進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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135話 暴虐の超機人/闇からの呼び声 その10

135話 暴虐の超機人/闇からの呼び声 その10

 

乾いた音を立ててリボルビングバンカーの薬莢がアルトアイゼン・ギーガの右腕から排出される。片膝を付いた状態のアルトアイゼン・ギーガのコックピットからペルゼイン・リヒカイトに視線を向けたキョウスケは忌々しそうな表情を浮かべた。

 

「化け物め」

 

マリオンとラルトスの作ったギーガユニットの強度はかなり高く、それこそL5戦役でこれを使えていれば量産型G軍団など敵ではないとまで言えるレベルにアルトアイゼンは強化されていた……だがそれよりもペルゼイン・リヒカイトの機体性能が高く、そしてアルフィミィの成長速度が早すぎた。

 

『まぁ酷いですのよ? 女の子に化け物なんて』

 

「ちいっ!!!」

 

光にしか見えぬペルゼイン・リヒカイトの攻撃を防ぎながらキョウスケは舌打ちをする。ペルゼイン・リヒカイトの刃はギーガユニットを深く切り裂き、素体でも言うべきアルトアイゼンの装甲が見えている箇所もある。

 

『キョウスケッ!!』

 

完全に差し込まれているのを見てヴァイスリッター改が援護射撃を行なうが、ペルゼイン・リヒカイトの両肩の鬼面から伸びた腕がオクスタンランチャー改のビームを切り払う。

 

『それはもう何度も見ましたのよ? もちろん、貴方も』

 

『うぐっ!?』

 

翼を失い飛行能力を失ったアンジュルグがオクスタンランチャーEモードに隠れて突撃して来たが、アルフィミィはそれも見えていると言わんばかりに笑い、その腕でアンジュルグの首を掴んでそのまま地面に叩きつける。

 

「ラミアッ!!」

 

最後のオーバーチャージ用の薬莢を排出し、T-ドットアレイにより爆発的な加速と破壊力を伴ったリボルビングバンカー・オーバーチャージによる、超高速による突撃を敢行したアルトアイゼン・ギーガだったが、その突撃はペルゼイン・リヒカイトの前で止められていた。

 

『キョウスケ、私がいるのに他の女の名前を呼ぶのはどうかと思いますのよ?』

 

「……馬鹿なッ!?」

 

リボルビング・バンカーの切っ先に自らの握る日本刀の切っ先をぶつけ完全に無力化する。ゼンガーであっても出来ないであろう絶技でアルトアイゼン・ギーガを止めたペルゼイン・リヒカイトはそのまま回し蹴りを叩き込みアルトアイゼン・ギーガとアンジュルグ同時に蹴り飛ばした。

 

「ぐうっ!?」

 

『うあッ!?』

 

『キョウスケ! ラミアちゃん!』

 

ペルゼイン・リヒカイトの追撃を防ぐべく、ヴァイスリッター改が援護に入る。Bモード、Eモードを駆使し、そして加速と減速を組み合わせ並みの相手ならば翻弄できる芸術的な動きを行なうエクセレンだったが、次の瞬間にはその顔は驚愕に染まる事になった。

 

『確かこうですの?』

 

ペルゼイン・リヒカイトの掌から生物的な意匠だが、間違いなくオクスタンランチャーを模したライフルが現れる。

 

『なっ!? う、嘘でしょッ!?』

 

『ハートを撃ち抜きますの♪』

 

アルフィミィの可愛らしい口調とは似てもにつかぬ凄まじい轟音と共に放たれた光線がアルトアイゼン・ギーガ達に向かって放たれる。

 

「下がれッ!」

 

強力なビームコートを搭載しているアルトアイゼン・ギーガが前に出ることで装甲の薄い、ヴァイスリッター改とアンジュルグは撃墜を免れたが、眩いまでの紅はビームの熱によって焼け焦げエクセレンとラミアの前には漆黒へと変わり果てたアルトアイゼン・ギーガの姿があった。

 

『キョウスケ! キョウスケ! 生きてる!? 返事をッ!』

 

「……ぐっ、ラルトスに……感謝……だな、まだ俺もアルトも生きてる……」

 

