進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第111話 地獄門 その4

第111話 地獄門 その4

 

ロスターが目撃された地域の封鎖及び監視を引き継ぎに現れたのは余り良い噂を聞かないプロジェクトのメンバーの1人だった。

 

「ダイテツ中佐、リー中佐、これよりこの場の監視及び封鎖は我々ツェントル・プロジェクトが引き継ぎます」

 

そう言って敬礼したのは糸目に金髪の中年男性――「ドナルド・ホフスタータ」特殊技術中尉だった。

 

「お言葉だがドナルド特殊技術中尉。貴方方でこの現場を監督出来るとは思わないのだが……」

 

リーの言葉にドナルドは柔和な笑みを浮かべる。ツェントル・プロジェクトはATX計画、SRX計画よりも数十年も前に立ち上げられた新機軸の機動兵器を作るのを目的にした部署だが、大きな成果は今の所見られておらず無人機止まりになっている。予算ばかりを使うと陰口も叩かれているが、それでもプロジェクトを遂行出来ているのは一重にとある1人の科学者の存在があるからだ。

 

「確かに我々では不可能です。なのでブルーウルブズがこの場を管理します。我々はあくまでロスターについての研究を行なうと言うところですね」

 

「ブルーウルブズか、了解した。ではこれより本艦とシロガネはアビアノへと一時帰還する」

 

「ダイテツ中佐!?」

 

ツェントル・プロジェクトにすべてを任せると行って背を向けるダイテツの名を呼ぶリー。だがダイテツは振り返ることも無く歩き出し、リーもその後を追って歩き出した。

 

「よろしいのですか?」

 

「仕方あるまい。ブルーウルブズは連邦の総本部の護衛部隊だ。それを持ち出して来たという事は紛れも無く総本部が動いている……ここで駄々を捏ねてもワシらにとってデメリットしかない。多分現れることはないという武蔵の言葉を信じるしかない」

 

「しかし、ドナルド特殊技術中尉は……異常者として有名なのですよ。大丈夫なのですか?」

 

ツェントル・プロジェクトには様々な技術の専門家が集まっている。その中でも有名なのはエリック・ワン……かつてはEOTI機関に属し、ビアンの友人でもあり、そしてシュウ・シラカワと共にグランゾンを開発した人物だ。だがそれと同じ位悪名の多い者も多いのがツェントル・プロジェクトであり、魔窟などと称されることもある。

 

「生物兵器などを開発しているという噂があるのはワシも知っている」

 

「ならばそれこそこの場を任せるのは危険では!」

 

「それ以上は言うな、既にブルーウルブズはいるぞ」

 

ダイテツの警告を聞いて背筋に冷たい汗の流れたリーは口を閉じてダイテツと共に歩き出す。危険思想を抱いていたとしても軍上層部の支援を受け、表舞台に出ないツェントル・プロジェクトが出張って来た以上ダイテツとリーは身を引くしかないのだ。

 

「それこそ不幸な事故で部下を実験台にされないためにもな」

 

「……了解です」

 

ツェントル・プロジェクトに関わる噂で最も恐ろしい物――優れた技術を持つパイロットを事故を装い再起不能にし実験台にする。これは実しやかに語られており、実際に部下をツェントル・プロジェクトに連れて行かれ、2度と部下の顔を見る事無く治療の末亡くなったという業務的な電報と墓の場所を教えられ、足の骨折で何故死ぬと声を上げ軍を退役させられた者もいる――連邦の中の触れてはいけない暗部その1つがツェントル・プロジェクトだった。鬼が上層部に成り代わっているとしても、それとは別に存在している悪意は確かに存在していたのだ。

 

「シャインちゃん大丈夫?」

 

「……ええ、大分楽にはなったと思います。すいません、ご心配を掛けて」

 

「いや、良いさ良いさ。林檎でも剥こうか」

 

「はい……お願いします」

 

ロスターの思念波に抗うにはシャインは幼すぎ、今はこうして武蔵の看病を受けている。

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

武蔵がずっと自分の側にいてくれる。それはシャインにとっては喜ばしい事であったが、それと同時にある出来事がシャインの心に深い影を落としていた。

 

「エキドナは……どうですか?」

 

