進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第109話 地獄門 その2

第109話 地獄門 その2

 

深い闇の中に似つかわしくない少女の声が木霊した。

 

「デュミナス様、あいつ勝手に出て行っちゃったけど良いんですか?」

 

「構いません、彼女は独立して動いて貰う為に作り出したのです」

 

「そ、そうなんですか? では連れ戻さなくても?」

 

「大丈夫です。それよりも今はもっと安定させましょう、これもまた世界を超える大事な鍵なのですから……」

 

ぐったりとして動かない鋼鉄の巨人と巨大な生き物に向かって紫電が放たれ、闇の中に獣の雄たけびが木霊するのだった……。

 

「……間にあった……?」

 

動きを止めているトリコロールのPTを見てズィーリアスのパイロット――レトゥーラは安堵の溜め息を吐いた。だが安堵した理由も、どうして助けようとしたのかも……何故自分が私達と口にして守ると言ったのかも理解出来なかった。

 

「でもこれだけは判る。助けたいんだ」

 

何も判らない、なにも覚えていない。その空っぽの心でも判る――R-1を見ていると、胸が温かくなるのだ。

 

「☆※▲■」

 

ジャマヲスルナ

 

シネシネシネシネ

 

イッショニシンデヨォ

 

『うああッ!! ぐぎっあがああ』

 

化け物から放たれる思念波に当てられリュウセイが苦悶の声を上げる。その事にレトゥーラは激しい怒りを抱いた、何故怒っているのか、なぜ憎悪しているのかを理解しないままに己の身に宿る念動力を解き放った。

 

「黙れッ!!!!」

 

その念動波は周囲の岩を砕き、ズィーリアスとR-1を囲んでいた蔦や触手全てに襲い掛かり、宿主となっている崩壊しているPTやAMへとビデオの逆再生のように戻っていく。

 

「……そこにいて、大丈夫。私が貴方を守るから」

 

R-1にズィーリアスは右手を向けるとR-1を赤黒い念動フィールドが包み込んだ。

 

『……ラトゥーニ……?』

 

念動フィールドの中で意識が朦朧としているのかぼんやりとした様子でラトゥーニと口にしたリュウセイの声を聞いて、レトゥーラは激昂した。

 

「私はラトゥーニじゃないッ! 私は……私は……レトゥーラ」

 

リュウセイが生きている事に安堵していた筈なのに、ラトゥーニと呼ばれた事に激しい怒りを抱いた。しかしその怒りはリュウセイの次の言葉で消え去った。

 

『……ご、ごめん……レトゥーラ……助けてくれて……ありがとう』

 

そう呟いて意識を失ったリュウセイと沈黙したR-1を見つめながら、レトゥーラは微笑んでいた。レトゥーラと呼ばれた――それだけで言葉にならない喜びが、自分をリュウセイが認識してくれた……そんな些細な事がレトゥーラにとっても途方もない喜びであり、言葉にならない幸福感と喜びがレトゥーラの胸を埋め尽くす。

 

「……判らない、判らないけど……私はそうしたい、それだけ」

 

リュウセイと話していると頭が軽い、とても晴れやかな気持ちになると感じたレトゥーラは薄く微笑み、身体を欠損させながら迫ってくる化け物を睨みつけると同時にズィーリアスを走らせるのだった。

 

それに怒りはない、それに痛みはない。

 

それに優しさはない、それに喜びはない。

 

それに嘆きはない、それに悲しみはない。

 

それにあるのはシンプルな捕食願望と道連れにしてやるという底なしの悪意のみ――食べなければ、エネルギーを取り込まなければその生物は生きてられない、存在することが出来ない――アインストとインベーダー……相反する2つの存在が、リュケイオスの爆発エネルギーとゲッター線によって融合し、生まれたのがこの生物だった。互いに敵対する生物同士、常に肉体は崩壊し、それを止める為に無機物、有機物関係なしに取り込まなければ、捕食しなければこの世に存在出来ないのだ。生きる為に捕食し、捕食する為に生きる――それがこの生物の正体だった。そして死ぬのならば、周りにいる者すべてを道連れにしてやるという悪意を抱き動き続けるのだ。

