進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第128話 暴虐の超機人/闇からの呼び声 その3

第128話 暴虐の超機人/闇からの呼び声 その3

 

凄まじい嵐の中に佇むくすんだ赤と金色の鎧を身に纏い、胸部に老人の顔を持つ異形の巨人――饕餮鬼皇は手にした槍を構え全くの自然体なのだが、誰も動く事が出来なかった。圧倒的な威圧感と存在感、そして言葉に出来ない強烈なプレッシャーにキョウスケ達だけではなく、ゼンガー達でさえも飲み込まれていた。ただ1人この場で動く事が出来たのは旧西暦で真ドラゴンという規格外の化け物と戦い、未来ではアインストとインベーダーを戦い続けてきたカーウァイただ1人だった。

 

『フルパワーだ、喰らえ化け物ッ!!!』

 

フルパワーのブラスターキャノンの翡翠色の輝きを帯びた熱線が饕餮鬼皇へと向かう。それは戦艦の主砲……いやゲッタービームと同格の凄まじい破壊力を秘めた一撃だったが、饕餮鬼皇は手にした槍で簡単にそれを弾き飛ばす。

 

【温い、その程度でワシを倒せると思うか? ひゃひゃひゃひゃッ!! 未熟未熟ッ!!!!】

 

高笑いを浮かべる饕餮鬼皇にカーウァイはコックピットで冷や汗を流した。倒せない事は判っていたが手傷すら与えられないと言うのは想定外だった。

 

『馬鹿な……今の一撃ですら効かないと言うのか……』

 

『なんと言う力だ……』

 

『……化け物が』

 

不味い事にブラスターキャノンの威力が凄まじかっただけに、何をしても駄目なのでは? という嫌な雰囲気が広がっていく、そしてそれを感じ取った饕餮鬼皇は更に楽しげな笑い声を上げる。

 

【ヒャヒャヒャヒャッ! さてさてさて、流石にワシ1人ではお前達のような雑魚相手でも群れられると厄介じゃな、ゆえに……お前達の相手をくれてやろうぞ】

 

饕餮鬼皇が槍を海に付き立て、何事か呟くと海水と岩が盛り上がり、それが小型化された饕餮王の姿となる。しかしそれだけに留まらず分身の饕餮王の口から吐き出された球体の姿をした妖機人が上空を埋め尽くさんばかりにその姿を見せる。

 

『『『ヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!!』』』

 

【ヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!!!】

 

分身の饕餮王と饕餮鬼皇の笑い声が重なる。精神を削る不協和音にキョウスケ達は勿論ヒリュウ改とクロガネ改のブリッジクルーでさえもその顔を不快そうに歪めた。

 

【さてと始めようかのう、龍虎王。その首……ワシが貰い受けるッ!!!】

 

饕餮鬼皇の嘲笑が止むと同時に分身は一斉に海面を蹴り凄まじい勢いでキョウスケ達へと迫り、饕餮鬼皇は槍を構えながら悠然としかし凄まじい闘志と殺意を放ちながら分身とは打って変わり緩やかに、しかし全く隙を見せない素振りで龍虎王へと歩みを進める。

 

『ブリット君! クスハちゃんッ! きゃっ!?』

 

『エクセレンッ! 今は目の前に集中しろッ! クスハ、ブリット! 無理をするなよッ!』

 

『『ヒャヒャヒャヒャヒャッ!!!』』

 

『こっちにきやがったッ! ラッセル! 支援だッ!』

 

『待てッ! ゼンガー! そっちは任せるッ!』

 

『任されたッ! リョウト! リオッ! 無理に突っ込むなッ! 俺が行くまで待てッ!!』

 

『ギリアム、合わせろ。こいつらを自由にさせてはならない』

 

『了解です。とにかく今はこの群れを突破しなければッ』

 

