進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第123話 隼と継ぎ接ぎ/撃ち貫け奴よりも早く その8

123話 隼と継ぎ接ぎ/撃ち貫け奴よりも早く その8

 

EG装甲による回復能力を失ったとは言え、準特機サイズのアルトアイゼン・ギーガよりも頭1個分は大きいソウルゲインの方がエネルギーの貯蔵量、機体のパワーは圧倒的に上の筈――アクセルはそう考えていた。

 

「ちっ! ナハトに似ていると思ったらこれかッ!」

 

シャドウミラーによるゲシュペンスト・MK-Ⅲの複製――W00が乗るゲシュペンスト・ハーケン、アルトアイゼン・ナハト、そしてヴァイスリッター・アーベント。シャドウミラーの技術によって強化された機体に似ていると感じていたアクセルは、目の前に立つアルトアイゼン・ギーガがゲシュペンスト・MK-Ⅲ、アルトアイゼン・ナハトの複合機に武装を追加した物だと戦いの中で把握していた。

 

「おおおおおッ!!!」

 

『段々……お前の動きが掴めて来たぞ、アクセル』

 

接触通信によるキョウスケの言葉にアクセルは一瞬動きを止めた。そんなはずが無い、そう思い高速回転する両拳を振るう。

 

『言った筈だ……お前の動きを掴んで来たとなッ!』

 

触れれば抉り、あるいは千切り切る玄武剛撃。それを最低限の接触、正確無比なマニュアル操作で受け流し、ソウルゲインの動きを崩しに出るアルトアイゼン・ギーガの動きにアクセルは焦りと共にキョウスケとベーオウルフの違いを口にするだけではなく、文字通り己の身体でそれを体感し始めていた。

 

「ちいっ! ハッタリではないかッ!!」

 

ゲシュペンスト・MK-Ⅲの弱点と言えば攻撃に出る為に距離が必要な事だ。それに対してソウルゲインはアクセルの動きをトレースし、機動兵器とは思えない滑らかな動きによる白兵戦を得意としている。近距離型だが、最大の火力を発揮するには助走が必要であり変則的な近距離と近距離特化のアルトアイゼン・ギーガとソウルゲインの勝負は究極的な距離の奪い合いになる。互いの機体が接触するほどの距離になれば加速する距離を得れずアルトアイゼンは負ける。現にアクセルはこの方法でアインストに寄生された初期のキョウスケとゲシュペンスト・MK-Ⅲを封殺した事もある。その必勝の戦略をこの短時間で崩され、怒りは間違いなく感じていた。だがそれとは別に奇妙な満足感もアクセルは抱き始めていた。

 

「ああ、これは認めざるを得ないなッ! お前とベーオウルフは違うとなッ!」

 

加速の間合いを潰そうとするとそれをいなし、防ぎ、受け流し、ほんの少しの距離を得るだけで0から100にいたる加速をアルトアイゼン・ギーガは可能としていた。バックパック、リボルビング・バンカー、ギーガユニットに搭載されたテスラドライブによる強引な加速、めちゃくちゃな加速だが、それでも最大加速に至れる……それはアルトアイゼン・ギーガ最大火力をソウルゲインの距離である近距離で発揮出来るという事を意味していた。

 

「だがそれとこれとは話は違う! 俺は忘れんぞ、貴様が齎した破壊を、殺戮をッ!!」

 

『……お前の言う「俺」と俺は違う』

 

友を、仲間を、住んでいる街をベーオウルフは破壊した。あの悪夢の様な光景をアクセルは忘れることは出来ない、人の命が簡単に失われる地獄――その切っ掛けは紛れも無く、ベーオウルフによって齎された。

 

「違うと言うのならばそれを証明して見せろッ! ベーオウルフッ!!!」

 

『言った筈だ、謂れもない事で追われ続けるのは飽きたとな……良いだろう、ここでお前を捕らえて話を聞かせて貰うとしよう』

 

ソウルゲインの両手足により連撃を前に出続け回避を続けるアルトアイゼン・ギーガ。それはゲシュペンスト・MK-Ⅲとはまるで違う洗練された技術の結晶だった。

 

(ああ、そうだな。レモン、お前の言う通りだった)

 

それはベーオウルフでは出来なかった動き、それがキョウスケとベーオウルフの違いである。この世界と自分達の世界は違う、良く考えろとレモンに何度も何度も言われていたがそれを目の前で見て、こうして自分の相棒で戦ったからこそ違うと認める事が出来た。

 

「おおおおおおッ!!!」

 

『押し通るッ!!』

 

無人の市街地で眩い紅と蒼が何度も何度も交差する。攻撃する側と守る側が目まぐるしく変り、攻守が一瞬の内に変る。

 