 

『■☆○ッ!?』

 

「遅い……ッ!」

 

伸ばされた触手を、既に腕としての形をほんの筈かに残しているだけの物を伸ばし、ズィーリアスを取り込もうとするが念動フィールドに弾かれ、両手に構えられたアサルトライフルが火を噴き、反撃の実弾の嵐が核となっているゲシュペンスト・MK-Ⅱの装甲を穿つ。

 

『■■■―――ッ!!!』

 

黒板を引っかくような耳障りな高周波の叫び声が周囲に響き渡る。それは聞く者の精神を弱らせ、動きを鈍らせる断末魔の雄叫び、リュウセイをこの場に誘き寄せ、精神を著しく磨耗させた死神の叫び声――だが、レトゥーラには何の効果も与えなかった。

 

「やかましい」

 

『☆■▲○――ッ!?』

 

念動フィールドを攻撃に転用した念動刃とも呼べる不可視の斬撃が伸ばされた触手を切り飛ばし、ゲシュペンスト・MK-Ⅱの胴体を互いに浸食しようとしているインベーダーの複眼つきの身体と、アインストの蔦を切り裂き斬り飛ばした。

 

「私は今とても機嫌が悪い。理由は判らないがな」

 

背部のウィングバインダーに両手に持っていたアサルトライフルを格納すると同時にズィーリアスの両拳が赤黒い念動力の光に包まれる。

 

「貴様らはこれが嫌いなのだろう。覚悟しろ、抉り取って叩き潰してくれる」

 

思念波を攻撃に転用すると言う生態を持つその生物にとって念動力や自身の持つ物と同質であり、弱っているリュウセイを引き寄せた。だがそれと同時にレトゥーラもこの場に誘き寄せていた、そして思念波は念動力によって弾かれる。理由は判らないと言っていたレトゥーラだが、彼女が不機嫌な理由はリュウセイを傷つけたことであり、それをしたものを許さないと言う凄まじい敵意と憎悪はその生物の思念波を完全に無効化していた。

 

フザケルナ

 

フザケルナッ!

 

ドウシテ

 

ドウシテ

 

ドウシテェッ!!!

 

一緒に死んでくれないのォォオオオオオ――ッ!!!

 

食えないのならば、取り込めないのならば自分は死んでしまう。それだけは本能で理解している、男、女、子供、老人――ありとあらゆる者の自分が死ぬのになんでお前は生きているんだという悪意が強烈な思念波として放射される。勝てないと言うことを理解したら、その生物のやる事は1つだった――死ぬのならばお前も道連れにしてやるという悪意の塊、常人ならば発狂しかねないそれをレトゥーラは鼻で笑った。

 

「死ぬのなら勝手に死ね、私を……リュウセイ……を……リュウセイ、リュウセイ……そうだ、リュウセイ、リュウセイだッ!」

 

R-1の中で意識を失っているリュウセイは自分の名前をレトゥーラに告げなかった。だがレトゥーラの口は自然にリュウセイの名を口にした、そしてその名前を口にした時カチリと何かが嵌るような音がし、赤黒い念動力がほんの少しだけその色を変える。

 

「はは……はははははははははッ!!!!!」

 

狂ったような――いや、元々レトゥーラは狂っている、そうあるように、そうなるように作られたから……それでも感情がない訳ではない、狂っていようが、歪んでいようが、それでも感情は確かにレトゥーラの中にあり、R-1を救い、リュウセイを助けた事でその感情の出口を見つけた。

 

「消えろッ!!!」

 

突き出された両腕から放たれた念動波が地形を抉りながら化け物に迫り、紅い閃光の中にその姿を飲み込んだ。

 

「……ちっ……まだいるのか」

 

リュウセイをこの場に誘い込んだゲシュペンスト・MK-Ⅱを母体としたその化け物は念動力の光の中に消えた。だが黒い穴が幾つも虚空に開き、タールのように零れ落ちたそれが盛り上がるように再び化け物に変貌するのを見て、レトゥーラは忌まわしそうに舌打ちをし、今も尚動けないでいるR-1とリュウセイを庇うように再び紅い念動力の光を走らせるのだった……。

