進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第122話 隼と継ぎ接ぎ/撃ち貫け奴よりも早く その7

第122話 隼と継ぎ接ぎ/撃ち貫け奴よりも早く その7

 

ヒリュウ改から出撃したキョウスケ達をインスペクターの勢力圏となり無人の市街地で待ち構えていたのはエルアインス、ラーズアングリフと言ったシャドウミラー製の機体の数々だった。その機体を見てラミアは胸の奥が軋むのを感じた。これが百鬼帝国ならば良かった、だがシャドウミラーという事はヴィンデルやアクセル……そしてレモンが現れる可能性を示しており、前までだったのならば指示を受けれる。自分で考えなくて良いと喜んでいた筈なのに、今はヴィンデル達に会う事がラミアには恐ろしい事だった。

 

『まーた例の連中みたいね。今はいないみたいだけど謎のゲシュちゃん――いえ、未来の連邦軍かしら?』

 

『さぁな。だが、あたしからすればしつこいだけの鬱陶しい連中だ。てめえらの世界とあたし達の世界が違うって事すら判ってねえ馬鹿共だ』

 

イングラム、カーウァイの2人から齎された未来の情報――存在しない筈の機体も、ゲシュペンストも未来で製造されたと考えれば辻褄が合う。

 

『そんなにキョウスケ中尉が怖いって事ですかね?』

 

『それは俺には判らんが……俺達の前に立ち塞がるというのならば敵だ』

 

アインストに寄生され、異形と化したキョウスケによって全滅にまで追い込まれかけた。それが攻撃を仕掛けてくる理由だとキョウスケという存在が必ずそれに至ると考えているからだとイングラムは推測し伝えていた。

 

『人違いで襲ってくるとか良い迷惑にも程があるぜ』

 

『ですが少尉、今までとは少しパターンが違うと感じませんか?』

 

『攻撃を仕掛けてこないと言うことだな。ラッセル』

 

ラッセルがおかしいと呟くとラドラが即座にそう返事を返した。今までならば倒されても倒されてもすぐに増援を送り込んで来たが、今回は武器こそ向けているが攻撃に出る素振りを見せていない。

 

『今更交渉をしに来たとか言わないよね?』

 

『さあな、だんまりだからわからねえよ』

 

攻撃を仕掛けてくるなら判る。しかし今は警戒をしているだけで攻撃を仕掛けてくる素振りが無い。その事にキョウスケ達が困惑していると龍虎王がうなり声を上げた。

 

『龍虎王!? どうしたの!?』

 

『何か……何か来るッ!』

 

龍虎王の唸り声のすぐ後に凄まじい稲光が走り、市街地の中央にクレーターが作り出される。その中心にいるのは金色の魔龍の姿だった……。

 

『はっはぁッ!! よう、久しぶりだな。人間共、元気にしてたか?』

 

『『『龍王鬼ッ!!!』』』

 

キョウスケ達を歯牙にもかけず一蹴した百鬼帝国の将軍――龍王鬼がヒリュウ改の前に現れた。

 

『あれが龍王鬼ッ……! 中尉達を再起不能に寸前に追い込んだって言う百鬼獣ッ!』

 

『朱王鬼なんかとは全然違うじゃないッ!?』

 

『がっはははははッ!!! おうお嬢ちゃん、良い目をしてるな。俺様の方が朱王鬼なんかよりもずっと強いぜぇ!! がっははははッ!!!』

 

リオの言葉に上機嫌に笑う龍王鬼だったが、次の瞬間に凄まじい威圧感が龍王鬼の咆哮ともに放たれた。龍虎皇鬼の時よりは劣るが、戦う意志を持たぬものを選別する咆哮の効果は強烈だった。だがキョウスケ達はそれに耐え、真っ直ぐに龍王鬼を見つめ返していた。

 

『くははははッ!!! 良いぜ良いぜ。そうじゃなきゃつまらねぇ、俺もこいつもよ、武蔵と喧嘩してボロボロになっちまってよ。今日はリハビリに来たんだ、虎はいねえが楽しくやろうぜッ!!!』

 

