進化の光 フラスコの世界へ   作:混沌の魔法使い

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第137話 2柱の戦神と漆黒の猟犬 その1

第137話 2柱の戦神と漆黒の猟犬 その1

 

 

伊豆基地は厳戒態勢が敷かれ、メタルビースト・SRXや、エルアインス達の襲撃に備えていた。険しい顔で食堂の一角に陣取り、時折思い出したように饅頭を口にしている武蔵の纏う雰囲気はピリピリしていて、シャイン王女やユーリアでさえも近づかない、いや近づけない雰囲気を纏っていた。そんな中、ギリアムとイルムの2人が武蔵の腰掛けている席にゼリー飲料を片手に腰掛ける。

 

「武蔵は仕掛けてくるって考えているのか?」

 

「イルムさん、そうすっね。まず十中八九来ると思います。インベーダーのクソは化け物の癖に妙に頭が回るから、キョウスケさん達のダメージを考えればまず攻撃を仕掛けてこない理由が無い」

 

「むしろそれは本能に近いかもしれないな、獣だからこそ勝てる相手は見逃さないという訳か」

 

武蔵の話を聞いてギリアムは知恵というよりも本能だと口にした。獣だからこそ、確実に勝てる相手は確実に仕留める。考えるのではなく魂レベルで刻まれている本能と言われればなるほど、その通りだと武蔵も頷いた。

 

「未来だか平行世界でお前は戦っただろ? メタルビースト・SRXってやつとSRX。どっちが強い」

 

ギリアムとイルムがいるのを見て、作戦会議か何かと思ったのか食堂に入ってきたカチーナが自分のランチプレートを机の上に乗せながら武蔵にそう尋ねる。

 

「うーん……凄い言いにくいですよ、カチーナさん」

 

周りの視線が全部集まっているのを感じ流石の武蔵も言いにくいと引き攣った愛想笑いを浮かべる。

 

「んなこと言ってる場合じゃねえだろ。それなりの作戦や準備っつうのが必要なんだ。正直に、お前が感じたとおりに教えてくれ」

 

中尉という立場であり、指揮や作戦立案にも関わる。それに加えてカチーナも竜馬や隼人には劣るが野生の勘は非常に優れており本能的に襲撃が近いことを感じていたからこそ、武蔵にそう問いかけたのだ。

 

「ぶっちゃけSRXより強いっすね」

 

SRXよりも強い。簡潔なその一言に食堂にざわめきが広がる、SRXは連邦軍強いては地球の作り出したスーパーロボットの中では1、2を争うレベルで優秀な特機だ。そのSRXよりも強いという言葉に驚くなというのが無理な話だった。

 

「武蔵待って、メタルビースト・SRXは量産型SRXを元にした機体の筈、なんでSRXよりも強いの?」

 

SRXよりもメタルビースト・SRXが強いと聞いて黙っていられずラトゥーニが武蔵にそう問いかけた。

 

「何か理由があるのか? 量産型SRXはトロニウムを搭載していないはずだろ?」

 

「なんかインチキ臭いなにかを取り込んでるとかいわねえよな」

 

SRXよりも強いと聞けばピリピリと張り詰めている雰囲気の武蔵に近づけないとか言っている場合ではないと、ブリットやタスクもどういう事だと尋ねてくる。

 

「ブリーフィングルームを使おう。あまり整備兵やスタッフには聞かせたくない」

 

その様子を見てギリアムがDコンでレイカーにブリーフィングルームの使用許可を取り、武蔵達はブリーフィングルームで改めてメタルビースト・SRXについての話し合いを始める事にした。

 

「リュウセイ達は?」

 

「SRXの事で地下で話をしている、終わり次第合流するようには伝えてあるし、念の為にブリーフィングルームの映像も録画してあるから、後で見返してもらえば良いだろう」

 

1番の当事者であるリュウセイ達が居ないが、それならしょうがないと武蔵は話を始めた。

 

「まずだけど1番最初のメタルビースト・SRXなら多分今の伊豆基地の戦力で余裕で勝てたと思う。だけど今のメタルビースト・SRXには勝てるにしても相当な打撃を受ける事になると思う」

 

「1番最初という事は今のメタルビースト・SRXは進化していると言うのか?」

 

「そうなりますね、メタルビースト・クロガネを取り込んで、片っ端からインベーダーを取り込んでオイラの知ってるSRXとは全然違う感じになってますし、再生能力も段違いですよ。キョウスケさん」

 

