129話 暴虐の超機人/闇からの呼び声 その4
ヒリュウ改が百鬼帝国に襲われていると聞き、緊急出撃したリュウセイ達は立ち塞がるように並び立つ異形の巨人を見て息を呑んだ。その異形の悍ましい姿に、邪悪その物の気配に本能的な恐怖を抱いたのだ。
「な、なんだ……あいつら……2体しかいないのに……うぐっ、頭が……ッ」
鯀鬼皇と饕餮鬼皇を視認したリュウセイはその優れた念動力で、2機の超機人が内包している、いや貪り食われた贄の魂を感じ取りその苦しみ、痛みを感じ取り激しい頭痛にその顔を歪めた。
『リュウセイ!? リュウセイ大丈夫か!?』
『リュウセイ、大丈夫ッ!?』
明らかに反応のおかしいR-1とリュウセイを見て、フェアリオン・タイプSとR-2パワードがR-1に駆け寄る。
『百鬼獣ではなさそうね……それよりも遥かに強いわ』
『本腰を入れてきたって事かね、しかし相当強い相手なのは間違いねえな。ヒリュウ改とクロガネの戦力を相手にしてほぼノーダメージかよ……とんでもねえ化け物だな』
グルンガストのコックピットでイルムが鯀鬼皇と饕餮鬼皇の状態を見て、その強さを感じ取りその顔を歪め。ゲシュペンスト・MK-Ⅱ・タイプRDのコックピットで戦況を確認したヴィレッタはR-SWORDの姿がないのを確認し、イングラムはいないみたいねと小さく呟いた。
『ゲシュペンストタイプS……ッ!? 隊長、カーウァイ隊長ですかッ!?』
『その声はカイか、元気そうで何より。だが今は話をしている場合ではない、話は戦いが終わった後だ』
『りょ、了解ッ!』
カイがやっと会うことの出来た恩師の声に明るい声で返事を返し、鯀鬼皇と饕餮鬼皇を睨みつけた。
【ふむ、応援が来たか、なれば……我は超機人鯀鬼皇なり、神であり、王たる超機人である。汝らは我を崇拝するか? さすれば我が信者、我が民と認めようぞ】
キョウスケ達と同じ様に声を掛ける鯀鬼皇だが、リュウセイ達から見ても鯀鬼皇は化け物にしか見えなかった。
『何が王に神だ! てめえなんか化け物じゃねえかッ!』
『ええ、とても神と名乗れるようには見えませんわね』
生物と機械の意匠を持つ異形の巨人である鯀鬼皇が神であり、王なんて悪い冗談だとアラドとレオナが叫んだ。すると海を揺らすような大声の笑い声が木霊した。
【ヒャーハハハハハハハハハッ!! クヒ、ヒャヒャヒャヒャハッ!!! 神だ、王だの下らん下らん、そんなものを誇りにする貴様がアホなのだ】
【下賎な貴様に言われたくはないな】
【ヒャヒャヒャヒャ! 信者無き神など神にあらず! 民無き王など王にあらずッ!! そんなことも判らんのか! ヒャヒャヒャヒャ! ワシは確かに下賎かもしれんが、貴様よりは数段マシじゃな! ヒャヒャヒャヒャヒャッ!! ククック、さてとワシも名乗るかのう……我は超機人饕餮鬼皇になり、ヒャヒャヒャ、また女がひーふーみー。ヒャヒャヒャヒャッ!! ああ、その機人を叩き壊して連れ帰り、犯して喰らいたいのう!! 快楽と痛みで狂う女を見るのがワシの何よりの楽しみじゃからのうッ! ヒャハハハハハッ!!!】
下品な事を大声で叫ぶ饕餮鬼皇にレオナ達が顔を歪める。余りにも下品、そして下劣な嗜好を持つ饕餮鬼皇に嫌悪感を抱くのは当然の事だった。
『超機人って神様って聞いてたけど、どう見てもそうは見えねえな』
【進化の使徒よ、お前には言われたくはないな】
【神の僕であるからのうッ! ヒャヒャヒャ、しかしこの数は明らかに不利じゃなあ、おい、鯀鬼皇よ。出し惜しみするなよ】
【貴様に言われるまでもない、きやれ、我が僕達よ】
