124話 隼と継ぎ接ぎ/撃ち貫け奴よりも早く その9
降り注いだゲッタービームの雨は大地をゲッター線で汚染するだけに留まらず、ヒリュウ改のPT部隊を纏めて吹き飛ばし分断させた。
「ヴィンデル、レモン、応答しろ、ちっ……駄目か」
高密度のゲッター線による通信障害にアクセルは舌打ちをし、通信機の電源をOFFにしソウルゲインを立ち上がらせる。幸いにも機体にダメージは無い、いや元々あのゲッタービーム自体に攻撃する意図が無かったのだろう。周囲をゲッター線で汚染し、インベーダーが活性化する舞台を作り出す。攻撃でも無い攻撃にアクセル達は大打撃を受けていたと言う事実にアクセルは忌々しそうに舌を鳴らした。
「ちい……やはりあいつを最初に潰すべきだったか」
アースゲインの攻撃を受け攻め切れなかったと言うのはある。だが空間を引き裂く能力、そしてゲッター線で汚染する力を見ればメタルビースト・ゲッター1が存在していれば、インベーダーがより活性化する。そうなればアインストも活性化し、アクセルの知る未来に繋がる可能性が高まるとアクセルは険しい顔をしてメタルビースト・ゲッター1とそれを守るように立ち塞がる4機のメタルビースト・アースゲインを睨みつけた。
「まだくたばっていなかったか狂犬共め」
メタルビースト化したアースゲインを見れば、それがどこからやってきたかと推測するのは簡単なことだった。テスラ研を壊滅させた愚連隊「ブラッドハウンド」の物である事は間違い無い。自分達が転移した後に再生し、メタルビースト・ゲッター1によってこの世界に召喚されたと悟りアクセルは苛立った様子で化け物めと吐き捨てた。
『アクセル、同型機に見えるがあれはなんだ?』
「……俺の機体のベース機だ。言っておくがベーオウルフ。俺は貴様らと馴れ合うつもりはない、あくまでこの場を切り抜ける為だけの共闘だ」
インベーダーが増えればアインストも出現するかもしれない、もし追われでもしてアースクレイドルに来られては困るという事でここで制圧する為に共闘する事を選らんだだけで、アクセルからすればキョウスケもインベーダーも敵であると言う認識に変わりは無かった。
『ちょいちょい、髭男さん。そんなことを言ってる場合じゃないでしょ? ここは少しは協力しようって気にならないの?』
接触通信で無理やり話しかけて来たエクセレンにアクセルは無視を決め込んだ。
『ちょーっとー、もしもーし、聞いてる? もしもーし』
「ええいッ! 鬱陶しいぞ貴様ッ!!」
ついにはソウルゲインを叩き始めたヴァイスリッター改に痺れを切らしたアクセルが怒鳴り声を上げる。
『そっちが無視するから悪いんでしょう、ね? キョウスケ』
『……』
『あーらら、こっちもだんまり? どうしてこう協調性が無いのかしらねぇ……』
困っていると言うよりも呆れていると言う様子のエクセレンの言葉を聞きながら、アクセルはメタルビースト・アースゲインに視線を向けた。
(動く気配が無い、それに立ち位置を見るからに……ちっ、そこまでの知恵をつけているか)
『アクセルだっけ? 私もキョウスケもまだ死にたくないのよ、知ってることを教えなさいよ。聞いてる? ちょっと、もしもーしッ!!』
「ええいっ! 鬱陶しいぞ貴様! 良い加減にしろ! そもそも貴様は何者だッ!!!」
どうやってこの場を切り抜けるかと考えていたアクセルが怒鳴り声を上げる。キョウスケと親しげなのは理解していたが、向こう側でキョウスケにペアなど存在せず、1人きりで行動していた。だからこそ何者だとエクセレンに問いかけた。
『え、あーはいはい、自己紹介がまだだったわね。私はエクセレン、エクセレン・ブロウニングよ』
「ブロウニング? ブロウニングだとぉッ!?」