「待て待て、メタルビーストクロガネだって? 武蔵、ありゃ親父の艦だろうが。未来だと親父は死んでるのか?」

 

喧嘩をしたばかりだが、リューネはリューネなりにビアンを愛している。メタルビースト・クロガネということはそんなビアンが未来で死んでいる可能性が生まれ、どうなんだと問いかける。

 

「ビアンさんは行方不明らしくて、なんか木星に行ったきり……とか何とか……そこら辺はオイラは覚えてないから良く判らん」

 

「……じゃあなんでクロガネがインベーダーに寄生されてるんだよ?」

 

「それはあれだマサキ。馬鹿な上官がめちゃくちゃやったらしくて、スペースノア級は殆どアインストかインベーダーに奪われて、シロガネはシロガネで連邦が運用してたけど、馬鹿な上官のせいでこれまた轟沈したらしい。ちなみに艦長はリーさん達じゃなかったな」

 

今現在建造されている最中のスペースノア級の4~6番が平行世界では運用されていたらしいが、それが人類の切り札ではなく敵の物になっていたと聞いて流石のキョウスケ達も深い溜め息をはいた。

 

「指揮官が大事って良く判るわね」

 

「その通りだな、俺達は運が良かったとおもうべきだな」

 

ダイテツにレフィーナにリーと優秀な人材が指揮官でよかったとキョウスケ達はしみじみとした様子で頷いた。

 

「武蔵様、全然違う姿と仰ってましたが、そんなに違う姿なのですか?」

 

「様って……いや、もう良いや……オイラは絵が下手だけど書いてみるよ、シャインちゃん」

 

様付けを毎回修正していた武蔵だが、それにも疲れたのか武蔵は溜め息を1つ吐いた後、紙に絵を書き始める。

 

「こんな感じ」

 

ブリーフィングルームのモニターに映し出された絵は決して上手くはない、むしろ下手を極めていたがSRXの特徴は捉えていたし、SRXと言われれば、ああ、そうかと思う位には特徴を捉えていた。

 

「翼? それにあれは……爪?」

 

「悪魔って感じだなあ……」

 

L5戦役に参加していないアラドとアイビスが絵の感想を口にする中、L5戦役に参加していたエクセレン達はその姿を見て眉を顰めた。

 

「これってジュデッカだっけ? あれを倒した時に似てない?」

 

「似てると思いますエクセレン少尉」

 

「いや、その物と言っても良いと思うぞ」

 

ゲッター1がゲッター線に包まれた巨大なゲッターロボになり、そしてSRXとアストラナガンが融合したDiSRXがジュデッカを倒した時の姿に瓜二つだった。

 

「それにこいつらはメタルビースト・エルアインス、ツヴァイ、ドライを生み出す能力があって、今はまだ大丈夫だけど……最悪は……完全な形のRシリーズの複製もするだろうし、もっと上も複製できるようになるかもしれないです」

 

「メタルビースト・SRXが増えるという事だな?」

 

エルアインス・ツヴァイ・ドライを複製する能力を持つという事は最終的に自分自身の分身を作り出す可能性がある……カイが武蔵の言葉を遮るようにして言うと武蔵はその通りですと頷いた。

 

「はい、その通りです。カイさん、そんで多分ですけど……メタルビースト・SRXと戦えるのは後2回、悪ければ後1回になるとオイラは思ってます」

 

戦えるのは1回だけという武蔵に困惑する表情を浮かべる者もいたが、エクセレンの救出に向かっていたカチーナ達はすぐにその理由を理解した。

 

「学習しちまうのか。リュウセイと戦った時みたいに」

 

リュウセイとの戦いの中でメタルビースト・エルアインスはリュウセイの念動力を真似し、そしてそれを己の物にしていた。

 

「SRXを出すならそれで勝ちにいくか、それとも合体出来ないまでに叩きのめすか……1回ならいい、でも2回目を取り逃がせば……」

 

「リュウセイに匹敵する能力を持ったメタルビーストとなると言う事か」

 

リュウセイを真似れば模造であれ真作へと至る。SRXは確かに切り札ではあるが切り所を間違えれば、SRXに匹敵する……いや、それを越える脅威になりかねないと聞いてブリーフィングルームに嫌な沈黙が広がり、誰もが口を開こうとし、何を言えば良いのかと悩んでいる中警報とそして複数のインベーダーの叫び声が伊豆基地に響き渡った。

 

「出て来やがった! オイラは先に行きます!」

 

