進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第127話 暴虐の超機人/闇からの呼び声 その2

第127話 暴虐の超機人/闇からの呼び声 その2

 

グルンガスト参式、ゲシュペンスト・タイプS、ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・トロンベの前に立ち塞がる異形の特機――超機人饕餮王。

 

【フェフェフェフェ、さぁさ、より取り見取り……どれから喰らってやろうかのう……】

 

その腕で涎を拭う素振りを見せる饕餮王。獣の身体に人の頭部、そして口から見える鋭い牙は虎などの肉食獣を連想させる。

 

「かなり厄介な相手だな」

 

こうして向かい合っているだけで凄まじい威圧感をカーウァイは感じていた。3人で相手をし、やっと互角と感じるほどの威圧感と存在感――超機人の脅威というのを向かい合っているだけでひしひしと感じる。

 

(幸い百鬼獣はあの化け物が喰らったから敵は減っているが……先ほどの能力を見るかぎりでは安心は出来んな)

 

影から異形の手足を伸ばす能力、人の姿でも使えたのだから超機人の姿で使えない訳がない。見た目からして重装甲の高火力型、それに加えて奇襲性の高い影を操る能力――3対1だったとしても安心出来る要素はどこにもなかった。

 

【まずは挨拶代わり、この程度で死んでくれるなよッ!! 生きているのを喰らわねば美味くないからのうッ!! かぁッ!!!】

 

頭部を下げたと思った瞬間にその目玉から放たれた光線をゲシュペンスト・タイプSとヒュッケバイン・MK-Ⅲ・トロンベは左右に分かれることで回避し、機動力に劣るグルンガスト参式・タイプGは斬艦刀を盾にし、その光線を受け止める。

 

『ぬうっ!?』

 

完全に防いだにも関わらず後方に押し込まれた。その破壊力にゼンガーが思わず呻き声を上げた……いや、破壊力だけではない、何とも言えない倦怠感が襲い掛かって来たのだ。

 

『なんだ…なんだこれはッ』

 

【フェフェフェフェ、美味い魂じゃのう…ああ、美味い美味い。カカカカカカカカッ!!!】

 

舌で顔を舐めまわし、美味い美味いと笑う饕餮王の姿にゼンガー達は今の攻撃に付与されていた何かを感じ取った。

 

『精神力を喰ったというのか!?』

 

『超機人にはそんな能力まであると言うのか……ッ』

 

攻撃と共に精神力を、気力を喰らう。下手に攻撃を受けよう物ならば気付かぬうちに精神力が削られ操縦ミスを引き起こし、間合いを計り損ねる。

 

「ちっ、厄介な」

 

直接的な火力だけではない、間接的な攻撃でさえも饕餮王の攻撃は脅威だった。

 

【ひゃひゃひゃひゃ。美味い、美味いのう……これほど良質な魂は久しぶりじゃなあ……ッ!! ヒャヒャヒャヒャヒャッ!! そらそら、もっと食わせいッ!!】

 

喉元が膨れ上がり、大きく開かれた口から無数の顔に手足が生えた様な異形が吐き出された。

 

【まずは英気を養うとしようかのう、ゆけいッ!!!】

 

【【【【ゴガアアアアーッ!!!】】】】

 

耳障りな呻き声を上げながらPTの半分ほどの大きさの球体が空中を転がるようにカーウァイ達へと迫る。

 

「インベーダーやアインストと良い勝負だな!」

 

ビームライフルによる迎撃を試みるカーウァイとエルザムの2人だが、球体状の化け物――妖機人は穴が空こうがお構いなしにゲシュペンスト・タイプSとヒュッケバイン・MK-Ⅲ・トロンベへと迫る。

 

『カーウァイ大佐! エルザムッ!!』

 

【どこを見ておるかッ! それともワシに喰われてくれるのかッ!】

 

不気味な化け物がカーウァイとエルザムに迫るのを見てゼンガーが思わずその名を叫ぶ。その隙を饕餮王が見逃すわけが無く、肥大化させた拳でグルンガスト参式・タイプGに殴り掛かる。