レモンに似ていると感じていたアクセルだが、姓が同じ事に声を上げた。ありえない、レモンの探していた妹――それがベーオウルフとペアを組んでいる……そのありえない偶然、いや奇跡にアクセルは驚きを隠せなかった。
『もう、何なのよ? 私の名前に超反応するなんて……未来か、平行世界か知らないけど、私の事も知ってるの?』
どこか能天気な雰囲気があるが、その言葉の節々に知恵を感じさせる。その言動は紛れも無くレモンに酷似していた……合流して来たアンジュルグを見つめ、報告を怠っていたといらつきを覚えた。しかしそれと同時に自分の世界と余りにも違う、この世界の歴史に困惑と驚きを隠せなかった。
「アースゲインは脚に攻撃機能を持たないが、その代りに残像が出せるほどの速度が出せる。ゲッターロボを守っているから動く気配がないが、攻撃を仕掛ければ動き出すだろう。その前にお前とそこのお前で地面を攻撃して動きを制限しろ、そこを俺とベーオウルフで極めその後にゲッターロボを叩く」
『やだ、私ってやっぱり魔性の女かしら? 名前を名乗るだけでこのツンデレ君を協力させれたわよ。でも駄目よ、私はキョウスケの彼女だからね』
「ええい! 勘違いするなッ! そんなのではないッ!!」
『ふふ、嫌も嫌も好きの内って事かしら? 私ってやっぱり罪な……『気を抜きすぎだ、エクセレン』……はーい、ごめんちゃい』
内輪揉めの動きを攻撃と判断したのかメタルビースト・アースゲインの腕から伸びた触手がヴァイスリッター改へと伸び、それをアルトアイゼン・ギーガが防ぎ前に出る。
「ちっ、ままならんな、これが」
足場を崩すと言うことも出来ず4機同時に動き出したメタルビースト・アースゲインにアクセルは舌打ちし、唸り声を上げながら襲ってきたメタルビースト・アースゲインの顔面にソウルゲインの拳を叩き込ませる。雄叫びを上げ吹っ飛ぶメタルビースト・アースゲインの絶叫がアクセル、キョウスケ、エクセレン、ラミアの4人とのメタルビーストとの戦いの幕開けとなるのだった……。
メタルビーストの雄叫びがあちこちから上がり続ける。それは威嚇であり、エクセレン達に死にたくないと言う恐怖を抱かせると共に生理的な嫌悪感を抱かせる――そんな雄叫びだった。
(……ちょっとふざけて見たものの……やばいわね)
エクセレンという女性はその知恵を、その頭の回転の良さを悪ふざけの仮面で隠し、誰よりも冷静に状況を見極める事に秀でた才能を持つ才女だ。相手のペースを乱し、自分の流れに持ち込み相手の情報を引き出す。お調子者の仮面の下で誰よりも状況を把握する……それがエクセレン・ブロウニングのあり方である。ただそれであったとしても必要以上にふざけていたのは恐怖の裏返しであり、そうでもしなければメタルビーストの雰囲気に呑まれてしまいそうになっていたからだ。
『エクセ姉様、大丈夫でございますか?』
「ラミアちゃん、うん。大丈夫よ、ありがとう。さぁ、キョウスケ達の援護をしましょうッ!」
メタルビースト・アースゲインはメタルビースト・ゲシュペンスト、メタルビースト・ラーズアングリフよりも厄介な個体だった。他の2体が数の利による集団戦術や、近づけさせない事に特化した戦術を取っていたのに対してメタルビースト・アースゲインは単純に火力・防御力・機動力、再生能力に特化した能力を持っていた。
『ちいっ、これでも貫けんかッ!!!』
『キッシャアアアアアーーッ!!!』
圧倒的な力を持つ個体による力任せの蹂躙、数発直撃を受けてもメタルビーストの再生能力とアースゲインのEG装甲による自己再生能力――攻撃手段は打撃か蹴り、触手と噛み付きとその種類は極めて少ないが、その圧倒的な基礎性能で攻撃を仕掛けてくるのはかなりの難敵だった。
『馬鹿が、化け物相手に馬鹿正直に人間相手と同じに戦ってどうする』
『キシャアアッ!』
『やかましいぞ! 出来損ないがッ!!』
