進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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134話 暴虐の超機人/闇からの呼び声 その9

 

134話 暴虐の超機人/闇からの呼び声 その9

 

ヴァイスリッター改を追ってきたハガネから真っ先に飛び出していったキョウスケの後を追って、龍虎王、R-1、R-2、ゲシュペンスト・MK-Ⅱ・タイプRDにビルトビルガー、ゲシュペンス・MK-Ⅲ、ジガンスクード・ドゥロ、グルンガスト達が次々と出撃していく、だが今回はゲッターD2やフェアリオン、そしてヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプMや、ゲシュペンスト・リバイブ(K)という機体は伊豆基地へと残っていた。

 

『これはずいぶんときつくないっすか、イルム中尉』

 

『あん、泣き言言ってるならガンドロから降りな! あたしが乗る!』

 

『そういうこった。泣き言言ってる暇があったら気張りな。第一、武蔵にばっか頼ってどうするよ』

 

確かにアインストの群れと戦うのにゲッターロボの存在は確かに頼もしく、そして切り札になりえるが、それに頼り切っていてはL5戦役の焼き増しだ。自分達だけでもアインストと戦えるようになれなくては何も変わらない、そしてハガネだけ来たのは一箇所に戦力を集中する事の危険性であり、ハガネがいない間に百鬼帝国や、ノイエDCの襲撃に備えての事だった。

 

『各員はアインストの包囲網を突破し、キョウスケ中尉、エクセレン少尉と合流する事を最優先とせよ。また転移などで敵の増援が現れる可能性は十分にある、周囲の警戒を怠るな』

 

ダイテツからの命令が広域通信で告げられる。確かに分断されているキョウスケとエクセレンと合流するのは最優先課題だが……。

 

『これは厳しいな、隊長』

 

『泣き言を言ってる場合じゃないわよ、リュウセイ』

 

アインストクノッヘン、グラート、ゲミュートに加えて、アルトアイゼン・ギーガを模したアインストアイゼン・ギーガまで加わったアインストの軍勢が耳障りな金切り声を上げる。

 

『各員は先行しすぎず、協力してアインストと戦え! 戦況開始ッ!』

 

『『『了解ッ!』』』

 

キョウスケとエクセレンがペルゼイン・リヒカイトと対峙している事もあり、キョウスケの代わりに指示を出すギリアムの声にリュウセイ達は力強く返事を返し、アインスト達へと向かって行くのだった……。

 

 

 

ヴァイスリッター改の影から鬼面が現れるのを見たキョウスケは真っ先に飛び出し、最大加速のまま鬼面とヴァイスリッター改の間へと割り込み、エクセレンの救出に成功していた。

 

「大丈夫か? エクセレン」

 

『大丈夫だけど……凄い複雑な気分。判るでしょ? キョウスケ、アインストの目的が何か』

 

「わかっているつもりだ。そしてその上で俺は出撃した」

 

エクセレンの言葉に冷静を装った風に返事を返す。だがその内面は恐怖と不安に揺れていた、アインストは明らかに捕獲を主とした戦術を取っていた。防戦に重きを置き、突出した瞬間に取り囲むように立ち回るのを見ればその目的がなんなのかと察するのに時間は必要なかった。

 

『ようこそ、キョウスケ。私達は歓迎いたしますのよ』

 

「歓迎? 歓迎の割には随分と物騒だなッ!!!」

 

【キシャアアアーッ!!!】

 

「遅いッ!!!」

 

雄叫びと共に飛び掛ってきたアインスト・アイゼンギーガのステークをかわし、カウンターでリボルビング・バンカーを叩きつけアインスト・アイゼンギーガの上半身を一撃で吹き飛ばす。

 

『お見事、流石キョウスケですの』

 

パチパチと手を叩く音がペルゼイン・リヒカイトから響き、キョウスケとエクセレンはアルフィミィの目的が判らず、その眉を細めた。

 

「それで俺とエクセレンをこの場に呼び寄せ、アルトの偽物を作ったお前の目的は何だ?」

 

『偽物とは違いますの、私は貴方の事が知りたくて……真似して作ってみても、中身がいませんの。どうしても殻だけしか作れなかったのですの……』

 