饕餮王、そして妖機人の群れにキョウスケ達は分断され状況は最悪と言ってもいい、だが諦めている者は誰もいない。これはある意味前哨戦なのだ、これから地球に降りかかるであろう数多の害悪――その1つにくじける者はこの場には誰一人として存在しなかった。

 

「ユン伍長! 伊豆基地への救援要請は!」

 

「ハガネとシロガネが伊豆基地を出ました! 10分……いや、6分で合流してくれる筈です!」

 

「各員に告げます! ハガネとシロガネが今この戦闘区域に向かっています! 6分間耐えて抜いてくださいッ! くっ! どこに被弾しましたか!」

 

「左舷67装甲板です! 飛行には問題ありませんッ!」

 

「全砲塔を開いてください! 可能な限りの支援を行ってください! 繰り返します、6分間なんとしても耐えて……きゃあっ!」

 

『クロガネを前に出せ! ヒリュウ改を援護する! ヴァルキリオンも全機出撃ッ! なんとしても耐え抜くぞッ!!』

 

永遠とも思える6分間を耐えてみせると皆が気勢を燃やし饕餮鬼皇の軍勢との戦いに身を投じるのだった……。

 

 

 

 

空中を飛び交う無数の顔が繋ぎ合わされたような球体のような姿がサイバスター、ヴァルシオーネを始めとした機体の周辺を飛び交い不気味な笑い声を木霊させる。

 

「鬱陶しいよッ!」

 

その醜悪な姿と耳障りな声に痺れを切らしたリューネが苛立った様子でディバインアームで斬りかかる。妖機人は両断され、その切断面から青黒い血液を撒き散らす。

 

『化け物の割りに大した事ねえじゃないか、見た目だけかよ』

 

サイバスターもディスカッターを振るい、両断された妖機人が墜落する様を見てそう呟いた。

 

【【【【ギャハハハハハハッ!】】】】

 

両断された妖機人の肉片が盛り上がり、2体が4体となり再び耳障りな笑い声を上げ、口から伸びた触手をサイバスターとヴァルシオーネに向かって伸ばす。

 

「『なッ!?』」

 

倒した筈の敵が再び動き出した……その異様な光景にマサキとリューネは一瞬動揺し、その動きを止めた。どんな化け物でも身体が両断されれば死ぬ、そこから再生するなんて事は誰も想像せず、そしてその嫌悪感を抱く再生の仕方に動揺したマサキとリューネ

 

『リューネ嬢! 油断するなッ!!』

 

『やれやれ、マサキ。貴方はいつまでも経っても詰めが甘い』

 

下から伸びて来た鎖で繋がれた両拳が妖機人を殴り飛ばし、虚空に開いた漆黒の穴から放たれた光線が妖機人を消し飛ばした。

 

「バン大佐、ごめんッ!」

 

『ご無事で何より、油断召されるな。化け物は私達の理解を超えています』

 

『シュウ……ちっ』

 

『ククク、助けてもらって礼の1つも言えないですか? マサキ』

 

『ちっ! ありがとうよっ!!!』

 

シュウの挑発するような言葉にマサキは苛立った様子でそう叫び、シュウは白々とした素振りでどういたしましてと笑った。

 

『見て貰ったとおりこいつらを潰したり、切り裂いたりするな! そこから増える事になる!』

 

宙を飛び交う妖機人の数は今も増え続けている。ほんの僅かな肉片から再生し巨大化する妖機人――近づけさせまいと牽制の攻撃が当たっただけでも増えるという悪夢のような光景にカチータ達も声を荒げる。

 

『くそがッ! タスク! とろとろしてんなッ!!!』

 

『シーズサンダアアアアアア――ッ!!!』

 

【【ギャアァァ……】】

 

超高圧電流によって肉片も残さず焼かれた妖機人が断末魔の雄叫びを上げて消滅する。

 

『タスク危ないッ!!!』

 

『やらせないッ!』

 