メタルビースト・アースゲインが伸ばした触手を掴み取り、ソウルゲインは力任せに引き寄せ吹っ飛んで来たメタルビースト・アースゲインの顔面に肘打ちを叩き込むと同時に背後に回り込む。
『ふんッ!!』
『ぐぎょぱッ!?』
両手でメタルビースト・アースゲインの頭部を掴んで捻り、首から上が後方に捻られ破損した箇所からオイルを撒き散らす光景はスプラッタその物だった。
「うわ、グロ……ッ」
エクセレンがそう呟くのも無理はない、彼女も兵士であり人の生き死には近くで見てきた。だがそれとは別ベクトルの嫌悪感がメタルビースト・アースゲインにはあった。
『ついでだ、これも持って行け化け物め』
『ゴギャアアアアアッ!?』
捻り切りかけた頭部と首の繋ぎ目に砕いたコンクリートブロックを埋め込み、ついでだと言わんばかりに両腕を肘から圧し折るソウルゲイン。
「随分と残虐なことをするじゃない?」
『やかましい、インベーダーはPTや特機に寄生していればその性質を得る。人型の今、関節で圧し折ってやれば回復能力はガタ落ちだ』
アクセルの言う通り首にコンクリートブロックを埋め込まれ、肘から腕を折られたメタルビースト・アースゲインの回復速度は目に見えて落ち込んでいた。触手や破損部からインベーダーの頭部を出し、溶解液などで近づけさせまいと攻撃しているが明らかに再生速度が鈍り、それに加えて攻撃もかなり緩やかな物になっていた。
『エクセ姉様、あれならば私達でも対処できるかと、少しでも数を減らさなければ』
「判ってるわ、ラミアちゃんは背後に警戒して」
ラミアに言われるまでも無く、インベーダーに攻撃を仕掛けていたエクセレンは触手や肉片からでも姿を見せるインベーダーに警戒と指示を出し、エクセレンとラミアはメタルビースト・アースゲインへの攻撃を仕掛けながら、ある疑問、いや疑念をラミアに抱いていた。
(ラミアちゃん、貴女はなんでそんなに冷静なの、それに……どうして初めて会う筈なのにそんなに完璧にフォローを出来るの……ラミアちゃん……貴女ももしかして未来から来たの?)
メタルビースト、インベーダーなんて言う化け物を前にしてもいつもの冷静さを保ち動揺を見せず。その上アクセルへのフォローを完璧に行なっているラミアにエクセレンは心の中で貴女も未来から来たの? と問いかけずにはいられないのだった……。
涎を垂らしながら噛み付いてくるメタルビースト・アースゲインを左腕の拉げた盾で受け止めながら、キョウスケは目の前の化け物を観察していた。
(これが武蔵達が戦っていたと言うメタルビースト、そしてインベーダーか)
宇宙でヒリュウ改が遭遇したとは聞いていたが、こうして目の前で戦ってみればその脅威がいかに凄まじい物かと言うのがひしひしと伝わってくる。
(再生能力、攻撃力、それに機動力に増殖性……どれをとっても脅威だ)
左腕で殴りつけるようにメタルビースト・アースゲインを吹き飛ばし、腰を落とし射角を確保する。
「全弾持って行けッ!! クレイモアッ!!」
両肩、バックパックが変形し露になった射出口から無数のベアリング弾が撃ち出される。メタルビースト・アースゲインの装甲を穿つがインベーダーを倒すには至らない。
「それでいい、俺の計算通りだ」
インベーダーを倒すには全身の目を潰し、再生能力を弱体化させろと武蔵が言っていた。エリアル・クレイモアを使う事を選択したのは簡単な話だった、アースゲインの装甲を破壊し目玉を露出させるつもりだったからだ。
『ギギィッ!?』
『ゲゴアッ!?』
射出が何時までも収まらず、自分達を守っている装甲が破壊されていくのに気付き、インベーダー達が動揺したような声を上げる。
「言った筈だ、全弾持って行けとなッ!!」
重々しい音を立ててクレイモアが再装填され、再びベアリング弾による破壊の嵐を撒き散らす。
『ふん、俺ごとインベーダーを潰すつもりか?』
「別にそんな意図はない」
