進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第125話 隼と継ぎ接ぎ/撃ち貫け奴よりも早く その10

第125話 隼と継ぎ接ぎ/撃ち貫け奴よりも早く その10

 

インベーダーとの激しい戦いの結果、ほぼ更地となった市街地をラドラを先頭にし、防護服に身を包んだギリアムが続く、2人の手にはマシンガンやスナイパーライフルと言った銃火器に加え、背中のバックパックや、腰のポーチにはグレネードや手榴弾と言った爆発物が収められていた。

 

「こちらゴースト3、ドラゴン2応答せよ」

 

『こちらドラゴン2、ラドラさん何を見つけましたか?』

 

龍王鬼が指差した区画の捜索に挑んでいたギリアムとラドラの両名は、倒壊したビルの残骸の中に地下に続く階段を発見した。

 

「地下に続く階段を発見した。簡易レーダーだがゲッター線数値も危険域だ……最悪の場合に備えておいてくれ」

 

「15分ごとの連絡がなければそう言うことだ。俺とギリアムの事は気にせず、この区画に主砲を打ち込み蒸発させろ。良いな、レフィーナ・エンフィールド」

 

市街地の捜索――それはインベーダーが潜んでいる可能性が高く、生身の身体能力も高いギリアムとラドラの2人だけが捜索に乗り出した。インベーダーに寄生される可能性、そして全滅するリスクもあるためキョウスケ達はヒリュウ改に待機するように命じたのだ。

 

『……了解です。ご武運を……』

 

レフィーナの言葉に返事を返し、ギリアムとラドラの2人は周囲を警戒しながらゆっくりと地下へと潜り始める。

 

「ここに地下はない筈だ」

 

「だろうな、明らかに材質が違う」

 

倒壊したビルはオフィス用品などを取り扱う物流の本社。地下があると言う報告は無く、ついでに言えば連邦などの軍属の会社などでもない。

 

「ある事に気付かず建築したのか……運が良いのか悪いのか……」

 

「紛れも無く前者だな」

 

建造物の状況を見れば地下の方が先にあったのは明らかで、インベーダーがいるかもしれない地下に会社を建てて、襲撃を受けなかったのは紛れも無く幸運だとギリアムは笑った。

 

「通信状況はかなり良いな。これなら大分先に行っても大丈夫そうだ」

 

「それは助かるな、15分ごとに連絡が出来なければ俺達もあの世行きだからな」

 

「縁起でも無い事を言うなよ、ラドラ」

 

軽口を叩いているギリアムとラドラだが、その目は鋭く細められ周囲を油断無く警戒している。

 

「……こちらゴースト2、地下の状況だが……これは……」

 

細い通路を抜け、目の前に広がった光景に絶句しながらギリアムはヒリュウ改へ通信を繋げた。

 

『どういたしましたかな? ギリアム少佐、貴方でさえ動揺する物を見つけたのですか?』

 

「口で説明するよりも、映像の方が早い、若干ノイズが走るだろうが……お前達の目で見てくれ」

 

ラドラがカメラを構え、ギリアムとラドラが見ている光景がブリーフィングルームに映し出される。その光景を見たキョウスケ達も絶句し、息を呑んだ。

 

「おいおい……どうなってやがるんだよ、これはッ!」

 

「信じられない……これどうなってるのよ……」

 

ブリーフィングルームでのカチーナ達の驚愕の声を聞きながら、ギリアムとラドラは手にしたカメラで目の前の光景を写真に収める。

 

「ゲッターロボを建造していた……俺にはそうとしか見えない」

 

「ああ、俺もだ」

 

恐らく襲撃があるまで稼動していたのだろう、まだ熱を放っている装甲版やフレームを見ればこの市街地の地下でゲッターロボが建造されていたのは明らかだった。

 

「あっちは武蔵が乗ってた初代ゲッターロボ、その奥はドラゴン……あとは俺の見たことのないゲッターロボだな」

 

「……回収し詳しく分析したい所だが……リスクは背負うべきではない。やはりここは破壊するべきだと思うが、副長はどう思いますか?」

 

