進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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133話 暴虐の超機人/闇からの呼び声 その8

133話 暴虐の超機人/闇からの呼び声 その8

 

 

脳裏に響くアルフィミイの声に導かれるように……いや実際は操られてだが、まどろみの中にいるような感覚でヴァイスリッター改に乗り込み移動してきたエクセレンの意識は唐突に覚醒し、エクセレンは即座に状況把握を始めた。案の定通信は遮断状態、日本国内にはいるが避難によって無人の市街地、それに加えて伊豆基地からはハガネ達でも最低も30分、足の速いサイバスター達でも合流にはそれ相応の時間が掛かる絶妙な距離に自分がいることをエクセレンは把握し、態とおどけるように口を開いた。

 

「ここがパーティ会場って訳ね。それにしては……随分と寂れてるわね」

 

その問いかけが聞こえたかは定かでは無いが、空間をゆがめてアインスト・クノッヘンが1体だけ現れた。

 

「ちょいちょい、呼んでおいてアルフィミイちゃんじゃないわけ?」

 

【……メス……】

 

「牝? 女って事?」

 

ノイズ交じりで良く聞こえないがアインスト・クノッヘンが牝と言っているように聞こえ、つい先日の饕餮鬼皇の事を思い出し、その顔を顰めたが、アインスト・クノッヘンの言葉には続きがあった。

 

【た……メス……カク………ニン……スルッ!】

 

試す、確認すると言って爪を振りかざし跳躍し、ヴァイスリッター改へ飛び掛るアインスト・クノッヘン。だがその爪は空を切り、背後を取ったヴァイスリッター改の手にしたオクスタンランチャー改の銃口が背中に押し当てられる。

 

「悪いけど、貴方に用はないのよね。私はアルフィミイちゃんに用があってここに来てるのよ」

 

Bモードの弾頭が背後からアインスト・クノッヘンのコアを貫き、目の前で霧散するアインスト・クノッヘンをエクセレンは冷めた目で見つめていた。

 

(試す……確認する……私の何を確認しようとしているの……?)

 

伊豆基地で脳裏に響いたアルフィミィは聞きたい事があると言っていた筈だ。では何故攻撃を仕掛けてきているのかをエクセレンは考える。確かにアルフィミィの言動は支離滅裂かつ、倫理観に欠ける物が多かったが……自分で呼んでおいて現れないというのはあるのだろうかとそこまで考えたところでヴァイスリッター改を取り囲むようにアインスト・クノッヘンが今度は4体現れた。

 

「一応聞いておくけど……貴方達、なんかあの子から伝言とかないの?  無言で襲ってくるだけってのは……正直どうなのよ?」

 

【タシカメル……】

 

【核……】

 

【オマエハ……】

 

【ナンダ……?】

 

「化け物にお前は何だって言われてもねぇ……それ特大ブーメランよ?」

 

化け物に何者等と言われるなんて想像もしていなかったエクセレンは苦笑いを浮かべたが、それと同時にあることを理解していた。

 

「貴方達はアルフィミィちゃんと関係ないアインストって事ね、それなら私は貴方達に付き合ってるほど暇じゃないの」

 

龍虎王復活の際に確認されたゲシュペンスト・タイプSとR-SWORDを模したアインストが確認されている。良く見ると目の前のアインストも細部が一部違う意匠をしており、目の前にいるアインストがアルフィミィとは無関係のアインストだとエクセレンは理解していた。

 

「だからさっさと貴方達を潰して、アルフィミィちゃんを待たせてもらうことにするわ。どうせ、あっちも邪魔してるんでしょ?」

 

その問いかけにクノッヘンの背後からグリートが姿を現した。

 

「普段なら、は~い! 触手ちゃんとか言うんだけど……今日はそんなつもりはないのよね、さっさと潰させて貰うわよ」

 

音を立てて背部のウィングが展開され、クノッヘンの爪とグリートのビームの雨をヴァイスリッター改は残像を残しながら回避する。

 

(アインストも一枚岩じゃないのかしら? 確かめる……試す……まさか……ね)

 