林檎を食べ終えたところでシャインは武蔵にそう問いかけた。誰よりも苦しみ意識を失ったエキドナの姿はシャインの脳裏に焼きついていた。部屋から出ることも出来ないので、武蔵にどうなったのかと尋ねるが武蔵も首を左右に振った。

 

「ごめん、オイラもわからないんだ。ラーダさんが見てくれてるらしいから、後であったら聞いてみるよ」

 

「そう……ですか」

 

「無理しないで寝なよ。大丈夫、オイラは近くにいるからさ」

 

そう笑う武蔵に小さく頷き、シャインは再びベッドの中に潜り込み、そこから手を伸ばし武蔵の手に触れる。武蔵はその手を軽く握り返し、大丈夫と再び声を掛ける。それに安心したのか寝息を立てるシャインを見つめながら、武蔵は片手でDコンを取り出しベッドの側の机の上においた。

 

(しかしどうしたもんかなあ)

 

リクセントのやべー奴ジョイスとの戦いの結果は相打ち。勝者なしで終わり、婚姻届も婚約届けも消えるという結果だった。

 

『貴方が後悔をし生きている事は判る。しかしその後悔に引かれ、見るべき者を見ないのは愚の骨頂。今すぐとは言いませぬが、シャイン様の想いを無碍にしないでいただきたい』

 

好かれていると言うのは判っていた、それでも武蔵はそれを受け入れるという選択肢が無かった。言葉にならない焦燥感、そして自分が死ぬことで誰かを救えるのならば武蔵は何度でもそれを選択する。それ故に、愛や恋が武蔵には判らなかった。

 

「……どうしろって言うんだよ」

 

余りにも考える事が多すぎる。動き出したシャドウミラー、インベーダー、アインスト、百鬼帝国にインスペクター、そしてロスター……脅威は増え続け、戦っても戦っても終わりが無い。それにヒリュウ改のラミアだってシャドウミラーの尖兵の可能性はあるが、顔も声も知らないし、エキドナも記憶を取り戻す予兆が無い。ダイテツ達に警告するにもシャドウミラーの事自身がうろ覚えで、永遠の闘争や人造人間という断片的な情報しかない。そもそも武蔵にそんな話を説明するだけの知恵はないし、イングラム達が忙しく動いてるのは裏付けを取る為の物だ。

 

「隼人でもいてくれたらなあ」

 

敵を倒せば終わり――武蔵の知る戦いはそれだが、新西暦の戦いはあまりにも入り組み、政治的な要素が強すぎる。Dコンでビアンへメールを送りながら、オイラには手がつけられんぜと疲れたように武蔵は呟くのだった……。

 

「アルテウル大統領補佐官、何時になったら我々にゲッター線とゲッター合金を提供してくれるのかね?」

 

「君もくどいなミタール・ザパト。大統領令が出たから連邦からも国連からも武蔵とゲッターロボを徴収することは出来ないのだよ」

 

神経質そうに机を叩きながら言う白人の男性にアルテウルはにこやかに笑いながら返事を返す。

 

「あれは私の求める物の1つの形だ。なんとしてもこの目にしたい」

 

「今は無理だと言っておこう。それに私はオブザーバーとして十分に資金を提供しているし、ハガネとシロガネが発見した謎の生物の監視区域にもツェントル・プロジェクトとブルーウルブズを捻じ込んだ、それでもまだ足りないのかね?」

 

「足りない、全くもって足りない、これでは私の研究はいつまで経っても完成しない!」

 

「少しは落ち着いたらどうじゃの? ミタール」

 

「ワン博士ッ」

 

苛立つミタールに落ち着くように声を掛けた老人はにこにこと笑いながら椅子に腰を下ろした。

 

「態々やってきてくれて感謝するの、それで今回はなんじゃ?」

 

「貴方がいると話がはやい。ゲッター合金とゲッター線を提供することは出来ませんが、それを研究している2人をご紹介します、入って来てくれ」

 

アルテウルが声を掛けるとコーウェンとスティンガーの2人が姿を見せる。

 

「コーウェン博士とスティンガー博士はゲッター線の権威だ。きっと力になってくれるはずだ」

 

「よろしく頼みますぞ! ザパト博士、ワン博士、我々の手でゲッター炉心を作り出そうではありませんか。ね、スティンガーくぅん?」

 

「そ、そうとも! 我々の手でゲッター炉心を作り出しましょうぞ!」

 

