進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第126話 暴虐の超機人/闇からの呼び声 その1

126話 暴虐の超機人/闇からの呼び声 その1

 

やや癖毛の濃い青い髪を無理にストレートにし、伊達眼鏡を掛けたイングラムはある意味堂々と伊豆の街を歩いていた。連邦の膝元である伊豆の街、連邦の探し人であるイングラムがそこを歩くなどと正直自殺行為だが、こそこそするから却って怪しく見えるのであり、逆に堂々としていていればイングラムに似ているだけの一般人として思われやすい。灯台下暗し、木の葉を隠すなら森の中――イングラムはそれを行っていた。

 

(ビアン達には迷惑を掛けたが、そうも言ってられん)

 

余りにもシャドウミラーの動きが活発になっている……何を考えているかまでは判らないが、ハガネとヒリュウ改、そしてシロガネが伊豆基地に集まって来ているのはクロガネも把握していた。

 

(仕掛けるのならば、このタイミングだ)

 

ヴィンデルも馬鹿ではない、永遠の闘争という愚かな思想こそ掲げているが指揮官として、そして軍略家としてはイングラムでさえも舌を巻くほどの技量を持ち合わせている。

 

「……思ったよりも状況は良くないな」

 

伊豆の街の中に満ちている殺気と監視するような視線――それは量産型Wナンバーズ、そして鬼であるとイングラムは考えていた。

 

「1つくれ」

 

「まいど、観光かい?」

 

「ああ、そんな所だ。ありがとう」

 

観光客を装い、自分とイングラム・プリスケンを断ち切り、警戒せず、視線に目も向けず。気付いていない振りをしゆっくりを歩みを進めるイングラムだったが、真向かいの横断歩道の先に2人組みの姉妹を見つけ信号が赤信号から青信号に変る前に進む方向を変え雑踏の中にイングラムはその姿を隠す。

 

「アヤ? どうしたんだ?」

 

「え、あ。ううん、なんでもない……ちょっと探してる人に似てる人がいて……」

 

「探そうか?」

 

「ううん、気のせいだと思うから……行きましょう、マイ」

 

信号が青になり慌てて駆けて来たアヤの視線に入らぬように気配を殺しながら、その後に立つマイを見てイングラムは小さくレビと呟き、首を左右に振った。

 

(レビ・トーラーではない、彼女はマイ・コバヤシに戻った。ならばそれで良かろう)

 

アヤとマイから離れるようにイングラムは歩き出し、今度こそその姿は伊豆の雑踏の中へと消えていくのだった……。

 

「イングラム少佐を何故日本へ?」

 

「ハガネとシロガネ、そしてヒリュウ改が日本に集おうとしている。仕掛けるのならばここしかない、仮にシャドウミラーや百鬼帝国が動かないとしても、日本に超エネルギーが集まりすぎる」

 

「ゲッター線、マグマ原子炉、反マグマプラズマジェネレーター……例を上げれば切がないですなビアン博士」

 

1つでも並みの特機、いや発電所を超えるエネルギーを持つ機体が一同に日本に集う……ビアンはそれを危惧し、イングラムの日本に向かいたいという申し出を聞き入れた。

 

「それにあの異常なゲッター線反応、ツェントルプロジェクトにウルブズ……警戒を緩める事はできん、それにダイテツ達が遭遇したと言うインベーダーとアインストの融合個体の件もある」

 

懸念すべき問題は増えて行き、ビアン達でさえ頭を抱え解決策を求めていた。

 

「もしもゲッター線を多用した事が原因だとすればどうだ? ビアン」

 

「グライエン……急にどうした? お前はゲッター線とゲッターロボを特別視していた筈だ」

 

「いや、それは変らない。だがエネルギーはエネルギーだ、それに引き寄せられ、何かが起きてもおかしくないのではないか?武蔵君の意思ではない、そうゲッター線が我ら人類に試練を与えようとしているのではないか? 私は今ではそう思い始めている」

 

新西暦で最もゲッター線を求め、そしてゲッターロボを求め、そして誰よりもゲッター線の真意にグライエン・グラスマンは辿り着こうとしていた、そしてその余りに真剣な表情にビアン達は口を噤んだ。

 

「もしや、今修理をしているゲッターロボは……」

 

「うむ、ゲッター線への決別を込めた旧西暦の人達の思いの結晶なのやもしれん……自分達はゲッター線に頼りすぎ、そしてその結果インベーダーという悪魔を呼び寄せた。ゲッター線を使わずとも発展してみせる……そんな思いがあったのかもしれない」

