進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第116話 隼と継ぎ接ぎ/撃ち貫け奴よりも早く その1

116話 隼と継ぎ接ぎ/撃ち貫け奴よりも早く その1

 

 

イングラムの生存が判りハガネの艦内の雰囲気は格段に良い物になっていた。武蔵から生きていると聞いていても、実際にその声を聞くのと聞かないのではやはり気持ちの持ちようが変ってくる。しかし、それとは別にリュウセイ達にはある不安と心配が生まれたのも事実だった。雰囲気は良くなったが、安易に考える事が出来ない問題がありトントンと言った所であった。

 

「大丈夫なのか? 武蔵」

 

「何が?」

 

「記憶の欠落って言ってたけどよ……」

 

アビアノ基地に帰還し、次の反攻作戦の準備をしている間の僅かの休息の時間にリュウセイが武蔵にそう問いかけた。食堂という場所もありピリッとした雰囲気が一瞬広がるが武蔵はその雰囲気を無視して話を始める。

 

「うーん、実際問題オイラにゃどれくらいの問題かわからんからなあ」

 

「自分の記憶なのにか?」

 

「自分の記憶だから余計に判らんのだよなあ……服も着れるし、飯も食える。んで文字もかけるし喋れる……実際何処か問題があるように見えるか?」

 

「強いて言えば馬鹿だ、もう少し考えろ」

 

問題があるか?という武蔵の問いかけに、コウキの間髪入れない馬鹿の発言にぶふっとあちこちで噴出す音が響いた。

 

「それは前から変らんぞ?」

 

「少しは物を考えろ言っている。脳味噌まで筋肉か貴様は」

 

「オイラだけじゃなくて多分リョウも、あと頭いいけど多分隼人も同じだと思うけど」

 

そういうことじゃないとスパーンっと武蔵の頭を叩くコウキ。全く意図して無いのだがボケとツッコミで武蔵とコウキのやり取りは一種の漫才のようになっていた。

 

「ははッ!何馬鹿やってんだか。まぁ問題がないなら良いんだ」

 

「いやあ、心配してくれてありがとうございます。でも、本当に欠落してるといっても実感が無いんですよね。例えるなら幼稚園とか小学校の時とかの記憶に似てるってカーウァイさんは言ってましたし」

 

「なんとなく判るような例えだな。覚えてはいるが鮮明には思い出せんって所か?」

 

幼い時の記憶は鮮烈に脳裏に焼きついているが、詳細はあやふやで大きな衝撃を受けた所がしっかりと脳裏に焼きついている。覚えてはいるが、ぼんやりとしか思い出せない。

 

「なんとなく判るような気がするわね」

 

「確かにな、判りやすい例えだ」

 

記憶の欠落と聞くと深刻そうに思えるが、そうではなく幼い時の記憶と例えられると判りやすいとヴィレッタとユーリアも同意する。

 

「リュウセイ、そろそろ時間」

 

「あ、おう。武蔵行こうぜ」

 

「おー、茶だけ飲むから少し待ってくれ」

 

手にしていた湯呑みの中のお茶を飲み終え、武蔵とリュウセイが揃って席を立つ。

 

「ん? どこか出かけるのか?」

 

「いえ、違いますよイルム中尉。アラドとアイビスのトレーニングに付き合う約束なんです」

 

「あーそういうことか。俺も書類整理が終わったら合流するわ」

 

ライの言葉を聞いて休憩は終わりでそろそろ仕事を再開するかと呟き、イルムも席を立つ。

 

「エキドナの事で何か判ったら連絡する」

 

「すいませんユーリアさん、よろしくお願いします」

 

ロスターの声を聞いてから意識不明のエキドナの事を武蔵は心配していたが、お見舞いが禁止となっているのでユーリアに何か判ったら教えてくださいと頼み、武蔵はリュウセイとライと共に食堂の入り口の所で待っているラトゥーニの元へと歩き出す。

 

「コウキは行かないのかしら?」

 

「俺はラドラの依頼でヒュッケバイン・MK-Ⅲのボクサーパーツの再設計をやらねばならないし、自分の機体の調整もある。アイビスはツグミが見てくれるから問題はない」

 

コーヒーを片手にコンソールを叩くコウキに動く気配は無いのを見てヴィレッタも席を立つ。

 

