第114話 地獄門 その7
再びアインストや地面から多数発掘されたプロトタイプのゲッターロボの残骸が動き出すかもしれないと考え、ヒリュウ改は蚩尤塚で10時間の見張りに着く事を選択した。ハガネの方で確認されたロスターと命名された異形が出現しないとも言い切れず、また無数のゲッターロボのゲッター線は光の柱となり周囲を照らしたことにより、ゲッター炉心、合金を狙うテロリストが出現しないとも言い切れからこその措置だった。格納庫で待機しているキョウスケ達は復活した超機人を見上げながら話をしつつも、いつでも出撃出来るように備えていた。
「こ、これが超機人・龍虎王……!」
「み、見たまんまの名前だな……タイガードラゴンカイザーキングブレードとかの方がいいんじゃねえ?」
威厳さえ感じさせるその姿にラッセルは息を呑んだが、マサキは魔装機神という人知を超えた存在と長い間触れ合っていたからか、どこか間の抜けた返事を返す。
「それじゃ、ブリット君が舌噛むんじゃなぁい?」
「ま、まぁ、リュウセイ君なら喜びそうですけどね」
そもそもブリットの名付ける名前のセンスじゃないとヒリュウ改の格納庫に少し気の抜けた笑い声が響いた。
「所で、 参式はどうなっちまったんだ? アインストかゲッターロボに壊されちまったのか?」
最新特機であるグルンガスト参式が壊れてしまったと思っているカチーナは勿体無いなとぼやいたが、リョウトが違いますと口にした。
「実は……龍虎王が自分の体内に取り込んでしまったんです」
「何!?」
「あらら、リューコちゃんてば見かけによらず器用なのね」
機体を取り込んだと聞きカチーナは驚きの声をあげ、エクセレンは呆れ半分という様子で小さく笑った。
「どうも龍虎王は大破していて、グルンガスト参式も中破してしまっていて動けなかったんです」
「なるほど、互いにこのままでは死ぬと判断して、吸収して再構築したと言うことか……まぁありえない話ではないな」
「いや、ラドラ。旧西暦基準で判断しないでくれる?」
旧西暦基準で考えれば普通でも新西暦ではありえない事だ。驚いていないラドラにエクセレンが思わず突っ込みを入れたのも無理はないだろう。
「それは大丈夫なのか? こうブリットとクスハも取り込まれたりしない?」
「ちょっと怖いよな。いや、確かに頼りにはなると思うけどさ……」
取り込んだと聞いてリューネとタスクが渋い顔をする。顔には出していないが、ギリアムやキョウスケもほんの少しばかりの不安を抱いていた。だがそれは他でもないブリットとクスハによって正された。
「でも、私とブリット君は龍虎王と虎龍王のおかげで助かりました……そうでなかったら私達はきっと正気を失っていたと思います」
クスハの視線の先はヒリュウ改に回収されたプロトゲッターロボの残骸に向けられる。
「何かあったのか?」
「はい、プロトゲッターロボの残骸に宿っていた思念が私とブリット君を襲って来たんです。苦しくて、痛くて、どうして選んでくれなかったって絶望感に押し潰されそうになった時に龍虎王が助けてくれたんです」
「そして、彼らはこの世界を守る為、そして進化の使徒が誤った道に進まぬように、俺達と一緒に戦うと言ったんです」
進化の使徒――それはアルフィミィと名乗るアインストも何度も口にしていた。それが意味する物はただ1つ武蔵に他ならない……。
「選ばれなかった者、皇帝……全く意味が判らないでありますね」
ラミアがそう呟いた時、残骸のゲッターロボのコックピットから這い出るようにシキシマが姿を現した。白衣はオイルなのか、血なのか判らないが赤く染まり、その顔にもべったりと赤い何かが付着している、それでもシキシマの目は歓喜に揺れていた。
「そうでもないわい、ゲッター線は進化を司る意思の放射能じゃ、つまりこの残骸は選ばれなかった。不合格、出来損ないと断じられたのじゃ」
冷酷に、しかし楽しそうに言うシキシマの目には狂気の光が宿っている。
「出来損ないとは……それだけの数のゲッターロボがですか?」
確認されているだけで45機のゲッターロボが確認されている。それだけ不適合だと言うのですか? とキョウスケが問いかける。だがシキシマは返事を返さなかった。