平行世界の未来を知る者――イングラム、武蔵ははキョウスケがベーオウルフと呼ばれるアインストとなると言っていた。人間がアインストになる、そして試す、確かめるという言葉から何をしようとしているのかエクセレンはおぼろげに掴み始めていた。

 

(私の考えが当たりなら……今までと同じようには戦えないわね)

 

上下左右から迫ってくる爪のブーメラン、そして捕らえる様に伸び縮みするグリートの触手とビームによる包囲網――ヴァイスリッター改の機動力でなければ逃げ切れない範囲攻撃を回避しながら、確実に反撃を続けるエクセレン。だがその胸中には強い焦りと不安が燻っていた。

 

(……人間を捕まえようとしている。アインスト達が一歩前に進んだ攻撃に切り替えて来た)

 

今まではただ倒す戦い方だったが、今回は明らかに撃墜する意図が感じられず捕獲しようとしている。それはイングラム達が語る未来が近づいてくるように感じられ、普段の飄々とした仮面を被る余裕はエクセレンには無かった。

 

「悪いけど……今日はマジで行くからね」

 

エクセレンは知っている……キョウスケが悪夢を見ている事を、カウンセリングを受けていることを、そして睡眠薬を時折服用している事も。自分は隊長だからと弱さを見せないキョウスケだが、恋人であるエクセレンには胸に抱えている不安も恐怖も打ち明けている。キョウスケは、己がベーオウルフというアインストになることを誰よりも恐れている事をエクセレンは知っている。

 

「言っておくけど、貴方達なんて私の敵じゃないのよ」

 

オクスタンランチャー改のBモードの銃弾がグリートのコアを撃ち抜き消滅させる。完全な本気……怒りもある、殺意もある、だが、それ以上にキョウスケを慈しみ愛す心がある。今までのどんな時よりも強いエクセレン、そしてヴァイスリッター改の姿が無人の市街地を舞うように飛ぶのだった……。

 

 

 

サイバスター、アステリオン、ヴァルシオーネ、アンジュルグの4体のハガネ、シロガネの中で最も速力のある機体がヴァイスリッター改に追いついた時、普段のエクセレンとはまるで違うその雰囲気にマサキ達は息を呑んだ。怒りという業火を知性という氷で押さえ込んだ、相反する2つを感じさせるその姿はまるで別人だった。

 

『マサキ達ね……気をつけて、こいつら私達を捕まえようとしてるわよ』

 

マーサではなく、マサキと呼んだ事にも驚いたが、それよりもその冷徹とも言える言える声の響きに驚かされた。

 

『ちょっとエクセレン、どういう事なのさ!?』

 

『どういうこともああいうことも、そういうことなのよッ!!』

 

鎧型のアインスト……ゲミュートの射出した腕がヴァイスリッター改だけではなく、サイバスターやヴァルシオーネにも迫る。

 

『わっととッ!?』

 

「これは……今までと違うッ!?」

 

困惑しながら回避するアステリオンとミラージュソードで迎撃するアンジュルグ。しかしゲミュートの腕は空中で弧を描いて再びその両腕を伸ばして来る。

 

「何か知ってる事はあるの!?」

 

『わかんない、私はアルフィミィちゃんの声に魅かれて来たんだけどね』

 

『誘い出されてるんじゃねえかよ!? なにやってるんだ!?』

 

『いやさ、なんか話をしたいとか言ってるし? アインストの事で何か判るかと思ったんだけどね、どうもこいつらアルフィミィちゃんとは関係ないアインストみたいなのよ』

 

そう話をしながらも、エクセレンはヴァイスリッターを巧みに操り、捕獲を続けようとするゲミュートの腕を迎撃し続けていた。

 

『アルフィミィちゃん!? 何言ってるのさ!?』

 

『まさかアインストの中身か!?』

 

『そうそう、中身のいるアインストがいるのよ。それがアルフィミィちゃんなのよね』

 

アルフィミィというアインストについて話をしているエクセレン達の声がコックピットに響くが、ラミアにはその声が右から左へと流されていた。

 

(こ、これは……知っている、私はこれを知ってる!)

