136話 暴虐の超機人/闇からの呼び声 その11
伊豆基地に戻って来たキョウスケ達はアルフィミィの伝言、武蔵がメタルビースト・エルアインスの正体を知っていると言う事が真実なのかを確かめる為に戦闘データと共に武蔵にそれが真実なのかと問いかけた。
「……メタルビーストSRXッ! まだ生きてやがったのかッ!」
メタルビースト・SRX……武蔵はメタルビースト・エルアインス、エルツヴァイを見て、メカザウルスや百鬼獣と戦っている時のような鬼気迫る表情でそう呟いた。
「メタルビースト・SRX……」
「まさか未来のSRXがインベーダーに寄生されたって言うのかよ……」
「……リュウセイ」
「いやいや、そんな不安そうな顔をしないでくれよ。俺は平気だぜ、ラトゥーニ」
違っていて欲しい、そう合って欲しくないと思っていたが武蔵の言葉でメタルビースト・エルアインス達にも合体機能があることが明らかになり、ブリーフィングルームに重たい沈黙が広がり、SRXがインベーダーに寄生され奪われたと言う声が広がり、武蔵は慌てて違うと声を上げた。
「違う、違うんだ。こいつはSRXじゃねえ、確かこいつは……3体ある量産型SRXの1体だ。オイラ達の目の前で量産型SRXがインベーダーに寄生されたんだ、イングラムさんのR-SWORDもこいつの武装として用意されてたもんだった筈」
量産型のSRX。それはある意味SRXがメタルビーストになったというものよりも衝撃的な事実に誰もが声を失う。文字通りSRXは地球連邦の切り札と言っても良い、それが量産されているという事実は武蔵の見てきた未来が自分達が想像していたよりも酷い事態になっていると悟るに十分に余りあったからだ。
「量産型のSRXだと? トロニウムはどうやって手に入れたんだ。それに念動力者をどうやって集めたんだ」
SRXを量産したと言うことも信じられないが、どうやってそれだけのトロニウムを入手したのか、そしてR-1・Rー3に該当するエルアインスとドライには念動力者が必要な筈だとライが武蔵に問いかける。
「いやあ、そこら辺はちょっとオイラにゃ判らんぜ。それに量産型SRXって言ってもそのまま動いている所を見たわけじゃないし……」
「量産型SRXを見たわけじゃないってどういう意味だ?」
「そのままの意味ッすよ、イルムさん。壊れた戦艦の中の保管されてただけでパイロットらしいのは見てないし、運び出す段階でインベーダーに寄生された訳で、インベーダーに寄生される前の量産型SRXをオイラは知らないんですよ」
1号機から3号機までは建造されていたらしいが、パイロットがいたのか、そして本当に運用されていたのかは判らないと武蔵は言う。
「建造されていたのだから運用される目処は多分あったんだろうが……」
「パイロットが配属される前に何かあったと思うべきか……」
建造されていたことを考えれば運用する目処は立っていたのだろうが、インベーダーもしくはアインストが闊歩する地獄と言う事を考えれば運用出来ないままにパイロット、あるいはSRXをメンテできる人間が失われ運用出来ないままになっていた可能性もある。
「だがそれは量産型SRXの事だろう? 武蔵。お前の口振りでは何度かメタルビースト・SRXと戦ったように感じられるがどうなんだ?」
「……その通りだぜ、ラドラ。2回戦ってるけど……正直に言ってかなり強い。オイラとイングラムさんとカーウァイさん、それと……あんまり良い印象はないと思うけど、アクセルさんとウォーダンが加わってやっと互角。オイラとゲッターD2だけなら完全に力負けだ。変な化け物が割り込んで来て姿を見失ったけど、まさかまだ生きてるなんて思ってもなかった」
「「「なっ!?」」」
武蔵とゲッターD2でも力負けと聞いてブリーフィングルームに驚きの声が広がる。ゲッターD2の強さは誰もが見ている、そのゲッターD2でさえも力負けすると言うのはそう簡単に受け入れられる言葉ではなかった。
「嘘だろ……あのゲッターは化け物みたいに強いのに、それでも駄目だったのかよ……」
「嘘を言っているとは思えないが……正直に言って信じられない、いや信じたくないと言うのが本音の所だな」
武蔵とゲッターロボの存在は一種の心の支えと言っても良かった。その武蔵がタイマンでは勝てないと言うのは信じられない、いやギリアムの言う通り信じたくない言葉でもあった。