「先にエリの話を聞け、ワシの話を聞きたければ武蔵からの連絡を待つんじゃな、そもそもあやつの話を聞かねば偉そうに話も出来ん」
「そんなことを言うけどシキシマ博士。貴方が武蔵と話をしたいだけじゃないの?」
格納庫に入ってきたエリの問いかけにシキシマはにっと欠けた歯を見せ付けながらにやりと笑った。
「当たらずとも遠からず、じゃがワシのは独学、やはりゲッターロボを知る武蔵と話をせんとまともに話す事も出来んよ」
蚩尤塚に現れたゲッターロボについては謎が余りにも多すぎる。シキシマもある程度の考察は出来ても、それが真実とは言えず。更に言えば自分の不確かな話で先入観を与える事も出来ないというシキシマの話も一理ある話でひらひらと手を振り、カランカランと下駄を鳴らしながら歩いていくシキシマにキョウスケ達は掛ける言葉は無く、超機人の分析をしていたエリとカークも止めるつもりが無いのか無言でシキシマを見送っていた。
「さて、随分と待たせてすまなかったな、簡易的だが龍虎王と回収したゲッターロボの解析結果が出た。アンザイ博士」
「はい、ではまずなのですが、龍虎王が姿を見せた段階で既に龍虎王は大破寸前であり、今の姿はグルンガスト参式のパーツを取り込み、
新しく自分達を再構築した姿となるようです」
「つまりそれはあの龍虎王は本来の龍虎王とは違うと言うことなのですか?」
リオの問いかけにエリはなんと言えばいいのでしょうかと言葉を濁した。
「本来装備していた物と同じ物をグルンガスト参式から龍虎王は作り出し、破損していた箇所を丸々それに置き換えているのです」
「じゃあ虎龍王の右手から出てきたドリルは……」
「恐らくだが、参式のドリルブーストナックルだな。目に見えない箇所になるが、センサー類などもその大半を龍虎王はグルンガスト参式から補っている」
エリとカークの説明は恐らくや多分という形が多く使われていた。
「んーそれってコリューちゃんはそこまでボロボロだったってこと?」
「自己修復機能を有し、かなりの時間を掛けても尚修理が出来ない損傷を受けていたのは間違いありません。それと龍虎王にとってグルンガスト参式はとても都合の良い機体だったというのもあると思われます」
都合の良い機体というエリの言葉にキョウスケ達は眉を顰めた。龍虎王という規格外の特機を手に入れた変わりに、グルンガスト参式を失ったのはキョウスケ達にとっては決して良い話ではない。
「誤解させてしまったかもしれませんが、龍虎王はその名の通り龍と虎の超機人が合体した物です。貴方達には余り面白い話ではないかもしれませんが……恐らく百鬼帝国の龍虎皇鬼は龍虎王を元にした百鬼獣と言う事になると思われます」
「待て待て。なんで百鬼帝国が超機人を知ってるんだ? 旧西暦にもいたのか? じゃあなんで武蔵は超機人を知らないんだ?」
カチーナの問いかけは至極真っ当な物だった。超機人が地球の危機に立ち上がる巨人ならば、恐竜帝国、百鬼帝国の脅威の際に立ち上がっていてもおかしくない。そう考えれば武蔵だって超機人を知らなければ話が繋がらない。
「それに関してだが、かつての超機人の操者の子孫――それがアーチボルド・グリムズだったそうで、超機人の話も知っていたようだ。恐らくあいつからの情報を元に百鬼帝国も超機人を欲していたのだと思われる」
ヒリュウ改が現れると同時に逃げた漆黒のゲッターロボはリクセントに現れた物に間違いが無く、武蔵の生きていると言う発言が真実だった訳だ。
「百鬼帝国が超機人を知ってる理由は判ったぜ、じゃあなんで旧西暦で超機人は現れなかったんだ? 話が噛み合わないじゃねえか、それともなにか? ゲッターロボがいるから自分達は目覚めなくて良かったとでも言うのか?」
「恐らく戦える状態に無かったのでしょう。それに関しては私ではなく、シキシマ博士の方が詳しいと思います」
ゲッターロボと超機人の因縁は思ったよりも深く、そしてそれでいてキョウスケ達の理解を大きく超える話であり、ハガネの武蔵と連絡が繋がるまでは、一切謎のままという事だった。
