進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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119話 隼と継ぎ接ぎ/撃ち貫け奴よりも早く その4

119話 隼と継ぎ接ぎ/撃ち貫け奴よりも早く その4

 

制圧したサマ基地の司令を勤めているノイエDCの大佐は敷地内の雷神鬼、そして百鬼獣を見つめて眉を顰めていた。

 

「大佐、いかがしましたか?」

 

「……なんでもない。少しばかり考え事をしていただけだ」

 

「龍玄さんが必ずハガネとシロガネが攻め込んでくると言っていましたが……幾らなんでもそれは無謀というものでしょう。ライノセラス3隻に、サマ基地にあった長距離レールガンが5つ、それに百鬼獣がこれだけいるんです。如何にスペースノア級と言えど近づく前に轟沈するのが目に見えていますよ」

 

誇らしげに語る若いノイエDCの兵士を見て、初老の大佐は内心深い溜め息を吐きながらも、そうだなとおざなりな返事を返した。

 

(……何故気付かぬ、馬鹿ばかりなのか……)

 

この男もまたビアンの思想に共感し、地球を守る為に立ち上がった兵士の1人であった。だが老齢であると言う事で、DCの旗色が悪くなって来た時に部下に裏切られ、連邦に売り渡された。そしてL5戦役に参加した事で戦時特例により釈放され、ビアンの演説によって再びノイエDCに参加した――表向きはそうなっているが、ビアンの指示によってノイエDCに潜り込んだビアン一派の軍人であった。しかしスパイ活動は思うように行かず、ノイエDCのアドバイザーという立ち位置と百鬼衆の監視が付き、本来の役割を半分ほども果たせなかったわけだが、そのかわりにアースクレイドルの情勢、そしてそこで開発している機体の情報をアドバイザーという立場をゴリ押しし、最低限の仕事だけは成し遂げていた。

 

「大佐、何を恐れることがあるのです? 我々は負けませんよ。今度こそ、我らが地球圏の守護者となるのです」

 

「中佐……そうだな。これだけの戦力だ、ハガネが攻め込んでくることもあるまい」

 

そうは言いつつも、大佐の顔は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。司令官とこそ呼ばれているが、実質的な指揮権は中佐にある。あくまで大佐はビアンの元での戦績を考慮されてのアドバイザーと言ってもいい。

 

(馬鹿ではないと言うことか……)

 

疑いのある兵士に権力を与えはしない。それでも表向きは大佐と言う地位を考慮して指揮官にしているが、実際は飾り物の司令官だ。それは長い間地球を守ると言う願いの元戦い続けた漢にとってこれほどの屈辱はない。

 

『驕るな、愚か者め』

 

そこに通信越しに龍玄が会話に加わる。アーマリオンやリオンが数機動いている中で龍玄だけが雷神鬼のコックピットでハガネを待ち受けていた。

 

「龍玄さん。しかしですね、これだけの戦力に突っ込んでくる馬鹿はいないでしょう? 龍玄さんもこちらで休んだらどうですか?」

 

にやにやと笑う中佐に龍玄と大佐は揃って眉を細めた。決して無能な軍人ではない、だが戦局が見えているか? というと見えていないと言わざるを得ない。

 

(この男もテンザンといい勝負だな)

 

アードラーがスカウトして来たテンザン・ナカジマといい勝負だと内心で吐き捨てる。

 

『悪いが俺は必ずハガネがくると思っている。お前の申し出はお断りだ、それでルーデン。お前はどう見る?』

 

「必ずハガネとシロガネは仕掛けてくる。ここを突破する、あるいは奪い返す事は連邦にとって重要な意味がある」

 

「だからそんな危険な橋を」

 

「危険な橋と言うがな、この基地の防衛網などL5戦役の時と比べれば恐れるに足りぬ。あの戦場に参加していた者が……この程度で足踏みするものか」

 