中身と殻――その言い回しは妙であったが、アルフィミィはキョウスケを作ろうとし、失敗してアルトアイゼン・ギーガを模したアインスト・アイゼンギーガを作り出したと言う事は判った。

 

「殻……だと?」

 

『そうですのよ? 貴方達は殻に入っているでしょう?』

 

『……ねぇ? もしかしてアルフィミィちゃんってヴァイスちゃんとアルトちゃんの事私達の身体って思ってるのかしらん?』

 

『? 違いますの? リヒカイトは私の半身、私自身ですのよ?』

 

アルフィミィとキョウスケ達の認識の違いがここで明らかになった。アルフィミィは殻、即ちPTを作れば中身であるキョウスケとエクセレンも作れると思っている節がある。死んでも生き返ると言う考えも修理すればパイロットも治ると思っているのだと……。

 

『ちょっとあの子の事が判りかけて来たわね、キョウスケは?』

 

「俺もだ」

 

必要最低限の知識すら与えられていない、アインストの大本に作られたのか、それとも人間がアインストになったのかは判らないが、アルフィミィという少女が普通ではないということ、そして……可能性の段階ではあるが、同じ容姿をしたアインストが人を模した存在がまだいるのかもしれないという答えをキョウスケとエクセレンは出していた。

 

『私が判ったのですの? それはとてもずるいですの……キョウスケ、エクセレン……私はもっとずっと、貴方達の事が知りたいのに……』

 

自分が何者か判らず、そして自分が何かを知るためにキョウスケとエクセレンに何かを感じ取ったことがアルフィミィがキョウスケとエクセレンに執着する理由なのだろう。その何かが判らないのだが……人を捕獲しようとするのはその何かを探しての物なのではないかとキョウスケとエクセレンは感じていた。

 

『エクセレンは私、私はエクセレン、ではキョウスケ。貴方は私にとって……何なのかを私は知りたいのですの』

 

知りたい知りたいと言いつつ、ペルゼイン・リヒカイトは猛攻撃を続けており、キョウスケとエクセレンは防戦一方に追い込まれていた。

 

『そんなに知りたいって言うのならまずは攻撃を止めて、それから降りなさい』

 

「ああ、知りたいというのならば話をする事から始めたらどうだ」

 

少なくともアルフィミィは他のアインストと違い話をする余地がある。危険ではあるが、キョウスケとエクセレンは説得を試みた。

 

『話それは……大事ですのよ』

 

話と聞いてペルゼイン・リヒカイトの動きが緩まり、その手にしていた日本刀を地面に突き刺した。本当に交渉できるのかもしれない……一瞬その考えがエクセレンとキョウスケの脳裏を過ぎったが、それは完全な悪手だった。そもそも人の姿をしているがアルフィミィはアインストであり、今はまだ人間的な思考を持ち合わせていない。彼女にあるのはアインストとしての考え、即ち……。

 

『貴方達も私と一緒になればいいんですの、だから……一緒に行って、そこでお話しましょう?』

 

ペルゼイン・リヒカイトが地面に突き刺した日本刀の切っ先から、墨汁のような闇があふれ出しアルトアイゼン・ギーガ、そしてヴァイスリッター改の脚へと絡みついた。

 

『なっ!? し、システムダウンッ!? きゃあッ!?』

 

「エクセレンッ! くそ、アルト! 動いてくれッ!」

 

システムダウンを起こし墜落するヴァイスリッター改を見て、システムダウンギリギリのアルトが急加速し、墜落してくるヴァイスリッター改を受け止めると同時にその機能を停止した。

 

『さぁ、行きましょう……そこでずーっとお話しましょう』

 

「どこへだ、俺達をどこへ連れて行くつもりだ!」

 

闇がどんどん広がり、脚から腰、腕、肩とどんどん巻きついていく。範囲を広げ、底なし沼に足を踏み入れたかのようにアルトアイゼン・ギーガ、ヴァイスリッター改の姿が沈み始める。

 

『キョウスケ中尉! 各員キョウスケ中尉達の救出を急げッ!』

 

『邪魔はさせませんのよ? だってキョウスケ達から来てくれたのなら、私の意見に同意してくれたという事ですの』

 

