進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第101話 超音速の神姫/2つの斬艦刀 その4

第101話 超音速の神姫/2つの斬艦刀 その4

 

カイの目の前に立ち塞がるはヒュッケバインをそのまま百鬼獣の60m級に巨大化させ、鋭利な龍の骸を身につけたようなそんな百鬼獣だった。

 

『お前強いだろ? 俺と勝負しろよ。人間』

 

殺意や憎悪が無い、ただ純粋に力比べをしたいと言う闘志をカイはヒシヒシと感じていた。

 

『おい、ヤイバ。そいつは俺が目を付けていた』

 

『てめえが下手こいて、アーチボルドが好き勝手やったんだ。もうてめえの意思は通らんぜ、闘龍鬼』

 

勝手に話を進める鬼の会話を聞いてカイは一瞬不機嫌そうに目を細めたが、これは逆に好機なのではないか? と前向きに受け取ることにした。百鬼帝国の将クラスが2人――しかも武蔵の話ではかつて武蔵が乗っていたゲッターロボと同格か、それ以上と称された百鬼獣を自分1人で足止め出来るのならばリスクはあれど十分にリターンがあった。

 

「イルムガルト」

 

『カイ少佐が俺の事をそうやって呼ぶときは嫌な予感しかねえよ』

 

「そうか、なら大当たりだ。俺があのヤイバとか言う奴が乗ってる奴と戦う。お前は闘龍鬼と戦え」

 

リクセント奪還戦での懸念要素は今のところ3つ、闘龍鬼、ヤイバを名乗る鬼、そしてゲッターロボの3体だ。ゲッターロボは武蔵とシャインとラトゥー二の3人で当たっているので残りは2つ、それぞれをカイとイルムで押さえると言うとイルムは深い溜め息を吐いた。

 

『支援も無しでそりゃきついぜ、少佐』

 

「なに、ヴィレッタ達がノイエDCを制圧すれば支援は来る」

 

『そりゃ殆どこねえって言わないか?』

 

「少しでも希望があった方が楽だろうが」

 

最初から駄目と思うよりももしかしたら支援がくるかもしれないと思えば気が楽だろうがとカイに言われ、イルムは深い溜め息をもう1度吐いたが、それとは裏腹にその声には闘志が満ちていた。

 

『了解、カイ少佐。撃墜されるなんて言うのは止めてくれよ、いい年なんだからな』

 

「はっ! まだお前に心配されるほど耄碌しとらんわッ!!」

 

弾かれたようにゲシュペンスト・リバイブ(K)とグルンガストが動き出し、ブースターを全開にしてそれぞれの相手に襲い掛かる。

 

『はっ! てめえは振られたなッ! 闘龍鬼ッ!』

 

『いや、こいつもこいつで当たりだ。龍王鬼様が見所があるって言っていたからな』

 

『はぁッ!? 俺そんなの聞いて「何時まで無駄口を叩いているッ! お前の敵は俺だッ!」がぁッ!?』

 

隙だらけの闘刃鬼の顔面をゲシュペンスト・リバイブ(K)のメガプラズマステークが打ち抜き、もんどりうって闘刃鬼がリクセントの城内から弾き飛ばされる。

 

(ちっ、思った以上に固いな)

 

イエローアラートを点灯させる機体状況を見てカイは舌打ちをしつつも闘刃鬼の前でファイティングポーズを取らせる。闘刃鬼は両腕のバネだけで立ち上がると、地面に落ちていた刀を拾い上げそれを正眼に構える。

 

『は、悪かったな。うん、てめえと戦うと決めておいて余所見をすりゃあそりゃ面白くねえな』

 

「そんなんじゃないがな、お前のような戦闘狂に一々付き合ってられるか。一気に決めてやる」

 

一瞬闘刃鬼から溢れていた闘志が消えたが、次の瞬間にはコックピット越しにも背筋に冷たい汗が流れるほどの闘志が闘刃鬼から放たれた。

 

『ははははははっ!!! 良いぜ良いぜ、その闘気最高だッ! 俺はヤイバ、んでこいつは闘刃鬼。てめえの名前は?』

 

「カイ、カイ・キタムラ。こいつは俺の相棒のゲシュペンスト・リバイブ」

 

『OK、覚えておくぜカイ。てめえが死ぬまでなぁッ!!』

 

「ぬかせ若造がッ!!」

 

闘刃鬼の振るう日本刀とメガプラズマステークがぶつかり合い、凄まじい轟音を周囲に響かせる。

 

『お前……確か、イルムガルト・カザハラだったな。龍王鬼様が言っていた飄々としているが……良い闘志をした男とな』

 

『男に名前を覚えられるとか最低だな、どうせなら美人の姉ちゃんに名前を覚えて貰うほうがいいね』

 

イルムの言葉に闘龍鬼は楽しそうに笑い三日月刀を構える。

 

『それは生憎だったなッ! 俺に目を付けられた不運を呪えッ!』

 

『本当てめえみたいな戦闘狂はこっちから願い下げだぜッ! ちくしょうめッ!』

 

闘龍鬼とグルンガストの振るう刃が火花を散らし、鍔迫り合いからの斬り合いに転じ、激しい剣撃の応酬が続く。

 