 

ベーオウルフが出現する前後にアインストによる人間の捕獲。そして数多の人間がアインストのコアを埋め込まれ、発狂し、あるいは死に、あるいはアインストへと成り果てた。Wシリーズの知識として与えられた凄惨な光景が脳裏を過ぎり、ラミアが一瞬動きを止め、その一瞬をアインストが見逃す訳が無く、その両腕でアンジュルグを捕獲しようとする。

 

『大丈夫!? しっかりして!』

 

だがそれは、急降下し、マシンガンを乱射したアステリオンによって阻止され、アイビスからの通信にラミアは正気を取り戻した。

 

「あ、ああ……アイビス……すまない」

 

『何か攻撃を受けたんじゃ……本当に大丈夫?』

 

「……ああ、大丈夫だ」

 

アイビスの声に大丈夫だと返事を返すラミアだが、その心は荒れ狂っていた。

 

(止める……助ける……殺す……どれが正しいんだ)

 

アインストにキョウスケが捕獲されればベーオウルフが生まれるかもしれない。シャドウミラーとして最も正しいのは事故を装いキョウスケを殺す事……だがラミアとしてはキョウスケを助けたいと思ってしまっていた。シャドウミラーのW-17、そしてラミア・ラヴレスとしての考えが複雑に入り乱れる。

 

『ラミアちゃん。ちなみに聞いておくけど、キョウスケは?』

 

「……もうすぐ到着されちゃったりしますのです……」

 

ハガネとシロガネもこの場に急行している。キョウスケもそう遠くない内にこの場に到着すると聞いてエクセレンが呻いた。

 

『不味いわね、キョウスケが出撃するのはやばいわ』

 

『だけどよ! そんなことを言ってる場合じゃないぜッ!?』

 

『敵の数が多すぎるッ! 戦力の出し惜しみをしている場合じゃないよッ!?』

 

倒しても倒しても姿を見せるアインスト、しかも数を武器にしてサイバスター達を捕獲しようとしてくる。上下左右縦横無尽に捕獲しようとしてくるアインストの猛攻は余りも激しく、なんとしてもサイバスター達を捕獲しようとする悪意が感じられた。

 

『うわっととッ!?』

 

『くそ、シロ! クロ! 頼んだぜッ!!』

 

足の速いサイバスター達だが、敵の範囲攻撃が激しくなればその速度も十分に生かしきれなくなってくる。短時間でアインスト達は自分達よりも早いサイバスター達との戦い方を学習し、身につけ始めていた。余りにも速い学習速度にマサキ達の顔にも苦悶の色が浮かんだ時……それは現れた。

 

【キシャアアアアアーーーッ!!!】

 

余りにもおぞましい獣の雄叫びが響いたと思った瞬間、何かがゲミュートを突き飛ばし、馬乗りになると同時に、その首――いや牙を突き立てゲミュートを喰らい始める何か……

 

『ま、また化け物が出たのッ!?』

 

『は? なんだ……なっ!?』

 

『おいおい……ありゃ何の冗談だ!?』

 

アインスト・ゲミュートを突き飛ばし喰らっている何かは左腕が無く、いや良く見ると左腕だけでは無く身体のあちこちが損傷し、黒いゴムのような体表とその中に蠢く黄色の複眼が完全に露出していたが、ゲミュートを喰らう度にその損傷は見る見る間に修復され、3体のゲミュートが塵へと帰る頃には、完全な姿でエクセレン達の前にその何かが立ち塞がっていた。

 

『本当冗談きっついわね、いつから地球ってこんなにオカルト染みた世界になったのかしら?』

 

「冗談を言ってる場合ではありやせん。アインストよりも……こいつの方がよほど危険でごんす」

 

ラミアは知っている目の前の存在がどれだけ危険で、そしてその存在を許してはいけない化け物なのか……くすんではいるが白・赤・青のトリコロールカラーに、頭部の形状は僅かに違うがR-1に酷似したメタルビースト――メタルビースト・エルアインスのゴーグル型のフェイスパーツの下のインベーダーの血走った黄色い複眼が動き回ったと思った瞬間凄まじい咆哮を上げると同時に獣のような動きでエクセレン達へ飛び掛ってくるのだった……。