キョウスケは口にしなかったが、ソウルゲインの機動力ならばもっと近づかなければ当てれるとは思っておらず。再生能力に物を言わし、突撃してくるインベーダー相手だからこそ闇雲に飢えを満たす為に突撃してくると判っていたからこそ、距離が開いている状態でエリアル・クレイモアを放ったのだ。そしてキョウスケの予想通り跳弾を繰り返すクレイモアの中に自ら飛び込み、足を止めて防ぐことしか出来ない場所にまで自ら飛び込んできていた。
(やはり化け物は化け物と言う所か)
クレイモアは近づけば近づくほど多段HITし、その威力を増加する。その性質上極限まで近づいて使用するのが正しい使い方で、敵の距離が遠いのに人間相手に使うと言うことは普段のキョウスケならばありえない。敵の知恵を計り、そして確かな攻略法を得る為の行動であり、メタルビースト、インベーダーは再生能力こそ高いが、知恵は無く獣同然であるとキョウスケは判断し、隣に立つ蒼い巨人――ソウルゲインの方がよほど厄介だと考えていた。
『どうだかな、まぁ良い、この好機逃すつもりはないッ!!』
青龍鱗の雄叫びと共に放たれた光線が装甲を失ったインベーダーを貫き、その細胞を焼き尽くしていく。だがインベーダーもただでやられるつもりではないのか、クレイモアの射出が終わったアルトアイゼン・ギーガとソウルゲインに向かって触手を伸ばす。
「エクセレン! ラミアッ!」
『俺が囮をやる羽目になるとはな、外すなよッ! 一撃で極めろッ!!』
触手を回避しながら叫ぶキョウスケとアクセルの叫びを聞き、地面に着地しインベーダーの触手を焼いていたエクセレンとラミアが弾かれたように動き出した。
『そんなに怒鳴らなくても判ってるわよんッ! ラミアちゃん、最大火力で決めるわよッ!』
『了解でごんす、ターゲットロック』
機械翼と白亜の翼を広げたヴァイスリッターとアンジュルグが飛び上がり、その手にしたオクスタンランチャー改の銃口とファントムアローの切っ先をインベーダーに向ける。
『フルパワーで行くわよーッ!』
『コード入力 ファントムフェニックスッ!』
展開された機械翼とその手にしたオクスタンランチャー改の銃口が変形し、余剰エネルギーが光の翼となりヴァイスリッター改の背後に展開される。そしてその隣では燃え盛る不死鳥を模した弓矢を構えるアンジュルグの姿があり、その強烈なエネルギーにインベーダーが顔を上げたが、それは余りにも遅すぎた。
『Wモード、フルパワー……いっけええッ!!!』
『舞え、幽玄の不死鳥よッ!!!!』
極大の閃光と燃え盛る紅蓮の不死鳥がエアリアルクレイモアと青龍鱗によって装甲を破壊された、メタルビースト・アースゲインを飲み込み蒸発させる。
「どんな装甲だろうが撃ち貫くのみッ!!」
『はっ! 貴様に好きにさせるかッ! 貫くのは俺のッ……ソウルゲインの拳だッ!!!』
その閃光に紛れ、メタルビースト・ゲッター1に肉薄したアルトアイゼン・ギーガのリボルビング・バンカーとソウルゲインの拳は完全に奇襲となり、メタルビースト・ゲッター1を貫くかに見えたが……激しい金属音が響き2機の拳は簡単に受け止められていた。
「っ!?」
『ちっ、化け物がッ』
マントの下から伸びて来たゲッターアームがソウルゲインの拳を受け止め、リボルビング・バンカーを左腕が変異したドリルの切っ先が受け止めていた。
「不味いッ!?」
『くそッ!?』
腹部のゲッタービーム発射口が露になり、キョウスケとアクセルの焦った声が響いた。しかしゲッタービームが放たれる寸前にオクスタンランチャーとファントムアローで姿勢を崩したメタルビースト・ゲッター1の隙を突いて2人は一気に射程外にまで離脱する。
『なにやってるのよ、キョウスケの馬鹿』
「すまん……まさかあんな攻撃をしてくるとは想定外だった」
『ふん、なんにせよ、俺達をそのまま逃がしてくれるつもりはなさそうだ。これがな……』