『くっ!?』

 

『ライッ! 突っ込みすぎよッ! アラドフォローにッ!』

 

『りょ、了解ですッ!!』

 

闘龍鬼、闘刃鬼の2機の百鬼獣が抜けたとは言え、ノイエDCの勢いは収まるところか激しさを増し、ハガネやそのPTを討ち取り名前持ちにならんとする野心を持つ鬼は戦果を上げる為に激しい攻撃を続ける。だが龍王鬼の怒りを買えば名前持ちに昇格する等夢のまた夢と分かっており、その戦火がリクセントの民の下へ降りかかる事は無いのだった……。

 

 

 

ゲッターD2とゲッターロボの戦いは凄まじく周囲の地形を破壊しながらダブルトマホークとゲッタートマホークがぶつかり合い、凄まじい轟音を火花を散らしていた。

 

『ふふ、どうしましたか? 本物のゲッターロボとはその程度なのでしょうか?』

 

『ちっ!』

 

アーチボルドの挑発に武蔵は舌打ちをし、ゲッターD2とゲッターロボの距離を取らせた。戦闘力ではゲッターD2が上だが、今回のリクセントの事で思う事こそあれど、上官という事で支援を行うリオンやガーリオン、アーマリオンのAM隊の攻撃が腕に連続で当たればゲッターD2と言えどその動きは束縛され攻め手に掛けることになる。致命傷はまだ受けていないが、この執拗な妨害も重なれば武蔵と言えど劣勢は必須だ。

 

「武蔵様ッ! 他の敵は私とラトゥーニにお任せくださいッ!」

 

『悪い! 頼むわ、シャインちゃん! ラトゥーニッ!』

 

邪魔と言われるかもしれないと思っていたシャインだが、武蔵から頼むと返事を返されコックピットの中で笑みを浮かべた。願ったとおりに武蔵と共に戦える、武蔵の助けになれると言うのが何よりもシャインの心を満たした。見ているだけではない、助ける事が出来る……それがシャインには何よりも嬉しかった。

 

『シャイン王女! 行きます!』

 

「ええッ! 私達で武蔵様を助けましょうッ!」

 

ラトゥーニの言葉に力強く返事を返し、次々と上空から降下してくるAM隊、そして自分達を狙って攻撃をしてくるアーチボルドが駆るゲッターロボの攻撃をリアルタイムで予知し、ラトゥーニのタイプSに送信、そしてラトゥーニが得た情報を元に戦況を把握し、攻撃のタイミングを図りほんの一秒のラグも無い完璧な連携を取りAM隊をゆっくりとだが確実に押し返し始める。でもシャインは何も出来ていない、今のシャインには複雑な操縦が必要となるフェアリオンを操る事は出来ない。

 

(……これが私が覚えなくてはならない事)

 

リアルタイムで行なった予知をW-I3NKシステムによってラトゥーニの操るフェアリオン・タイプSに送信、そのデータを受け取ったラトゥーニは2機のフェアリオンを1人で操っていた。特殊な操縦システムによって、遠隔で動く操縦桿やペダルの動きを見ればシャインでも判る。これが今の自分には出来ない操縦だと……確かにこうして戦場に立つ事は出来ている、そして武蔵の手伝いが出来ている。だがそれはラトゥーニありきなのだというのを思い知らされた。

 

「うっ……」

 

『大丈夫ですか!? シャイン王女ッ!? リンクを……』

 

「いいえ、大丈夫です。り、リンクは続けます」

 

長時間予知を続けるのは特殊なマンマシン・インターフェイスを用いてもシャインに強い負担を掛けていた。それでもシャインは予知を止めるつもりは無く、そしてリンクを断ち切るつもりもなかった。余りに複雑に入り乱れた様々な可能性、それを1つでも見失えばその瞬間に戦況が大きく自分達に不利になると判っていたから。歯を食いしばり、予知を続けていたシャインの脳裏に絶望的な光景が広がった。

 

(えっ!? よ、避けれないッ!?)

 

『なっ!? くっ! な、なんとか回避をッ!』

 

自分とラトゥーニの駆るフェアリオンを飲み込む翡翠色の光線の嵐――それにシャインは身を強張らせ、ラトゥーニは致命傷を避ける為に回避へと動き出す。

 

『さてさて、正義の味方さんはどうするんですかねえッ!!!』

 

ゲッターロボがその全身をマントで包み込み、上空に向かってマントを開いた。ゲッターウィングで乱反射を繰り返したゲッタービーム――スパイラルゲッタービームが敵味方問わず降り注いだ。ゲッターD2は紛れも無くゲッターロボよりも、ドラゴンよりも、そして真ゲッターよりも強い――だが旧式機が弱いと言う訳ではない。そもそもゲッターロボの進化の歴史は自分よりも強大な敵と戦うことを前提にして行なわれている。高火力の武器、強力な装甲、そして出力の高いゲッター炉心、1対多に対応しつつも、本来のその用途は自分よりも強大な敵と戦うことが前提になっている。つまりゲッターロボの完成の1つである真ゲッター、ゲッターD2にはゲッターロボに搭載されていた機能のいくつかがオミットされている――その1つがゲッタービームを反射するマントだ。早乙女博士が想定した使い方では無いがマントを利用した広範囲攻撃はゲッターロボの唯一の広範囲攻撃と言ってもよく、真ゲッターとゲッターD2では使用出来ない技の1つでもあった。