「待て、アラドの訓練なら俺が見てくる」

 

「カイ少佐…良いんですか?」

 

「俺が預かると言ったんだ、面倒を見るのは当然の事だ。ついでにリュウセイの訓練も見てくるとしよう。そのかわり搬入されてくる修理のパーツや機体の確認を頼む」

 

「了解です。ではリュウセイをよろしくお願いします」

 

サマ基地奪還作戦の為に僅かに与えられた休息だったが、地球圏に次々に現れる数多の未知の敵の出現にカイ達は気を緩めることは無く、新たな戦いに備え準備を始めていた。

 

「そうですか……お見舞いは出来ないのですね?」

 

「すいませんシャイン王女」

 

「いえ、先に確認してから来るべきでしたわ。エキドナさんが目を覚ましましたら教えてくださいませ」

 

医務室にエキドナの見舞いに来ていたシャインだが、ラーダに駄目だと言われ少し肩を落として歩き出したのだが、武蔵が訓練しているのを思い出し、タオルやスポーツドリンクを準備する事に思い至ったのか満面の笑みで歩いていく。その後姿が見えている間はラーダは笑みを浮かべていたが、その姿が見えなくなると深刻な表情で医務室の中に戻った。

 

「……」

 

昏睡状態のエキドナの呼吸は弱く、耳を澄まさなければ呼吸の音は殆ど聞こえず、そして胸の膨らみも少ない事、そして寝返り1つ打たないその様子は死体と言っても大差は無かった。それでもモニターから聞こえるピッピッピっと言う音がまだエキドナが生きているという証でもあった。

 

「目覚めない理由が判らない……やはり彼女は目を覚ましたくないの?」

 

1番弱っていたシャインでさえも、今は元気でスキップをするほどだ。彼女よりも健康体のエキドナが何故目覚めないのか、その理由はラーダには1つしか思い当たらなかった。エキドナは目覚めたくないから眠り続けているのだと……事実、特脳研で同じ様な人間を見てきたラーダにはそれがすぐに判った。では、何故目覚めたくないのか……ラーダはある推測に辿り着いていた。

 

「もしかすると彼女は……」

 

武蔵、イングラム、カーウァイの3人が告げた平行世界の連邦軍の関係者なのではないか? そして武蔵達はそれを知らずに保護してしまったのではないか? そして今も目覚めないのはロスターからの干渉が切っ掛けで記憶を取り戻そうとしているからではないか? 根拠も証拠もない、だがラーダはその優れた直感で限りなく正解へと辿り着いていた。それをダイテツとリーに相談するべきかと悩むラーダは格納庫からの呼び出しコールによって思考の海から引き上げられた。

 

『ラーダ。悪いのだけど少し調整を手伝ってくれないかしら?』

 

「ラドム博士……はい、判りました。今行きます」

 

武蔵だけではなく、イングラムとカーウァイも大丈夫と判断しているのならば、きっと思い過ごしかロスターの脅威を見て考えすぎているのかもしれないと思いラーダは首を振り、医務室を後にするのだった……。

 

 

 

 

 

シミュレータールームのモニターを見ながら武蔵はスポーツドリンクを口にする。その隣ではリュウセイが頭にタオルを被せてぐったりとした様子でスポーツドリンクを飲む気力も無い様子で項垂れ、少し離れた椅子の上では乙女として許されない白目を剥いたままアイビスが寝ており、ツグミに看護されていた。

 

「もう1本用意してますが、お飲みになりますか?」

 

「ん?いや、良いよ。ありがとシャインちゃん」

 

武蔵とリュウセイとアイビスでは根本的なスタミナが違う。2人がグロッキー(片方瀕死)でも武蔵にはまだ余裕があり、汗も出ていない。

 

「いえ、訓練をしていると聞きましたので、それにしても武蔵さんは平気そうですね?」

 

「そりゃなあ、この程度でダウンしてたらゲッターのパイロットなんて出来ないし」

 

この程度じゃないだろと言いかけたリュウセイだが口を開くのも辛い様子で、スポーツドリンクのストローを咥えるに留まった。

 

「大丈夫リュウセイ?」

 

「……むり」

 

「ちょっと横になったほうがいいかも」

 