 

メガフロートで発見されたゲッター線を使わないゲッターロボ――1度も稼動した形跡の無いそれに込められたメッセージ。ゲッター線に頼らず進化してみせる……そんな意志があったのでは? とグライエンは語る。

 

「ロマンチストだな。だが……その考えは嫌いじゃない」

 

インベーダーの事は確かに悪夢だった。それを隠蔽したのも紛れも無い事実だが、それであると同時にグライエンの語る思いがこめられていたのではないかとビアンは笑った。

 

「ではあのゲッターロボは運用しないのですか?」

 

「いや、使う。バン大佐に使って貰うつもりだ、その為に修理をしたのだからな」

 

これからの戦いに必要になる。ビアンはそう考え、ネオ・ゲッターロボを修理、そして改良した。実戦に耐えれるかのテストが八丈島近くの海域で行なわれようとしていたのだが……そこに底なしの悪意が向かって来ている事をビアン達は知る良しも無いのだった……。

 

 

 

 

空戦鬼の中は異様なピリピリとした雰囲気に満ちていた。それは艦長席に腰掛けているビアンに成り代わっている五本鬼も同じだった……

 

(何故こんな化け物と一緒に……)

 

四狂の鬼人 饕餮――何もかも食らう貪欲な鬼にして超機人が人の姿を得た存在。その強さもおぞましさも百鬼帝国で群を抜いている。

 

「ふぇふぇふぇふぇふぇ、そんなに怖がらなくても良いわい。お主は喰わんよ、不味そうじゃからな」

 

不味そうだから喰わないと言われてありがとうと言えるほど五本鬼は豪胆な性格ではなく、引き攣った声で返事を返すのがやっとだった。そしてそんな様子の五本鬼を見て饕餮は嘲笑を浮かべる。

 

「小物よのぉ、何ゆえブライはこんな小物にビアン・ゾルダークなんぞを演じさせておるのやら」

 

その言葉を聞き怒りが込み上げてくる五本鬼だが、それをぐっと堪える。

 

(理由を与えるな、耐えるんだ)

 

饕餮に自分を害させる理由を与えるなと言い聞かせるように何度も何度も呟いた。

 

「私はあくまで戦略家、演説家ではない」

 

確かに五本鬼は龍王鬼や虎王鬼達のような四邪の鬼人や饕餮や共行王のような四罪、四狂の鬼人のような化け物とは比べるまでも無く弱い。だが鬼の力任せの戦略ではなく、人間相手でも十分通用する軍略を考える頭脳を有していた。

 

「ほほお、ならばお前の軍略とやら、この饕餮が見極めてやろうかの」

 

「何を?」

 

直に判ると言う饕餮の言葉の後に空戦鬼の警報が鳴り響いた。

 

「クロガネを補足、なにやら新型の機体のテスト中のようです」

 

「ほう……なるほど……情報通りだな」

 

報告を聞いて五本鬼は頭脳を巡らせる。伊豆基地を初めとした日本各地の基地に潜り込んでいる鬼からの情報で日本周辺でクロガネが目撃されたという情報を元に五本鬼は饕餮と出撃していた。勿論その目的は五本鬼が本当の意味でビアン・ゾルダークとなる為にクロガネへの襲撃を仕掛けていたが、想定していたよりも大きなリターンを得られるかもしれないと五本鬼は笑みを浮かべた。

 

「ふぇふぇふぇ、ワシが仕掛けるかの?」

 

「いえ、饕餮様には待機をしてもらいます」

 

「ほう? その理由は?」

 

ジロリと睨みつけられ、内心冷や汗を流しながらも五本鬼は口を開いた。

 

「クロガネの主だった戦力はグルンガストタイプ、ゲッターロボV、そして黒いゲッターロボの特機が3種類、それに加えてゲッター線稼動のPTが2機、あとは量産型のAMと聞いております」

 

今までの百鬼獣の襲撃、そして戦闘データを元にクロガネが保有している戦力は大まかに五本鬼は把握していた。そしてその上で今回の襲撃は布石でもあるのだと説明する

 

「ビアン・ゾルダークならば窮地に至れば自ら出撃し、指揮をとるでしょう。その間にクロガネに発信機をつけることが出来れば孤立している状況で襲撃を仕掛ける事も可能で、出来る事ならばここで決着をつけることも視野に入りますが……ビアン・ゾルダークはゲッター炉心を実用段階にしています。それを確保する事も最優先課題ですが、クロガネを撃墜せず、なおかつ機体性能を損ねないレベルで攻撃を仕掛ける事は可能ですか?」