L5戦役で共に戦った者だからこそ判る。あの時の危機と比べればなんとこの基地の防衛が緩いものかと……あの時の戦いを体験している者が立ち止まる訳がない。

 

「はいはい、L5戦役、L5戦役ですね。はいはい、判って……うわッ!? な、なんだッ!?」

 

聞き飽きたと言わんばかりにおざなりな返事を返していた凄まじい振動がサマ基地を襲い中佐や、サマ基地が襲われる訳が無いと思っていた若い兵士達が悲鳴を上げて、尻餅をついた。

 

「地下に向けて索敵ッ! 熱源の把握を行なえッ!!」

 

「は……いや、大佐は」

 

「黙って索敵を行わんかッ!!!」

 

「は、はひっ!!」

 

ルーデンの一喝で大佐に指揮権はないと言おうとした若い兵士は顔を青くさせ索敵を始める。

 

「貴様ら何をしている! 軍人であるのならば立てッ!」

 

確かにルーデンはビアン派の軍人である。だが戦いとなればそこに集中する、それこそがビアンがユウキ達のほかにスパイとしてルーデンを送り込んだ理由であった。

 

「熱源補足ッ! サイズは90M級ッ!」

 

「90M級!? 連邦は地下戦艦でも作ったのか!?」

 

「たわけがッ! 地下で特機となれば敵は……『ゲッタァアアアドリルッ!!!』ゲッターロボ以外ありえんッ!!」

 

サマ基地の防衛網を張っていたライノセラスを一撃で大破させ、ライガー2が地面から飛び出し姿を見せる。

 

『恨みはある、死にたくなければ脱出するんだなッ!』

 

それに続くように姿を見せた轟破鉄甲鬼の肩にマウントされた武装から放たれた暴風が一撃でサマ基地の防衛網を破壊する。その強烈な破壊音がサマ基地攻防戦の幕開けとゴングとなるのだった……。

 

 

 

 

ダイテツとリーの作戦、ライガー2と轟破鉄甲鬼による強襲は半分は成功したと言える。何故半分かと言うとトルネードはゲッター線とプラズマリアクターを併用した対PT・AM用の電子機器をターゲットにした広範囲攻撃だ。連邦としてはサマ基地が欲しい、それゆえに長時間の照射は出来ず、中途半端な照射となった。

 

『PTとAMは止めたが、百鬼獣は無理だな』

 

「しゃあねえ。PTとAMを止めただけでも御の字だ。オイラ達じゃ手加減できねぇしな」

 

ゲッターD2の攻撃ではPTとAMは脱出も出来ず殺してしまう……暗にそれを言う武蔵にコウキは鼻を鳴らした。

 

『甘いな、敵は敵だ。殺せ』

 

「わりぃな。オイラにとっちゃあ人を殺すのは本当に最終手段なんだよッ!」

 

ゲッタードリルと斧が同時に振るわれ、動き出した一角鬼と竜骨鬼の胸部に深い切り傷を刻み付ける。

 

『甘いな、竜馬とは大違いだ』

 

「リョウと隼人がそんなんだから1人くらい甘くても良いだろうよッ!」

 

コウキの言葉に文句を言いつつ、武蔵はサマ基地に陣取っている雷神鬼に向かってライガー2を走らせる。

 

「行くぜぇッ!!」

 

『ふっ! 来いッ!!!』

 

雷神鬼の弾雨にライガー2の身を捻じ込み、強引に弾幕を突破しライガー2は雷神鬼の懐に飛び込みゲッタードリルを振るう。

 

『温いぞッ!!』

 

「ちっ、かてえッ!!」

 

今回の作戦は速攻が要求される。スペースノア級であるハガネとシロガネはその巨体さゆえに姿を隠すと言う事には適していない、雷神鬼の背中のレールカノンを破壊し、ハガネとシロガネがこの場に来れるようにしなければならない。

 

『手間取っているな、速攻で決めろッ!!』

 

「言われなくても判ってるッ!!」

 