「何を沈んだ顔をしている。武蔵1人ならという話だ、これだけ頭数がいれば取れる戦術も大きく増える。違うか?」
コウキが励ますように言うと確かにと誰もが考えを改める。武蔵が勝てないと聞いて気落ちしていては、それでは武蔵1人に頼りきりだった時と何も変わらない。
「まずは警備網の見直しか。それと俺達の機体のメンテナンスも急務だな」
「それにオオミヤ博士達に相談するのも必要ですね」
「可能な限りの戦力強化も必要だな」
「いや、それよりも近くの街の人を避難させたほうが良いかもしれないです。もしもあいつらが出て来たなら……多分また近いうちに仕掛けてきますよ」
「今度はメタルビースト・SRXで来るかもしれないと言うことか……それなら避難をさせておく必要があるな」
1人1人に出来る事は決して大きくはない、だが協力しあえば必ずどこかに突破口は見出せる。団結する事が人間の大きな武器であり、そして強大な敵へと立向かう大きな力となるのだから……。
メタルビースト・SRXの襲来に備え、各々が機体の整備などを行なう中、リュウセイとライの2人はSRX計画の地下ラボに訪れていた。
「ライ、これってあれか? ゲシュペンスト・MK-ⅢのタイプTか?」
「恐らくそうだろう、念動力者用の機体だ」
「俺達の他にもまだ念動力者はいるのか?」
「……少数ながら保護されているとは聞いているが……軍属になるかははわからないな」
固定されているゲシュペンスト・MK-Ⅲ・タイプTを見上げ、リュウセイとライは話をしながら管制室へと足を向ける。
「SRXは使えるのかライ」
「使えるとは聞いている。少なくとも前よりもずっと安定している筈だ」
L5戦役の後からずっと強化されているRシリーズ。ゲッター合金や新型の関節などを使い、合体時間の延長、そして強度の向上が図られている。少なくとも今のSRXはL5戦役の時のSRXよりもずっと安定し、強力になっている筈だとライは言うが、懸念材料も残っているとリュウセイに告げる。
「……俺の念動力か」
「ああ、お前の念動力は大尉よりも遥かに強くなっている。その念動力がどんな影響を出すかわからないと言うのが不安材料ではあるが……そうも言ってられないからな」
「SRXがあれば武蔵の力に……っと、すまねえな。余所見を……」
メタルビースト・SRXが武蔵の言う通り本当に出現するのならばSRXも必要になる。リュウセイとライが地下に呼ばれたのもSRXに関係しての事だろうと歩きながら話をしていると通路から出てきた誰かとぶつかり、リュウセイは余所見をしていたと謝りながらぶつかって来た誰かに視線を向けた。
「あ……あ……その……ごめんなさい……」
小柄なピンク色の髪をした少女が身体を小さくしながらリュウセイに謝って来るのだが、リュウセイはその少女を見て目を大きく見開いた。
「お、お前……お前は……ッ!」
手を震わせ、その少女に指を向けるリュウセイ。口を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返したと思うと、怒りを滲ませた声でお前と叫んだ。
「リュウセイ どうした? 君は……」
「ご、ごめんなさいッ!」
声を荒げたリュウセイを見てライがどうしたと声を掛けながら、リュウセイと向き合っている少女に視線を向けると、その少女はごめんなさいと叫び踵を返して走り去ってしまった。
「……ライ。お前、あいつを見たことがないか?」
「いや、俺は見たことがないが……それよりもどうしたお前らしくないぞ」
初めて見る少女に声を荒げるなどリュウセイらしくないとライに言われ、リュウセイは頭を振って謝罪の言葉を口にする。
「すまねえ。ちょっと変な感じがしたんだ、多分気のせいだと思う」
「それなら良いが……オオミヤ博士の元へ向かおう」
「ああ、急がないとな」
リュウセイが何かを誤魔化している事はライも感じていたが、それに触れて欲しくなさそうな雰囲気だったので、あえてそれには触れず。ロブの所へ向かおうとリュウセイを促し歩き出す。
(俺の気のせい……か? だけど……どうして……余りにも似てやがる)
ライの隣を歩くリュウセイは先ほどと打って変わり、無言で何かを深く考える素振りを見せながら走り去った少女の事を考えていた。雰囲気や言動は異なるが、リュウセイには走り去った少女がエアロゲイターに操られていたレビ・トーラーに似ているように思えてしまっていた。