ボロボロになりながらもアルトアイゼン・ギーガはまだ生きていた。各部のあちこちがレッドアラートを灯し、背部のクレイモアは全部死んだが、それでもまだリボルビングバンカーも、両肩のクレイモアも生きていた。そしてまだ戦える、まで自分は死んでいないといわんばかりにエンジンが唸り声を上げる。

 

『大丈夫なのですか? キョウスケ中尉』

 

「ああ、ラドム博士とラルトスの最後の仕掛けが起動したようだ。こんなものまで仕込んでいたのか……あの2人は……いや、今だけはそれに感謝しよう」

 

獣のような唸り声を上げて、アルトアイゼン・ギーガの身体が再び紅く染まる。エンジンの高熱によって装甲が赤熱化する。

 

『ちょい、ちょいキョウスケ、それ大丈夫?』

 

明らかに尋常ではない熱を放つ様子を見て大丈夫か? と問いかけてくるエクセレンにキョウスケは淡々とした様子でモニターの文字を見て口を開いた。

 

「……タイマーによれば後2分だそうだ、エクセレン、ラミア後2分で決めるぞ。でなければアルトは吹っ飛ぶ」

 

『ちょっと何言ってるか判らないんだけど?』

 

『何を言っているでありますか?』

 

3分間だけのオーバーヒートモード。正式名称はまだないそれはマリオンがEOTを使わずに、それに匹敵するパワーを得る為にエンジンに細工をしたものだった。

 

「捨て身モードだそうだ、2分以内に解除しないとオーバーヒートで吹っ飛ぶ。その代りに機体性能は跳ね上がっている、2分で蹴りをつけるぞ」

 

『……ヴァイスちゃんじゃ、今のアルトちゃんには追いつけないわよ』

 

2分でペルゼイン・リヒカイトを倒す……それが可能なのはキョウスケとエクセレンのコンビネーションしかない、しかしアルトアイゼン・ギーガとヴァイスリッター改では基本性能が異なり、ランページゴーストは封印状態にあった。通常時でもそれなのに、今のアルトに追いつける訳がないとエクセレンが言うとキョウスケは小さく笑った。

 

「2人で追い付いて来い、時間がない。一気に決めるぞッ!!」

 

言うが早くペルゼイン・リヒカイトに紅い残像を残し突っ込んでいくアルトアイゼン・ギーガ。その姿を見てエクセレンは疲れたように溜め息を吐き、腰にマウントしてた予備兵装であるパルチザンランチャーをアンジュルグに投げ渡す。

 

『いや、エクセ姉様?』

 

『マニュアル制御で頑張ってね、行くわよッ!』

 

『え、待って、待ってください! 何を!? 私は何を頑張れば……くそ、やるしかないのかッ!!?』

 

翼を展開しアルトアイゼン・ギーガの後を追っていくヴァイスリッター改を見て、ラミアはアンジュルグにパルチザンランチャーを拾わせ、ペルゼイン・リヒカイトに向かっていくアルトアイゼン・ギーガとヴァイスリッター改を追いかけていくのだった……。

 

 

 

 

地響きを立てて全身に浮かぶ目を忙しなく動かしながらアインストの複合体である、アインスト・キメラはゆっくりと、しかし確実にハガネに向かって歩みを進める。

 

『うおらああッ!!!』

 

『ブーストナックルッ!!』

 

アインスト・キメラには劣るがそれでも巨大なグルンガストの放ったブーストナックルと、ジガンスクード・ドゥロのシーズナックルがその巨体にめり込み、そのままの勢いで肉片が吹っ飛ばされる。

 

『うえ、気持ち悪……ッ!?』

 

『そんなこと言ってる場合じゃねぇぞ、タスク。くそ、こんな化け物とどう戦えば良いんだよッ!?』

 

殴り飛ばされた肉片は空中で分裂し、クノッヘンとグラートへと変貌する。アインスト・キメラ同様、身体が崩壊しているがそれでもまだ攻撃を仕掛けてくる敵意が感じられた。

 

「ブリット君! 変わって! 虎龍王じゃ相性が悪すぎるわ!」

 

『クスハ、すまん! 頼む!』

 

虎龍王から龍虎王へと一瞬で変化し、龍虎王は指に挟んだ札をアインスト・キメラに向かって投げつける。

 

【――!!!!】

 

札から放たれた電撃にアインスト・キメラが苦悶の声を上げる。だがダメージは見た目よりも少ないのか、無数の触手と腕を龍虎王へと伸ばす。

 