「でえいッ!!」

 

『ちっ!』

 

脚にも両拳と同様エネルギーを溜める機構が追加されたソウルゲインの膝・脛も両拳と同じく必殺の威力を持つ武器へと昇華された。しかしそれをアルトアイゼン・ギーガは必要最低限の防御、そして回避を組み合わせ致命傷だけをかわし前に出る。

 

『取ったッ!』

 

「そう簡単に行かせるかあッ!!!」

 

肘と膝でリボルビング・バンカーの切っ先を受け止めるソウルゲイン。甲高い音が響き、それが徐々に重い音に変わるのを聞いてリボルビング・バンカーを折られると感じたキョウスケは蹴りを叩き込みソウルゲインから強引に距離を取る。

 

「流石に強い……未来でアインストとインベーダーと戦っていただけはある」

 

武蔵達から聞いた話では未来はアインストとインベーダーが闊歩する地獄であり、それを戦い抜いたアクセルの力量は間違いなくエースクラス、下手をすれば教導隊クラスの力量を有していた。その証拠にレッドアラートを灯すモニターを見てキョウスケはふっと笑った。

 

「ここを乗り越えられなければ俺に先はない」

 

この世界にもインベーダーとアインストは出現している。ソウルゲインに、アクセルに負けているようでは未来の結末――己がアインストに寄生される未来に至るだろう。そうならないために、キョウスケはなんとしてもここでアクセルを超えなければならなかった。

 

「強い、確かにお前は強い。だが……強いからこそ、お前は危険だ。キョウスケ・ナンブッ」

 

自分の知るキョウスケよりも強いこの世界のキョウスケがアインストに寄生されれば、自分の世界よりもひどい事になる。転移システムで再び世界を超えるのも不可能な今、不安の芽は確実に摘み取っておくべきだとアクセルは考えていた。

 

「貴様はここで死ねッ! キョウスケ・ナンブッ!」

 

「俺の道はここで終わりではない、押し通らせて貰うぞ。アクセル・アルマーッ」

 

紅と蒼のぶつかり合いは激しさを増し、互いに紙一重の攻防を繰り返し、キョウスケとアクセルは戦いの中で恐るべき速度で成長を続けているのだった……。

 

 

 

ヒリュウ改のPT・特機を1人で相手をする龍王鬼。数の利は圧倒的にヒリュウ改にあったが、圧倒的な力で数の不利を跳ね返していた。

 

「まったく、じゃじゃ馬が過ぎるぜ。龍人鬼よッ」

 

龍王鬼の問いかけに龍人鬼は怒りに満ちた唸り声を上げる。それは逆鱗に触れられた怒りで完全に我を失っている証だった、少なくともラドラとギリアムの2人を殺すまでは、あるいは納得するまで痛めつけるまでは龍人鬼への変化を止めるつもりはないと悟り、龍王鬼は溜息を吐いた。

 

「しゃあねえなあ、付き合ってやるぜ。相棒」

 

【グオオオオオオォォォオオオオンッ!!!!!】

 

市街地の窓ガラスを破壊するほどの雄叫びを上げる龍人鬼、その身体からは紅いオーラが吹き上がり筋肉が激しく隆起する。

 

『……ラドラさん、ギリアム少佐』

 

『言うな、俺のせいではない。強いて言えばギリアムのせいだな』

 

『俺に全ての責任を押し付けるなラドラッ!』

 

逆鱗を攻撃したラドラとギリアムのせいでパワーアップした龍人鬼を見て、僅かに揉めるヒリュウ改陣営。その隙を龍王鬼が見逃す訳が無かった。

 

「おいおいおい、俺様相手に揉めてるんじゃねえよ! おらおらおらおらッ!!!!」

 

『が、う、嘘だろッ!!!?』

 

残像が見えるほどのラッシュでジガンスクード・ドゥロを殴りつける龍人鬼。甲高い音が響き続け、徐々にジガンスクード・ドゥロの巨体が宙に浮かび上がる。

 

「おらぁッ!!!」

 

『う、うわああああッ!?』

 

巨体が浮かび上がった瞬間に飛び上がった龍人鬼の回し蹴りが胸部を捉え、ジガンスクード・ドゥロは市街地のビルを破壊しながらボールのように転がっていく。

 

『リオ!』

 

『判ってるわ、リョウト君ッ!』

 

『合わせますッ!』

 

ヒュッケバイン・MKーⅢ・タイプM、AMガンナー、量産型ゲシュペンスト・MK-Ⅱの3体の飽和射撃が龍人鬼に向かって放たれる。

 