『……非常に惜しいと思いますが、廃棄するべきでしょう』

 

『インベーダーの危険性を考えれば、そうするしかありませんね』

 

無機物、有機物関係なしに寄生し同族を増やすと言う性質を持つインベーダー。自在に変身する能力を持つことを考えればどこに潜んでいるか判らず、建造中のゲッターロボを回収するには余りも危険すぎた。

 

「しかし問題は……誰がこれを建造したかだな」

 

「普通に考えればあのゲッターロボのパイロットだろうが……少なくとも早乙女博士ではないだろう。だが早乙女博士と同格のゲッター線への知識、ゲッターロボの設計を知っているのは間違いない。ラドラ、これを見てみろ」

 

製造ラインのPCを操作しながらギリアムがラドラに声を掛ける。

 

「これはゲッター炉心とゲッターロボの設計図か……かなり詳しい所まで書かれているな。ここまで詳しく知っていると言うと……早乙女研究所の関係者だろうな」

 

早乙女研究所の関係者が地下に潜りゲッターロボを作っていた……ラドラのその言葉に驚きが広がる。

 

『ギリアム少佐、それならばそのプラントは残すべきでは?』

 

『武蔵の知り合いかもしれないんじゃないか?』

 

武蔵達同様旧西暦からの迷い人がいるのではないか? とキョウスケ達は言うが、ギリアムとラドラの決断は変わる事はなかった。

 

「だとしてもだ、インベーダーが繁殖しているかもしれない製造プラントは破壊するしかあるまい」

 

「それにゲッター炉心の中のゲッター線は空っぽ、既にこの工場に価値はないと判断したのだろう。とにかくもう暫く捜索をしたら戻る、ナパーム弾の準備も進めておいてくれ」

 

この街に住んでいた人間には悪いが、インベーダーがどこに潜んでいるか判らない以上この街は封鎖するしかないだろう。戦争で避難が進んでいて良かったなと思いながらギリアムとラドラは捜索を続ける。

 

「早乙女博士並にゲッターロボと炉心に詳しい研究者か……そんなものがいるとは思えないが……」

 

「いや、いる。確かコーウェンとスティンガーと言う研究者が早乙女博士と共に研究をしていた筈だ……恐竜帝国の情報網で補足仕切れなかった神出鬼没の2人組だ」

 

「コーウェンとスティンガー? 確か、放射線の研究者だったがDC戦争時に行方不明になっているぞ」

 

ラドラから告げられた名……それはシュトレーゼマンの傘下で研究し、DC戦争の中で行方不明となっている研究者の名前だった。

 

「きな臭いな……」

 

「ああ、少し探ってみる必要があるかもしれないな」

 

旧西暦に存在したゲッター線の権威であるコーウェンとスティンガー、そして新西暦にも存在する放射線の権威であるコーウェンとスティンガー……奇しくも職業も、そして名前も同じ……そして地下に眠っていたゲッターロボの製造プラント。それらを調べる事が、真実に近づく事になるとギリアムとラドラは本能的に感じ取りコーウェンとスティンガーについて調べる事を決め、地下のあちこちに爆薬を設置し、地下から離脱するのだった……。

 

 

 

 

 

ギリアムとラドラがコーウェンとスティンガーの存在に気付いた頃、市街地から離脱した龍王鬼達とアクセルは迎えに来ていたヴィンデルのライノセラスに着艦していた。

 

「龍王鬼、少しばかりやり過ぎたのではないか?」

 

「はっはっは! 悪い悪い!! とは言ってもな、俺達とソウルゲインがボロボロなのはヒリュウ改と戦ったからじゃねえぞ、インベーダーとか言う化け物が出てきやがってな。そいつらと戦ったせいだ」

 

インベーダーの名にヴィンデルの顔色が変わり、アクセルをキッと睨んだ。

 

「除染もせずに着艦したのか? アクセル」

 

「心配はない、俺とて馬鹿ではない。しっかりとインベーダーに寄生されていない事は確認している」

 