「効いてない! 攻撃力が足りないのッ!?」

 

『龍虎王でも駄目だって言うのか!?』

 

打撃も駄目、遠隔攻撃も駄目。早く動きを止めなければと焦れば焦るほどに、アインスト・キメラの強さに余計に焦りが加速する。

 

『落ち着け! 巨体になってもアインストの弱点は同じだ!!』

 

『マニューバGAX-Ⅱッ! GOッ!!!!』

 

ゲシュペンスト・リバイブ(S)の放ったビームライフルとドリルのように螺旋回転しながら急降下したアステリオンのマシンキャノンがアインスト・キメラの背中についている赤いコアを次々と撃ちぬいた。

 

【【【ゴギャアアアアアアアアアーッ!?!?】】】

 

身を震わせ苦悶の叫びを上げるその姿は明らかに大きなダメージを受けている事は明かだった。

 

『そうか、巨大化しても弱点がコアっていう事は変わらない! クスハッ!』

 

「うんッ! 任せて龍虎王! 移山法! 神州霊山ッ!!!」

 

龍虎王の眼前に浮かんだ札の前で、龍虎王の両腕が動き、無地の札に赤い文字を刻みつける。

 

「移山召喚ッ!!」

 

空中から巨大な岩山が出現し、凄まじい勢いでアインスト・キメラに向かって急降下する。

 

『へ、あたしにおあつらえ向きじゃねえか』

 

『中尉、何するつもりっすか……』

 

『ビビってんじゃねぇ。あれが落ちたらあれをぶん殴って化け物にぶつけてやるんだよ!! クスハ、ブリット! ぶちかませッ!!』

 

「救急如律令ッ!!!」

 

剣指が振るわれ、急降下した岩山はアインスト・キメラの背中に落ち、肉を裂き、そしてコアを纏めて押し潰す。

 

【【【ゴガアアアアアアアアーッ!!!】】】

 

自分達の命であるコアを砕かれアインスト・キメラが再び身の毛がよだつような雄叫びを上げる。

 

『しゃあ! おらおらおらッ!!!』

 

砕けた岩の残骸にカチーナのゲシュペンスト・MK-Ⅲが拳を叩きつけ、それをミサイルのような勢いでコアに向かって殴り飛ばす。

 

『シロ! クロ! 頼んだぜ!』

 

『了解ニャッ!』

 

『いっくわよおッ!』

 

『それッ!! いっけえッ!!』

 

ハイファミリアを射出し、ハイファミリアで岩をコアへ向かって弾かせると共にカロリックミサイルでコアを的確に撃ちぬいて行くサイバスター。その隣ではヴァルシオーネがハイパービームキャノンを手にコアを破壊しながら、蹴りで岩をサッカーボールのように蹴り飛ばし、コアを再び破壊する。短時間で十数個のコアを破壊されたアインスト・キメラは雄叫びを上げて、その姿を更に変化させる。

 

『どうやら奴さんは随分とゲッターロボにご執心みたいだな』

 

『だとしてもあんな偽物なら怖くもなんともないっすけどねッ!』

 

体外に露出していたコアを全て体内に取り込み、腰の部分――いや、ゲッタービームの発射口の辺りにコアを集め、旧ゲッターロボを模した姿に変化するアインスト・キメラ。だがその姿に恐怖を抱く者はいなかった、本物の、そしてもっと強いゲッターロボを知っているのだ。今までも化け物の姿よりも、全然恐ろしくないと笑う。

 

『余裕が出来たのは何よりだが、キョウスケ達の救出は終わっていない! この偽物のゲッターロボを倒し、あのドームを破壊するぞッ!』

 

自らが率先し切り込みながら指示を飛ばすギリアムに返事を返し、クスハ達もアインスト・キメラへと攻撃を始める。今もなお、アインスト・クノッヘンで作られたドームの中からは爆発音が響き、キョウスケ達が戦っている事は明らか、少しでも早くキョウスケ達を助ける為に動き出すのだった……。

 

 

 

 

ビルの上に隠れ戦闘を見つめているラリアー、デスピニス、ティスの3人は揃ってうーんっと不満げな声を出していた。

 

「……なんか……あ、あんまり強くないですね……」

 

「確かに……何でなんでしょう?」

 

「おっかしいなあ。何でだろ?」

 