連邦の闇であるツェントル・プロジェクト――そこに更なる闇が潜り込みツェントル・プロジェクトもまた正史とは大きく異なる方針へと舵きりすることになるのだった……。

 

 

 

 

 

ハガネとシロガネがアビアノ基地に向かっている頃伊豆基地にヒリュウ改が辿り着いていた。

 

「これは想像していなかったな……ラドラ少佐。久しぶりだな」

 

レフィーナ達がメンテや、未完成の機体の調整を行っている中、ラドラは伊豆基地の司令部に顔を出していた。

 

「成り行きでな。少しの間だが世話になるレイカー、それと少佐と言うのはいらんぞ」

 

もうラドラは軍属ではない少佐呼びは止めてくれと笑うラドラにレイカーも笑みを返す。

 

「ラドラしょ……んんッ……何故ヒリュウ改と行動を共にしてくれていたのですか?」

 

サカエが少佐と呼びかけ、咳払いをしてから何故? と問いかける。

 

「俺達が追っている連中が動き出しているんでな。武蔵に頼まれてヒリュウの護衛についていた。途中までだが、ゼンガーとエルザムも同行してくれていた」

 

「……君達が追っている相手というと、ゲシュペンスト・MK-Ⅱを運用している部隊か?」

 

「ああ。中々に尻尾を見せない連中でな、向こうがどうもキョウスケを狙っているようだから近くにいて誘い込んでみるつもりだ。ヒリュウ改への同行許可は貰えるか?」

 

「構わない。今戦力を分散しているからラドラが協力してくれるのは本当にありがたいことだ」

 

百鬼帝国、インスペクター、ノイエDCに匹敵する脅威である謎のゲシュペンスト・MK-Ⅱを運用する部隊を誘い出すために同行したいと言うラドラの申し出を聞き入れ、ヒリュウ改と同行する事に許可を出した。

 

「許可ついでにもう1つ……いや、2つほど頼みがある」

 

ラドラはそう言うとレイカー達の前に走り書きの設計図を2つ差し出した。

 

「これはヒュッケバイン・MK-Ⅲの……」

 

「ああ、それの改良案になる。カークと話をしていたんだが、タイプMは今のままでは出力も安定しない。これの改造をしたいのだがどうだろうか? マグマ原子炉を搭載しているのならば俺が協力出来るはずだ。特にタイラントアーマーは俺なら仕上げれる」

 

マオ社を脱出する際に大破したタイプLの修理の目処はいまだ立っておらず、ボクサーパーツも完成していない。タイプMの専用の強化アーマー……暴君を意味するタイラントアーマーは外骨格が完成しているが、中身が空っぽに近い。そもそも新西暦の技術でメカザウルスを作成するをコンセプトにしているタイラントアーマーは今までと全く異なる技術が必要になりノウハウが殆どゼロだった。タイラントアーマーの原型となっているゲシュペンスト・シグの開発者であるラドラがいればタイラントアーマーも大きく完成に近づくとレイカーは判断した。

 

「許可する。オオミヤ博士と協力して建造してくれるか?」

 

「了解した。プランタジネットには間に合わせるつもりだ」

 

レイカーの言葉を聞いてラドラは司令部を後にする。

 

「よろしいのですか?」

 

「良いも何も、マグマ原子炉を組み込んだタイプMは不確定の要素が多すぎる。それを安定稼動させれるのならばそれに越した事はない、それよりも今はダイテツ達の報告、そしてLTR機構からの要請の方が問題だ」

 

謎の生物の襲撃とツェントル・プロジェクトが動き出したと言う報告、それに加えてLTR機構から超機人らしい物を発掘したので支援を求めるという連絡が伊豆基地に届いている。ただでさえ戦力を分散しているのに、更にそれを分散しなければならない。そして伊豆基地で保護としているキジマ・アゲハの事もある……それらの問題は優秀な指揮官であるレイカーでさえも頭を悩ませる大きな問題となっているのだった……。

 

 

 

 

伊豆基地にいる技術者がいなければ最終調整出来なかったグルンガスト参式、そしてAMガンナーの2機の仕上げ作業がヒリュウ改の格納庫で急ピッチで行なわれ、勿論マオ社で整備の手伝いをしていたリョウトやリオもその作業を手伝っていた。