鯀鬼皇の背後の空間が裂け異形の巨人達が地響きを立てて出現し、それに続くように饕餮鬼皇が再び海水と岩から己の分身を作り上げる……超機人・妖機人の軍勢がリュウセイ達を取り囲むように現れ、妖機人達の雄叫びが戦闘開始の合図となり、一斉に己の獲物を手に襲い掛かってくるのだった……。
叫び声や唸り声を上げてR-1やグルンガストに向かっていく妖機人を武蔵は顔をゆがめながら見送った。正直に言えば、武蔵はその動物的な直感で妖機人や、饕餮王のコピーがアインストやインベーダーに匹敵する脅威だと悟っていた。だがそれ以上に目の前に浮かぶ胡坐をかいた老人のような姿をした超機人――鯀鬼皇、そして龍虎王が抑え込んでいる饕餮鬼皇の方が危険だと悟ったのだ。
『武蔵、援護しようか?』
「いや、オイラは良いっすよ。エクセレンさん、ブリット達の方に集中してください」
『……気をつけてね、それと……ごめん』
援護出来ない事を謝罪し反転するヴァイスリッター改を鯀鬼皇から背中で隠すようにゲッターD2を移動させる武蔵。
【案ずる事はない、我は雑魚に興味はない】
だが鯀鬼皇は興味もないと言わんばかりに鼻を鳴らし、懐から扇子を取り出してそれを剣のようにしてゲッターD2へと向けた。するとその背後に無数の魔法陣が浮かび上がり、そこから無数の妖機人が弾丸のような勢いで射出される。
【奇怪な、お前は龍帝でもなければ皇帝でもない。しかしてそれに匹敵する可能性を秘めているように我には見える】
「龍帝とか皇帝って言われてもオイラには判らんぜッ!」
悠然と話ながらも猛攻撃を繰り出してくる鯀鬼皇の攻撃をダブルトマホークで引き裂きながら武蔵は過去・平行世界と戦い武蔵はかなりの数のゲッターロボを知っているが、龍帝、皇帝と呼ばれるようなゲッターロボは知らない、故に武蔵そう返事をしながらダブルトマホークを鯀鬼皇に投げ付ける。
【それも仕方なかろう、進化の道半ばなのだからな……しかしてだ。例えお前が龍帝と皇帝と関係がなかろうと、我にとっては憎むべきゲッターロボ。その首貰い受けるとしよう】
ダブルトマホークブーメランをその手にした扇子で弾き、鯀鬼皇が凄まじい闘志と殺気を放ちながら、手にした扇子をゲッターD2に向け、音を立てて扇子が開かれると同時にゲッターD2を取り囲むように無数の魔法陣が浮かび上がる。
【我が配下はそう強くは無いが、戦いとは数だ。この姿になり知恵を手にして我はそう思うようになった】
すべての魔法陣から同時に妖機人が飛び出し、唸り声を上げながらゲッターD2へと殺到する。
「そうかい、ならお前の言葉をそのまま返してやるよ。雑魚はどれだけ集まっても雑魚だッ!! バトルウィングッ!!!」
ゲッターD2の翼が高速で動き回り、全方位から迫る妖機人を切り裂き絶命させる。
「うおらああッ!!!」
【ぬううんッ!!】
ゲッター線の光に身を包み姿を消すと同時に鯀鬼皇の上を取ったゲッターD2がダブルトマホークをその頭に振り下ろし、鯀鬼皇は迎え撃つ為に扇子から光の刃を作り出しダブルトマホークと光の刃がぶつかり合い、凄まじい衝撃を周囲に撒き散らす。
「ゲッタァァ――ビィィムッ!!!」
【ぬんッ!!】
ゲッターD2の頭部から放たれたゲッタービームを剣指を振るい、作り出したバリアで防ぐ鯀鬼皇はそのまま掌を向けエネルギー弾を打ち出す。
「舐めんなッ!!!」
命中する寸前で腕を振るいエネルギー弾を明後日の方向に殴り飛ばすゲッターD2を見て、鯀鬼皇は感心したように頷いた。
【なるほど強いな。貴様は……名を聞いておこうか?】
「あん? んだよ、急に」