インベーダーがチェーンソーのように回転するゲッタートマホークを両手に持ち、血走った目を向けてくるメタルビースト・ゲッター1を見て、キョウスケ達の背中に冷たい汗が流れ落ちるのだった……。
スパイラルゲッタービームの余波はヒリュウ改のPTだけではなく、メタルビースト・ゲシュペンスト、メタルビースト・ラーズアングリフさえも飲み込んでいた。だがそれは攻撃ではなく、メタルビースト・ゲッター1からの施しだった。メタルビースト・ゲシュペンスト、メタルビースト・ラーズアングリフは混ざり合い、周囲のビルやアスファルトを飲み込みゲシュペンストとラーズアングリフ、そして周辺の警備をしていたエルアインス達を飲み込んだ、異形の化け物へと変貌を遂げていた。
『ブリット君、龍虎王に変ってッ!』
「ぐっ! 駄目だッ! 懐で戦い続けないと押し込まれるッ!」
龍虎王に変ってくれというクスハに駄目だと言って、ブリットは目の前の異形を睨みつけた。全身のあちこちから伸びている触手、中途半端に取り込まれたメタルビースト・ゲシュペンスト、メタルビースト・ラーズアングリフ、そしてエルアインスの機体の一部がゴムのような体表から伸び、全身を目まぐるしく動く黄色い複眼には生理的な嫌悪感を抱いた。
『『『キシャアアアアアーーッ!!!』』』
「ここまで化け物になるのか、インベーダーはッ!?」
武蔵から聞いていた話――旧西暦の文明を滅ぼし、全人類の8割を殺したと言うインベーダー。無論警戒していないわけでもないし、恐れていないわけでもなかった……だがインベーダーはブリットの理解を完全に超えていた。
『おっらあッ!!!』
強烈な追突音を響かせ、虎龍王に伸びたインベーダーの腕が弾かれる。
『おい、ボサッとしてんなよ。こいつと戦えるのは俺様とお前達だけだろうが』
「お前に言われなくても判っている!」
『OK、そんだけ吼えれるなら十分だな。とにかく気を緩めるなよ、じゃねえと一瞬で死ぬぞ』
龍王鬼の険しい声を聞いて、虎龍王、龍人鬼を見下ろす巨大なインベーダーにブリットは再び視線を向けた。触手がアスファルトを砕き、虎龍王と龍人鬼を追い回す。
『くそッ! 撃て撃てッ!』
『カチーナ中尉! 無理に突っ込むな、距離を取れッ!!』
カチーナ達の攻撃はメタルビースト・レギオンにダメージを与えられず、しかしメタルビースト・レギオンはカチーナ達の機体を喰らおうと触手を伸ばし続ける。
『おおおおッ!!』
『喰われてたまるかッ!』
ディスカッターとディバインアームで触手を切り裂くサイバスターとヴァルシオーネだが、触手は一瞬で再生し再び喰らおうとその牙を伸ばす。
『ギガワイドブラスタァァアアア――ッ!!!』
『主砲撃てえッ!!』
ジガンスクード・ドゥロ、ヒリュウ改の攻撃を受けても巨大になりすぎているメタルビースト・レギオンを倒すには火力が余りにも足りなかった。
「くそッ! こんなのどうやって倒せば良いんだッ!」
攻撃をしても即座に回復され、下手に近づけば喰われる――虎龍王と龍人鬼の攻撃は通り、回復も阻害できるが余りにも機体のサイズが違う事、そして火力不足が大きく響いていた。焦りはミスを呼び、そして恐怖はその動きを縛る――まだ虎龍王に慣れていないという事、そしてまだ心から虎龍王を信じれていなかった事、インベーダーという人知を超えた相手との戦いによる精神的な疲労――様々な要因が重なり、メタルビースト・レギオンの前で虎龍王の膝が折れインベーダーの前の前で余りにも大きな隙を晒した……インベーダーがその目に見えた隙を見逃す訳が無く、上下左右から包み込むように伸びた触手が虎龍王を避け、その横のビルを飲み込んだ。
「え?」
『ふふふ、もうちょっとしっかりしなさいな、ぼーや』