クノッヘン達が身体をバラバラにして壁のようになり、キョウスケ達を覆い隠していく……。

 

『誰でもいい! 封鎖させるなッ!』

 

『リューネッ!』

 

『判ってるッ!!』

 

バリケードのように取り囲んでいくのを見て足の速いサイバスターやヴァルシオーネ、そしてアステリオンが向かうがバラバラになったクノッヘンはその状態でも攻撃が可能なのか、爪を飛ばし、肋骨を飛ばし近づけさせまいと攻撃を続ける。

 

「俺達をどこへ連れて行くつもりだ」

 

『新しい宇宙……始まりの地に眠る進化の光を手にし……新たな進化を……」

 

「またそれか、進化の光……お前達はゲッター線に何を期待している。あれはただのエネルギーの筈だ」

 

『それは一面に過ぎませんの……進化の光の真髄は……これから判りますのよ』

 

闇はどんどん深くなり、アルトアイゼン・ギーガの姿が腰まで沈み、ヴァイスリッター改は膝まで飲み込まれていた。

 

「何をするつもりかは知らんが、俺達はお前の所に行くつもりもお前達の言う通りに動くつもりも無い」

 

パスコードを入力し、アンロックを解除したキョウスケは拳を振り上げ紅いボタンに拳を叩きつけようとする。

 

『はい……動いていただきますの……』

 

アルフィミィの言葉と共にキョウスケとエクセレンを激しい頭痛が襲った。

 

「うっぐうッ! あ、頭が……」

 

『う……な、何これッ』

 

それは念動力者が持つ念の共鳴現象に酷似していた。頭の中をかき回されるような激痛にエクセレンとキョウスケは揃って呻き声を上げる。

 

『おいたは駄目ですのよ? さぁ……行きましょう、エクセレン、キョウスケ……』

 

装甲をパージし、拘束から逃れようとしたキョウスケとエクセレンの動きを封じる為に念による干渉をしながら、アルフィミィは嬉しくて仕方ないと言う様子で笑う。

 

「ぐっ……ま、不味い……」

 

『しゃ、洒落にならないわよ……』

 

連れて行かれれば自分達がどうなるか等と判りきっている。アクセルが危惧していたベーオウルフ――アインストと化してしまうと判り、何とか拘束から逃れようとするが、手足は重りがついたように動かず、小刻みに痙攣を繰り返すだけだ。闇がコックピットのモニターを覆い隠し、頭部にまで伸びて来た所でそこに割り込む物の姿があった。

 

『……舞えッ! 幽幻の不死鳥よッ!!! ぐうっ!?』

 

翼をクノッヘンに切り落とされながらもファントムフェニックスを放ったアンジュルグのラミアの渾身の一撃が光り輝いているペルゼイン・リヒカイトの額の宝玉を貫いた。

 

『うっ……!? し、しまったですの……』

 

宝玉が砕けると同時に闇は嘘のように消え去り、アルトアイゼン・ギーガ、ヴァイスリッター改のコントロールがキョウスケ達の下に戻ってくる。

 

「ラミア、助かったぞ」

 

『ありがとラミアちゃん』

 

『いえ、間に合って良かったです……』

 

アンジュルグのコックピットの中でラミアは心の底からそう思っていた。キョウスケがベーオウルフになることも、エクセレンがそうなる事も嫌で、それこそコードATAを使い自分もろとも2人を殺す事が1番正しい事だと判っていたのに、ラミアはファントムフェニックスによるペルゼイン・リヒカイトへの攻撃を選んだ。

 

(これでいい、これでよかったんだ)

 

シャドウミラーのW-17としては間違っている。だがATXチームのラミアとしては正しい選択をしたとラミアは感じていたが、状況は決して良くなってはいない。

 

『……やっぱり殺して連れて帰らないと駄目ですの』

 

クノッヘンの体によって作られたバリケードの中に閉じ込められたキョウスケ、エクセレン、ラミアに怒りに燃える真紅の瞳を向けたペルゼイン・リヒカイトが立ち塞がる。

 

「あいつを倒してこの場から脱出する。エクセレン、ラミア、支援を頼むぞ」

 