突如名を聞こうと告げた鯀鬼皇に武蔵は困惑した素振りを見せる。しかしその間もゲッターD2と鯀鬼皇の攻防は続いており、光の刃と虚空から召喚する妖機人による点と面の波状攻撃の嵐を武蔵はゲッターD2を操りバトルウィング、威力を絞った頭部ゲッタービームの連射、そして手にしているダブルトマホークで迎撃を繰り返す。
【進化の使徒と呼ばれ続けるのも面白くなかろう?】
「武蔵だ。巴武蔵」
【そうか。武蔵というのか、その名を覚えておこう。長い付き合いになるだろうしな】
空間を揺らすような笑い声を上げ鯀鬼皇はその目に喜色の色を浮かべ、ゲッターD2を見つめる。
「長い付き合い? てめえらみたいな化け物と何度も顔を見合わせるなんてごめんだぜ!」
【フッフッフ。そう言ってくれるなよッ!】
ゲッターD2と切り結びながら鯀鬼皇は楽しそうな声を上げる。いや事実楽しんでいるのだろう……そうでなければあそこまでの笑い声を上げることはない筈だからだ。
「てめえは何がしたいんだ?」
【ん? まずは復讐、次に再び神として、王として君臨する事よ。その為には鬼の国は邪魔だな。全てが終われば鬼も殺すとしよう、鬼は我が民に相応しくないからなッ!!】
百鬼帝国も潰すと堂々と叫ぶ鯀鬼皇に武蔵だけではなく、この場にいる全員が驚きを隠せなかった。
「百鬼帝国の味方じゃないのかよッ!!」
急降下と共に放たれたヤクザキックが鯀鬼皇の胸を捕えるが、鯀鬼皇はその手を獣の腕へ変えゲッターD2の足を掴んで頭上で振り回す。
「う、うおおおッ!?」
【味方などではない、ただあやつらに蘇らせて貰ったから恩義として協力しているに過ぎんッ!!!】
ゲッターD2を海面に向かって投げ付けると同時に鯀鬼皇の手の中に弓が現れ、光り輝く矢を番える。
【故に味方等ではない、判ったか? 武蔵】
空中に向かって放たれた矢が分裂し、矢の雨となり海に倒れているゲッターD2に向かって降り注ぐ。
「よーっく判ったぜ! だけどてめえがオイラの敵って事は変りはねえ! オープンゲットッ!!」
ゲットマシンに分裂し矢の雨を回避したゲッターD2は再び鯀鬼皇の上空を取る。
「チェンジポセイドンッ!! うおらああッ!!!」
【ぐがあッ!?】
落下しながらのスレッジハンマーが鯀鬼皇に向かって振り下ろされ、凄まじい勢いで鯀鬼皇を海面に向かって叩きつけ、その後を追うように急降下したポセイドン2を迎え撃ったのは獣の鋭い爪が生えた巨大な拳だった。
「ぐうっ! はッ! まだ隠し球は残していたってかッ!」
【神の姿に1つにあらず、神の器たるゲッターロボもまた然り】
「何を言ってるかわからねえよッ!!!」
【ならば知れ! 神の神威をなッ!!!】
ゲッターポセイドン2と獣人となった鯀鬼皇の拳がぶつかり合い凄まじい轟音を響かせる。ゲッターD2と鯀鬼皇が人の姿をしている時は超高速戦闘と範囲攻撃により支援は行えず、そしてポセイドン2と獣人形態の鯀鬼皇相手では1発1発が戦艦の主砲クラスの威力を秘めた打撃の応酬であり、そこに割り込む事は不可能であり、ポセイドン2と鯀鬼皇の戦いはその戦闘手段が白兵戦へと変わった事でその激しさをより増していくのだった……。
妖機人の群れと饕餮王の軍勢の勢いは激しく、一瞬でも油断すればその瞬間に押し潰されるほどに苛烈な攻撃であった。特に瞬発力と攻撃力を兼ね備えている饕餮王は厄介極まりない存在であったが、ここでダイテツ達にとってもそして超機人達にとっても計算外な事があった。
「そこだぁッ! T-LINKナッコォッ!!!」
【グギャアッ……】
R-1の光り輝く右拳が饕餮王の右胸を打ち抜き、饕餮王の姿は一瞬でその色を失い土くれとなり海水の中へと沈んでいく。
「リョウトとリオは本当にわからねえのか!? 俺1人じゃ流石に厳しいぜッ!?」