言うが早く弾かれたように走り出す武蔵に続くようにキョウスケ達もブリーフィングルームを飛び出して行くのだった……。

 

 

 

SRX計画の地下ラボでロブからSRXの話を聞いていたリュウセイとライはロブ達が独自に考え、そして推察していたインベーダーの話を聞いていた。

 

「SRXを出して倒しきれなかったらやばいのか……」

 

「だがそれは俺もお前も判っていた筈だ。あの異常な学習速度……時間を掛ければ掛けるほど俺達は不利になる」

 

リュウセイの念動力の扱いを短時間で真似し、己の物とした。

 

ライの射撃技術を取り込み、そしてその上でインベーダーの身体を駆使した射撃を用いて来た。

 

その成長速度、そして獣の本能を組み合わせた荒々しい戦闘スタイルは自己再生をするインベーダーだからこそ出来る戦術だった。

 

「その可能性は極めて高いな。武蔵の話は俺も聞いてその上で俺なりに推察をして見たが、ベースが量産型のSRXだったとしても自己再生、自己進化するインベーダーにとって素体は問題じゃない。大事なのは経験を積む相手だ」

 

武蔵から聞いたインベーダー、そしてメタルビーストについてロブを初めとした伊豆基地のスタッフは独自の推察をし、そしてそれは限りなくインベーダーの特徴を捉えていた。

 

「経験を積む相手ってどういうことだよ。ロブ」

 

「これは推察だぞ? 話を聞く限りでは目が弱点じゃなくて、目が核なんじゃないかと俺は思ってる。その周辺の僅かな肉片はインベーダー1体で、それらが無数に集まって核の損傷を補い、修復するからこそのあの再生能力ではないかって思うんだ。ミトコンドリアとかウーパールーパーとか身体の作りは本当にシンプルで弱点を露出しているから何かに寄生しようとするんじゃないかってな」

 

ロブの考察は武蔵の知らないインベーダーが元々バクテリアだったという所に辿り着いており、インベーダーが寄生するのは弱点を隠すためという独自の考察をしていた。

 

「だけど元は小型の群体生物だ、肉体を得た所でそれを十分に扱えるかというと疑問が残る」

 

「目が見えない者が急に視界を手に入れたら混乱するという事ですか?」

 

「化け物だからそうだとは言えないけど、多分インベーダーに寄生されたばかりなら攻撃方法も単純になるんじゃないかなと俺は思う。んでここからが重要な所だけど、戦って傷ついて、再生して身体を最適化させているんだと思う。だからどんどん攻撃が洗練されていくし、強力にもなってくる。んで元々は固定の姿を持たない生物だからこれが良いと思えば、それを真似して己の物にする習性があるんじゃないかと俺は考えている」

 

「確かにエルアインスは俺と戦っている間に武器を作り変えたりして来てたな」

 

「俺もビルの残骸を取り込んで弾薬を作り出しているのを見たぞ」

 

「だろ? つまりインベーダーの最大の武器はその適応力なんじゃないかって俺は思うんだ。だからSRXをぶつければSRXの能力や戦闘技術を真似する、その中で使えると思えばアルトのリボルビングバンカーとかも真似して作り出すんじゃないかって俺は思っている」

 

自己進化、自己再生を繰り返し最適な身体を作り出す、そして足りない材料は取り込んだもので補いより強い肉体を作り出す。弱い個体を犠牲により強い固体を作り出すそれがインベーダーの習性だとロブはリュウセイ達に告げた。

 

「じゃあパワーアップしたSRXならどうなる?」

 

「多分最初はリュウセイ達が優勢だろう。だけど相手が学習してくれば……」

 

「徐々に互角、そして最終的には劣勢になると……」

 

「だから何度も戦うのは危険だ。出来る限り速攻で、それで再生出来ないくらいに吹っ飛ばす必要があると思う」

 

武蔵の話をロブは聞いていなかったが、それでも武蔵と同じ事をリュウセイとライに語るロブ。

 

「再生出来ないほどの火力か……Z・Oソード「天上天下無敵剣だッ!」……名前はどうでも良いが、それでも火力が足りるとは思えないのですがオオミヤ博士」

 

Z・Oソード……いや、天上天下無敵剣は切れ味も念動力による爆発も加味すればかなりの破壊力を持つが、メタルビースト・SRXを相手にすると火力不足になるのではないか? とライが口にすると地下ラボの扉が開きアヤが姿を見せる。

 

「それを何とかする為にSRX計画のラボでブリーフィングをしてるのよ、ライ、リュウセイ」

 

