第105話 超音速の神姫/2つの斬艦刀 その8
ゲシュペンスト・シグ、ゲッター・トロンベ……そしてグルンガスト参式・タイプGの姿を見てギリアムは即座に通信コードを入力する。
「遅いぞ」
『言っただろう。襲撃を受けていたとな』
『すまないな。予定ではもう少し早く合流するつもりだった』
ハガネとヒリュウ改がそれぞれ別行動をするという事は戦力の分散を意味している。馬鹿でも分散しているうちに各個撃破を狙うのは当然の事であった。ヒリュウ改がアビアノを出発する前に武蔵からゼンガー達に応援を頼んでおいたと聞いていたギリアムが文句を言うのも当然の事だった。
「とにかく敵の数が多い、それと狙撃手がいる」
『狙撃手なら追い払って来たから心配ない。そいつらに足止めを受けていたんだ』
狙撃の数が減ってきたと感じていたギリアムだが、ラドラ、ゼンガー、エルザムによって狙撃隊が迎撃された事による狙撃の頻度の低下だったようだ。
「朗報だ。これで動きやすくなる」
ラドラの言葉を聞いてマサキとリューネにサイフラッシュとサイコブラスターの使用許可を出すと同時に、リバイブ、フライトユニットの装備を全て解放する。
「話は聞いていたなマサキ、リューネ。狙撃隊はラドラ達が迎撃している、死角から狙撃される事はない、仕切りなおすぞッ!」
『おう! 行くぜッ!サイフラァァッシュッ!!!!』
『こいつでしまいだよッ! サイコブラスタァァアアアアアーッ!!!』
翡翠と桃色の閃光が廃棄された市街地の上空で瞬き、量産型Wシリーズの乗る機体の多くが爆発、あるいは致命的なダメージを受けその動きを鈍くさせる。
『押し返すぞッ! タスク! てめえはキョウスケの回収に向かえ! あのダメージじゃ動けねぇ筈だッ!』
カチーナの指示を聞いてヒリュウ改の護衛をしていたジガンスクード・ドゥロがアルトアイゼン・ギーガの回収に動き出す。
『ラッセル! てめえはリオと一緒にあたしのフォロー! リョウトはクスハとあたしに続け! 包囲網をぶち破るぞッ!!』
無尽蔵の増援と狙撃による足止めの鬱憤を晴らすように動き出すカチーナのゲシュペンスト・MK-Ⅲの後をヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプMとグルンガスト弐式が続く。
『弱い、弱すぎる……話にならないな』
『だが数だけは多いなッ!!』
ゲシュペンスト・シグの回転するエネルギークローがエルアインスを引き裂き、ゲッター・トロンベの振り下ろしたゲッタートマホークがゲシュペンスト・MK-Ⅱの左半身を押し潰しながら切り裂いた。
『ちっ、まだ増援がきやがるのかッ!』
『本当どれだけいるのさッ!?』
「文句を言っている暇はないぞ、マサキ、リューネ」
倒したら倒した以上に応援が現れる。確かにラドラ、レーツェルが応援に現れた事でいくらかは楽になった……だがこの戦いはスレードゲルミルが倒れるまでは終わりはしないとギリアムは直感で感じ取っていた。
(頼むぞ、ゼンガー……)
口惜しいが今の戦力でスレードゲルミルを打倒しうる可能性を持つのはグルンガスト参式・タイプGだけだ。上空から次々と降りてくるゲシュペンスト・MK-Ⅱ、エルアインス。そしてそれに加えてラーズアングリフ等も加わり始めるのを見て、この戦いはまだ終わらないと誰もが感じ取るのだった……。
アルトアイゼン・ギーガを背中に庇いながらグルンガスト参式・タイプGはスレードゲルミルと向かう合う。
「エクセレン、ブリット。キョウスケを連れて下がれ、ジガンスクードが迎えに来ている」
『……ごめん、ボス。ブリット君、ラミアちゃん、キョウスケを連れて行くわよ』