「ライ、リュウセイ、良く来てくれた。これからSR……そんなに深刻そうな顔をしてどうした? 何かあったのか?」
「い、いやなんでもないぜロブ。それより遅くなってすまねえ」
心配そうに声を掛けてくるロブに大丈夫だと笑うリュウセイ。だがその顔には疑うような色が浮かんでおり、ロブはその顔を見てリュウセイがマイに会ったのではないかと言う不安を抱いた。
(今のリュウセイならば見抜いてしまったとしてもありえない話ではない……)
「とりあえずケンゾウ博士とヴィレッタ大尉が来るまでに俺が説明をしよう、まずは強化されたSRXのカタログスペックについてだ」
マイがレビであると言うことを見抜いてしまった可能性を考えながらも、ロブはそれを口にせず務めて明るく振舞い、強化されたSRXの話題を口にする。最初は怪訝そうな顔をしていたリュウセイだが、話を聞くに連れロボットが好きなリュウセイの顔は明るくなり始め、ロブは内心安堵の溜め息を吐きながらも、これからの事を考えると胃が痛くなるのを感じているのだった……。
格納庫に中に凄まじい蒸発音が響き渡り、発生した水蒸気で格納庫の温度が一気に上がる。
「もっと水を掛けて大丈夫ですわ」
「ほ、本当に大丈夫なんですか?」
「ええ、急いでください」
整備兵にマリオンが水を掛けろと促し、アルトアイゼン・ギーガに大量の水が放出され、再び水が蒸発し、水蒸気を発生させる。
「それでキョウスケ中尉。オーバーモードは如何でした?」
「悪くありませんね。最後の切り札に相応しいと思います」
にやりと笑うキョウスケにマリオンも笑みを浮かべるが、エクセレンが2人の間に割り込んだ。
「いやいや、あれを最後の切り札にしたら駄目でしょうよ。吹っ飛ぶのよ?」
「それは試作型ですからわ。今設計段階の後継機ならば問題ありません」
アルトアイゼンの後継機と聞いてキョウスケとエクセレンが驚いたような表情を浮かべる。
「当たり前ですわ。ATX計画集大成……リーゼ、そしてアーベントの設計と建造は既に始まっております。2人は完成するのを楽しみにしていてくれれば良いのですわ」
アルトアイゼン、そしてヴァイスリッターの後継機の完成を楽しみにしていろと告げ、整備兵にアルトアイゼン・ギーガの修理の指示を出すマリオンは忙しく動き回り、キョウスケ達がこれ以上声を掛けれる雰囲気ではなかった。
「マリーシショーは忙しいかラ、何か気になる事があればラルちゃんが答えて上げるヨ」
にししっと笑いながらラルトスが姿を見せる。変人具合で言えばマリオンよりも遥かにラルトスの方がやばいが、後継機について何かを知っているのならばとキョウスケとエクセレンはラルトスに視線を向ける。
「後継機とはどんな物になるんだ?」
「アルトはでかくなるヨ! でかい=パワーッ!!! パワーイズジャステイスッ!!!」
エキサイトしているラルトスを見てエクセレンが珍しく真顔でキョウスケに向き直った。
「……人選ミスしたと思うんだけど、大丈夫かな?」
「……俺もそう思う」
確かに優秀な開発者かもしれないが、やはり余りにも人格面に問題がありすぎる。ふーっと叫んでいるラルトスにキョウスケもエクセレンも思わず頭を抱えた。
「具体的には準特機くらいまでにするヨ、ヴァイスの方は機動力と攻撃力重視ヨ、サイズ的にワンサイズアップくらいネ」
「なんででかくするのよ?」
「えっとね、新型エンジンは今の技術じゃ小さく出来ないヨ、後ゲッター合金コーティングとか、ビアン博士とかラドラとかコウキから譲り受けた技術を全部積み込みたいネ!」
色々積み込みたいからでかくすると聞いてキョウスケとエクセレンは今度こそ天を仰いだ。
「……絶対これラドラとかコウキに頼んだ方が良かったと思う」
「いうな……ATX計画の開発主任はラドム博士だ。俺達に拒否権はない」
「あ、そうだ。ドリルは好きかナ? かナ?」
このままではドリルがアルトやヴァイスにつけられると悟ったキョウスケとエクセレンは猛ダッシュでマリオンのストッパーになってくれるであろうコウキを呼びに行くのだった……。
「えーなんでドリル嫌がるかわからないヨ」
善意100%で頭おかしい改造をするラルトスとマリオン。アクセル全開同士が悪魔合体した結果……アルトアイゼン・リーゼは正史と大きく異なる姿へと至る事になるのだが……それを止める者は存在しないのだった……。