 

「リョウト君、GラプターのT-LINKコネクターのチェックが終わったわよ」

 

「も、もう終わったの? 接続系の整備マニュアル……さっき渡したばかりなのに……」

 

グルンガスト参式の分離形態のGラプターの装甲や飛行機形態時と合体時の関節部のチェックをしていたリョウトはリオのT-LINKコネクターの調整作業が終わったと聞いて驚きの表情を浮かべ、1度関節部のチェック作業を中断し接続系の最終確認を行なった。

 

「……凄い完璧だ」

 

少しの不備も無く仕上がっているのを見てリョウトがそう呟くと、リオはふふんっと胸を張って笑みを浮かべた。

 

「門前の小僧、習わぬ経を読むって奴よ。リョウト君、2人でいる時も仕事の話ばかりしてるでしょ? だから、接続系の事もそれである程度知ってたの」

 

「ご、ごめん……」

 

リオの言葉を聞いてリョウトはデート中や休憩中も仕事の話ばかりをしていたと気付き、謝罪の言葉を口にするがリオは楽しそうな笑みを浮かべた。

 

「ううん。私も色々と勉強になってるから気にしないで」

 

勉強になっているのは勿論だが、リオにとってはリョウトの手伝いを出来ると言うこと、そして今のようにリョウトを脅かせる事が出来ると言うことで十分満足しており、結論を言ってしまえば意中の相手と共通の話題があると言うだけで恋する乙女としては十分なのだ。

 

「でも、今度はリオが興味を持ってる話をするよ」

 

だが姉の多いリョウトは自分の話がつまらなかったかもしれない、デートや休憩中に話す話題ではなかったかもしれないと後悔し、今度はリオの好きそうな話をするよと口にするとリオは目を輝かせた。

 

「じゃあ、空手の話が良いな」

 

自分の想像していた返しと違うとリョウトは困惑しつつも、リオがその話を聞きたいのならと思い判ったと返事を返す。そんなリョウトとリオの様子を見ていてGバイソンの調整を手伝っていたタスクが羨ましいという視線を2人に向けた。

 

「あ~ラブいな~熱くてたまらんわ~」

 

その嫌味めいた言葉はリョウトとリオには届かず、タスクがむむうっと唸っていると格納庫で待機していたエクセレンがくすくすとからかうような笑みを浮かべた。

 

「参式の中の2人もね」

 

「あ~あっちは男の方の押しが足りないッス」

 

リョウトとリオだと、気の弱いリョウトを強気なリオが押していい感じになっている。だが参式のパイロットのブリットとクスハではブリットがまず押しが弱い、そして芯の強い性格で、1歩引いているクスハでは進展の要素が無いとからかうようにタスクが笑うとGバイソンのコックピットをモニターしている画面が点灯する。

 

『わ、悪かったなッ! お、俺だって色々と考えてはいるんだよッ!』

 

「あちゃ、聞いてたのかよ。わりぃ、わりぃ」

 

奥手のへたれと思われるのは流石に不快だったのかブリットの怒りの声にタスクは悪い悪いと返事を返す。

 

『あれ? エクセレン少尉? 何故ここに?』

 

「んー休暇取れなかったのよ~折角キョウスケと色々しようかなあって思ってたんだけどね」

 

伊豆基地に着いたら半日休暇などを取れると思い買い物やちょっとした食べ歩きなどを計画していたエクセレンだったが、レイカーから待機命令を出され、仕方なくこうして格納庫で待機番をしていたのだ。

 

「キョウスケ中尉は中尉でカウンセリング受けてますしねぇ」

 

「そうなのよねえ……はぁ……」

 

ビーストのパイロットの怨嗟の叫び、ウォーダンとの戦いで実際問題キョウスケはかなり精神的に来ている為、現在は伊豆基地のカウンセラーと話をしているのだ。

 

『それはなんと言えば……』

 

「マジでご愁傷様です」

 

完全に気落ちしていて、しかも普段のからかいのキレも無いのでエクセレン自身も相当弱っている。

 

「ラミアちゃんを誘って少し出掛けようかなと思ったんだけど……」

 

アンジュルグに視線を向けるエクセレン、そのコックピットは閉じられラミアが中に乗り込んでいるのが明らかだった。

 

『最近ラミアさんコックピットに篭もりきりですしね』

 