 

龍王鬼が翼を広げ上空へと飛び上がろうとした時にその動きを急に止めた。

 

『紅いカブトムシ。てめえの相手は俺じゃねぇ、あっちでてめえの敵が待ってるぜ。1人で戦うのが怖いっつうなら、まぁ行かなくても良いけどよ。てめえはどうする?』

 

挑発だと判っている言葉だった。キョウスケが乗るか、それとも怖気づくかそれを見て楽しむ気配のある龍王鬼。

 

『馬鹿か! そうやって行けば袋叩きにするつもりだろうが!』

 

『おいおい、勘違いしてくれんなよ。俺様はそんなケチ臭い事はしないぜ。やるなら真正面からぶっ潰す。それが俺の流儀よ、さてとそれでキョウスケ・ナンブ。お前はどうする? 好きにして良いんだぜ』

 

 

喉を鳴らして楽しそうに問いかけてくる龍王鬼。その言葉にキョウスケのとった行動はエクセレン達にとっては想定外、龍王鬼にとっては期待したとおりの選択だった。

 

『ギリアム少佐。指揮を頼みます』

 

『ちょっ!? キョウスケッ!?』

 

エクセレンの言葉も聞かず、キョウスケはアルトアイゼン・ギーガを操り龍王鬼が指差した方角へとアルトアイゼン・ギーガを走らせる。

 

『クハハハッ! やっぱり男って言うのはこうじゃねえとなッ!! 喧嘩っつうのはタイマンでしてこそ華っつうもんよ! 少しは雑魚を蹴散らして身体を暖めておけよッ!』

 

1人で戦う事になっても前に向かったキョウスケを龍王鬼は賞賛し、今度こそ宙に舞い上がった。

 

『さあーて、俺達も始めようぜッ!! くくく、ガーッハハハハハハッ!!!』

 

楽しくてしょうがないと言う龍王鬼の高笑いと、リボルビング・バンカーの一撃で自分の前に立ち塞がったエルアインスを破壊し、市街地に響いた炸裂音が戦いの幕開けとなるのだった。

 

 

 

市街地を取り囲むように配置されているエルアインス達はギリアム達の予想に反して、1機たりともヒリュウ改のPTに攻撃を仕掛けてくる気配は無く、龍王鬼1体でアルトアイゼン・ギーガを除く全てのPTと特機と戦っていた。

 

「ガッハハハッ! おらおら、どうしたどうしたあ!! 俺様は1人だぜッ!!!」

 

尾を牙を爪を、そして雷撃と火炎放射をその全てを使いこなし10機近いPTを単独で相手取る龍王鬼の力は異常を通り越して化け物だった。

 

『おらあッ!!!』

 

「はっはッ!! こいつはぶっ壊し甲斐のあるデカブツだなあッ!!!」

 

シーズアンカーと龍王鬼の尾がぶつかり、凄まじい火花を散らす。普通ならばジガンスクード・ドゥロを相手にしていれば他の機体へのマークは緩む。しかし龍王鬼はこの乱戦を楽しみ、そしてヒット&アウェイを駆使し、いなし、防ぎ、自身へ攻撃させ戦況をコントロールしていた。

 

「おらよ! 足元がお留守だぜデカブツッ!!」

 

『とったぁッ!?』

 

尾による薙ぎ払いで脚を払われ、即座に巻きついた尻尾と龍王鬼の半回転によってジガンスクード・ドゥロの巨体その物がハンマーとなりヒリュウ改のPTを襲う。

 

『てめ! タスクぅ! なにやってやがる!』

 

『んな事言ったって! あいつに触らされたらテスラドライブが機能を停止したんすよッ!』

 

テスラドライブで浮遊しているジガンスクード・ドゥロが脚を払われるなんて事はありえない。だが龍王鬼はそれをやってのけたのだ。

 

「おら行くぜぇ!!! てめえらの相手は俺だぁッ!!!」

 

龍王鬼の鱗が分離し、空中に集まると雷が落ち、鱗に当たり乱反射を繰り返し、キョウスケに合流しようとしたエクセレン達に襲い掛かる。

 