『りょーかい、ラミアちゃんはもう飛べないわよね、無茶しちゃ駄目よ』

 

『了解でごんす。この状態で出来る最善の援護をしちゃったりします』

 

「行くぞ、俺達はこんな所で終われない」

 

『いいえ、終わりませんのよ、新しいキョウスケ達に変って貰う、ただそれだけですのよ!!』

 

弾丸のような勢いで切り込んでくるペルゼイン・リヒカイトとアルトアイゼン・ギーガのリボルビングバンカーがぶつかり合い火花を散らす。

 

「悪いな、俺は今の俺が気に入っているんだ。別の俺になんぞなるつもりはない」

 

『嫌よ嫌よも好きの内と言いますの』

 

「いいや、お断りだッ!!」

 

アルトアイゼン・ギーガの前蹴りがペルゼイン・リヒカイトの腹にめり込みその巨体を後方に向かって蹴り飛ばす。

 

『うっ、女の腹を蹴るなんて酷いですのよ』

 

「ならこれでおあいこだな、突然攫おうとしたお前も似たようなものだ」

 

口調は互いに気軽いが、異様な緊張感を伴ったまま赤と紅の閃光が何度もぶつかり合い、凄まじい火花を散らす。

 

『貰いましたの!』

 

「ちいっ!」

 

速度は同じでも力に大きな差があり、ペルゼイン・リヒカイトの拳がアルトアイゼン・ギーガを捉え、動きを止めた所に大上段に振りかぶった日本刀が振り下ろされようとした瞬間、閃光がペルゼイン・リヒカイトを穿った。

 

『うっッ!? どうして邪魔をするんですの……ッ!?』

 

『そうはさせないわよッ!』

 

『シャドウランサーッ!!』

 

ビームがペルゼイン・リヒカイトの右拳だけを捕らえ、顔の回りに展開されたシャドウランサーが立て続けにペルゼイン・リヒカイトを襲い、たららを踏んでペルゼイン・リヒカイトが後退した瞬間にアルトアイゼン・ギーガがその懐に飛び込んだ。

 

「悪いな、俺は1人じゃないんでなッ!!」

 

強烈な炸裂音と共にペルゼイン・リヒカイトが吹き飛び、クノッヘンで出来たバリケードに背中から追突し崩れ落ちる。

 

『やったかしら?』

 

「いや、自分から飛んだ。完全には極まっていない……恐らくこれからが本番だ」

 

オーラを纏いながら立ち上がるペルゼイン・リヒカイトの圧力は爆発的に増しており、数の有利もその両肩の鬼面が外れ、人型になった事で互角となった。

 

「ここからが本番だ。気を緩めるなよ」

 

少しでも油断すればキョウスケ達はアインストにされる。その異様な緊張感の中、ペルゼイン・リヒカイトとの戦いはより激しさを増していくのだった……。

 

 

 

 

ペルゼイン・リヒカイトが消えたことで統率されていたアインストの動きは少しずつ乱れが現れ、強くはあるが連携をしてこないアインストを前に勝てるかもしれないと言う希望が芽生え、そしてその数がリュウセイ達よりも少なくなった時――それらは現れた。

 

「なっ!? う、嘘だろッ!?」

 

『……馬鹿な……こんな事があると言うのか……ッ』

 

突如現れた2つの熱源反応――距離が近かったという事もあり、R-1のリュウセイ、そしてR-2・パワードのライが真っ先にその姿を確認し、驚愕にその顔を歪めた。ビルの上に陣取り、R-1、R-2・パワードを見下ろしている者――それらもまたR-1、そしてR-2・パワード……いや、正しくはアインスト・アイゼンギーガの奇襲を受け、受けた損傷を修復し単騎では無理と判断し味方を呼び寄せたメタルビースト・エルアインス、そしてエルツヴァイ・パワードの姿だった。

 

『あいつらまたッ! リュウセイ! ライ! 気をつけろ! そいつらはかなり強いぞッ!』

 

『能力は殆ど同じだけど化け物の特性が加わってる! 気をつけるんだよ!』

 