アルトアイゼン・ギーガを抱え上げ撤退していくエクセレン達を背中で庇いながら斬艦刀の切っ先をスレードゲルミルに向けるグルンガスト参式・タイプGのコックピットの中でゼンガーは出撃前のカーウァイの言葉を思い出していた。
【ウォーダン・ユミルという男に気をつけろ、完全に思い出している訳では無いが……これだけはハッキリと覚えている。ウォーダン・ユミルはゼンガー……お前だ】
【だがお前よりも強いぞゼンガー。なんせあの地獄を生き抜いている、油断すれば地に伏せるのはお前だ】
シャドウミラーによって作られた人造人間の1体が自分の思考データを元にしていると言うのはイングラム、カーウァイの2人から聞いていた。
「お前がウォーダン・ユミルか……カーウァイ大佐から話は聞いている」
『そうか……ならば俺の素性は判っていると言うことか……無駄話が省けて丁度いい、ゼンガー・ゾンボルト……お前と刃を交えるこの時を俺は待ち望んでいたッ!! いざッ! 真っ向勝負ッ!!!』
「応ッ!!!」
混じり気のない純粋な闘志を感じ取りゼンガーもウォーダンの叫びに返事を返す。違う道のりを歩んだゼンガー・ゾンボルト同士と言ってもいい、どちらがより強いのか、競い合うような混じり気のない闘争心――それがウォーダンとゼンガーの間にあった。
『「オオオオオオオオオッ!!!」』
そこに永遠の闘争を望むシャドウミラーの……ヴィンデルの思想はない。
純粋に力比べを望む、限りなく誠実な武人同士だけが持つシンパシーだけがあった。そこに作られた人間だと、偽物だという蔑む意志はない、どちらがより強いのか、ゼンガーとウォーダンの間にあるのはそれだけだった。互いに弾かれたように己の機体を操り2振りの斬艦刀がぶつかり合い凄まじい轟音が周囲に響き渡る。
『ぬうッ!!』
「お、おおおおおおッ!!!」
鍔迫り合いを制したのはグルンガスト参式・タイプGだった。スレードゲルミルの巨体が再び宙に浮かびながら弾き飛ばされる。
『まだだッ!!』
「ぬっ!」
追撃に動き出したグルンガスト参式・タイプGに向かってブーストナックルが放たれ、その動きを一瞬止める。それは瞬きほどの一瞬だが、それだけ時間を奪えれば十分だ。
『ちえいッ!!』
「ぐっ!?」
斬艦刀・電光石火――切っ先から撃ち出されたエネルギー刃がグルンガスト参式・タイプGに襲い掛かり、その装甲に深く傷をつける。
「……なるほど、強い」
『貴様もな。ゼンガー・ゾンボルトッ!!!』
【斬艦刀・疾風怒涛】
「『うおおおおおおおッ!!!!』」
鏡合せのように放たれた斬艦刀を正眼に構えての一閃、全く同じ技、全く同じ構えから放たれるそれは当然の事ながらぶつかり合い。互いに押し切らんとする雄たけびが周囲に木霊する。
「チェストォッ!!!」
『ぬっぐうッ!』
ゲッター炉心を使用しパワーを一時的に上げたグルンガスト参式・タイプGがスレードゲルミルの出力を上回り、スレードゲルミルを斬り飛ばすが着地までの短い間にスレードゲルミルの損傷は回復しダメージにはなっていない。
「……」
グルンガスト参式・タイプGのほうが攻勢だが、コックピットのゼンガーの表情は険しい。それもそのはずグルンガスト参式・タイプGに搭載されているゲッター炉心は試作品で長時間の使用は最初から想定されていない。だがゼンガーはスレードゲルミルとの戦いの中で常にゲッター炉心を使用していた、そうでなければ埋める事の出来ない機体性能の差があったからだ。
【斬艦刀・一文字斬り】
すれ違い様の横薙ぎの一閃で高速で間合いを詰めたグルンガスト参式・タイプGの動きに合せるように、スレードゲルミルが斬艦刀を掬い上げる様に振り上げる。
【斬艦刀・龍神一閃】