『うそッ!? きゃあッ!?』

 

『エクセ姉様ッ! ぐっ!?』

 

「がっははははッ! よそ見してるからそうなるんだぜッ!!!」

 

雷を辛うじて回避したが、その電圧で操縦系が一時ショートしたヴァイスリッター改をアンジュルグが支えに入る。だが乱反射を続ける雷に打たれ、ヴァイスリッター改と共に墜落する。

 

「おいおい、なんだなんだ。お前、前はいなかったな、どこのどいつだ?」

 

ゲシュペンスト・シグの高速回転するエネルギークローと龍王鬼の牙がぶつかり合い、凄まじい火花を散らす。

 

『元・教導隊 ラドラだ』

 

「はっはぁッ! 俺様は龍王鬼だッ!! よろしくなあッ!!!」

 

龍王鬼の筋肉が盛り上がりゲシュペンスト・シグを上空へ弾き飛ばし、広げられた翼の打撃がゲシュペンスト・シグの胴を打つ。しかしその直後ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプMの手の平から放たれた火炎が龍王鬼を包み込んだ。

 

『いまッ! 龍王破山剣ッ!!!』

 

炎に包まれた龍王鬼を見てクスハが好機とみて斬りかかるが、それは炎から飛び出した尾によって防がれる。

 

「ほっほーう。そいつが俺様の龍王鬼のモチーフになったつう、龍虎王つう超機人か!」

 

『効いてない!?』

 

「おいおいおい、龍に炎が効くかよッ!! おらッ!!!」

 

尾と龍王破山剣が鍔迫り合いをする中、龍王鬼の首はヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプMへと向けられる。

 

「てめえの炎は俺様には効かないが、俺の炎はどうだぁ!!」

 

【がぁッ!!!】

 

龍王鬼が吠えると同時にその口から炎が吐き出される。それを見たリョウトは再び手の平からの火炎ヒートバーンを放つ、だが火力に圧倒的な差があり、瞬く間に押し返されヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプMが炎の中へと消える。

 

『リョウト君!』

 

「おいおいよそ見してんじゃねえよッ!!」

 

炎に包まれたヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプMを見てクスハが悲鳴を上げた瞬間の隙を突いて龍王鬼の体当たりが龍虎王を弾き飛ばす。

 

「どうもてめえはまだ本調子じゃないみたいだな。超機人、温いぜ!」

 

【【ッ!!】】

 

龍王鬼の言葉に龍虎王が反応を見せる。それは何故判ったと言わんばかりの動揺に満ちていた。

 

「俺様の勘よ! まあ虎がいないからこっちも本気じゃねぇけどよ! もうちっと全力を見せてくれやッ!!!」

 

強烈な稲妻が龍虎王に向かって降り注ぎ、龍虎王とクスハ、ブリットの悲鳴が木霊する。

 

「おっと! 悪いな! 龍王鬼!」

 

【ギギャァッ!!!】

 

「悪い悪い、謝ってるだろ!」

 

ゲシュペンスト・リバイブ(S)とゲシュペンスト・MK-Ⅱの放ったブーステッドライフルとビームライフルの一撃が龍王鬼の片目を穿った。片目の視界を失った今がチャンスだとゲシュペンスト・MK-Ⅲとサイバスターとヴァルシオーネが龍王鬼に踊りかかる。

 

『ステークセット! おらッ!!!』

 

『リューネ合わせろッ!』

 

『判ってる!』

 

片目を失ったという明白な隙を物にする為に3方向からの攻撃が龍王鬼に叩き込まれた。

 

「ぐっおッ!! はっはあ! 今のは効いた! だが足りな『『究極ッ!! ゲシュペンスト……キィィィックッ!!!!』』があああああッ!?」

 

顔を上げた龍王鬼の首にゲシュペンスト・シグとゲシュペンスト・リバイブ(S)の飛び蹴りが叩き込まれ、龍王鬼達の悲鳴が木霊し、龍王鬼が地響きを立てて倒れ込んだ。

 

「決まりましたね、キョウスケ中尉の応援を」

 