ゲミュート、アイゼンギーガと戦っているマサキとリューネから気をつけろという声がR-1、R-2・パワードのコックピットに響き、リュウセイが操縦桿を握り締めた瞬間だった。メタルビースト・エルアインス、ツヴァイの姿は目の前から消えていた。

 

「き、消えた!? ライ、あいつらはどこにっ!?」

 

『わ、判らない! 俺はしっかりとその姿を確認してい……リュウセイ! 前だッ!!!』

 

姿を確認していたと言うライの言葉に咄嗟にR-1を操り、飛び退かせたリュウセイ。そして先ほどまでR-1がいた所にはエルアインスの拳だけが突き刺さっており、その拳は糸状に解けビルの残骸の中に消えていった。

 

「まさかよ……あの糸が見たいのが……さっきのやつなのかッ!?」

 

『そうとしかおもえんだろう! リュウセイ、互いに背中を庇うぞッ!』

 

「お、おうッ!」

 

R-1とR-2・パワードが背中合わせに立ち、メタルビースト・エルアインス、ツヴァイの姿を必死に探すが、その姿は発見できず、しかし強烈な殺気だけがリュウセイとライに向かって叩きつけられていた。

 

『リュウセイ、探せないか?』

 

「今やってる! でも駄目だ、あいつらの気配がつかめな……うあッ!?」

 

『リュウセイ!? うぐっ!?』

 

念動力を用いてもその姿を完全に補足出来ないと言うリュウセイの悲鳴が木霊し、ライが振り返った瞬間Rー2・パワードもまた何かに殴り飛ばされていた。

 

『……チャクラムのつもりか、なんて悪趣味なんだ』

 

インベーダーの頭部をビームチャクラムのように操るメタルビースト・エルツヴァイに向かって吐き捨てるようにライが呟く隣では、チェーンソーのように高速で回転する刃を持ったトンファーを振るうメタルビースト・エルアインスとR-1の姿が何度も交差していた。

 

「チェーンソー・トンファー!? アルブレードの試作武装の1つじゃねえかッ! くそ、なんでお前がそれを使えるんだッ!!」

 

【シャアッ!!】

 

リュウセイの言葉に威嚇するような……いや、実際威嚇しているのだろう、唸り声を上げ飛び掛ってくるメタルビースト・エルアインスのチェーンソー・トンファーとR-1のT-LINKナックルがぶつかり合い、次の瞬間にはR-1が殴り飛ばされていた。

 

「うっぐ……」

 

【シャアア!!】

 

倒れたR-1にその牙を突きたてようとメタルビースト・エルアインスのフェイスガードが外れ、鋭い牙と伸縮自在の舌が露になった瞬間、強烈な放電音とそれに続くように重いガトリングの発射音が響き渡った。

 

『大丈夫ッすか!?』

 

『リュウセイ、下がるわよッ!』

 

「あ、アラド。隊長、すまねえッ!」

 

スタンアサルトカノンとガトリング砲によってメタルビースト・エルアインス、エルツヴァイが動きを止めている間にリュウセイは後方へと下がり、ビルトビルガー、ゲシュペンスト・MK-Ⅱ・タイプRD、そしてR-2・パワードと共にメタルビーストへと視線を向ける。

 

【シャアアアーッ!!!】

 

【キシャアアアーーッ!!!】

 

「マジモンの化け物だな、宇宙で見た奴よりもやべえ」

 

ガトリング砲で穴だらけにされていた装甲が黒いゴムのようなインベーダーの細胞で覆われ、形が修復されると色が付き、金属的な光沢を持つのを見てリュウセイが思わずそう呟いた。

 

『あれ、マジでなんなんっすか……』

 

これが2回目のインベーダーとの邂逅であるアラドが教えてくれと言わんばかりに震えた声で尋ねる。

 

『失われた時代を作り出した化け物よ。気をつけなさい、喰われたらアラド、貴方もあの仲間入りよ』

 

『……うっす』

 

涎をたらし、伸縮自在の舌を振り回すメタルビーストを見て、喰われるというのを想像したのだろう。アラドが引き攣った声でそう返事を返す。

 

「隊長、T-LINKシステムのセーフティの解除を頼むぜ」

 

『……リュウセイ、それは危険だわ』

 