「龍虎王はこう言ってました。吾の目覚めは、的殺の彼方か羅喉神が迫る証とならん。然るに、吾が使命はその使者たる百邪を退け、人界を護る事となり、そして今代の進化の使徒が誤った道へ進まんとした時、それを止める事なり……って」
クスハの言葉は龍虎王と明確な意思疎通をしたと言う証だった。その言葉を聞いてタスクがブリットに視線を向けた。
「じゃあ、ここであーだこーだ話をしてないで直接龍虎王に聞いたらどうなんだ?」
当事者というにはおかしいかもしれないが、龍虎王に聞けば判るんじゃないか? というタスクの意見は真っ当な物だった。
「いや、それがなんだな……うーん、なんて言えば良いんだ?」
「コックピットが参式と違ってて乗り込みにくいから無理だったりする?」
浮かない顔をしているブリットにリューネがそう尋ねた、コックピットに入れないから困っている。そう考えるのは普通の事だが、ブリットは首を左右に振った。
「コックピットは参式と大差が無いんだ。むしろ参式のままって言っても良いと思う」
「私の方も同じなの」
龍虎王のコックピットがグルンガスト参式と同じと聞いて、格納庫にいた全員の顔に困惑の色が浮かんだ。
「私達、 参式のコックピットブロック事龍虎王に取り込まれたみたいなの、だから同じなんだと思うんだけど……ハミル博士。そこはどうなんですか?」
「そうだな、参式のT-LINKシステムを始めとする各種システムが、龍虎王と融合している。元からそうであったとでも言うレベルでな」
「融合って……クスハ、ブリット、貴方達は大丈夫なの? どこか異常はないの?」
融合と聞いてリオがカークの説明を遮ってブリットとクスハの身体の調子を尋ねる。
「ああ。 さっき検査を受けたんだけど……疲労してるぐらいで特に問題はないって」
「じゃあクスハ汁の出番だな、10時間ここに残るんだから飲んで気絶して回復しとけ」
疲労だけならクスハ汁を飲んで気絶しておけと言うカチーナの言葉に格納庫に苦笑が広がり、汁といわれたクスハはなんとも言えない表情を浮かべる。
「んんッ、話を戻すが龍虎王は 過去の戦闘で操縦席に当たる部分を破損していたのかも知れん、そしてグルンガスト参式は2体合体であり、龍虎王と身体の構造も似ていた。だから取り込んで自身の修復に利用したのだと思われる」
コックピットを失っていた龍虎王と、コックピット以外の部分が中破していたグルンガスト参式は確かに互いの欠損部分を補うという意味もあってエリの都合が良かったという言葉に繋がったのだろう。
「それなら早く聞いてみてくれよ」
「いやそれがなマサキ。俺もクスハもそうしようと思ったんだけど……龍虎王は何も言ってくれなくてな……」
龍虎王が黙り込んでいるとブリットが困ったように返事を返す。
「ですが、話は聞いているのである程度は推測は出来ますよ。まずは……」
エリがクスハとブリットから聞いた話を詳しく解説しようとした時格納庫にブリッジからの報告が響いた。
『ハガネと連絡がつきました。各員、及びアンザイ博士達はブリーフィングルームへと向かってください。繰り返します、各員とアンザイ博士達はブリーフィングルームへ向かってください』
ユンからの連絡にエリは少し肩を落としたが、その顔には笑みが浮かんでいた。
「武蔵と話をするのは私も楽しみにしていたんですよ、行きましょう」
行きましょうと言いつつ、ハイヒールとは思えない速度で格納庫を出て行く姿に苦笑しながら、キョウスケ達もブリーフィングルームに向かって歩き出すのだった……。
蚩尤塚でゲッターロボが複数体発見されたという報告がヒリュウ改からあり、アビアノ基地に向かっている途中のハガネとシロガネは緊急会議を開き、武蔵を含めたパイロット達は皆ブリーフィングルームに集まっていた。そして緊急会議が始まってすぐ武蔵が声を上げた。
「敷島博士!? あんた生きてたのか!? タワーと一緒に吹っ飛ばなかったかッ!?」
ヒリュウ改のブリーフィングルームを写しているモニターに姿を見せた老人に武蔵が腰を上げ、震える指先をモニターに向けてそう叫んだ。
『はっは、ワシはそんなにご先祖に似ておるか、シキシマじゃ』
「え? まじで敷島博士じゃない? タワーでぶっ飛んで、こっちにタイムスリップとかしてない?」