 

『ひゃーははっ! プリンセス・シャイン達を庇えばリクセントが! リクセントを庇えばプリンセス・シャイン達が! ハガネを庇えば、プリンセス・シャインとリクセントがッ!! さぁさぁ! 正義の味方はどうするおつもりですかッ!!!』

 

『うおおぉぉッ!!!』

 

アーチボルドの挑発に武蔵は舌打ちし、ゲッターD2を上空に向かって飛び上がらせる。そしてスパイラルゲッタービームが完全に開ききる前にゲッターD2のゲッタービームによってそれを相殺する。それだけがリクセントへの被害を押さえる唯一の方法であり、そしてそれと同時にアーチボルドの狙い通りに動くという事を意味していた。

 

「駄目! 武蔵様! 罠ですッ!!!」

 

シャインが罠だと叫んだ。そしてそれは武蔵も判っていたが、周囲の被害を抑えるにはこれしか武蔵には取れる手段がなかった。

 

『ええ、その通りですね。いやいや、正義の味方は辛いですねぇッ!!』

 

百鬼帝国の技術によってパワーアップしたゲッターロボの放った大出力のゲッタービームが地上から上空に向かって放たれ、ゲッターD2の姿がゲッタービームの光の中に飲み込まれて消えた。

 

『む、武蔵ッ!?』

 

『嘘だろッ!?』

 

今も放出を続けるゲッタービームの光の柱からゲッターD2が出てくる気配はない。

 

「え、あ……嘘、嘘ッ!?」

 

そしてシャインの予知が途絶えた――そのありえない事に、武蔵の死を連想させる事にシャインはパニックを引き起こした。

 

『シャイン王女ッ! 落ち着いて! 落ち着いてくださいッ!!』

 

ラトゥーニが落ち着くように声を掛けるが1度乱れた心と集中力は戻らない。今まで完璧だったシンクロが解除される――それはW-I3NKシステムの停止を表していた。今までのスピードが嘘のように速度を失い、ふらふらと飛行するフェアリオン・タイプGを見てアーチボルドはほくそ笑み、その手にしたゲッタートマホークを振りかぶる。

 

『ではさようなら、プリンセス・シャイン』

 

『シャイン王女ッ!!』

 

ゲッタートマホークが振るわれる寸前でその戦斧は動きを止めた。いや、止めさせられた。地中から伸びたドラゴンの腕によって……。

 

『貴方生きていたのですか!?』

 

『馬鹿野郎ッ! ゲッタービームがドラゴンに効くかッ!! 良い加減に姿を見せやがれ、この偽物野郎ッ!!! ゲッタァァッビィィイイイムッ!!!!!』

 

『っぎゃあああああああーーーーッ!!!!』

 

至近距離からのゲッターD2の腹部から放たれた高出力のゲッタービームがゲッターロボを飲み込んだ。アーチボルドは獣のような凄まじい悲鳴を上げて吹き飛び、そのまま海の中に落下しその姿を消す。

 

「武蔵様ッ! 大丈夫なんですかッ!?」

 

武蔵の声を聞いたことで呆然としていたシャインはその意識を取り戻し、武蔵に大丈夫だったのかと必死な様子で問いかける。

 

『オイラは無事さ、心配かけて悪かったな。どうしても気になることがあったんだ、それを知るためにはこうするしかなかったんだ。ごめんな』

 

業とゲッタービームの柱に飛び込んだ武蔵の意図――それはゲッターロボに偽装している何かの正体を突き止める為の物だった。

 

『偽物って言ってたけど、あれは本当に偽物なの? 武蔵』

 

『いや、本物のゲッターロボなのは間違いねぇ。だけど……あれはゲッターロボじゃねぇ、ゲッターロボにしちゃあ強すぎる』

 

ゲッターロボと同じ姿をしていて、しかしそれでいてゲッターロボよりも強い存在――それは武蔵の知るなかでは1機しか存在しなかった。

 

『おら、出てきやがれ、あの程度じゃくたばっていないんだろうが』

 

『は、ははは……いやいや、まさかねえ。こうも簡単にばれるとは思ってなかったんですけどねぇ……』

 

海面を割り姿を見せたのは漆黒の装甲と、マスクを思わせるフェイスパーツ、そして手の甲から伸びる黄色のスパイク……ゲッターロボに似ているがゲッターロボとも似てもにつかぬその姿に驚きと驚愕が広がった。

 

『ゲッターロボじゃないッ!?』

 

『なんですの、あの悪趣味な姿は……』

 

その姿は確かにゲッターロボに酷似していた。だがゲッターロボよりも邪悪で、そして禍々しさを伴った姿を見て武蔵は舌打ちをした。

 

『ブラックゲッターをそんなゲテモノに改造しやがって』

 

それは紛れも無く竜馬のブラックゲッターだった。それが百鬼帝国によってより禍々しく、そしてより邪悪に、そしてマシンセルを投入されたそれは悪魔としか言いようのない存在だった。

 