「それでもだ。今のままの俺達じゃ勝てねえ」

 

通常兵器では余りにも効果が薄すぎる。念動力ならば一定の効果を発揮する事は判っており、リュウセイはヴィレッタにセーフティの解除を申し出る。

 

『隊長、俺からもお願いします。今のリュウセイならば問題ありません』

 

ライからの進言も重なり、ヴィレッタは渋々ながらセーフティを解除する。

 

『リュウセイ、言っておくけど龍虎王が合流したら、もう1度セーフティを掛けるわよ』

 

「了解ッ! お前らの好きにはさせねえぞ化け物共ッ!」

 

まずは挨拶代わりだと言わんばかりに放たれた念動波とメタルビースト・エルアインスの放った念動力波がぶつかり合い凄まじい火花を散らす。

 

『見ていて気分のいい物じゃない、ここで倒させて貰うぞッ!』

 

『いっけえッ!』

 

【シャアアーッ!!】

 

メタルビースト・エルツヴァイの唸り声と、自分の愛機を歪められた姿に変えられたことに静かに怒りを燃やすライと、スタンアサルトカノンを連射し、メタルビースト・ツヴァイの動きを封じ、ライが戦いやすいようにと立ち回る。

 

『リュウセイ。前に出すぎないこと、相手の出方が判らないわ。それに今の状態で全力で念動力を使うのは駄目よ』

 

「了解! おらッ!!!」

 

【キシャアアアーッ!!】

 

リュウセイの雄叫びとメタルビースト・エルアインスの雄叫びが重なる中、ヴィレッタは妙な胸騒ぎを感じていた。

 

(これは全然違う)

 

宇宙で見たメタルビーストはインベーダーの要素が強かったが、今目の前にいるメタルビーストはR-1やR-2をベースにしたインベーダーのように見えていた。同じメタルビーストでも獣的な動きをするメタルビーストと、PTの能力を使うメタルビーストではどちらが厄介ななんて言うまでも無いだろう。

 

(どうしてこんなに差があるの……まさか)

 

脳裏を過ぎった可能性――それは長い時間を掛けてインベーダーがR-1とR-2の特性を学んだのではないか? と言う物だった。長い間寄生していれば、それだけ深く理解をする。そうなればR-1やR-2の能力にインベーダーとして能力を加える事も不可能ではない……。

 

(模範しているんじゃない、あれは本当に長い時間掛けてその能力を学んだとしたのなら……ッ)

 

考えられる可能性――それは何度もヴィレッタ達の前に立ち塞がったゲシュペンスト・MK-Ⅱ、そしてマスタッシュマン――いやソウルゲインとアクセルのように未来からこの時間軸に現れたインベーダーだとしたら……。

 

(R-3に該当する個体、そしてSRX……ッ!)

 

メタルビーストがSRXの力までも手にしているのではないかという可能性に辿り着いたヴィレッタの背中に冷たい汗が流れるのだった……。

 

 

 

 

ハガネのブリッジで戦況を分析していたダイテツはメタルビースト・エルアインス、エルツヴァイを見て眉を細めた。

 

「大尉、成層圏に向けての熱源検索を行なえ」

 

「は……はッ?」

 

突然の成層圏への熱源検索を行なえと命じられ、テツヤは思わず間抜けな返事を返す。

 

「艦長、それはどういう……?」

 

「R-1とR-2に酷似したメタルビーストが出現した。ならばR-3に該当するメタルビーストも存在する可能性が極めて高い、成層圏からの超距離射程の狙撃に備える必要がある」

 

R-3は指揮官機および支援を主にしているが、その武装の多くは長距離射程の物であり、MAPWも搭載している。その力を持つメタルビーストならば、同じ事が出来ると考えて間違いない。

 

「アインストとインベーダーは敵対関係にある。ワシらもろともという可能性もあるのだ」

 

「りょ、了解です! 捜索作業を始めます」

 

ダイテツの意図を理解し、成層圏近くの熱源検索を命じるテツヤを見ながら、ダイテツはモニターの光景を見て小さく呻いた。

 

(百鬼帝国に加えて、インベーダーにアインスト……)

 