 

『ぐっ! 邪魔をするなッ!!』

 

【ヒャヒャヒャヒャッ!! 他人を気遣ってる余裕などお主にあるのかッ!】

 

『ぐあッ!?』

 

剣という特性上振り切る間合い、速度が必要になるグルンガスト参式・タイプGに対し、饕餮王の武器はその拳と牙だ。間合いを完全に詰められ、思うように攻撃が出来ないグルンガスト参式・タイプGに饕餮王がその口を大きく開き噛み砕こうとする。

 

『ゼンガー! 何をしているッ! 目の前の敵に集中しろッ!!』

 

急降下して来たネオイーグルの放ったミサイルが饕餮王で炸裂し、グルンガスト参式・タイプGと饕餮王の間合いを引き離す。

 

【かぁーッ! 不味いッ!! こんなものを喰わせおってッ!!】

 

『舐めるなよッ! その程度の攻撃で私を捉えれると思うなッ!!』

 

反撃に繰り出された目からの光線をバンが操るネオイーグルはバレルロールを駆使して回避し、再び急上昇し雲の中へとその姿を隠す。

 

「私達の事は良いッ! 目の前の敵に専念しろ、ゼンガーッ! グランスラッシュリッパーセット、GOッ!!!」

 

『狙いは外さん、行けッ! ファングスラッシャーッ!!』

 

ゲシュペンスト・タイプSが回転しながら投げ付けたグランスラッシュリッパーは高速回転しながら妖機人の下を通過する。その光景を見て饕餮王は高笑いを浮かべる。

 

【どこを狙っておるのじゃ、あんな的にも当てられんのか?】

 

「いいや、計算通りだ」

 

背後を取ったグランスラッシュリッパーはゲシュペンスト・タイプSに向かって戻ってくる勢いで妖機人を切り裂き両断する。

 

『見た目で足を止めるほど、私も若くないのでな』

 

ファングスラッシャーで切り裂かれ動きを止めた妖機人に至近距離からビームライフルを打ち込み、エルザムも妖機人を撃墜する。

 

【ひゃひゃひゃひゃひゃッ! やれ嬉しや、良くぞ撃墜してくれたわ】

 

「なんだ、何を……うっ!?」

 

『なんだ、この声は……ッ!?』

 

饕餮王の笑い声と同時にカーウァイとエルザムの耳に言葉として認識出来ない不気味な音が響き、それと同時に凄まじい倦怠感が2人を襲った。

 

『貴様何をしたッ!?』

 

【ヒャヒャヒャッ! 喰らったのよッ!! フェフェフェフェッ!! ワシの攻撃は全てお前達の魂を喰らう! 戦えば戦うほどに、近づけば近づくほどにお前達の魂はワシの餌となるのよッ! それ、この通りなッ!!】

 

饕餮王が口を開けると空中に漂っていた妖機人の残骸が動き出し饕餮王の口の中に飛び込む。残骸が饕餮王の口の中に飛び込めば飛び込むほどにカーウァイ達を襲う倦怠感は強くなり、それに反比例するように饕餮王の身体は巨大化し、角が寄り大きく捻れ、その拳に金色の手甲と鋭い鉤爪が現れる。

 

【ヒャヒャヒャッ!! ワシは戦えば戦うほどに、喰らえば食らうほどに強くなるッ! 暴虐の超機人饕餮王なりッ!!!】

 

現れたときよりも巨大化し、そして威圧感を増した饕餮王が勝ち誇ったように叫び、カーウァイ達は背中に流れる冷たい汗に顔をゆがめるのだった……。

 

 

 

 

空中を旋回しながらバンは目の前の化け物――饕餮王を見てその顔を歪めていた。

 

「なんと言う化け物だ……ッ」

 

カーウァイ、ゼンガー、エルザムは紛れもなくエースパイロットであり、その機体もゲッター合金、ゲッター炉心で強化され、ゲッターD2を除けば新西暦では紛れも無く最強の機体だ。それらを相手にしても饕餮王には余裕の色、もっと言えば遊ぶ余力があった。