『ブラックゲッター等と品がないですね。これはノワール、ゲッターロボ・ノワールですよ』

 

楽しそうに告げるアーチボルド、その声に呼応するようにマスク型のフェイスパーツが開き牙が露になり、カメラアイに血走った目が浮かび上がる。マシンセルとゲッター線によって無限に進化する異形のゲッターロボ――それがアーチボルドの駆るゲッターロボの正体なのだった……。

 

 

 

 

リクセント公国の森側では闘刃鬼とゲシュペンスト・リバイブ(K)の激しい戦いが繰り広げられていた。だが戦況は完全に均衡状態に陥っており、互いに決め手に欠けるという状況だった。出力、装甲、パワー……その全てがほぼ互角であり、2機の差は獲物のリーチの差、そしてパイロットの技量だけだった。

 

「おらあッ!!!」

 

闘刃鬼の横薙ぎの一撃をゲシュペンスト・リバイブ(K)は手の甲で受け止めると同時に斜めに逸らした。

 

『ふんッ!!!』

 

「ぐっ!?」

 

それによって態勢を崩した闘刃鬼の胴に力強く踏み込んだゲシュペンスト・リバイブ(K)の正拳突きが叩き込まれる。コックピットを揺らされヤイバは苦悶の声を上げるが、それと同時にカイも唸り声を上げた。

 

『手癖の悪い奴だ』

 

「ははッ! 戦いなんだ。卑怯なんて言ってくれるなよ。おっさん!」

 

殴られた瞬間にゲシュペンスト・リバイブ(K)の電極にナイフを突き立て、右腕のメガ・プラズマステークの電線を断ち切ったヤイバは楽しそうに笑う。

 

『おっさんではないッ!』

 

「はははッ! おっさん、おっさんッ!!」

 

カイをおっさんと挑発するヤイバ。だが言動の割りにヤイバには余裕が無かった……。

 

(こいつマジで強いなッ!)

 

自分の挑発に乗っているように見えてクレバーに立ち回り、闘刃鬼の日本刀をひたすらに狙われ、これ以上は刀身が歪むと背中に鞘に戻したヤイバだが、そうなると武器は仕込みナイフと両腰の短刀、それとないよりまし程度の射撃武器……最大武器を封じられたヤイバはそれでも楽しそうに牙を剥き出しにして笑った。

 

「戦上手だなあッ!!!」

 

『そんなものを褒められても嬉しくともなんとも無いわッ!!』

 

「うわったたッ!?」

 

肩を掴まれと思った瞬間に闘刃鬼が宙を舞い、着地と共に繰り出された前蹴りを仰け反って避けたが、その直後に踏み込んだ放たれた左腕のメガ・プラズマステークの一撃に闘刃鬼のコックピットが火花を散らし爆発する。

 

「うっぐッ!」

 

砕けたモニターが頬に突き刺さり、それを引き抜いてヤイバは傷跡に触れて笑った。強い上に戦いが巧い、そもそも機体性能は僅差とは言え間違いなく闘刃鬼が上だし、その日本刀の一撃も直撃すれば一撃でゲシュペンスト・リバイブ(K)を大破に追い込むだけの威力があった。それを知っても尚懐に飛び込み、柄の部分を狙い目釘穴を緩ませにくると言うのは普通の発想ではない。それを仕掛けてきた段階でヤイバはカイが日本刀や剣を武器にする相手と戦いなれていると把握していた。

 

(アーチボルドの馬鹿を止めに来ただけだが、こんな相手と戦えるのは幸運だぜッ!!)

 

両拳を顎の位置まで上げ闘刃鬼がファイティングポーズを取ると、その両拳が炎を纏った。

 

「おら、行くぜッ!!」

 

『ぬうっ!!』

 

カイの突撃にあわせて拳を突き出してきた闘刃鬼、マニュアル操作で首を傾けさせ直撃を回避するゲシュペンスト・リバイブ(K)、そして闘刃鬼も同じ様に首を傾けて直撃をかわし、闘刃鬼とゲシュペンスト・リバイブ(K)の右拳が完全にクロスカウンターの形で交錯する。

 

「ぐっ!?」

 

『ぬぐっ!?』

 

カイとヤイバの苦悶の声が重なり、闘刃鬼とゲシュペンスト・リバイブ(K)が同時にたたらを踏んで後退する。

 

「ふいーやべえ、ぞくぞくするぜッ! 楽しくてしょうがねぇッ!」

 

バトルマニアのヤイバは躊躇わずクロスカウンターを打ち込んで来たカイとの戦いが楽しくてしょうがないと笑った。

 

『ちいっ、厄介になって来たな』

 

それに対してカイは大振りの一撃を繰り返すからカウンタータイミングが取りやすかったのが、素手の戦いに切り替えて来た事で自分の得意なクロスレンジになったが、燃える拳によって攻撃力が格段に上昇し、その上機体サイズも上という相手にステゴロを挑む事になり厄介になったなと口にしつつも、その口元は緩く笑みを浮かべていた。

 

「おら、行くぜッ! おっさんッ!」

 

『おっさんおっさんとやかましいわッ! この若造がッ!!』

 