百鬼帝国だけでも恐ろしい脅威なのに、1度地球を滅ぼしかけた異形に、未来で地球を支配している化け物――状況は最悪と言っても良いだろう。アインストの作り上げた防壁の中にアルトアイゼン・ギーガ、ヴァイスリッター改、そしてアンジュルグの3体のみ、それに対する敵は上位アインストのペルゼイン・リヒカイト……正直3体で相手をするには厳しすぎる相手だ。

 

【シャアアッ!!!】

 

『うぉおおおおッ!! T-LINKソードッ!!!』

 

メタルビースト・エルアインスとR-1の戦いは互いに念動力を用いた戦いで、空中に着地し、踏ん張る場所もないところで力を込めて地面を蹴り、拳あるいは足を用い、翡翠と紅の念動力を纏った手足を用いた超高速戦闘による白兵戦を続けていた。

 

「あのメタルビーストからは念動力反応が感知されていますッ!」

 

「あのようなインベーダーまで存在すると言うのかッ」

 

オペレーターからの報告を聞いてダイテツは唇を噛み締めた。再生能力に加え、念動力による変幻自在の戦闘と防御を併せ持つメタルビースト・エルアインスは無尽蔵のスタミナで攻め立てるが、生身であるリュウセイはいつまでもその勢いには付いていけない。

 

『はぁ……はぁ……ま、負けるかよッ!』

 

『リュウセイ!少し休んでいなさい! 私が相手をするわッ!』

 

『す、すまねえ隊長!』

 

明らかに消耗しているリュウセイを庇い、ヴィレッタの駆るゲシュペンスト・MK-Ⅱ・タイプRDがメタルビースト・エルアインスとの戦いに挑む。

 

『くそ……どうしてあいつは弾切れも、エネルギー切れもしないんだ……』

 

『インベーダーの再生能力かッ!』

 

【シャアアアーッ!!】

 

インベーダーの再生能力でエネルギーを回復させ、瓦礫を取り込み弾薬を作り出すメタルビースト・エルツヴァイを前にR-2・パワードとビルトビルガーは弾薬、そしてエネルギー切れを起そうとしていた。しかし苦戦しているのはリュウセイ達だけではなく、全員が全員苦戦を強いられていた。

 

『なろおッ!! 舐めんなあッ!!!』

 

【!!!】

 

ジガンスクード・ドゥロとクノッヘンとグラートの残骸を取り込み、巨大化したゲミュートがその巨大な拳を何度も交差させる。

 

『下手に倒したら取り込んで巨大化するならこいつはどうだッ!! ファイナルビームッ!!!』

 

【【【!!!】】】

 

グラート達がスクラムを組み、ファイナルビームを文字どおり己を盾にして防ぎ、崩壊すると同時にその残骸を取り込み巨大化したクノッヘンがグルンガストへと爪を振り下ろす。

 

『ぐあっ!? くそったれッ!! ブーストナックルッ!!!』

 

【!?!?】

 

コアを砕かれ崩れ落ちるクノッヘンだが、完全に消え去る前にグラートが触手を伸ばし、残骸を取り込み爪を持った触手を生やす。

 

『いたちごっこにも程があるぜッ!!』

 

下手に倒せば取り込んで巨大化し、そしてコアを砕いてもそのほんの僅かな残骸を取り込み攻撃パターンを変えるアインスト……その攻撃は変幻自在であり、攻撃パターンが一瞬一瞬で変わるのは流石のイルム達も劣勢へと追い込まれていた。

 

『くそがッ! 倒しても倒しても切がねぇッ!! ラッセルをおいて来たのは失敗だったぜッ!』

 

伊豆基地への襲撃に備えて少数の破壊力に特化した機体で来たのは失敗だったとカチーナが声を荒げ、飛び掛ってきた身体の半身がクノッヘン、残り半分がグラートという異形のアインストのコアにライトニングステークを叩き込みコアを殴り砕いた。

 

『シロ、クロッ! おらあッ!!』

 

ハイファミリアを射出し、ディスカッターでアインストに切りかかったサイバスターはそのままの勢いで進路を塞いでいるアインストを強引に後方へと押し込む。

 

『ギリアム少佐! リューネ! 頼んだッ!』

 