「中で何をしてるのかねぇ~」

 

ブリット、タスク、エクセレンが話をしているとGラプターの調整を終えたであろうリョウトがタスクに声を掛ける、

 

「……タスク、Gバイソンのチェックは終わった?」

 

「ん? おう4番コネクターの調子があんまり良くねえな」

 

話をしながらもタスクはしっかりとGバイソンの調整を行なっており、T-LINKセンサーの4番の調子が悪いとリョウトに告げる。

 

「も、もしかして、タスク君……仕事もちゃんとやってたの?」

 

「姐さん、俺が元整備員だった事忘れてるっしょ? 話をしながら調整とか確認するなんて朝飯前なんっすけど?」

 

今ではジガンスクード・ドゥロのパイロットをしているタスクだが、元々は整備兵だ。話をしながら機体の確認や不備の箇所を確認するなんて朝飯前だった。忘れてると言われるとエクセレンは目を逸らしタスクはそんなエクセレンを見て苦笑いを浮かべた。

 

「タスク、リョウト。4番コネクターはカット。参式を組み上げるぞ」

 

参式の組み上げを指揮していたカークの指示を聞いて、リョウトとタスクの顔が引き締まる。

 

「判りました。 タスク、補助アームの方は?」

 

「ちょっと待ってくれ……よし、OKだ」

 

補助アームがGラプター、Gバイソンに接続される。それを確認してからリョウトがコックピットにいるブリットとクスハの2人に通信を繋げる。

 

「ブリット、クスハ、準備は良いかい?」

 

新西暦の技術で作られた初の合体式の特機と言う事でヒリュウ改の整備兵も、テスラ研を脱出して来た整備兵にも緊張が走る。

 

『こちらGラプター、OK』

 

『GバイソンもOKです』

 

ブリットとクスハの返事を聞き、カークがGOサインを出し。エクセレン達の目の前でGラプターとGバイソンは合体し、グルンガスト参式へとその姿を変える。

 

「わおッ! 合身大成功ッ! ゲッターロボみたいに派手じゃないけど良いんじゃない?」

 

合体式の特機と言うとゲッターロボの印象が強いエクセレンがそう言うと、カーク達は揃って苦笑した。

 

「さ、流石にゲッターロボみたいに伸びたり、曲がったり、大きくなるなんて事は出来ないですからね」

 

「というか、あれロボットの癖にゴムみたいに動くしな」

 

「ゲッター合金の柔軟性とかは理不尽のレベルだな」

 

ゲッター合金がとんでもないと言う話に帰結し、エクセレンもそれもそうねと笑った。

 

「ブリット君の戦闘機とクスハちゃんの戦車が合体して、グルンガスト参式になるのね。やっぱりこれはゲッターロボに着想を得たの? ハミル博士」

 

「ああ、大本はそうだが3機合体を2機にし、整備性などを向上させている。まぁ3機合体だと耐久などに問題が出るというのも大きい要因だがな」

 

グルンガスト参式の初期案では3体合体だったが、何度シュミレートしても耐久などに難が出ると言う事で可変域を減少させ、2機合体にしたのだ。

 

「ん? それじゃあボスの参式ももう1人乗ってたりするのかしら? 参式って合体式なんでしょ?」

 

「いや、2号機は単座に改修されている。パイロットはゼンガー少佐1人だ。それにタイプGは試験的にゲッター炉心を搭載しているので2人乗りは最初から想定されていない」

 

「え? ゲッター炉心作れたの?」

 

「特機用の物だけが1つだけ建造されたらしい、それ以外は完成……なんだ?」

 

グルンガスト参式とタイプGの違いを説明していたカークだが、通信のコール音が響き解説を中断する。

 

『ハミル博士、 ブリッジから呼び出しが……私達全員で来て欲しいとの事です、なんでもLTR機構のエリ・アンザイ博士から通信が入っているとかで……』

 

「判った。すぐに行くと伝えてくれ」

 

LTR機構からの連絡――ゲッターロボの伝承が残る地からの連絡は重苦しい空気を作り出し、リョウト達はカークと共に格納庫を後にしブリッジへと向かうのだった……。

 

 

 

 

 

 

ヒリュウ改のブリッジに向かったクスハ達を出迎えたのはモニターに映し出されていたエリとシキシマの2人の姿だった。

 