メタルビースト・エルアインス、ツヴァイ、ドライの3体は紛れも無く強い存在である事は間違い無いのだが、思ったよりも強くないというのがデスピニス達の抱いた感想だった。

 

「やっぱり合体しないと駄目かな? どうする? 合体させてみる?」

 

「……そ、それはまだ早いってデュミナス様が……」

 

「そうだよ、ティス。SRXが出て来ないと駄目だって言ってたじゃないか」

 

ラリアーとデスピニスの言葉にティスはむうっと呻いた。

 

「でもさ、R-3いないじゃん」

 

「……だ、だから駄目って事じゃないんですか?」

 

「今回は試運転だから程ほどで良いと思うよ」

 

メタルビースト・エルアインス、ツヴァイ、ドライは長い時間を掛けてデュミナスの支配下に落ちた。それを確かめるための戦いであり、ここで全てを終わらせる必要はないとラリアーとデスピニスは口にする。

 

「弱かったらデュミナス様の役に立たないじゃん、あたい達もまだ戦える段階じゃないし」

 

「……そ、それはそうですけど……」

 

「まだ動くべきときじゃないんだよ。多分……」

 

幼い容姿だが、その姿には幼さゆえの狂気が見え隠れしていた。

 

「んーじゃあ、もうちょっとだけ様子を見てみようか」

 

「……うん、それがいいと思う。それに……あんまりやり過ぎると……」

 

「レトゥーラがますます僕達に反発するよ」

 

「あいつか、あたい、あんまりあいつ好きじゃないんだけどなあ」

 

ティス達が敬愛する想像主であるデュミナスが目に掛けるレトゥーラが面白くないとティスが言うと、ラリアーとデスピニスも少し俯き、その意見に同意した。

 

「だ、だけど……今は仲間です」

 

「うん、今は仲間だから信じてみようよ」

 

「はいはいっと、でもあたいは嫌いだよ。あいつ」

 

ティス達にとってはデュミナスが全て、だがレトゥーラにとってはデュミナス等どうでもいい存在と言っても過言ではない、だからこそティス達はレトゥーラが好きではなかった。

 

「それで、どうする? ティス。これ以上は目新しい物はないと思うけど……?」

 

「……か、帰りませんか?」

 

「んーちょっと待って、ここでさ、R-1とかにさ、恨みでも抱いてもらおうかなって思うのさ」

 

コントロールされているとは言えメタルビーストである事に変わりはない。その獰猛な闘争本能と戦闘意欲、そして食欲は健在だ。だがコントロールされている事で些か闘争本能に翳りが見える。それ故にティスはにやりと笑い、メタルビースト・エルアインスに飛びかかるR-1を見ながら指を小さく鳴らすのだった……。

 

 

 

 

 

瞬発力、攻撃力でR-1はメタルビースト・エルアインスに劣っていた。実際はエルアインスとR-1ではR-1に軍配が上がるが、メタルビースト化により獣の柔軟性、そしてインベーダーの再生能力、そして形態変化を持つようになりメタルビースト・エルアインスはR-1よりも強力な存在となっていた。

 

「隊長! 支援を頼むぜッ!」

 

『リュウセイ! リュウセイ! 待ちなさいッ!』

 

ヴィレッタの静止を振り切ってリュウセイはメタルビースト・エルアインスへとR-1を走らせた。持久戦でも、短期決戦でも勝てないという事はリュウセイでも判っていた。だがそれでもなお、リュウセイはメタルビースト・エルアインスへと向かう事を選んだ。その理由はリュウセイだけが判っていた……。

 

(こいつをこのままにしておけないッ!)

 

【シャアッ!!!】

 

両掌に赤黒い念動力の球体を作り出しそれを撃ち出して来るメタルビースト・エルアインスに対して、リュウセイはR-1の左手を突き出す。

 

「ぐうっ!」

 

念動フィールドによって威力はいくらか軽減されたが、それでも凄まじい衝撃がR-1へと走った。しかしリュウセイは歯を食いしばり、右手を突き出しながら叫んだ。

 

「くらえッ! T-LINKソードッ!!!」

 

【ギャアアアアッ!?】

 

開かれた右手から放たれたTーLINKソードがメタルビースト・エルアインスの左肩に突き刺さると同時に、左腕を肩から斬り飛ばす。

 

「おおおおッ!!!」

 

例えメタルビーストであっても片腕を失えばバランスを失う、その隙をリュウセイは見逃さず一気に畳み掛けるべくR-1を走らせる。

 

「でやあッ!!!」

 

【ギガアッ!?】

 

左右のT-LINKナックルによる連打。それはメタルビースト・エルアインスの装甲を穿ち、芯であるインベーダーにダメージを響かせる。

 

(くそッ! 倒せる気がしねえッ!)