しかしその影から飛び出してきた饕餮王の飛び蹴りがジガンスクード・ドゥロに向かう。ラッセルのゲシュペンスト・MK-Ⅱや、AMガンナーの射撃が撃ち込まれるが饕餮王はそれを物ともせずジガンスクード・ドゥロへと向かう。

 

『お前達の好きにはさせんッ!』

 

ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・トロンベの放ったゲッター線ビームライフルが饕餮王の背中を穿ち、その勢いと軌道を僅かにそらしたお蔭で致命傷は間逃れたタスクだが、ジガンスクード・ドゥロの強固なシーズアンカーを簡単に抉り取り、それを見せ付けるように喰らう饕餮王に体勢を立て直したジガンスクード・ドゥロがシーズアンカーを振るう。

 

『ぐっ!? くそッ!!! ちょこまか動きやがってッ!』

 

【ヒャヒャヒャヒャッ!!】

 

嘲笑うようにシーズアンカーをかわし、俊敏な動きで妖機人を踏み台にして消える饕餮王にタスクが苛立った叫び声を上げる。

 

『うあッ!? くっくうッ!!』

 

海中から飛び出してきた饕餮王に体当たりを喰らい、倒れたヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプMの上に馬乗りになり、その牙を鳴らす饕餮王と食われまいとその牙を受け止めるヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプMだが、出力の差が圧倒的に大きく、その牙が少しずつコックピットへと迫る。

 

『おい、化け物。腹が減っているならこいつでも喰っていろ』

 

【ギギャァ!?】

 

高速回転するゲシュペンスト・シグの拳が饕餮王の顔面を捉え、ひっくり返った饕餮王の顔面にそのまま拳を何度も叩きつける。肉片が飛び散り、悲鳴が木霊する。余りにも凄惨な光景に思わず誰もが息を呑んだが、その程度でラドラは動きを止める事はなかった。

 

『中々死なないな。ならば、ゼンガーッ!!!』

 

自分で倒しきれないと悟ったのか饕餮王をグルンガスト参式・タイプGに向かって蹴るゲシュペンスト・シグ。

 

『ふんッ!!!』

 

【ギャアアッ!?】

 

ゼンガーもゼンガーで躊躇わずに蹴り飛ばされて来た饕餮王に向かって参式斬艦刀を振るい、空中で両断された饕餮王は苦悶の声を上げて爆発炎上する。

 

『うわ……』

 

『何がうわだ、リョウト。死にたいのか貴様、化け物相手に気を緩めるな』

 

『す、すみません』

 

口調は厳しいがリョウトを気遣う言葉を口にするラドラにリョウトは謝罪の言葉を口にし、己の機体を立ち上がらせる。だが状況は決していいものではない、並のダメージでは増殖し巨大化する妖機人。そして攻撃力と瞬発力に長けた饕餮王に完全にヒリュウ改の面子は翻弄されていた。

 

『落ち着いて対処しろ。増殖し、再生するといっても限度がある』

 

『冷静さを失えば死ぬぞ、近くに居る味方と協力しろ、相手の変則的な動きに撹乱されるな』

 

強さと奇怪な動きで翻弄してくる妖機人と饕餮王を相手に動揺すれば死ぬぞとギリアムとカーウァイの警告と指示が飛び、劣勢ではあるが徐々にカチーナ達は冷静さを取り戻し始めているのだった……。

 

 

 

 

鋭い金属音が響き、アルトアイゼン・ギーガと饕餮王が同時に弾かれる。強固な装甲を持つアルトアイゼン・ギーガの装甲には細かい亀裂が幾つも刻まれていたが、駆動系や関節部に大きなダメージは受けていなかった。妖機人と饕餮王の連携は厄介なものだったが、裏を返せば連携させなければ良い。

 

「そのままで頼むぞ、エクセレン、ラミア」

 