 

【そらそらそらッ! どうしたどうしたッ!】

 

現れた時とは異なり、金色の鎧を纏っているように見える饕餮王は影と咆哮を駆使し、カーウァイ達を追い詰めていた。純粋な実力の高さに加え、精神力を削り取る饕餮王の攻撃は極めて厄介な間接攻撃だった。

 

(何か、突破する為の…いや、状況を変えるだけの一手が必要だ)

 

それが出来るとすれば……1つしかない。バンは覚悟を決め、通信機のスイッチをONにした。

 

「ビアン総帥。ゲッターチェンジのロックの解除を願います」

 

『バン大佐、何を言っているのか判っているのか!? ぶっつけ本番のゲッターチェンジなど自殺行為だぞッ!』

 

バン、ジャレッド、オーガストの3人はゲッターチェンジを行なう為の飛行訓練の最中だった。戦闘中でのゲッターチェンジとなればリスクが余りにも高すぎる。

 

「超機人は機械であり生物であると聞いています。それならばネオゲッター1のプラズマサンダーが効果を発揮すると愚考しました」

 

『いや、確かにそうだが……しかし……』

 

「ビアン総帥、迷っている時間はありません。ロックの解除を」

 

饕餮王の攻撃は激しく、流れを変えなければカーウァイ達は愚か、クロガネも轟沈する可能性がある。悩んでいる時間はないとバンに告げられ、ビアンは苦虫を噛み潰した表情を浮かべた。

 

『……死ぬな。絶対に成功させろ』

 

「了解です。聞いていたな、ジャレッド、オーガストやるぞ」

 

『『了解ッ!!!』』

 

2人の返事を聞きバンは操縦桿を強く握り締め、ペダルに足を乗せた。

 

「行くぞッ!! ゲッタァアアアチェンジッ!!!」

 

ネオイーグルが機首を下にし急降下する。その後を追ってネオジャガー、ネオベアー号も加速しながら急降下する。

 

『ぐっ、ぐぐうううッ!!!』

 

『行くぞッ! ジャレッド少尉ッ!』

 

『りょ、了解ッ!!! うあッ!?』

 

ネオジャガー号にネオベアー号が追突もかくやという勢いでぶつかり、一瞬で胸部と脚部にへと変形し、更に加速し先行しているネオイーグル号へと突き進む。

 

「お、おおおおおおッ!!! チェンジゲッタァアアワンッ!!!」

 

凄まじい追突の衝撃に負けないように叫びながらバンはレバーを引きネオイーグルを合体モードへと変形させる。頭部の三本角、口元から伸びるゲッタードラゴンの物に酷似した口髭のようなパーツ、ゲッター1・ゲッタードラゴンとは違う深い青色の装甲と黒と赤を基調とした脚部パーツ。今ここにアメリカの大地で眠り続けていた旧西暦の遺産――ネオゲッターロボが新西暦にその姿を現した。

 

「チェーンナックルッ!!!」

 

背部のブースターで軟着陸しながらチェーンで繋がれた手首の先を射出し、グルンガスト参式・タイプGにその拳を叩きつけようとしていた饕餮王の腕に巻きつかせ、腰を落しその動きを止める。

 

【なんじゃ、ガラクタか】

 

「ガラクタか、どうかその身で味わってみるかッ! ショルダーミサイルッ!!!」

 

肩から放たれたミサイルの雨が饕餮王に襲い掛かる。だがゲッター炉心を搭載しておらず、ゲッター合金の弾頭でもないただのミサイルでは饕餮王にはダメージにはならない。

 

【ふん、ガラクタはガラクタか。さっさとうぎいッ!?】

 

ネオゲッター1を引き寄せようと饕餮王が鎖を掴んだタイミングでバンは操縦桿のボタンを押し込んだ。ネオゲッター1の動力であるプラズマボムスの超高圧電流が鎖を伝って饕餮王へと襲い掛かる。