困惑するブリットの耳を響いたのは艶を感じさせる女の声――ビルの上に現れた白銀の虎の姿をした百鬼獣、虎王鬼の姿に防戦一方だった龍王鬼が歓喜の声を上げた。
『はっはあッ! 待ってたぜ、虎ァッ!!』
『間に合ってよかったわ、龍。話をしたいところだけど……後で聞くわ、行くわよ?』
『おうさッ! 滅神雷帝ッ!!』
『神魔必滅ッ!!』
龍人鬼が龍王鬼が虎王鬼を持ち上げ、メタルビースト・レギオンの上を取る。
『『『キシャアアアーーーッ!!』』』
複数のインベーダーの叫び声が重なり、自分達の頭上を飛ぶ龍王鬼と虎王鬼を捉えんと触手を伸ばすが、降り注いだ雷によって触手は燃やされ、龍王鬼と虎王鬼を捕える事は無かった。
『『邪念合一ッ!!』』
『無敵龍鬼ッ! 龍虎皇鬼推参ッ!!』
一際大きな雷が龍王鬼と虎王鬼を飲み込み雷を引き裂いて姿を見せた龍虎皇鬼が名乗りを上げながら頭を下にし、急降下しながら硬く握り締めた拳をメタルビースト・レギオンの頭部に叩き込む。
『お?』
『『『『キシャアアッ!!!』』』
困惑した龍王鬼の声を掻き消すようなメタルビースト・レギオンの雄叫び、龍虎皇鬼の攻撃はゴムのような細胞に吸収され、その衝撃を完全に殺されていた。
『効いてねえな』
『先に身に纏ってるのをどうにかしないと駄目そうね。ブルックリン、ちょっと協力しなさいな』
「どうすればいい」
協力するのが当然と言わんばかりに声を掛けてくる虎王鬼、しかしメタルビースト・レギオンを倒さなければならないのはブリットも判っており、虎王鬼の言葉に耳を傾ける。
『あたしの術で結合部分を緩めるから、打撃で緩めた体組織をバラバラにして、龍虎皇鬼と龍虎王で〆るってのはどうかしら?』
『私は良いと思うよ、ブリット君』
「判ってる、大丈夫だ。クスハ、とにかくあいつを倒さない事にはどうにもならない、その話乗った」
何もかも取り込み、今も巨大化を続けているメタルビースト・レギオンを見て、悩んでいる場合ではないとブリットは即座に虎王鬼のアイデアを聞き入れた。
『じゃあ行くわよ、龍もそれで良いわよね?』
『異論はねぇ、あの化け物をここで潰すぜッ!』
虎龍皇鬼と虎龍王――超機人と超鬼人。本来並び立たぬ筈の2機の龍虎が弾かれたように同時に動き出す。
『背中から撃ったりはしないよ、前だけ見つめて突っ込めば良い』
「今だけはあんたを信じるさッ! 虎王鬼ッ!!」
分身しながらメタルビースト・レギオンへと走る虎龍王。その回りを無数の札が飛び交い、分身を更に増やしメタルビースト・レギオンをかく乱する。
『臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前』
虎龍皇鬼は印を組み、小刻みな足踏みで足と指で同時に印を結び、自身の回りに浮かぶ無数の札が一斉に飛び交いメタルビースト・レギオンを取り囲む。
『龍と虎の雄叫びをその身を持って味わえッ!! 龍王月破ッ!!!』
両腕に装着されていた龍王鬼の翼が変形したシールドが更に変形し、巨大なクロスボウから放たれたエネルギー波がメタルビースト・レギオンへと迫る。
『『『『ゴガアアアアーーッ!』』』』
その圧倒的なエネルギー量を見てメタルビースト・レギオンが体内に取り込んだ武器を収束した巨大なキャノン砲を作り出し迎撃に出る。だがそれを見て虎王鬼は鼻で笑った。
『馬鹿ね、そんなに単純な訳が無いでしょうに』
龍王月破はメタルビースト・レギオンの前で分散し、その巨体の周辺に浮かんでいた札に吸い込まれるように消え、次の瞬間には龍と虎を模した凄まじい光がメタルビースト・レギオンに向かって全方位から放たれた。
『『『ぎ、ギギャアアアアアアアアアーーッ!!!』』』
その痛みからか凄まじい絶叫が周囲に響き渡り、虎王鬼の言った通りメタルビースト・レギオンの結合部分がその光線によって徐々に浮き彫りになっていた。
「おおおおおお――ッ!!!!」