『してないしてない、まぁゲッターロボを研究しておって刑務所にはぶち込まれておったがな』
笑えない話を笑いながら言うシキシマにブリーフィングルームにいる面子はドン引きするが、シキシマは笑ったままだ。
「しかし本当にてるなあ……瓜二つだぜ。歯の抜けてる具合とか、ハゲ具合とか……」
『ふむ、1つ聞きたいのだが、ワシのご先祖様の喜びを知っておるか?』
「あん? 自分の作った武器で惨たらしく死にたいだろ? 確か腸をぶちまけて、顔が半分つぶれて、脳味噌が全部出てる人が人とも思えない姿で死にたいとか言って、爬虫人類に捕まったときにさぁ殺せ! すぐ殺せとか叫んでたってリョウに聞いてる。まぁそんときゃオイラも腹に風穴開いてるのにゲッターに乗ろうとしてたから良い勝負だと思うけど」
『うむうむ、判る。ワシも死ぬならそんな感じが良い、それにお前も良い根性しとるな』
ドン引きしている上に更にドン引きが重なり沈黙だけが広がる、と言うか旧西暦の人間の感性が新西暦の人間からすれば異常だった。
「……やっぱりあんたタイムスリップしてね? オイラにゃ、あんたが敷島博士にしか思えないんだけど」
『はっははっ! 違う違うワシはちゃんと新西暦の生まれじゃよ。それでゲッターロボのパイロット、巴武蔵に聞く。エリ、あれを』
シキシマの指示でエリがモニターに写真を写す。
『これは蚩尤塚で出現したゲッターロボですが、思い当たる節はありますか?』
ボロボロでからだのあちこちが不完全なゲッターロボの姿はハガネやシロガネのリュウセイ達から見ても亡者という印象が強かった。
「ゲッターロボの墓場の奴に似てますね」
『あん? ゲッターロボの墓場? んなもんがあるのか武蔵』
墓場と聞いてカチーナが声を上げ、武蔵がゲッターロボの墓場についての説明を始める。
「そもそもオイラの乗ってるゲッターだって何代目かなんて判らないですし、しかも前にオイラが乗ってた奴だってそれこそ何百人って人間を再起不能にしながら作ったもんですしね。ゲッターロボは放射線で動いてるから、それが抜けるまで地下で放置してたんでゲッターロボの墓場なんすよ。夜に行くと人魂みたいにゲッター線がぼわーって出てですね。まぁ幽霊みたいで怖いっつうんで誰かが墓場って言い出して、そこからずっと墓場呼びですよ」
残骸のゲッターロボからゲッター線がこぼれ出る光景は確かにお化けのように見え、心霊現象が苦手な物にとっては悪夢だろう。現にその光景を想像した何人かが嫌そうな顔をしている。
『ゲッターロボの墓場か……何故そんなものが……とりあえず探ってみるのもありか?』
「それは待った方が良いですね。前に浅間山の地下で早乙女研究所の一部を発見しましたけど、鬼とか爬虫人類の生き残りがいたんで、下手に近づいたら死にますよ」
軽く死ぬと口にした武蔵だが、その目は真剣そのものだった。
「レフィーナ中佐、地下へ続く道は埋めておいてくれ。最悪武蔵がいればその場所を探す事も出来る」
『了解です』
『待て待て、そんな勿体無い事を「ふんッ!」うぐうっ!……失礼しました、私達の方も埋める事に納得です』
シキシマが納得していなかったが、エリのボデイで沈み、LTR機構としても地下へ続く道を封鎖することで話は纏まった。
『地上に這い出たゲッターロボはどうなっていますか?』
『リー中佐。それに関してですが、皆機能停止状態です。ゲッター炉心も機能を停止しており、再起動はありえないと思えますが……武蔵君としてはどうですか?』
「そうっすねえ……取り外せるなら炉心外しちゃった方が良いと思いますよ。どれくらい地下にあったのか判らないですけど、ゲッター線がどんな影響を与えるか判らないですし……」
「そうはいうがな武蔵。外せるのか?」
『ああ、それに関しては問題ないぞ、カザハラの倅。ワシが分解できる』
シキシマの分解できるの発言に驚きが広がり、シキシマの隣のエリも驚きを隠せないでいた。
『本当ですか?』
『カカカ、新西暦で1番……いや、ビアンがいるから2番かの、ワシとてゲッターロボの研究を伊達にしている訳ではないぞ。ただそうじゃな……絶対とは言えんし、武蔵のゲッターロボの解析データ。それを回してくれるかの?』