 

「ガラクタガラクタとうるさいぞ! この化け物がッ!!」

 

【ぐぎい……己、面倒な事をッ】

 

電流を流された饕餮王は身体をビクンと竦ませ、その動きが一瞬鈍くなった。その隙にチェーンナックルを回収しネオゲッター1はそのまま後退し体勢を立て直した。

 

「やはり思った通りだ、電気は効果がある。カーウァイ大佐、エルザム! 少し時間を稼いでくれッ!」

 

『何をするつもりかは判らんが、任された』

 

『少しと言わず十分な時間を稼いで見せようッ!』

 

ゲシュペンスト・タイプSとヒュッケバイン・MK-Ⅲ・トロンベが高速で動き出す。先ほどまでは饕餮王の方が素早く防戦一方だったが、感電し動きが鈍くなっている饕餮王では2機を追う事が出来なかった。

 

『斬艦刀、疾風怒涛ッ!!!』

 

【かぁぁああッ!! 舐めるなあッ!!!】

 

斬艦刀と饕餮王の爪がぶつかり火花を散らす。均衡状態から徐々に徐々に斬艦刀が饕餮王へと迫っていく、刀身に満ちるゲッター線の輝きを見て饕餮王の顔に焦りの色が浮かんだ。

 

【ぬあああああッ!!!】

 

『おおおおおッ!!』

 

ゼンガーと饕餮王の雄叫びが重なり、互いに押し切ろうと力を込める。

 

『あわせろエルザムッ!』

 

『了解しました!大佐ッ!!』

 

参式斬艦刀の峰にゲシュペンスト・タイプSとヒュッケバイン・MK-Ⅲ・トロンベの手にしたライフルの銃弾がピンポイントで撃ちこまれ、その速度と威力によって参式斬艦刀が勢いを増し饕餮王へと迫る。

 

「ネオイーグルにエネルギーを回せッ! この好機で決めるッ!!」

 

ネオジャガー、ネオベアーの動力がネオイーグルに回される。出力がブルーゾーンを越えたのを確認し、バンは操縦桿のボタンを押しながらレバーを引いた。

 

「プラズマッ!!」

 

胸の前で手を合わせたネオゲッター1は両腕を左右に広げる。手の平から放出されたエネルギーが放電を繰り返し、巨大な雷の槍を作り出す。

 

「サンダ――ァァァアアアアアアッ!!!」

 

頭上に掲げたそれをバンの雄叫びと共にネオゲッター1は饕餮王へと投げ付ける。

 

【ギ、ギギャアアアアアアッ!!!】

 

雷が発生したかと見間違えんばかりの光が饕餮王を貫き、目と口から体内に侵入した雷を吐き出しながら饕餮王は苦しみの叫び声を上げた。

 

『チェストオオオオオッ!!!!』

 

その好機を見逃さんとゼンガーの雄叫びが海上に木霊し、参式斬艦刀の一閃が饕餮王を肩から腰に掛けて袈裟切りに両断する。

 

【ギギャアアアアーーッ!!!】

 

断末魔の雄叫びを上げ海溝に沈んでいく饕餮王の姿を見て、誰もが安堵の溜め息を吐いた。

 

『我が斬艦刀に、断てぬもの無しッ!』

 

その会心の手応えにゼンガーも勝利を確信し、そう勝ち名乗りを上げた。だがこの場にいないはずの第3者の声が突如木霊した。

 

『安心するにはまだ早いですよ。化け物は頭を断たなければ死にません、ワームスマッシャー、発射ッ!!!』

 

海から飛び出してきた妖機人を虚空に開いた穴から飛び出した光線が貫き爆発させる。

 

【フェフェフェフェ、猿芝居には引っかかってくれんか】

 

海溝から泳いで姿を現した饕餮王の姿に目立った外傷は無く、ゼンガー達の見ている前で装甲が盛り上がるようにして再生する。

 

【良い眠気覚ましになったわ、フェフェフェフェッ!!】

 