キョウスケとエクセレンの乗る機体が超マ改造される事が決定したのに対し、リョウトは正当派とも言うべき強化パーツを手にしていた。
「これがヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM用の強化外骨格」
「タイラントユニットだ。カラーリングはまだ決まっていないが、運用は十分可能だ。使うかどうかはリョウト、お前次第と言う所だな」
ハンガーに固定された灰色の頭部と胸部の存在しない装甲の前でラドラがコンソールを叩きながらリョウトに声を掛ける。
「ラドラさん。ありがとうございます」
「気にする事はない、マグマ原子炉を使うのならばそれ相応の制御装置が必要であり、それを作れるのが俺だけという話だ。それより離れていろ、少し動くぞ」
ラドラの言葉にリョウトとリオが後ずさるとラドラは再びコンソールを操作し、人型で固定されていた装甲がゆっくりと変形を始め背部に回っていた頭部パーツが装着され僅かな時間で人型からティラノサウルスのような姿へと変形する。
「ティラノサウルスですか?」
「モチーフはな、タイプMに搭載されていたマグマ原子炉がティラノ系の肉食獣のメカザウルスの物だったからそれに合わせてボクサーパーツの予備をこの姿に改造したんだ」
今にも唸り声を上げて動き出しそうな機械龍を前にし、リョウトとリオは圧倒されたかのような表情を浮かべる。
「一応パイロットも乗れるように仕上げてはある。俺のシグと違って最初から変形前提になっていないから、自動操縦での変形と分離は無理があるからな」
「え、でもラドラさん。コックピットはどこになるんですか?」
見たところコックピット等無く、どこにあるのかとリオが問いかけるとラドラはくっくっくと喉を鳴らして笑った。
「AMガンナーとドッキングするようにしてある。コックピットはAMガンナーからの操縦になるな」
「え、それじゃあまさか……3体合体するんですか?」
「そうだ。そっちの方がエンジンの出力調整などもしやすいに火力や武装面に幅を持たせられる。カークのやつは何でこんなゲテモノにと嘆いていたが、戦力を向上させる目的なのだからそれくらいで丁度良い、シュミレーションだがこういう風に運用する事を前提としている」
コンソールを操作し見てみろとラドラがリョウトとリオに声を掛ける。
「これがAMガンナーと外骨格が合体したAMアサルトタイラントガンナーとしている」
ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプMが搭乗するところにAMガンナーが突き刺さるように合体し、Gインパクトキャノンがパックパックになるように設計されているが、リオはそれを見てあれっと呟いた。
「あのーこれ明らかにAMガンナーも変形しているんですけど?」
AMガンナーに変形構造はないはずと思いながら尋ねるとラドラは犬歯をむき出しにして笑った。
「改造したに決まっているだろう? そのためにリンに好きに改造しても良いと許可を貰ったんだからな」
これは絶対想定外の改造になって頭を抱えているだろうなとリョウトとリオは思ったが、ラルトスの改造と違ってまだ実用可能であり、堅実な仕上がりとなっているので喉元まで込み上げて来た言葉を飲み込んだ。
「武装に関しては口内の火炎放射機能と無いよりまし程度のビームブレードそれと機銃が外骨格の装備になる、AMガンナーと合体すればリープミサイルやホーミングミサイルにGテリトリー、それにGインパクトキャノンが追加されるから火力・防御力はかなりの高品質だと思う。その代わり機動力はやや低めとなっているが、テスラドライブを併用すれば普通の戦闘機並みの機動力は確保できる」
「これってもしかして最初からAMガンナーと併用する前提ですか?」
「当たり前だ。PTに毛が生えたくらいのサイズで百鬼獣と戦う等とナンセンスだ、あれらと戦うのに必要なのはある程度のマルチロール、そして火力だからな」
カークとラドラでは根本的に考え方が違う、どこまで行ってもラドラの考えは旧西暦よりで1体で戦況を覆すことを最初から前提としている。
「戦闘時も合体が可能なのでしょうか?」
「それはお前達次第だ、お前たちがマニュアルで合体出来ると言うのならば可能だし、無理だと言うのなら無理だ。そこまで俺は面倒を見切れない、一応サポートプログラムくらいは組んであるが最終的にはお前達次第だ」