「がっははははッ! 遅すぎて欠伸が出るぜッ!!」

 

しかし不意打ちに近いその攻撃は龍王鬼の高笑いと共に残像を残しながら分身した龍人鬼を捉える事は無かった。

 

『分身したッ!?』

 

『なら全部ぶっ飛ばせば偽物が消えるぜ! リューネッ!』

 

『判ってる! 行くよ! ヴァルシオーネッ!!』

 

『行くぜ。サイバスターッ!!』

 

サイフラッシュとサイコブラスターの翡翠と桃色の輝きが分身した龍人鬼を纏めて攻撃せんと広がって行く……。

 

『分身が消えたら一気に畳み掛けるぞッ!』

 

『長期戦は不利だ。いつ片割れが来るかも判らん』

 

分身が消えたら敵は1人、そこに全火力を集めると攻撃態勢に入るカチーナ達だったが、それを遮るようにクスハが声を上げた。

 

『違う! 分身じゃないッ! あれは……』

 

「悪いな、全部本物だよ。馬鹿野郎ッ!!!」

 

ヒリュウ改の各機体の前に躍り出た龍人鬼は拳を硬く握り締め、飛び出した勢いのまま拳を振るう。強烈な追突音と共に弾き飛ばされた機体の軋む音とパイロットの悲鳴が木霊する。

 

「悪いな、これは分身なんて言うちゃちなもんじゃねえんだよ」

 

超機人が強念者、念動力者を必要とするのに対して、超鬼人は特に特別な資質は必要ない、必要なのは超鬼人が起動するだけの体力を有しているかどうか、それだけだ。龍王鬼は無尽蔵の魂力、気力、体力を有しており龍王鬼のパートナーとしては最適であり、その無尽蔵の身体能力は限界を越える力を龍王鬼に発揮させていた。

 

「軽く遊ぶつもりだったが、てめえが龍王鬼を怒らせたから悪いんだぜ? とりあえず……死んどけッ!」

 

分身からの打撃でダウンしているゲシュペンスト・シグ、ゲシュペンスト・リバイブ(S)に向かって、手の平からエネルギーを打ち出し姿勢を見せ、トドメを刺す振りをする龍王鬼。その姿を見て隠れて隙を窺っていたエクセレンとラミアの2人は龍人鬼の動きを止める為に攻撃を繰り出した。

 

『これ以上はさせないわよんッ!!』

 

『ターゲットロック、穿て、ファントムアローッ!』

 

「がっはははッ! やっと出てきたかッ!」

 

最初の攻撃で姿を隠していたヴァイスリッター改とアンジュルグのオクスタンランチャー改・Eモードとファントムアローによる背後からの攻撃をサイドステップでかわし、立ち上がったヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプMに裏拳を叩き込み、吹き飛ばすと同時に次の敵と見定めた龍王鬼だったが、その前に白い影が立ち塞がった。

 

『俺が相手だッ!』

 

「ははッ!! 良いぜ良いぜ! 相手をしてやるよ! 超機人!!!」

 

虎龍王と龍人鬼――真作である龍虎王と、複製である龍虎皇鬼の片割れである龍人鬼。真作と複製の関係だが、龍虎皇鬼と龍虎王は開発コンセプトが異なり、そして機体の動力も違う。

 

『ぐっ! こいつ強いッ!!』

 

「はっはあッ! 鈍いぜ!」

 

虎龍王が1つ拳を振るうのに対して、龍人鬼は2つ、3つと拳を叩き込む。白兵戦の戦闘技術、そして格闘センス、それに加えまだ本調子ではない龍虎王と逆鱗を触られ、暴走気味だが龍王鬼からの無尽蔵のエネルギーを与えられている龍人鬼。超鬼人と超機人の戦いは超鬼人である龍人鬼の優勢、いやヒリュウ改の全ての機体を相手としても龍人鬼が有利に立ち回り、百鬼帝国の将軍の肩書きに恥じない戦闘力をレフィーナ達に見せつけているのだった……。

 

 

 

 

 

アルトアイゼン・ギーガとソウルゲイン、そして龍人鬼とヒリュウ改のPT軍の戦いの余波は凄まじくヒリュウ改の船体を幾度と無く揺らしていた。

 

「不味いですなあ……このままでは押し切られてしまいますぞ、しかしかといって……地上で艦首超重力砲を使う訳にも行きません」

 

「判っています。しかし……副砲やミサイルでは追いきれない」

 