それはあちら側の世界で何度も見たゲッターD2のダブルトマホークの動きを組み込んだウォーダンの作り出した新たな斬艦刀の技……三日月を描く高速からの切り上げ、切下ろしの二連撃にゼンガーは対応し切れなかった。
「ぬっぐううッ!」
『ぐっ……間合いを見誤ったかッ!』
ゼンガーの知らぬ斬艦刀の一閃はグルンガスト参式・タイプGの肩と背部のドリルを斬り飛ばし、そしてウォーダンの知るものよりも速い斬艦刀の一太刀はその胴に深い横一文字の傷跡を刻み込む……そのダメージの差がゼンガーとウォーダンの操縦の腕前の差であり、ゼンガーが紛れも無く優勢という証だった。
(極まりが浅い……)
しかしゼンガーは不満げに顔を歪めた。短い時間でウォーダンは恐ろしい速度で成長している、斬艦刀・一文字斬りはキョウスケを救う為にも放った。今もその傷跡はスレードゲルミルに刻み込まれているが、一太刀めよりも二太刀めの傷跡が浅い……たった数合の打ち合いでヒットポイントをずらし、反撃まで繰り出してくるウォーダンにゼンガーは驚愕を隠しきれないのだった……。
正史のスレードゲルミルならば、ゲッター炉心を搭載したグルンガスト参式・タイプGとここまで打ち合う事はできず既に両断されていた事だろう。だがグルンガスト参式がゲッター炉心を得てタイプGへと変化したように、あちら側の世界でゲッターD2を見たレモンによってスレードゲルミルの原型となったグルンガスト参式もまたグルンガスト参式・タイプGに匹敵するレベルにまで能力が強化されていた。それがスレードゲルミルとグルンガスト参式・タイプGがここまで打ち合うことが出来ているカラクリだった。
(届かない……)
だがそのカラクリを持ってしても、ウォーダンは届かないと確信していた。同じ技、同じ踏み込み、それなのに圧倒的に錬度が異なる。
【【斬艦刀・牙壊一閃】】
疾風怒濤とは異なる腕と腰を連動させた鞘無き居合い切り――それをスレードゲルミルとグルンガスト参式・タイプGが同時に放つ。
「ぐっ!?」
僅かにスレードゲルミルの方が速かった。だが先に命中したのは参式斬艦刀――最短距離を、そして腕力ではない技によって放たれた一閃が力を上回った。
『はぁああああああッ!!!』
「ぬおおおおッ!!!」
気迫で負けぬように互いに吼え一撃で倒すと言う決意を抱いて斬艦刀を振るう。何度も火花が上がり、凄まじい轟音が周囲に響き渡る。技を放つ隙も間合いも取れぬ、しかし互いに全力で斬艦刀を触れる間合いで最早閃光にしか見えぬ剣撃の応酬を制したのはグルンガスト参式・タイプG、そしてゼンガー・ゾンボルトだった。
『隙ありッ!』
「うぐああッ!!!」
打ち合う度にウォーダンが知らぬ間に徐々に体勢を崩されていたスレードゲルミルの腕を参式斬艦刀の一閃が跳ね上げる。それによって両腕を上げた万歳の状態に追い込まれ無防備な胴をグルンガスト参式・タイプGに晒す事になった。
『取ったッ!! 斬艦刀……雷光斬ぃッ!!!』
横薙ぎの一閃が三度スレードゲルミルの胴に深い傷跡を刻み込む。
『我が斬艦刀の一閃は雷光の煌きなりッ!!』
着地までの短い間に再び間合いを詰めたグルンガスト参式・タイプGの下からの切り上げが先に刻まれた横一文字の傷跡の上縦一閃の傷跡を刻みつける。
「ぐううッ……まだだぁッ!!!」
リボルビングバンカー・オーバーチャージ、そして立て続けに刻み付けられた横一文字の傷跡のダメージは深く、スレードゲルミルの修復速度を著しく低下させていた。しかし自己修復などウォーダンにとって何の意味もなかった、斬艦刀を振れる――それだけの機能が残されていれば良かった。
「う、ウオオオオオオオオッ!!!!!」
『なッ!?』