PTとAM、そして基地設備の機能を停止させたのは索敵させない為、そして増援を呼ばれない為だ。トルネードの妨害時間はさほど長くないと説明を受けていた武蔵は判っているとコウキに怒鳴り返し、雷神鬼へと攻撃を繰り返す。

 

『ぬうっ!!』

 

「攻撃力が足りなきゃ手数で勝負だッ!!」

 

サマ基地を強襲するという目的ではライガー2だけではなく、ドラゴン2もその視野に入ってくる。ドラゴン2ならば大気圏からの急降下強襲、轟破鉄甲鬼は地下からと攻撃に二面性を与える事も可能だった。それでも武蔵はライガー2を選んだのには理由があった、まずは武蔵はドラゴン2、ライガー2の能力を十分に引き出される訳ではなくどうしても細かい操作に難点が出る。武蔵が危惧したのは確保するべきサマ基地を破壊してしまう事にあった、下手に基地を破壊すればダイテツとリーの立場を更に悪くするだろう……と言うのは表向きの理由でもう1つはサマ基地にビアン一派の軍人が居る事をビアンに聞いていた為彼らを殺す危険性を可能な限り避ける為にライガー2を選んだのだ。

 

「うおりゃあッ!!!」

 

『ちいっ! ちょこまかとッ!』

 

機体サイズはほぼ互角、出力はゲッターロボとしてみればゲッターロボの方が圧倒的に上。だが今はライガー2なので出力は雷神鬼が上回り、装甲も雷神鬼の方が上。その分、機動力に秀でるライガー2は至近距離での雷神鬼の射撃を紙一重でかわし続け、ゲッタードリルを振るい続ける。

 

『うおおおおッ!!!』

 

『ぐうっ! 総員退避ッ! 退避ぃいいいッ!!!』

 

百鬼獣の攻撃を受けつつも轟破鉄甲鬼は仕事を果たしたライノセラスの主砲を破壊し、2隻を行動不能に追い込んだ。だがその為に払った対価は決して安くはない……防御マントがその機能を失い、肩や胴体にも百鬼獣のスパイクが突き刺さり火花を散らしている。それでもだ、それでもまだ鉄甲鬼は立っている。真紅の瞳が翡翠に変り、その装甲の各所からゲッター線の光があふれ出す。

 

『くたばれッ!! ゲッタァアアア――ッビィィィムッ!!!!!

 

『『『ッ!? ギャアアアアアアア……ッ』』』

 

1発限りのゲッタービーム。それが百鬼獣を飲み込み、地形を変えながら放たれたそれを見て龍玄は驚きに声を上げた。

 

『なにッ!?』

 

ゲッタービームを使える機体がもう1つ――それは龍玄にとっての想定外であり、一瞬気を取られた。そしてその隙を武蔵が見逃す訳が無い。

 

「隙だらけだぜ! 爺さんッ!!! ドリルミサイルッ!! オープンゲットッ!! チェンジドラゴンッ!! ゲッタァァアアアアッ! ビィィムッ!!」

 ビィィムッ!!」

 

『そう簡単にこの首をやる訳にはいかんッ! 迅雷ッ!!』

 

温存し続けていたドリルミサイルを至近距離で打ち込み、その爆風と煙に紛れてオープンゲットし、ドラゴン2へとチェンジし、威力を絞った頭部ゲッタービームを雷神鬼に向けて放つ、雷神鬼もそれに応戦すべく雷を放った。サマ基地上空でゲッタービームと迅雷がぶつかり合い、凄まじい爆発を引き起こす。ゲッターD2は爆風に弾き飛ばされながらも態勢を建て直し、地面を削りながら着地する。

 

「コウキ、そっちは大丈夫かよ」

 

『問題はない、それよりもギリギリだ。もっと余裕を持って行動出来なかったのか?』

 

「うっせ、やれるだけはやったぜ」

 