ヒリュウ改の切り札の艦首超重力砲を地上で使えばその余波による深刻な汚染が懸念され、更に言えば元々調査艇のヒリュウはその性質上上甲板のビーム砲は前方水平方向に撃てず、また艦橋左右のビーム砲は板状パーツが干渉して真横に撃てないと言う構造上の欠陥を持ち合わせている。射撃方向が縛られ、地上に被害を与える訳に行かないとなると使用可能な武器は極端に限られる。

 

『おらおらおらッ!!! 行くぜええッ!!』

 

『あたしを舐めるなよッ!!!』

 

『はっはぁッ!!! 良いぜ、良いぜ、お前みたいな奴は大好きだぜ! 俺はよッ!!』

 

龍人鬼とゲシュペンスト・MK-Ⅲでは出力も、機体の大きさも圧倒的にゲシュペンスト・MK-Ⅲが劣っている。それでも龍人鬼と拳を交わす姿は不屈の闘志と負けないと言う決意をこれでもかと示していた。

 

『ぐっ、おおおお――ッ!!』

 

龍人鬼の拳で頭部の右側を抉られ、炎上しながらも前に出たゲシュペンスト・MK-Ⅲの右拳が龍人鬼の顎を打ちぬいた。

 

【グ、グルゥッ】

 

『がっはははッ! 良い拳だぜ!』

 

クロスカウンター気味の一撃で初めて龍人鬼がたたらを踏んで後退した。それは圧倒的な強さを見せ付けていた龍人鬼の初めての隙であり、誰もが付け入る隙だと感じさせる明白な隙だった。攻め込む隙だったが、龍人鬼に攻撃を仕掛ける事は出来なかった。何故ならば……。

 

『青龍鱗ッ!!!』

 

『がっはははッ! 別に助太刀してくれなくても良かったんだぜ?』

 

『ふん、成り行きだ。これがな』

 

スクエアクレイモアを喰らったのか全身に穴を空け、吹き飛んで来たソウルゲインの空中から青龍鱗による光線によって追撃を仕掛けることが出来なかった。その代りに分断されていたキョウスケが合流する事が出来たが、敵も合流したので戦況はイーブンに戻っただけだ。

 

「攻め手が足りない……」

 

「手数は十分な筈なのですがね……やれやれ、DC戦争時のDCや統合軍はこんな気持ちだったのでしょうかね」

 

数は圧倒的に有利なのに、個の戦力に圧倒される。それは奇しくもDC戦争、L5戦役でレフィーナ達が取った少数精鋭による強行突破の形に良く似ていた。

 

「なんとか突破口を……何事です!?」

 

突破口を見出す為に戦略を考えていたレフィーナだったが、突如ブリッジに鳴り響いた警報に顔を上げる。

 

「敵の増援ですかな? ユン伍長」

 

「違います! ゲッター線反応が突如市街地に出現しました! エネルギー総量はめ、メテオ3にゲッター1が特攻した時と同じ……いえ、それよりも遥かに上ですッ!!」

 

「各員に警告を! 何かが起きますッ!!」

 

レフィーナの指示が飛んだと同時に市街地に亀裂が走り、そこから凄まじいゲッター線の光の柱が宇宙へ向かって放たれた。

 

『なんだ。何が起きているッ!?』

 

『こいつあ……やべえなあ。おい、超機人、てめえも判ってんだろ?』

 

『『グルルゥゥ』』

 

龍虎王、龍人鬼の唸り声が重なり、その視線が空中に向けられた。その次の瞬間、空中に亀裂が走り、そこから無数の腕が飛び出し、その亀裂を中から掴んで強引に抉じ開けようとする光景がキョウスケ達の目の前に広がった。

 

『なんだ……何か出てくるッ!』

 

『嫌な予感がびんびんするわね……ッ』

 

言いようの無い寒気と震えを感じ、戦いの中だというのにその異様な光景にこの場にいる全員が目を奪われた。

 

『シロ、クロ! 何が起きてるんだ!?』

 

『わ、わかんにゃい! で、でも凄いエネルギーだにゃ!』

 

『た、大変にゃことが起きてるのにゃ!』

 

『うっ……やべえぞ……でかい、なんだ……なんだよこれ……』

 

『う、餓えてる? なに、この異様な……感じは……』

 

『き、気持ち悪い……何、この感じ……』

 

空間の亀裂から放たれるのは強烈な飢餓感、念動力によってそれを感じ取ったタスクとリオ、リョウトはその強烈な餓えを伴った念に当てられて気分を悪くした。

 

『殺意、いや、悪意か……なんだこの感覚は……ッ』

 

『いや、問題はその気配ではないぞ、ギリアム。来るぞッ!!』

 

ラドラの一喝と共にゲッター線の光の柱を発生させた地下から3色の戦闘機が飛び出した。赤、白、黄色――弾丸のような航空力学に喧嘩を打ったそのフォルム、そしてその姿を見てレフィーナは声を上げた。