インベーダーとアインストはあちら側のヴィンデル達を苦しめた存在だ。警戒するのは当然だが、アクセルとてインベーダーとアインストの脅威は十分に知っている。ヴィンデルの質問にそっけなく返事を返すのは当然の事だった。

 

 

「それよりもだ。ヴィンデル、お前アースゲインをどこかに「ヒリュウの足止めには成功し、その戦力も十分に把握出来た。だがソウルゲインをここまで破損させたのは許す訳にはいかん、ミッションハルパーまでは出撃を禁ずる」

 

アクセルの言葉を遮り、今回の件に関しての処罰を口にするヴィンデルにアクセルの眉が僅かに吊り上がった。

 

「独断専行の罰だ。龍王鬼が同行していたとは言え、組織としての体裁は守ってもらわなければな」

 

「ついでに勝手に出歩くな…だろう?」

 

ヴィンデルに話し合おうとする意図が感じられず、アクセルは続くであろうヴィンデルの言葉を先読みして口にした。

 

「そうだ。少しは自分の立ち振る舞いについて考えるのだな」

 

ソウルゲインを大破寸前まで追い込んだのはヴィンデルとてなぁなぁには出来ない。だからアクセルに自主的な軟禁を行うようにと遠回しに命じ、ヴィンデルはブリッジへと引き返していった。

 

「随分と機嫌が悪そうだな…虎、俺様達が出ている間に何かあったのか?」

 

「んー…黙っててもすぐ判ると思うから言うけど、饕餮といざこざがあったのよ」

 

「ちっ、あの化け物爺か。あいつは俺様は好かん」

 

人、機械、男、女を見境無しに喰らう饕餮は龍王鬼の美学に反し、何よりもその性格的に決して相容れない存在であった。それゆえにヴィンデルが不機嫌な理由が饕餮との間に何かあったと聞けば災難だったなと同情する気持ちがあった。

 

「アクセルもご苦労だったな。まぁ暫くの軟禁だが、気が向いたら俺様が出向いてやるから組手でもやろうぜ」

 

「ヴィンデルも龍が言えば文句は言えないだろうしね。じゃあねえ~」

 

虎王鬼を片手で抱え、闘龍鬼達を引き連れ去っていく龍王鬼をアクセルが見送っていると、レモンが龍王鬼の背中を見つめながら問いかける。

 

「インベーダーはどうだった?」

 

「間違いなく俺達の世界のインベーダーだった。ブラッド・ハウンド隊を喰らった連中だ」

 

この世界で生まれたインベーダーではないとアクセルが断言するとレモンは思案顔を浮かべる。

 

「リュケイオスの自爆じゃ消し飛ばせなかったのかしら……」

 

「それは判らん。消し飛んだのは間違いないが、別の個体がいた可能性も十分にある。それよりも、問題は時空を切り裂いたインベーダーに寄生されたゲッターロボだ」

 

アクセル達の世界にゲッターロボは存在していない。そしてそれは新西暦でも同じ事で、ガワしか再現できてないゲッターロボはアクセルも見ているし、何よりもスクラップ同然の機体ならシャドウミラーも保有している。だがそれ故に解せない事があった、これはラドラやギリアムでは判らないインベーダーを知るアクセルならばの観点だった。だからこそある不信感を抱いたのだ……。

 

「あれは元からインベーダーが寄生する前提で作られていた」

 

「……本当?」

 

「ああ間違いない。あれを作った科学者は、いや人間かどうか怪しいが……インベーダーの生態に詳しく、そしてゲッターロボにも精通した者だ」

 

人間かどうか判らんがなという言葉に、レモンは深い溜め息を吐いた。

 

「武蔵が協力してくれたらもっと楽ね」

 

「ありえん。諦めろ」

 

武蔵がアクセル達に協力する事はない。もしもその可能性があるとすれば……。

 

「永遠の闘争は捨てられない?」

 

「……お前はもう違うようだな、レモン」

 

「どうする? ヴィンデルに言う?」

 

アクセルもレモンの変化は感じ取っていた。だからこそなんでもないように口にし、レモンはそれを知ってどうするの? と問いかけた。

 