斬られている中で敢えて突進し、より深く参式斬艦刀がスレードゲルミルの胴に傷をつけるがそんな事はどうでもいい。こうして斬られている――それは手の届く範囲に、斬艦刀の間合いの中にグルンガスト参式・タイプGが存在するということだったのだから。近いがほんの僅か、ほんの僅かの差でスレードゲルミルの斬艦刀はグルンガスト参式・タイプGを捉え、グルンガスト参式・タイプGの刃はスレードゲルミルを捉える事は無かった。
「骨を切らせて命を断つッ! 斬艦刀稲妻重力落としぃぃいいいいッ!!!」
斬り上げられた事で宙に浮いたその状態を生かしてのフルブーストによる大上段からの切下ろし――参式斬艦刀が今もスレードゲルミルの胴に突き刺さっている以上グルンガスト参式・タイプGにその一閃を防ぐ術は無かった。
「チェストオオオオオッ!!!」
スレードゲルミルの斬艦刀がグルンガスト参式・タイプGの背中を捉え、深い傷跡を刻み込みながらグルンガスト参式・タイプGを地面に叩きつける。
『がはッ……!』
「はぁ……はぁ……『うおおおおおッ! オメガブラスタァァァアアアアッ!!!!!』……ぬおおおおッ!?』
至近距離――いや、そんな生ぬるい距離ではない、ゼロ距離からの自らを巻き込む覚悟を持ったオメガブラスターが放たれ、グルンガスト参式・タイプG、スレードゲルミルが共に大爆発し大きく弾き飛ばされる。
「……これがゼンガー・ゾンボルト……アインストに寄生された剣鬼ではない、本物のゼンガー・ゾンボルトかッ!!!」
ウォーダンの胸を埋め尽くしたのは言葉に出来ぬ歓喜だった。自らのオリジナルにして、W-15ではない。本当の意味でウォーダン・ユミルになる為に越えなければならぬ壁……その壁が自分が思っていたよりも遥かに大きく、そして強い事に喜びを隠せなかった。
『……後一振り……出来れば十分だ』
明暗を繰り返すゲッター線のバリアに守られても尚全身の装甲が煤だらけのグルンガスト参式・タイプGが斬艦刀を振りかぶる。
【ウォーダン。足止めはもう十分よ、帰還してくれて良いわよ】
「……この場での決着をつけ戻る。ゼンガー・ゾンボルトとの戦いを、このような中途半端な形で終えるつもりはない」
戻れというレモンからの通信にそう返事を返し、通信をOFFにしたウォーダンはスレードゲルミルを操りその斬艦刀の切っ先をグルンガスト参式・タイプGに向ける。
「我はウォーダンッ! ウォーダン・ユミルッ! メイガスの剣なりッ!」
『我はゼンガーッ! ゼンガー・ゾンボルトッ! 悪を断つ剣なりッ!!』
互いに裂帛の気合と共に振るわれた斬艦刀同士のぶつかり合いは周囲を白く染め上げるのだった……。
トルコ地区を抜けヒリュウ改は再び伊豆基地へと向かい始めていた。最後のスレードゲルミルとグルンガスト参式・タイプGのぶつかり合いは互いの斬艦刀が砕けると言う形で幕引きと相成った。
『……ふ、ふふふ……ははははははははッ! 互いの獲物が折れるとはやはりこの場での決着は叶わぬようだ』
砕け散った己の斬艦刀を見て笑い出したウォーダンはスレードゲルミルに背を向けさせる。
『どこへ行く、ウォーダン・ユミル……ッ』
『ふ、この場は我らの決着の地ではない。この勝負預けるぞ! ゼンガー・ゾンボルト! キョウスケ・ナンブッ!』
離脱していくスレードゲルミルを追う余力はこの場にいる誰にも無く、離脱して行くスレードゲルミル達を黙って見送ることしか出来なかった。
『……無事か、キョウスケ』
砕けた斬艦刀を鞘に納めた所でグルンガスト参式・タイプGのゼンガーからキョウスケの身を案ずる声が響いた。
『ええ……何とか、助かりました。ゼンガー隊長』
『気にするな、武蔵から救援を頼まれていたからな。では……行くぞ、レーツェル』
『承知した。ラドラ、ヒリュウ改は頼むぞ』