おろおろと看護の準備を始めるラトゥーニを見て、武蔵は席を立った。

 

「ここで寝かせりゃ良いさ、オイラはまだ元気だし」

 

「……わり」

 

「気にすんなよ、シャインちゃんはどうする?」

 

「武蔵さんが行くなら私も行きますわ」

 

自分の後をついて歩いてくるシャインに武蔵は苦笑しながらモニターの前で腕組しているカイに声を掛ける。

 

「アラドの奴はどうですかね? カイさん」

 

「かなり有利な対面に設定しているが思うようには攻め切れないな」

 

アラドがシュミレーターで使っているのはアルトアイゼンで、対戦相手のライはパワードパーツの無いR-2を使っている。

 

「んー誘い込まれてる感じですかねぇ」

 

「判るのか?」

 

「それくらいなら判りますよ。R-2というかライは射撃が上手いですからね、距離を開けられると不利と思ってアラドの奴焦ってますね」

 

アルトアイゼンの装備を考えれば遠距離特化のR-2にヒット&アウェイをされると遠距離から削られる。それなら接近戦特化のアルトアイゼンで間合いを詰めるのは当然の策略だが、ライがそれを予想しない訳が無い。

 

『こいつで貰ったッ!行けッ!!リボルビング・ステェェェクッ!』

 

一歩で最大速度になったアルトアイゼンが紅い流星となりR-2に迫る。

 

「これは決まりですかね?」

 

「いやあ、早いな。焦ってるから目に見えてる隙に食いついちまった」

 

シャインの意見に反して武蔵は駄目だなと呟き、その次の瞬間にはR-2が急速反転しリボルビングステークをかわす。

 

「あっ……」

 

「な、言っただろ?シャインちゃん。でもこれでアラドの奴は負けだなあ」

 

完全に命中したと思っていたシャインは驚き、武蔵が負けだなと呟き、R-2から放たれたミサイルで脚部を破壊され、追撃に放たれたビームチャクラムが右肩から左足を斬る様に振るわれシュミレーターが緊急停止した。

 

「バカモンッ!相手との間合いに気をつけろと何度言ったら判るッ!!これで5度目だぞッ!!」

 

流石のカイもRー1、アステリオン、ゲシュペンスト・リバイブ、ゲシュペンスト・MK-Ⅲ、R-2と5連戦で同じ結果になっているのを見たら声を荒げる。

 

「す、すみません!」

 

ぺこぺこと頭を下げるアラドを見て武蔵がカイとアラドの間に入る。

 

「まぁまぁ落ち着いてくださいよ、カイさん」

 

「武蔵…だがなぁ?」

 

「まぁ確かに負けは負けですけど、大分立ち回りは上手くなってるんじゃないですかね?オイラはPTに乗れないから見るところ違うかもしれないですけど」

 

怒鳴るだけ、叱るだけじゃ駄目だと言いたげに目配せをする武蔵にカイはふうっと溜め息を吐いた。

 

「確かにその通りだ。だがな、それだけでは足りない」

 

「……具体的に何が足りません?」

 

シュミレーターから顔を出したアラドがシュミレータールームの奥の方を見ないようにしながらカイに声を掛ける。

 

「大丈夫?」

 

「……大丈夫だと思う、やっぱR-1でゲッターロボとシュミレーターでも戦うってのが無理だったかもしれない」

 

ベンチに横になり、顔にタオルを乗せているリュウセイとその近くに腰掛けているラトゥーニを見て、なんかやるせない気持ちになっているアラドではあったが、改善点を知りたいと言うのは紛れもない本心だった。

 

「そうだな、お前の場合はあの戦い方が身体に染み付いてるようだ。まあそれはファルケンのタイプKに乗ってる段階で薄々感じていたが……な」

 

「……なんかすんません」

 

カイの教導によって大分改善されて来ているが、元々のアラドのスキルが接近戦特化。射撃や牽制のスキルが余りにも未熟すぎるのがカイの頭を悩ませている原因だった。

 

「格闘戦が得意ならそれに全振りすれば良いんじゃないですか?」

 

「武蔵ならそれでも良いが、PTでは駄目だ」

 

「そういうもんか」

 

「そういう物だ」

 