 

 

 

 

リュウセイの捜索をしているハガネ、シロガネのブリッジからもズィーリアスの放った紅い念動力の光の柱は確認されていた。

 

「ダイテツ艦長」

 

「あの場所にリュウセイ少尉のいる可能性が高い、捜索班に帰還命令だ」

 

リュウセイの捜索を始めて2時間が過ぎている。補給の後再出撃をすると言う判断をダイテツは下し、リーもその判断に賛同した。

 

『しかし、あの光――リュウセイ少尉が暴走しているのでしょうか?』

 

「判らない……だが最悪の可能性は検討することになるだろう」

 

最悪の可能性――百鬼帝国に洗脳されていた場合リュウセイを殺す事になる可能性をダイテツは考えていた。リュウセイを罠に掛ける為に様々な手段を講じている百鬼帝国の事を考えるとリュウセイを正気に戻すのは不可能の可能性もあった。

 

「ダイテツさん! リーさんッ!!」

 

ブリッジの扉を蹴り破るように武蔵がブリッジに転がり込んで来た。

 

「武蔵どうした?」

 

「はぁ……はぁ……リュウセイを探してる皆が戻って来たら出撃させないでくれ……はぁ……はぁ……」

 

肩で息をしながら出撃させるなという武蔵にダイテツ達は眉を細めた。

 

「どういうことだ武蔵? 判るように説明してくれ」

 

「て、テツヤさん……ゲッターの、ゲッターD2のゲッター線の出力が信じられないくらい上昇してる。それこそ……あの石ころ、メテオ3とか言うのと戦った時と同じ位に……」

 

メテオ3――武蔵が特攻することになったエアロゲイターの最終兵器。それと戦った時と同じ位ゲッターの出力があがっていると聞いてダイテツ達は自分達が想像しているよりも遥かに状況が悪化しているのを悟った。

 

『武蔵、それならばなおの事皆で出撃したほうが……うっ』

 

「ぐっ! なんだ……これはぁッ」

 

たすけて

 

助けて

 

タスケテ

 

しにたくない

 

死にたくない

 

シニタクナイ

 

強烈な嘆きと悲しみを伴った奇妙な声がダイテツ達の脳裏に響き、その顔を苦痛に歪める。

 

「な、なんだこれはぁ……む、武蔵……お前は平気なのか?」 

 

テツヤが頭を押さえその場に蹲り、洗い呼吸を整える。ブリッジにいるメンバーの中で立っているのは武蔵だけだった、しかし武蔵は何故ダイテツ達が苦しんでいるのか理解出来ずにいた。

 

「ど、どうしたんですか!? 急に蹲って……」

 

「聞こえないのか? あの声が……?」

 

「声? いや、オイラには何にも……」

 

血液さえも凍りつくような嘆きの声がダイテツ達には聞こえていたが武蔵には何の影響もなかった。

 

「せ、整備班から連絡! 着艦したアイビス達が体調不良を訴えているそうです! ぐっ……うっぷ……R-1とビーストを確認! しゅ、周囲に……うえ……アンノウンを4体補足! モニターに映します」

 

エイタ自身も青い顔をしながらも、オペレーターとしての職務を果たし、ハガネのブリッジに異形の化け物の姿が映し出される。

 

「インベーダーにアインストだとッ!?」

 

インベーダーとアインストの融合した化け物を見て武蔵は驚きの声を上げ。そして実際に化け物を見たダイテツ達は先ほどを遥かに上回る不快感に襲われた。

 

『これが武蔵が出撃するな……という理由か……』

 

「うっぐぅ……うああ」

 

「ぐっ……武蔵、出撃を頼む。リュウセイ少尉を助けてくれ」

 

ダイテツの言葉に頷き、武蔵は通路で蹲っている衛生兵や、兵士を見ながら格納庫へ走る。

 

「武蔵!」

 

「コウキ! お前は大丈夫なのか!」

 

「ああ。俺は問題ないが、アイビス達は駄目だ。機体を動かせる状況じゃない、俺が出る」

 