ゲッタービームの反動で冷却中の轟破鉄甲鬼を背中に庇いながら武蔵はにやりと獰猛に笑った。

 

『ぬかったわ……ッ』

 

雷神鬼の背中の長距離射程の武器を全て潰した――それが意味する事は1つ……ハガネとシロガネをとめる術をノイエDCと百鬼帝国は失ったと言う事であり、トルネードによる妨害から復活したサマ基地からアラートが鳴り響くと同時にシロガネとハガネが同時にサマ基地の上空にその姿を現すのだった……。

 

 

 

 

サマ基地の守りを突破し、姿を現したハガネとシロガネ、そしてそこから姿を見せたPT隊にノイエDCと百鬼帝国は完全に浮き足立っていた。

 

『おおおおッ!!』

 

『しまっ!? 脱出だッ!?』

 

不調とは言えゲシュペンスト・リバイブ(K)とカイをガーリオンやアーマリオンで止める事は叶わず、出撃する側から撃墜されて行く。

 

『コウキ博士、大丈夫なんですか?』

 

『俺の心配をするなど100年早いぞ、アイビス』

 

『……なんでその状態で動けるのぉ?』

 

黒煙と紫電を撒き散らしながらも双頭鬼の2本の首の内1本を右手の斧で切り飛ばし、左腕のスパイクで顔面を突き刺し、トドメと言わんばかりに胴に蹴りを叩き込み蹴り飛ばす姿を見て、アイビスは心底困惑した声を上げながらも、オーバーヒートで動きの鈍い轟破鉄甲鬼の死角をアステリオンでフォローしていた。動きの鈍い轟破鉄甲鬼と機動力の高いアステリオンの組み合わせは良く、初手のトルネードで動きの鈍い百鬼獣達を確実に撃破していた。

 

『リュウセイ、お前は無茶をするなよ! PTやAMを確実に仕留めろ!』

 

『念動力が万全ではない今は百鬼獣と無理な戦いを挑むなッ!』

 

『イルム中尉、ライ! すまねえッ!』

 

T-LINKナックルが不発に終わり、一角鬼の反撃を直撃で受けそうになっていたリュウセイをイルムとライがフォローする。ロスターとの戦いから大分時間が経っているにも関わらず、まだ思うように戦えないリュウセイは歯がゆい思いをしながらグルンガストとR-2・パワードに守られながら後退するが、それでもG・リボルバーを駆使し、R-2・パワードと共にグルンガストが戦いやすいように支援を行っている。

 

『シャイン王女ッ!』

 

『ラトゥーニッ!!』

 

音速で飛び交うフェアリオンの軌跡は美しくもあるのと同時に、どこまでも冷酷に敵対する百鬼獣の命を刈り取る。

 

『格納庫を潰します、ラーダ』

 

『判りました!』

 

『俺も行きます!』

 

ヒュッケバイン、ビルトビルガー、ゲシュペンスト・MK-Ⅲがサマ基地の司令部の制圧に動き出す。

 

『おらあッ!!』

 

『ふんッ!!!』

 

ゲッターD2のダブルトマホークと雷神鬼のシールドがぶつかり合い、凄まじい爆風を爆発音を響かせる。サマ基地を巡る戦いは凄まじい乱戦と相成っていた。その戦いを空中に浮かんだ水の鏡で見つめている共行王は手にした扇子を上機嫌に振りながら笑みを浮かべていた。

 

「んふふふ、いやはや、中々やるではないか。ハガネとシロガネとやらは……」

 

ハガネ、シロガネが連邦軍の主力であると言う事はブライから聞いていたが、実際にその戦闘を見るのは初めてだった。自分の想像よりも強いハガネのPT隊に共行王は関心さえ覚えていた。

 

「進化の使徒に頼りきりと言う訳ではないようじゃな。そうでなくてはつまらん」

 

1人を倒せば瓦解するような物と戦うのはつまらないと口にする共行王の背後に3人組の青年達が立った。

 