「別に俺はどうもしない、俺はベーオウルフと決着をつけれればそれで良い。その終着点が永遠の闘争にすぎない」

 

インベーダーやアインストの台頭は平和になった事で腐敗した政府が原因だとアクセルは考えていた、なればこそ戦い続け平和などは遠ざける事がインベーダーとアインストの出現を遠ざける事になる――アクセルはそう信じていた。

 

「本当アクセルもヴィンデルも強情で困るわね。それで狼さんと戦った感想は?」

 

永遠の闘争に関してはレモンとて触れて欲しい話題ではないので、話の内容を摩り替える。

 

「ナハトとゲシュペンスト・MK-Ⅲを混ぜた感じだった。正直に言うが……こちら側のベーオウルフはあちら側よりも強い」

 

アインストの力を借りなくてもソウルゲインと互角に戦ったアルトアイゼン・ギーガを見て、アクセルは間違いなくベーオウルフよりもキョウスケが強いと断言した。

 

「そこまで判ってて、それでもなおベーオウルフって呼ぶのかしら? ベーオウルブズは存在しない…構成員も違うのよ?」

 

「ヴィンデルには言うなよ?俺はキョウスケ・ナンブならば協力出来る可能性は十分にあると思っている……だが決して俺達の道は相容れない。共に戦うとするのならばキョウスケ・ナンブを俺が打ち倒したその時でしかあり得ない」

 

永遠の闘争はハガネやヒリュウ改、そして武蔵達が受け入れる事はないとアクセルも十分に理解していた。

 

「インスペクター、百鬼帝国、インベーダー……全部潰してから総力戦でもする? それともそれより先に戦いを仕掛けて私達が上だって認めさせる?」

 

「ふっ、それも悪くは無いが……ヴィンデルは認めないだろうな」

 

正直に言えばアクセルは今のヴィンデルとシャドウミラーのあり方を認めていない。百鬼帝国はアクセルから見ればアインストやインベーダーと大差が無く、何故そんな連中とヴィンデルがつるんでいるのか理解出来なかった。

 

「私はキョウスケ・ナンブはベーオウルフにならないと思うけどね」

 

「……その可能性はあったとしてもだ、不確定要素は無くすべきだ。この世界に俺はいない、俺達の事を知るのはヘリオス、そして武蔵達だけだ、だがその武蔵達も記憶が欠落しているのならば今の内に勝負を決めるべきだ」

 

ヘリオス・オリンパス、そして武蔵達だが、その武蔵達は記憶を欠落しており、シャドウミラーの事を中途半端にしか覚えていないのならば……思い出す前にけりをつけるべきだとアクセルは断言する。

 

「まぁ、それも1つの手だとは思うけどね……でも「レモン、戦闘中に貴様と同じ性を持つ女と接触した。こちら側のベーオウルフのパートナーだった」ッ!?」

 

アクセルの言葉にレモンは口を閉じ、大きく目を見開いた。その様子を見て、アクセルは言葉を続けた。

 

「シャトル事故で死んだと言う貴様の妹――まだ名前を聞いてなかったな。エクセレンか?」

 

「……せ、正解よ」

 

レモンが声が震えている、それだけレモンにとってエクセレンの存在が大きいと言うのはアクセルにも判っていた。

 

「……その女もベーオウルフと同じ……俺達の事は知らなかった」

 

「そうッ……そうなのね」

 

レモンにとって愛する妹であったとしても、エクセレンにとってレモンは姉ではない。敵として立ち塞がれば迷う事無くその銃口を向けるだろう……。

 

(酷な事だ)

 

アクセルは知っている、レモンがどれだけエクセレンの事思っていたか……無論話で聞いただけなので、通常の姉妹の情だとアクセルは考えていた。だがレモンがエクセレンに抱いている複雑な感情を全てアクセルが理解しているとは言えない。

 

「そういう存在であり、この世界は俺達の世界とは違う……共通点はあっても……貴様の妹ではない、こいつがな」

 