伊豆基地に来てから久しぶりに見るアヤの姿にリュウセイとライも笑みを浮かべる。

 

「アヤ、今まで何してたんだよ。こっちに来てから全然見ないしよ」

 

「まぁ色々やる事があったのよ、アルガードナーとMK-Ⅲ・タイプTTの調整とか、R-GUNパワードの調整とかね」

 

「ではHTBキャノンを「天上天下一撃必殺砲だ。HTBキャノンなんてダサい名前なんかより、こっちの方が全然良いぜ」アヤはどう思う?」

 

「え、あ……うん、良いんじゃないかしら? ライはどう思う?」

 

弾ける笑顔のリュウセイにアヤは曖昧な返事を返しつつ、ライにキラーパスを繋げる。

 

「もう少し何かなかったのか?」

 

「じゃあ、お前なら何て名付けるんだよ?」

 

真顔でリュウセイにそう尋ねられたライは黙り込み、考える素振りを見せながらそのまま沈黙する。

 

1分……2分と過ぎ、リュウセイが気まずそうに口を開いた。

 

「悪かった、聞いた俺が悪かったよ。それで今回のミーティングは何をするんだ?」

 

サブカルチャーに興味が無いライがリュウセイが気に入りそうな名前を思いつくはずもなく、黙り込んだのを見てリュウセイはライに悪かったと言いながら話を変えに入る。

 

「今回のミーティングだけど……」

 

アヤがミーティングの内容を説明しようとした時……SRX計画の地下ラボに緊急警報が鳴り響いた。

 

「な、何だ!?」

 

「敵襲警報だとッ!? しかしこのグレードは……ッ!」

 

突然の警報に驚くリュウセイと警報のグレードを聞いて顔色を変えるライ。

 

『緊急事態発生!  伊豆基地内にメタルビースト、インベーダーが多数出現したッ! 総員第一種戦闘配置! 各機は直ちに出撃せよッ!!』

 

武蔵は近いうちに必ずインベーダーは攻撃を仕掛けてくると断言していた。だが余りにも早過ぎる襲撃にリュウセイ達は驚きを隠せなかった。

 

「奴らが直接攻撃を仕掛けてきたのかッ! 対策も何も準備出来ていないと言うのにッ」

 

「そんなことを言ってる場合じゃねえ! 俺達も行こうぜ!!」

 

メタルビースト・SRXの対策も何も出来てないと嘆くライにリュウセイが声を掛け、座っていた椅子を蹴り飛ばす勢いで立ち上がる。

 

「あ、でも……! ブリーフィングが……わ、私はリュウとライに言わないといけないことが……」

 

「なに言ってんだ!  今はそんなことをしてる場合じゃないだろ!? それにお前がいなきゃSRXに合体出来ねえだろうがッ! 武蔵だけに負担を掛ける訳にもいかねえ! 俺達もすぐに出撃するんだッ!」

 

今やるべき事は考える事でも、嘆く事でもない仲間を助ける為に戦うんだと言うリュウセイにライとアヤも頷き、リュウセイ達は地下ラボを飛び出し、整備を受けているRシリーズの元へと走るのだった……。

 

 

 

 

ドッグに停泊していたハガネ、シロガネ、ヒリュウ改が浮上し伊豆基地の上空に陣取る。だがそのブリッジで戦況を見ていたダイテツ達は目の前の光景に目を見開く事となった。

 

【【【【キシャアアアーッ!!!】】】】

 

【【【【シャアアアーッ!!!】】】】

 

飛行形態になったインベーダーとトカゲのような姿をしたインベーダーが雄叫びを上げ、その後では数10体ずつのメタルビースト・エルアインス、エルツヴァイ、エルドライの3機が3機1組で並んでいたからだ。

 

「馬鹿な……これだけのインベーダーが一体どこからッ!?」

 

インベーダーは今まで少数しか確認されていなかったが大隊にも匹敵するその数にテツヤが驚きの声を上げる。

 

『チェンジッ!! ドォォオオオラゴォォオオオンッ!!!!』

 

ハガネから出撃したゲットマシンから武蔵の雄叫びが響き、地響きを立てて伊豆基地の滑走路に着地し、それに続くようにメタルビースト、インベーダーと戦えると判断されたアルトアイゼン・ギーガ、ゲシュペンスト・リバイブ、シグ、轟破鉄甲鬼、グルンガスト、ジガンスクード・ドゥロ、龍虎王、ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラント、そしてRシリーズが次々と出撃する。だが出撃し、展開完了した部隊を見ればハガネの保有戦力の半分ほどだった。