轟破・鉄甲鬼に乗り込む準備をしているコウキに頼むと声を掛け、武蔵もポセイドン号に走る。

 

「武蔵……待って! 私も……行くッ」

 

「無茶だ! オイラとコウキでリュウセイを助ける。お前はハガネにいろ」

 

青い顔でヘルメットを抱えているラトゥー二を見てハガネにいるように言うが、ラトゥーニは首を左右に振る。

 

「た、戦えないけど――R-1は回収できる。私も……行く」

 

顔は青く、身体も震えている。それでも目だけは爛々と輝いている……武蔵はその顔を見て深い溜め息を吐いた。

 

「コウキ、ラトゥーニにR-1の回収を頼む!」

 

『俺は構わん、それより時間がない。整備兵はダウンしているパイロットを連れて気圧室に避難しろ! 出るぞ!』

 

コウキの警告を聞いて整備兵達が必死の形相でイルム達を気圧室に引き摺っていく姿を見ながら武蔵はポセイドン号に乗り込み、ふらつきながらビルドラプター改に乗り込むラトゥーニを案じながらも、これ以上躊躇っている時間はないと判断しコウキの後を追ってハガネからゲットマシンを出撃させるのだった……。

 

 

 

 

黒い穴は既に黒い亀裂となり無尽蔵に化け物をフラスコの世界へと産み落としていた。PT、AM、車、動物――無機物・有機物にお構いなく寄生し、襲い掛かってくる醜悪な化け物を見て、コウキは眉を顰める。

 

「なんだ、この醜い化け物は」

 

『しらねぇ。インベーダーとアインストが合体してるのは判るけどな』

 

ダブルトマホークを構えたゲッターD2と轟破・鉄甲鬼の手にしたトマホークが化け物を両断する。すると溶けるように化け物は消え去り、PTの骨組みだけが溶かされた状態でその場に残る。

 

『遠いな』

 

「ああ、この距離は厄介だな」

 

R-1の姿は確認していたが、その周辺にも化け物が生れ落ちており、そのまま進むのは不可能と判断した武蔵とコウキはラトゥーニの乗るビルドラプター改を背中に庇いながら、状況の把握に努めていた。

 

「おい、勝手な行動をするつもりならハガネにもどれ、お前の勝手な行動が俺と武蔵を危険に晒す」

 

『……ッ、すいません』

 

ビームライフルの銃口をズィーリアスに向けたビルドラプター改を見てコウキが釘を刺した。戦況も相手の正体も判らない今は慎重に動かなければならない、感情で動かれそれが取り返しのつかない事に繋がりかねない。

 

『声って聞こえてるか?』

 

「いや、俺はまるで聞こえない。ラトゥーニ、どうなってる?」

 

『ずっと聞こえてます、助けて、こっちに来てって男とか女の声で……』

 

震える声で返事を返すラトゥーニに武蔵とコウキは眉を顰める。自分達には聞こえない謎の声――それがダイテツ達の体調不良を起しているようだが……何故自分達には聞こえないのかと疑問に感じていたが、その答えは目の前の光景が現していた。

 

【■▲○☆……】

 

【※▲☆□……】

 

苦しみ悶えながら溶けて行く姿を見ればコウキは勿論、武蔵でも理解出来た。

 

「『ゲッター線か……』」

 

轟破・鉄甲鬼、ゲッターD2共にゲッター線で稼動している。インベーダーはゲッター線を必要不可欠としているが、過度なゲッター線には弱い。そしてそれはアインストも同様だ――少量のゲッター線ならば自分のエネルギーに変える事が出来るが轟破・鉄甲鬼とゲッターD2のゲッター線濃度には耐え切れなかったようだ。次々に己の核を放棄し、影と一体化して何処かへと逃げ去っていく光景を見てコウキは状況は悪化の一途を辿っていると悟った。

 

「だがまるで安堵出来ないな」

 

『なんで? 数減ってるぜ?』

 

ダブルトマホークで化け物を切り倒しながら言う武蔵にコウキは呆れ半分と罵倒半分で口を開いた。

 

「黙れ脳味噌筋肉。状況を把握しているのか?」

 

『敵の数が減ってる』

 