 

「ゲットマシンッ!?」

 

「いえ、ゲットマシンはゲットマシンですが……あれは……ッ」

 

ゲットマシンに寄生しているインベーダーの姿を見てショーンは嫌悪感と不味い事になっている事を悟った。

 

『キッシャアアアアアアアアッ!!!!』

 

驚愕するレフィーナ達の前でゲットマシンは武蔵の操ったゲッター1に類似した姿に合体するが、右上半身、左下半身、左角が黒いインベーダーの身体に置き換わり、右目が紅く血走った黄色の異形の瞳を持つゲッターロボ……いや、メタルビースト・ゲッター1が地響きを立てて着地し、その手にした斧で空中に走った亀裂を更に広げ、中から抉じ開けようとしていた無数の腕の持ち主が唸り声を上げて市街地に降り立った。

 

『コハアア……』

 

口から涎を垂らす猫背の無数のゲシュペンスト・MK-Ⅱ……いや、メタルビースト・ゲシュペンスト。

 

『……キシャアアアアアッ!!!』

 

触手と不気味な複眼を持つミサイルを背負うメタルビースト・ラーズアングリフ。

 

『……』

 

他に2機体と比べれば静かだが、強烈な敵意と殺意を叩きつけて来る蒼い、ソウルゲインに良く似た人型……メタルビースト・アースゲイン、その姿を吐き出すと共に空中に出現した亀裂は消滅したが亀裂から出現した無数のメタルビーストは健在で、涎を垂らしながらキョウスケ達を見つめ、雄叫びを上げると同時にその餓えを満たさんと言わんばかりにキョウスケ達へと襲い掛かって行く。

 

「ふーむ、まだまだゲッター線の量が足りなかった、そうだね。スティンガーくぅん」

 

「し、しょうがないよ。篝火にはまだ足りなかったんだ。それよりもフォーゲルは大丈夫かい?」

 

「だ、大丈夫です……へ、平気です」

 

青い顔で返事を返すフォーゲルの返事を聞き、コーウェンとスティンガーは形だけのフォーゲルを気遣う言葉を投げかけ、その言葉に嬉しそうに頬を緩めるフォーゲルを見て笑い、後方にメタルビースト・ゲッター1を待機させるのだった……。

 

 

 

涎をたらしたメタルビースト・ゲシュペンストは餓えていた、荒廃した大地に人はいなくなり、アインストか、共食いをするしか飢えを満たせない、ゲッター線は豊富にあってもその飢えは満たされる事は無く、呼び声に導かれフラスコの世界にやってきたメタルビースト・ゲシュペンストはその飢えを癒す為に牙をむき出しにし、口の中から触手を伸ばしながら自分に良く似た姿をした機体に飛び掛った。

 

「うおらぁッ!!!」

 

だがその牙は届く事は無く、龍人鬼の硬く握り締めた右拳が胴にめり込み後方に向かって弾き飛ばされた。

 

『な、なんで助けて』

 

困惑したのは助けられたラッセルだ。何故百鬼帝国の将軍が自分を助けたのかと困惑していると龍王鬼の大声が市街地に響いた。

 

「停戦だ! あの化け物を野ざらしにすればとんでもねぇ事になる。ここは停戦して共闘と行こうぜ!」

 

確かにメタルビーストは脅威だ、だがそれでも龍王鬼の言葉を簡単に受け入れる事は出来なかった。

 

『共闘だのなんだの言っておいて、後ろからドカンか?』

 

「おいおい、俺様はそんな卑怯な事はしねえよ。俺の流儀に反するからな、それよりもあれを見ても、そんなことを言えるのか?」

 

メタルビースト・ラーズアングリフの背中の触手が伸び、ビルに突き刺さると、そこから何かをビルに流し込み、ビルがインベーダーへと姿を変えた。

 

『ビルが化け物に……ッ』

 

『インベーダーは無機物だろうが、有機物だろうが寄生し、同族へ変える。俺とて貴様らと共闘など死んでもごめんだが、本当に死ぬ訳にはいかん、協力せんというのならば貴様らを囮にし、俺達は逃げさせて貰う』

 

インベーダーはこうしている間にも数を増やしている……その光景を見てレフィーナはユンに合図を出し、自身の声を外に届けさせた。

 

『協力を願います。このままでは手のつけられない事になる』

 

「おうさ、つうわけだ。おい、アクセル。どうすりゃ良いんだ、あの化け物はよ」

 