 

念動力を通じてインベーダーにどれだけのダメージを与えているかが伝わってくるが、それでも倒すにはまるで程遠いのがひしひしと伝わってくる。インベーダーの再生能力もそうだが、何よりもインベーダーの念動力への適合が早すぎるのだ。

 

【シャアアッ!】

 

金属質な音が響きT-LINKナックルが防がれ、装甲までは回復していない為インベーダーのゴムのような身体の腕が左腕から伸び、R-1へと迫る。

 

「くそッ! ならこいつはどうだッ!!!」

 

【ゴガアッ!?】

 

突き出した両腕からメタルビースト・エルアインスが行なったように念動力を放つR-1。胴体に風穴が開き、がっくりと糸が切れた人形のように動きを止めるメタルビースト・エルアインスからバク転で距離を取り、そのままゲシュペンスト・MK-Ⅱ・タイプRDの元まで後退するR-1。

 

「見ただろ、隊長。このままじゃ手に負えなくなる」

 

『それは判るわ、でも倒しきるには火力が足りないわ』

 

恐るべき速度で念動力を使いこなしているメタルビースト・エルアインス。このままにしておけば、リュウセイに匹敵する念動力をメタルビースト・エルアインスが手にするのは時間の問題だ、それ故にリュウセイは焦ってメタルビースト・エルアインスへと攻撃を仕掛けたのだ。

 

『ライが合流してくれればまだ機会はあるけど……』

 

「それも厳しいよな」

 

メタルビースト・エルツヴァイに対するR-2・パワードとビルトビルガーのタッグはリュウセイとヴィレッタ以上に苦戦を強いられていた。

 

「アラド! まだアサルトスタンカノンは使えるか!?」

 

『で、電圧的に後2回……最悪後1回っすッ!』

 

アラドの半分悲鳴のような声を聞いてライは顔を歪める。

 

「くそ、万事休すか……ッ」

 

瓦礫から弾丸を作り出し、インベーダーの体内電気でENをチャージするメタルビースト・エルツヴァイに弾薬切れ、エネルギー切れという射撃機にありがちな弱点はない、それに対してR-2・パワード、ビルトビルガーは高性能のエンジンとトロニウムエンジンを搭載しているが、トロニウムエンジンはSRXでの使用が前提なのでR-2・パワードの状態ではその恩恵は微々たるもので、ビルトビルガーに至ってはアサルトスタンカノンを連射しすぎてエネルギーが枯渇しかけていた。

 

『プロペラントタンクを積んで来るんだったッ! すみません』

 

「いや、こんな状態になるなんて誰も思っていない。アラドが悪いわけではない」

 

今回の目的はエクセレンを追いかけてくることであり、緊急出撃だったので予備弾装なども十分に装備出来ておらず持久戦を挑める状態ではなかった。

 

(どうする……火力が圧倒的に足りていない)

 

アサルトスタンカノンで麻痺させて、攻撃を加えてダメージを蓄積させて来たが、インベーダーの再生能力を前にすればそれは微々たる物で、ハイゾルランチャーの火力でもメタルビースト・エルツヴァイを倒すには攻撃力が足りない……それこそSRXを持ち出さなければ回復もさせずに倒すと言う事は不可能に近かった。

 

(これがインベーダー、かつて人類を滅ぼしかけた化け物ッ!)