「よし、馬鹿。俺が説明してやるからちゃんと話を聞け、良いな?」

 

武蔵の返答にコウキは駄目だこいつと思った。根本的にゲッターパイロットは脳味噌まで筋肉で、その場のノリと勢いと自分の野生の勘で戦っている。敵が減ってるという状況しか理解出来ていないことにコウキは何が起きているのか説明する羽目になっていた。

 

「化け物のコアはゲシュペンストなどのPTとAMだ。コアが砕けた化け物は溶けているのは判っているな?」

 

マシンガンアームを放ちながら武蔵に今の状況を説明するコウキ。武蔵はその説明を聞きながら頭部ゲッタービームで周囲を薙ぎ払った。

 

『それは判ってる、死んだんじゃないのか?』

 

「違う。見てみろ、溶けたやつらが一箇所に集まってる。ビーストの後だ、見えるか?」

 

溶けたと見れば倒したと判断してもおかしくない。だがそれが間違いだった――解けたのは逃げたのだ。捕食も出来ず、道連れにも出来ずに死ぬ――それはその生物にとって最も許せない状態だった。ゆえに役に立たない身体を捨てた――1番奥で動かない個体を見ろとコウキに促され、武蔵は視線を向けた。

 

『なんだ? ゲッターになってる?』

 

化け物の体細胞が1体のゲシュペンストに集まり、武蔵達の見ている前でその身体をゲッターロボに作り変える。

 

『よし、あいつをぶっ飛ばせばいいんだな?』

 

「馬鹿か、貴様は」

 

『違うのか!?』

 

「違う、俺達が倒すのは化け物ではない。その後だ――空間の切れ目か、穴か俺も判らんが、あれがある限りあの化け物は沸いてくる。ゲッタービームを至近距離から叩き込んで来い。あの無様なゲッターは俺が相手をする、ラトゥーニは俺に続け、離れるなよ。影から化け物に取り込まれたくなければな」

 

あの空間の切れ目、あるいは穴から伸びた蔓と触手がすべてを動かしている。ならばあれを撃退すれば化け物の侵食は止まる――コウキはそう判断し、背中のウェポンコンテナを起動させる。肩部にスライドして来たそれが肩の突起の間に固定され、装甲が展開し巨大なファンをむき出しにさせる。

 

「数が少ないうちに一掃する。これ以上増えたら手がつけられない。ラトゥーニ、正気は保ているな?」

 

『だ、大丈夫……です』

 

存在するだけで特性か、何かは判らないがその者の精神を蝕む――近くにいるリュウセイだけではなく、距離を取って停泊しているハガネにも影響が出ている。このままでは市街地にまで被害が出るかもしれないと判断したコウキの行動は早かった。

 

「吹き飛べッ! 化け物共ッ!!!」

 

酸とゲッター線の入り混じった暴風が化け物達に襲いかかり一箇所に集める。

 

『しゃあッ!!! ゲッタァァビィィィイイイイムッ!!!!!』

 

サイクロンで一箇所に集められた化け物共は自分達が出現する漆黒の穴もろとも腹部ゲッタービームの光の中に消えて行った。残されたのは僅かなPTやAMの残骸だけで、あの化け物が存在した痕跡はどこにもなかった……。残ったのはズィーリアスと赤黒い念動フィールドに守られたR-1のみ……ビルドラプター改が前に出てズィーリアスにビームライフルを向ける。

 

『……リュウセイを返して』

 

『…………』

 

ラトゥーニの返答にレトゥーラは返事を返させなかった……だがゲッターD2、轟破・鉄甲鬼を前にしてもその闘争心は全く衰える事は無く、このまま武蔵とコウキ、そしてラトゥーニの3人と戦うつもりなのか、背部のウィングに手を伸ばし、実体剣を取り出そうとし……。

 

『ま、待ってくれ……俺はレトゥーラがいなかったら死んでた……ここは見逃してくれ……レトゥーラ、お前も……帰ってくれ、頼む』

 

意識を取り戻したであろうリュウセイの声が響くとズィーリアスは剣を元に戻し、飛行機形態に変形と同時に一瞬で消え去った。

 