闘刃鬼とゲシュペンスト・リバイブ(K)が同時に駆け出し、超至近距離での拳の応酬が繰り広げられる。その反対側の海岸ではイルムが海中に追い込まれていた。

 

『この程度で終わりか? イルムガルト・カザハラ?』

 

「一々フルネームで呼ぶんじゃねぇッ!」

 

闘龍鬼の言葉にそう怒鳴り返すイルムだが、その顔は険しく必死にどうやってこの状況から抜け出すかを考えていた。グルンガストはどの環境にも対応出来るように設計はされている。だが空中はウィングガスト、地上はガストランダーと変形を要する。しかしバランスの取れた機体性能は高く評価されており、どんな環境でも一定以上の戦果を出せるのがグルンガストであり、超闘士と謳われる理由だった。だがそんなグルンガストにも苦手な環境がある――それが海中だ。腰元まで海中に追い込まれれば機動力は大幅に損なわれている、そういう意味では闘龍鬼も海中に入っている事で機動力が落ちているが、グルンガストと異なり合体により機体性能を変える性質を持つ闘龍鬼は合体をせずともある程度は環境に適応する能力を有している。

 

『それは失礼した。ならばイルムガルト! お前はこの窮地をどう切り抜けるか見せて貰おうかッ!』

 

「ちいっ!! この戦闘狂ッ!」

 

脚部のみを合体モードに変えている闘龍鬼は海中を自在に動き回り、その手にした三日月刀で容赦なくグルンガストを攻め立てる。

 

「ぐうっ! 流石にちと不味いぜッ!!!」

 

反撃しようにもその速度を追いきれず、防御に回ればグルンガストの装甲を豆腐のように切り裂く三日月刀に切り裂かれる。闘龍鬼の言った通りイルムは窮地に追い込まれていた、イエローアラートを照らすコックピットの中で忌々しそうに顔を歪める。

 

(せめて海中から出れれば……何とかなるんだが……)

 

武蔵の言った通り確かに闘龍鬼はゲッターロボと同格というのは直接対峙してイルムも理解していた。だが半年の間イルムとて遊んでいたわけではない、操縦の技量を上げ、そしてグルンガストもまたテスラ研、マオ社でアップデートを果たし機体性能は間違いなく向上している。事実海中に追い込まれるまではほぼ互角であり、仮に闘龍鬼の速度に慣れる時間があれば海中にいても互角に戦える可能性は十分にあるのだが……。

 

「そんな悠長な事を言ってる場合じゃなねぇわなッ!!」

 

闘龍鬼の三日月刀の振り下ろしを下から掬い上げるように弾き、がら空きの胴に向かってグルンガストの目から放たれた光線――オメガレーザーが撃ち込まれる。

 

『は、面妖な』

 

「化け物に面妖ななんていわれたくねえよッ!!」

 

当然ながら牽制の威力もないジョナサンの完全な悪ふざけで、スーパーロボットは目からビームが出るんだよっと言う理由で搭載されている武器でダメージは当然イルムはとて期待していない。と言うか長いことグルンガストに乗っているが、イルムが使うのは今回が初めてというレベルで存在を忘れられている武器ではあるが……だがそれでもオメガレーザーを使ったのには意味がある。

 

(さぁ、悩め悩め)

 

目からビームが放たれた――威力は乏しく、そして射程も短い。だが予想だにしない所から攻撃されたことにより、闘龍鬼の攻撃のテンポが緩んだ。闘龍鬼とて馬鹿ではない、自分が不利な状況で意味のない攻撃をしてくるか? と悩みが生まれた。

 

「こいつもおまけだ、持って行きなッ!!!」

 

これも本来は使う事の無い武器――両足に内蔵されているハッチを開放し、6連装のミサイルを闘龍鬼に向かって打ち出す。

 

『ちいッ! 鬱陶しい真似をッ!』

 

空中で炸裂し、小型ミサイルの雨が爆発を繰り返し闘龍鬼が忌々しそうに声を上げる。

 

(頼むから最後まで持ってくれよ……)

 

グルンガストの脚部にはウィングガスト、ガストランダーで用いられるビッグミサイルや、スプリットミサイルが収納されているがグルンガスト形態で使われる事は元から想定されていない。脚部の状態が大きなダメージを受けた事でレッドゾーンに変り、イルムの額から汗が零れ落ちる。

 

『……』

 

(そうだ。警戒しろ)

 

オメガレーザー、脚部からのミサイルと想定していない攻撃を連続で目の当たりにし、闘龍鬼には今ある疑惑が生まれている筈だ。まだ内蔵火器があるのではないか? 威力ない武器を敢えて使い、自分を呼び込もうとしているのではないか? 戦闘においての迷いは大きな隙を呼び、攻撃に攻め込むのを躊躇させる。今までの高速機動を捨て、ジリジリと警戒しながら近寄ってくる。

 

『お前の策略に載ってやるほど暇ではないんだがなッ!』

 

「はッ! そういうなよッ! 最後まで付き合えやッ!」

 

闘龍鬼の装甲が展開し、そこから放たれるミサイルやガトリングをオメガレーザーで迎撃し、戦闘後にメンテが必要になるほど脚部にダメージを受ける事を覚悟し、再び脚部から今度はビッグミサイルを撃ち出す。

 

(さぁ来い、てめえの性格ならこんなのは不愉快だろう、忌々しいだろうからなッ!)