大口を開けて笑う饕餮王の姿は完全な物へと戻っており、斬艦刀の一撃も、プラズマサンダーの一撃も全く効果がない。今の優勢すら演出されたものだと判り、ゼンガー達はその顔色を変える。世界を手にする力を与えると言う超機人――その伝承に何の偽りも無かったのだと思い知らされてしまったのだった……。

 

 

 

 

グランゾンの登場に五本鬼は安堵の溜め息を吐いていた。グランゾンが出現すると言う事で饕餮を焚き付けたので、グランゾンが現れてくれなければ困った事になっていたのだ。

 

【フェフェフェフェ、重力の魔神か、ほっほっほ。これは良い、獲物から来てくれたわい】

 

『ほう? 私とグランゾンを誘き寄せたと?』

 

【ハッハハッ! その通りよ。確かにゲッター線、そして稲妻はワシにとって相性の良いものでは無いが……きひゃひゃひゃッ! まだまだ余力は残しておるわいッ!!】

 

異様な音を立てて身体を巨大化させる饕餮を見て五本鬼は通信を繋げろと命令を下す。

 

「饕餮様。この場で真の姿を使われるのは出来れば止めていただきたい」

 

【ひゃひゃひゃひゃ、お断りじゃ。それに……ひゃひゃひゃひゃッ!! 敵はあれだけではないからのう】

 

敵はあれだけではないと言う饕餮の言葉のすぐ後にブリッジに警報が鳴り響いた。

 

「チッ、思ったよりも早い。クロガネに発信機は取り付けたか!」

 

「はい! 今回収作業に入ります」

 

貴重な百鬼獣を失わずに済んだと安堵する事は五本鬼には出来なかった。サイバスターとヴァルシオーネを先頭にこの海域に侵入して来たヒリュウ改――確かに一騎当千の力を持つ饕餮王だが、敵の数が余りにも多い。

 

「百鬼獣を可能な限り出撃させろ。饕餮様に本気を出させるな」

 

「了解です」

 

今の姿なら幾ら暴れてくれても良い、だが本気の姿は駄目だ…それだけは何をしても許してはならない。五本鬼は焦った様子で指示を出したのだが……それは余りにも遅すぎた。いや、遅い、速いではないのだ。それは運命と言っても良かった、ヒリュウ改から出撃した龍虎皇鬼に似た巨人――それを見た瞬間楽しげに笑っていた饕餮王の気配が変った。

 

「饕餮様!? 何をするつもりですか」

 

【黙っておれ、喰われたいのか? 死にたくなければこの場から失せよ】

 

普段と余りに違うその雰囲気、そして口調に五本鬼は恐怖し、そしてその理由を悟った。

 

「超機人ッ!?」

 

アーチボルドが回収にしくじり、連邦に渡ったと言う超機人――それがあの龍虎皇鬼に似た特機なのだと悟った。

 

【その通り、ああ、見つけた見つけたぞ。我が怨敵――その姿を見て黙っておられるものかッ! その首、この場で刈り取ってくれるわ!死にたくなければ目の前から失せろッ!】

 

完全に興奮状態に陥っている、この状態では下手に近づけば自分達も狙われる。

 

「この空域から離脱する。巻き込まれるぞ」

 

引き攣った声で返事を返す事もできない部下、それもそのはず五本鬼達の目の前で海が逆巻き、漆黒の雷鳴が鳴り響き、凄まじい殺意と怒気を放つ饕餮王の姿があった。アースクレイドルでも好き勝手やっていたが、それとは比べ物にならない存在感とプレッシャー。龍虎王を目の前にし、本来の饕餮王の性格が、人格が、表へと現れてしまっていたのだった……。

 

 

 

【やかましいぞ、童共ッ】

 

グランゾンとクロガネ、そしてグルンガスト参式・タイプG、ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・トロンベ、そしてゲシュペンスト・タイプSを見て因縁や歓喜、怒りなどが込められた言葉が交される中。突如告げられた怒りを込めた言葉、そしてそれと同時に凄まじい雷鳴が鳴り響き、海中に佇む異形の化け物から放たれる威圧感とプレッシャーが段違いに高まった事にキョウスケ達は息を呑んだ。