その光景を見てレフィーナが勝利を確信し、キョウスケへの支援命令を出す。しかしブリッジで見ていたショーンの顔は険しかった。

 

「どうかしましたか? 副長」

 

「いえ、東洋の竜には逆鱗という逆さに生えた鱗があると言う話を聞きましてね」

 

「逆鱗ですか? それが何か?」

 

「いえ、今の攻撃が首の逆さの鱗に当たっている様に見えましてね」

 

ショーンがそう呟いた瞬間、倒れ伏せた龍王鬼の目が紅く輝き、凄まじい咆哮を上げシャドウミラーの機体を吹き飛ばし、市街を破壊する。それは咆哮というよりも嵐だった、そして嵐の中で龍王鬼はメキメキと音を立ててその姿を変えていく、龍の姿から人の姿へと……。

 

「逆鱗に触っちまうなんててめえらも馬鹿だぜ、本当はこいつは龍王鬼にも俺様にも負担がでけえから止めておきたかったんだが……はっはあッ! もう無理だぜ、俺様も龍王鬼……いや龍人鬼は止まらねえぞッ!!!」

 

【ガアアアアアア――ッ!!!】

 

龍王鬼の咆哮と共に稲妻が落ち、龍王鬼の姿を隠し、そして再び現れた時そこにいたのは魔龍ではなく、魔神だった。龍虎皇鬼よりかはワンサイズ小さいが、完全な人型となった龍王鬼、いや龍人鬼がその目を紅く輝かせ、拳を鳴らしながらギリアム達の前に立ち塞がっているのだった……。

 

 

 

 

龍王鬼の挑発にキョウスケは乗った訳ではない、武蔵達からの話、そして市街地を取り囲んでいる機体からその先に待っているのは未来の生き残りだと、キョウスケは考えていた。少しでも情報を、そして武蔵達からの話だけではなく、襲ってくる敵からの話も聞かなければと龍王鬼の言う敵の元へと1人で向かったのだ。

 

「邪魔だッ!」

 

立ち塞がるエルアインスをリボルビング・バンカーでまとめて貫きトリガーを引く、エルアインスの残骸が飛び散る中キョウスケは声を上げる。

 

「何時まで俺を待たせるつもりだ。それとも俺が疲弊するのを待っているのか、それならとんだ卑怯者だな」

 

広域通信ではなく外部スピーカーで声を上げる。返事はないとキョウスケは思っていたのだが、即座に広域通信で返事が返された。

 

『馬鹿を言え、お前の身体が暖まるのを待っていたんだ。これがな』

 

アルトアイゼン・ギーガのコックピットに響いたのは好戦的な若い男の声だった。そしてその直後ビルの上に蒼い特機が降り立った……その特機の事をキョウスケは覚えていた。

 

「マスタッシュマン……ッ」

 

L5戦役時に月で確認され、ゲッター1と共にインベーダーと戦い。消息不明になった機体――マスタッシュマン、いやソウルゲインが腕組をし、アルトアイゼン・ギーガを見下ろす。

 

「やっと俺達の前に現れたか……」

 

『こうして貴様に会うのはこちら側では2度目だ。ベーオウルフ、いや、キョウスケ・ナンブ』

 

キョウスケの言葉を遮り男の声がキョウスケの名を呼んだ。

 

「2度目……? そうか、あの時の」

 

2度目という言葉に一瞬キョウスケは困惑したが、ビーストが初めて確認された時にいた紅いマントと突撃槍を装備した機体を思い出し、その時のパイロットかと呟いた。

 

『ふっ、思いだしたのならば良い。俺はアクセル、アクセル・アルマーだ』

 

名乗ると同時にビルの上から飛び降りたソウルゲインがアルトアイゼン・ギーガの前に地響きを立てて着地する。

 

『ゲシュペンスト・MK-Ⅲとは似ても似つかんな。これがな』

 

「それがお前達の知る未来とは違う過程を歩んでいると言う証ではないのか? アクセル・アルマー」

 

『何故それを……いや、武蔵達から聞いていたか、確かにそうと言われればそうかもしれんな。1つ聞いておく、得体の知れん力が、突如湧き上がる感覚はあるか?』

 