「強かだな、シキシマ博士。良かろう、ワシの権限で2機分のデータを送ろう。それで分解を頼めるか?」
ダイテツの言葉にシキシマはにいっと今まで見てきた中で1番楽しそうな笑みを浮かべた。
『任せておけい。炉心は確かに勿体無いが、どうせ使い物にならんのだ。ゲッター合金を大量に入手できたと思えば、御の字じゃろ』
どの道ゲッター炉心はゲッターロボの規格で作られているので、今のままでは使えない。そう思えばゲッター合金が手に入っただけで御の字と考えるべきだ。
『それよりも武蔵、皇帝って言うゲッターロボを知ってるか?』
「皇帝? ブリット、なんだそりゃあ?」
『いや、龍虎王がな……皇帝に選ばれなかった者達の骸と言っててな』
『あと、皇帝に選ばれた進化の使いに目を止められる事を願っているって』
ブリットとクスハの話を聞けば進化の使いは武蔵と考えるのが普通だ。だが武蔵は皇帝と呼ばれるゲッターロボを知らないと首を振る。
「真ドラゴンなら知ってるけどなあ……」
『龍帝と共に戦ったとも言ってたぞ?』
「龍帝? いやありゃあ化けもんだぞ、こうでっかい奴に蛇みたいな感じで胴があって、翼と腕と頭で……こんな感じ」
武蔵が真ドラゴンをざっくりと書いてリュウセイ達に見せる。
「いや、へたくそが過ぎないか?」
「そうか? 特徴は捉えてると思う」
「これで?」
「それで」
楕円形の胴体から伸びた細長い胴、筋肉質な胸部と太い両腕と赤い翼――武蔵の書いた真ドラゴンを見たハガネ、シロガネ、ヒリュウ改のメンバーの感想は1つだった。
「『「化け物だな」』」
「どう見ても龍帝って感じじゃないわな」
「普通にどう見ても敵」
『コリューちゃん何か間違えてない?』
『だな……』
これが龍帝とか言われてもいやないわというレベルだと全員が口にする。
「なんか進化を間違えたとか言ってたけど、龍帝って言うのが本当の意味で早乙女博士の作った真ドラゴンなのかもしれないけど……」
『判らないって事か』
「そうなるな、と言うかオイラの知らないゲッターの方が多いんだぜ?」
だから言われても判らないと武蔵はきっぱりと告げ、龍帝、皇帝というゲッターに関しては謎のままとなった。
「こちら側で確認されたロスターはそちらでは出現したか?」
『いえ、こちら側では出現していません。ですが変わりにアインストがゲシュペンスト・タイプSとR-SWORDを模した個体が出現しました』
ゲシュペンスト・タイプSとR-SWORDを模したアインストが出現したとレフィーナは口にし、武蔵に視線を向けた。
『連絡を取れたりしませんか? 武蔵さん』
「んーうーん……」
『無理に話をしたいと言う訳ではない、ただ大佐達がアインストに寄生されていないかそれを知りたいだけだ』
1度カーウァイとイングラムの話を聞きたい、あるいはアインストに寄生されていないのかそれの確認を取りたいとギリアムにも言われれば武蔵はNOとは言えず、Dコンを取り出した。
「一応聞いて見ますけど、駄目って言われたら知りませんよ?」
そう前置きしてから武蔵はDコンのスイッチを入れる。
『どうかしたかね? 武蔵君』
「あービアンさん。ちょっとこっちでトラブルで浅間山の地下、覚えてます? あんな感じでゲッターロボが沢山出現したんです」
『それは確かに問題だな、それで場所は?』
「蚩尤塚です。後シキシマ博士とアンザイ博士って言うLTR機構の人もヒリュウ改と一緒です」
武蔵の報告を聞いたビアンは考え込むような反応を見せる。
『了解した。後でこちらで調査をしよう、ほかには?』
「なんかアインストがゲシュペンスト・タイプSとR-SWORDを真似ていたみたいで、寄生とかされてないか声を聞きたいって言ってるんですけど……カーウァイさんとイングラムさんと話は出来たりします?」
『それはハガネのメンバーもかね?』
ビアンの問いかけに武蔵がそうですと返事を返し、ビアンが返事をするよりも早く若い男の声が武蔵のDコンから響いた。
『そこまで状況が動いていればだんまりもしてられん』
『そうなるな。声だけになるが私達も参加させて貰おう、それに武蔵じゃ理解出来ていない話もあるだろうしな』