 

「なんだ、あの化け物は百鬼獣なのか……」

 

『いや、そんな感じじゃないと思うけど……凄い嫌な予感がするわよ』

 

敵は饕餮王1体と数体の百鬼獣だけ……数の利は完全にキョウスケ達にあった。だが…まるで肉食獣の檻の中に閉じ込められたような、言いようの無い圧迫感をキョウスケ達は感じていた。

 

『うう、気持ち悪い……』

 

『こいつはやべえ……桁違いの化けもんだッ!』

 

『頭が……痛い』

 

リョウト、タスク、リオの3人が苦しそうに呻き、ブリットとクスハの2人は龍虎王から激しい怒りを感じ取った。

 

『何を、何を怒っているの、龍虎王』

 

『なんだ……どうしたんだッ!』

 

ブリットとクスハの問いかけに龍虎王は答えず、翼を広げ凄まじい咆哮を上げた。

 

『な、なんだよ!? ブリット、クスハ大丈夫なのか!?』

 

『暴走したとでも言うのか!?大丈夫なのか!?』

 

明らかに尋常じゃない様子の龍虎王の様子にカチーナ達がブリットとクスハの身を案じて声を掛ける。

 

【フェフェフェフェ、判るか、ワシが判るか龍虎王ッ!!!】

 

『『――ッ!!!!』』

 

饕餮王と龍虎王の咆哮が重なり、海を割る凄まじい衝撃が巻き起こる。

 

『ぐうっ!?』

 

『こいつは不味いぜ、シュウ! てめえ、何をしやがった!こんな化け物を作り出しやがってッ!』

 

『やれやれ…マサキ、何でもかんでも私のせいにしないでください。これに関しては私は何の関係もありませんよ。私はクロガネとビアン博士を助けに来ただけなのですからね』

 

 

マサキは目の前の化け物がシュウが召喚したデモンゴーレムの新種だと思い声を荒げるが、シュウはそんなマサキの言葉を聞き流し、目の前で変貌しようとしている饕餮王にその視線を向けた。

 

【我が名は饕餮王、四凶の超機人饕餮王なり】

 

「超機人だとッ!?」

 

『ちょいちょい、冗談きつくない? パイロットさん』

 

超機人と名乗った饕餮王。だが余りにも龍虎王と程遠い生物的な姿にヒリュウ改の面子は困惑を隠せなかった。

 

『いや、超機人である事は間違いない。こいつは魂を喰らう』

 

『私達も何度も意識を失いかけている』

 

ゼンガーとエルザムの超機人である事は間違いないと断言され、ブリット達の脳裏を過ぎったのは何故という言葉だった。

 

『待ってください、貴方が超機人というのならば何故鬼に協力しているのですか!』

 

『超機人とは人界の守護者である筈だ!』

 

龍虎王と同じ超機人ならばその性質は人を、地球を守る者の筈。それなのに何故と問いかけられた饕餮王は声を上げて笑った、馬鹿にするように、この場にいる全員を見下すように。

 

【ヒャヒャヒャヒャッ!!!!! 我は四凶ぞ。誰が人間を、地球なんぞを守るかッ!!! ヒャハハハハハッ! ワシは喰らう、生きてる者も死体も、機械も何かも喰らう! 我が飢えを満たし、そして復讐を成し遂げる為に鬼に協力しておるのよッ!!!】

 

底抜けの悪意を叩き付けられたキョウスケ達は、自分達の手足に重りをつけられたような重圧を感じていた。

 

【嬉しや、嬉しや、強念者がひーふーみ……ヒャヒャヒャヒャ、しかも生娘と来た。ああ、美味そうだ…美味そうじゃなぁッ!! ヒャヒャヒャ、その機人から引きずり出し犯しながら喰らってやろうぞ、ヒャヒャヒャヒャヒャッ!!!】