 

真っ向から戦いたいであろう闘龍鬼にとって終始出足を挫く事を徹底しているイルムの戦術は不愉快だろうとイルムは考えていた。そして実際にイルムの戦いは闘龍鬼にとって不愉快な事だ。痺れを切らした闘龍鬼が真正面から突っ込んできてグルンガストの間合いに踏み込んだ瞬間――それがイルムが待ち続けていた好機だった。

 

「ブレイククロスッ! オメガレーザーッ!!!」

 

手裏剣型の投擲武器を放つと同時にオメガレーザーを撃ち込む。だが狙いは闘龍鬼ではなく、先に投げつけたブレイククロスの方だった。ブレイククロスにオメガレーザーが反射し、それを繰り返えされ即席のフラッシュバンが作り出される。

 

『ぬうッ!? こんな小細工などッ!』

 

それは闇夜の中に突然太陽が現れたに等しい強烈な閃光だ。モニター越しとは言え闘龍鬼の目を焼くには十分な威力であり、数秒の時間をイルムに与えた、たかが数秒、されと数秒……イルムが欲していた時間が本当に瞬きほどの一瞬で良く、その一瞬はグルンガストが海中から抜け出る為には十分過ぎる時間だった。

 

「行くぜぇッ!!」

 

ウィングガストへと変形し、海中から飛び出したイルムは急反転しビッグミサイルを発射すると同時にダブルオメガレーザーを闘龍鬼に向かって乱射しながら急降下する。

 

「うおらぁッ!!!」

 

『がはぁッ!?』

 

闘龍鬼の上空を取ると同時にガストランダーへと変形し、そのまま357tという圧倒的な重量を武器とし、ガストランダー自体を巨大なハンマーのようにし叩きつける。咄嗟に両腕を振り上げて防いだ闘龍鬼だが、その程度で357tという重力に加え、急加速により速度という超重量の一撃を防げるわけがない。押し潰されるように海中に叩きつけられ、くの字に折れた闘龍鬼の胴体に0距離でオメガキャノンの銃口が押し当てられると同時に放たれる。しかし闘龍鬼も並の鬼ではない、海中で海戦仕様から空中戦仕様に変形し姿勢の立て直しを図る。

 

「逃がすかよッ!!!」

 

空中で体勢を立て直し、ガストランダーに向かって攻撃を繰り出そうとする闘龍鬼に向かって螺旋状のエネルギーを纏った状態でのガストランダーの高速体当たりによる追撃が叩き込まれる。

 

『ぐ、ぐがあああああッ!! 舐めるなあぁあああああッ!!!』

 

「ぶっつぶれちまえええええッ!!!」

 

ドリルアタックで抉りながら押し潰そうとするイルムとそれを押し返そうとする闘龍鬼の雄叫びが重なり、次の瞬間凄まじい爆発が2機の間で巻き起こり、闘龍鬼、ガストランダーが共に弾き飛ばされる。

 

「くそったれ! 無茶をさせすぎたかッ!」

 

『ぐっ……ちい、持って行かれたかッ!』

 

本来想定していない使い方を多用されたガストランダーはオーバーヒートにより爆発、闘龍鬼はドリルアタックを無理に受け止めた為、右肘からねじ切られた……だがその程度で闘龍鬼もイルムも止まりはしなかった。

 

「ここでくたばれッ!!!」

 

『たかが右腕一本! 左腕があれば事足りるわッ!!!』

 

計都羅喉剣と三日月刀が何度もぶつかり合い、凄まじい火花を散らす。海上から地上へ戦場が変った事で闘龍鬼とグルンガストの戦いはより激しさを増していくのだった……。

 

 

 

 

ゲッターノワールと対峙する武蔵はポセイドン号のコックピットの中で舌打ちをしていた。

 

「こいつ……どうなってやがるッ!?」

 

『ふはははははッ! その程度で終わりですかぁッ!!!』

 

顔の右半分を吹き飛ばされたゲッターノワールが一瞬で再生し、止まりかけていた腕が再び振るわれライガー号に鋭い斬撃跡が刻み込まれる。その異様とも言える再生能力に武蔵は驚きを隠しきれなかった。

 

『さぁさぁ! 出し惜しみしないでどんどん力を見せてくださいよッ!!』

 

顔を叩き潰しても、腕を切り落としても再生するゲッターノワールは現れた当初の38mから明らかに巨大化し、今では50mに迫ろうとしていた。

 

「くそったれッ!!!!」

 

『はははははははははッ!』

 

ダブルトマホークとゲッタートマホークがぶつかり合い、凄まじい轟音と火花を撒き散らす。その時の衝撃と振動で武蔵はあることを感じ取っていた……それは打ち合う度にゲッターノワールのパワーが上がっていると言うことだった。

 

(くそ、どうすりゃ良いんだッ!?)