リュウセイは念動力で饕餮王の分身の核を感じ取り、そこを一撃で破壊する事で耐久力に優れている饕餮王を一瞬で無力化している。しかし饕餮王の数は多く、更には念動力者であるリュウセイを餌として認識しているのか妖機人と共に波状攻撃で攻め立ててくる饕餮王を前に声を上げる。
『わ、判る訳ないよ!? 大体なんで判るのさッ!?』
『悪意なんて判らないわよッ!』
『お前どっか変になってないか?』
『同感ですわね』
念動力を持つリョウト、リオ、タスク、レオナの4人にそんなことが出来るかと言われリュウセイはうぐうっと呻いた。
「あーくそッ! やるだけやってやらあッ!!!」
【【【ヒャヒャヒャヒャッ!!!】】】
3体の饕餮王の狂笑に顔を歪めながらリュウセイは土くれの身体を操っている核を探すために目を凝らす。
『リュウセイ、センサーを共有させろ。お前は場所を特定してくれるだけで良い』
「ライ! すまねえっ!」
R-1とR-2はSRXに合体する事もあり、互いのセンサーなどを共有する機能もある。ライはリュウセイにコアを特定させ、R-2パワードの射撃武器でピンポイント狙撃する事を提案し、リュウセイはその提案を聞き入れR-1とR-2パワードのセンサーを共有させる。
(早い……だがッ!)
共有したセンサーから与えられる饕餮王の核は高速で動き回っており、あれをピンポイントで感知し、それを一撃で粉砕する事が出来ているリュウセイの成長速度に驚きながらも、ライもただただ呆然と日々を過ごしていたわけではない。
『狙い撃てないほどではないッ!』
【ギャッ!?】
フォトンライフルの光弾が左肩を撃ちぬき、分身の饕餮王は再び土くれとなり海中へと消えていった。
『私に核を狙い撃つなんて事は出来ないから……』
『跡形も無く消し飛んでもらうぜッ!!! ファイナルビームッ!!!』
ゲシュペンスト・MK-Ⅱ・タイプRDの銃弾の嵐に饕餮王は身体を削られ、それを再生するという事を繰り返していたが再生速度よりも攻撃速度が速く、核を撃ち抜かれそのまま崩れ落ちながら消失し、グルンガストに飛び掛ってきた饕餮王は自らファイナルビームへと飛び込み、光の中へと消え去った。
『あーだこーだ考えるよりも叩き潰すほうが早いッ!』
【ギ、ギギャアアアア……ッ】
饕餮王にヤクザキックを叩き込み、そのままマウントを取り、顔面に拳を何度も振り下ろし痙攣してもなお拳を振るうというダーティファイトを行なう剛破鉄甲鬼を見て、空中を飛び交う妖機人をアステリオンで迎撃していたアイビスが引き攣った声でコウキに通信を繋げる。
『こ、コウキ博士――もう少しやり方ないの?』
『良い事を教えてやろう。化け物はな……徹底的に潰せ、ほんの一欠けらからでも復活する』
殴り潰された肉片から再生した饕餮王の頭を斧で振り返る事無く4つに引き裂き、ダメ押しと言わんばかりに左拳によるストレートで殴り潰す。
『それに俺はこういう下品な輩は好かん』
コウキが吐き捨てるように呟き、剛破鉄甲鬼を空へと舞い上がらせる。その先には血走った目で、涎を垂らし、どことは言わないが身体の一部を肥大化させた饕餮王がフェアリオンとヴァルシオーネを追いかけている姿は正直言ってあれだ。
『プラズマサンダァァアアアアッ!!!』
『斬艦刀大ッ! 車ッ!! りぃぃぃいいいんッ!!!!』
『見るに耐えん、消え失せろ』
『……』
追いかけられていたフェアリオン達が弾かれたように3方向に散り、その直後ネオゲッター1、グルンガスト参式・タイプG、ゲシュペンスト・タイプS、無言のカイの操るゲシュペンスト・リバイブ(K)の前に自ら飛び込んだ饕餮王は飽和攻撃と言っても良いほどの集中砲火を受け断末魔の声も上げずに現世から消え失せた。