 

クスハ、リオの2人を指差し、舌なめずりしながら叫ぶ饕餮王。その姿に生理的な嫌悪感を抱き、女性陣は顔を歪める。

 

『とんだゲス野郎だ…こんなのが超機人とか、文献も当てにならねえな』

 

『ホントね。りゅーこちゃんの方が可愛げがあるわ』

 

【ヒャヒャヒャヒャ、生娘であろうがなかろうが女は犯して喰うのが1番美味いのよ、ヒャヒャヒャヒャ!! 痛みと快楽でおかしくなり、発狂するその顔を想像するだけで涎が込み上げてくるわッ!】

 

コックピットの呟きも饕餮王には聞こえているのか、身体を揺すり大声で嗤う。ぶよぶよと揺れる肉と、女を何とも思ってない様子の言葉にエクセレン達の額に青筋が浮かんだ。

 

『落ち着け、安い挑発に乗るな』

 

広域通信で告げられた言葉に動き出そうとしていたエクセレン達がその足を止めた。

 

『あら、随分とダンディな声ね、どちらさま?』

 

『カーウァイ、カーウァイ・ラウだ』

 

ゲシュペンスト・タイプSから告げられたパイロットの名前――武蔵から聞かされていたが、元教導隊の隊長であるカーウァイの言葉には不思議な響きがあった。

 

『大佐』

 

『話は後だ、ギリアム。今は目の前の敵に専念しろ。こいつは醜悪な分身を作り出す、下手に攻め込めば精神を喰われるぞ』

 

妖機人を吐き出す能力を何度も見ているカーウァイは気をつけろと警戒を促すと、饕餮王の舌が恐ろしい速度で伸び、百鬼獣の胴体を貫き、そのまま舌を口の中に戻す動きで引き寄せると、大口を開けて百鬼獣を胴体から噛み千切った。鮮血のように飛び散るオイルと痙攣する百鬼獣の手足――目の前の光景に何人かが吐き気を催した。

 

『うっ』

 

『マジか……』

 

装甲を噛み砕く咀嚼音が響く…百鬼獣を喰らう饕餮王。その姿は無防備その物だが誰も動けなかった…肉食獣その物の饕餮王の姿に今攻撃すれば自分達が喰われる光景がこの場にいる全員の脳裏を過ぎった。

 

【ヒャヒャヒャヒャ、腹も満たした。見せてやろうぞ、龍虎王! ワシの真の姿をなァッ!!】

 

饕餮王の咆哮と共に赤黒い念動力が放たれ、広域のバリアのようになり饕餮王の身体を覆い隠す。

 

【邪竜帝降臨ッ! 降魔必滅ッ!!!】

 

饕餮王の頭部がスライドし、胸部へと移動する。そして胴体から捻れた山羊の角を持つ人型の頭部が姿を見せる。背部の装甲が横に移動し、肩と腕部に装着され、手の平が開き、そこから新しい握り拳が現れる。猫背だったその姿は何時の間にか直立に変わり、曲げられていた膝も一直線に伸び更に巨大化したように見える。

 

【ヒャヒャヒャヒャッ! 我が真名は饕餮鬼皇ッ!! 喰らってやる、喰らってやるぞ龍虎王! お前の操者ごと喰らいバラルへの報復の狼煙としてくれるわぁッ!!!】

 

その手に現れた長槍を振るいながら名乗りを上げる饕餮鬼皇。百鬼帝国によって魔神の姿を得た暴虐の超機人がその姿を露にするのだった……。

 

 

128話 暴虐の超機人/闇からの呼び声 その3へ続く

 

 

 




饕餮王は絶対変形する。第二次OGをやっているときにずっとそう思ってた、だけど変形しなかった。なら小説で変形させるしかないな!となり私の趣味で変形して貰いました。デバフを撒きつつ、HP回復と気力吸収でゴリ押ししてくるとか言う化け物ボスの誕生です。

次回は全話戦闘で書いていくので次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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