『目を潰せ、全身にある目を半分も潰せばあいつらは活動出来なくなる。ゲッターロボがいれば楽だが、無い物強請りは出来ん。サイバスターとヴァルシオーネでメタルビーストの装甲を破壊しろ、そうすれば後はなんとでもなる』

 

我が物顔で指示を出すアクセルに不満は当然出る。なんせ今まで戦っていた相手だからだ、だが目の前の脅威を見てそこに拘っているほど、キョウスケ達は馬鹿ではなかった。

 

『マサキ、リューネ、ここはアクセルの言う通りにする』

 

『……貴様、どこかで会ったか?』

 

『さて……な。とにかくインベーダーをこの場から逃がす訳には行かない! 速攻で決めるぞ!』

 

無機物、有機物おかまいなしに寄生し数を増やすインベーダーにとっては新西暦の地球はどこをとっても餌だ。それを許す訳には行かないと言うギリアムの言葉に、アクセルの作戦を聞き入れることに不満を抱きながらもマサキとリューネは頷き、再び市街地に翡翠と桃色の光の波動が放たれるのだった……。

 

「ちいっ! 化け物の癖に知恵が回るぜッ!!」

 

『シャアッ!!』

 

「ゲシュペンストの癖に手足を伸ばしてるんじゃねぇッ!!」

 

インベーダーの細胞によって手足を自在に伸ばし、右半分の視界を失っているゲシュペンスト・MK-Ⅲを攻め立てるメタルビースト・ゲシュペンスト。

 

『中尉!』

 

「おせえぞ! ラッセル! あたしの右側に回らせるな!」

 

『了解ッ!』

 

ゲシュペンスト・MK-Ⅱの射撃による援護が入り、メタルビースト・ゲシュペンストは牙を打ち鳴らし苛立った素振りを見せる。その姿は肉食動物そのものだが、支援が加われば攻めるのが難しくなるその事を認識する頭脳を持っていることにカチーナは驚いた。

 

(時間は掛けられねえな)

 

獣同然の姿に知性が低いと判断したが、それは間違いで戦況をコントロールする頭脳を持っていた。そうなるとサイフラッシュとサイコブラスターで受けた損傷を周囲の建物を吸収し、回復する可能性がある。待ちの戦術は出来ない、この一瞬のやり取りでカチーナはそれを感じ取っていた。

 

(それにあいつも嫌な予感がするぜ)

 

ゲッタートマホークで空間を切り裂いたメタルビースト・ゲッター1はマントを身体に巻きつけ、高密度のゲッター線をバリアのように展開し、全ての攻撃を無効にしてくるので攻撃は向けられていないが、出現した化け物の中で1番危険なのはあのゲッター1だとカチーナは感じていた。

 

「ラッセル、突っ込むから援護しろッ!」

 

『は、はッ!? 中尉!? 何をッ!』

 

「うっせえ! 速攻で決めるッ!!!」

 

ラッセルの返答を聞かずカチーナはゲシュペンスト・MK-Ⅲを走らせる。その姿を見てメタルビースト・ゲシュペンストは餌が向こうから突っ込んできたと言わんばかりに嘲る様な雄叫びを上げる。

 

「化け物が人間様を舐めてるんじゃねぇッ!!!」

 

『シャアアアアッ!!!』

 

ブースターで肉薄するゲシュペンスト・MK-Ⅲと筋肉のバネで疾走するメタルビースト・ゲシュペンスト。その瞬発力はメタルビースト・ゲシュペンストの方が上だった。

 

『中尉! カチーナ中尉! 敵の方が早い! 下がって!』

 

「うるせえラッセル! お前はあたしが突っ込めるように支援してろッ!!!」

 

ラッセルからの通信を強引に切り、カチーナは前だけを見つめる。伸びて来た腕が変形し、鋭い鎌になったのを見てこれだ。ここだと心の中で呟き、メタルビースト・ゲシュペンストの目の前で反転する。

 

「ぐうっ!?」

 

『シャアアアアッ!!!』

 

ゲシュペンスト・MK-Ⅲの背部のブースターと右腕が鎌で切り裂かれ、そのまま巻き戻しのようにメタルビースト・ゲシュペンストに回収される。待ち望んだ餌が来たと言わんばかりに大口を開けるインベーダーを見てカチーナは獰猛に笑った。

 

「馬鹿がッ! だからてめえは化け物なんだよッ! ステークセットッ!! ぶち抜けえええええッ!!!」

 

メタルビースト・ゲシュペンストが、インベーダーが切り落としたゲシュペンスト・MKーⅢの腕を飲み込む寸前に加速し、ライトニングステークを叩き込む、それは切り落とされた右腕を貫き、残された左腕のライトニングステークの威力を爆発的に跳ね上げた。