【ガアアアアアーーーッ!!!!】
ブリットと虎龍王の雄叫びが重なり凄まじいラッシュがメタルビースト・レギオンに叩き込まれる。凄まじい追突音と共にメタルビースト・レギオンの纏っている装甲などが崩れ落ちている……だがまだインベーダーの再生能力が高く決定打が足りない。
『一気に畳み掛けろッ! ここを逃せば好機はないッ!!』
『タスクぅッ! ぶちかませぇッ!!!』
下手に近づけばインベーダーに飲み込まれる。安全圏からの射撃になるがギリアム達の攻撃も確実に結合部の緩んでいるメタルビースト・レギオンに微量だがダメージを蓄積させていた。
『うおらぁぁああああああッ!!!!』
龍虎皇鬼の一際大きな方向と共に凄まじい激突音が響き、メタルビースト・レギオンの巨体が宙に浮かぶ。
『決めるぞッ! 超機人ッ!!』
『は、はいッ! ブリット君ッ!!』
「おうッ! 龍虎合体ッ!!」
虎龍王の姿が一瞬で龍虎王へと変形し、指の間に挟んだ札をメタルビースト・レギオンに投げ付ける。
「雷神よ、来たりて我の敵を討て!」
『オラオラオラオラオラァァアアアアアアーッ!!!』
爆雷符の雷の雨と龍虎皇鬼の拳と蹴りのラッシュはインベーダーの回復を許さず、その体組織を命中した所から消し飛ばす。
「破山剣、召還ッ!!」
『邪龍剣、将来ッ!!!!』
龍虎王と龍虎皇鬼がその手に破山剣と邪龍剣を手にすると2機の凄まじい雄叫びが上空と地上からメタルビースト・レギオンに向かって放たれる。
「見つけたッ!!」
『はっはぁッ! 見つけたぜッ! あのばけもんの核をよぉッ!!!』
メタルビースト・レギオンの胸部と頭部の間――人間で言う喉仏の部位が盛り上がり、メタルビースト・レギオンの身体から逃げ出そうとする。
「龍虎王が最終奥義ッ!!」
『行くぜぇッ! 俺の必殺技ぁッ!!!』
龍虎王と龍虎皇鬼が刀身を撫でると龍王破山剣、邪龍剣がその姿を巨大な大剣へと変え、2機の全身を赤と蒼のオーラが包み込んだ。
「龍王破山剣ッ!!!』
『邪王龍剣ッ!!!』
「逆鱗だぁぁぁんッ!!!」
『逆鱗ざぁぁあああんッ!!!!』
急降下した龍虎王の唐竹切りと龍虎王の横一文字切りの一撃がメタルビースト・レギオンの巨体を脱出しようとしたコア・インベーダーもろとも十字に切り裂き凄まじい爆発の中にメタルビースト・レギオンの姿は消えるのだった……。
強烈な爆発音はメタルビースト・ゲッター1のコックピットのコーウェンとスティンガーの元にも届いていた。
「うーん、まずいねえ……親種が潰れてしまったよ、残念だね……スティンガー君」
『そ、そうだね。お、親種が潰れてしまったよ。ざ、残念だよ……コーウェン君』
コーウェンとスティンガーの計画では、ここでヒリュウ改のメンバーにインベーダーを寄生させ、ブライとの同盟が終わり、覇権を争う時の手勢としようとしていたのだが……親種のインベーダーを潰されてしまってはそれも無理になってしまった。
「ゲッター線の波も行ってしまった。もう少し呼び出しておけば良かったねぇスティンガー君」
『う、うん、そうだねえ、コーウェン君……もっと呼んでおけば良かったよ』
メタルビースト・ゲッター1とコーウェンとスティンガーを持ってしても極めて近く限りなく遠い世界のインベーダーを呼び出すのは容易な事では無かった。研究所を廃棄した際にゲッター炉心のエネルギーを解き放ち、新西暦の微弱なゲッター線と同調させる事で門を作り出したが、その門ももう閉ざされてしまった。
『父さん! 敵が来ますッ!!』
フォーゲルの言葉に顔を上げたコーウェンとスティンガーは目の前に迫る紅と蒼に忌々しそうに舌打ちをし、メタルビースト・ゲッター1に防御姿勢に入らせた。
『ステーク、撃ち抜けッ!!!』
『白虎咬ッ!!! おおおお――ッ!!!』