妖機人の群れはアンジュルグ、ヴァイスリッター改に任せ、キョウスケは単独での饕餮王の複製の撃破に挑んでいたのだ。

 

『そこッ! ラミアちゃん! 続けてよろしくッ!】

 

『了解です、エクセ姉様。行け、ファントムアローッ!!』

 

【ギッ!?】

 

オクスタンランチャーBモードの狙撃で穴を開けられ、そこに飛び込んだファントムアローのエネルギーで内部から焼かれた妖機人は苦悶の声をあげ、反撃にと怨嗟の叫びを上げる。

 

『ぐっ!?』

 

『ううっ。これ気持ち悪いのよね、黙ってて頂戴ッ!!』

 

肉体的な被害や機体にダメージはない、だが精神を削る不気味な音にラミアは顔を歪め、エクセレンも苦しそうに呻きながらも5連ビームキャノンの銃口を妖機人の口に向け、引き金を引いた。本来の正確無比な狙撃とは比べ物にならない劣悪なものだが、5本の熱線の内2本が妖機人の口に飛び込んだ。

 

【ッ!?!?】

 

痛みと熱に妖機人の叫び声が止まった瞬間にアルトアイゼン・ギーガが饕餮王との間合いを詰める。

 

【シャアッ!!】

 

「逃がさんッ!!」

 

猿のように俊敏で、そして虎のように凶暴な饕餮王は攻撃力と機動力が極めて高く、そして防御力も高い。そしてそれでいて動物のような動きをすると来ればそう簡単に戦える相手ではない。

 

(クスハとブリットと比べれば弱い相手だ)

 

だが饕餮王は饕餮鬼皇が作り出した粗悪な分身――こんな相手に手間取っている場合ではないとキョウスケは饕餮王の移動先を予測し、そこに先回りするようにアルトアイゼン・ギーガを走らせた。

 

【ギッ!?】

 

「言った筈だ……逃がさんとなッ!!! バンカー、撃ちぬけッ!!!」

 

強烈な炸裂音と共にリボルビングバンカーの切っ先が饕餮王を貫き、上半身と下半身が両断された饕餮王は落水する前に岩くれとなる。

 

(……こんな相手に苦戦などしていられるか)

 

海水と岩で作られた粗悪等とは言えない、それこそガラクタの饕餮王に苦しめられている場合ではないとキョウスケは心の中で呟いた。インベーダーにアインスト、そして百鬼帝国にインスペクター……地球圏に迫る脅威は数多存在するのだ。その中で術で作られたとは言えガラクタで作られている饕餮王に苦戦するなど、キョウスケが自分自身を許せなかった。

 

「このままブリットとクスハの支援に入るぞ」

 

『了解でごんす』

 

『急ぎましょう、ブリット君達の方が大変みたいだしね』

 

龍虎王と饕餮鬼皇の戦いの音は激しく、妖機人と複製饕餮王は確かに厄介だが、徐々にカチーナ達も押し返してきている。

 

『へっ、段々化け物との戦い方になれて来たぜッ!!』

 

【ギッ!?】

 

『はっ、化け物の癖に脳震盪なんてしてるんじゃねえッ!!! ステークセット、ぶちぬけえッ!!』

 

アッパーで顎を打ち抜かれた饕餮王が棒立ちになり、踏み込んだライトニングステークのストレートで饕餮王はもんどりうって倒れ、痙攣しながらその身体を岩くれに変えた。

 

『再生すると言うのならば跡形も無く消し飛ばせばいい、簡単な理屈でしょう? グラビトロンカノン発射ッ!!!』

 

【【【!?!?】】】

 

グランゾンの放った重力波で妖機人は纏めて押し潰される。だが倒すには一手足りていない……いや、わざとシュウはトドメを刺さなかった。

 

『へ、偉そうな事を言って倒せてねえじゃないか! リューネッ!』

 

『OK! 行くよヴァルシオーネッ!!』

 