姿を晦ましていたイングラムとカーウァイの2人の声がハガネ、シロガネ、ヒリュウ改のブリーフィングルームに響くのだった……。
武蔵から生きていると聞いていても実際にその声を聞くかどうかでは全然違う。
「イングラム教官……生きて……生きてたんだな」
『その声はリュウセイか、ああ、何とかがつくが生きている。色々とお前達も言いたいこと、聞きたい事があるだろうが、俺達もそれほど時間がある訳ではない、手短に話をするぞ』
感動の再会をする時ではないと一蹴するイングラムに紛れも無くイングラムだとイングラム・プリスケンという人物を知る者は確信した。どこまでも冷静で、そして感情任せではない、その声を聞けばイングラムだと確信した。
「とりあえずこれだけ言っとくぜ少佐。顔を見せたら面貸せよ?」
『イルムか、覚えておこう。それと話を聞いていたが、俺達の機体を模したアインストは恐らくだが、この世界のアインストではない』
『武蔵から聞いていると思うが旧西暦の後に我々は未来の平行世界へ飛んでいる。そこで我々は何度もアインストと戦っている、その中で我々をコピーしたと見て良いだろう』
未来へ飛んだと聞いてヒリュウ改のブリーフィングルームに腰掛けているラミアはその顔を青くさせた。
「どしたの? 大丈夫ラミアちゃん」
「エクセ姉様……え、ええ。大丈夫でありますことですよ?」
大丈夫と口にしつつもラミアの声は震えていた、甘い武蔵と違い、イングラムとカーウァイは自分の事を口にするかもしれないと言う事に恐怖し、そして脅えていた。だがラミアにとっての幸運はラミアというWナンバーズがいると言うこと、そしてアンジュルグを知っているがラミア個人を武蔵達が知らないと言う事にあり、慎重な性格かつシャドウミラーの本格的な動きを把握していないイングラムとカーウァイがラミアを捜そうとしない事にあった。
「未来と言えば……ベーオウルフ。この名前に聞き覚えはないか?」
「ちょっと、キョウスケ」
「黙っててくれ、答えてくれ。イングラム少佐、カーウァイ大佐」
真剣な、それこそ鬼気迫る様子のキョウスケに誰も口を開けず、イングラムが小さな溜め息を吐いた音がした。
『武蔵から聞いてないのか?』
「言ってるわけ無いでしょうが、オイラみたいな馬鹿が説明出来ると思いますか?」
自分に視線を向けられ、武蔵が万歳をし頭を下げた。
「オイラは馬鹿だから上手く説明出来ないから黙ってたし、そうはならないと思ってたってのもある」
余計に混乱させたら悪いしと武蔵は口にし、イングラムとカーウァイにお願いしますと言ってパスを投げた。
『そもそも私達の行った未来というのは確実にこの世界の未来に繋がるものでは無いとだけ言っておく、まずは大前提として未来ではエアロゲイターは出現しておらず、インスペクターが先だった。そしてこの場で生きてる者が死んでいたり、その逆も然り。ありえるかもしれないIFとだけ思っておいて欲しい、判ったか? キョウスケ中尉。我々の話は絶対ではない、それを胸に刻み、そしてそれに囚われないと言うのならば話そう』
「……お願いします」
ビースト、そしてべーオウルフ――それを知らなければ前に進めないキョウスケは話を聞かせてくれと頼んだ。
『判った、まず我々はアインスト、そしてインベーダーが蔓延る荒廃した大地で生き残る為に連邦のある特殊部隊と行動を共にしていた』
シャドウミラーの名前がされるのではないかとラミアは目を泳がせ、小さく震えながら耳を塞ぎたくても塞げば怪しまれると、硬く膝の上で拳を握り平常を必死で取り繕っていた。
『部隊名は言えん』
「言えない? それはどういうことだ?」
『その声はダイテツ中佐ですか……我々、武蔵、カーウァイ、そして俺の3人は記憶の欠落があるからです』
記憶の欠落と聞いてブリーフィングルームにざわめきが広がる。
「武蔵様は大丈夫なのですか!?」
「あーうん、大丈夫大丈夫」
「本当ですか!? 隠していたりしませんか?」
『記憶の欠落……大丈夫なのですか? カーウァイ隊長』
『その声はカイか、ああ、特に支障のある物ではない。私達が失っている記憶はある特定の物に関するもので、未来で協力していた部隊名も関係している。私は良く判らないので、イングラムに代わる』