 

五本鬼の問いかけに饕餮は自信はないのうと返事を返した。クロガネは轟沈せずに確保する必要性があり、それに加えてビアン・ゾルダークの頭脳は失うには惜しい。それゆえに鹵獲、及び生きたままの捕獲命令が下されている。

 

「それに加えて、こんな事を言うのはなんですが……日本にはハガネ、シロガネ、ヒリュウ改が近づいております。乱戦になる可能性は十分にある以上、一気に戦力を投入する事は出来ないのですよ、最悪発信機をつけることが出来れば事足りる、何も援軍が来ると判っている状況で無理に攻める必要はありませんからね」

 

クロガネは神出鬼没――しかし発信機をつけることが出来ればいつでも、それこそ龍王鬼をぶつける事も出来る。ならばここで無理をする必要はないと五本鬼は説明する。

 

「ふうむ、良かろう。お前の戦略に従ってやるとしよう」

 

「ありがとうございます。ステルスを展開、その後クロガネの新型のデータ取りをする。出撃はその後だ」

 

「「「了解!」」」

 

確かに五本鬼はビアン・ゾルダークの替え玉としては弱い、だがそれはビアンが規格外のカリスマを持つ男であり、そしてその頭脳は独学で早乙女博士に匹敵するほどの物を持っているからだ。だが決して五本鬼は無能ではなく、小心者でヒステリックな部分はあるが指揮官として、そして戦略家としては十分に優秀な鬼なのだった……。

 

 

 

クロガネから出撃した青・赤・黒の戦闘機……いやネオイーグル、ネオジャガー、ネオベアーの3機のゲットマシンはクロガネの上空で急上昇、旋回、急降下と飛行訓練を行う。

 

「ネオジャガー、ネオベアー遅れているぞ。もう少しスピード上げるんだ」

 

『ぐっ、りょ、了解! バン大佐!』

 

『い、今追いつきますッ!!!』

 

先行しているネオイーグルの後を追って加速するネオジャガー、ネオベアー号だが機首がブレ、不安定な挙動になっている。

 

(努力は認めるが……まだまだだな)

 

ネオジャガーのパイロットは赤みが掛かった茶髪のスレンダーな女性パイロットの「ジャレッド・スパイカー」。コロニーにいる時分はプロジェクトTDに参加経験もあり、トロイエ隊の本隊に選ばれる事はなかったがその腕前は十分に高くAMの適正さえ高ければトロイエ隊で隊長格に選ばれたであろう程に高速戦闘と空間把握能力に秀でていたが、絶望的にAMの操縦適正が無かった為補欠になっていたが、ゲットマシンの適性検査ではBクラスとB+のスレイと僅差という事でネオジャガーのパイロットに選ばれたという経緯を持つ。

 

「ほう、中々やるな」

 

実機での飛行訓練はこれが初めてなのだが、機首がぶれてからの立てなおし、最高速度に戻るまでの速度を見てバンは感心したように呟いた。ゲットマシンはその見た目通り主翼も尾翼もない、それこそ高出力のエンジンで無理やり飛ばしていると言っても良い。その性質上1度崩れた姿勢を立てなおし再び加速を得ると言うのは極めて困難だ。それをやって見せたジャレッドは紛れも無く1級品のパイロットと言っても良いだろう。

 

『遅れました。しかしもう大丈夫です』

 

それに続くように機首を上げて来たネオベアー号から響いた男性の声にバンは小さく笑った。ジャレッドだけではなく、もう1人も立て直して見せた。ゲッター炉心を使っているゲットマシンより程度が落ちると言ってもネオゲットマシンもとんでもない暴れ馬だ。今回の飛行テストだってネオジャガーとネオベアーは脱落すると考えていただけにこれは嬉しい誤算だった。

 

「不死身のギュスターヴの名は伊達ではないな」

 

『……とんでもない、私は運が良かっただけですよ、それにその呼び名は余り好きではありません大佐』

 

不死身のギュスターヴ――LB隊に所属するオーガスト・ギュスターヴの渾名だ、DC戦争時ではゲッターロボに撃墜され、アードラー率いる偽りのDC時代はアルトアイゼンに撃墜され、エアロゲイターの侵攻の際にはスパイダーに組み付かれ自爆され撃墜され、L5戦役では量産型ドラゴンに撃墜された。それでも五体満足でしかも、戦争時にただの一度も入院する事無く戦場に立ち続けた。それ故にに不死身のギュスターヴと尊敬と畏怖を集めている。