ゲッターロボのような特機ならば話は別だが、PTではそれは出来ない。幾ら白兵戦特化だとしても、バランスのいいスキルが必要とされる。

 

「カイ少佐、アラドのトレーニングは1回落ち着きましたか?」

 

「ラーダ? どうかしたのか?」

 

「はい、ラドム博士とビルガーが到着したのでそれにアジャストを行ないたくて、まだ訓練中でしょうか?」

 

ラーダの言葉にカイは少し考え込む素振りを見せた後に頷いた。

 

「アラド、ビルガーの調整に参加して来い、訓練はその後だ。ビルガーのシュミレーターのデータを忘れずに貰って来い、それを忘れたら俺と武蔵と組み手だ」

 

「りょ、了解っす」

 

最も地獄の訓練と言われている武蔵とカイとの組み手…それを続けてやると聞かされてアラドは青い顔でラーダと共にシュミレータールームを出て行く。その背中を見ながらカイとライは今後のアラドの訓練の方向性を話し合っていたのだが、武蔵の一言で弾かれたように顔を上げた。その一言とは……。

 

「マリオンさんとラルちゃんがそんなまともなもの作りますかね?」

 

どれだけカイとライがまともにアラドを育てようとしていてもマ改造と呼ばれる頭のおかしい物を作る開発者とその頭のおかしい開発者の弟子……頭おかしいの二乗はどう考えてもまともにならないのではないか? と言う事に考え付いたのだ。

 

「「……ちょっと見てくる」」

 

「いってらっしゃい?」

 

ファルケンにとんでもない改造を施しているのならば、ビルガーも同じかもしれない。カイとライは慌てた様子でシュミレータールームを後にし、武蔵はひらひらと手を振りカイとライを見送る。

 

「訓練多分終わりだと思うけど、シャインちゃんはどうする?なんもないならオイラ昼寝するけど」

 

その言葉にシャインはばっと顔を上げ、まだベンチでダウンしているリュウセイとラトゥーニの元へ足を向けた。

 

「何かゲームを持ち込んでいるのですわよね?」

 

「ん、ああ。持って来てるけど?」

 

リュウセイの返答を聞いてシャインは笑みを浮かべ武蔵へと振り返る。

 

「ゲームをやりましょう、武蔵さん」

 

「ゲーム……ねえ?オイラゲームとかやったこと無いけどなあ」

 

そもそも旧西暦にゲームは余り流通していなかった、強いて言えばゲームセンターくらいで武蔵の地元は北海道なのでそういう事をやった経験は殆ど無かった。

 

「そりゃ勿体ねえな。よっしゃ、なんか武蔵とシャイン王女でも出来そうなゲームを出すよ。アイビスはどうする?」

 

リュウセイの問いかけにアイビスの返事はなかった。と言うかまだ意識を取り戻していなかった……。

 

「アイビスの事はおいておいて良いわ、少し息抜きしてくるといいと思うわよ。折角休暇なんだしね」

 

休んでくると良いと言われ、リュウセイの部屋に武蔵、シャイン、ラトゥーニの3人で向かったのだが……。

 

「ん?んん?」

 

「どうすればいいんですの?」

 

「そこからかあ……」

 

コントローラーの持ち方が判らない武蔵とシャインにリュウセイは苦笑し、正しい持ち方を教えた後に初心者向けのパズルゲームをロッカーから取り出してゲーム機にセットするのだった……。

 

 

 

 

ハンガーに固定されているビルガーを見て、カイとライの2人は膝から崩れ落ちた。最初に設計された姿と余りにも違うその姿は既にマ改造されてしまっていた。

 

「遅すぎた…もう手遅れだ」

 

「どうするんですか……これ」

 

本来のビルトビルガーはビルトファルケンとセット運用を前提に設計されており、武装もファルケンにはない近~中の武装で整えられる筈だったのだが……。

 

「でけえブレードですね」

 

「ふっふっふ、ラルちゃんの傑作ネ! コールドバスターブレードッ! 重さで叩き切るのヨ! でもそのままだと携帯出来ないシ、重量がありすぎてまともに飛べないヨ!」

 

「欠陥品じゃねえかッ!?俺にこれに乗れって言うのか!?」

 

アラドのツッコミが出るのも当然である。武装を搭載したら飛べないとか本末転倒にも程がある。

 