 

「てめえが欲しがった餌だ、たらふく喰ってくたばりな」

 

『ギ、ギギャァアアアアアアアーッ!!!』

 

体内から細胞ごと自身を焼き尽くす雷電にインベーダーは悲鳴を上げ、取り込んだ右腕が完全に消失する頃には炭化したボロボロの姿のメタルビースト・ゲシュペンストの姿だけがそこにはあった。

 

『シーズアンカアアアアアーッ!!!』

 

鎖の重々しい音が響き、ビルを砕きながら伸びて来たシーズアンカーがメタルビースト・ゲシュペンストを打ち砕き、ジガンスクード・ドゥロが姿を見せる。

 

『なんちゅう無茶をしてるんっすか!?』

 

「うっせえ! お前の改造が間に合わなかったから火力が足りなかったんだよッ!!」

 

汎用機はバランスこそ良いが、突出した戦力を持たない。メタルビースト・ゲシュペンストを倒すのに足りない火力を自身の右腕から持ってくるという方法しかカチーナがメタルビースト・ゲシュペンストを打ち倒す術は無かったのだ。

 

「あたしの援護に来る前にさっさと化け物の装甲をぶっ壊して来い!」

 

『……ッす』

 

「は? なんだって?」

 

『ガス欠っすッ! もうギガワイドブラスターも使えないし、もっと言えば浮いてるのがやっとッス!!』

 

「てめえ馬鹿野郎!! なにやってるんだ! このドアホウッ!!!」

 

『し、しょうがないでしょうが! ガンドロは燃費が最悪なんっすから!』

 

「だとしても特機が使えなくてどうする! くそがッ!」

 

カチーナとすればジガンスクード・ドゥロがいるからこその特攻に等しい攻撃だったが、そのジガンスクード・ドゥロが攻撃に参加出来ないと聞いて、残された左腕でビームライフルを構える。

 

「ラッセル! リョウト達の支援に行くぞ!」

 

『中尉は帰艦するべきです!』

 

「んなこと言ってる場合か! タスク! てめえさっさと補給して来い! お前が戻ったらあたしが下がる!」

 

ジガンスクード・ドゥロが再び戦える状況になるまで下がる気が無いと悟ったタスクは無茶しないでくださいよと叫び、ヒリュウ改へと帰艦する。

 

『中尉……大丈夫なんですか』

 

「白兵戦は駄目だが、射撃くらいなら出来る。とにかくこいつらをここから出すわけにはいかねえ! 続けラッセル!」

 

メタルビーストを倒す攻撃力は無いが、メタルビーストを倒せる状況を整える事は出来るとカチーナは火花を散らすゲシュペンスト・MK-Ⅲを繰り、リョウト達の支援へと向かう。

 

『いっけえええッ!!!』

 

ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプMの突き出した両手の平からマグマ原子炉の熱を利用した火炎放射が放たれる。

 

『ギギィッ!!!』

 

『ギャアアアアッ!!!』

 

『キシャアアアア―ッ!!!』

 

炎に包まれたメタルビースト・ゲシュペンストからインベーダーの声が響くが、それは苦悶の声ではない。インベーダーにとって熱など恐れる攻撃ではなく、ほんの数秒足止めできるかどうかの攻撃に過ぎない。

 

『……でもそれで良い、ギリアム少佐! ブリット後は頼んだよッ!』

 

火炎放射を停止し、リョウトはヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプMを後退させる。炎による目晦ましが消えたインベーダーの視線の先にはメガバスターキャノンを構えているゲシュペンスト・リバイブ(S)とソニックグレイブを構えて駆けて来る虎龍王の姿があった。

 

『ゲシュペンストの装甲が無いお前達にこれを耐えることが出来るか?』

 

『おおおおッ! 一意専心ッ!!!』

 

ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプMの攻撃はインベーダーが身に纏っているメタルビースト・ゲシュペンストの装甲を破壊する為の物に過ぎない。ソニックグレイブの一閃はインベーダーを両断し、虎龍王が離脱した瞬間に撃ち込まれたメガバスターキャノンの高出力のビームの光の中に叫び声を上げながらインベーダーは消え去った。

 

『行ける、虎龍王ならインベーダーとも戦えるッ!』

 

『念動力のお蔭かな? それとも百邪と戦っていたから?』

 

『それは判らないけど……虎龍王で斬り込むッ!!』

 

ソニックグレイブの一閃を受けたインベーダーの伸ばした触手は暫くのた打ち回ると、溶けるように消滅する。蚩尤塚で発掘された壁画や文献に残されていた通り超機人である虎龍王はインベーダーに対して有効打を与える事が出来ていた。それに対して、インベーダーに対して決定打を持ち合わせていなかったのはサイバスターだった。