 

これを知る旧西暦の政府が隠蔽しようとしたのも納得だ、余りにも強すぎる、そして余りにも人間の理解を超えている……だが泣き言は言ってられない、今出来ることをするだけだと、ライは残りの弾薬、エネルギー、後1回切る事が出来る切り札であるアサルトスタンカノンの切り所……頭を回転させ、勝利すべく戦術を考え始めた。

 

【ガガガガ……ギガ、ガガガガガガッ!?】

 

しかしそれは突如壊れた人形のように紫電を走らせ始めたメタルビースト・エルツヴァイの動きを見て中断させられた。

 

「なんだ……急にどうした?」

 

『罠っすか?』

 

「……いや、待てよ。確か……インベーダーはゲッター線がなければ生きていけない筈。そうかッ! ゲッター線が切れたのか!」

 

エネルギーと弾薬の他にインベーダーにはゲッター線が必要だ、突然現れたのは転移で現れたと考える事は出来る。どこから転移してきたかは定かでは無いが、出撃前に溜め込んでいたゲッター線を失ったと考えるには十分な状況となっていた。

 

「アラド! スタンカノンを使え! この好機で決めるッ!」

 

『了解っす!』

 

ビルトビルガーの放ったアサルトスタンカノンがメタルビースト・エルツヴァイに命中し、糸の切れた人形のようにがくがくと動くメタルビースト・エルツヴァイに向かってライはR-2・パワードを走らせる。

 

『近づいて大丈夫なんですかッ!?』

 

「遠くでは埒があかないッ! 至近距離でフルパワーで打ち込むッ!! アラドはそのまま支援射撃を続けろッ!!」

 

動きがおかしくとも、まだメタルビースト・エルツヴァイは攻撃を続けてきている。支援を行えとアラドに指示を出し、ホバーで距離を詰めるR-2・パワードのコックピットの中でライは計算を続け、収束ハイゾルランチャーの威力が最大になるポイントへと急行する。

 

「ターゲットロック……ハイゾルランチャーシュートッ!!!」

 

轟音と共にメタルビースト・エルツヴァイに向かって放たれた。動きが鈍くなっているメタルビースト・エルツヴァイがそれを避けれる訳が無く、ハイゾルランチャーの直撃を受けたメタルビースト・エルツヴァイは顔の右半分、そして胴体の7割を失い、その場に倒れると同時に転移で消え去った。

 

『き、消えた?』

 

「いや、違う。回収されたんだ……まさかあの個体は……ッ?」

 

余りにもタイミングが良すぎる。そして知恵のあるような動きも見せていた……あのメタルビーストは特別なのかという考えが頭を過ぎるが、今は思考している場合ではないとR-2・パワードを旋回させる。

 

「リュウセイ! 突っ込めッ!! ハイゾルランチャーシュートッ!!!」

 

『すまねえ! ライッ! 助かったぜッ!!』

 

『リュウセイ! これが最初で最後のチャンスよ、一撃で極めなさいッ!』

 

メタルビースト・エルツヴァイ同様、メタルビースト・エルアインスも動きが鈍くなっていたが、念動力でジャイアントリボルバーの弾丸を操り、R-1の動きを封じていた。しかしハイゾルランチャーによって銃弾が消失し、それに加えてゲシュペンスト・MK-Ⅱ・タイプRDの支援も得たR-1は一気にメタルビースト・エルアインスとの距離を詰め、跳躍しながら右拳を固く握り締める。

 

『T-LINKナッコォオオオオオッ!!!』

 

裂帛の気合と共に放たれたT-LINKナックルはメタルビースト・エルアインスの念動フィールドを突き破り、胸部と頭部を纏めて消し飛ばした。だがメタルビースト・エルアインスはエルツヴァイと同様崩れ落ちると同時に転移によってその場から消え去った。

 

「ふう……良く持ってくれた。R-2……」

 

『さ、流石にエネルギー切れだな、キョウスケ中尉達は大丈夫なのか』

 

システムダウンをしたコックピットの中で僅かな予備電力でモニターを再起動し、外を確認するリュウセイ達。その視界には崩れ落ちるアインスト・キメラとアインスト・クノッヘンで出来たドームの姿があり、リュウセイ達はそっと安堵の溜め息を吐くのだった……。

 

 

 

 

ペルゼイン・リヒカイトのコックピットの中でアルフィミィは必死にアルトアイゼン・ギーガの姿を追おうとしていた。

 

「早すぎますの……ッ」

 

ペルゼイン・リヒカイト、そしてアルフィミィの反射速度をもってしてもなお、オーバーロードモードのアルトアイゼン・ギーガを追いきれなかった。

 

『悪いが時間がない、これで蹴りをつけさせて貰うぞッ! アルフィミィッ!!』

 

『はいはいはい、1人で突っ込まないのッ!!』

 