 

 

 

 

 

メタルビースト・エルアインスの動きは俊敏で、更に人型でありながら獣のような低い姿勢で襲い掛かってくる。その読めない動きにエクセレン達は1対5でありながら、完全に攻めあぐねていた。

 

【シャアッ!!!】

 

『なっ!? うぐうっ!?』

 

咆哮と共に関節が伸び、サイバスターへと伸びるエルアインスの右拳。凄まじい速度で伸びるそれは、マサキにとっては予想外の攻撃であり、赤黒いオーラを纏った拳がサイバスターの胸部にめり込み、サイバスターを地面へと叩きつける。

 

『マサキッ!? このッ!!』

 

【ギギャア!?】

 

サイバスターが叩きつけられるのを見てリューネがヴァルシオーネを操り、メタルビースト・エルアインスへ向かってハイパービームキャノンを放つ。熱線が命中したメタルビースト・エルアインスは苦悶の声をあげ、ビルの残骸の中へとその姿を隠す。

 

『マサキ、大丈夫!?』

 

『あ、ああ。なんとかな……Rー1にそっくりな姿をしてやがるが、R-1とは似ても似つかねえぞ……いや、人型の化け物と思った方がいいかも知れねえ』

 

余りにもR-1に似すぎているメタルビースト・エルアインスの姿にどうしてもR-1の姿が過ぎるが、R-1に似ているとか似ていないとかそれ以前の問題として人型の機動兵器と戦っていると言う先入観があると反応が遅れるとマサキが声を上げる。

 

『うわッ!?』

 

『アイビス! 動かないでッ!』

 

ビルの谷間から伸びて来た触手がアステリオンの足に巻きつき動揺するアイビスに即座にエクセレンがフォローに入り、6連装ビームキャノンで触手を焼き払ったが、反応が遅れていればアステリオンは地面に叩き付けられ、アインストゲミュートと同じ様に捕食されていたかもしれない。

 

『こいつら龍王鬼とかいう化け物が出てきた時のと同じやつだよな、そんなに数がいるのかよ?』

 

『判らないわ、武蔵はインベーダーって言ってたけど……』

 

戦ったばかりなのにまた別の個体が、しかも仲間であるリュウセイの機体を模した個体がいるのはなんでだとマサキが問いかけるが、エクセレン達がその理由を知るわけが無い。むしろ聞きたいのはエクセレン達の方だといっても良いだろう。

 

【シャアッ!!】

 

『ううっ!? どこから攻撃がッ!?」

 

『うぐっ……反応が無かったのにッ!?』

 

メタルビースト・エルアインスの姿が確認出来ず、廃墟の影から一瞬だけ腕を出しGリボルバーによる射撃や、触手を伸ばしての打撃でエクセレン達を翻弄しているが、それはメタルビースト・エルアインスが考えて攻撃しているわけではない。歴戦のエースパイロットであるエクセレン達を翻弄出来ていたのはあるからくりが存在していたのだ。

 

「あははは、あいつら馬鹿みたい、全然違う所を攻撃してるよ!」

 

「テ、ティス……あんまり悪ふざけをしないほうが良いよ?」

 

「目的を達成したのだから早く戻ったほうが良いと思う、暴走しないとは言い切れないし」

 

「大丈夫大丈夫、それにあいつは不完全じゃん。それくらい操れないと完成品を使えないから意味無いって」

 

メタルビースト・エルアインスはメタルビースト・SRXから分離した存在であり、ティスの言う通り不完全品だ。それを操れなければメタルビースト・SRXを操るのは無理だってとティスは明るく笑う。

 

「それに……もうすぐあいつも来るんだし、引くかどうかはそれからで良いじゃん」

 

にやりと獰猛に笑うティスの視線の先を見たラリアーとデスピニスも何かが近づいて来ているのを感じ取ったのか、困ったような表情を浮かべる。

 

「だ、大丈夫かな? さっきは不意打ちだったけど……」

 