『き、気持ち悪かったですわ……』
『そ、そうですね……シャイン王女』
『こんなに気持ち悪くて、気色悪い化け物を私は知らないよ……』
可憐な少女の姿をしているとは言え機動兵器に欲情する化け物に追い回されたことでラトゥー二達の精神力はかなり削られることになってしまった。
『リューネ、お前達は帰艦した方が良いぜ』
『そうしな、お前達は敵を引き寄せすぎる』
鯀鬼皇の召喚した妖機人は違うが、饕餮鬼皇の召喚した妖機人とその分身は紛れも無くヴァルシオーネ達に欲情している。女が乗っていると言う強烈なアピールに饕餮王と妖機人達は紛れも無く引き寄せられている。
『フェリオンとヴァルシオーネは本艦へ帰艦してください』
そしてそれはレフィーナも感じたのかヒリュウ改に帰艦命令がラトゥー二達に下され、渋る素振りを見せたリューネ達だが、下卑た笑い声を上げる饕餮王の声を聞いて、その命令を聞き入れヒリュウ改へと帰艦する。それに変りクロガネからゲッターVが出撃してくるが、その機体から迸る殺意と怒りの感情に誰もが息を呑んだ。
『……オメガグラビトンウェーブ……発射』
そして何の感情も込められていない淡々とした声で放出された重力波が妖機人、饕餮王を海中に叩き落し、ゲッターVの複眼が怒りに満ちた様子で、地面に倒れ伏せもがいている妖機人達を見下ろしていた。ビアンは切れていた……確かに褒められた親では無いが、それでも紛れも無くビアンは父としてリューネを愛していた。饕餮鬼皇の言葉の段階でも切れていたのだが、追い回されるヴァルシオーネ達を見て静止するリリー達を振り切り、激怒した父が戦場に舞い降りたのだった……。
赤黒い念動力を帯びた槍と龍王破山剣が何度もぶつかり合い、凄まじい雷が吹き荒れ、念動力のぶつかり合いは凄まじく、キョウスケでさえもその戦いの中に飛び込むのは躊躇いを覚えるほどに凄まじい破壊が続けられていた。
【ヒャヒャヒャッ!! 愉しいなぁッ! 愉しいなあッ!!! ヒャハハハハハハハッ!!!】
愉しいと笑いながらも饕餮鬼皇の胸中は既に冷め切っていた。龍虎王が弱かった訳ではない、むしろクスハとブリットの念動力者としての素質はかなり高く、饕餮鬼皇の知る龍虎王よりも強く、その事に心は滾り燃えていた。この手で龍虎王を倒すと言う闘志は燃え盛っていた……だがその熱も度重なる横槍で失われ始めていたというだけだ。
『うおらああああッ!!!』
『ぐごはッ!? クハハハハハハッ! 強い、強いではないか! 進化の使徒、いや武蔵ぃぃいいいいッ!!』
『ぐうっ!!! 舐めんなあッ!!』
ポセイドン2と鯀鬼皇の拳の応酬は凄まじく、一撃ごとに戦艦の主砲が放たれるような轟音を響かせながら激しい打撃の応酬を繰り広げている。
『……クロスマッシャーッ!!!』
クロガネから出撃したゲッターVが戦況に加わった事で妖機人と複製の饕餮王は見る見る間にその数を減らしている。
『ビアン博士やばすぎだろ……』
『何を言うかイルム。俺は気持ちが判るぞ、あんな下劣で下品な生き物なぞ滅びてしまえ』
『全くその通りだ。あんな物が神だとふざけるなと言いたいな』
フェアリオンとヴァルシオーネに欲情し、追い回していた饕餮王は紛れも無く下品で、そしておぞましい存在だった。女性は嫌悪感を抱き、男性、そして特に子持ちのビアンやカイがそれを許せる訳が無く、感情を一切そぎ落とした様子で淡々と処理している姿はそれだけ怒りの深さを現していた。正直な所数の不利に陥った所で饕餮鬼皇の戦いにおける熱は著しく下がり、それに加えて脳裏に響く声に完全にやる気を失い始めてさえていた。
『饕餮鬼皇よ、戦いを楽しむなとは言わぬが、今はまだ全てを終わらせる時ではないぞ?』