 

『作戦通りだ。並みのPTやAMではインベーダーに対して十分な打点を取れん。今回の作戦は可能な限りのワンアプローチでの撃破が要求される、各員タイミングを見誤るなよ』

 

ゲシュペンスト・リバイブ(K)のカイからの指示にパイロット達はそれぞれの機体のコックピットの中で頷いた。インベーダーの進化の速度を考えれば時間を掛けて戦う事は許されず一撃必殺が要求される。

 

『リオ、熱のほうは大丈夫?』

 

『ええ、大丈夫よ。リョウト君、この新しいパイロットスーツのお蔭ね』

 

グルンガストクラスにまでサイズアップしているヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラントの容姿はかなり異形ともいえた。

 

胸部の恐竜を模したアーマー、背部に変形したAMガンナーを装着し浮遊している。それに加えて手足には凶悪な打撃用のスパイクが装着され、パッと見PTとは見えない仕上がりだ。

 

『ラドラ、やりすぎたのではないか?』

 

『火力が必要だと言うのでそれに応えただけだ。文句を言われる筋合いはない』

 

『俺はそう悪くないと思うぞ、PTが特機サイズになるまで改造出来るのなら火力不足に悩む事も無い』

 

ヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラントは意見が分かれる仕上がりになっているが、超常の相手と戦う前提ならばこれほど頼もしい友軍機はないだろう。

 

『機体に慣れていないんだ、馴れるまでは慣らし運転にしておけよ、リョウト、リオ。カタログスペックで言えばグルンガストより上だ、

慣らし運転でも十分な攻撃力はあるだろうよ』

 

『マ改造じゃなくてまともな魔改造であんな風になっちまうんだなあ……』

 

安定性を維持しつつ、十分な火力を得る。ラドラはパイロットしても優秀だが、技術者としても優秀だった。

 

『あれが許されるなら俺もPTに装着用の何かを作っても良いな』

 

『なぁ、ライ、アヤ』

 

『駄目よ』

 

『駄目だ』

 

『まだ何も言ってねえ……』

 

『お前の事だ、R-1にというのだろう。気持ちは判るが止めておけ』

 

『そういう事、今は目の前に集中しなさい』

 

スーパーロボット好きなリュウセイにとってヒュッケバイン・MK-Ⅲ・タイプM・タイラントはかなり格好良く見え、コウキがそれに似たものを造れると聞いて興奮するのはわかるが駄目だとライとアヤが即座にNOを出す。

 

『無駄話はそれくらいにしておけ、不安なのは判るがな』

 

ゲッターD2を警戒し唸り声を上げていたインベーダーが徐々に攻撃態勢に入っている。

 

『どうもゲッターD2のゲッター線には馴れてきたみたいですね。出撃までの時間稼ぎが出来ただけ御の字だと思いますけど』

 

ゲッターD2の高密度のゲッター線でメタルビーストではないインベーダーの足止めは出来ていたが、消滅する、再生するを繰り返した今のインベーダーはゲッターD2が常時展開しているゲッター線に適応している。戦闘に入れば別だが、これ以上の足止めは無理だろうと武蔵は告げる。

 

「いや、これだけ時間を稼いでくれれば十分だ。支援部隊、随時出撃開始ッ!」

 

『倒せると思い前に出るな、支援に徹しろ』

 

リーとダイテツの指示が飛ぶ中、伊豆基地の司令部の前に展開されるゲシュペンスト・MKーⅢや、アステリオン、それに加えアンジュルグやサイバスターでさえも本来は装備していないライフルを装備している。

 

「相手はインベーダーだ、ゲッター合金に内包されているゲッター線だけでも致命傷に成る可能性が高い。それによる支援でトドメをさせる状況を作り出せ」

 

直接戦えないのならば支援に徹する。ビアンから提供されたゲッター合金で多数のゲッター合金弾頭のカートリッジが随時整備班によって運び込まれ、カチーナ達はそれを次々と装填しライフルの照準を合わせる。

 

『まずは雑魚をぶっ潰すッ!! ゲッタァアアビィィイイイムゥッ!!!!』

 

ゲッターD2の頭部から放たれたゲッタービームの一閃で地上にいたインベーダーと飛行型に変形したインベーダーが一掃される。それが新西暦でのインベーダーと人類との短くとも辛く険しい戦いの幕開けとなるのだった……。

 

 

 

 

 

