進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第108話 地獄門 その1

第108話 地獄門 その1

 

リュウセイ達の住む世界――それを仮にフラスコの世界と呼称するとしよう。本来その世界にはゲッター線は存在しない、存在してはならない物だ。しかし武蔵の登場によりフラスコの世界は大きく本来の歴史とは異なる道を歩み始めていた。武蔵とゲッター線によってフラスコの世界は数多のイレギュラーを引き起こした。しかし旧ゲッター……ゲッター1の内包するゲッター線ではそこまで大きな影響は今までは起きなかった。しかし、しかしだ。真ゲッター、真ドラゴンに匹敵するゲッター線を内包するゲッターD2がフラスコの世界に存在する事で大きな揺り戻しが発生しようとしていた……その揺り戻しによって開いてはいけない門が開かれようとしていた……。

 

「うーん」

 

リクセントを発ち、アビアノ基地へと向かう道中のハガネのシミュレータールームで武蔵が腕を組んで唸り声を上げていた。

 

「やはり武蔵はシャイン王女がハガネに乗り続ける事は反対だったのか?」

 

「ん? んーユーリアさん、そういうわけじゃないっすよ。何を言っても無駄って判ったらオイラは何も言わないですし、何も言うつもりもないです」

 

アーチボルドの悪逆を見たシャインはそのままハガネに乗り続けることを希望した。本来ならば、それは通る訳のない要望だったが……百鬼帝国の成り代わりが判明している為リクセントよりもハガネ、しいては武蔵の側にいる方が安全という結論になり、シャインはハガネとシロガネと行動を共にする事になり、今はカイによってPTの基本戦術学をアラドと共に学んでいる。

 

「じゃあ何だ?」

 

「イルムさん、んーいやですね……なんかに呼ばれてる気がするんですよねぇ。なんだろこの感じ」

 

「呼ばれてるって……武蔵は念動力でもあったか?」

 

呼ばれている何かを感じると言うのはハガネやシロガネでは良くある話だ。念動力者が何かを感じ取っている時の前現象だ。武蔵もその部類か? とイルムが言うと話を聞いていたライが話の中に加わってくる。

 

「武蔵は念動力の検査を受けてるけど素質0だ。それはありえないな……だが念動力ではない別の線は捨て切れないが……」

 

「ゲッター線か……まぁ確かにゲッター線は不思議な事を起すけど……うーん。どうなんだろうな、まぁオイラは鈍感な方なんで、気のせいって線が濃いと思いますけど……どうも気になるなあ」

 

野生的な勘こそ鋭いが、それ以外は絶望的な武蔵は気のせいかなと言いつつも、どうしても呼ばれているような感覚を捨て切れなかった。

 

「武蔵。悪いんだけど、レオナの次にアイビスとシミュレーターで勝負してくれるかしら?」

 

「ツグミさん? まぁ良いっすけど……オイラはPTとかAMとか全然わかんないですよ?」

 

ツグミの言葉に答えの出ない思考の海から引き上げられ、武蔵は気分転換に良いかと思いツグミの頼みを引き受ける。

 

「ベルガリオンとベガリオンのデータがあるから、それを使ってくれると嬉しいわ。じゃあレオナ、武蔵と交代で」

 

シミュレーターを降りて来たレオナと交代で武蔵がシミュレーターに乗り込み、数分の訓練の後アイビスとの模擬戦を始める。

 

『んじゃあよろしく』

 

『はいッ! よろしくお願いします!』

 

「アイビス、タフだな。俺と10戦やって、レオナは20だったか?」

 

「ええ。私と20戦やってますわ、イルム中尉」

 

30戦も模擬戦をやるというのは相当に精神力、体力を消耗する。それなのにアイビスは元気に満ちていて、まだまだ模擬戦を続けるという意気込みに満ちていた。

 

「それくらいで良いかもしれないがな、アイビスは実戦経験が少ない。模擬戦とは言え、戦闘の勘を掴むのは決して無駄ではない」

 

「その通りです。ライディース様……しかし武蔵との模擬戦では……」

 

ユーリアが最後まで言い切る事無く、ブザーが鳴りシミュレーターが緊急停止する。

 

『あ、あう……何がぁ?』

 

『大丈夫か?』

 

自分がどうやって撃墜されたのか理解してないアイビスに武蔵が大丈夫か? と問いかける、しかしモニターで見ていたライ達も何が起こったのか理解出来なかった。

 

「タカクラチーフ。アイビスはどうやって撃墜されたんだ?」

 