「なんじゃ?」

 

「何時になったら攻撃を仕掛けるのですか? 共行王」

 

ジッと3人組の顔を見つめた共行王はぽりぽりと頬をかいた。

 

「すまん、お前は誰じゃ? アンサズじゃったか?」

 

「……僕はウルズです、こっちがアンサズ、スリサズです。これで5回目ですよ?」

 

髪の色とメッシュでしか見極めが付かない3人組に共行王はすまんすまんと笑った。

 

「人間は判りにくい。しかもお主らは気配が似ていて判別が付かん」

 

イーグレットが作り出したマシンナリーチルドレンである、ウルズ、アンサズ、スリサズは性格の違いこそあれど顔は殆ど同じであり、人間と同じ視点を持っていない共行王には判別が付きにくい存在であった。

 

「僕達はマシンナリーチルドレンだ! 人間じゃないッ!」

 

「あーはいはい、うるさいからお前らの機体で待っておれ、癇癪を起こす餓鬼は嫌いだ」

 

餓鬼呼ばわりされ、ウルズはピクリと眉を動かしたものの了解と返事を返し、踵を返そうとする。

 

「餓鬼だって! 僕達が如何に崇高な存在かパパに聞いたのになんて言う口振りだ!」

 

「僕達が餓鬼ならばお前は婆だなッ!」

 

「アンサズ! スリサズッ!!!」

 

ウルズの制止の声が飛んだが、それは余りに遅かった。ウルズの目でも見切れない速度で立ち上がった共行王が鋭く伸びた爪をアンサズとスリサズの頭に突き刺し、握り潰そうとゆっくりと力を込める。

 

「いっつ!」

 

「ぎゃああッ!!」

 

「のう、餓鬼共、私は口の聞き方に気をつけよと最初に言ったじゃろう? ん? そんなことも忘れたのか? 随分と記憶力の無い脳味噌だ。すこし賢くしてやろうか?」

 

指が動き、アンサズとスリサズの絶叫が周囲に響き渡る。マシンセル、そしてゲッター線を照射されたアンサズとスリサズは常人を越える回復力を持つ、脳を抉られても即死することは無いがその代りに傷をつけられる、再生するの無限地獄を味わっていた。

 

「共行王。2人に変わりに謝罪します、どうかお許しをッ」

 

「怒っておるわけではないぞ? これは躾じゃ、甘やかされた馬鹿には痛みを持って躾をせねばならんじゃろう? のう?」

 

爪が更に深く食い込み、頭を鷲づかみにされ宙吊りにされたアンサズとスリサズは抵抗することも出来ず、ぐったりとし始める。

 

「どうかお許しを、僕の方からアンサズとスリサズには注意をします」

 

ウルズが深く頭を下げるが、共行王はそれに視線を向けずアンサズとスリサズの頭を握り締める手の力を更に強める。

 

「……人の事を婆などと言わせるな。それくらいの礼節は身につけよ、それとお前達が優れた、崇高な生命体じゃと? ハッ、笑わせてくれるなぁ、笑いすぎてお前達を殺してしまいそうになるわ」

 

虚空に現れた龍の首がアンサズとスリサズの足に喰らいついた。

 

「ギャアアアアアッ!! あがああっ!!」

 

「ごめんなざいッ! ごめんなざあいいいッ!!!」

 

ゆっくりと何度も何度も噛み付かれアンサズは絶叫し、スリサズは痛みから逃れる為に謝罪の言葉を何度も口にする。

 

「学習したな? 女の歳に容易に触れるな。年上には敬意を払え、それが出来ないのなら……喰われて死ね」

 

「共行王ッ!」

 

共行王の使い魔がアンサズとスリサズの下半身を完全に飲み込み、共行王がその頭蓋を砕こうとしているのを見てウルズが殺気を放ちながら怒鳴り声を上げた。凄まじい殺気だが、共行王はそれを受けながし妖艶に笑う。