脳裏に響くブライの声――それに苛立ちながらも、ブライの言う通りなので饕餮鬼皇は反論もせず、苛立った様子でわかっていると返事を返した。
『なに、動きが鈍い?』
『罠かもしれないが、ここで攻め込むぞ! クスハッ!』
『うんッ!!』
【【オオオオオ――ッ!!!】】
龍虎王とクスハとブリットの声が重なり、更に龍虎王の身に纏う念動力の出力が増すのを感じ、饕餮鬼皇も獰猛な笑みを浮かべる。
(ここで死ぬわけにはいかん、適当な所で切り上げる。邪魔をしてくれるな)
『良かろう、だが言っておくぞ、やりすぎるなよ』
ブライの声が遠ざかったのと同時に饕餮鬼皇の筋肉が隆起し、龍虎王の念動力を押し返さん勢いで赤黒い念動力が放出される。
【カカカカカッ! 全力で来いッ! 龍虎王ぅッ!!!!】
【オオオオオオオーーーーッ!!!】
一合打ち合うたびに海面が割れ、周囲に漆黒と青い雷が走る。それは並の機体ならば掠めただけで致命傷になりかねないエネルギーを秘めた念動力の発現であり、その雷から逃げ回っていたヴァイスリッター改とアンジュルグからキョウスケへと通信が繋げられる。
『キョウスケ! ちょっとこれ以上はやばいわよッ!』
『これ以上は危険です中尉! 1度下がりましょう』
掠めただけで装甲を失っている己の機体を目の当たりにしているエクセレンとラミアはこれ以上龍虎王と饕餮鬼皇のそばにいるのは危険だと言うがキョウスケはそれを受け入れなかった。
『エクセレンとラミアは下がれ! この雷はアルトでなければ耐えられんッ!』
事実アルトアイゼン・ギーガはその雷を耐え、キョウスケは攻撃する隙を虎視眈々と窺っていた。
『先に行け、俺もすぐに行く』
『……威力は落ちると思うけど、射程距離ギリギリから支援はするわ』
『助かる、早く行け、危険区域から抜けられなくなるぞ』
考え直せという間もなくすぐに行くと言われればエクセレンとラミアは何も言えず、雷の範囲のギリギリから支援すると告げて激しさをます雷の範囲外から離脱していくヴァイスリッター改とアンジュルグを見送り、キョウスケは龍虎王と饕餮鬼皇の戦いに視線を向ける。
【まだまだ足りんぞぉッ! ワシの飢えは! 渇きは!! この程度では満たされんッ!!!】
『きゃああッ!?』
『ぐっ!? こんな攻撃まで出来たのか!?』
その叫びと共に振るわれた饕餮鬼皇の左拳が巨大化し、龍虎王を上空へと殴り飛ばす。拳が巨大化するという想定外の攻撃にクスハの悲鳴と、ブリットの驚愕の声が重なる。
【さぁさ、耐えて見せい。さもなくば死ねッ! 饕餮鬼皇の最大攻撃を受けよッ!】
【滅ッ! 滅ッ!! 滅ッ!!! 鯀鬼皇が最大奥義ッ! しかとその目に刻めッ! ゲッターロボッ!! 武蔵よッ!!!】
槍を杖のように地面に突き刺す饕餮鬼皇。その槍の切っ先から小さな樹木が生え、それは見る見る巨大に成長し、その枝に掴まり自らが上空に殴り飛ばした龍虎王を追いかけていく饕餮鬼皇。
無数の小型の妖機人が念動力を纏い、半透明の鯀鬼鬼の姿へとなると本体の動きに合わせるように弓を構え、スパークを繰り返す膨大なエネルギーが込められた弓矢の切っ先をハガネ、シロガネ、クロガネ、そしてヒリュウ改に向ける。
『チェンジドラゴォォォンッ!! ビアンさんッ!』
『任されたッ!!』
【相殺出来る物ならばして見せるがいい! 降魔滅天陣ッ!!!】
分身で増幅された膨大な念動力が極大の光線となりクロガネ達に迫る。直撃、いや掠るだけでも轟沈しかねない圧倒的なエネルギーの前にゲッターD2とゲッターVが躍り出る。
『『ゲッタァアアアビィィイイイイムッ!!!』』