『おうおう、来たぞ! エリ』

 

『ええ、それともう少し静かにしてくれますか?』

 

『ははははッ!!! 声がでかいのは元々じゃ、所でのヒリュウ改に武蔵は……『ちょっと後にしてください。時間が無いので』ぐふうッ』

 

捻りを加えた一撃をボディに叩き込まれ膝から崩れ落ちるシキシマ博士とそれを無表情で行なったエリの姿にブリッジに嫌な沈黙が広がった。

 

『失礼しました。武蔵に会いたいとそればかりでして』

 

「ああ、いえ、大丈夫ですぞ。武蔵も敷島博士の名前は知っておりましたし、奇縁が過ぎますが会いたいと思うのは当然の事でしょうからな」

 

武蔵も敷島博士の子孫に会いたいと口にしており、シキシマ博士も武蔵に会いたいと口にしているのでその気持ちは判りますとショーンは笑い、1度咳払いをしてからエリに視線を向けた。

 

「ではアンザイ博士、先ほど艦長と私にしてくれた話をもう1度してくれますかな?」

 

『判りました。現在蚩尤塚の発掘作業の状況ですが、砕けたゲッター合金らしき物と超機人の頭部が露出する段階に来ております』

 

「それはまさか、蚩尤塚の地下にゲッターロボが眠っていると言うことですか?」

 

ゲッター合金らしき物が見つかったと聞いてブリットが黙っていられなかったのかエリにそう問いかける。

 

『それは判りません、ただ超機人と共に戦った、あるいは超機人と戦ったという逸話もありますから。私達としてはゲッターロボを知っておられる皆様方に蚩尤塚へ来ていただき、調査に協力して欲しいのです。もしゲッター合金が発見出来ればそれはお礼として差し上げます

 

調査に協力すれば、もしかすればゲッター合金が手に入るかもしれないと言うのは破格の条件に思えた。

 

「いいじゃねえか、ブリット。調査に協力するだけでゲッター合金が貰えるかも知れないなら得しかないだろ?」

 

「私もそう思うよ。ゲッター合金で強化すれば今まで異常に強くなるんじゃん」

 

軽く、柔軟性に優れ強固なゲッター合金は加工こそ難しいが、加工さえ出来ればコーティング等にも利用でき、非常に便利な素材だ。それが見つかるかもしれないとなれば破格の条件である事は間違いない。

 

「どうかしましたか? ブリット少尉」

 

「あ、いえ……そのアンザイ博士。なぜ自分達なのですか? 正直ゲッターに関連するのならば武蔵が合流してくれるのを待つべきだと自分は思うのです」

 

正直な所ブリットもそうだが、クスハもリョウトもリオもゲッター合金を見極められるか? と言われると自信がない。それなのに何故自分達を呼ぶのかとブリットが尋ねるとエリは説明が足りませんでしたねと口にし、謝罪した。

 

『あくまで私達の調査は超機人で、ゲッター合金はついでです。シキシマ博士はそうではないですけどね、話を戻しますが、超機人は自分の意志を持っているようなのです』

 

意志を持つ機体――それは自らパイロットを選ぶとエリの話を聞いていたリューネはそう判断した。

 

「つまりその超機人って言うのは自分のパイロットは自分で選ぶって事?」

 

『ええ、古文書にはそう記されていますし、壁画にもそれらしいものがあります』

 

「ふ~ん……自分の意志を持って、乗る奴を選ぶって所は魔装機神と同じだな」

 

魔装機神に乗るマサキは超機人の説明を受け、超機人と魔装機神が似ているなと口にする。

 

『可能性はあるかもしれませんね。魔装機神が超機人を参考にしたのか、それとも逆なのかは判りませんが……可能性としては十分に考えられますね』

 

「え? じゃあ超機人と魔装機神って親戚とか、従姉弟とかそんな感じなの?」

 

エクセレンの茶化すような言葉にエリは苦笑しつつもそうかもしれませんと返事を返した。

 

『それを踏まえた上でこちらの調査結果や古文書、壁画をテスラ研とリ・テクに提出した所、返答はテレキネシスαパルス――つまり特殊な深層脳波が強い人間……超機人の選ぶパイロットとは念動力者なのではないかと言う答えが返って来ました』

 