「そこは分割するネ。背部ブレードウィングッ!! 体当たりで一刀両断ヨッ!!」

 

「……頭大丈夫っすか?」

 

「大丈夫ヨ?失礼ネ」

 

誰がどう見ても頭おかしいと思うのは当然であり、カイとライもアラドの言葉に賛同した。

 

「大丈夫ですわ。通常時は出力を絞ってますが、フルパワーモードならば問題なく利用出来ますわ」

 

「あ、それなら安心「ただし、フルパワーモードは外部装甲をパージするので被弾したら墜落ですわ」……出来るかあッ!!」

 

「ラドム博士…すまないが余りにもそれは酷くないか?」

 

さすがに我慢出来ずにカイがマリオンにそう声を掛ける。だがマリオンは心外だと言わんばかりの顔をし、ハンガーに固定されているビルトビルガーに手を向ける。

 

「アルトアイゼンとヴァイスリッターのデータを元にし、ノイエDCに強化されたファルケンの分析データを元に改造しておりますのよ?貴方のパートナーを取り戻すのに相手に追いつけないのでは話にならないのではありませんか?」

 

マリオンの言葉にアラドはハッとした表情を浮かべた。偵察の時に目の前で見たビルトファルケンは明らかにカスタマイズを施されており、ノーマルのファルケンと異なるパーツが幾つも見えた。アルブレードで完全に振り回されていたことを考えれば、同じ位の改造が必要なのではないか?と言う事に思い至ったのだ。

 

「しかしラドム博士……やりすぎではないだろうか?アラドの安全は確保出来ているのか?」

 

アラドが納得しかけているのでライが不味いと思いマリオンとラルトスにそう問いかける。

 

「んー心配ないネ。基本的にはビルトファルケンKと大差ないネ、むしろアーマーパーツ装着時はアルトアイゼンと同等の防御力が約束されている訳だシ、アーマーをパージしたら紙装甲でも当たらなければどうって事はないネ!」

 

「ビルトファルケンKをベースに開発してあるので問題はありませんわよ。後は細かい調整をすればそれで使用出来るはずです」

 

自信満々のマリオンとラルトスの後で死んだ目をしているラーダを見て、ライとカイは自分達が言おうとしている事は散々ラーダが口にし、そしてラーダの意見を一蹴したのだと判り、もう駄目だと天を仰いだ。

 

「この右腕の大鋏はなんすか?」

 

「これはスタッグビートルクラッシャーカスタムヨッ! ラルちゃんが昔作ったのを改造したのネ。荷電粒子砲とバリア発生装置をオミットしたかラ万能武器では無くなったけド!自信作ヨッ!」

 

なんだその頭のおかしい武器はという顔をカイ達がするが、アラドはすげえっと素直に喜んでいた。

 

「カスタムって事は強化されてるんですよね?荷電粒子砲とかオミットしてどこが強くなったんですか?」

 

「攻撃力ですわね。その気になればPTを持ち上げたまま飛ぶ事も出来ますし、持ち上げて地面に叩きつけることも可能ですし、何よりもPTを両断出来る切断力があります。後は放電させて捕まえる事で相手の機器類をショートさせて行動不能にする事も可能です」

 

「後はゲッター合金でコーティングしてるから盾としてもOKヨ。それにビルガーにはテスラドライブを搭載してるからブレードソニックブレイカーもOKヨ!」

 

子供のような眩しい顔で何アホみたいなことを言ってるんだ?格納庫にいる整備兵達も死んだ目になっている。

 

「なんで誰も止めなかったんだ……」

 

「遅すぎたんだ、頭の螺子がぶっ飛んでやがる……」

 

確かにこの基地にいる面子もブリットのゲシュペンスト・MK-Ⅲを突貫工事でSカスタムに改造した頭のおかしい連中だが、その連中から見てもビルトビルガーはとんでもない仕上がりだった。

 

「左腕は6連式スタンアサルトマシンカノンを搭載しております」

 

「スタンアサルトカノン?マリオン博士、なんだその武装は?」

 

聞き覚えの無い武装が搭載されているとカイがなんなのかと問いかける。

 

「スタッグビートルクラッシャー改の予備電流を左腕にも流せるようにし、高圧電流を射撃武器として発射出来る機能です」

 