 

どういうカラクリかは武蔵には判らないが、ゲッターノワールは再生する度に、ゲッターD2の攻撃を受けるたびに自身を強化している。今はまだゲッターD2の方が強いが、何れはゲッターD2と同格の力を有する可能性があると肌で感じていた。

 

(インベーダー……いや、インベーダーの感覚じゃねぇ……本当マジでどうなってやがる……)

 

インベーダーも再生と進化を繰り返していたが、それとは本能的に違う事を感じ取った武蔵は直接攻撃でも、斬撃でも無く、頭部ゲッタービームによるゲッターノワール自身を焼き尽くす事を選択した。

 

「ゲッタァァアアアアビィィイイムッ!!!!」

 

武蔵の思惑通りゲッタービームはゲッターノワールの右半身を吹き飛ばした。

 

『ギ……あはははははは、あひゃひゃひゃひゃやああああッ!! その程度で僕は死にませんよォォおおおおッ!!!』

 

直接叩き潰した時よりも再生に時間が掛かっているが、それでもゲッターノワールはまだ動いていた。

 

「マジでどうなってるんだ……ッ!?」

 

イーグル号も、ジャガー号も、ベアー号もパイロットの乗れる場所は全部潰した。それなのにアーチボルドは生きている――こうなってしまえば跡形も消し飛ばすしか武蔵には思いつく方法が無く、それも可能な武器はゲッターD2には搭載されている……だがそれを使う事を武蔵は躊躇った。

 

(駄目だッ! ここでフルパワーのゲッタービームを使ったら……ッ)

 

威力を絞った頭部のゲッタービームではない、腹部の炉心と直結させたフルパワーのゲッタービームならば……ゲッターノワールを消し飛ばす事も十分に可能だ。だがその場合その余波でリクセントは崩壊する……せめて、せめてノワールが宙に浮いていれば腹部ゲッタービームを使う事も可能だが、ゲッターノワールが地上にいる以上それも叶わない。

 

『武蔵様、私とラトゥーニに任せていただけませんか?』

 

「シャインちゃん?」

 

『あのゲッターロボを打ち上げればいいなら私達に任せて』

 

シャインとラトゥーニの自信に満ちた声を聞いて、武蔵は大丈夫なのかと問いかける。

 

『お任せください、私達を信じてください』

 

『そのかわり一撃で決めて』

 

「判った。頼むぜ2人ともッ!」

 

ゲッターウィングを展開し、腰を落としフルパワーのゲッタービームを放つ為に腹部のゲッタービーム発射口が開かれる。

 

『ひゃひゃひゃひゃッ! こんな玩具見たいので僕とゲッターロボを倒せるつもりですかッ!』

 

ゲッターノワールの攻撃を回避し、2機のフェアリオンは果敢にゲッターノワールへと突撃する。

 

『W-I3NKシステムダブルモードッ!』

 

『託しますわ貴女にッ!』

 

『受け取りました……貴女からッ!!!』

 

フェアリオン・タイプGとSの装甲が開閉され、そこから粒子を撒き散らしながら2機のフェアリオンが同時に加速する。

 

『なぁッ!?』

 

アーチボルドの予想を遥かに越える速度で加速したフェアリオンがゲッターノワールの振るったゲッタートマホークをかわし、懐に潜り込んだ。

 

『シャイン王女、ここはダブルスでッ!!』

 

『ええ! 参りますわッ!!』

 

ソニック・スウェイヤーを展開し、背部の装甲が開き赤と紫の粒子を撒き散らしながら左右からフェアリオン・タイプGとSが同時にゲッターノワールの胴体――ジャガー号に向かってその刃を振るう。

 

『ふふふふ、そんな子供……だッ!?』

 

ゲッターノワールの全長は今や50mに近く、20mにも満たない小型のAMのフェアリオンの攻撃はゲッターノワールに微弱の振動を与えるだけだった……だがそれは最初の内だけで、徐々にその激しさは増して行き、ゲッターノワールの巨体が2機のフェアリオンによって徐々に上空に向かって打ち上げられる。

 

『『はぁぁあああああああッ!!!』』

 

ラトゥーニとシャインの気合に満ちた声が重なり、フェアリオンの攻撃は残像を残すほどの速度で、ただ一箇所を狙い振るわれ続ける。

 

『うわ、すげえ……』

 

『なんて美しい攻撃なんですの……』

 

撒き散らされる粒子が光り輝き、2機の妖精の舞は敵味方を問わず魅了する幻想的な舞となった。

 

『シンクロ……』

 

『アタックですわッ!!!』

 

『ぐぶぼあッ!?』

 

強烈な後ろ回し蹴りがゲッターノワールの胴にめり込み、その巨体がボールのように打ち上げられた。しかしシャインとラトゥーニの猛攻は終わらない。

 

『ラトゥーニッ!』

 

『シャイン王女ッ!!』

 

空中で向かい合った2機のフェアリオンのフェイスパーツが展開され、ラトゥーニとシャインの顔を模した素顔が明らかになる。そしてフェアリオンの顔が口付けをするように接近し、互いの唇が触れるという瞬間に顔を逸らしハイタッチを交わしたフェアリオン・タイプGとSの姿が眩い間での光の中へ包み込まれる。

 

『そんなこけおどし等僕には通用しませんよおおおおおおッ!!!』

 

