると若い男が走り回る姿を見ながら、壮年の整備兵はハンガーに掛けられた特機に視線を向ける。
「『G』ねぇ。なんで正式名称を教えてくれないんだか……」
コードネームだけを教えられた特機……それも今までの特機ともPTとも明らかに構造が違う、異様な特機の姿を見て眉を顰めるのだった。試作機でもない、かと言って正規にロールアウトした特機でもない。突然現れた謎の特機の修理、改修命令に違和感を覚えずにはいられない。更に自分達を監視するように配置されている兵士の姿にきな臭い物を感じながら、整備兵は分割された特機……『ドラゴン号』と呼ばれる戦闘機のコックピットに己の身体を滑り込ませるのだった……
「全く、あのような遺物で大丈夫なのかね?」
ジュネーブの応接間に神経質そうな男の声が響く、カール・シュトレーゼマン……ビアンの警告を再三無視し、そしてメカザウルスの存在を隠蔽することを決定したEOTI審議会の議長である男だ
「ふふふ、勿論ですよ、議長。Gが修繕されシロガネに搭載されていれば、南極で轟沈されることなど無かったのですから」
「ふん! メテオ1の落下時に突如浅間山に現れた格納庫から回収された兵器など、信用出来るかッ!」
シュトレーゼマンの一喝に2人の男は僅かに眉を顰める。メテオ1の落下で地球が大騒ぎになっている間に隠蔽されたのだが、メテオ1の落下時に浅間山に崩壊した格納庫と特機と工業用と思える破壊された兵器の残骸が現れたのだ。当時の政府はその情報を隠蔽、そして回収した特機と工業用機械の中で死亡していた男が所持していたPCを回収し、格納庫を焼き払ったのだ。
「そ、それは良くない! 実に良くないですよッ! ジ、Gは最強の兵器! BT-23に記録されていた情報を貴方も見たでしょう? 議長」
男が慌てた口調で告げる。それはこのままでは「G」の修理も修復も出来ないと言う事に気付いたから、いかにGが素晴らしいかと語る。それと共に回収されたデータの事も出し、「G」を修理、修復、改修しないなんて勿体無いと言うことを繰り返し説得する。
「ああ。あの早乙女の乱とか、ゲッター線とか言ういけ好かない放射線か、ふん、旧西暦の記録などあてになる物か」
シュトレーゼマンと話をしていたのはアメフト選手のような大柄な黒人とその男に対して小さすぎる白人の男だった。
「いやいや、議長。Gが動く姿を見れば貴方の意見も変わりますとも」
「そう! まずはGを動かせるようにする事! それが何よりも大事な事なのですよッ!」
2人の男の説得にシュトレーゼマンはもう1度鼻を鳴らし、ソファーから立ち上がる
「ならばGの修復計画はお前達に任せるぞ」
「おお! お任せください議長ッ! 必ずやGを実用段階にし、シロガネの護衛機として活躍させて見せましょうッ!」
「わ、我らにお任せください!」
もう興味はないと言わんばかりに部屋を出て行くシュトレーゼマン。だがこの時シュトレーゼマンは振り返らなかった、それがシュトレーゼマンの命を救っていた。何故ならば、小柄な男の皮膚の下からは、奇妙な音が鳴り響き、その顔の皮膚を突き破り、『何か』が顔を見せようとしていたから、だがそれは隣に立った黒人の男が小柄な男の腕を掴む事で納まった。
「落ち着くんだ。今はあの男には利用価値がある。それまでは我らを侮っていても良いじゃないか」
「こ、これだから人間は嫌いなんだ」
「判る、判るさ、だけど今の私達には人間の力が必要なんだよ」
「わ、判っている! 判っているさッ! 全てはぼ、僕達の宿願の為」
「そう、全ては」
「「ゲッター線のためにッ!!」」
第23話 休養 へ続く
はい、最後に誰か出てきましたが、お口にチャックですよ~? 混沌の魔法使いと読者の皆様との約束ですからね? 彼らの出番はOG1ではあんまりありませんからね? ちょいちょいって出て暗躍してる感じです。次回はインターバル、そしてアイドネウス島もシナリオ大幅変更です。メカザウルス、大好きです。それが全てですかね、では次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い