「……ええ、判っているわ。あの子は……もう死んだもの」

 

自分に言い聞かせるように言うレモンの姿を見て、アクセルはすまないと一言謝罪の言葉を口にし、自分に宛がわれた部屋へとその足を向けた。

 

(エクセレン……エクセレン・ブロウニング……あなたがこちらにいるのなら、私は……私は……どうすれば良いの……)

 

レモンは「■■」にはなれない、だけど……この世界には「■■」がいる。■■になれないから、レモンは母になりたいと願った。そうする事で己の気持ちに蓋をした……だが燻り続けたある思いを解き放つ言葉をアクセルに告げられ、レモンの目には迷いの色が浮かんでいるのだった……。

 

 

 

 

インベーダーやアクセル・アルマーとの戦いの余波は凄まじい物であったが、インベーダーとの戦いは龍王鬼達が主導になったという事、そして予備パーツが大量にあったと言うことから比較的早く立ち直る事が出来たが、補給やパイロットの休息の為にヒリュウ改はノイエDCや百鬼帝国、インスペクターに見つからぬように低速で移動しながら伊豆基地へとその艦首を向けていた。ハワイがインスペクターの手におち、プランタジネットを成功させる為にも1度ハガネとの合流が不可欠だったからだ。

 

「しかし、今回のゲッターロボに寄生したインベーダーっつったか、あれを見ればあのアクセルとかいう奴が警戒する理由も判ったな」

 

何故何度もキョウスケを襲撃するのか? その理由がインベーダーに寄生されたゲッターロボの人知を超えた力を発揮する姿を見れば気持ちは分からないでもなかった。

 

「ちょっとカチーナ中尉、キョウスケちょっとナイーブになってるんだからそういう事をいうのは止めてあげてよ」

 

「いや、良い。俺は気にしていない、それに納得もした」

 

「いやいや、納得したら駄目ですよ。中尉」

 

納得したと言うキョウスケに駄目だとブリット達が言うとキョウスケも判っているさと返事を返す。

 

「そうなる可能性があると思えば警戒するのも分かる。だが俺とあいつらの知る俺は違う……だから取りこし苦労という奴だ」

 

別の世界で自分がインベーダーかアインストに寄生され、人類の敵になったとしてもそのキョウスケと俺は違うとキョウスケは断言した。

 

「普通はそう思うと思いますよね」

 

「そもそも、そうなるって言うのならそうならないようにするのが普通じゃない?」

 

「私もそう思いますね……やり方が間違っているような気がします」

 

「あれじゃないか? 自分たちだけが世界を守れるとでも思ってるんじゃないか?」

 

キョウスケがアインストやインベーダーに寄生され、おかしくなるという結末を知っているのならばそうならないように協力するのが普通ではないか? という声が上がり、その話を聞いていたラミアはシャドウミラーが間違っているのか? と悩みを深める事になる。

 

(協力し合える……何故レモン様達は最初から戦うという結果を選んだのだ?)

 

荒唐無稽な話ではある。だがハガネやヒリュウ改の人間は話を聞くという柔軟性を見せてくれていた……そして明らかに軍人として間違った行動であったとしても、人の心を大事に誰もが悲しまない選択をしてきたのをラミアは見てきていた。

 

「んー? ラミアちゃん、何をそんなに悩んでるの?」

 

「いえ、その……笑わないでくれるでございますか?」

 

「んん? 別に笑ったりしないけど……どうしたの?」

 

自分が尋ねる事は可笑しいのではないか? その不安を抱きながらラミアは言葉を選びながら口を開いた。

 

「未来の出来事を知っていると聞いて、そんなに簡単に信じられるのですか?」

 

「普通は無理じゃない? でもね、私達は知ってるしね?」

 

「過去からとんでもない事をした奴を知ってるからな。他の奴らよりかは頭は柔らかいだろ?」

 

「まぁ、とんでもない事ばかり続いてますしね」

 

インベーダーやアインスト、そしてゲッターロボを見てきているからこそ、荒唐無稽な話であってもある程度は検証しようとは思えるとエクセレン達は返事を返した。

 