 

「ウルズ。私はお前だけ生きていればいいと聞いている、お前は死なぬように面倒を見てやろう。だがそれ以外は殺しても良い筈だ、それと口の聞き方に気をつけろと言っただろう? 貴様も死にたいのか?」

 

蛇の視線を向けられウルズはよろよろと後退し頭を下げた。

 

「貴重な勉強ありがとうございます。共行王に感謝をッ! アンサズ! スリサズ! 何をしている! 礼を言えッ!」

 

「「あ、ありがどうございまずううッ!!」」

 

血反吐を吐きながらの感謝の言葉を聞いて、やっと共行王はアンサズとスリサズへの攻撃を緩めた。

 

「良し良し、素直な子は好きだ。良く学べ、私の機嫌を損ねないようになぁ。次は……こんなに優しく勉強などさせてやらぬぞ?」

 

「「「はいッ」」」

 

ウルズ達の返事を聞き、共行王は満足げに微笑みサマ基地に足を向けた。

 

「先に行く。お前達は基地を潰せ、ではな」

 

その身体を水に変え消える共行王をウルズ達は恨めしげに見つめていたが、下手に文句を言えば使い魔に殺されると悟り、再生しつつある身体を引き摺りながら己の機体へと乗り込むのだった……。

 

 

 

 

サマ基地を巡る戦いはゲッターD2と轟破鉄甲鬼の奇襲により、ハガネとシロガネの圧倒的な有利な状況になっていた。

 

「中佐はどこへ行った」

 

「百鬼獣で1人で脱出をッ! 我々は見捨てられましたッ!」

 

泣きそうなオペレーターの言葉を聞いてルーデンは鼻を鳴らした。想像通り、あるいは予定通りと言っても良い状況だった。

 

(やはり鬼か)

 

人間の中に紛れている鬼――中佐がそうであったのは明らかであり、連邦やノイエDCの中に紛れ戦闘を焚きつけていると言う確証を得た。争いを戦争を引き起こす為に焚きつける邪悪な存在――ノイエDCの中にもそれがいると言うのはルーデンにとっては朗報だったが、サマ基地のクルーにとっては最悪な状況でもあった。

 

(このままでは陥落は時間の問題……か)

 

百鬼獣もその数を減らし、PTやAMは頭部を破壊され無力化されている。

 

「……降伏を宣言する」

 

「し、しかし!」

 

「このままでは死ぬ、このような場所で死ぬ事がお前達の本望か?」

 

ノイエDCはビアンの思想に共感した者、そしてアーチボルドのようなテロリストがいる。サマ基地に残されているのは前者の方が圧倒的に多く、ルーデンの問いかけに司令部にいた全員が黙り込み、首を左右に振った。それを了承と判断したルーデンは広域通信による降伏を口にしようとし、その顔色を変えた。

 

「……れ」

 

「は?」

 

「各員はシェルターに走れッ!! 死にたくなければ持ち場を離れシェルターへ走るんだぁッ!!!」

 

ルーデンの怒声が響くのと同時に、凄まじい衝撃音がサマ基地上空に響き渡った。

 

『くふふふ……初めましてじゃなあ、今代の進化の使徒よ』

 

楽しそうでありながら蔑み、見下すような邪悪な女の声に続き、武蔵の困惑した声がゲッターD2から発せられる。

 

『なッ!?』

 

宙に浮かびダブルトマホークを扇子で受け止めている女の姿を見た司令部の兵士達はみな悲鳴を上げて、司令部を飛び出して行く。自分の理解を超えた光景に恐怖が勝り、ルーデンの逃げろという言葉に突き動かされたように皆必死の形相で駆けて行く。

 

『お前には殺意が無いな、つまらん。それ返すぞ』

 

女――共行王が腕を振り上げるとゲッターD2の手からダブルトマホークが弾き飛ばされ、凄まじい地響きを立てて地面に突き刺さる。

 