「危なくなったら早く回収して帰ろう。今回は試運転、本番は次なんだからね」

 

「判ってるって、よしいけえッ!」

 

ティスの指示を聞いて暴れるメタルビースト・エルアインスを見ながらラリアーとデスピニスは困ったように肩を竦めるのだった……。

 

 

 

メタルビースト・エルアインスが地面を砕き、ヴァイスリッター改の前にその姿を現す。

 

『ッ!?』

 

【シャアアアアアーッ!!!】

 

両腕に紅いオーラを纏わせ腕を振りかぶるメタルビースト・エルアインス。その姿はT-LINKナックルを使おうとしているR-1の物と酷似していた。意識の外からの強襲には流石のエクセレンも対応し切れず、無防備にメタルビースト・エルアインスのT-LINKナックルの前にその姿をさらしてしまう。

 

『エクセ姉様!』

 

『やらせるかよッ!』

 

アンジュルグの放ったミラージュアローとサイバスターのハイファミリアがメタルビースト・エルアインスの背中を貫かんとした瞬間、その全身を覆うような赤黒いバリアがミラージュアローとハイファミリアを弾き飛ばした。

 

『なッ!? 念動フィールドッ!?』

 

『エクセレン! 避けろッ!!』

 

攻撃を完全に無効化するほどに出力の高い念動フィールドを前にリューネ達に出来る事は少なく、僅かでも攻撃を続けメタルビースト・エルアインスの攻撃を妨害する事くらいしか出来なかった。

 

『くっ、そっちの思い通りにはッ!』

 

マサキ達の妨害も利用し、何とかメタルビースト・エルアインスから距離を取ろうとするエクセレンだが、メタルビースト・エルアインスは空中を蹴りヴァイスリッター改を追い続ける。

 

「だ、駄目、振り切れないッ!」

 

【グルアアアアッ!】

 

エクセレンを持ってしても振り切れないと言わせるメタルビースト・エルアインスはついにヴァイスリッター改を射程に収め、牙を剥き出しにし、その両拳を叩き付けようとした瞬間に横殴りの何かに追突され、地面へと叩き落された。

 

「な、なにあれ……」

 

『あれってまさか……』

 

メタルビースト・エルアインスを不意打ちで叩き落し、執拗に、それこそ嬲るように攻撃を続ける異形の姿にエクセレン達はその声を失った。何故ならば、その姿は余りにもエクセレン達にとって馴染みの深いものだったからだ。

 

【ぎ、ギギャアアアアアアアーッ!!】

 

強烈な炸裂音と共にメタルビースト・エルアインスの苦悶の叫び声が上がり、メタルビースト・エルアインスの姿は地面の中に溶けるように消えてその場から逃走していった。だがメタルビースト・エルアインスを退けた何かは決してエクセレン達の味方ではなく、メタルビースト・エルアインスの姿が無くなると次はお前達だと言わんばかりにその顔を上げた。

 

『あの姿はッ!』

 

『ま、まさか……あれってッ!』

 

さっきは砂煙でシルエットしか確認出来なかったが、それでもまさかと思うほどに謎の襲撃者はある機体に似ていた。そして今砂煙が晴れ、その襲撃者の姿が明らかになった時、エクセレン達は驚きの余り声を失った。

 

「アルト……アイゼン……ッ!」

 

頭部は昆虫のような意匠をし、そしてかなり前傾姿勢となっているが、肩のクレイモア、右腕のリボルビングステーク、背部の昆虫の羽根のようなフライトパーツの名残を持つバックパック……それは紛れも無くアインストとなったアルトアイゼン・ギーガの姿だった。

 

『その通りですの』

 

全員のコックピットに響いた幼い少女の声、それから少し遅れてダメージを受けている様子のペルゼイン・リヒカイトがその姿を見せた。

 

「呼んでおいていないわ、アルトちゃんの偽物を作るは……貴女は何がしたいのかしら? アルフィミィちゃん」

 