「助けてくれとその手を伸ばされたら……その手は掴めましたか?」

 

その問いかけは誰でもないラミアからのSOSであった……W-17とラミア・ラヴレス――その狭間で揺れる幼い心から出来る唯一のSOS……それがラミアに出来る不器用な助けを求める行為だった。その深刻そうな顔にキョウスケ達が一瞬言葉に迷った……そしてラミアが求めた答えはキョウスケ達から与えられる事は無かった。

 

『各員は緊急出撃の準備を! 繰り返します! 各員は緊急出撃の準備を! 高エネルギー反応及び、重量反応感知ッ! 繰り返します高エネルギー反応及び重量反応感知! あ……この反応は……アイアン3クロガネですッ! クロガネが何者かに襲撃を受けている模様! 繰り返します! 各員は出撃準備を急いでくださいッ!』

 

「くそッ! 親父の奴なにやってるんだよッ! ヴァルシオーネで先に出るよッ!」

 

「待てよリューネッ! 俺も行くッ!!」

 

クロガネが襲われていると知り、リューネが飛び出して行き、それをマサキが追ってブリーフィングルームを出て行く。

 

「連戦だが嘆いている時間はない、ラミア。お前の話はまた今度、機会を設けて聞こう」

 

「あ、はい。ありがとうございますのです……」

 

求めた答えを得る事が出来ず、ラミアは憂い顔のままブリーフィングルームを出て行き、そしてその答えを得られる事の無いままキョウスケ達の前から姿を消す事になるのだった……

 

 

 

 

ホワイトスターの一室でブライとウェンドロが向かい合いチェスを行なっている。

 

「ふむ、良く短期間でワシと打ち合えるようになったな。ウェンドロ」

 

「ふふん、簡単なゲームさ。僕にとって覚えるなんて簡単な事だよ」

 

一進一退の攻防にブライは満足そうに笑みを浮かべ、本国では神童と呼ばれ、子ども扱いされる事の無いウェンドロはブライの視線に不快感とも違う、何とも言えないむず痒さを感じていた。

 

「ブライがいてくれたお蔭で部下の機体も大幅に強化出来た」

 

「それは何より。しかしあれだな、ゲッター炉心を製造出来なかったのは厳しい所だな」

 

「構わないさ、長い目で……む」

 

ゲッター炉心は出来たが、肝心の中身が無いその事に不満を言いながら駒を打ったので想定と違う所に置いてしまい、ブライに簡単に駒を取られウェンドロは口元をゆがめた。

 

「冷静たれ、動揺不満は心の中に閉じ込めるべきだよ。ウェンドロ」

 

そこからブライが攻勢に打って出てウェンドロが防戦に回る。

 

「グレイターキン達をゲッター合金で強化出来たのは非常にありがたいよ、そのお蔭でハワイももうすぐ手中に落ちそうさ」

 

「ふむ、しかしそこまで攻め込めば連邦軍も巻き返してくるだろう。問題は」

 

「「ゲッターロボ」」

 

ブライの知るドラゴンよりも遥かに強いゲッターD2、そして武蔵をどう攻略するかが大きなポイントとなるだろう。

 

「どうだい? このままゾヴォークに所属する気はないかな?」

 

「ふぅむ、それも悪くないが……まずは地球を手中に収めてからにしよう。チェックメイト」

 

「むっ……やれやれ、結局勝てなかったね」

 

「ふっふっふ、まだまだお前に負ける訳にはいかんからな」

 

ブライはそう言うとチェスのセットをウェンドロに押し付ける。

 

「象牙の良い物だが餞別だ、くれてやろう」

 

「ありがとう……とは言っておこうかな」

 

「生意気な奴め、まぁそれくらいだからこそ、ワシも気に入ったのだがな。さて、ではワシはそろそろ地球に戻ろう。実に有意義な時間だった」

 

ブライはそう言うとウェンドロに手を振り、その部屋を後にする。

 

(さて、五本鬼の奴は上手く行っているか……しかし饕餮鬼を同行させたのは不安要素か……)