加速しながら放たれる六連装マシンカノンの弾雨とビームの光の雨がペルゼイン・リヒカイトへと迫る。

 

「甘いですの」

 

確かにその連携は見事と言える物だ。だがズレがある、実弾とビームでは速度に差がある。本来のアルトアイゼンとヴァイスリッターならその誤差を埋めて見せていた。だがアルトアイゼン・ギーガとヴァイスリッター改では機体性能にどうしても埋め難い差があり、それがペルゼイン・リヒカイトに攻撃を避ける隙を与えていた。弾雨の雨を抜けようとした瞬間、ペルゼイン・リヒカイトの額に3度ミラージュアローが突き刺さり、ペルゼイン・リヒカイトは足を止めた。

 

「う、うう!?」

 

『私を忘れたな? アインスト』

 

翼を失い、武装もその大半を失った。そして何よりもアルフィミィはラミアへ興味を持っていなかった……それがアルフィミィの脳裏からアンジュルグの存在を消し去っていた。

 

「きゃあッ!?」

 

数秒の足止め。それで十分だった、6連装マシンカノンと6連装ビームキャノンの誤差を埋め、攻撃を当てる時間にはその一瞬にも満たない時間で十分だった。

 

『獲ったッ!』

 

「さ、させませんのッ! うあっ!?」

 

実弾とビームの雨に装甲を削られ、その弾雨の中に紛れて突撃していたアルトアイゼン・ギーガの額のブレードが赤熱化しているのを見て、アルフィミィは咄嗟に手にしていたハウリングランチャーを盾にする。それによって直撃は間逃れたが破壊されたハウリングランチャーの爆発に飲まれて後方に向かって弾かれる。

 

「ううっ! 好きにはさせませんの……ライゴウエッ!!」

 

ペルゼイン・リヒカイトの機体各所の鬼面から光線が放たれ、これ以上アルトアイゼン・ギーガの追撃を受けまいとしたアルフィミィだが、射線軸にアルトアイゼン・ギーガの姿はなかった。

 

「い、いない!?」

 

『まだまだ甘いわねん! それッ!!!』

 

「きゃあっ!? え、エクセレン!? どうして!?」

 

アルトアイゼン・ギーガの居たはずの場所を高速で突っ切ってきてオクスタンランチャー改で殴りつけて来たヴァイスリッター改にアルフィミィは驚愕の声を上げた。

 

『どうしてって言われても私には判らないわね。キョウスケはどう思う?』

 

『お前には経験が足りない、クレイモアッ!!』

 

上空から降り注いで来たベアリング弾の雨が文字通り降り注ぎ、ペルゼイン・リヒカイトの全身の鬼面を容赦なく破壊する。

 

「う、ううう……何がどうして……わ、私は貴方達の考えを読んでいるのにッ!」

 

思念を読み取り攻撃を見切っていた事が、先手先手でアルトアイゼン・ギーガの攻撃を潰せていたカラクリだった。だが今は何も判らない、何も感じ取れない。

 

「どういうことですの!? こ、これでは何も考えていないとでも言うんですの」

 

『考える必要が無いのよ、キョウスケが何をしようとしているかなんて言葉にしなくても判るからね♪』

 

『そう言うことだ、以心伝心という奴だ』

 

『え、嘘。キョウスケがデレてる!?』

 

『……たまにはそういうときもある。極めるぞ、エクセレン!』

 

『OKッ!』

 

白と紅の流星が目まぐるしく立ち位置を変えながらペルゼイン・リヒカイトへと突撃してくる。

 

「読めないのならば、見てから攻撃すれば十分ですのッ!」

 

両肩と背中の鬼面から腕が生える。その腕には異形の日本刀が握られており、周囲を警戒するように動き回る。どこから攻撃されても対応してみせると活き込むアルフィミィを見て、アルトアイゼン・ギーガとヴァイスリッター改は真っ直ぐにペルゼイン・リヒカイトへと突撃してくる。

 

「正面から? 馬鹿にしているんですの!」

 