『世界の修正力――世界を超えるという事はデリケートなことだ。そして世界にはある程度の定められたレールがあり、それを大きく逸脱することは出来ない、そう、それが未来では協力していても、この世界では敵同士であったとしてもだ』
「え? 協力してたのに?」
『敵になるって判ってるのになんでだよ?』
イングラムの言葉に困惑が広がるがギリアムとリュウセイだけは驚きが少なかった。ギリアムは経験していたから、そしてリュウセイはアニメや漫画の設定でそういうものを何度も見ているから。
『タイムパラドクスという奴か?』
『かなり近いが、実際には少し違う。要はその部隊が起すであろう騒乱は世界によって認められていると言っても良い、ゆえに動き出す前に止める術を我々は持たないと言う事だ。俺もビアン達もそれを阻止しようと動いてはいるが、成果はほぼ0だ』
争いが、悲劇が起こるのに止めれないという事を知り、クスハやブリット達は顔を歪めるがイングラムの淡々とした口調が逆に、それだけ動いていると言うことの証明で、誰も口を開くことも文句を言うことも出来なかった。
『話を戻すぞ、その部隊と協力し、生き残る為にアインストと戦っている時にベーオウルフ、そしてゲシュペンスト・MK-Ⅲが何度も我々の前に立ち塞がった……そのパイロットは判っていると思うが、キョウスケお前だ。但し……アインストに寄生され、既に人間としては死に、アインストとして生まれ変わったお前だ』
イングラムの言葉にブリーフィングルームに嫌な沈黙が広がる。そしてベーオウルフというキーワードは何度もキョウスケ達は聞いていた。
「武蔵、お前が俺達の前に現れたとき、スレードゲルミルとウォーダンとの一騎打ちに応じたのは……」
「あの時までは忘れてた、直接的に会うか話をしないとオイラ達の記憶は戻らないのかもしれない、それに思い出したといっても名前だけで、こんな感じに喋ったよな程度の感じだ」
ライの問いかけに武蔵はそう返事を返す。覚えている筈なのに思い出せない、その感じはライ達には判らないものだったが、激しい焦燥感を抱かせるには十分だと判り、責めるような口調になってすまないと謝罪の言葉を口にした。
『この世界ではお前の役割はアルフィミィというアインストが行なっているようだが、囚われればお前はベーオウルフにされるかもしれない。アインストとの戦いは最大限の注意を払う事だ。そしてお前とベーオウルフは別人だという事を忘れるな。あくまでお前の1つの可能性、恨まれているのはアインストのベーオウルフ。連邦軍のキョウスケ・ナンブではない』
「……了解です。疑問が晴れました」
何故自分をそこまで危険視するのか、何故そこまで怨嗟を向けるのか、自分ではない自分が行なった悪逆なのだから、そこまで気を病む必要はないとイングラムはキョウスケを励ました。
『もう少し話をしたいところだが……不味い連中に見つかった。悪いが、今回はここまでだ』
『大丈夫なのか……親父』
『その声はリューネか、ふっふ、問題はない、ある程度追い払い我々も逃亡する。今度はこちらから連絡することもあるだろうが、極力通信は互いにとらないようにするべきだろう、ダイテツ』
「そうだな、今回は緊急時だったと言うことだ」
ビアンの偽物がノイエDCの総帥として動いているので通信をしていると判れば嬉々として反逆者に仕立てられることになるだろう。
『互いに気をつけることだ。この世界に蠢く悪意は想像以上に多く、そして根深いぞ』
『何れ道も重なる事もあるだろう、ギリアム、カイ。鍛錬を怠るなよ』
その言葉を最後に武蔵のDコンは沈黙し、クロガネとの通信は終わりを告げた。だが話し合うべき事はまだ山ほど残っており、ハガネ、ヒリュウ改、シロガネのブリーフィングルームでの話し合いはまだまだ終わりを告げる事は無いのだった……。
第115話 地獄門 その8へ続く
本当はここ出来るつもりだったのですが、まだまだ話が続きそうなので、ここで1回切って、次回半分は連邦サイド、残り半分はアースクレイドルの話にして次のシナリオに進んで行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い