声のトーンが一段階下がり、冷たい声とも言えるエクセレンの声。そしてその雰囲気にマサキ達は何も言えず、目の前のアインスト・アイゼンギーガとどこかに隠れているかもしれないメタルビースト・エルアインスへの警戒を行なう。

 

『居なかった事に関しては謝罪いたしますのよ。ごめんなさいですの』

 

そしてエクセレンに冷たい口調で問いかけられたアルフィミィは意外な事に謝罪の言葉を口にした。

 

「え?」

 

『なんで……不思議そうな声を出すんですの?』

 

謝罪したのに何で不思議そうにするのかが理解出来ず、不満げにアルフィミィはエクセレンに問いかける。

 

「いや、まさか謝ってくるなんて思ってなかったし……」

 

『邪魔者が入って来るのが遅れたのは事実ですの、なら謝るのは私ですのよ?』

 

謝罪すると言う概念をアルフィミィが覚えている事にエクセレンは驚いた。アインストなのか、それともアインストに寄生されている人間なのか……そこの判断がどうしてもエクセレンにはつかなかった。だから会話する気がある今の内にいくつか質問をしておくべきだと考えを切り替える。

 

「私を襲ったのは貴女の意志?」

 

『いいえ、違いますのよ? あれは私の配下ではありませんのよ?』

 

エクセレンの感じていた通り、最初に襲ってきたアインストはアルフィミィの配下のアインストではなかったようだ。だが、そのかわりにアインストを配下と呼んだことでますますアルフィミィの立ち位置がわからなくなってきた。

 

「あのアルトちゃんの偽物は何?」

 

『……キョウスケを作りたかったんですの、キョウスケが近くにいると胸が……もやもやいたしますの……でも凄く幸せな……気持ちになりますのよ?』

 

アルフィミィの表現は稚拙だが、まるで恋する少女のような口振りだった。

 

『はぁッ!?』

 

『え、え? 何を言って……』

 

『……むっ、失礼ですのよ、貴方達』

 

「ちょっとマーサもリューネも静かにしてて、思う事はあると思うけどね」

 

アルフィミィの言動にマサキとリューネが驚きの声を上げると、アルフィミィが怒りを感じたような態度を見せるのでエクセレンが少し黙っていてとペルゼイン・リヒカイトの前にヴァイスリッター改を移動させる。

 

「キョウスケを作りたくて、あれを作ったの?」

 

『……そうですの、でも私はあの人の事を良く知りませんの……だからあの出来損ないの殻を作る事しか出来ませんのよ』

 

無垢、そして純粋にキョウスケを思う響きがあるが、その行動は余りにも狂っている。

 

「じゃあ貴女がアインストを作ってるの?」

 

『……少しだけですのよ、私が作ったのはアイゼンだけですのよ』

 

アイゼンだけという言葉を聞いて他のアインストシリーズは別の何かが作っているのか、それとも自然に発生しているのかという謎が生まれたが、アルフィミィがアインストを作れると言う事実が判っただけでもエクセレンにとっては十分な成果といえた。

 

「じゃあ『いいえ、もうお話は終わりですのよ?』ッ!!』

 

恐ろしい速度で抜刀されたペルゼイン・リヒカイトの刃を仰け反る様にしてヴァイスリッター改は回避し距離を取る。

 

『私は知りたいのですの、キョウスケも、貴女も知りたい、だからまずは殺して連れ帰りますのよ』

 

ペルゼイン・リヒカイトの背後から這い出る様にクノッヘン、グラート、ゲミュート、そしてアイゼンの4種類のアインストが姿を現す。

 

「知りたいって言うなら殺そうとしないで話をするって言うのはどう?」

 

『……それも良いんですけど、私には時間がありませんのよ。だから手っ取り早く、エクセレンとキョウスケを殺して連れ帰りますの。大丈夫、優しくいたしますから痛くありませんことよ?』

 

優しげな穏やかな口調だがその言葉の中に隠されている狂気が一瞬の内に膨れ上がっているのをエクセレンは感じ取っていた。

 

「時間が無い。んー、失敗続きだからとか?」

 

『いえ、そう言う訳ではないんですが、進化の光を手にするのは大変なんですのよ、だからそっちに時間を掛けたいので……早く死んでくれますか?』

 