ラドラはそう言うと更にコンソールを操作し、AMガンナーと合体していない状態の外骨格とヒュッケバイン・MKーⅢ・タイプMが合体した姿を映し出すが、それを見てリョウトが今度は声を上げた。
「あのラドラさん」
「なんだ?」
「これ僕が見ていたボクサーと全然違うんですけど……」
リョウトの知るボクサーはヒュッケバインがグリップを掴み、大型のアームを操るというコンセプトで、戦闘時に分離しGソードダイバーという飛空挺になるはずだったのだが、完全に手足が取り込まれ、恐竜の頭部が胸部に来ているので分離が出来るように思えずそう尋ねる。
「ああ、Gソードダイバーとかいう奴か、あんなもの使い物になるか、百鬼獣の前でそんなことをしてみろ。両方撃墜されて終わりだぞ? 全く馬鹿ばかりで困ったものだ。あんな機能をつけるくらいなら手足をしっかりと合体させたほうが安定性が増すし防御力も期待できる」
マオ社の開発スタッフをボロボロに叩くラドラにリョウトとリオは思わず苦笑する。
「Gソードダイバーは廃止して、ブレードキックとガイストナックルの火力を上げた。それとマグマ原子炉を利用する実体剣や強化したタイプM用の武装も多数用意した、Gインパクトキャノンと合わせればどの距離でも十分な戦闘力を発揮出来るだろう」
何か質問は? と問いかけてくるラドラにリョウトとリオはモニターに映し出されているAMガンナーとも合体した姿を見た。
胸部に恐竜の頭部、それにタイプMのフェイスパーツを保護する兜に背中にAMガンナーを装備し、しかもそのガンナーも変形し、更に飛行能力を向上させている上に腕と足には恐竜の爪を思わせる打撃用の突起も追加されていた。暫くそれを見つめたリョウトとリオ、マオ社の関係者だからボクサーもガンナーも知っている。だが正直に言えばボクサーで百鬼獣やアインストにインベーダーに勝てるとは思っていなかった。
「ありがとうございます。これで僕達も足手纏いにならないですみそうです」
「ありがとうラドラさん」
戦えない機体ではまた足手纏いになるだけ、だからこそラドラに強化されたボクサーとそして改造されたガンナーを見て2人は感謝を告げた。
「気に入ってくれたのなら何より、それよりもだ。カラーリングは赤とオレンジで良いのか? タイプMにあわせて外骨格もガンナーも再塗装しようと思っているんだが、お前達はどうして欲しい?」
茶目っ気を見せて尋ねてくるラドラにリョウトとリオは声を揃えてお願いしますと頭を下げ、外骨格、そしてAMガンナーの再塗装作業が自動で始められるのだった……。
ロスターの精神感応により記憶を取り戻したエキドナはずっと自室に篭もっていた。今までの記憶もあり、武蔵にどんな顔を見せれば良いのか、もっと言えば自分が記憶を取り戻した事を知られ、武蔵に敵対されるのが恐ろしかったのだ。
「すまない、調子が悪いんだ」
『大丈夫ですか? エキドナさん』
『ちょっと流石に心配ですわ、一緒に医務室に行きませんか?』
「いや、本当に大丈夫なんだ。ありがとう、武蔵、シャイン王女』
2人に感謝の言葉を口にし、スピーカーの電源をOFFにし、エキドナはベッドに背中から倒れ込んだ。
「……私はどうすれば良い、どうすれば良いんだ」
W-16で考えればヴィンデルとレモンの指示に従うのは1番正しいとW-16はそう判断していた。
だがエキドナ・イーサツキはその命令に従いたくないと思っていた。このまま武蔵の側にいたいと思っていた。
「……なんなんだ、なんなんだ。この胸の痛みは……私も壊れているのか」
恐ろしい、怖い、嫌われたくないと言う気持ちを理解出来ないエキドナはその痛みと苦しみを自分が壊れているからかと感じていた。
だがそうではない、レモンが望み、そしてラミアが得ようとしている感情――誰かを愛する気持ちによって芽生えた、芽生えてしまった自我とWー16としての認識の差がエキドナに苦しみと痛みを与えていた。
「……W-17……いや、ラミア。お前ならどうする、お前なら私になんと声を掛けてくれる」
姉妹とも言えるラミアならば、迷っている自分に答えをくれるのではないかと思うエキドナだが、エキドナが求める答えをラミアは持たない。
ラミアが自我を得た切っ掛けは人の善性に触れて、そして理屈ではなく感情で動き、不可能を可能にしてきた者達を見ての物。
エキドナが自我を得た切っ掛けもまた武蔵という人の善性に触れての物だが、エキドナは恋慕の感情を抱き、そして自我を得た。