『さて、そろそろ、私もお役ごめんですね、ではビアン博士。またお会いしましょう』

 

翡翠と桃色の閃光が押し潰された妖機人を焼き払った。しかしそれもシュウの計算の内である事をマサキは知らず、サイフラッシュとサイコブラスターの光に紛れグランゾンはワームホールの中へ潜り、その場から消え去っていた。

 

『シュウ、あん? あの野郎! どこ行きやがったッ!?』

 

『今はそんなことをしてる場合じゃないよ! 行き先だったら親父が知ってるかもしれないよッ!』

 

グランゾンの姿がないことに気付きマサキが激昂するが、リューネがそれを留め目の前の戦いに集中するように声を掛ける。グラビトロンカノン、サイコブラスター、サイフラッシュの波状攻撃でその数を減らしているが、まだ妖機人は健在なのだ。他ごとに気をかけている場合ではない。

 

『斬艦刀雷光斬りぃいいッ! ぬおおおおおおッ!!!』

 

ゲッター線の光を伴った斬艦刀を振るい、次々と妖機人を、饕餮王を切り裂いていくグルンガスト参式・タイプG。だが切り裂かれ絶命した妖機人の怨嗟の声は海域を埋め尽くさんとしていた。

 

『……くっ! 段々きつくなって来たわね』

 

『確かにね……痛みはないのに……凄く苦しい……』

 

『けどよ、止まってる場合じゃねだろうがッ!! シーズアンカアアアアアーッ!!』

 

確かに妖機人が死んで放出する怨嗟の声は重く、そして苦しく圧し掛かっている。だがそれを不屈の闘志で跳ね返し、皆が諦める事無く戦いを続けている。

 

『気分が優れないものは下がれ、少し気を落ち着けてから合流しろ』

 

『……大佐は何故そんなに平気なのですか?』

 

『慣れだ、化け物相手とは戦いなれているッ!!』

 

皆が精神が衰弱し始める中、カーウァイだけは妖機人を参式斬艦刀で切り裂き、グランスラッシュリッパーを投げ付け、饕餮王に蹴りを叩き込み、転倒した所を踏みつけG・ビームライフルを動かなくなるまで撃ち込み続ける。

 

『思い出を美化しすぎたかもしれん』

 

『何を言っているギリアム、カーウァイ大佐は昔からこういう人だ』

 

『お前ら、私をなんだと思っている』

 

確かにカーウァイは指揮官として、そして指導者としても優秀だが……デストロイヤーかつバーサーカーな所がある。だからこそ武蔵とイングラムと行動を共にする事が出来ていたりするのだが……精神を蝕まれるこの終わりのない戦いの中で率先して戦い続けてくれるカーウァイの存在はとても頼もしいものであり、色々と思う事はあったが誰もそれを指摘する事はなかった。

 

「まずはあの化け物を止める、全てはそこからだ!」

 

饕餮鬼皇がいる限り妖機人も饕餮王もまた幾らでも現れる。この戦いを終わらせるには饕餮鬼皇を止めるしかない、だが相手は並の強さではない。包囲網を抜ける事が出来た者から龍虎王と饕餮鬼皇の戦いの助っ人に加わっていくのだった……。

 

 

 

龍虎王とほぼ同じ大きさの饕餮鬼皇は見かけ通りの高い攻撃力と防御力を併せ持ち、そしてその上残像を残しながら移動する超スピードを有していた。

 

【ヒャヒャヒャッ! 鈍い鈍い! どうしたどうした! 龍虎王ッ!!!】

 

「くうっ!?」

 

『ぐうっ! こいつ……かなり強いぞッ!』

 

龍王破山剣は饕餮鬼皇の残像を切り裂き、その隙に背後に回った饕餮鬼皇の回し蹴りが龍虎王の背中を捉え、その巨体を蹴り飛ばす。

 

【そらそら、どうしたどうしたッ!!】

 