ゲッターノワールが両手のゲッタードラグーンをフェアリオンに向かって放つが、その銃弾は明後日の方向へと飛ばされた。いやそれだけではない、夜を明るく照らす鮮やかな光の柱の数々……それはフェアリオンの戦闘モードを構築しているアーマーが分離し、自立飛行を行いスポットライトのようにフェアリオンを照らす事で発生した光だった……まるでライブ会場のような光の雨はフェアリオンの姿を隠し、その姿を誤認させる役割を果たし、ゲッタードラグーンの銃弾を回避した2機のフェアリオンはソニックブレイカーを発動させ、それぞれが赤と紫の光を纏い、ゲッターノワールの反撃を至近距離で回避しながら∞の軌道を描き連続でソニックブレイカーを叩き込み続ける。

 

「……すげえ」

 

粗暴と言う訳では無いが武蔵に美術的な感性は無く、またアイドルという存在にも武蔵はさほど興味を持っていなかった。それでもそんな武蔵でも美しいと思う、綺麗だと思う見る者全ての目を引く輝きがフェアリオンにはあった。

 

『ファイナル……ッ!!』

 

『ブレイクですわッ!!!』

 

∞軌道からぴったりと平行飛行を行い、2機のソニックブレイカーを完全に同調させ、光り輝く粒子によって夜空に虹模様を描きながら放たれた一撃がゲッターノワールをリクセント公国のはるか上空へと打ち上げる。

 

『武蔵!』

 

『武蔵様ッ!』

 

『『今、今ですわッ!!!』』

 

アーマーを完全にパージし、ドレス姿になったフェアリオン・タイプGとタイプSが同時に天を指差すよりも少し早く武蔵は行動に出ていた。

 

「ゲッタァァアアアアアアッ!!!!」

 

シャインとラトゥーニの作り出した最大の攻撃チャンス――武蔵の雄叫びに呼応するようにゲッターD2の全身を翡翠色の輝きが包み込み、カメラアイの中心に目が浮かび上がり上空のゲッターノワールを睨みつける。

 

「ビィィィイイイイイムッ!!!!!!」

 

『ギ、ギギャアアアアアアアアアアアアアーーーーーッ!!!!!!????』

 

腰を深く落とし、背中のゲッターウィングを展開し発射の衝撃に耐える姿勢をとり、腹部の発射口から放たれたゲッタービームが夜空を焼き、周囲を翡翠色に染め上げながらゲッターノワールとアーチボルドの絶叫を飲み込み大きな爆発を引き起こした。

 

『……引き際だな、引くぞ。ヤイバ』

 

『だな。流石にあの化け物と連戦はできねえわ』

 

夜を昼間に変えるような一撃を見ては闘龍鬼とヤイバの2人もこれ以上は戦えないと判断を下し、生き残りのノイエDC兵とユウキとカーラに撤退命令を下す。

 

『決着はまた何れつける。さらばだッ!』

 

『んじゃな、カイのおっさん。楽しかったぜッ! 今度はキッチリどっちかが死ぬまで戦おうやッ!』

 

カイ達が待てと叫ぶ間もなく、ノイエDC、闘龍鬼、闘刃鬼は宙に描かれた五芒星の中に吸い込まれるようにして消えていった。

 

『転移かよ。おいおい、百鬼帝国は転移まで出来るってか……』

 

『どれほどの力を隠していると言うんだ……』

 

闘龍鬼と闘刃鬼との戦いの中で中破したグルンガストとゲシュペンスト・リバイブ(K)の中でイルムとカイがうんざりした様子で呟いた。強大な力を持つ上に転移まで可能――それは百鬼帝国がエアロゲイターやインスペクターのように主要都市や基地に百鬼獣を送り込みいつでも制圧が可能という事を示唆していた。

 

『何故アーチボルドがゲッターロボを……』

 

『判りませんわ……武蔵は何かを知っているようですが……』

 

『とりあえず今はリクセントを奪還出来た。それだけでよしとするべきよ。各員はカイ少佐とイルム中尉の保護と共に帰艦の手伝いをして頂戴』

 

リクセントは奪還出来た……だがハガネも、ハガネの部隊も少なくないダメージを受けている……むしろ百鬼帝国とノイエDCが転移が可能と判り、一刻でも早く補給と修理を行なう必要があるとヴィレッタはハガネへの帰還命令を下し、自らもハガネへと帰艦する。

 

『武蔵様! やりましたわッ! 私、私! リクセントを取り戻しましたわッ!』

 

『ああ、やったな。シャインちゃん』

 

ゲッターD2の周りを飛び回り自分の国を取り返したと喜ぶシャインの姿とリクセントの城下町から響く武蔵とシャインの名を叫ぶリクセントの住人の声を聞いて、ヴィレッタは小さく微笑み、再びハガネへと歩みを進めるのだった……。

 

 

 

第102話 超音速の神姫/2つの斬艦刀 その5へ続く

 

 




かなり長くなりましたが、これにてリクセント公国奪還編は終了となります。次回は武蔵がやばい人というルダール公と再会させたり、2つの斬艦刀のシナリオデモを初めて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

PS

なお今作のロイヤルハートブレイカーはフィニッシュ演出で外部アーマーをパージしてドレス姿になったフェアリオンが着地し、スポットライトの光の中で再びアーマーに換装し飛び立つという魔法少女の変身バンク的な物に変化しております。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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