「……アステリオンのソニックブレイカーを微上昇して回避、バレルロールで背後を取り110mmGGキャノンを2連射、そのまま体当たりです。アステリオンは大破、ベルガリオンは小破判定です」

 

ベルガリオン、ベガリオンで想定されていた動きではなく完全にゲットマシンでの動きだった。

 

「まぁ武蔵はゲッターのパイロットだしな。操縦も自然とそうなるか、でもそれじゃあ訓練の意味はないか?」

 

「いや、意味はあると思うぞ? 武蔵は戦闘機乗りと考えれば新西暦でも恐らく上から数えた方が早いはず……事実、メッサーとシュヴェールト改の模擬戦でエルザム様を撃墜している」

 

「武蔵が兄さんをかッ!?」

 

「しかも性能が劣るメッサーでですか……となると隊長の言う通り、武蔵は新西暦で最高の戦闘機乗りと言ってもいいかもしれませんわね」

 

メッサーとシュヴェールト改では隔絶した機体性能の差がある。しかもエルザムを撃墜したとなれば、武蔵が戦闘機乗りとして最高峰の腕前を持っていることもまた事実。

 

『もう1回、いや10回!』

 

『オイラは良いけど、アイビスは大丈夫なのか?』

 

『全然大丈夫! もっと武蔵の飛び方を見せて!』

 

そしてそれはアイビスが理想とする速さ、飛ぶための技術であり、イルム、レオナとの模擬戦よりも明るく、楽しくてしょうがないと言う様子の声がシミュレータールームに響き渡ったのだった。

 

「……敵機との相対距離が100。 パターン14で反撃された場合、こちらが取るべき行動は?」

 

アイビスがシミュレータールームで武蔵との模擬戦を繰り返し、その操縦技術を模擬戦を通じて学ぼうとしている頃、ブリーフィングルームではカイ、ヴィレッタの2人がアラドとシャインに教鞭を振るっていた。

 

「加速して突っ込んで、 相手より先に攻撃するッ!」

 

「いったん距離を取って、相手の攻撃をかわした方がいいと思いますわ」

 

曲がりなりにも訓練を受けているアラドの返答にカイは頭を抱え、ヴィレッタは手元のリモコンを操作し、モニターの映像を先に進める。

 

「パターン14の場合、接近すれば撃墜されるリスクが高いわ。この場合はシャイン王女の行動が正解」

 

シミュレーション映像と共に解説をされ、アラドは困惑の色をその顔に浮かべた。

 

「お前は攻撃範囲の差を忘れとる。 パターン14だと最悪の場合――相討ちになるぞ。どうして突撃するという考えになったか俺に教えてくれ」

 

「避ければ良いし、最悪中破しても撃墜すれば勝ちかなと」

 

「ア、アラド……」

 

余りにも脳筋過ぎるアラドの問いかけに付き添いで講義に参加していたラトゥーニが信じられないと言う表情をする。事実、カイとヴィレッタの2人は本当にスクールの生徒だったのか? と疑問を抱く事になった。

 

「PTやAMでの白兵戦はなんだと思う? アラド、シャイン王女?」

 

「殴る事!」

 

「えっと……極限まで近づいての射撃ですわ」

 

教本を見て答えを探すシャインと殴る事と即答したアラドにカイとヴィレッタは頭を抱えた。問題児って言うレベルではないと……。

 

「ラトゥーニ、説明してくれるかしら?」

 

「はい。PTやAMの腕部には武器などを使う為のセンサーなどが多数搭載されている為、基本的にマニュピレーターを攻撃に使う事は無く、PTやAMでの白兵戦闘はリーチの短い射撃武器による射撃と同等で考える物です」

 

ラトゥーニの模範解答を聞いてからカイは改めてアラドに視線を向けた。

 

「ではラトゥーニの説明を聞いた上で接近戦で心がけなければならないことは何なのか……言ってみろ」

 

「敵との間合いをちゃんと見極めることでございましょうか?」

 

「肉を切らせて、骨も切らせることだと思います!」

 

「アラド? 貴方は人の話を聞いてた?」

 

「アラド……それじゃ、やられっぱなしだから」

 

満面の笑みで返事を返すアラドにヴィレッタとラトゥーニは深い溜め息を吐き、カイは頭を振った。

 

「やれやれ……誰の影響を受けとるんだか。お前はもう1度基礎から叩き込んだ方が良さそうだな」

 