得体の知れない力――それがアインストに寄生され、人で無くなり始めた証拠だとすればとキョウスケの返事は1つだった。

 

「そんな力を感じたことはない、これで満足か?」

 

『今はそうかもしれないが、何れそうなるかもしれん……武蔵はそうならないと思っているだろうが、俺はそうは思わん。ここで憂いを断たせてもらう、これがな』

 

ソウルゲインから溢れ出す闘志を感じ取り、キョウスケも操縦桿を強く握り締めた。

 

「悪いが、謂れの無い事で追い回されるのも飽き飽きだ」

 

『ふっ、そいつは悪かったな。侘びだ、ここで貴様は死んでいけいッ!!!』

 

凄まじい瞬発力で間合いを詰めると同時に振るわれたソウルゲインの拳をリボルビング・バンカーで受け止めようとしたキョウスケだが、咄嗟に防御から回避へと切り替えた。キョウスケが予想していた軌道よりも早く、そして防御ごと腕を破壊してやると言わんばかりの踏み込みに防御をしようとしていれば腕を失っていたと悟り、キョウスケの額から冷や汗が流れた。

 

(早い、そして重いッ……だがそれだけではない)

 

キョウスケが恐怖したのはソウルゲインの攻撃力にではない、完全に自分の癖を読み、一撃でリボルビングバンカーを奪いに来た事にあった。

 

(未来というのに信憑性が出てきたな)

 

何度も何度も、それこそ気の遠くなる回数を戦わなければこれほどまで自分の癖を盗まれることはない。

 

「なるほど、強敵だ」

 

ヴァイサーガではなく、ソウルゲインこそがアクセルの戦闘能力、そして対アルトアイゼン用に調整された機体だと判り、キョウスケは目の前の敵が強敵だと認めるのだった。しかし、それはキョウスケだけではなくアクセルも同じだった。

 

「今のタイミングで取れんか……外見だけではなく、機体性能もゲシュペンスト・MK-Ⅲとは別物だな、これがな」

 

肩を並べて戦い、そして敵として何度も何度もアクセルはキョウスケと戦ってきた。その中でキョウスケの操縦の癖、ゲシュペンスト・MK-Ⅲの機体の特徴を完全にアクセルは掴んでいた。アクセルの予想では、今のやり取りで確実に右腕を奪ったつもりだった。

 

「ふん、俺達の世界よりも修羅場は潜り抜けているか」

 

反応速度、そして攻撃を読み取る勘が桁違いだとアクセルは呟き、自分の記憶の中にあるベーオウルフとキョウスケ・ナンブの間には誤差がある事を感じ取っていた。

 

「俺達の道とこいつらの道は交わらん、やはりここで仕留めておくか。これがな」

 

今はまだ良い、しかしアインストとなれば向こう側のベーオウルフよりも遥かに脅威になるとアクセルは判断し、警戒度を更に引き上げた。

 

「打ち貫くッ!!!」

 

「打ち砕くッ!!!」

 

リボルビング・バンカーとソウルゲインの右拳がぶつかり、互いに大きく弾かれる。

 

「狙いは外さんッ!!!」

 

先に体勢を立て直したのはキョウスケとアルトアイゼン・ギーガだった。左腕の6連装マシンキャノンがソウルゲインに向かって放たれる。

 

「はっ! 舐めるなッ!!! おおおッ!!!」

 

アクセルの咆哮と共にソウルゲインの右腕に埋め込まれた紅い宝玉が輝き、手の平から溢れたエネルギーが6連装マシンキャノンの銃弾を全て受け止める。

 

「玄武剛撃ッ!!!」

 

本来高速回転させて打ち出す玄武剛弾を射出せず、高速回転させたままアルトアイゼン・ギーガに向かって振るうソウルゲイン。

 

「ちいっ!」

 

余裕を持って回避したはずだが、高速回転するソウルゲインの拳はそれ自体が鋭利な風の刃となっており、アルトアイゼン・ギーガの装甲を切り裂く、避ける事が出来ず、防ぐ事も出来ないと悟ったキョウスケの行動は早かった。左腕に装着されているシールドを構えソウルゲインの拳を受け止める姿勢に入る。