その説明を聞けばその機能がアラドの悲願であるゼオラの救出の為に搭載された機能だと判り、マリオンの株が一瞬上がりかけたのだが……。

 

「脚部はファルケンKと同じくビームステーク、アーマーパーツにはガトリング砲とレールガン、それと背部のブレードはコールドバスターブレードとなっているのでそのまま体当たりしてもそれなりの破壊力が出ます。後分割時は一応片手剣としても使えますが、バランスが少々崩れるのでそこだけは気をつけてください」

 

続く言葉にやっぱりマッドだったと上がりかけた株はなまじ上がった分、大きく下がる事になった。

 

「ういっす」

 

なんで取り外したら飛行が不安定になる場所に武器を搭載すると話を聞いていたメンバーは全員がそう感じた。

 

「でもマリーシショー。腹部にビーム発射装置を搭載出来なかったのは無念ヨ」

 

「エネルギーが足りないからしょうがないですわね、その代りに足にビームステークはつけましたわ」

 

「それでビームが駄目だったんジャ?」

 

「そんな事は知りませんわ」

 

なんでビームステークを引き続き搭載したのか、それを付ける位ならビームをと誰もが思い……。

 

「いや駄目だな」

 

「俺もそう思います」

 

ゲシュペンスト・MK-Ⅲやリバイブ、鉄甲鬼ならその反動に耐えれるだろうが、ビルトビルガーでは無理だろう……だがだからと言って両足に何故またビームステークを搭載したのかがカイ達には判らなかった。

 

「なんかこの銃変な形してますね?」

 

「目の付け所が良いネ!これはラルちゃんの自信作ネ!荷電粒子砲を諦めたくなくテ、弾数は少ないけど高圧電流を発射出来るスタンショットライフルよ!鹵獲につかえるよ、やったネ!でも機体のバッテリーを著しく消費するヨ」

 

「アラド……次の時間まで休んでいてくれて良い」

 

「え?良いんですか!やったーッ!」

 

カイは余りにも不憫な機体に乗せられるアラドを気遣い休んで良いと指示を出し、今でも十分色物のビルガーを更に改造しようとしているマッドコンビを止める為にライと共に2人に声を掛けるのだった。

 

「……もう結婚しろよ」

 

「「なんか言った?」」

 

休んで良いと言われたアラドはリュウセイの部屋で武蔵達がゲームをしていると聞いて、リュウセイの部屋に足を向けたのだが胡坐をかいたリュウセイの膝の上に座っているラトゥーニとそんなラトゥーニを抱き締めるようにしてコントローラーを握っているリュウセイを見て思わずそう呟き、バーニングPTで対戦しながら不思議そうにしている2人を見て何でだよと天を仰いだ。

 

(なんでここまで距離が近くて付き合ってないんだよ)

 

もう完全に彼氏彼女の距離だろ、付き合って無くてその態勢は無理だとアラドは心の中で突っ込みをいれた。

 

「ん?お、お、行けそう」

 

「いえいえ、私の勝ちですわ!」

 

正しい距離感と言うのは2人で並んで落ち物パズルゲーで対戦している武蔵とシャインの距離感が正しいのであって、胡坐をかいているリュウセイの膝の上に座るラトゥーニも、そんなラトゥーニを抱き締めるようにしてコントローラーを握っているリュウセイもおかしいとアラドは心のそこから思うのだった……。

 

 

 

 

一方その頃アースクレイドルでは――。

 

「偵察任務ですか? 私とゼオラで?」

 

虎王鬼に呼び出されたオウカは虎王鬼の言葉を鸚鵡返しで尋ね返していた。

 

「そうよ、まぁ偵察って言うのは名目なんだけどね」

 

「名目ですか?」

 

「そ、名目。ハガネとシロガネは間違いなくサマ基地に進行して来る筈……ハガネとシロガネが来ると言う事は……」

 

「アラドが来る」

 

虎王鬼の言葉を遮るようにしてオウカがそう呟いた。サマ基地自身にはそこまでの価値は無いが、プランタジネットの事を考えれば連邦は其処を取りに来る。別に取らせる事自体は大した問題ではない、ハガネとシロガネでなければ防衛出来ないのだから奪われたあとすぐ奪還することだって十分に可能だ。だが、サマ基地でゼオラとオウカをアラドに合わせるのは都合が悪いと虎王鬼は考えていた、