まず間違いなくキョウスケと武蔵の影響を受けていると悟り、応用からでは無く基礎から教えるべきだと判断したカイはアラドに新しい教本を置いて再び講義を始めるのだった……。

 

 

 

 

ハガネとシロガネがパトロールを行ないながらアビアノ基地に戻っている頃――アビアノ基地ではある異変が起きていた。

 

「くっ!? なんだこれは何が起こっている!?」

 

「わ、判りません! 電子機器が暴走をッ! わわぁッ!?」

 

鳴り響くアラート、制御が利かない照明の点滅、ハンガーに固定されているPTがパイロットなしで稼動する――アビアノ基地だけではなく、その周辺の街にも電子機器の暴走事故が多発していた。

 

「何が起こって……ビルガーまでもッ!?」

 

ハンガーに固定されているPTのカメラアイが真紅に輝き、ハンガーを破壊して暴れ出そうとする。それはマリオンが製作しているビルトビルガーも同じだった。

 

「ラドム博士も避難してください! 電磁波を放射します!」

 

「おやめなさい! そんな事をすればアビアノ基地の機体は全滅しますわよ!」

 

「ですがそれ以外に暴走を止める方法がッ!」

 

マリオンと整備兵達が怒鳴りあう中、暴走しているPTがその拳を振り上げマリオンへと鉄拳を振り下ろした。

 

「ッ!」

 

逃げ切れるわけがない、絶望の光景にマリオンが思わず身をねじり、腕で顔を隠した時……異様な衝突音が格納庫に響き渡った。

 

「私は生きて……リュウセイ少尉!? 貴方目を覚ましたんですの!?」

 

暴走したゲシュペンスト・MK-Ⅲとマリオンの間に立っていたのは意識不明で眠り続けていたリュウセイだった。その手をゲシュペンスト・MK-Ⅲに向け、その鈍く輝く鉄拳を空中に展開された念動フィールドで受け止めていた。だがそれはありえない事だった、確かにリュウセイの念動力は桁違いだが、生身でゲシュペンスト・MK-Ⅲの拳を受け止められるわけがない。

 

「……呼んでる……呼んでるんだ。行かないと……」

 

歩いているがリュウセイの瞼は閉じられたままで、明らかに正常ではない。念動力によって百鬼帝国に操られかけていた事を思い出し、マリオンは慌ててリュウセイに駆け寄った。

 

「リュウセイ少尉! 待ちなさいッ!」

 

マリオンもそれを感じ取り、リュウセイの肩を掴んで止めようとした。だが次の瞬間、リュウセイから発せられた衝撃波に弾き飛ばされ、格納庫の壁に叩き付けられ、そのまま崩れ落ちる。

 

「……行かないと……俺は……行かないと……」

 

ふらふらと夢遊病患者のように歩くリュウセイの先にはR-1が独りでに動き出し、膝立ちになりその手をリュウセイに向けていた。だがR-1のカメラアイが真紅に輝いているのを見て、騒動を聞いて格納庫に駆け込んできたアビアノ基地のPT隊の隊長が指示を飛ばした。

 

「止めろ! リュウセイ少尉を止めるんだ!」

 

「「「了解ッ!!」」」

 

自らもリュウセイを止めようと駆け寄るが、マリオン同様念動力によって弾き飛ばされ崩れ落ちていく。そしてR-1に乗り込んだリュウセイはアビアノ基地の壁を破壊し、そのままいずこかへと飛び去っていった。それと同時にアビアノ基地を襲っていた怪現象は収まり、アビアノ基地の司令はすぐにダイテツに助けを求める通信を入れるのだった……。

 

 

「うーん……これとこれはアステリオンでも使えそうかな、これは使えたら良いけど……うーん」

 

サンドイッチを片手に武蔵との模擬戦のデータを見直しているアイビスの目はキラキラと輝いており、新しいマニューバパターンを幾つも脳裏に浮かべ、データの修正などを片手で行なっている。

 

「どうだったアイビス。武蔵との模擬戦は?」

 

「勿論凄く勉強になったよ、タカクラチーフ」

 

ノートとDコンを見直すアイビスは飛びたくてしょうがないと言わんばかりにその目を輝かせていた。

 

「その様子を見る限りでは戦いに関してはもう振り切れたのかしら?」

 

「レオナ……うん。確かにまだあたしは戦う事に関して思うことがあるよ。なんでって……」

 

プロジェクトTDは星間飛行を成す為の物で戦う為の技術ではない。それはまだアイビスの心の中に引っかかっている部分ではある。

 