『まずは挨拶代わりじゃ。少しは本気で戦おうと思うように頭を冷やすんじゃな』

 

共行王の手から放たれた凄まじい水流がゲッターD2を正面から飲み込み、次の瞬間に氷りつきゲッターD2を氷柱の中に閉じ込めた。

 

「化け物めッ!」

 

龍王鬼達が最強戦力とすれば、今目の前にいるのは百鬼帝国の最狂戦力の1角……。

 

『くふふふ、我が名は共行王、四罪の超機人である。神の前に立つに頭が高いぞ人間共、平伏せよ』

 

妖艶に、そしてどこまでも人間を見下す素振りを隠そうとせず共行王は優雅に扇子を開き、そう言い放ち、一瞬の内に吹き荒れた豪雨にサマ基地で戦っていたPTやAMはその全てが大地に叩きつけられたのだった……。

 

 

 

突然地面に叩き付けられたアラド達は全身に走る痛みに顔を歪めていた。雨が降り出した、そう思った瞬間全ての機体が地面に叩きつけられていたのだ。その衝撃と激痛に一瞬誰もが意識を飛ばしていた。

 

「いっつう……何が、何が起きたんだ……ッ! 俺だけじゃないのか!? どうなってやがるッ!?」

 

自分だけではない、サマ基地にいた機体がノイエDC、連邦軍、百鬼獣。その全てが地面に倒れていた。

 

『武蔵様がッ!?』

 

『シャイン王女ッ!!』

 

「なッ!? げ、ゲッターロボが!? な、なんで!? 武蔵さんはどうしたんだよッ!?」

 

シャインの悲鳴とラトゥーニの必死の氷柱の中に閉じ込められているゲッターD2に気付き、アラドも驚愕の声を上げる。

 

『おや? この程度で死んだか? つまら……『うおらぁッ!!!』 くふふふ、良いぞ良いぞ、この程度で終わってはつまらんからなあ』

 

氷を砕き空中に浮かぶ共行王をゲッターD2の腕が掴む。だが次の瞬間には共行王の身体が弾け、水となりサマ基地に流れ落ち、再びゲッターD2の姿が激しい水流の中へと消える。

 

『何が起こってやがる!? 超機人とか言ってやがったが……『不敬、なんだ。その口の聞き方は』ぐあッ!?』

 

姿が見えない、降り注ぐ雨が固形化し、グルンガストへと降り注ぎイルムの悲鳴がサマ基地に木霊した。

 

「何がどうなってやがるんだッ!? くそッ! なんで機体がうごかねぇッ!!」

 

エンジンが停止しているわけではない、操縦系も破壊されたわけではない。操縦桿を動かしてもペダルを踏み込んでも誰の機体も動かない。動力が空回りし、コックピットにレッドアラートが灯るだけだ。何が起こっているのか判らず、皆が困惑する中リュウセイの苦悶の悲鳴が木霊した。

 

『がぁッ!! ぐぐぐ……来るッ!』

 

『来る、リュウセイ何を……』

 

『きゃあッ!? な、何がッ……』

 

凄まじい地響きと共に水が盛り上がり、独りでに細長く伸び透明だった水に色が付いていく……水から金属の質感を持ちながらも生物的な意匠を持つその姿に驚きの声が広がっていく。

 

「で、でけえ……ハガネと同じ位、いやもっとでけえッ!」

 

『あれがあの女の正体と言う事か……』

 

『超機人……あんな禍々しい物が、超機人だと言うのですか』

 

驚愕するアラド達の目の前で水が超巨大な異形の特機へと変わる。

 

『くふふふ、1つ2つ……馳走がやまほどあるが……まずは久しぶりの強念者の魂、存分に喰らうとするかあッ!!!』

 

『来るッ!! くそッ! 動けR-1ッ!!!』

 