「仕方ない、帰還する。この周辺を立ち入り禁止区域にして調べなければならないだろうからな、俺達も影響が無いとは言いきれないハガネに戻るぞ」

 

謎の化け物とズィーリアスを退けた事は出来たが、思念波による攻撃、無機物・有機物お構いなしに寄生し、今もなお黒い体細胞と黄色の複眼と蔓に寄生された状態で放置されている岩や残骸を見れば、何がおこるか判らないのを危惧するのは当然の事だった。

 

「武蔵、ゲッターD2のゲッター線を放射しろ。それで少しは浄化作用があるかもしれない」

 

『……大丈夫? 一応放射線なんだろ?』

 

『でも近づくだけで発狂するかもしれないなら、立ち入り禁止にするしかない。それなら大丈夫だと思う』

 

「そう言う訳だ。何が起こるか判らん、事後承諾になるがゲッター線を使うしかあるまい」

 

ラトゥーニとコウキの説明を聞いてから武蔵は判りましたと返事を返し、謎の化け物と戦った区画を埋め尽くすようにゲッター線を放出させるのだった……。

 

 

 

闇の中を蛍、いや人魂のように大地を埋め尽くしながら照らす翡翠の光を見つめながら孫光龍は困ったような表情を浮かべた。ゲッター線は必要だが、あまり多量のゲッター線は必要のない悪意を呼び寄せる――それがあの異形の化け物の正体だった。近くに武蔵が来ているのを感じ取り様子を見に来た孫光龍だが、想像もしてない光景にその顔をゆがめ頭を振っていた。

 

「参ったねぇ……一体なんなんだい? あの化け物は……」

 

百邪同士が融合し生まれた異形の化け物――それはバラルから見ても想定外のイレギュラーだった。思念波を操り、人を生物を誘いこみ喰らい、己の一部とし、そして共に死ぬ。それは仙人である孫光龍にとっても死に兼ねない悪質な生命体だった……。

 

「龍虎王の事もあるのに……ああ、もうどうしようかなあ……」

 

人間が採掘を行なっている龍虎王の目覚めも近い、それに加えて百鬼帝国が次々と復活させている四罪、四凶の超機人のこともあるのに、これ以上のイレギュラーは困るなあと笑った孫光龍はゆっくりと振り返る。

 

「と言う訳で、今なら許してあげなくもないよ。饕餮王、暫く見ない間に人間の姿なんかになっちゃってさあ……もう本当に良い加減にしてくれよ」

 

「きひゃひゃひゃひゃ、だーれが今更貴様らの言うことなんぞ聞くかッ!!」

 

孫光龍の視線の先にはしわくちゃの老人――四凶の超機人である饕餮王の姿があった。

 

「貴様は食い殺してやるぞ、ああ……孫光龍……貴様をやっと……やっと見つけたんだからなあ」

 

その身体を見る見る間に巨大化させ翁の頭部を持つ巨大な獣人の姿へと変貌する。

 

「やれやれ……あんまり調子に乗るなよ爺。折角僕が優しく言ってやってるのにさあッ!」

 

白い帽子を片手で押さえながら饕餮王を睨む孫光龍、その眼光は凄まじく圧倒的に有利である筈の饕餮王が恐怖で数歩後ずさるほどの凄まじい威圧感を放っていた。

 

『ワシらは最早バラルにガンエデンなどに縛られはせん!』

 

「そうかい、なら女神の加護を退けた愚か者はこの地で死に絶えろッ!」

 

その日凄まじい振動と巨大な龍神の影と異形の獣人を見たと言う目撃情報と、凄まじい雄叫び、そして何度にも及ぶ大地震が確認され、数時間前の集団うつ現象と相まって周囲の都市からの集団避難が行なわれる事となるのだった……それは奇しくも交代の部隊が到着した事で停泊を終えたハガネとシロガネが出発した後の出来事なのだった……。

 

 

第110話 地獄門 その3へ続く

 

 




今回はここまでです、今回のシナリオは規定ターン数生き残ればイベント進行という感じのMAPをイメージして見ました。
次回は前半はハガネとシロガネ、後半は伊豆基地と龍虎王の話を書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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