武蔵からの救援要請だったと告げ、グルンガスト参式・タイプGとゲッター・トロンベがヒリュウ改に背を向ける。
『どこへ行かれるんですか、ゼンガー少佐、レーツェルさんッ!?』
このまま合流し、伊豆基地まで行動を共にしてくれると思っていたレフィーナはこの場を離脱しようとしている2人にそう声を掛ける。
『我らは我らでノイエDCとインスペクターの動向調査を行なう』
『それに俺達の機体はゲッター炉心で稼動している。アインストや、インスペクターを呼ぶことに繋がりかねん。ゆえに俺達はここまでだ』
ゲッター炉心で稼動するグルンガスト参式・タイプGとゲッター・トロンベが同行してはヒリュウ改が危険だと言い残し、ゼンガーとレーツェルはこの場にラドラとゲシュペンスト・シグを残して離脱していた。
『ラドラさんは残ってくれるんですか?』
『ああ、元からそのつもりだ。着艦許可をくれレフィーナ中佐』
ゲシュペンスト・シグをヒリュウ改に回収し、レフィーナ達は追っ手が放たれる前にトルコ地区を後にした。
「つまりラドラさん達は武蔵さんからの連絡を受けて?」
「ああ。武蔵がアビアノ基地に向かう前に連絡があった、どの道俺は日本……と言うかギリアムに用があったからな。ゼンガーとレーツェルの奴と一緒にヒリュウ改を追って来ていたんだ」
何故このタイミングでラドラ達が救援に現れたのかと言うのは武蔵からの伝言だったと聞いて、この場にいなくとも武蔵は武蔵なりにレフィーナ達の事を案じていたようだ。
「助かった。ラドラ達がいなければ全滅していたかもしれん」
「数だけの雑兵というのも厄介な物だな、俺達も強行突破してくる羽目になった、これからは下手に個別行動を取るのは避けた方が良いだろうな」
数に物を言わせて襲撃を仕掛けてくる以上、ゲシュペンスト・MK-Ⅱを見かけたら容易に個別行動を取るなとラドラは忠告する。
「あのゼンガー少佐もどきについてなんかしらねえのか? ラドラさんよ」
「特に話すような事は無いが……ゼンガーと同じ声、そしてほぼ同じ技量を持つという事くらいだな。そもそも俺達もあいつと戦ったのはこれが初めてだ」
初めて戦うから情報はないとラドラは口にし、リョウトに視線を向けた。
「お前か、マグマ原子炉を使っている機体に乗ってるのは」
「は、はい! そ、そうです」
「ふん、よくも精製も調整も済ませてないマグマ原子炉を組み込んだ物だ。その無謀さ、実に愚かだ」
戦力を求めるのは判るが、無謀が過ぎる。愚かだとラドラは淡々とした口調で説教を始める。
「あのラドラ。私達結構疲れてるんだけど?」
エクセレンが助け舟を出すとラドラは1度ふんっと鼻を鳴らし、リョウトの背中を大きく叩いた。
「いっ……ら、ラドラさん……?」
「俺はその愚かさは嫌いじゃないぞ、小僧、レフィーナ中佐。あのヒュッケバインを弄ってもかまわんか?」
「……よろしいのですか?」
「良いも何もない、このままだと暴走する危険性を抱いている機体をそのままにしておけるか、最低限の調整はしてやる。仕上げは伊豆基地で行えば、大分安定する筈だ。少なくとも暴走のリスクは押さえ込める」
常に暴走のリスクを抱えているヒュッケバイン・MKーⅢ・タイプMが安定稼動出来ると聞けばレフィーナ達に断る理由はなく、ラドラにヒュッケバイン・MKーⅢ・タイプMの改造を依頼し、ラドラはリョウトとリオと共にヒリュウ改のブリッジを後にする。
「しかし、あのウォーダンって野郎は一体なんなんだ?」
「確かに……正直アルトのリボルビングバンカーを顔面に貰ってもあれだけ戦い続けるとか……ちょっと正直信じられないですね」
「いや、もうサイボーグとかじゃないの?……んん? ラミアちゃん、顔色悪いけど大丈夫?」