「だけどリクセントでの戦いを目の前で見て、スレイとの約束を考えたら、あたしは立ち止まってられない。あたしの夢が戦いの向こうにあるのなら……あたしは戦う事を躊躇わないよ」

 

目の前で泣いている人を守る為に、そして自分の夢を叶える為に飛ぶ事を決意したアイビスの顔は晴れやかな様子で明るい物だった。

 

(アイビス……フィリオと同じ事を言うのね……)

 

そしてアイビスの言葉はインスペクターの人質になっているフィリオが言っていたのと同じ言葉で、その言葉を聞いたツグミは少しずつだが、フィリオがアイビスにアステリオンを託した理由を判り始めていた。

 

「私の余計な心配だった見たいですわね、そこまでの思いがあるのなら大丈夫ですわ」

 

「心配してくれてありがとうレオナ。もし良かったら、また訓練に付き合ってくれる?」

 

「ええ、勿論。私だけではなくて、隊長にも声を掛けてあげますわよ」

 

アイビスはまだ戦う事に対する恐怖を捨てきれていなかったが、それでも夢を叶える為に、そしてフィリオ達を助ける為に戦う事を決めた。その時だった食堂に警報が鳴り響いたのは……。

 

『出撃可能な者は出撃準備! リュウセイ少尉とR-1が何者かに操られアビアノ基地を離脱した。捜索の為出撃可能な者は随時出撃! 繰り返す! リュウセイ少尉が何者かに操られアビアノ基地から姿を消したッ! 各員は捜索を!』

 

「アイビス行ける?」

 

「勿論ッ! アステリオンで出るよッ!」

 

「私も行きますわッ!」

 

リュウセイが百鬼帝国の干渉を受け、意識不明に陥っていたのは誰もが覚えている。再び精神感応を受けて百鬼帝国の元へ向かったかもしれない――アイビス達は緊急出撃をし、アビアノ基地から送られて来た予想進路を元にリュウセイの捜索に乗り出した。

 

「……うっ……な、なんだ……」

 

一方その頃リュウセイはと言うと墜落同然で着陸した衝撃で意識を取り戻していた。

 

「どこだここは……俺は……何をしてたんだ……? そうだ! アラドッ! ラトゥーニッ! 近くにいないのかッ!? 応答してくれッ!」

 

自分が覚えている最後の記憶――ビルトファルケンに近づいた時の事を思い出し、共に偵察に出ていた筈のアラドとラトゥーニの名を叫ぶリュウセイだが、通信機はノイズ音だけを響かせる。

 

「ここは……どこなんだ」

 

最後に記憶している場所と違う荒野にいることに困惑し、今出来る事――救援信号を発信する。

 

「えっと……こういう時は……機体の側から離れないで、緊急キットを……ん? なんで俺は入院着なんだ?」

 

訓練での遭難した場合の対処法を思い出しながら行動に移ろうとしていたリュウセイはここで初めて、自分がパイロットスーツではなく入院着を着ている事に気付き、自分が置かれている状況を理解出来ないでいたが、それでも訓練で覚えた行動をするべきだと判断し、救命キットを取り出した。その時R-1のコックピットにアラートが鳴り響いた。

 

「敵かッ!? んん? なんだありゃあ?」

 

アラートに救命キットを座席後部にほり投げ、ベルトを締めて操縦桿を握り締めたリュウセイはR-1の数十メートル先に生まれた黒い点に気付き眉を細めた。

 

「なんだ? どんどんでかく……うっっつう!?」

 

黒い穴がどんどん大きくなるのを見ていたリュウセイに信じられないほど強烈な頭痛が襲い掛かりその顔を歪める。

 

「がぁ……ぐがあ……な、なんだあ……うううっ!?」

 

リュウセイの顔から血の気が失せ、額から大粒の汗が流れ落ちる――。それでも意識を失わないように歯を食いしばり、目の前の黒い穴に視線を向けたリュウセイはその穴から這い出て来るものに引き攣った悲鳴を上げた。

 

「……ひいっ!?」

 

それはゲシュペンスト・MK-Ⅱだった……だが体の半分は蔦と骸骨を思わせる装甲に、残りの半分はゴムのような光沢と黄色い複眼に埋め尽くされた化け物の姿にリュウセイは心の底から恐怖した。

 

「……※■▲」

 

言葉として発せられない奇妙な音と共にアインストクノッヘン、インベーダーと融合した奇妙な人型がどんどん這い出るようにその姿を見せる。嫌悪感と吐き気を催す醜悪な姿のPTやAMが助けを求めるようにその手をR-1に向ける。