大口を開けR-1に迫る共行王――雨に濡れ、動く事の出来ない無防備なR-1に共行王の鋭い牙が向けられ、R-1が噛み砕かれる瞬間に共行王の動きが止められた。

 

『行かせるかよ!』

 

水流の中に氷の礫があったのか全身に細かい傷がありながらも、水流を弾き飛ばし姿を見せたゲッターD2が共行王の尾を掴んで引っ張り、牙が振り下ろされる直前でその動きを封じ込めていた。

 

『ほほーう? んふふふ、良いぞ良いぞ。食事よりも先にお前と遊ぶことにするかのう……』

 

急反転しゲッターD2にその牙を向ける共行王。それに対し共行王に下半身と胴に巻きつかれ、動きを束縛されているゲッターD2。戦況はどう見ても圧倒的に武蔵が不利だった。

 

「動くッ! やろッ! やらせるかッ!!!」

 

『武蔵の支援を行え! 敵機を引き離せッ!!』

 

ビルトビルガー達が動き出すと同時に百鬼獣、ノイエDCのPT・AMが動き出した。百鬼帝国にとって、そしてノイエDCにとって真っ先に廃除しなければならないのはゲッターD2だ。共行王が身体に巻きついた状態ではオープンゲットが出来ず、自己修復機能で回復しているとは言えゲッターD2の装甲は穴だらけだ。雷神鬼はいまだ健在、少数だが百鬼獣もまだ活動している。囲まれて攻撃されてはゲッターD2と武蔵と言えど危険だとカイ自らも百鬼獣をゲッターD2から引き離さんと飛びかかりながらの指示が飛び、リュウセイ達も指示を聞く前に動き出す中――ハガネからのアラートが鳴り響いた。

 

『正体不明機が3機接近中! 各機は警戒をッ! 繰り返す! 正体不明機が3機接近中ッ! 各員は警戒をッ!……ぐっ!?』

 

テツヤの警告が最後まで告げられる事は無く、上空から飛来した光線がハガネの船体を掠め、ハガネの高度が著しく低下し、シロガネにも光線が直撃し、バリアブレイク現象を発生させながらその高度を低下させる。

 

『馬鹿な!? 一撃でスペースノア級のE-フィールドを粉砕したと言うの!?』

 

『ちいっ……こりゃ不味いぜ……』

 

ヴィレッタと驚愕の声と、乱戦がいまだ続く中強力な敵機の出現にイルムが舌打ちを打つ。そしてハガネとシロガネを一撃で行動不能に追い込んだ何者かが姿を現した。見たことの無い人型の機体、ノイエDCのマーキングが施されているから敵機ということは判る。だが、今までのノイエDCの機体とは一線を画した姿をした2機の機体――そしてそれに続くように現れた3機目の機体に驚きの声が上がった。

 

『ゲッターロボ……ッ!?』

 

『いや、細部が違うし、デザインも違うッ! だがあれは……』

 

『紛れも無くゲッターロボッ!』

 

頭部の2本角、両腕のブレード、亀甲模様のパーツ。背中に背負っている8つの勾玉型のパーツだけがやや異質だが、その特徴的なシルエットは紛れも無くゲッターロボをモチーフにした機体であるという事を証明していた。共行王に続く謎の機体にはサマ基地を一瞥し、背部のウェポンパックを開放した。

 

『散れッ!!!』

 

カイの怒声による指示が飛ぶのとほぼ同じタイミングで3機から放たれたミサイルの雨がサマ基地を紅く染め上げる。爆炎の中にサマ基地にいた全ての機体は飲み込まれるのだった……。

 

 

120話 隼と継ぎ接ぎ/撃ち貫け奴よりも早く その5へ続く

 

 




ウルズのベルゲルミルだけ、量産型ゲッターロボベースのベルゲルミルにしました。ゲルゲルミル……知ってた、私にネーミングセンスなんてないんだよ……なのでベルゲルミル・タイプGとします。もっと考えろよって言う突っ込みはあると思いますが、お許しください。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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