 

戦場が日本の近くという事でゲッターD2が出てくる可能性はあるが、それもそれでよし。ゲッターD2を相手饕餮鬼……いや饕餮鬼皇がどこまで戦えるかと見極める意味もある上に今後の立ち回り方も見極める事が出来る。

 

「ここからだな。ふっふ、面白くなってきおったわ」

 

示し合わせた訳では無いがインベーダー、アインスト、シャドウミラー、インスペクター、そして百鬼帝国――その全てが一斉に動き出した。オペレーションプランジッタ、そしてハルパーと絵は描いたが、想像以上に物事が動いている。

 

「大帝、龍王鬼様から連絡が入っておりますが」

 

ブライの帰還準備をしていた部下から龍王鬼から連絡が入っていると聞いたブライは回せと命令を下す。

 

『お久しぶりです。ブライ大帝』

 

「うむ、久しぶりだな、それでお前が態々連絡を入れてきたのはどういうわけだ?」

 

独立権を与えている龍王鬼からの通信をブライは不思議そうに感じながら用件を問いただす。

 

『インベーダーという化物と交戦しました』

 

「ほう?」

 

インベーダーの言葉にブライは眉を動かし、見ていた書類を机の上に乗せた。

 

『ゲッターロボに寄生し、時空を引き裂き同類を呼び出すなど極めて危険だと判断し、ヒリュウと協力し殲滅に当りました。独断お許しくださいブライ大帝』

 

ヒリュウ改と協力した事を謝罪する龍王鬼にブライは笑みを浮かべた。

 

「気にする事はない、しかしお前だけで殲滅できぬか……厄介な物が出てきたものだ」

 

インベーダーの存在を知っているブライに驚きは無かった。その代わりに自分の部下に手を出したという事でコーウェン達からまた何か情報や機体を奪い取れるだろうと考え好都合だと言わんばかりに笑みを浮かべた。

 

『インベーダーに対してはどうすれば?』

 

「そうだな。捜索と情報収集を命じる、確かシャドウミラー達が何か知ってるはずだ、報告書を出させろ」

 

『了解しました』

 

モニターが消えた所でブライは鼻を鳴らして不満を露にした。

 

(何か勘付いて居るな、部下ではあるが厄介な奴だ)

 

龍王鬼一派は独自に正義を掲げ、完全な配下と言う訳ではないだけに龍王鬼達とインベーダーが戦闘になった事をブライは面白くないと考えていた。自分達とコーウェン達に繋がりがあると知られれば龍王鬼の離反に繋がりかねないからだ。現在の百鬼帝国の最強戦力の離反は流石のブライでもそれを良しとは言えなかった。

 

「誰ぞ知らんが、やってくれる」

 

自分が用意した策を利用され、部下に不信感を抱かれたのは面白くないが、それによって情勢が動いたのならばそれに目くじらを立てるほどブライは子供ではない。むしろ自分に気付かせずに立ち回ったと賞賛さえしていた。流石のコーウェンとスティンガーもブライの配下と知って攻撃を仕掛けてくるほど馬鹿ではないはずとブライは考え、自分の知らない第3者の介入があったと考えたのだ。

 

「何れまみえる事もあろう……ふっふっ、はーっはははははッ!!!」

 

月に向かうシャトルに乗り込みブライは大声で笑い出す。闇で暗躍するものによってこの世界に大きな波紋が広がった、そしてブライはそれを是とした。万全な状態で今度こそゲッターロボを完膚なきまでに叩き潰し、ゲッターロボを倒すまで協力していた者達を全て打ち倒し、己の部下とし、今度こそ百鬼帝国が宇宙へと進出する事を夢見てブライは動き出すのだった……。

 

 

第126話 暴虐の超機人/闇からの呼び声 その1へ続く

 

 

 




今回でインターミッションは終了、ギリアム少佐がインベーダーズに気付き始めました。そして色んな陣営にフラグを撒きつつ、次回はオリジナルシナリオでアギーハの変わりに別の敵とクロガネ、グランゾンと戦わせたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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