「くっ、うあッ!?」

 

『速い上に重いッ!』

 

一撃一撃が重く、龍虎王は攻撃を防ぐ事が出来ず右へ左へと弾かれ饕餮鬼皇に良いように弄ばれる。

 

「同じ超機人なのに……ッ」

 

『こんなにも力に差があるのかッ』

 

同じ超機人ならば饕餮鬼皇と戦う事が出来ると思っていたクスハとブリットは饕餮鬼皇の強さに驚愕していたが、饕餮鬼皇の次の言葉に更なる衝撃を受ける事になった……。

 

【どうしたどうした! 龍虎王よ! 己の操者を傷つけるのが怖いか、ヒャヒャヒャヒャッ! その程度の念しか吸収してなければワシには勝てんぞぉッ!!!】

 

饕餮鬼皇の手にしている槍の切っ先が分裂したように分かれ、龍虎王の装甲を穿ち龍虎王とクスハとブリットの悲鳴が木霊し、吹き飛ばされた龍虎王が背中から海の中に倒れこみ、緩慢な動きで立ち上がる。

 

「龍虎王、饕餮鬼皇の言う事は本当なの?」

 

【……グルルル】

 

饕餮鬼皇の言った自分達を気遣っていると言う言葉が真実なのか? とクスハが問いかけると龍虎王は苦しそうな呻き声を上げた。

 

「龍虎王……私達の事は気にしなくていいから……」

 

『ああ、大丈夫だ。俺もクスハも平気だ、信じてくれ』

 

龍虎王が今自分達から吸い上げている念では足りないのならば、もっと力を吸ってくれとクスハとブリットが言うと龍虎王は躊躇うような素振りを見せる。

 

「大丈夫、私もブリット君も耐えて見せる」

 

『ああ、信じてくれ、龍虎王』

 

ブリットとクスハの信じてくれという言葉に龍虎王は柔らかい鳴き声をあげ、ブリットとクスハから足りない念動力を吸い上げた。

 

「くっ!」

 

『くくっ……中々きついなッ』

 

操縦桿を握る手が離れなくなり、手の平から生命力を吸い上げられている感覚を感じブリットとクスハは顔を歪めるが、饕餮鬼皇を睨みつける視線をそらす事はない。

 

【ヒャヒャヒャ。これでやっと面白くなって来たわ】

 

饕餮鬼皇が槍の切っ先を下に向け、姿勢を低くし構える。龍虎王は右手で龍王破山剣を手にし左手は剣指を作る。

 

【シャアッ!!】

 

鋭い雄叫びと共に饕餮鬼皇の姿が消え一直線に龍虎王へと襲いかかる。今までならば対応できなかった攻撃だが、龍虎王は剣を振り上げ饕餮鬼皇の槍と鍔迫り合いを繰り広げる。

 

【ふはははははッ!! 良いぞ良いぞッ!!】

 

龍虎王の顔に蹴りを放つ饕餮鬼皇だが、龍虎王はそれを受け止め体を回転させると饕餮鬼皇をハンマーの様に海に叩き付け、跳ね上がったところに蹴りを叩き込み饕餮鬼皇を吹き飛ばした。

 

「判る、龍虎王がどう戦いたいのかが判る」

 

『……まだ俺達はグルンガストに乗っている感じだったのか……』

 

龍虎王はグルンガストよりも遥かに柔軟で、そして戦闘の幅も広い。だがグルンガスト参式のコックピットを流用している事もあり、操縦もグルンガスト参式の延長に考えていた。それが龍虎王の枷になっているとも知らずに……しかし念動力を取り込む為に主導権を手にした龍虎王から本当の戦い方を告げられたブリットとクスハは龍虎王の本当の戦い方を学び始めていた。

 

【ぐっはあッ!! カカカカカッ! クククク、ハーハハハハハハハッ!!!】

 