 

「謙遜するな、生き残り続ける事はお前の腕の良さを示している」

 

『撃墜され続けた私が腕が良いなど、とてもではありませんよ』

 

『謙遜も過ぎると嫌味になりますよ。オーガスト大尉』

 

バンとギュスターヴの会話にジャレッドが加わってくる。

 

『ジャレッド少尉、しかしだな』

 

『あたしよりもガーリオンの適正が低い上に試作機で戦い続けたのですよ? オーガスト大尉は紛れも無く凄腕ですよ』

 

そう不死身の2つ名はそこから来ている。元々オーガスト・ギュスターヴという男はPT適正こそ高いが、AM適正、取り分けガーリオンタイプの適正が低く、与えられたガーリオンも重装甲の試作機ばかりで通常のAMとは全く異なるコンセプトで開発された物ばかり、それなのに戦い続けたオーガストは紛れも無くエースと呼ばれるに相応しい実力を有していた。

 

「その通りだ、少しは自信を持つといい、勿論ジャレッドもいい腕をしている……だがこれは飛行訓練だ。本番までにへばって……何事だッ!? いかんッ! 散れッ!」

 

ゲットマシンに鳴り響いた警報にバンが声を上げモニターにミサイルの雨を確認し散れと叫びミサイルを緊急回避する。

 

『クロガネからは敵機の反応なんてありませんでしたよッ!?』

 

『逆に考えろ、クロガネが感知出来ない敵――つまり百鬼帝国だッ!』

 

雲の切れ間から急降下してくる異形の戦闘機の群れ、そして数体の百鬼獣の姿が確認される。

 

『バン大佐! クロガネに帰艦しろッ!』

 

「いえ、ビアン総帥。我々は戦闘機の迎撃に出ます。エルザムとゼンガーに出撃を急がせてください! その為の時間は稼ぎますッ! ジャレッド、オーガスト続けッ! 戦闘機をクロガネに接近させるなッ!」

 

『『了解ッ!!』』

 

ビアンからの静止の声を振り切りバン達は雲の切れ間から姿を見せ続ける百鬼帝国の戦闘機へとネオゲットマシンを向かわせるのだった……。

 

 

 

 

空戦鬼のブリッジで饕餮は顎鬚を摩りながら詰まらんのうと呟いた。

 

「いかがしましたか?」

 

小さな呟きだったが、饕餮が暴れだしては困ると意識を向けていた五本鬼はその呟きを聞き取りどうかしましたか? と問いかける。

 

「うむ。ゲッターロボがおらんと詰まらんなとな、ワシは逃げる女を犯しながら痛みと快楽でおかしくなりそうになる者を食うのも好きじゃが、やはり戦いが1番好きじゃ」

 

嗜虐的な嗜好をしている饕餮の言葉に五本鬼は内心眉を顰め、喉元まで出てきた言葉を飲み込んだ。下手な事を言えば自分が食われる、それを知っているからこそだった。

 

「グルンガストとヒュッケバインでは物足りませんか?」

 

「食いでがなさそうじゃな」

 

ゲッター炉心で稼動しているグルンガスト参式、そしてヒュッケバイン・MK-Ⅲ・トロンベの動きは敵ながら感心するほどの物だった。しかしそれではまだ足りぬと饕餮は告げた。

 

「もう少し攻撃の手を激しくすれば動きも変ろう」

 

「判りました。ではそうしましょう」

 

「ほ? 良いのかの?」

 

自分の意見を聞き入れられると思っていなかった饕餮が驚いたような声を上げる。

 

「ええ、これでは私の目的も成し遂げられないですしね」

 

モニターに映し出される光景を見て五本鬼は口調とは違う激しい怒りを抱いていた。偵察やミサイルによる爆撃を主にした小型の百鬼獣はネオゲットマシンに撃墜され発信機を取り付けるという本来の目的を成し遂げられないでいる。

 

『一刀両断ッ!!!』

 

『ギギャアアッ!?』

 

翡翠色の光――ゲッター線を纏った参式斬艦刀を振るうグルンガスト参式を前に豪腕鬼、双剣鬼、龍頭鬼は突破は愚か完全に足止めされている。

 