ビアンと武蔵の声が重なり、腹部から放たれたゲッタービームと鯀鬼皇の放った念動力を纏めた光線がぶつかりあう。
『ぬあッ!?』
『ぐううっ!!?』
【ふはははははッ! 互角、互角かッ!! ははははははッ! 面白いッ! 抗って見せろッ!!】
凄まじいスパークと衝撃音を響かせ、ゲッタービームと念動力の光がぶつかり合う中。クスハとブリットの驚きと驚愕に満ちた声がアルトアイゼン・ギーガのコックピットに響いた。
『な、なにこれ!? ま、巻きついてッ!? うあッ!?』
『がっ……ち、力が抜ける……ッ』
伸び続ける樹木の枝が龍虎王の足と腕に絡みついた瞬間、凄まじい勢いで根を張り龍虎王の両手足、胴体に絡みつきその動きを完全に封じ込める。
【ヒャハハハハッ! 甘露甘露、良き念じゃ! 美味い、美味いぞッ!!! ヒャハハハハッ!!!!】
枝がぼんやりと光り、龍虎王から何かを吸い上げるような素振りを見せる。そして枝から咲いた花を毟り饕餮鬼皇が頬張る姿を見て、あの花は、そしてあの光がクスハとブリットの生命力を吸い上げているのだとキョウスケは感じ取った。
『クスハちゃん! ブリット君! このッ!!!』
『いけッ!!』
どんどん花を咲かし、青々としていく樹木に対し、徐々にぐったりとしていく龍虎王を見てエクセレンとラミアの支援が入り、花をこれ以上饕餮鬼皇に毟らせないように立ち回る。
【ハハハハハッ!! 効かん、効かんわぁッ!!】
被弾してもそれすらもお構いなしに花を毟り、枝の上を駆けていく饕餮鬼皇の高笑いが響く。自分が誘導されているとも気付かずに……。
『キョウスケ! 後はお願いッ!』
『任せました。キョウスケ中尉ッ!』
アルトアイゼン・ギーガは空を飛べない、だから樹木の上を走り、枝を掴んで高速で移動する饕餮鬼皇には通常ならば追いつけない。
『良い位置だ、助かったぞ。エクセレン、ラミアッ!』
エクセレンとラミアに感謝の言葉を口にすると同時にキョウスケは操縦桿を握り締め、ペダルを力強く踏み込んだ。
『空は飛べんが、真上ならば追いつけん道理はないッ!!!』
饕餮鬼皇がアルトアイゼン・ギーガの真上に来た瞬間に急加速し、地上から空へと伸びる紅い流星となったアルトアイゼン・ギーガが饕餮鬼皇の背中へと迫る。
【ぬうう! 機械人形如きが邪魔をするなッ!】
『ならばその機械人形の力を見せてやるッ!』
枝を軸に半回転し、急降下して来た饕餮鬼皇の殺気に満ちた瞳とその圧倒的な威圧感が迫ってくる光景は誰であっても息を呑むだろう。
『キョウスケ中尉!』
『今行きますッ!!』
枝に囚われ、思うように動けない龍虎王からブリットとクスハが叫び声を上げた。だがキョウスケはそれを笑って制した。
『待ってろ、今このデカブツをお前達の方に殴り飛ばす。お前達はそれを迎撃しろ、こんなでかいだけのやつに俺は遅れは取らん』
【超機人でもない、機械人形の分際でぇッ! ワシを舐めるなあッ!!】
広域通信ではない、コックピット同士の通信で聞こえるはずが無いのだが、饕餮鬼皇はキョウスケとブリット、クスハの会話を聞いていたのかつばを撒き散らし、怒りの表情を浮かべ硬く握り拳を作る。
(……遅い、怖さが無いな)
饕餮鬼皇は確かに強いだろう、だがキョウスケの目から見るとソウルゲインとアクセルよりも遥かに劣っていた。力のみの饕餮鬼皇と力と技が高い次元で纏まっているソウルゲイン――恐れるべき物はどっちなのかというのは明白だった。
『オーバーブースト……バンカー……ぶち抜けッ!!!』
リボルビングバンカーに内蔵されたテスラドライブ、そして背部のテスラドライブが共鳴し、一瞬だけの超加速を可能とする。
【な、なにいッ!?】
『言った筈だ。でかいだけのお前など俺の敵ではないッ!!!』