僅かな隙間をゲシュペンスト・リバイブ(S)とヴァルシオーネがクノッヘンのドームの上空を取る。

 

『リューネ、合わせろよ。これで駄目なら後はハガネの主砲しかない』

 

『判ってるよ! ギリアム少佐ッ!』

 

ウィングを展開し、ジェネレーターと直結させたメガバスターキャノンを構えるゲシュペンスト・リバイブ(S)そして翼を広げ、赤と青の球体状のエネルギーを両手に展開するヴァルシオーネ。

 

『ターゲットロック、メガバスターキャノン発射ッ!!!』

 

『クロスマッシャァアアアーッ!!!』

 

ハガネの主砲の次に強力なメガバスターキャノンとクロスマッシャーが同時にクノッヘンのドームに命中する。

 

『っ駄目かッ!?』

 

『どれだけ硬いんだッ!』

 

しかし圧倒的な破壊力を秘めた一撃もクノッヘンのドームを破壊するには及ばず、損傷箇所も見る見る間に修復される。

 

「大尉、主砲の照準を合わせろ。今度は本艦とゲシュペンスト・リバイブ、ヴァルシオーネと共にあのドームを破壊する」

 

「了……熱源感知ッ! 超上空からミサイルが多数接近中ッ!!」

 

「やはり居たか! 各員に警告を急げッ!! E-フィールド全力展開急げッ!!!」

 

上空から降り注いだミサイルの雨はアインストとそしてハガネの機体に向かって降り注いだ。モニターには成層圏に浮遊しているメタルビースト・エルドライの姿がしっかりと映し出されていた。だがそれは地上からは攻撃が不可能な、それこそインベーダーに寄生されたメタルビーストだからその場にいる事が出来る超高高度だった。

 

「被害は!?」

 

「損傷は軽微です! しかしジャミング等で照準装置がまともに機能しません!」

 

「くっ! 己、化け物の癖に知恵をつけおって!」

 

直接戦うのではなくジャミングで射撃武器を殺しに来たエルドライに思わずダイテツでさえも悪態を付いた。

 

『きゃあっ!?』

 

『ぐうっ! まさか……こんな事がッ!?』

 

ミサイルで破壊されたアインスト達がゲミュートを核に融合し、巨大な新型アインストへと変貌し、龍虎王をその巨大な口のような拳で殴り飛ばす。

 

【……アア、アアアアッ!!】

 

嘆きの声を上げながら動く巨大アインストはその身体を崩壊させ、一歩動く度に全身に露出させているコアが落ち砕け散っていく……それは誰が見ても命を削った合体であり、長くは存在できないだろうがあの巨体では数分暴れるだけでも致命的な被害をもたらしてくる事は容易に想像できた。

 

「全砲門開け! イルムガルト中尉、タスク少尉、カチーナ中尉を足止めしているアインストの注意をこちらへ集める! 龍虎王と連携し、巨大アインストと対峙する様に指示を出せ!」

 

「りょ、了解ッ!」

 

状況は苦しいがシロガネを、そして武蔵に救援を求めるという事をダイテツは選択しなかった。ここで武蔵に頼っていては何も変らない、自分達だけでこの状況を打破しなければL5戦役の時と何も変らない、直接口にする者は誰もいなかったが、誰もがそれを考え、そして自分達だけでこの状況を潜り抜ける為に、助けられるのではない、共に戦う為に絶望的な戦いを前にしても決して心折れる事無く闘志を燃やしているのだった……。

 

 

135話 暴虐の超機人/闇からの呼び声 その10へ続く

 

 




敗北条件

味方機の撃墜

勝利条件

ペルゼイン・リヒカイトのHPを80%以下にする。アインスト・キメラのHPを50%以下にする。メタルビースト・エルアインス、エルツヴァイのいずれかのHPを60%以下にする。この3つの条件の内2つを満たす事。


リヒカイトは当然はHP???、キメラは毎ターンHPが減りますがバリアもち、エルアインスとツヴァイはHP回復・EN回復・弾薬回復とクソ使用

これがもしゲームに出てきたらコントローラーを投げる確信がある、そんな難易度で考えて見ました。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
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