『悪いがお前達をここから先には通さんぞ』

 

ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・トロンベが翡翠の粒子を撒き散らしながら空を飛び、ゲッター線を撃ち出すビームライフルで百鬼獣の装甲を削り、グルンガスト参式がトドメを刺しやすい状況を作り出している。確かにクロガネの戦力は決して多くは無いが、ゲッター線を使いこなしている分を考えると少数でもその戦闘力は想像以上に高くなってくる。

 

「クロガネからゲシュペンスト・タイプSが出撃してきました」

 

「……ここで増援を出して来たと言う事は戦力の出し惜しみはなしか……」

 

ビアン達とて馬鹿ではない、五本鬼達が戦力を隠している事は把握しているだろう。それでもここで戦力を切って来た……その理由は考えればすぐに判る。

 

「戦闘反応でハガネとヒリュウ改を呼び寄せに来たか……」

 

戦闘が長時間に及べばそれだけハガネやヒリュウ改を呼び寄せる時間を稼がせる事になる。攻めるべきか、引くべきか……五本鬼は少し考え込む素振りを見せたあとに決断を下した。

 

「饕餮様、そろそろ出撃していただいてもよろしいでしょうか?」

 

「ワシの敵がおらんのにか?」

 

不満そうな視線を向けてくる饕餮、ここで言葉を間違えれば饕餮の爪は即座に五本鬼に伸びる。だからこそ五本鬼は慎重に言葉を選び、ゆっくりと口を開いた。

 

「共行王様が出し抜かれた相手が出てくるとしてもですか?」

 

「……ほう?」

 

五本鬼の言葉に饕餮の言葉に興味の色が浮かんだ。共行王は超機人の区分では饕餮よりも上になる、だからこそ共行王が出し抜かれた相手が出て来ると聞けば饕餮は興味を抱くと五本鬼は確信していた。

 

「重力反応が検知されているのです。もう少しクロガネを追詰めれば……」

 

「重力の魔神が出て来ると……ふぇふぇふぇ。良かろう、お前の甘言に乗ってやるかの」

 

普通の気の良い老人のように笑った饕餮に五本鬼は内心安堵したが、その影から伸びて来た異形の手の爪が喉元に突きつけられ引き攣った悲鳴を上げた。

 

「重力の魔神もゲッターロボも出なければどうなるか判っているであろうな?」

 

「……承知しております」

 

「ならば良い。では参るかの」

 

影の中に溶けるように消えていく饕餮を五本鬼は忌々しそうに見送り、ブリッジにいる鬼に更なる指示を飛ばす。

 

「百鬼獣を全て出せ、それに紛れて獣蜥鬼を出撃させろ。クロガネに発信機を取り付けさせるのだ」

 

「了解です。しかし獣蜥鬼は……」

 

「判っている、獣蜥鬼は非常に高価な百鬼獣だ。撃墜されないうちに回収する、発信機の取り付けに失敗したら即時回収だ」

 

カメレオンの能力を持つステルス性能の高い獣蜥鬼はその奇襲性の高さに比例するように製造コストの高い百鬼獣だ。今まで破壊された数も相まって容易に捨て駒に出来る百鬼獣ではない、発信機の取り付けに失敗したら帰艦させろと追加で命令を下し、五本鬼は空中を歩きクロガネの前に立つ饕餮にその視線を向けるのだった……。

 

 

 

それは異様な光景だった……空中に黒い道が浮かび悠然と歩いてくる老人の姿をした何かを前にして、流石のビアンも言葉を失った。

 

『ふぇふぇふぇふぇ、初めましてじゃなあ。んん? ビアン・ゾルダーク』

 

ミサイルの爆風やクロガネの対空砲座が火を噴く中、老人……饕餮はなんでもないかのように空中に佇み、ブリッジにその視線を向けていた。

 

『なんじゃなんじゃ、声を掛けておるのに無視をするのか? 随分と失礼な奴じゃな』

 

「……失礼した。ビアン・ゾルダークだ、お前は何者……いや、なんだ?」

 

者ではなくなんだと問いかけられ、饕餮は満面の笑みを浮かべた。だがその口を開く前に百鬼獣がクロガネに向かい咆哮を上げた……いや、上げてしまった。その直後首が後を向き、咆哮を上げた百鬼獣に向かって伸びた。

 

『やかましいぞ、折角人が楽しかったと言うのに』

 

『ギギャアア!? ゴギャアアアッ!?』

 