鋭いペルゼイン・リヒカイトの斬撃を避けながらエクセレンは頭を必死に回転させる。

 

(殺して連れて帰る……アルフィミィちゃんの言う事が本当なら……キョウスケと会わせたら駄目だわ……いや、私も危ないんだけどさ)

 

殺して連れ帰る、そして生き返るというのがアインスト化を示しているのならば、ここで殺されればエクセレンもキョウスケもアインストにされ、未来を知る者がいうベーオウルフ、そしてそれに類似した何かにされてしまうのだろう。

 

『私にはキョウスケと……貴女が必要ですのよ』

 

「どうして私も必要なのかしら? 貴女は男も女も好きなのかしら?」

 

こうして会話をしている間もペルゼイン・リヒカイトとヴァスリッター改の戦いは苛烈さを増し、高速で移動する2体と、そんな2機に合流させまいとアインスト達はマサキ達の足止めの攻撃を繰り返す。

 

『私には貴女が何を言ってるのか判りませんの』

 

「そお? 私も貴女の言ってることが判らないけどねッ!!」

 

Bモード連射で撃ち込むヴァイスリッター改の攻撃をペルゼイン・リヒカイトは手にした日本刀で切り払いながら前へ前へと距離をつめてくる。

 

『私は貴女、貴女は私ですのよ? 私に足りない物は貴女からしか手に入りませんのよ』

 

「それはどういうッ! それはどうでもいいわ。貴女と私とキョウスケにどういう関係があるのか判らないけど……貴女とキョウスケは会わせないわッ!」

 

ベーオウルフというキョウスケが辿るかもしれないアインストと化した未来にさせないためにも、キョウスケとアルフィミィは会わせないと意気込むエクセレンに対してアルフィミィは穏やかに笑って見せた。

 

『大丈夫ですのよ、もう来てますの』

 

「は? えっ!?」

 

ヴァイスリッター改の影から日本刀を手にした鬼面が姿を見せ、それが自身の影から現れたと言う異様な光景に完全に動きが止まった。

 

【ウォオオオオオーーッ!!】

 

鬼面が唸り声を上げ日本刀を突き刺そうとした瞬間、紅い流星がヴァイスリッター改と鬼面の間に割り込んだ。

 

『間に合ったか。すまん、遅れた』

 

鬼面の日本刀を叩き折り、リボルビング・バンカーで鬼面の顔面を貫き、上半身を消し飛ばしながらアルトアイゼン・ギーガからエクセレンへと通信が繋げられる。

 

「……来ちゃったのね、キョウスケ」

 

『ようこそ、待っていましたのよ。キョウスケ』

 

助けられた事は嬉しいが、この場にはキョウスケに来て欲しくなかったエクセレン。

そしてキョウスケにアルフィミィは喜色に満ちた声でキョウスケを歓迎した。

 

「何?」

 

そしてキョウスケには一瞬、アルフィミィとエクセレンが同一人物のように感じられ、驚きと困惑を隠しきれなかった。限りなく遠く、極めて近い世界ではこの出会いがキョウスケがアインストとなり、そしてベーオウルフへと至る大きな転換期であり、そして限りなく遠く、極めて遠い世界でこの場に存在しなかったエクセレンの存在がイレギュラーとなり、キョウスケ・ナンブの未来を大きく変える要因となりえる。

 

『「キョウスケ」』

 

口調も何もかも違う、だがキョウスケと己の名を呼ぶエクセレンとアルフィミィの声は不思議とキョウスケにとって心地のいい物であり、魔性を伴った響きでキョウスケの心を大きく揺り動かすのだった……。

 

 

134話 暴虐の超機人/闇からの呼び声 その9へ続く

 

 




メタルビースト・エルアインスとアインストアイゼン・ギーガの追加参戦。なお一時離脱しておりますが、メタルビースト・エルアインスは話の中でもう1度でてくるのでご安心ください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

PS

天井でゲッタートマホークストーム入手しました

やっぱりゲッター系の武装は全部揃えたくなりますね。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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