伊豆基地での戦いを見つめる陣営は複数存在していた。ゲッターロボとゲッター線によって人類とは別の形に進化したインベーダー。

選ばれた者とそうではない者の争いという側面もあれば、インベーダーが存在すれば地球圏その物がインベーダーの巣窟になりかねないと言うことで警戒する者もいる。

 

1つはメタルビースト・SRXを使役するデスピニス・ティス・ラリアーの3人組。

 

1つはウェンドロ達インスペクター。ゾヴォークでもインベーダーは脅威とされているため、大量出現に警戒するのは当然だ。

 

1つはアルテウルだ。インベーダーが台頭するのは避けたい事態だが、ある程度の数は増えて貰ったほうが都合がいい。

 

1つは孫光龍達バラルだ。ゲッターもインベーダーも良く知るバラルは戦況次第では恩を売りに姿を現すことも考えていた。

 

「うーん、何故私達の言う事を聞かないんだろうねえ?」

 

「そ、そうだね、なんで僕達の言う事を聞かないんだろうね」

 

そして最後はコーウェンとスティンガーの2人組だ。地球をインベーダーの楽園とする事を企んでいる2人にとって強力なインベーダーであるメタルビースト・SRXは喉から手が出る程に欲しい戦力だ、だが自分たちの命令を聞き入れない事に2人は納得行かないと言う表情を浮かべていたが、それも少しの間の事だった。

 

「まぁ良いさ、どうも増えているインベーダーは私達の指示をある程度は聞いているみたいだしね」

 

「う、奪うチャンスもあると言うことだね。コーウェン君」

 

「その通りさ、スティンガー君。同胞を操れる等と驕っている者達にはそれ相応の裁きを受けて貰わないとね」

 

今はまだメタルビースト・SRXは出現していないが、コーウェンとスティンガーには別格の力を持つメタルビーストが存在する事が判っていた。どんな手段で支配しているのかは皆目見当も付かないが、ダメージを受ければその本能が高まり支配に抵抗するようになる、そうなればコーウェンとスティンガーが割り込む余地もある。

 

「ゆっくりと見物しようじゃないか、武蔵がどれほど強くなったのかをね。まぁあの乱暴者や神隼人ほど警戒する事も無いだろうけどね」

 

「そ、そうだね。どうせ武蔵には十分にゲッターロボを扱う力なんて無いんだ。真ドラゴンの中の事はまぐれなのさ」

 

真ドラゴンの内部での戦いはまぐれだったとスティンガーは笑い、コーウェンもその通りだと同意する。

 

「これからさ、鬼もアルテウルも何もかもを利用して今度こそ地球を我々の楽園にするのだ。楽しみだろう? スティンガーくぅん?」

 

「う、うん、勿論さコーウェンくぅん。武蔵1人で僕達を止めることなんて出来はしない、真ドラゴンも、真ゲッターもいない。最早我々を止める手段など存在しないのさ」

 

驕り、見下しコーウェンとスティンガーは笑う。インベーダーであるコーウェンとスティンガーは人間の意志の力も何かも理解出来ない、ただあるのは増えて進化し、より優れた生命体へと至る事。人間と同じくゲッター線によって進化したインベーダーと人類。限りなく近く、そして果てしなく遠い存在であるからこそ、コーウェンとスティンガーは何故己が敗れたのかを理解していない、それを理解しなければ再び敗れるのは自分達だと言うことをコーウェン達は理解しておらず、どこまでも傲慢でどこまでも慢心し、そしてどこまでも人類を見下し、自分達こそが選ばれた存在であり、地球の支配者だと思っている2人は気づかない。

 

【愚かなり】

 

【お前達は優れてなどいないと何故判らぬ】

 

【見るに耐えないね】

 

【精々武蔵の力を高める為に愚かな夢を見るがいい】

 

武蔵を見定める為に地球の近くに潜んでいるゲッターエンペラーにお前達こそが存在するに値しない、愚かな存在だと、武蔵に対する当て馬程度に思われている事を知らずにコーウェンとスティンガーは叶わぬ夢を見て笑い続けるのだった……。

 

 

第138話 2柱の戦神と漆黒の猟犬 その2へ続く

 

 




今回は戦闘開始デモとなりましたので次回から戦闘描写をバリバリ書いて行こうと思います。とりあえずメタルビーストSRXとSRXとゲッターD2のチームバトルくらいは書きたいなと思っておりますが、次回はとりあえず雑魚インベーダー戦に重点を置いてみようと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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