ごきり、めきりと老人の口から聞こえるとは思えない咀嚼音が響き、百鬼獣が貪り食われる。

 

「な、なんなんですか……あれはッ」

 

「化け物としか言い様が無いな、こうなると他の機体を出撃させなかったのは英断に思えてくる」

 

百鬼獣が相手だからLB隊、トロイエ隊、そしてカリオン改を出撃させなかった。だが目の前の異様な光景を見ればその選択が正しいものだったと言うのは誰の目から見ても明らかだった。

 

『な、なんておぞましい』

 

『ジャレッド少尉! 機首をあげろッ!!』

 

『え、あ、くうっ!?』

 

オーガストの警告で機首を上げたネオジャガー号の下を饕餮の影から伸びた腕が通り過ぎる。続けて伸ばそうとした饕餮にネオイーグルのバルカンとミサイルが当たるが全て影から伸びる腕に弾かれる。

 

「分離形態では話にならんッ! 1度逃れるぞッ!」

 

ゲットマシンでは攻撃力が足りないとバンは苛ただしげに叫び、1度急上昇し饕餮の攻撃範囲から逃れる。

 

『ひゃひゃひゃ、逃げられたか。まぁどの道あんなのを喰らっても腹の足しにはならんかの……さてと、では改めてワシは四狂の超機人饕餮鬼じゃ』

 

影から伸びた異形の腕を自身の影の中に戻し、百鬼獣を貪り食った饕餮は白目と黒目を反転させ笑いながらそう告げた。

 

「超機人? お前は人……には見えんな。何がしたい?」

 

『ふぇふぇふぇふぇッ! 知れた事よ! ワシは喰らう、喰らって喰らって、犯して喰うッ! それがワシよッ!!! ワシのこの食欲を抑えるには百鬼帝国に組する方が良い、それだけよッ!!! カカカカカッ! 進化の光、鋼鉄の箱舟……ああ、美味そうじゃ、美味そうじゃなぁぁああああああッ!!!!』

 

急にテンションが振り切った饕餮の身体はメキメキと嫌な音を立てて巨大化し、その肌がビアン達の見ている前で硬質化し、金属の光沢を帯び始める。

 

「面妖なッ!」

 

「見た目通りの化け物という事か、気を引き締めろゼンガー。こいつはR-SWORDを一撃で行動不能に追い込んだ化け物だ」

 

「間合いを見誤るなよ、ゼンガー、エルザム、こいつの瞬発力は異常だ。油断すれば私達も喰われるぞ」

 

人間が50Mを越える異形の特機へと変貌する姿にゼンガーは面妖なと口にし、エルザムはその異形の特徴がイングラムとアクセルの戦いに乱入し、R-SWORDを一撃で大破させ、その上でソウルゲインを抱え上げて逃亡した機体だと悟り、カーウァイは目の前の饕餮がインベーダー、アインストに匹敵する脅威だと確信した。

 

『ゲヒャヒャヒャヒャッ!! ああ、腹が空いた、飯だ飯を食うぞッ!!! まずは貴様だああああッ!!!!』

 

雄叫びを上げ百鬼獣に跳びかかった饕餮鬼は大口を開け、龍頭鬼の頭から胴体までを1口で噛み千切った。オイルを鮮血の様に噴出しながら龍頭鬼は数回痙攣すると爆発炎上する。その爆発によって生まれた炎を背中に背負い饕餮鬼はその口から噛み千切った龍頭鬼の腕をペッと吐き出し、グルンガスト参式とヒュッケバイン・MK-Ⅲ・トロンベ、ゲシュペンスト・タイプSを嘗め回すように見つめ涎を垂らす。

 

『喰らってやる、喰ろうてやるぞ。ひゃひゃひゃひゃッ!! 進化の光はどんな味かのうッ!! 楽しみで仕方ないわいッ!!!』

 

海面が爆発したような音を響かせながら飛び掛ってくる饕餮の巨体が太陽を覆い隠し、その両腕をカーウァイ達に伸ばしながら襲い掛かってくるのだった……。

 

 

 

 

127話 暴虐の超機人/闇からの呼び声 その2へ続く

 

 

 




今回のシナリオは雑魚敵を数体倒すとイベント進行という感じのイメージで書いてみました。乗り換えとか合体とか味方の登場とか、そういうイベントに繋がる奴ですね。さてさて、この定番シナリオでどのイベントが起きるのかを楽しみにしていてください、少なくともネオは出ます。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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