 

「な、なんだよ……これはッ!! うううっ! 呼ぶな! 俺を呼ぶんじゃねぇッ!!!」

 

オイデオイデ……

 

コッチヘオイデ……

 

「止めろッ! 俺に、俺を呼ぶんじゃねぇッ!!」

 

オイデオイデ……

 

こっちへオイデ……

 

ドウシテコワガルノ……

 

「止め、止めろッ! 俺を呼ぶなぁぁあああああッ!!!」

 

音として認識出来ないはずなのに、呼び声が自分を呼び続けるその声に恐怖し、リュウセイはGリボルバーをR-1に構えさせ乱射する。

 

イタイ……

 

イタイヨオオオオオ……

 

「あ、あああ……止めろ、止めてくれぇ……」

 

耳をふさいでも響き続けるその声にR-1の両腕からGリボルバーが零れ落ちる。嘆きと絶望の声がリュウセイから闘争心を奪い取り、大地を浸食しながらR-1へと迫る。

 

「あ、ああ……うあああああああ――ッ!」

 

近づかれたら自分もあれと同じになる、それを本能的に悟ったリュウセイは悲鳴を上げ、R-1を闇から姿を現した異形のPTに背を向けさせその場から逃げ出す事を選択した。

 

「はぁ……はぁ……うわッ!?」

 

下半身が無く、上半身だけの異形が、両腕がなく、胴体と頭部だけの異形が……闇の中から現れた異形が触手をR-1に向かって伸ばし続ける。

 

(当たったら……いや、掠めただけで駄目だ)

 

目の前で岩を触手が切り裂き、切り裂かれた岩が蔦と眼に埋め尽くされ、溶けるように触手の中に取り込まれたのを見てリュウセイは自分も同じように取り込まれる……それを理解し、操縦桿を握り締める手が震える。それでも死にたくない、生きたいという生物として当然に持つ願いがリュウセイを動かし続ける。しかしその生物がリュウセイを逃がすわけがなかった、ここまで誘い込んだ獲物を逃がす訳が無かった。

 

ナンデニゲルノォ

 

コッチニオイデヨ

 

タスケテヨオオオオ

 

「あ、うああああああッ!!!!」

 

声無き叫びが助けろと1人にするなとリュウセイに叫びかける。念動力者であるリュウセイはその生物の極めて悪質な思念をダイレクトに受け取ってしまっていた。

 

「がはッ! おうえッ!」

 

切り裂かれた

 

焼かれた

 

撃ち抜かれた

 

殴り殺された

 

押し潰された

 

毒死した

 

溺死した

 

ありとあらゆる死の痛みがリュウセイを襲う、そしてその痛みを持ってお前も仲間に来いと、お前も地獄に落ちて来いと誘う化け物は死神そのものだった。その途方もない激痛、死への恐怖がリュウセイから逃げようという意志を、生きたいと願う心を全て圧し折った。

 

ツカマエタ

 

ツカマエタ

 

シンジャェ

 

シンジャェ

 

シンジャェッ!!

 

オマエモイッショニシノウヨオオオオオッ!!!!!

 

触手と蔦、そしてPTの残骸の中に放置されていた人骨、取り込まれたPTが――闇の中へR-1を、リュウセイを引きずり込もうとその魔手を伸ばしたその瞬間、赤黒い念動波が津波のように迫る悪意を押しとめ、漆黒の流星がR-1の前に舞い降りた。

 

『大丈夫、貴方は死なない。だって私が、私達が守るもの』

 

R-1を守るように、悪意の波を押しとめた漆黒のPT――連邦によってビーストの個体名を与えられたズィーリアスのコックピットの中で蒼と金のオッドアイが光を放つのだった……。

 

 

第109話 地獄門 その2へ続く

 

 




インベーダーとアインストが融合した化け物の登場、地獄からの侵略者ですね。名前はロスト、デリートでロスターにします。思念波で攻撃、インベーダー由来の寄生攻撃などを行なう正真正銘の化け物ですね。おいおい、ここで敵を増やすのかよと思うかもしれませんが、あんまり出てこない(少し出てくるだけで甚大な被害)なのでご安心ください。なお今回のシナリオはこんな感じになります


勝利条件

???

敗北条件

ロスターのR-1への隣接
ロスターのR-1への攻撃が命中した時
ロスターへR-1への攻撃が命中した場合
ズィーリアスの撃墜

となります。


それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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