饕餮鬼皇の拳を姿勢を低くし潜り抜けたアルトアイゼン・ギーガの右拳――いや、正しくはリボルビングバンカーが饕餮鬼皇の胸を貫くと同時に、キョウスケは操縦桿を強く握りこんだ。
『どんな装甲だろうが……撃ち貫くのみッ!!!』
【ゴガッ! ギャバアアアアアアーッ!!!?】
凄まじい炸裂音との汚らしい絶叫が響き、その巨体が龍虎王へと弾き飛ばされる。しかもそれだけに留まらず、大きなダメージを受けたのが原因か、龍虎王を拘束していた樹木が見る見る間に枯れていき、龍虎王をがんじ絡めにしていた青々としていた樹木が見る見る間に茶色く染まり、砕けていく姿と、それに反比例するように力強さを取り戻す龍虎王を見てキョウスケは勝利を確信した笑みを浮かべた。
『ブリット! クスハッ! 決めろッ!!!』
そう叫ぶと同時に樹木の拘束を振り払った龍虎王がその目を爛々と輝かせ、翼を大きく広げ力強さと勇ましさを見せ付けながらまだ完全に枯れておらず、踏み場として十分な枝の上に飛び移り、両足で枝を踏み砕きながら吹っ飛んでくる饕餮鬼皇へと突撃する。
『龍王破山剣逆鱗断ッ!!!』
【ギ、ギギャアアアアアアアアアアーーーーッ!?!?】
落下するアルトアイゼン・ギーガのコックピットでキョウスケがそう叫ぶのと、クスハの力強い叫びと共に振るわれた龍虎王の剣撃が饕餮鬼皇を切り裂くのと凄まじい断末魔の悲鳴が周囲に木霊するのははほぼ同時の事であった。
『ぶちぬけえええええええッ!!!!』
『おおおおおおお――ッ!!!』
【は、ははははははっ!!! はーっはははははははッ!!!! 良いだろう! この場は我の負けを認めてやろうぞッ!!】
そして2体のゲッターロボのゲッタービームと鯀鬼皇の念動力が弾け、鯀鬼皇の大声の笑い声と敗北宣言の後、全員の視界を奪うほどの強烈な閃光が周囲を明るく染め上げたのはそれから数秒遅れての事だった……。
「き、消えた……」
『何が起きたというんだ……』
光が晴れた時2機の超機人の姿は無く、妖機人はその分身の姿も最初から幻であったかのように消え去っていた。雲1つない快晴の空の下、響く声だけが超機人が存在したと言う証だった。
【いずれまた会おう、人間達よ。お前達の魂の輝き、良き物であったぞ。その魂の輝き、これからも磨く事だな】
【己おのれオノレええええッ!! 必ず、必ずやこの恨み晴らしてくれようぞおおおおおおッ!!!】
キョウスケ達の力を賞賛する鯀鬼皇と、恨み言を喚き散らす饕餮鬼皇の声が消え、周囲を覆っていた不気味な威圧感は完全に消えさり、戦いが終わったと言うことだけがダイテツ達に判ることだった。
「ビアン、話を聞きたいのだが構わないか?」
『ここまで来て、さよならとも言えんな。近くに無人島がある、そちらで話をしよう』
戦いを終えたビアン達はそれぞれの戦艦へと帰艦するのだが……再会した時に殴ると活きこんでいたリューネによって話し合いの場でビアンの血の雨が降る事を誰も知るよしもないのだった……。
130話 暴虐の超機人/闇からの呼び声 その5へ続く
慢心していた饕餮鬼皇は手痛いしっぺ返し、そして鯀鬼皇は抗って見せたので賞賛して退場と超機人同士でもかなり差がある終わりにして見ました。次回はリューネとビアンの再会と言う事でとりあえず、殴るって所はやりたいですね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
PS
迎撃戦は今回かなり苦戦しましたが無事に400万獲得する事に成功しました。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い