龍虎王が剣指を振るい符術を発動させる。しかし饕餮鬼皇はそれを楽しそうに笑いながら避け、自らが海中に突き刺した槍の持ち手を両足で掴み龍虎王を見下ろした。

 

【まだまだ未熟、そして本気では無いが随分とましになったの。これでこそじゃ、これでこそ、本気で戦える】

 

饕餮鬼皇が纏っていた馬鹿にするような空気が消え、突き刺すような殺気と憎悪の念が龍虎王に向かって叩きつけられる。

 

「貴方は何がそんなに憎いのですか」

 

【んん? 小娘か、カカカカカ。全部じゃよ、憎い、憎くて憎くて、苦しくて、この恨みと苦しみから逃れるには喰うしかないのよ。ああ、憎きかな、龍帝よ。バラルよ、女神よ、ワシは憎くいぞッ!! ああ、恨む、恨むぞ進化の光ぃッ!!】

 

怨嗟の声を上げ続ける饕餮鬼皇――その言葉の中に聞き捨てならない言葉が幾つも合った。

 

(龍帝、バラル……進化の光……)

 

龍虎王が目覚めた時に告げた言葉――それが何を意味するかはクスハには判らなかったが、それでも何か意味のある言葉のように思えた。

 

【ゆえに喰う、そして殺す。龍虎王、ワシがお前を憎い事も変わらんぞぉッ!! 『周りが見えないとは二流以下だな』ぐっはぁッ!?】

 

背後から迫ってきたアルトアイゼン・ギーガのエアリアルクレイモアのチタン弾の雨が饕餮鬼皇を背後から貫き、その巨体を海中に叩き落す。

 

「キョウスケ中尉!」

 

『遅くなってすまん。すぐにエクセレン達も……な、なんだッ!?』

 

強烈な地響き――いや、地響きではない、空間自体が揺れ始めた。何かが起きようとしている――饕餮鬼皇の仕業かと誰もが思ったが、だがそれは饕餮鬼皇本人によって否定された。

 

【やれやれ、ワシの戦場に出てくるか……ん? 鯀鬼皇よ】

 

その名が告げられたと同時に空が割れ、そこから這い出るように巨大な手が現れた。そしてそれに続くように頭、胴と次々と身体のパーツが姿を見せ、空間の裂け目から現れたのは胡坐をかいたような姿をした老人のような巨人だった。

 

【然り、我は饕餮、お前を迎えに来た。この場は終わりだ】

 

【迎え? ハハハハハハハハッ!! ふざけるなよッ! ワシの戦いはこれからだ、これからなのだッ!! 同じ超機人だとしてもワシに指図を出さないで貰おうかッ!!!】

 

同じ超機人――その名にキョウスケ達の間に緊張が走った。饕餮鬼皇だけでも苦戦しているのに更に超機人が増えた事は恐ろしい出来事なのだが……

 

「仲が悪い?」

 

『味方同士じゃないのか?』

 

どう見ても嫌悪感や敵対関係にあるようにしか見えず、クスハとブリットが困惑したように呟くと鯀鬼皇がその視線を龍虎王へ向け、片手で印を結び、空中から伸びた鎖で饕餮鬼皇を縛り付けた。

 

【貴様機様貴様ぁッ!!】

 

【やかましいぞ、下賎で下劣な者よ。やれやれ、蘇らせてくれた者の頼み出なければお前の顔など見たくもないわ】

 

吐き捨てるように告げる鯀鬼皇の言葉に、饕餮鬼皇は鎖はガチャガチャをならし、歯を剥きだしにし、血走った目で鯀鬼皇に唾を飛ばしながら怒鳴り声を上げる。

 

【下賎だとッ!【やかましいといった筈だ、黙っていろ饕餮】ッ!?!?】

 

苦悶の雄叫びを上げる饕餮鬼皇を一瞥し、鯀鬼皇は再びその視線を龍虎王へ向けた。

 