「あ、いえ、なんでもないでありますよ? ほほほほ」
さらっと真に迫ることを言うエクセレンにラミアは白々しく笑いながら、額の汗を拭った。
「キョウスケ中尉はどう思っておりますかな?」
「……俺はビースト含めて、未来から来たのではないかと思ってます」
未来から来た――余りにオカルトが過ぎる、だが武蔵という旧西暦から新西暦に来たと言う事例もある。キョウスケの言う未来から今の時代にやってきたと言うのは確かにありえる推察の1つではある。
「でもキョウスケ中尉。それだと何故我々は未来の住人に攻撃を受けているんですか?」
「だわな。それこそインスペクターとかに攻撃するなら判るけどよ……お前の推察は違うんじゃねえか?」
未来からやってきたのならば、現在進行形で地球侵略を行なっているインスペクターあるいは百鬼帝国を攻撃するなら判る。だが何故同じ地球人同士で戦うんだ? とブリットとカチーナが口にする。
「……確かにそう考えるのが普通だと思いますよ」
「俺がアインストに寄生されるか、百鬼帝国に捕えられたと考えたらどうだ? そして地球に壊滅的な打撃を与えたとすれば……俺は未来ではインスペクターや百鬼帝国と同等の脅威となっている可能性がある」
そうなる前に殺そうとするのは間違いではないのではないか? というキョウスケの言葉にヒリュウ改のブリッジに嫌な沈黙が広がる。
「馬鹿ね、考えすぎよキョウスケ」
「だが」
「だがもクソも無いの、仮に未来がそうだとしても今がそうなるとは限らないでしょ? 心配しなくて良いのよ」
これだから堅物は思いつめちゃって駄目ねとエクセレンが明るく言った時、ヒリュウ改に電文通信が届けられる。
「艦長、アビアノ基地司令部より暗号電文が入りましたッ! ハガネ・シロガネ隊がリクセント公国の奪還に成功したようですッ!」
暗く重い雰囲気になっているヒリュウ改にリクセント奪還の知らせは何よりの吉報となった。
「しゃあッ! これでノイエDCの勢いは収まる」
「うん。そうだねブリット君」
リクセントを中心にしてヨーロッパ方面に抜けていたのだ。リクセントを奪還すればノイエDCは輸送路や補給路を失いその進軍の勢いが大幅に弱まる事が予想される。
「ほらね。皆で協力すれば出来ないことはないのよ。下手な考え休むに似たりって言うでしょ?」
「ふっ……そうだな」
リクセントの奪還もその成功率はゲッターD2を含めても決して高くは無かった。それを成し遂げたのは紛れも無く、仲間同士協力し合い、そして皆で協力して取り返したのだ。
「だからそんな馬鹿みたいなこと考えてないで早くデートの予定でも考えて欲しいわね。さ、ささ、レフィーナ艦長。伊豆基地に向かいましょうよ」
伊豆基地に向かえば少しは自由時間がある。だから息抜きをしましょうよと笑うエクセレンの笑顔に何時の間にかブリッジに満ちていた重い空気は霧散していた。
「そうですね。進路を伊豆基地へ向けてください」
伊豆基地に進路を取るようレフィーナが指示を出し、ヒリュウ改は伊豆基地へと進んでいくのだった……。
第107話 密約/束の間の休息 へ続く
ゼンガーとウォーダンの戦いはかなり難しかったですね。やはり決着まで持って行けないと中途半端になってしまうのが難しい所でした。
それでもある程度はいい具合には仕上げれたと思うので、もっと精進して行きたいと思います。次回は密約/束の間の休息と言う事で次の話に入る前の話やハガネやヒリュウ改の話とシリアスな話の2つで書いて行こうと思います。温度差が凄まじい話になると思いますが、次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い