 

「そんなちゃちな盾で防げると思うなッ!」

 

「悪いな。防ぐつもりなんてないッ!」

 

シールドにソウルゲインの拳が当たった瞬間、装甲が展開しクレイモアが姿を見せる。

 

「なにッ!? 貴様正気かッ!?」

 

「当たり前だ。喰らえッ!」

 

至近距離でクレイモアが炸裂し、ソウルゲインとアルトアイゼン・ギーガの装甲を容赦なく穿ち、2機の間合いを強引に引き離す。

 

「くうっ!?」

 

「……ぐっ! だが貰ったぞッ!!!」

 

キョウスケとアクセルの明暗を分けたのは身構えていたか、否かの違いだった。至近距離からのクレイモア、下手をすれば自機のコックピットを破壊しかねない自爆技――それゆえにアクセルは身を守る事を優先し、キョウスケは致命傷だけを避ける事を選択し身構えた。

 

「おおおおおお――ッ!!!」

 

キョウスケの雄叫びと共に最大加速で切り込むアルトアイゼン・ギーガのリボルビング・バンカーの切っ先にT-ドットアレイが発生する。その光景を見てアクセルはぎょっとした様子で叫んだ。

 

「ソニックブレイカーだとッ!? ちいっ!!」

 

舌打ちと共に体勢を立てなおさせ、アルトアイゼン・ギーガに向き合うソウルゲイン。だがこれは完全に悪手だった、確かにこれがゲシュペンスト・MK-Ⅲ相手ならばそれは正解だ。機体の加速度、攻撃力、防御力、そしてベーオウルフの操縦の癖。それを全て記憶しているアクセルならばリボルビング・バンカーにカウンターを合わせる事も出来ただろう……。

 

「どんな装甲だろうが打ち貫くのみッ!!!」

 

だが今アクセルが対峙しているのはキョウスケ・ナンブであり、ベーオウルフではない。そしてゲシュペンスト・MK-Ⅲではなく、古の鉄巨人アルトアイゼン・ギーガだった。背部のバックパックの装甲が展開され、テスラドライブ、背部、脚部、腰部の大型ブースター全てが火を噴いた。それはアクセルの記憶にある踏み込みの速度よりも遥かに上だった。この世界と自分達の世界は違うと口にしていても、どこかでまだキョウスケとベーオウルフを同一人物だと思っていた……それが大きな隙をキョウスケに晒した。

 

「ぐ、ぐがあああああッ!!!」

 

凄まじい衝撃と炸裂音がアクセルの耳に響いた瞬間、ソウルゲインの巨体は後方に向かって大きく弾き飛ばされていた。

 

「外したか、だがこのまま決めさせて貰うぞ! アクセル・アルマーッ!!」

 

リボルビング・バンカーの切っ先から逃れたソウルゲイン。だが胴体には深い亀裂が走っており、火花を散らしている。ここが勝負所だとキョウスケは読み、ソウルゲインが立ち上がる前にと再びリボルビング・バンカーOCによる追撃を試みる。

 

「なめるなあッ!!!」

 

「なっ!? ぐうっ!?」

 

だが今度はキョウスケが悪手を打った。両腕で身体を跳ね上げたソウルゲインの両足が蒼く輝き、逆立ちしたままで強烈な回し蹴りをアルトアイゼン・ギーガに叩き込んだ。今度吹き飛んだのはアルトアイゼン・ギーガの方であり、左腕から火花を散らしながら立ち上がる姿を見てアクセルは舌打ちする。

 

「エネルギーラインを潰されたか、これではEG装甲はただのガラクタだな、これが」

 

リボルビング・バンカーOCの破壊力、貫通力は凄まじくガードこそしたもの内部を破壊され、ソウルゲインの最大の武器であるEG装甲の効力が大幅に低下した事にアクセルは苛立ちを感じこそしたがそれ以外はソウルゲインは万全だ。新機能も十分に稼動しており、回復能力を失ったとしてもそこまで痛手ではないと自分に言い聞かせるように呟いた。