【さてとでは改めようか……久しいな龍虎王よ。ああ、構わぬ返事が欲しい訳ではない、我は超機人鯀鬼皇(こんきおう)と申す。我はこの下賎な者とは違う、皇たる者はそれに相応しい立ち振る舞いをせねばならぬ】

 

低いトーンで淡々と語る鯀鬼皇。口調は丁寧だが、その視線にはこの場にいる全員を見下すような色が込められていた。

 

【そして人間共もそうだ、人間は我ら神を敬い、畏れ、そして尊敬せねばならぬ。ゆえに問おう、汝ら我を崇拝するか?】

 

神を畏れ敬い、崇拝せよ鯀鬼皇は告げる。確かにその言葉には力があった、意志の弱い者ならば跪き、その言葉に無条件で頷いてしまうような強い力があった。だがその言葉に屈するものはこの場には誰一人として存在しなかった。

 

『悪いが、貴様のような醜悪な神を崇拝する趣味はない』

 

『どう見ても化けもんじゃねえか! 何が神だ!』

 

キョウスケとカチーナの声に続くように鯀鬼皇を蔑む声が上がる。

 

【承知。ならば汝らは背信者である。背信者は制裁せねばならぬ、ゆえに我が腹の中にて未来永劫の責め苦が受けるが良い】

 

大口を開け、空中を飛びかう妖機人を舌で絡めとり、林檎を食うように貪る鯀鬼皇の姿は醜悪な化け物にしか見えず、神とは程遠い――それこそインベーダーやアインストと同じ化け物にしか見えなかった。

 

【……客人が来る。饕餮、共闘しろとは言わぬが、分を弁えよ】

 

【くたばれ、傲慢で愚かな自称神がッ!】

 

何かを感じ取った鯀鬼皇が饕餮鬼皇の拘束を解除し、それとほぼ同じタイミングで翡翠色の流星が周囲を染め上げ、僅かに生き残っていた妖機人を纏めて薙ぎ払った。

 

『よっしゃあ間に合ったッ! 助けに来ましたよッ!!』

 

ゲッターD2が先陣を切って現れ、それに続くようにシロガネ、ハガネが姿を見せる。圧倒的な不利な中で6分間耐え抜き、ヒリュウ改とクロガネはハガネとシロガネが救援に現れるまで無事に耐え抜いたのだ。

 

『各機出撃ッ!』

 

『ヒリュウ改とクロガネの救援を行なえッ!』

 

ダイテツとリーの指示が飛び、開け放たれた格納庫からR-1達がその姿を見せる。数の利は圧倒的に鯀鬼皇と饕餮鬼皇が不利だが、2機の超機人は余裕と言える態度を崩す事無く、ハガネとシロガネにその視線を向けた。

 

【箱舟に龍神、ふむ。なるほど、これは良い、我が新しい身体になれる良い練習となりそうだ】

 

【進化の使徒も来たか、ヒャヒャヒャヒャッ!! まだまだ楽しくなりそうじゃなあッ!!!】

 

冷静に分析を行なう鯀鬼皇と、狂ったように笑う饕餮鬼皇――日本近海での戦いはますます激しさを増していく事となるのだった……。

 

 

 

129話 暴虐の超機人/闇からの呼び声 その4へ続く

 

 




百鬼帝国に改造され王から皇になった超機人の特性は人型の姿を持つ、可変能力の追加、そして同じ戦場に1機しか出現できないと言う特性の無効。知性があるので共食いはないですが、性格的に反りが合わないので同じ戦場に存在出来ますが、共闘はしない。強大な力を持つ機体が複数同時に現れるって感じですね、自分の分身や妖機人を作り出す能力があるので1体で軍隊を形成出来ると言うのもあります。欠点は超機人形態になるのにそれ相応の魂魄を喰らい、念動力を蓄える必要があるので連続出撃は出来ないって感じですね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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