迎え撃ってみせると両腕と背中、肩の腕が日本刀の切っ先を向けた瞬間、アルトアイゼン・ギーガとヴァイスリッター改は弾かれたように左右に分かれ、その後から飛んできたビームが日本刀に命中する。勿論ビームを放ったのはアンジュルグであり、苦戦しながらマニュアルでパルチザンランチャーを操作し、フルパワーモードへと変形させそして放ったのだ。正直ロックオンも何もない、本当に目視確認で良く当てれたというべきで、むしろ命中したのが奇跡と言っても過言ではない。だがラミアはその奇跡を勝ち取り、ペルゼイン・リヒカイトに攻撃を命中させて見せたのだ。

 

『キョウスケ中尉! エクセ姉様! 後はお願いします!』

 

「うっ!? ま、前が……『貰ったぞ!』うあッ!?」

 

アンジュルグの攻撃が弓やエネルギーの槍だと思い込んでいた為に日本刀に当たり、反射したビームの光にアルフィミィは目を焼かれ、完全にキョウスケ達の気配を見失った。その直後に背中に走る凄まじい衝撃、リボルビングバンカーがペルゼイン・リヒカイトの背中を貫くと同時に炸裂しペルゼイン・リヒカイトを上空へと弾き飛ばす。

 

『返すわよ! キョウスケッ!』

 

オクスタンランチャー改のフルパワー射撃をゼロ距離から叩き込まれたアルフィミィは悲鳴を上げる事も出来ず、アルトアイゼン・ギーガの方へと吹き飛ばされる。

 

『良い距離だ、貰った!』

 

「か、かはっ!?」

 

リボルビングバンカーを突き刺され、強引に動きを止められたペルゼイン・リヒカイトのコックピットでアルフィミィは苦しそうな呻き声を上げる。だがそのままの状態で急上昇したアルトアイゼン・ギーガによって声を上げる事も出来ず、また息を吸う事も出来ないまま運ばれ、上空で待ち構えてたヴァイスリッター改の手にしたオクスタンランチャーのフルパワー射撃とリボルビングバンカーの炸裂はペルゼイン・リヒカイトと胸部と背中に深い傷痕を刻みつけた。

 

『ジョーカー切らせて貰った』

 

『これが私達の切り札よん♪』

 

キョウスケとエクセレンの声をどこか遠くに聞きながらペルゼイン・リヒカイトとアルフィミィは地面に叩き付けられたが、その姿は徐々に薄れて行き、この場から消えようとしていた。

 

「時間切れのようですの……仕方ありません……今回はここまでにいたしますの……」

 

『ここまでやっておいて時間切れだと! どういうことだ』

 

『もうちょい、何かいう事はないのかしら?』

 

自分を見下ろしているアルトアイゼン・ギーガとヴァイスリッター改を見て、アルフィミィは元の世界へと送還されながら1つくらいならと口を開いた。

 

「鋼の戦神を模した破壊魔は普通ではありませんの、どうぞ、お気をつけて、それと詳しくは進化の使徒に聞くといいですのよ。ではまたお会いしましょう、キョウスケ、エクセレン」

 

ちらりと見たメタルビースト・エルアインス、エルツヴァイが通常のインベーダーではないと言う事を告げるとペルゼイン・リヒカイトとアルフィミィの姿はキョウスケ達の前から跡形も無く消え去り、そしてアインスト・クノッヘンによるドームは音を立てて崩れ始めていた。

 

「鋼の戦神ってまさかSRXの事?」

 

「判らん、判らんが……武蔵が何かを知っているのならば早く伊豆基地に戻るべきだろうな……とは言え、アルトはオーバーヒートで動かん、アンジュルグも飛べない。エクセレン」

 

「はいはーい、救援を呼んでくるわね、キョウスケ。浮気しちゃ駄目よ?」

 

「馬鹿を言ってないで早く行け」

 

キョウスケとエクセレンの打てば響くような会話を聞きながら、ラミアはアルフィミィの言葉を思い返していた。

 

(鋼の戦神、破壊魔――まさか量産型SRXの事か?)

 

データとしてはメタルビーストSRX、そして量産型SRXの事を知っているラミアだが、その目で見た訳ではなく確信は無かった。だが言いようの無い不安を抱き、早く救援が来て伊豆基地へと戻らなければという強い焦燥感を感じているのだった……。

 

 

136話 暴虐の超機人/闇からの呼び声 その11へ続く

 

 




闇からの呼び声はメタルビースト・エルアインスとツヴァイ、そしてホムンクルストリオでした。次回はシナリオエンドデモで次のシナリオの準備をしたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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