 

「左腕が潰されたか……いや、問題はないか」

 

そしてキョウスケも同じ様に機体のコンディションを確認し、問題はないと呟いていた。元々シールドに搭載されたクレイモアは1度の出撃で1回か、2回使えれば御の字であり、そもそも使った段階で左腕はほぼお釈迦になると言っても良い呪われた装備だ。ならば致命傷を防ぐための盾として使えればそれで十分、両肩のスクエアクレイモアもバックパックのクレイモアも生きており、リボルビング・バンカーも弾数が十分にあると考えれば左腕を失った事はそう痛手ではなかった。むしろこれくらいの傷で動けなくなっていれば、百鬼獣やアインスト、インベーダーとの戦いを戦い抜いて行ける訳が無い。ソウルゲインとアルトアイゼン・ギーガは互いに引き寄せ合うように動き出し、市街地を破壊しながらキョウスケとアクセルの戦いは爆発的に激しさを増していくのだった……。

 

 

しかし、その戦いを良しとしないものもこの場にいた。

 

「んんー、どうしようかなあ。スティンガーくぅん」

 

「そ、そうだねぇ、ど、どうしようかコーウェン君!」

 

龍王鬼とアクセルが戦いの場に選んだ無人の市街地――そこにはコーウェンとスティンガーの2人と共にフォーゲルの姿があった。

 

「どうしますか父さん、このままでは研究所が……」

 

「うんうん、それは不味いんだよねぇ……ただここで僕達が戦うというのもまた不味いんだよねぇ」

 

「む、武蔵が余計なものを持ち込んでくれたからね」

 

真ゲッター・真ドラゴンには及ばないが、ゲッターD2も今の弱体化しているコーウェンとスティンガーの2人で相手をするには厳しい相手だった。準備が整うまでは動きたく無いが、このままでは自分達の研究所が破壊されてしまうとコーウェンとスティンガーは頭を悩ませる。

 

「僕が出ましょうか?」

 

「フォーゲル、君の気持ちはとても嬉しい。だがヒリュウ改と龍王鬼を相手をするには君はまだまだ実力が足りないのだよ」

 

英才教育を受け、アードラー・コッホの頭脳、そしてゲッター線を照射したマシンナリーチルドレンの肉体は確かに強力だ、だがそれでもパイロットしてはまだまだ未熟だとコーウェンは告げる。

 

「しょうがない、この研究所は廃棄しよう。研究所を残しておくと私達が危ないが、破壊している時間が無いからね」

 

「そ、そうだね。廃棄しよう、ゲッター炉心はブライに譲ったし、修理しているゲッターロボも放棄すれば良いさ。後は指名手配にならないように上手く逃げ切るだけだね」

 

残念だ、研究所を破壊しないと自分達が危ないという素振りを見せながら言うコーウェンとスティンガーを見てフォーゲルが声を上げた。

 

「ぼ、僕も乗ります! 3人揃えばゲッターロボは万全の力を出せるんですよね!」

 

父と慕う2人の悲しむ姿を見たくない、そんな無垢で純粋な気持ちでフォーゲルはゲッターロボに乗ると叫ぶ、それがコーウェンとスティンガーによって誘導された想いだとも知らずに……。

 

「フォーゲル、ありがとう。なら君の力を借りようか」

 

「3人なら出来る事もあるさ、まずはこの場所を完全に消し去らないとね」

 

「はいッ!」

 

フラスコの世界に潜み続けた悪意が今動き出そうとしているのだった……。

 

 

 

第123話 隼と継ぎ接ぎ/撃ち貫け奴よりも早く その8へ続く

 

 




Q 強制的に引き分けにする方法は?
A インベーダーズ

……すいませんね、良い形で引き分けにする方法がこれしか思いつかなかったのです。かなりヒートアップしてますし、第3者の乱入が無きゃ無理だなと言う事で暗躍を続けていたインベーダーズをそろそろ表舞台で出してみようと思います(姿を見せるわけではない)それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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