自我と一言で言う事は可能だが、余りにもその過程が違う。同じ造られた存在であれど、得た心は全く違うものだ。そしてそれは人であると言う証でもあり、レモンの求めた人にエキドナは限りなく近づいていた。
「私は……私はどうすれば良いのですか……レモン様」
エキドナは得た心を持て余し、そして再び人形に戻りたいと。与えられた事をし、自分で考える事をしたくない。もしもエキドナもまたラミアと同じ様に、容易に答えを求めず自分で考えなさいという言葉を貰っていればまた違っていただろうが、エキドナは得た心とWシリーズの存在理由の間に揺れ動き、創造主でありレモンに助けを求めたのだが、その助けを求める声がレモンに届く事はない。得た心はエキドナだけの物であり、そしてエキドナがWシリーズではなく1人の人間であると言う証だ。仮にレモンに助けを求めても、レモンはそのエキドナの心を歓迎し、そして護り慈しもうとするだろう。何故ならばレモンが求めてならない人間へと至ったエキドナをレモンが喜ばない訳がないからだ。だがエキドナにとってレモンの悲願は恐ろしい物であり、自分が自分でなくなるような感覚を恐れ、恐怖し、布団に包まり震えているのだった……。
一方その頃伊豆基地周辺の街には避難勧告が繰り返し響いていた。恐怖や不安に顔を歪め移動する人々を見つめる青い髪の男……イングラムは冷静に状況を把握しようとしていた。
「どうも何か大きな事が起きそうだな。ん、武蔵からか」
伊豆基地周辺の市街から避難している民間人を見つめながら、自動販売で買ったサンドイッチを口にしながらイングラムは通信機に届いていたメールに目を通していた。
『メタルビースト・SRX出現の可能性あり、援護求む。武蔵』
「もう少し具体的に説明しろ、まぁ事態は判ったがな」
伊豆基地内部では武蔵も堂々とイングラムに連絡を取る事は出来ないし、何よりも武蔵に御執心のシャイン王女もいれば連絡は不可能に近い。簡潔な文章は隙を見て何とか入力したものだろうと思い、サンドイッチの包み紙をゴミ箱に投げ入れて缶コーヒーを口にするイングラム。
「メタルビースト・SRXか……まだ生きていたのか」
旧西暦、そして平行世界の未来で戦ったが、まだ生きていると知りイングラムも流石に眉を細めた。そしてそれと同時に自分が感じていた嫌な予感はこれかと納得もしていた。
「どうも俺もリュウセイ達に合流する時が近そうだ」
メタルビースト・SRXと戦うにはゲッターD2だけでは力不足だ。そしてその上鬼や鬼に操られている上層部、そしてレイカーやダイテツ達を良く思っていない軍人が少しずつだが伊豆基地周辺の基地に集まってきているのを知ればクロガネは救援にはこれない。それにそもそも日本近海で戦っていたクロガネは既に日本を離れているので救援に来れる訳が無い。
「……戻るか」
ピリピリと空気が張り詰めてきている。最早時間の猶予はない事をイングラムは感じ取り、R-SWORDの元へと戻る為に踵を返すのだった……。
「よーし、今度は本番、行こう、ラリアー、デスピニス」
「う、うん……が、頑張ります」
「判ったよ、行こうティス」
ラリアーとデスピニスの了承を得たティスは楽しそうに笑い指を鳴らす。すると虚空に穴が現れ徐々に大きく開いて行き、その中では無数のメタルビースト・エルアインス、ツヴァイ、ドライの姿があった。
「お前達のオリジナルが回復するまで時間を稼ぐんだよ、行きなッ!」
【【【【キシャアアアアアーッ!!!】】】】
ティスの命令に従いメタルビースト達が雄叫びを上げ、伊豆基地を取り囲むように無数のメタルビースト・エルアインス達が空中から次々と出現し、伊豆基地に警報が鳴り響くのだった……。
第137話 2柱の戦神と漆黒の猟犬 その1へ続く
今回はシナリオエンドデモとなります。とりあえず1つ言えるのはタイプMがスーパーロボットに進化しましたが、何か問題でもありますかね?私はないと思います。そもそもラドラが開発に関係した段階でスーパーロボットになる事は不可避なんですよ、だって自分の機体でさえも準特機サイズにしたゲシュペンストですしね。後は色々フラグを準備し、楽園からの追放者の準備をします。ここがOG2編の大きな魅せ場であり、とりあえずの私の目標の所でもありますね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い