ここでやっとエリがブリット、クスハ、リョウト、リオ、タスクの5人から調査に協力して欲しいと言う意図が明らかになった。

 

「なるほど、それでブリットやクスハ達をと言う事か……」

 

リュウセイは今ハガネの方でアビアノにいる、アヤはアルガードナーとゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプTTの開発に忙しく、マイはまだ表舞台に立たせる予定は無く、消去法と言う訳では無いがヒリュウ改の中で特に念動力の強い5人に白羽の矢が立ったのだ。

 

『ヒリュウ改には念動力者の方々が何人かいらっしゃるとお聞きしましたので、それでご協力を頼めるでしょうか?』

 

エリからの説明を聞き、自分の中で情報を整理してからレフィーナが口を開いた。

 

「それで、アンザイ博士は彼らに何の調査をさせるおつもりなのです? 危険があるのならば私としては許可を出す訳には行きません。協力してくれと仰られますが、何1つ具体的な内容を聞かせていただけないのは何故ですか? 何か危険な事もであるのですか?」

 

「もしかして、あいつらを超機人に乗せて動かそうってのか? 実験台にするって言うのならあたしも黙っていないぜ」

 

「……流石にそれは危険が過ぎる」

 

レフィーナの言葉にカチーナが声を荒げ、キョウスケは嘘は許さないと言わんばかりの鋭い視線をモニター越しにエリに向ける。それに慌てたのは勿論エリだ。

 

『失礼しました。そもそもですが、超機人は現在石化しており、コックピット部等は採掘すら出来ておりません。その上エネルギー反応も無く、現状の超機人は仮死状態だと仮定しております』

 

「じゃ、そのくたばってるかもしれない超機人で何をやろうってんだ?」

 

『超機人が意志を持つ機械巨人ならば、T-LINKシステムを使った超機人との意思疎通……つまり、念話です。念話によって彼らとの意思疎通を計りたいと思っております。可能ならばアインストやゲッターロボについて何か判明するかも知れませんし……』

 

蚩尤塚で現れたアインスト、そして蚩尤塚に眠るゲッターロボに関する伝承――その何れもレフィーナ達が欲してならないものだ。

 

「……博士、あの時以降、奴ら……そのアインストが蚩尤塚に現れたという記録はありますか?」

 

『いえ……あれからは1度も』

 

蚩尤塚で出現せず、それ以外の場所で何度もアインストが目撃されている。蚩尤塚とアインストの関係性があるのかないのかという謎はますます深まる事となった。

 

『……いかがでしょう、レフィーナ・エンフィールド中佐。 ご協力いただけませんか?』

 

「判りました。こちらとしてもアインストの件が気になる事ですし、実験にも危険はなさそうですし……ブルックリン少尉以下4名をそちらへ向かわせます」

 

エリの説明を聞いてレフィーナはブリット達を蚩尤塚に送り出す事を決めた。ただでさえ正体不明の敵が多いのだ、ここでアインストについて何か有力な手掛かりを得れるかもしれない上にゲッター合金を手に出来るとなれば断る理由は無かった。

 

『ありがとうございます。 では蚩尤塚でゲッター合金らしき物を輸送機に積んでお待ちしております』

 

その言葉を最後にエリの姿はモニターから消え、レフィーナは少し考え込む素振りを見せてから蚩尤塚に派遣するメンバーの名前を口にした。

 

「では、ブルックリン少尉、クスハ少尉、リョウト少尉、リオ少尉は蚩尤塚へ向かって下さい」

 

「か、艦長! 俺は!? 俺だってTPLテストで当たりが出たんですけど……」

 

ヒリュウ改に入る念動力者は5人でその中で省かれたタスクが何でですか? とレフィーナに問いかける。

 

「どうして俺は居残りなんスか?」

 

納得の行く理由を求めるいう態度をタスクが見せると、その肩をガシリと掴む者がいた。その凄まじい握力にタスクの顔から血の気が引いた。

 

「あ、ラドラ? どしたの?」

 

「ん? タイラントを仕上げるのに助手をくれと言ったらこいつを紹介されたんでな。迎えに来た」

 

えっと驚いた顔をするタスクからレフィーナが目を逸らした。

 