マントとゲッター線バリアで直撃は防いだが、メタルビースト・ゲッター1にも徐々にダメージが蓄積し始めていた。
「……本当に忌々しいね。そう思うだろう? スティンガーくぅん?」
『い、忌々しいにも程があるね! あ、あの出来損ないの癖にッ!』
竜馬、隼人よりゲッター線適合率が低い武蔵。だが武蔵の操るゲッターD2のゲッター線濃度は真ドラゴンに匹敵するものであった、短時間だが高密度のゲッター線に触れていたアルトアイゼン・ギーガやヴァイスリッター、そしてソウルゲインは不完全なメタルビースト・ゲッター1にとっては天敵にも等しい存在となっていた……。
『父さん、ベアー号とジャガー号の負担がかなり大きくなっています』
フォーゲルからの言葉にこれ以上は無理と判断し、マントを大きく伸ばしアルトアイゼン・ギーガとソウルゲインを弾き飛ばすと同時に宙に舞い上がらせる。
「回収だけはして行くとしよう。そうだろ? スティンガー君?」
「うんうん、回収だけはして行こうよ! コーウェン君」
メタルビースト・ゲッター1の口元が開き、そこから飛び出した触手が廃墟を駆けずり回り、インベーダーを刺し貫いた。
『なんだ!? 仲間割れ……ッ!』
『馬鹿がッ! そんな可愛い物ではない、させるかッ!!』
ソウルゲインの突き出した両手から無数の青龍鱗が放たれ、メタルビースト・ゲッター1に回収されている途中のインベーダーを何体か消滅させるが、それでも何体かのインベーダーはメタルビースト・ゲッター1へと取り込まれた。
『なにあれ……あんなことまでできるの?』
『……ドラゴンだと?』
完全な変体ではない、だがキョウスケ達の見ている前でメタルビースト・ゲッター1はメタルビースト・ゲッタードラゴンに似た姿へと変異し、ゲッター線を全身に纏い空中に翡翠の尾を残しキョウスケ達の前から姿を消すのだった……。
「逃げられた……それとも見逃された?」
「エクセレン、そんな事はどうでもいい。まだ戦いは終わっていない」
メタルビースト・ゲッターロボ、そしてインベーダーの脅威は消えた。しかし龍虎皇鬼、ソウルゲインの2機は以前健在であり、キョウスケ達の前に立ち塞がっていた。
『ベーオウルフ、勝負は……『止めとけよ、アクセル』……龍王鬼、俺の邪魔をするのか』
闘志を滾らせ、今にもアルトアイゼン・ギーガに襲い掛かろうとしていたソウルゲインとアクセルを窘めたのは龍王鬼だった。
『こんなボロボロで満足行く戦いなんて出来ねえだろうが、だから今日は終わりだ』
『だがッ! くっ』
ソウルゲインが機体の各所から黒煙を出し膝をついた。インベーダーとの戦いは凄まじく、関節部にガタが来ていたのだ。
『ほれ見たことか、そんな有様じゃ死にに行くようなもんだ。つうわけだ、俺達は帰るぜ。まぁ、戦うつうっなら……覚悟して貰うことになるけどな』
闘龍鬼、風神鬼、雷神鬼を初めとした龍王鬼の配下の百鬼獣が現れ、これ以上は無理だとキョウスケ達も矛を収めた。
『賢い選択だぜ、キョウスケ・ナンブ。そうそう、この街の地下調べておきな、なにか判る事もあるだろうぜ。うっしゃ、引き上げだ。今度は邪魔者なしで戦おうぜ』
『ちっ、覚えていろべーオウルフ……貴様は俺が殺す、覚えておけ』
最後までさっぱりとした気風で去っていく龍王鬼と恨み言を残し、回収されていくソウルゲインとアクセル――しかしこの戦いを切っ掛けに地球での戦いにインベーダーまでもがその姿をあらわすようになり始めるのだった……。
125話 隼と継ぎ接ぎ/撃ち貫け奴よりも早く その10へ続く
今回もイベントなので戦闘強制終了、インベーダーズが隠れている状況から作戦方針をヒャッハーに変え始めました。次回はシナリオデモと次回のシナリオの準備で次の話に入って行こうと思います、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い