 

「ノイエDCの連中がいれば裏切りだのなんだのって絡んでくるでしょ?その前にハガネとシロガネの予想進路に龍玄と雷神鬼を置くわ、そこでアラドに1度会いなさいな」

 

アラドに会えと言う虎王鬼にオウカは怪訝そうな表情を浮かべる。雷神鬼は遠距離射撃の百鬼獣だ、自分達を排除しようとしている?という疑いがオウカの脳裏を過ぎるが、虎王鬼も龍王鬼も自分達に良くしてくれている……だから信じたいと思い、疑いと信じたい気持ちの間でオウカは揺れ、そんなオウカを見て虎王鬼はくすくすと笑った。

 

「龍が言ったから表立っては動かないと思うけど、イーグレットの奴は絶対サマ基地でやっかみを掛けてくるわ。多分アギラも絡んでくるかもしれない」

 

アギラの名前を聞いてオウカの顔に嫌悪の色が浮かぶ、リマコンと投薬の影響が抜ければアギラはただの醜悪な老婆であり、それを母と呼んでいたのはオウカにとって忘れたい記憶でもあった。

 

「そうなると貴女達も危ないわ、下手な因縁を付けられても困るしね。だからその前に龍玄がいる所に誘い込んで会ってみなさい」

 

「何故其処までアラドに会えと言うのですか?」

 

ゼオラが一瞬自我を見せたがそれは一瞬の事でクエルボと共に落胆したのはオウカの記憶にも新しい、まだ何も対策がないのに何故アラドに会えと言うのですか?とオウカは虎王鬼に尋ねる。

 

「朱王鬼の術が解除されたから今がチャンスかもしれない。それにゼオラも少しずつだけど反応を見せるようになってるでしょ?」

 

「……反射行動ではないのでしょうか?」

 

「それはあたしにも判らないわ。でもアラドと会えば何らかのリアクションを得れるわ。仮に暴走しても雷神鬼と陸王鬼ならゼオラを拘束出来るわ」

 

水辺の町という事で結界を展開する陸王鬼を配置出来る。陸王鬼の結界で捕え、雷神鬼で回収するという手筈を取れると言う説明を受け、オウカは小さく頷いた。

 

「リスクは承知よ。でもリスクを恐れていては前には進めないわ」

 

「……はい、判っています」

 

虎王鬼に出来る範囲での処置は済ませた。だが完全に朱王鬼の呪を弾く事は出来ていない……オウカとクエルボから与えられる刺激で足りないのならば、ゼオラが依存しているアラドに会わせるしかないと虎王鬼は判断したのだ。

 

「どれだけ心を縛っても、完全に人を縛ることは出来ないのよ。心を揺らせば何か手掛かりも得れるわ、大変だと思うけど頑張って」

 

虎王鬼の言葉に頷き、オウカは虎王鬼の部屋を後にする。イーグレット、アギラが動き出せばゼオラを元に戻すのは難しくなる……まだ2人が大きく動く事が出来ない今がチャンスである事は間違い無かった。

 

「ゼオラ、私と偵察に出るわよ」

 

「……ハイ、オウカ姉様」

 

「オウカ、ゼオラ。気をつけて」

 

クエルボに見送られオウカはゼオラを伴ってアースクレイドルを出撃する――そこで待ち構えている物が悪意に満ちた舞台であったとしても、ほんの僅かな希望の糸に縋る為に……痛みと不安、そして恐怖を伴っての行軍は確かに希望の光をオウカへと与えるのだった……。

 

 

117話 隼と継ぎ接ぎ/撃ち貫け奴よりも早く その2へ続く

 

 




インターミッションは終わりで、次回は戦闘描写を書いて行こうと思います。ビルガーが頭おかしくなっておりますが、大丈夫です。ちゃんとファルケンも回収後にマ改造するので無問題です。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。


ストナーサンシャインガチャは敗北しました

ゲッタートマホーク2本
ハンマーヘルアンドヘブン
クロスレンジアタック
カイザーブレード

と期間限定から外された必殺技3枚と斧2本でした。無念……

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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