「こちら側の戦力をあまり割く訳には行かないと言うものもありますが、ラドラさんはいつまで伊豆基地にいれるか判りません。優秀なパイロットであると同時に整備兵でもあるタスク少尉にはラドラさんの助手をお願いしたいのです」

 

オペレーションプランタジネットが発令されるまで時間が無く、発令されてしまえば無関係のラドラは伊豆基地に留まることが出来ない。与えられた時間で機体を仕上げて欲しいと言われればタスクも嫌だとは言えなかった。

 

「お手柔らかにお願いします」

 

「心配するな、原型は出来ている。俺の指示通りに動いてくれれば何の問題もない。ではこいつは借りて行くぞ」

 

ラドラがタスクを伴ってブリッジを後にし、カークは考え込む素振りを見せる。

 

「レフィーナ中佐。運用する機体はどうするつもりだ?」

 

「ブルックリン少尉達の機体を使ってもらうつもりですが……何か問題はありますか?」

 

「プランタジネットの前に稼動データが欲しい。ラドラに調整して貰ったヒュッケバインガンナー、それとグルンガスト参式を使いたいのだ」

 

プランタジネットの主力になるであろう機体を使い、稼動データが欲しいと言うカークの言葉も判りレフィーナは了承する。

 

「ではリョウト、リオ少尉の両名はヒュッケバインガンナーを、ブルックリン、クスハ少尉はグルンガスト参式を使用してください。前回の件もあり、連邦軍部隊と量産型ゲッターロボが蚩尤塚の防衛に当たっていますが……万が一の事態が発生した場合は、私達も針路を変更し、そちらへ向かいます。それでは、気をつけて行って来て下さい」

 

レフィーナの言葉に頷きブリット達もブリッジを後にし、蚩尤塚へと出発した。だが蚩尤塚に向かって動き出したのはブリット達だけではなかった……。

 

東シナ海を進むキラーホエール――その進路はブリット達が向かった蚩尤塚だ。

 

「アーチボルド少佐、本艦は東シナ海域に入りました」

 

鬼になったアーチボルドだが、その所属は百鬼帝国とノイエDCの2つであり、少佐という地位に変りはない。

 

「結構。 直ちに機動部隊の出撃準備を」

 

アーチボルドの指示を聞いてキラーホエールの人員が慌しく動き始める、その光景を見てユウキは眉を細めた。

 

「……アーチボルド少佐、本当に超機人を奪取するのですか?」

 

「勿論。 リクセントでハガネとゲッターロボから受けた屈辱を晴らすには……超機人の力が必要なんです」

 

にこにこと笑っているアーチボルドだが、その目には押さえ切れない、いや抑えようともしていない激しい怒りの業火が宿っていた。

 

「しかし……グッ!?「ユウキくぅん? 君が僕に逆らったせいでリクセントは奪還されたんですよ? 良い加減に僕の命令に従ったらどうですか?」

 

一瞬でユウキの首を掴みキラーホエールの壁に叩きつけたアーチボルド。首を絞められ、悶えるユウキを見てアーチボルドは笑みを深め、その手を放した。

 

「良いですね? これはしっかりとローズ、つまりスポンサーからの依頼です。僕達は超機人と……その発掘や解析に携わっている エリ・アンザイ博士を手に入れます。ユウキ君……君は黙って僕の命令に従っていればいいんですよ」

 

「……了解」

 

不満そうながらも敬礼をするユウキを見送り、アーチボルドは気を落ち着けるように椅子に腰を下ろした。グリムズ家の没落を生んだ超機人をこの手で操り復讐するというどす黒い欲求、そして地下に眠っているというゲッター合金を手に出来ればもっともっと良い地位を望める――リクセントの失敗も帳消し出来ると考え、鬼となった事で鋭く伸びた犬歯を剥き出しにしにやりと笑う、だがアーチボルドは知らない、己のその底抜けの野心と嗜虐心が呼び寄せていはいけない物を呼び寄せてしまうという事を……。

 

 

第112話 地獄門 その5へ続く

 

 




ヒリュウ改側のインターミッションが終わりましたので次回からは蚩尤塚側のインターミッションを書いて行こうと思います。武蔵達の地獄門で現れたのはインベーダーとアインストの融合した化け物、こちらの地獄門からは何がでてくるのかを楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。


スパロボDD無料ガチャで新グルンガストのSSR。

グルンガストは好きなユニットなので大当たりです。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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