 

『くそッ! ディスカッターが弾かれる! なんでだッ!?』

 

『マサキ、無茶をしたら駄目にゃッ!』

 

『多分、相性が悪いんだにゃ!』

 

『デモンゴーレムと戦えるのに、なんでこの化け物と戦えないんだよ! おかしいだろッ!?』

 

ラ・ギアスでヴォルクルス教団が使う外法死霊傀儡によって作り出されるデモンゴーレムにサイバスターを初めとした魔装機神は有効な能力を有していた。それなのに同じ化け物のインベーダーやメタルビーストにダメージを与えられないのはおかしいだろとマサキが声を上げる。

 

『た、多分、プラーニャが足りないのニャ』

 

『それに地上じゃサイフィスの加護が十分じゃないのニャッ!!』

 

『ちいっ! そういうことかよッ!! カロリックミサイルッ!!』

 

サイバスターがインベーダーに有効打を与えられないのはプラーナ不足、もっと言えば魔装機神が最大の力を発揮出来るのはラ・ギアスであり、地上ではその力を最大限に発揮できないのが大きく影響していた。

 

『マサキ! とどめは私がッ!』

 

『悪い、リューネッ!』

 

カロリックミサイルで装甲を破壊したメタルビースト・ゲシュペンストにヴァルシオーネがハイパービームキャノンの引き金を引き、インベーダーはその光の中へと消え去った。

 

『大丈夫かい? マサキ』

 

『ああ、とは言ってもまさかサイバスターとインベーダーとか言う化け物の相性がここまで悪いなんて思ってなかったぜ……ッ』

 

悔しそうにマサキは呟いた。魔術を併用して作られているサイバスターを初めとした魔装機神の弱点、それがインベーダーとの戦いで明らかになってしまった。

 

『まずは貴様らからだッ!』

 

触手と無数の目を持つミサイルをばら撒いているメタルビースト・ラーズアングリフにゲシュペンスト・シグが地響きを立てて迫る。

 

『『!!!』』

 

ラーズアングリフと異なり、触手による近~中距離の攻撃手段を持つメタルビースト・ラーズアングリフは市街地の建造物に自身の細胞を埋め込みインベーダーを増やし続けている。敵の増援を減らすためにメタルビースト・ラーズアングリフに攻撃を集めるのは当然の事だ。しかしそれはインベーダーも判っており、強烈な勢いで接近してくるゲシュペンスト・シグを近づけさせまいと猛攻撃を繰り出す。

 

『鈍い! そんな物で俺を捉えると思うなッ!!』

 

上下左右から襲い掛かってくる触手は新西暦のパイロットであれば畏怖する光景だっただろう。だがラドラにとっては遅い攻撃に過ぎず、高速回転するエネルギークローで触手を容赦なく切り裂き、あるいは抉り、インベーダーによって制御され当たるまで追いかけてくるミサイルを頭部のバルカンで迎撃し、ラーズアングリフの膨大な射撃武器による弾雨はマニュアル制御によるサイドステップやターンを駆使し、近づけさせまいと攻撃を繰り出してくるメタルビースト・ラーズアングリフへの距離を詰める。

 

『主砲照準合わせ! てえッ!!!』

 

『上手く避けてくれよッ! ギガ・ワイドブラスタアアアア――ッ!!!』

 

近づけさせまいと触手を壁に様に展開しラドラの進撃を防ごうとしたメタルビースト・ラーズアングリフだが、ヒリュウ改の主砲、補給を終えたジガンスクード・ドゥロのギガ・ワイドブラスターによって触手を燃やし尽くされ、苦悶の叫び声を上げる。

 

『化け物の癖に痛みで動きを止めるか、化け物なら化け物らしく怒りで襲い掛かってでも来れば良い物を』

 

化け物の癖に痛みを感じて動きを止めるかとラドラは嘲るように笑い、高速回転するエネルギークローをメタルビースト・ラーズアングリフに突き立てようとその腕を振り上げた時、高密度のゲッター線をバリアのようにし、動きを止めていたメタルビースト・ゲッター1が動き出し、身体に巻きつけていたマントを広げると同時にゲッタービームの雨が市街地に降り注ぐのだった……。

 

 

124話 隼と継ぎ接ぎ/撃ち貫け奴よりも早く その9へ続く

 

 




無差別ゲッタービームでマップ変化により次のイベントに変動って言うのをイメージしています。次回はアクセルやキョウスケとメタルビースト・ゲッター1、アースゲインの戦いを書いて、次の話に入って行こうと思います、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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